(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理物質が前記水溶液であり、前記暴露処理が、前記炭素鋼製である少なくとも一方を、前記処理物質に、大気圧下、室温にて含浸した後、大気圧下、室温にて保管する処理である請求項1に記載の固定床多管式反応器の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の固定床多管式反応器(以下、反応器という)の縦断面図である。
図1に示すように、本実施形態の反応器1は、円筒状のシェル部10と、シェル部10に設置された複数(例えば、3枚)の欠円型邪魔板(邪魔板)20a,20b,20cと、シェル部10の内部に設置された多数本の反応管30と、を備えている。
また、反応器1は、全反応管30の下端を固定するとともにシェル部10の床部になる下側固定板40と、全反応管30の上端を固定するとともにシェル部10の天井部になる上側固定板50と、下側固定板40の下方に設けられた原料導入部60と、上側固定板50の上方に設けられた反応生成物排出部70と、下側固定板40よりも上方に設置され、シェル部10に熱媒体を導入する熱媒体導入管80と、上側固定板50よりも下方かつ熱媒体導入管80よりも上方に設置され、シェル部10から熱媒体を排出する熱媒体排出管90と、を備えている。
【0014】
シェル部10は、内部に熱媒体が流動するものであり、本実施形態においては、軸方向を鉛直方向に一致させた状態で設置されている。なお、シェル部10内を流動する熱媒体としては特に限定はなく、通常、硝酸カリウム及び亜硝酸ナトリウムを含む塩溶融物(いわゆるナイター)や、ビフェニルとジフェニルエーテルとの3:7混合物(例えば、ダウケミカル社製ダウサム)等の有機熱媒体を使用することができる。
【0015】
図2は
図1のI−I’線に沿う断面図である。
図2に示すように、欠円型邪魔板20a,20b,20cは、シェル部10の内径より直径が小さい円板の一部が欠けた形状のものであり、例えば炭素鋼、ステンレス鋼等により構成されている。本実施形態における欠円型邪魔板20a,20b,20cは、円板の一部が直線的に切除されたように欠けている。なお、本明細書では、円板の一部が直線的に切除されたように欠けて形成された欠円型邪魔板20a,20b,20cの直線状の端部21のことを、「直線状端部21」という。
【0016】
また、欠円型邪魔板20a,20b,20cは、厚さ方向(軸方向)が鉛直方向に一致するとともに、面方向が水平方向に沿って設置されている。よって、シェル部10の内壁10aと、欠円型邪魔板20a,20b,20cの直線状端部21との間にはクリアランスBが形成されている。
【0017】
本実施形態では、上段の欠円型邪魔板20a、及び下段の欠円型邪魔板20cについては、シェル部10の内部にて、クリアランスBが熱媒体導入管80、及び熱媒体排出管90側と反対側に配置されるように、直線状端部21が配置されている。一方、中段の欠円型邪魔板20bについては、シェル部10の内部にて、クリアランスBが熱媒体導入管80、及び熱媒体排出管90側に配置されるように、直線状端部21が配置されている。すなわち、中段の欠円型邪魔板20bは、上段、及び下段の欠円型邪魔板20a,20cに対して反対向きに配置されている。また、欠円型邪魔板20a,20b,20cは、シェル部10の軸方向に沿って等間隔に配置されている。なお、欠円型邪魔板20a,20b,20cは、シェル部10に取り付けられたサポートリングやサポートビーム(図示せず)によって固定されている。
【0018】
上述したように欠円型邪魔板20a,20b,20cを配置することにより、シェル部10の内部は、下側固定板40と下段の欠円型邪魔板20cの間の第1室11、下段の欠円型邪魔板20cと中段の欠円型邪魔板20bの間の第2室12、中段の欠円型邪魔板20bと上段の欠円型邪魔板20aの間の第3室13、及び上段の欠円型邪魔板20aと上側固定板50との間の第4室14に分割される。
【0019】
そして、第1室11と第2室12とは、主に、下段の欠円型邪魔板20cの直線状端部21と、シェル部10の内壁10aと、の間に生じるクリアランスBにより連通状態にされている。
また、第2室12と第3室13とは、主に、中段の欠円型邪魔板20bの直線状端部21と、シェル部10の内壁10aと、の間に生じるクリアランスBにより連通状態にされている。
