(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板に塗布膜を形成する工程は、基板を第1の回転速度で回転させ、基板の中心部に塗布液を供給する工程と、次いで基板を第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度で回転させる工程と、その後基板を第2の回転速度より早い第3の回転速度で回転させて塗布液を基板の周縁部まで広げる工程とを含み、
前記ミストの供給開始は、基板を前記第3の回転速度で回転させる前であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布膜形成方法。
前記制御部は、前記基板を第1の回転速度で回転させ、この状態で基板の中心部に塗布液を供給するステップと、次いで基板を第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度で回転させるステップと、その後塗布液を基板の周縁部まで広げるために、基板を第2の回転速度よりも速い第3の回転速度で回転させるステップと、基板を前記第3の回転速度で回転させる前にミストの供給を開始するステップを実行するように制御信号を出力することを特徴とする請求項5または6に記載の塗布膜形成装置。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程における塗布膜を形成する手法としては、一般にスピンコーティング法が用いられている。スピンコーティング法は半導体ウエハ(以下ウエハという)等の表面中央部に塗布液を供給し、基板の回転力に伴う遠心力によりウエハの周縁部に広げる塗布方法である。塗布液としてはレジスト、反射防止膜を形成するための薬液、あるいはシリコン酸化膜の前駆体を含む薬液などが挙げられる。
【0003】
ところでレジストなどの薬液はコストが高いことからウエハ1枚当たりの薬液の使用量の低減が求められている。しかしながらスピンコーティングにより塗布処理を行う場合に、塗布液の供給量を減らしていくと、塗布液中の溶剤の揮発率が高くなる。このため塗布液の周縁部における粘度上昇が顕著になり、このことに起因して、ウエハの周縁部における塗布膜が盛り上がりやすくなる。そこでウエハを冷却して塗布液中の溶剤の揮発を抑制することにより、塗布液の少量化を図るようにしている。
ウエハを冷却する手法としては、例えば特許文献1に記載されているようにウエハを予めクーリングプレートで冷却する方法があるが、クーリング後、塗布を開始するまでの精密な時間管理が必要であることや、塗布を開始するまでの時間が長いとウエハの温度が搬送される途中で上昇してしまうこと、冷却能力を上げるにはコストがかかるなどの問題がある。
また塗布液の塗布を行う前に供給するプリウエットシンナーにより冷却する方法が知られている。しかしながらプリウエットに用いられるシンナーは気化熱が小さいため、ウエハの冷却効果が低い。
【0004】
さらに例えば純水などのリンス液をウエハの裏面に吐出し、リンス液の気化熱を利用して冷却する手法が知られている。しかしながらこの手法は、ウエハの回転による遠心力により、純水の水滴がカップ体内に飛散し、排液路内に引き込まれ、レジスト液と、水とが混ざりあってレジストが析出して固化する。このため、排液路に固化物が付着するのでメンテナンス頻度を高くしてしまう問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的はスピンコーティングにより塗布膜を形成するにあたって、基板を効率よく冷却することができ、またカップ体内への水滴の飛散を抑制して、排出路における塗布液の固形分の析出を抑える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の塗布膜形成方法は、基板を、鉛直軸周りに回転自在な基板保持部に水平に保持する工程と、
その後、基板の中心部に塗布液を供給し、基板の回転による遠心力により広げて当該基板に塗布膜を形成する工程と、
前記塗布液が基板の周縁部に行き渡る前に、基板の下面側に液体または固体の微粒子群であるミストを供給して基板を冷却する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0008】
