特許第5900350号(P5900350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5900350導電性接着剤組成物、接続体及び太陽電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900350
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】導電性接着剤組成物、接続体及び太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20160324BHJP
   H01L 31/05 20140101ALI20160324BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20160324BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20160324BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20160324BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160324BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20160324BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   H01L31/04 262
   H01L31/04 570
   C09J201/00
   C09J9/02
   C09J11/04
   C09J11/06
   C09J163/00
   H01B1/22 D
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-554713(P2012-554713)
(86)(22)【出願日】2012年1月11日
(86)【国際出願番号】JP2012050374
(87)【国際公開番号】WO2012102079
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2014年11月25日
(31)【優先権主張番号】特願2011-15630(P2011-15630)
(32)【優先日】2011年1月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】須方 振一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】桃崎 彩
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/125650(WO,A1)
【文献】 特開2001−170797(JP,A)
【文献】 特開2005−243935(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/122863(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
H01L 31/0224,31/042,31/05
H01B 1/20− 1/24
B23K 35/00− 36/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルと配線部材との電気的な接続及び接着に用いられる導電性接着剤組成物であって、
(A)融点が220℃以下である金属を含む導電性粒子、(B)熱硬化性樹脂、(C)フラックス活性剤及び(D)硬化触媒を含み、
前記(B)熱硬化性樹脂と前記(D)硬化触媒との反応開始温度が130℃〜200℃であり、
前記電気的な接続及び接着は、前記太陽電池セルの封止と一括して行われる、導電性接着剤組成物。
【請求項2】
前記(A)導電性粒子における金属が、ビスマス、インジウム、スズ及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含有する、請求項1に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項3】
前記(B)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含有する、請求項1又は2に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項4】
前記(C)フラックス活性剤が、分子内に水酸基及びカルボキシル基を有する化合物を含有する、請求項13のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項5】
複数の太陽電池セルが配線部材を介して接続される接続体であって、
該太陽電池セルの電極と配線部材とが、請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物を介在して接続されている接続体。
【請求項6】
太陽電池セルの電極に請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物を塗布する工程と、
前記導電性接着剤組成物を塗布した電極と配線部材とを相対向するように配置する工程と、
前記太陽電池セルの受光面上に封止部材及び透光部材をこの順に積層する工程と、
前記太陽電池セルの受光面とは反対側の面上に封止部材及び保護部材をこの順に積層する工程と、
得られた積層体を加熱することにより前記太陽電池セルと配線部材との電気的な接続、接着及び前記太陽電池セルの封止を一括して行う工程と、
を備える太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物を介して、複数の太陽電池セルの電極と配線部材とが電気的に接続された太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着剤組成物、並びにこれを用いた接続体及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
深刻化する地球温暖化や化石エネルギー枯渇問題を解決する手段として、太陽光を用いた発電システムである太陽電池が注目されている。現在主流の太陽電池は、単結晶又は多結晶のSiウエハ上に電極が形成された太陽電池セルを、配線部材を介して直列又は並列に接続した構造が採用されている。
【0003】
太陽電池セルの電極と配線部材との接続には、導電性接着剤組成物の使用が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の導電性接着剤組成物は、熱硬化性樹脂中に銀粒子に代表される金属粒子が混合、分散された組成物であり、主として金属粒子が太陽電池セルの電極及び配線部材と物理的に接触することで電気的な接続が発現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−243935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等の導電性接着剤組成物を太陽電池セルの電極と配線部材との接続に用いた場合には、高温高湿雰囲気下に曝露すると接続特性が低下してしまう傾向にある。