また、第3室13と第4室14とは、主に、上段の欠円型邪魔板20aの直線状端部21と、シェル部10の内壁10aと、の間に生じるクリアランスBにより連通状態にされている。
したがって、熱媒体導入管80からシェル部10に導入された殆どの熱媒体は、第1室11、第2室12、第3室13、及び第4室14を経てシェル部10内を蛇行しながら上昇し、熱媒体排出管90から排出されるようになっている。
【0020】
また、欠円型邪魔板20a,20b,20cには、反応管30を遊挿するための複数の貫通孔23が、面方向に沿って間隔を空けて形成されている。なお、貫通孔23の内径は、反応管30の外径よりも大きく形成されている。
【0021】
各反応管30は、シェル部10の内部にて軸方向を鉛直方向に一致させた状態で配置された円筒状のものであり、例えば炭素鋼、ステンレス鋼等により構成されている。具体的に、各反応管30は、各欠円型邪魔板20a,20b,20cに形成された複数の貫通孔23のうち、軸方向からみて重なる貫通孔23内にそれぞれ遊挿されるとともに、その上下端が上述した上側固定板50と下側固定板40とにそれぞれ固定されている。したがって、反応管30と、欠円型邪魔板20a,20b,20cの貫通孔23の内周面と、の間にはクリアランスCが形成される。また、各反応管30は、下端開口部が原料導入部60内に開放される一方、上端開口部が反応生成物排出部70内に開放されている。
【0022】
なお、反応管30の断面形状は特に限定されず、楕円形状、多角形状や、それ以外の形状であってもよい。また、反応管30の本数は特に制限はなく、反応生成物の必要量に応じて適宜選択される。上限については、反応器1を作製する際の加工機械によっても異なり、通常、数千本から数万本である。また、各反応管30間のピッチは、製作可能な範囲で任意の距離をとることが可能である。
また、反応管30の内径と長さには特に制限はないが、通常、内径が10〜50mm、長さが300〜10000mmの範囲である。
【0023】
反応管30内には触媒が充填されている。触媒としては、反応を目的通りに進行させる触媒であれば特に限定はされない。例えば、エステル化反応、エステル交換反応、付加反応、または水和反応等の固体触媒等を利用できるが、反応発熱による反応系の温度変化が大きく、熱媒体による除熱が重要となる気相接触酸化反応触媒が好適に利用される。なお、触媒の形状としては特に限定されず、球状、円柱状、リング状、星形状等が挙げられる。触媒の大きさは特に限定されないが、触媒径が過度に大きくなると活性が低下する傾向にあり、触媒径が過度に小さくなると、反応管内の圧力損失が大きくなる。このようなことから、通常、触媒径は0.1〜10mmの範囲にされる。
また、触媒は無担体であってもよく、担体に触媒を担持した担持触媒であってもよい。担体としては、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、シリコンカーバイト等の不活性担体が挙げられる。また、担体の形状としては、球状、円柱状、リング状、星形状等が挙げられる。
【0024】
また、触媒を反応管30に充填する際には、触媒を、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリコンカーバイト、チタニア、マグネシア、セラミックボールやステンレス鋼等の不活性充填材で希釈してもよい。不活性充填材の形状としては、球形粒状、円柱形ペレット状、リング形状、星型状、鞍型状などが挙げられる。
また、触媒を複数の触媒層に分けて反応管30内に充填してもよく、その場合には触媒層同士の間に不活性充填材層を介在させてもよい。
【0025】
反応管30に触媒を充填する際には、触媒を反応管30ごと、または充填回ごとに管理目標量を計量し、計量した触媒を上端開口部から反応管に充填する。ここで、管理目標量は体積でも質量でもよいが、精度が高くなるという点で、質量が好ましい。管理目標量が体積の場合には反応管30の容積から、質量の場合には反応管30の容積と別途予備的に測定される触媒充填密度とから、管理目標量を求めることができる。
また、触媒を計量する際には、反応管30に充填する触媒量と管理目標量との差が、触媒量の平均値の±10%以内にすることが好ましく、±5%以内にすることがより好ましい。反応管30に充填する触媒量と管理目標量との差が、この範囲でない場合には、反応管30の触媒負荷が不均一となる場合がある。また、計量した触媒を反応管30に全て充填し終わる前に、反応管30が満たされる場合には、反応管30内での触媒のブリッジ等による充填ミスが考えられるので、その反応管30については触媒の再充填を行う必要がある。