また本発明の塗布膜形成方法は、基板を、鉛直軸周りに回転自在な基板保持部に水平に保持する工程と、
次いで基板保持部上の基板を回転させ、当該基板の下面と対向する液体収容部から基板の下面側に形成される気流により液体を揮発させて基板を冷却する工程と、
その後、基板の中心部に塗布液を供給し、基板の回転による遠心力により広げて当該基板に塗布膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の塗布膜形成装置は、基板の表面にスピンコーティングにより塗布膜を形成する塗布膜形成装置において、
基板を水平に保持する基板保持部と、
前記基板保持部を鉛直軸周りに回転させる回転機構と、
前記基板に塗布液を供給する塗布液ノズルと、
前記基板を囲むように設けられ、基板の回転により飛散した塗布液を排出するための排液路と、その内部雰囲気を排気するための排気路と、が接続されたたカップ体と、
前記基板の下面側に液体または固体の微粒子群であるミストを供給するためのミスト供給部と、
塗布液が基板の周縁部に行き渡る前に、前記ミスト供給部からミストを吐出するように制御信号を出力するための制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また本発明の塗布膜形成装置は、基板の表面に塗布液を塗布して、スピンコーティングにより塗布膜を形成する塗布膜形成装置において、
基板を水平に保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板を鉛直軸周りに回転させる回転機構と、
前記基板保持部に保持された基板に塗布液を供給する塗布液ノズルと、
前記基板を囲むように設けられ、基板の回転により飛散した塗布液を排出するための排出路と、その内部雰囲気を排気するための排気路と、が接続されたたカップ体と、
基板の下面と対向するように開口し、前記気流により液体を揮発させるための液体収容部と、
基板保持部上の基板の回転により、基板の下面側に基体を引き込んで気流を形成するための気体引き込み口と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の記憶媒体は、基板の表面にスピンコーティングにより塗布膜を形成する塗布膜形成装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、上述の塗布膜形成方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、スピンコーティングにより基板に塗布膜を形成するにあたって、ミストの気化(あるいは昇華)熱を利用して基板を冷却するようにしているため冷却効率が高い。従って塗布液が少量でありながら基板の周縁部の塗布膜の盛り上がりが抑えられる。またミストを基板の冷却に利用していることから、バックリンスの場合のようにカップ体内に飛散している塗布液と、液滴とが混合されることにより固形物が析出するという不具合を抑えることができ、メンテナンスの頻度を減らすことができる。
【0013】
また他の発明では、基板の下方に液体収容部を設け、基板保持部上の基板を回転させ、当該基板の下面と対向する液体収容部から基板の下面側に形成される気流により液体を揮発させて基板を冷却するようにしている。気化熱を利用して冷却するため冷却効率が高く、また基板に直接液滴を吐出しないため、液滴が飛散せず、カップ体内に飛散している塗布液と、液滴とが混合されることによる固形物が析出するという不具合を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の塗布膜形成方法を実施する一例として、ウエハに対してレジスト液を塗布する方法について説明する。まずこの方法に用いられるレジスト塗布装置の全体構成について
図1、
図2を用いて説明すると、レジスト塗布装置は、カップモジュール1とノズルユニット2とを備えている。
【0016】
カップモジュール1は、ウエハWの裏面中央部を吸着して水平に保持する基板保持部であるスピンチャックを11備え、スピンチャック11は垂直に伸びる回転軸12を介して回転機構13と接続されている。回転機構13は図示しない回転モータ等の回転駆動源を備えており、所定の速度で回転できるように構成されている。