【0006】
そこで本発明は、太陽電池セルの電極と配線部材との接続に用いられた場合に、良好な導電性を有し、かつ高温高湿試験(85℃/85%)後もその導電性の低下が充分に抑制され、良好な接続特性を与える導電性接着剤組成物を提供することを目的とする。
【0007】
さらに本発明は、上記導電性接着剤組成物を用いた接続体及び太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)融点が220℃以下の金属を含む導電性粒子(以下、単に「(A)導電性粒子」ともいう)、(B)熱硬化性樹脂、(C)フラックス活性剤及び(D)硬化触媒を含む導電性接着剤組成物であって、(B)熱硬化性樹脂と(D)硬化触媒との反応開始温度が130℃〜200℃である導電性接着剤組成物を提供する。かかる導電性接着剤組成物によれば、上記構成を有することにより、太陽電池セルの電極と配線部材との接続に用いられた場合に、良好な導電性を有し、かつ高温高湿試験(85℃/85%)後もその導電性の低下が充分に抑制される。
【0009】
なお、本明細書中、「融点」とは、例えば示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry(DSC))により測定されるものをいう。さらに、本明細書中、「高温高湿試験(85℃/85%)」とは、被験物を、85℃、85%RHの高温高湿雰囲気下で1500時間曝露する試験をいい、「%RH」は相対湿度を表わす。
【0010】
(A)導電性粒子における金属は、ビスマス、インジウム、スズ及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含有することが好ましい。これにより、良好な導通性を維持しながら、導電性粒子の融点を低くすることができる。
【0011】
(B)熱硬化性樹脂は、接続安定性に優れる点から、エポキシ樹脂を含有することが好ましい。
【0012】
(C)フラックス活性剤は、水酸基及びカルボキシル基を有する化合物を含有することが好ましい。
【0013】
上記導電性接着剤組成物は、太陽電池セルの電極と配線部材とを電気的に接続するために好適に用いることができる。
【0014】
本発明はまた、複数の太陽電池セルが配線部材を介して接続される接続体であって、該太陽電池セルの電極と配線部材とが、上記導電性接着剤組成物を介して接続されている接続体を提供する。
【0015】
本発明はまた、太陽電池セルの電極に上記導電性接着剤組成物を塗布する工程と、上記導電性接着剤組成物を塗布した電極と配線部材とを相対向するように配置する工程と、太陽電池セルの受光面上に封止部材及び透光部材をこの順に積層する工程と、太陽電池セルの受光面とは反対側の面上に封止部材及び保護部材をこの順に積層する工程と、得られた積層体を加熱することにより太陽電池セルと配線部材とを電気的に接続するとともに接着しながら、太陽電池セルを封止する工程とを備える太陽電池モジュールの製造方法を提供する。
【0016】
本発明はさらに、上記導電性接着剤組成物を介して、複数の太陽電池セルの電極と配線部材とが電気的に接続された太陽電池モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、太陽電池セルの電極と配線部材との接続に用いられた場合に、良好な導電性を有し、かつ高温高湿試験(85℃/85%)後もその導電性の低下が充分に抑制される導電性接着剤組成物を提供することができる。また、本発明の導電性接着剤組成物を用いることにより、太陽電池セルと配線部材との接続、接着及び太陽電池セルの封止を一括で行うことがより容易となり、これまでの太陽電池モジュールの製造工程と比較して工程短縮及び生産性の向上による低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(B)熱硬化性樹脂と(D)硬化触媒との反応開始温度を示すためのDSCチャートの模式図である。
図2】本発明に係る太陽電池モジュールの要部を示す模式図である。
図3】本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法の一実施形態を説明するための図である。
図4】太陽電池モジュールの表面電極と配線部材との間の導電性接着剤組成物中の金属の融合状態を、X線透過装置を用いて観察した像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
本発明の導電性接着剤組成物は、(A)導電性粒子、(B)熱硬化性樹脂、(C)フラックス活性剤及び(D)硬化触媒を含む。
【0021】
(A)導電性粒子としては、融点が220℃以下である金属を含有するもの、好ましくは融点が180℃以下である金属を含有するもの、より好ましくは融点が150℃以下である金属を含有するものを使用することができる。(A)導電性粒子における金属の融点の下限は、特に限定されないが、100℃程度である。このような導電性粒子を導電性接着剤組成物に用いると、比較的低い温度で溶融して融合、すなわち、溶融した複数の(A)導電性粒子が集合して一体化し、この一体となった融合体が、直接対象物を電気的に接続するものと考えられる。
【0022】
(A)導電性粒子における金属は、環境への優しさを考慮して、鉛以外の金属から構成されることが好ましい。このような金属としては、例えば、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)等から選ばれる少なくとも1種の成分を含有する単体又は合金が挙げられる。なお、当該合金は、より良好な接続信頼性を得ることができる点から、(A)導電性粒子における金属全体としての融点が220℃以下となる範囲で、プラチナ(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)等から選ばれる高融点の成分を含有することもできる。
【0023】
(A)導電性粒子を構成する金属としては、具体的には、Sn42−Bi58はんだ(融点138℃)、Sn48−In52はんだ(融点117℃)、Sn42−Bi57−Ag1はんだ(融点139℃)、Sn90−Ag2−Cu0.5−Bi7.5はんだ(融点189℃)、Sn96−Zn8−Bi3はんだ(融点190℃)、Sn91−Zn9はんだ(融点197℃)等が、明確な融解後の固化挙動を示すため好ましい。固化挙動とは、金属が溶融後に冷えて固まることをいう。これらの中でも入手容易性や低融点である観点からSn42−Bi58はんだを用いることが好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0024】