【0026】
ここで、反応管30と、欠円型邪魔板20a,20b,20cの貫通孔23の内周面と、の間のクリアランスCには、閉塞材31が充填されている。閉塞材31は、砂やステンレス鋼、炭素鋼、銅等の微粒子からなり、反応管30と貫通孔23との間のクリアランスC内を閉塞している。なお、閉塞材31の材料としては、反応管30と貫通孔23との間のクリアランスCを閉塞し、かつ、反応温度において閉塞状態が保たれていれば微粒子物質の種類、及び混入方法は特に制限されない。
また、反応管30と貫通孔23との間のクリアランスCは、反応器1の組み立てが可能な範囲で任意の値を設定できるが、反応器1の径方向へのナイターの流動を主流とする目的から、0.5mm以下に設定することが好ましい。
【0027】
本実施形態の閉塞材31は、反応器1の組み立て後に行われる処理によって上述したクリアランスCに充填される(閉塞処理工程)。具体的に、上述した微粒子を混入した熱媒体を、熱媒体導入管80からシェル部10の内部に導入する。すると、熱媒体は、欠円型邪魔板20cの下面に沿って第1室11内を水平方向(面方向)に流動し、シェル部10の内壁10aと、欠円型邪魔板20cの直線状端部21との間のクリアランスBを通って、第2室12内に導入される。そして、熱媒体は、欠円型邪魔板20cの上面に沿って、第2室12内を第1室11内での流動方向とは逆方向に沿って流動する。
その後、熱媒体は欠円型邪魔板20b,20aにより流動方向が順に折り返され、シェル部10内を蛇行しながら流動することで、第2室12、第3室13、及び第4室14を経由して、熱媒体排出管90から排出される。
【0028】
この場合、シェル部10内を流動する熱媒体のうち、殆どの熱媒体は、上述したようにクリアランスBを通過するが、一部の熱媒体は反応管30と欠円型邪魔板20a,20b,20cの貫通孔23の内周面との間のクリアランスCを通過する。すると、熱媒体に混入された微粒子が、クリアランスC内で充填されていき、最終的にはクリアランスCが微粒子によって閉塞される。
以上により、クリアランスC内に閉塞材31が形成され、本実施形態の反応器1が完成する。
【0029】
各クリアランスC内に閉塞材31が充填された時点で熱媒体への微粒子の混入を停止して、熱媒体のみを流動させる。そして、シェル部10の反応管30の外側に熱媒体のみを流動させた状態で、原料導入部60から原料を導入する。原料導入部60から導入された原料は、反応管30の下端開口部から反応管30内に導入され、反応管30内を軸方向(鉛直方向)に沿って流動する。そして、原料は反応管30内に充填された触媒にて反応した後、反応生成物となって反応管30の上端開口部から反応生成物排出部70から排出される。反応生成物排出部70に排出された反応生成物は、反応生成物排出部70を介して反応器1から次の工程に供給される。
この場合、熱媒体によって反応管30への熱の供給、または反応管30内にて発生した反応熱の除去を行う。なお、閉塞処理工程の時点で原料を導入しても構わない。
【0030】
本実施形態の反応器1は、酸化反応、還元反応、脱水反応、中和反応、置換反応に好ましく用いられ、特に好ましくは、酸化発熱反応に用いられる。そこで、以下の説明では、酸化発熱反応のうち、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際の具体例について説明する。
まず、反応器1を用いたメタクリル酸の製造では、反応管30の内部にメタクリル酸製造用触媒の触媒層をあらかじめ形成しておく。なお触媒層は1層であってもよいし、2層以上であってもよい。
【0031】
触媒層を構成するメタクリル酸製造用触媒としては、組成が下記式(1)で表される複合酸化物が好ましい。
Mo
aP
bCu
cV
dX
eY
fO
g・・・(1)
なお、式(1)中、Mo、P、Cu、VおよびOは、それぞれモリブデン、リン、銅、バナジウムおよび酸素であり、Xは鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、クロム、タングステン、マンガン、銀、ホウ素、ケイ素、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、インジウム、イオウ、セレン、テルル、ランタンおよびセリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Yはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である。a、b、c、d、e、f及びgは、各元素の原子比率を表し、a=12のとき、b=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0.01〜2、e=0〜3、f=0.01〜3であり、gは上述した各元素の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比率である。