【0017】
スピンチャック11の下方側には概略円板状の仕切り板14が設けられている。仕切り板14は、平坦面部25と、断面が山形の山形部分26と、垂直壁27と、を備えている。平坦面部25は、仕切り板14の中心側でウエハWが投影される領域より狭い領域に形成されている。平坦面部25の外側の領域は、山形部分26となっている。山形部分26は、仕切り板14の中心方向及び周縁方向に傾斜した山形に形成されており、その最も高い部位の水平位置がウエハWの周縁の位置よりも中心寄りに位置するように設けられている。山形部分26の外側の領域は下方側に屈曲されて、垂直壁27となっている。仕切り板14と回転軸12との間には、隙間28が形成されており、ウエハWを回転させた時にウエハWの下面側が陰圧となり、当該隙間28より気流が流入するように構成されている。
【0018】
スピンチャック11の周囲には、スピンチャック11を囲むようにして上方側が開口したカップ体10が設けられており、カップ体10の側周面上端側は内側に傾斜した傾斜部を形成している。また仕切り板14より突没するように、周方向に3本の昇降ピン19が設けられており、昇降ピン19は昇降機構20により昇降自在に構成されている。
【0019】
カップ体10の底部側には、上方が開口した環状凹部状の液受け部15が設けられている。液受け部15は、垂直壁27が入り込むことにより、ウエハWの周縁下方側に全周に亘って外側領域と内側領域とに区画されている。外側領域の底部には貯留したレジストなどのドレインを排出する排出路である排液口16が設けられており、内側領域には、底部より上方に向かって伸びる筒状の排気ポート17が設けられており、排気ポート17の上端は、垂直壁27の下端よりも高い位置で開口している。排気ポート17の下端には排気管の一端が接続されており、排気管の他端は排気ダンパ18を介して例えば工場の排気路に接続されている。排気ダンパ18は後述の制御部7からの制御信号を受けてカップ内10の排気量を制御するためのものである。
【0020】
仕切り板14の平坦面部25の領域の上面には、ミスト供給部に相当する二流体ノズルであるミストノズル3が設けられる。ミストノズル3はウエハWの下方であって、周方向に等間隔に4ヶ所に設置されている。ミストノズル3の構成について、
図4、
図5も参照しながら説明する。ミストノズル3の内部には、縦方向に貫通する処理液供給路43が設けられており、処理液供給路43の先端部分には先端部材40が設けられ、この先端
部材40は、周縁部に多数の処理液吐出孔41が周方向に等間隔に並べて設けられている。処理液吐出孔
41には、処理液吐出孔
41から突出するようにガイド部46が設けられている。
【0021】
処理液供給路43を囲むミストノズル3の管壁には、処理液供給路43と同心円状に環状のガス吐出流路42が形成され、ガス吐出流路42の先端部はミストノズル3の中心軸側に向いており、ガス吐出流路42から吐出されるガスが、処理液吐出孔41から吐出される処理液に向けて吐出されるように構成されている。処理液供給路43はミストノズル3の外部に伸ばされた処理液供給管44の一端と接続されている。処理液供給管44の他端には、例えばポンプやバルブなどで構成された処理液供給機構45が接続されており、所定量の例えば純水等の処理液を処理液吐出孔41から吐出できるように構成されている。
【0022】
ガス吐出流路42は、ガス供給管47の一端と接続されており、ガス供給管47の他端には、例えばポンプやバルブ、マスフローメータなどで構成されるガス供給機構48が接続されており、例えば所定量の窒素ガスをガス吐出
流路42から吐出できるように構成されている。
ミストノズル3は、処理液吐出孔41から純水を吐出して、吐出される純水に向けてガス吐出
流路42より窒素ガスを吐出する。吐出される純水とキャリアガスである窒素ガスとが混合されて、微細なミストが形成されると推測される。
【0023】
ノズルユニット2は、
図1に示すようにアーム21、移動体22、図示しない昇降機構及びガイドレール23を含む移動機構により、ウエハWの中央部上方の吐出位置とカップ体10の外の待機バス24との間で移動するように構成されている。