(A)導電性粒子の平均粒子径は、特に制限はないが、0.1〜100μmであると好ましい。この平均粒子径が0.1μm未満であると、導電性接着剤組成物の粘度が高くなり作業性が低下する傾向にある。また、導電性粒子の平均粒子径が100μmを超えると、印刷性が低下するとともに接続信頼性が低下する傾向にある。導電性接着剤組成物の印刷性及び作業性をさらに良好にする観点から、この平均粒子径は1〜50μmであるとより好ましい。特に、導電性接着剤組成物の保存安定性並びに硬化物の実装信頼性をより向上させる観点から、この平均粒子径は5〜30μmであるとさらに好ましい。ここで、平均粒子径はレーザー回折、散乱法(神岡鉱業試験法No.2)によって求められた値である。
【0025】
(A)導電性粒子は、融点が220℃以下である金属のみで構成されるものの他、セラミックス、シリカ、樹脂材料等の金属以外の固体材料からなる粒子の表面を、融点が220℃以下である金属からなる金属膜で被覆した導電性粒子であってもよく、それらの混合物であってもよい。このような導電性粒子としては、例えば樹脂コアはんだボールが挙げられる。
【0026】
導電性接着剤組成物における(A)導電性粒子の含有量は、導電性接着剤組成物の全量に対して5〜95質量%であることが好ましい。5質量%未満の場合は、導電性接着剤組成物の硬化物の導電性が低下する傾向にある。95質量%を超えると、導電性接着剤組成物の粘度が高くなり作業性が低下する傾向にあり、また、相対的に導電性接着剤組成物中の接着剤成分が少なくなるため、硬化物の実装信頼性が低下する傾向にある。
【0027】
(A)導電性粒子の含有量は、作業性又は導電性を向上させる観点から、導電性接着剤組成物の全量に対して10〜90質量%であることがより好ましく、硬化物の実装信頼性を高める観点から、15〜85質量%であることがさらに好ましく、50〜85質量%であることが特に好ましい。
【0028】
なお、(A)導電性粒子とともに、(a1)融点が220℃より高い金属からなる導電性粒子を併用してもよい。このような融点が220℃より高い金属としては、例えば、Pt、Au、Ag、Cu、Ni、Pd、Al等から選ばれる少なくとも1種の成分を含有する単体又は合金が挙げられ、より具体的にはAu粉、Ag粉、Cu粉、AgめっきCu粉等が挙げられる。市販品としては、鍍銀銅粉である「MA05K」(日立化成工業(株)製、商品名)が入手可能である。
【0029】
(A)導電性粒子とともに、(a1)融点が220℃より高い金属からなる導電性粒子を併用する場合、その配合比率は、(A):(a1)が重量比で99:1〜50:50の範囲内であることが好ましく、99:1〜60:40の範囲内であることがより好ましい。
【0030】
(B)熱硬化性樹脂は、被着体を接着する作用を有するとともに、被着体にかかる応力を緩和する作用を有する。被着体とは特に限定されるものではないが、例えば太陽電池モジュールにおいては配線部材及び電極を表す。このような熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、マレイミド樹脂及びシアネート樹脂等の熱硬化性の有機高分子化合物、及びそれらの前駆体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル樹脂とは、メタクリル樹脂及びアクリル樹脂を示す。これらの中では、(メタ)アクリル樹脂及びマレイミド樹脂に代表される、重合可能な炭素−炭素二重結合を有する化合物、又はエポキシ樹脂が好ましい。これらの熱硬化性樹脂は、耐熱性及び接着性に優れ、しかも必要に応じて有機溶剤中に溶解又は分散させれば液体の状態で取り扱うこともできるため、作業性にも優れている。また、温度サイクル試験(TCT)における信頼性と入手容易性の観点からエポキシ樹脂を用いることがより好ましい。上述の熱硬化性樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0031】
エポキシ樹脂としては、その1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に制限なく公知の化合物を使用することができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等とエピクロクヒドリドンとから誘導されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0032】
かかるエポキシ樹脂は市販のものを入手することができる。その具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるAER−X8501(旭化成工業(株)製、商品名)、R−301(三菱化学(株)製、商品名)、YL−980(三菱化学(株)製、商品名)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂であるYDF−170(東都化成(株)製、商品名)、YL−983(三菱化学(株)製、商品名)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂であるR−1710(三井石油化学工業(株)製、商品名)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂であるN−730S(大日本インキ化学工業(株)製、商品名)、Quatrex−2010(ダウ・ケミカル(株)製、商品名)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であるYDCN−702S(東都化成(株)製、商品名)、EOCN−100(日本化薬(株)製、商品名)、多官能エポキシ樹脂であるEPPN−501(日本化薬社製、商品名)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル(株)製、商品名)、VG−3010(三井石油化学工業(株)製、商品名)、1032S(三菱化学(株)製、商品名)、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂であるHP−4032(大日本インキ化学工業(株)製、商品名)、脂環式エポキシ樹脂であるEHPE−3150、CEL−3000(共にダイセル化学工業社製、商品名)、DME−100(新日本理化(株)製、商品名)、EX−216L(ナガセ化成工業(株)製、商品名)、脂肪族エポキシ樹脂であるW−100(新日本理化(株)製、商品名)、アミン型エポキシ樹脂であるELM−100(住友化学工業(株)製、商品名)、YH−434L(東都化成(株)製、商品名)、TETRAD−X、TETRAD−C(共に三菱瓦斯化学(株)製、商品名)、630、630LSD(共に三菱化学(株)製、商品名)、レゾルシン型エポキシ樹脂であるデナコールEX−201(ナガセ化成工業(株)製、商品名)、ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂であるデナコールEX−211(ナガセ化成工業(株)製、商品名)、ヘキサンディネルグリコール型エポキシ樹脂であるデナコールEX−212(ナガセ化成工業(株)製、商品名)、エチレン・プロピレングリコール型エポキシ樹脂であるデナコールEXシリーズ(EX−810、811、850、851、821、830、832、841、861(いずれもナガセ化成工業(株)製、商品名))、下記一般式(I)で表されるエポキシ樹脂E−XL−24、E−XL−3L(共に三井化学(株)製、商品名)が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の中でも、イオン性不純物が少なく、かつ反応性に優れるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0033】