また、触媒層には、メタクリル酸製造用触媒の他に他の添加成分が混合されていてもよい。他の添加成分としては、上述した不活性充填材担体が挙げられる。また、触媒前駆体には、水溶性セルロース等の有機物が含まれていてもよい。
【0032】
触媒層形成後、熱媒体導入管80からシェル部10の内部に熱媒体を導入し、欠円型邪魔板20a,20b,20cによって段状に分割された第1室11、第2室12、第3室13、第4室14を流動させ、熱媒体排出管90から排出させる。
それとともに、少なくともメタクロレインと分子状酸素とを含む原料ガスを、原料導入部60を介して反応管30に導入し、触媒層にてメタクロレインと分子状酸素とを反応させることで、メタクリル酸を製造できる。反応によって生じた反応熱は反応管30の外側を流動する熱媒体によって除熱する。
反応管30から流出した反応生成物は、反応生成物排出部70を介して反応器1から次の工程に送られる。
【0033】
原料ガスに含まれるメタクロレインの濃度は適宜選択できるが、1〜20容量%が好ましく、3〜10容量%がより好ましい。
原料ガスは、メタクロレインに空気を混合し、空気に含まれる分子状酸素を利用することが経済的である点で好ましいが、メタクロレインに、純酸素を混合した空気を混合しても構わない。この場合、原料ガス中の酸素量は、メタクロレインに対して0.3〜4倍モルが好ましく、0.4〜2.5倍モルがより好ましい。
また、原料ガスは、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈されていることが好ましい。
【0034】
気相接触酸化における反応圧力は、常圧(0MPaG(ゲージ圧))から数気圧(例えば0.3MPa)の範囲内が好ましい。
反応温度は、230〜450℃が好ましく、250〜400℃がより好ましい。
原料ガスの流量は特に限定されないが、通常、原料ガスをメタクリル製造用触媒との接触時間が1.5〜15秒となる流量が好ましく、該接触時間が2〜5秒となる流量がより好ましい。
【0035】
このように、本実施形態では、反応管30と欠円型邪魔板20a,20b,20cの貫通孔23との間のクリアランスCを、熱媒体の流動に応じて充填される閉塞材31により閉塞する構成とした。
この構成によれば、熱媒体が欠円型邪魔板20a,20b,20cに沿って水平方向に流動するとともに、第1室11から第4室14に至るまでシェル部10内を蛇行しながら流動することになる。そのため、熱媒体の流動状態を制御することが可能になり、シェル部10内の全域に亘って均一に熱媒体を行渡らせることができる。これにより、熱媒体が有する除熱能力を充分に利用できるため、反応器1内における局所的な発熱を抑えることができ、反応器1の内部における温度差を充分に小さくできる。この場合、特にシェル部10の内壁10a付近での局所的な発熱を抑制して、シェル部10内における水平方向での温度差を充分に小さくできる。
したがって、反応器1の暴走反応や、触媒の急速な失活、反応管30及び欠円型邪魔板20a,20b,20cの熱膨張による反応管30の破損等の発生を抑制することが可能になるので、設備コストを低減できる。
【0036】
この場合、上述した特許文献1のように、シェル部10の内部に反応には寄与しない整流棒群を設ける必要はないので、反応器1の内部空間を充分に利用でき、また、特許文献2のように、反応管30と欠円型邪魔板20a,20b,20cとの間のクリアランスCに熱媒体を通過させないので、反応管30の本数と太さは制限されない。その結果、反応器1全域を効率的に反応に活用することができるので、設備効率の低下を抑制して、高収率での目的生産物の取得を達成できる。
【0037】
特に、本実施形態では、微粒子を混入した熱媒体を反応器1内に流動させることで、反応管30と欠円型邪魔板20a、20b,20cとの間の全クリアランスCを簡単に、かつ一括して閉塞できる。これにより、上述した特許文献3のように、反応管30と欠円型邪魔板20a、20b,20cとの間のクリアランスCを、溶接等により1本ずつ閉塞する場合に比べて、低コスト化、及び製造効率の向上を図ることができる。