ノズルユニット2の先端部には、プリウェットノズル5と、塗布液ノズルであるレジストノズル6と、が設けられている。プリウェットノズル5は、供給管51を介して、シンナー供給機構52に接続されている。シンナー供給機構52は、例えばポンプ、バルブ、フィルタなどの機器を備えており、プリウェットノズル5の先端から夫々シンナーを所定量吐出するように構成されている。レジストノズル6は、供給管61を介して、レジスト供給機構62に接続されている。レジスト供給機構62は、例えばポンプ、バルブ、フィルタなどの機器を備えており、レジストノズル6の先端からレジスト液を所定量吐出するように構成されている。
【0024】
レジスト塗布装置には、例えばコンピュータからなる制御部7が設けられている。制御部7は、プログラム格納部を有しており、プログラム格納部には、外部の搬送アームと、スピンチャック11と、の間のウエハWの受け渡しや、スピンチャック11の回転、レジスト液やシンナーあるいはミストの供給シーケンスが実施されるように命令が組まれた、プログラムが格納される。このプログラムは、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)、メモリーカードなどの記憶媒体により格納されて制御部7にインストールされる。
【0025】
続いて本発明の塗布膜形成方法の実施形態に相当する、上述の塗布膜形成装置の動作について説明する。
図6はウエハWの回転数タイムチャートと処理工程とを対応させた説明を表す図であり、ウエハWがスピンチャック11に載置された後、スピンチャック11の回転開始時点を0秒としている。
図7〜
図10は、ウエハWの処理工程を段階的に示している。まずウエハWが、レジスト塗布装置の外部に設けられた図示しない搬送アームにより、レジスト塗布装置内に搬入される。ウエハWは搬送アームと、仕切り板14より突没する、3本の昇降ピン19と、の協働作用により、スピンチャック11に載置される。なお明細書中ウエハWの表面という用語は、ウエハWの塗布液が吐出される側の面(上面)として用いている。
【0026】
ウエハWがスピンチャック11に載置されると、
図7に示すようにノズルユニット2が移動し、プリウェットノズル5がウエハWの中心部上方に位置する。そして例えばノズルユニット2が移動しているときにスピンチャック11の回転が開始され、ウエハWが例えば500rpmの速度で3.5秒回転する。ウエハWが回転を開始した直後に、処理液供給機構45及びガス供給機構48のバルブが開かれ、ポンプが駆動されて、ミストノズル3から例えば直径100μm以下のミストがウエハWの裏面に向けてスプレー状に噴射(供給)される。この例ではミストの直径は30〜100μmである。この段階は、
図6のミスト供給工程に相当する。
【0027】
ここでミストによりウエハWが冷却される推定メカニズムについて説明する。ミストノズル3から、スプレー状に微細な大きさの純水のミストがウエハWの裏面に向かって噴射される。高速回転しているウエハWの裏面に衝突し、ミスト群は、衝突時の衝撃により、気化をして水蒸気となり、ウエハWから熱を奪う。一方ウエハWは高速回転している。ウエハWの裏面側は旋回流が形成されて負圧となり、回転軸12と仕切り板14との隙間28から空気が引き込まれ、これによりウエハWの中心側から外側に向かう強い気流が形成される。このためウエハWから跳ね返ったミスト、及びミスト流から外れて拡散し、ウエハWに衝突しなかったミストはこの気流に乗ることにより、ミストも速やかに気化し、ウエハWと仕切り板14の間の空間の雰囲気温度も下がる。この結果ウエハWが高い効率で冷却される。このミスト供給工程により、ミストの供給が終了した時点では、ウエハWの温度はクリーンルームの雰囲気内の温度(23℃)から、例えば0.8℃冷却されて、22.2℃となる。
【0028】
ウエハWが冷却された後、
図8に示すようにウエハWの回転を停止して、プリウェットノズル5から、例えばシンナー53を1.5秒間供給する。その後、ウエハWを2000rpmの速度で0.5秒間回転する。これによりウエハWに供給されたシンナーはウエハWの高速回転による遠心力によりウエハWの中心から周縁部に向かって一挙に展伸され、ウエハWの表面全体が濡れた状態となる。これらの工程は
図6のシンナー吐出工程、シンナー展伸工程に相当する。シンナー吐出工程では、ミストノズル3からのミストの供給はすでに停止しているが、滞留しているミストの気化により、ウエハWはさらに冷却される。