【化1】
ここで、式(I)中、kは1〜5の整数を示す。
【0034】
上述のエポキシ樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0035】
(B)熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有する場合、反応性希釈剤として、1分子中に1個のみエポキシ基を有するエポキシ化合物をさらに含有してもよい。そのようなエポキシ化合物は市販品として入手可能であり、その具体例としては、例えばPGE(日本化薬(株)製、商品名)、PP−101(東都化成(株)製、商品名)、ED−502、ED−509、ED−509S(旭電化工業(株)製、商品名)、YED−122(油化シェルエポキシ(株)製、商品名)、KBM−403(信越化学工業(株)製、商品名)、TSL−8350、TSL−8355、TSL−9905(東芝シリコーン(株)製、商品名)が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0036】
反応性希釈剤を導電性接着剤組成物に配合する場合、配合割合は、本発明による効果を阻害しない範囲であればよく、上記エポキシ樹脂の全量に対して0.1〜30質量%であることが好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル樹脂は、重合可能な炭素−炭素二重結合を有する化合物から構成される。かかる化合物としては、例えば、モノアクリレート化合物、モノメタクリレート化合物、ジアクリレート化合物、及びジメタクリレート化合物が挙げられる。
【0038】
モノアクリレート化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、γ−アクリロキシエチルトリメトキシシラン、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、アクリロキシエチルホスフェート及びアクリロキシエチルフェニルアシッドホスフェートが挙げられる。
【0039】
モノメタクリレート化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−シアノエチルメタクリレート、γ−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、メタクリロキシエチルホスフェート及びメタクリロキシエチルフェニルアシッドホスフェートが挙げられる。
【0040】
ジアクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルアクリレート2モルの反応物、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビス(アクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン及びビス(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0041】
ジメタクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルメタクリレート2モルの反応物、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジメタクリレート、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物、ビス(メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン及びビス(メタクリロキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0042】
これらの化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、熱硬化性樹脂として(メタ)アクリル樹脂を含有するとき、これらの化合物をあらかじめ重合してから用いても良く、また、これらの化合物を(A)導電性粒子、(C)フラックス活性剤等とともに混合し、混合と同時に重合を行っても良い。これらの分子中に重合可能な炭素−炭素二重結合を有する化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。前記化合物をあらかじめ重合した(メタ)アクリル樹脂を用いる場合、熱硬化の観点から、(メタ)アクリル樹脂の側鎖にエポキシ基又は炭素−炭素二重結合を有する基を含むことが好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル樹脂としては市販のものを用いることができる。その具体例としては、側鎖にエポキシ基を有する(メタ)アクリル樹脂である、FINEDIC A−261(大日本インキ化学工業(株)製、商品名)、FINEDIC A−229−30(大日本インキ化学工業(株)製、商品名)が挙げられる。
【0044】
導電性接着剤組成物における(B)熱硬化性樹脂の含有量は、導電性接着剤組成物の総量に対して、1〜60質量%であると好ましく、5〜40質量%であるとより好ましく、10〜30質量%であるとさらに好ましい。
【0045】
(C)フラックス活性剤は、(A)導電性粒子の表面に形成された酸化膜除去能を示すものである。このようなフラックス活性剤を用いることにより、(A)導電性粒子の溶融及び融合の妨げとなる酸化膜が除去される。(C)フラックス活性剤は(B)熱硬化性樹脂の硬化反応を阻害しない化合物であれば特に制限なく公知の化合物を使用することができる。
【0046】