また、本実施形態によれば、欠円型邪魔板20a,20b,20cを鉛直方向に沿って複数配置することで、反応器1内の全域に熱媒体をより一層効率的に行渡らせることができる。
【0038】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、欠円型邪魔板20a,20b,20cの設置枚数や、各欠円型邪魔板20a,20b,20cの間隔等は、適宜設計変更が可能である。但し、欠円型邪魔板の枚数が偶数である場合、熱媒体排出管90のシェル部10における取り付け位置は、熱媒体導入管80に対して180°の位置とする。
さらに、上述した実施形態では、シェル部や邪魔板を平面視円形状に形成したが、これに限らず、平面視矩形状等、適宜設計変更が可能である。
【0039】
また、上述した実施形態では、熱媒体を下方から上方に向けて流動させる場合について説明したが、これとは逆に、熱媒体を上方から下方に向けて流動させてもよい。また、反応管30の内部での原料ガスの流動方向は上方から下方に向けて流動させてもよい。
また、欠円型邪魔板は、円板の一部が曲線的に切除されたように欠けていてもよいし、円板の一部が楔形に切除されたように欠けていてもよい。
【0040】
また、上述した実施形態では、閉塞処理工程において、微粒子を混入した熱媒体をシェル部10内に流動させることで、クリアランスCを微粒子で充填する場合について説明したが、これに限らず、熱媒体の流動に応じてクリアランスC内に閉塞材31が形成される構成であれば構わない。このような構成について以下に説明する。
【0041】
例えば、まず反応管30及び欠円型邪魔板20a,20b,20cのうち、少なくとも一方と反応することにより、少なくとも一方(以下、反応部材という)に酸化物等のスケール(閉塞材)を形成する処理物質を熱媒体に混入する。そして、反応器1の組み立て後に上述した条件と同様の条件でシェル部10内に、処理物質が混入された熱媒体を流動させる。これにより、熱媒体に混入された処理物質と、反応部材と、が反応(酸化反応)することにより、反応部材の表面にスケールが形成される。これにより、クリアランスC内を閉塞することができる。
なお、処理物質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等を含む水溶液や、水蒸気、アンモニア、塩素などのガスが挙げられる。但し、反応部材と反応し、その反応表面にスケールを形成することにより、クリアランスCを閉塞し、かつ、反応温度において、閉塞状態が保たれれば、処理物質の種類及び処理方法は特に制限されない。
【0042】
また、閉塞処理工程に先立って、反応器1の組み立て前の反応部材に対して、処理物質により表面を暴露処理した後(暴露処理工程)、反応器1を作成し、上述した方法と同様の方法により反応部材の表面にスケールを形成しても構わない。
【実施例】
【0043】
以下、本発明に係る実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
直径6m、高さ6mの反応器1に、直径30mmの反応管30を20,000本有する固定床多管式反応器において、反応器組み立て前の段階において、全反応管30に対して、塩化ナトリウムを35質量%含む水溶液で大気圧下、室温にて、10時間、表面の含浸処理を行った。処理後の反応管30は反応器1の組み立て時までの数日間、大気圧下、室温にて保管した。
このように、暴露処理が施された反応管30を用いて組み立てられた反応器1において、温度280℃の硝酸カリウム、及び亜硝酸ナトリウムを含む塩溶融物を熱媒体として流動させ、定常状態となった時点で、熱媒体流入温度と反応器1内に設置された各熱電対での測定温度の温度差(以後、ΔTと表記)を算出した(表1参照)。なお、熱電対の設置箇所について、鉛直方向は、
図3の記号A−Fにより示され、水平方向は、
図4の番号(1)−(5)により示される。この時、メタクリル酸の収率は78.3%であった。
【0044】
【表1】
【0045】
(比較例)
実施例と同型の反応器を、塩化ナトリウムによるクリアランスCの閉塞処理を行わずに作成した。
この反応器1に、実施例1と同条件で熱媒体を流動させ、定常状態となった時のΔTを表2に示す。この時、メタクリル酸の収率は77.7%であった。
【0046】
【表2】