(C)フラックス活性剤としては、例えば、ロジン系樹脂、分子内にカルボキシル基、フェノール性水酸基又はアルコール性水酸基を含有する化合物、2,4−ジエチルグルタル酸、2,2−ジエチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2−エチル−3−プロピルグルタル酸、2,5−ジエチルアジピン酸等の側鎖にアルキル基を有する二塩基酸が挙げられる。これらの中で、良好なフラックス活性を示し、かつ(B)熱硬化性樹脂として用いることのできるエポキシ樹脂と良好な反応性を示すことから、分子内に水酸基とカルボキシル基を含有する化合物が好ましく、脂肪族ジヒドロキシカルボン酸が特に好ましい。具体的には、下記一般式(V)で表される化合物又は酒石酸が好ましい。
【0047】
【化2】
ここで、式(V)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基を示し、一般式(V)で表される化合物を用いることによる効果をより有効に発揮する観点から、メチル基、エチル基又はプロピル基であると好ましい。また、n及びmはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、一般式(V)で表される化合物を用いることによる効果をより有効に発揮する観点から、nが0かつmが1であるか、n及びmの両方が1であると好ましい。
【0048】
上記一般式(V)で表される化合物としては、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ペンタン酸等が挙げられる。
【0049】
(C)フラックス活性剤の含有量は、本発明による上記効果をより有効に発揮する観点から、(A)導電性粒子の全量100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが好ましく、0.5〜15質量部であることがより好ましい。さらに、保存安定性、導電性の観点から、1〜10質量部であることがより好ましい。上記フラックス活性剤の含有量が0.5質量部未満の場合、(A)導電性粒子における金属の溶融性が低下し導電性が低下する傾向があり、20質量部を超えた場合、保存安定性、印刷性が低下する傾向がある。
【0050】
(D)硬化触媒は(B)熱硬化性樹脂の硬化を促進する効果を有する。(B)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、(D)硬化触媒としては、所望の硬化温度における硬化性、可使時間の長さ、硬化物の耐熱性等の観点からイミダゾール系化合物が好ましい。市販品としては、イミダゾール系化合物である、2P4MHZ―PW(2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール)、2PHZ−PW(2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール)、C11Z−CN(1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール)、2E4MZ−CN(1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール)、2PZ―CN(1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)、2MZ―A(2,4−ジアミノ−6−[2’メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン)、2E4MZ−A(2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン)、2MAOK―PW(2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物)(いずれも四国化成(株)製、商品名)等が挙げられる。これらの硬化触媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0051】
(B)熱硬化性樹脂が(メタ)アクリル樹脂の場合、(D)硬化触媒としてはラジカル重合開始剤が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、ボイドを有効に抑制する観点等から、有機過酸化物が好適である。また、接着剤成分の硬化性及び粘度安定性を向上させる観点から、有機過酸化物はその分解温度が130℃〜200℃であることが好ましい。
【0052】
ラジカル重合開始剤としては、通常用いられているものを使用でき、その一例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0053】
(D)硬化触媒は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01〜90質量部であると好ましく、0.1〜50質量部であるとより好ましい。この(D)硬化触媒の含有量が0.01質量部未満であると硬化性が低下する傾向があり、90質量部を超えると粘度が増大し、導電性接着剤組成物を取り扱う際の作業性が低下する傾向がある。
【0054】
(B)熱硬化性樹脂と(D)硬化触媒との反応開始温度は130〜200℃である。(B)熱硬化性樹脂と(D)硬化触媒との反応開始温度は、溶剤を用いず(B)熱硬化性樹脂と(D)硬化触媒とを導電性接着剤組成物における配合比と同じ配合比で配合し、DSC測定によって昇温したときの硬化発熱反応が始まる温度を指す。DSC用密閉容器を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で30〜250℃まで昇温測定した場合、図1に示すようなDSCチャートが得られる。得られたDSCチャートから発熱ピークの立ち上がり温度(DSC オンセット(Onset)温度)を求め、これを反応開始温度とする。ここでは、DSCチャートの発熱ピークが立ち上がる点(P1)を通る基線(L1)の延長線と、発熱ピークが立ち上がる点(P1)から発熱ピーク点(P2)との間のDSC曲線の変曲点に対する接線(L2)との交点に相当する温度をオンセット温度とする。
【0055】
また、(B)熱硬化性樹脂と(D)硬化触媒との反応開始温度は130℃〜200℃であり、140℃〜190℃であるとより好ましく、140〜180℃であるとさらに好ましい。この反応開始温度が130℃未満であると(A)導電性粒子の溶融及び融合を妨げる傾向がある。特に太陽電池モジュール製造の際の加熱工程における設定温度までの到達時間が遅い場合、反応開始温度が130℃未満であると、(A)導電性粒子の金属の溶融及び融合が起こる前に熱硬化性樹脂の硬化が進行してしまうため、導電性粒子の溶融及び融合を妨げる。一方、反応開始温度が200℃を超えると加熱時の熱硬化性樹脂の硬化性が低下し、熱硬化性樹脂が完全に硬化するまでの時間が著しく増加する。熱硬化性樹脂が完全に硬化しない場合、被着体との接着強度が低下する問題が生じる可能性がある。
【0056】
導電性接着剤組成物は、上述の各成分の他、必要に応じて、応力緩和のための可撓剤、作業性向上のための希釈剤、接着力向上剤、濡れ性向上剤及び消泡剤からなる群より選ばれる1種以上の添加剤を含んでもよい。また、これらの成分の他、本発明による効果を阻害しない範囲において各種添加剤を含んでいてもよい。
【0057】
導電性接着剤組成物は、接着力向上の目的で、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等のカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、信越化学社製、商品名「KBM−573」等が挙げられる。また、濡れ性向上の目的で、アニオン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤等を導電性接着剤組成物に含有させてもよい。さらに、導電性接着剤組成物は、消泡剤としてシリコーン油等を含有してもよい。上記の添加剤は、それぞれ1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらを含有する場合、導電性接着剤組成物の全体量に対して、0.1〜10質量%含まれることが好ましい。
【0058】
例えば、可撓剤としては、液状ポリブタジエン(宇部興産(株)製、商品名「CTBN−1300×31」、「CTBN−1300×9」、日本曹達(株)製、商品名「NISSO−PB−C−2000」)が挙げられる。可撓剤を含有する場合、その含有量は、(B)熱硬化性樹脂の総量100質量部に対して、0.1〜500質量部であると好適である。
【0059】
また、導電性接着剤組成物には、ペースト組成物の作製時の作業性及び使用時の塗布作業性をより良好にするため、必要に応じて有機溶媒を添加することができる。このような有機溶媒としては、ブチルセロソルブ、カルビトール、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸カルビトール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、α−テルピネオール等の比較的沸点の高い有機溶媒が好ましい。これらの有機溶媒を含有する場合、導電性接着剤組成物の全体量に対して0.1〜30質量%含まれることが好ましい。
【0060】
導電性接着剤組成物は、フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、例えば、アクリルゴム、ポリスチレン等のポリマー粒子、ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、シリカ等の無機粒子が挙げられる。これらのフィラーは1種を単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
本実施形態の導電性接着剤組成物は、(B)熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合、硬化剤をさらに含有してもよいが、保存安定性及び硬化時間の観点から実質的には、含有しないことが好ましい。実質的とは、導電性接着剤組成物の全量に対して0.5質量%以下であることをいう。
【0062】
硬化剤とは、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応する官能基を有する化合物であり、例えば、フェノールノボラック樹脂であるH−1(明和化成(株)製、商品名)、VR−9300(三井東圧化学(株)製、商品名)、フェノールアラルキル樹脂であるXL−225(三井東圧化学(株)製、商品名)、下記一般式(II)で表されるp−クレゾールノボラック樹脂であるMTPC(本州化学工業(株)製、商品名)、アリル化フェノールノボラック樹脂であるAL−VR−9300(三井東圧化学(株)製、商品名)、下記一般式(III)で表される特殊フェノール樹脂であるPP−700−300(日本石油化学(株)製、商品名)、下記一般式(IV)で表される二塩基酸ジヒドラジドであるADH、PDH、SDH(いずれも日本ヒドラジン(株)製、商品名)、エポキシ樹脂とアミン化合物との反応物からなるマイクロカプセル型硬化剤であるノバキュア(旭化成工業(株)製、商品名)が挙げられる。
【0063】
【化3】
式(II)中、Rは、それぞれ独立に1価の炭化水素基、好ましくはメチル基又はアリル基を示し、qは1〜5の整数を示す。
【0064】
【化4】
式(III)中、Rはアルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基を示し、Rは水素原子又は1価の炭化水素基を示し、pは2〜4の整数を示す。
【0065】
【化5】
式(IV)中、Rは2価の芳香族基又は炭素数1〜12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基、好ましくはm−フェニレン基又はp−フェニレン基を示す。
【0066】
本実施形態の導電性接着剤組成物において、上記効果をより有効に発揮する観点から、(A)導電性粒子に対する(A)導電性粒子以外の成分(以下、「接着剤成分」という)の配合比率(接着剤成分/導電性粒子)は、導電性接着剤組成物中の固形分比(質量比)で、5/95〜50/50であることが好ましい。さらに、接着性、導電性及び作業性の観点から、上記配合比は10/90〜30/70であることがより好ましい。この配合比率が5/95未満であると、接着剤組成物の粘度が高くなり作業性が確保し難くなり、又は、接着力が低下する傾向にある。この配合比率が50/50を下回ると、導電性が低下する傾向にある。
【0067】
本実施形態において、上述の各成分は、それぞれにおいて例示されたもののいずれを組み合わせてもよい。
【0068】
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、上述の各成分を一度に又は複数回に分けて、必要に応じて加熱するとともに、混合、溶解、解粒混練又は分散することにより各成分が均一に分散したペースト状のものとして得られる。この際に用いられる分散・溶解装置としては、公知の撹拌器、らいかい器、3本ロール、プラネタリーミキサー等が挙げられる。
【0069】
以上説明した本実施形態の導電性接着剤組成物によると、良好な導電性を有し、かつ高温高湿試験(85℃/85%)後も所定の接着力と導電性を両立することが可能となる。さらに、本実施形態の導電性接着剤組成物は、太陽電池セルの電極と配線部材とを電気的に接続するために用いられ、加熱工程時の温度上昇速度に関わらず、良好な接続特性を与えることができる。
【0070】
次に、上記本実施形態の導電性接着剤組成物を用いて製造される太陽電池モジュールの一例を、図2を用いて説明する。
【0071】
図2は、太陽電池モジュールの要部を示す模式図であり、複数の太陽電池セルが相互に配線接続された構造の概略を示している。図2(a)は太陽電池セルの表面側を示し、図2(b)は裏面(受光面とは反対側の面)側を示し、図2(c)は側面側を示す。
【0072】
図2(a)〜(c)に示すように、太陽電池モジュール100は、半導体ウエハ6の表面側にグリッド電極7及びバス電極(表面電極)3aが、裏面側に裏面電極8及びバス電極(表面電極)3bがそれぞれ形成された太陽電池セル20が、配線部材4によって複数相互に接続されている。配線部材4は、その一端が太陽電池セル表面のバス電極3aと他端がバス電極3bと、それぞれ上記本実施形態の導電性接着剤組成物10を介して直列に接続されている。
【0073】
図3は、本実施形態の太陽電池モジュールの製造方法の一実施形態を説明するための図である。
【0074】
本実施形態の太陽電池モジュールは、例えば、導電性接着剤組成物10を介して、配線部材4とバス電極3a及び3bとを相対向するように配置し、接続体30を作製する工程と、接続体30の両面に封止部材2を積層する工程と、太陽電池セル20の受光面側の封止部材2上に透光部材1、太陽電池セル20の裏面の封止部材2上にバックシート5(保護フィルム)を積層する工程と、得られた積層体を140〜220℃の温度(好ましくは、(A)導電性粒子における金属の融点以上の温度)で1〜30分間、0.1〜0.3MPaの圧力で加熱圧着する工程とを含む製造方法により製造される。また、その際、設定温度までの到達時間は例えば、封止部材の耐熱性の観点から140℃到達時間が1〜12分であることが好ましい。この加熱圧着の工程で、太陽電池セル20のバス電極3a及び3bと配線部材4間の電気的な接続及び熱硬化性樹脂の硬化による接着が行われると同時に、太陽電池セル20の封止が行われ、太陽電池モジュールを一括で製造することができる。
【0075】
導電性接着剤組成物10をバス電極3a又は3bと配線部材4との間に介在させる方法としては、例えばバス電極3a及び3b又は配線部材4上に導電性接着剤組成物10をディスペンス法、スクリーン印刷法、スタンピング法等によって塗布する方法が挙げられる。その後、導電性接着剤組成物10を介して、配線部材4とバス電極3a及び3bとを相対向するように配置することで接続体30を得ることができる。
【0076】
これらの製造方法の他、導電性接着剤組成物10を介して、配線部材4と太陽電池セル20のバス電極3a及び3bとを相対向するように配置した後、140〜210℃の温度(好ましくは、(A)導電粒子の融点以上の温度)で1〜30分間、0.1〜6.0MPaの圧力で、加熱圧着することで、太陽電池セル20のバス電極3a及び3bと配線部材4との電気的な接続を行う、仮圧着を行っても良い。仮圧着を行うことで、太陽電池セル20と配線部材4の接続が行われるため、接続体30が取り扱いやすくなり、太陽電池モジュール製造時の作業性が向上する。
【0077】
仮圧着を行った場合、得られた接続体30の両面に封止部材2を配置し、太陽電池セル20の受光面側の封止部材2上に透光部材1を、太陽電池セル20の裏面の封止部材2上にバックシート5(保護フィルム)を配置し、得られた積層体を140〜180℃の温度で1〜30分間、0.1〜6MPaの圧力で加熱圧着して太陽電池セル20を封止することで、太陽電池モジュールを製造することができる。
【0078】
透光部材1としては、ガラス板を用いることができる。ガラス板としては、例えば、太陽電池用ディンプル付き白板強化ガラス等が挙げられる。封止部材2としては、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)やポリビニルブチラールを用いた封止樹脂が挙げられる。配線部材4としては、例えばCu線に半田をディップ又はめっきしたTAB線が挙げられる。バックシート5としては、PET系又はテドラ−PET積層材料、金属箔−PET積層材料等が挙げられる。
【0079】
本実施形態の導電性接着剤組成物は、プラスチック基板上に金属配線を形成したフィルム状配線基板を使用する場合にも、上述の工程で太陽電池セルの電極との接続を行うことができる。
【0080】
また、本実施形態の導電性接着剤組成物は裏面電極型(バックコンタクト型)太陽電池セルの電極と配線部材との接続にも用いることができる。この場合、まず、配線基板の電極上又は太陽電池セルの裏面電極上に本実施形態の導電性接着剤組成物を塗布する。次いで、配線基板上に配線基板の電極部(導電性接着剤組成物塗布部)をくりぬいた封止部材を積層し、その上に太陽電池セルを、太陽電池セルの裏面電極と配線基板の電極部とが導電性接着剤組成物を介して接するように配置する。さらにその太陽電池セルの受光面上に封止部材と透光部材を太陽電池セルの裏面側にバックシートを配置し、この太陽電池モジュールを加熱圧着することで、太陽電池セルの裏面電極と配線基板の電極との接続及び、接着と、太陽電池セルの封止工程を一括で行うことができる。透光部材及び封止部材としては、上述の太陽電池モジュールの製造方法で挙げたものを用いることができる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた材料は、下記の方法で作製したもの、あるいは入手したものである。
【0082】
[実施例1]
YL980(三菱化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の商品名)25.2質量部と、2PHZ−PW(四国化成(株)製、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールの商品名)1.3質量部と、BHPA(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸)3.5質量部とを混合し、3本ロールを3回通して接着剤成分を調製した。
【0083】
次に、上述の接着剤成分30質量部に対して、導電性粒子であるSn42−Bi58粒子(平均粒子径20μm、三井金属(株)製、融点:138℃)70質量部を加え、プラネタリーミキサーを用いて撹拌を行い、500Pa以下で10分間脱泡処理を行うことにより導電性接着剤組成物を得た。
【0084】
[実施例2〜6、比較例1〜5]
上述したように、表1及び表2に示す組成とした以外は実施例1と同様にして、実施例2〜6及び比較例1〜5の導電性接着剤組成物を得た。また、表1及び表2中の各材料の配合割合の単位は質量部である。
YDF−170:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、東都化成(株)製
Sn42−Bi57−Ag1はんだ:三井金属(株)製、融点139℃
Sn96.5−Ag3−Cu0.5はんだ:三井金属(株)製、融点217℃
Sn99.3−Cu0.7はんだ:227℃
2PZ−CN:1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、四国化成(株)製
2MAOK−PW:2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、四国化成(株)製
C11Z−CN:1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、四国化成(株)製
2P4MHZ−PW:2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、四国化成(株)製
2MZ−H:2−メチルイミダゾール、四国化成(株)製
2PZ:2−フェニルイミダゾール、四国化成(株)製
2P4MZ:2−フェニル−4−メチルイミダゾール、四国化成(株)製
【0085】
実施例1〜6及び比較例1〜5に係る熱硬化性樹脂と硬化触媒の反応開始温度を下記の方法で測定し、その結果を表1及び表2に示した。
【0086】
[反応開始温度測定]
実施例1〜6及び比較例1〜5に係る熱硬化性樹脂を25.2質量部と、硬化触媒を1.3質量部とを混合し、3本ロールを3回通して反応開始温度測定用組成物を調製した。得られた反応開始温度測定用組成物を示差走査熱量計(DSC)のサンプル容器に2.0mg秤量し、DSC測定により硬化発熱挙動を図示し、反応開始温度を求めた。DSC測定にはPERKIN ELMER社製DSC(Pyris1 DSC)を用い、密閉容器、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で30〜250℃まで昇温測定した。得られたDSCチャートから硬化発熱ピークの立ち上がり温度(DSCオンセット)を求め、これを反応開始温度とした。
【0087】
上記実施例1〜6、比較例1〜5に係る導電性接着剤組成物の特性を下記の方法で測定した。その結果を表1及び2に示す。
【0088】
得られた導電性接着剤組成物を、太陽電池セル(125mm×125mm、厚さ210μm)の受光面上に形成された表面電極(材質:銀ガラスペースト、2mm×125mm)上にメタルマスク(厚み100μm、開口寸法1.2mm×125mm)を用いて印刷し、印刷された導電性接着剤組成物上に、配線部材としてはんだ被覆タブ線(日立電線社製、商品名:A-TPS)を配置した。同様の処理を太陽電池セル裏面の電極について行い、はんだ被覆タブ線を配置した。その後、太陽電池セル裏面には封止樹脂(三井化学ファブロ(株)製、商品名:ソーラーエバSC50B)、保護フィルム((株)コバヤシ製、商品名:コバテックPV)、太陽電池セル表面の受光面には封止樹脂(三井化学ファブロ(株)製、ソーラーエバSC50B)、ガラス(200×200×3mm)を積層した。得られた積層体を、真空ラミネータ((株)エヌ・ピー・シー製、商品名:LM−50×50−S)の熱板側にガラスが接するように搭載して5分間0.1MPaの減圧下に置いた後、真空ラミネータの真空を解放した状態で、140℃で10分間加熱して太陽電池モジュールを作製した。この際、140℃に到達するまでの時間は8分であった。
【0089】
[金属融合状態評価]
上記の工程で得られた太陽電池モジュールの表面電極と配線部材との間の導電性接着剤組成物中の金属の融合状態をX線透過装置(島津製作所製 マクロフォーカスX線透視装置 SMX−1000)で観察した。導電性粒子が融合しているものをA、一部未融合粒子があるものをB、導電性粒子が融合していないものをCとして評価した。その結果を表1、2に示す。
図4は、評価結果がそれぞれA,B,CであるものについてのX線透過装置像を示す図である。導電性粒子が融合していないもの(非融合)については、図4のCに示すようにX線透過装置像で黒い粒状の金属粒子が観測される。また、導電性粒子が融合しているものは、図4のAに示すように、非融合の時に見られた黒い粒状の金属粒子が観測されず、導電性粒子が溶融してできたバルク状の金属融合体が一面の黒い影となって見られる。
【0090】
[高温高湿試験]
得られた太陽電池モジュールのIV曲線を、ソーラシミュレータ(ワコム電創社製、商品名:WXS−155S−10、AM:1.5G)を用いて測定した。また、太陽電池モジュールを85℃、85%RHの高温高湿雰囲気下で1500時間静置した後、同様にIV曲線を測定した。それぞれのIV曲線から太陽電池の電気特性を示す曲線因子(fill factor、以下F.Fと略す)を各々導出し、高温高湿雰囲気下に静置する前のF.Fと高温高湿条件下に静置した後のF.Fの変化率[F.F(1500h)*100/F.F(0h)]をΔF.Fとし、これを評価指標として用いた。なお、一般にΔF.Fの値が95%以上となると接続信頼性が良好であると判断される。得られた一連の結果を表1、2に示す。
【0091】
[140℃到達時間の変化に伴う金属融合状態評価]
上記と同様の工程で、真空ラミネータで加熱時の140℃到達時間を10分、12分と変化させて、得られた太陽電池モジュールの表面電極と配線部材間の導電性接着剤組成物中の金属の融合状態をX線透過装置(島津製作所製 マクロフォーカスX線透視装置 SMX−1000)で観察した。金属融合状態の評価は上述と同様の方法で行った。その結果を、表1、2に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
実施例1〜6の導電性接着剤組成物はいずれも良好な金属融合状態及びΔF.F(%)を示した。一方、比較例1〜5は金属粒子の一部が融合しない又は金属粒子が未融合であり、ΔF.F(%)が低下したことから、接続性に問題があることが確認できた。
【0095】
一方、太陽電池モジュールの製造時、上述したように、太陽電池セルの電極に導電性接着剤組成物を塗布する工程と、導電性接着剤組成物を塗布した電極と配線部材とを相対向するように配置する工程と、太陽電池セルの受光面上に封止部材及び透光部材をこの順に積層する工程と、太陽電池セルの受光面とは反対側の面上に封止部材及び保護部材をこの順に積層する工程と、得られた積層体を真空ラミネータ等を用いて加熱する工程がある。この加熱の際、太陽電池モジュールの大型化に伴って、熱容量が増大することから、設定温度までの到達時間は遅くなる傾向がある。
【0096】
実施例1〜6の導電性接着剤組成物はいずれも140℃到達時間を10分、12分と遅くしていった場合でも、金属粒子は十分に融合し、良好な接続性を示した。しかし比較例1〜5はいずれも140℃到達時間が10分、12分と遅い場合、金属の融合は起こらず、接続性に問題が生じた。これは、導電性粒子の金属の溶融が起こる前に熱硬化性樹脂の硬化が進行してしまうため、導電性粒子の融合が妨げられ、接続特性が低下することが予想される。
【0097】
従って本発明によると、太陽電池セルの電極と配線部材との接続に用いられた場合に、良好な導電性を有し、かつ高温高湿試験(85℃/85%)後もその導電性の低下が充分に抑制され、さらに設定温度までの到達時間が遅い場合も、良好な導電性を有する導電性接着剤を提供することができる。
【符号の説明】
【0098】
1…透光部材、2…封止部材、3a,3b…バス電極(表面電極)、4…配線部材、5…バックシート、6…半導体ウエハ、7…グリッド電極、8…裏面電極、10…導電性接着剤組成物、20…太陽電池セル、30…接続体、100…太陽電池モジュール。
図1
図2
図3
図4