【0029】
続いてレジスト膜のスピンコーティングが行われる。
図9に示すように、レジストノズル6がウエハWの中央部上方に位置するように移動され、ウエハWの回転速度を第1の回転速度、例えば2500rpmまで上昇させる。回転速度の上昇と同時にレジストノズル6からウエハWの中心部に例えば0.5ccのレジスト液を吐出し、当該ウエハWの回転を2秒間維持する。この段階は
図6のレジスト吐出、展伸工程に相当し、
図9に示すようにレジスト液63が遠心力によりウエハWの表面に沿って中心部から広がって行く。
【0030】
レジスト液63の吐出が終了すると、ウエハWの回転速度を第2の回転速度、例えば100rpmまで下降させて1秒間この状態で維持する。この工程は、
図6のリフロー工程に相当し、展伸工程によってレジスト液63が外周へ偏り、膜厚が不均一になったレジスト膜に対して、ウエハWに働く遠心力を弱めることで膜厚を整えるために行われる。
【0031】
その後ウエハWの回転速度を第3の回転速度、例えば1500rpmまで上昇させて、例えば20秒間この状態で維持する。
図10に示すように、この時レジスト液63は徐々に展伸されながら乾燥され、第3の回転速度で回転を開始した後、凡そ4秒後の時点でウエハWの外周まで到達する。ウエハWは、ミストの供給停止後、更に12秒程度は、温度が下がり続けており、レジスト液63がウエハWの外周まで到達する際には、ウエハWは、20.0℃程度の温度となっている。
この時のレジスト液の周縁部には、表面張力により盛り上がり64が形成される。なお図中のレジスト膜の盛り上がり64は、強調するように記載している。そしてウエハWの回転速度を上昇させた後、ウエハWの表面全体にレジスト液63が展伸され、更に余分なレジスト液63が振り切られて、盛り上がり64が平坦化されて、レジスト膜の形成が終了することとなる。この工程は、
図6の塗布膜形成工程に相当する。
【0032】
塗布膜形成工程において、レジスト液をウエハWの表面に広げるときに、ウエハWの温度が高い場合には、背景技術の項目の欄に述べたように、レジスト液中の溶剤が揮発しやすくなる。またウエハWに供給するレジスト液の量が少ないと、十分な量のレジスト液を供給した場合と比較して、レジスト液からの溶剤の相対的な揮発率が高くなり、流動性が小さくなりやすくなる。従って温度の高いウエハWに少量のレジスト液を展伸してレジスト膜を形成した場合には、レジスト液がウエハWの周縁部まで塗り広げられる頃には、レジスト液中の溶剤の含有量が少なくなり流動性が下がってしまい、ウエハWの周縁部のレジスト膜が十分に平坦化されず盛り上がってしまうことがある。
【0033】
本発明の実施の形態に係る塗布膜形成方法では、ウエハWの表面にレジスト液を展伸する前に、ウエハWの温度を下げるようにしている。そのため、ウエハWの表面に展伸される塗布液中の溶剤が揮発しにくい。従ってウエハWに供給するレジスト液が少ない場合にも、レジスト液中の溶剤の含有量の低下が抑制され、レジスト液の流動性の低下が抑えられる。従ってウエハWへのレジスト液の供給が少ない場合でも、ウエハWの周縁部のレジスト膜の盛り上がりを低減することができる。
【0034】
上述の実施の形態は、スピンコーティングにより、ウエハWにレジスト膜を形成するにあたり、レジスト液を塗り広げる前に、ウエハWの裏面に水のミストを噴射し、ミストの気化熱を利用してウエハWを冷却するようにしている。ウエハWの温度を下げることにより、レジスト膜形成工程において、ウエハWの表面を広がるレジスト液からの溶剤の揮発を抑制することができ、既述のように少量のレジスト液でありながらウエハWの周縁部のレジスト膜の盛り上がりを抑えることができる。またミストをウエハWの冷却に利用していることから、バックリンスにより冷却した場合のように、排液路に流れ込んだレジスト液と、水滴とが混合されることにより、排液路内での固形物が析出するという不具合が少なくなり、メンテナンスの頻度が多くなるという課題も解決できる。
【0035】
ミストノズル3からウエハWの裏面にミストを供給し始めるタイミングについては、
図6に示すリフローが終了してウエハWの中央部の液溜まりが広がり始める時点の前(塗布膜形成工程開始前)であることが好ましく、例えばレジスト液がウエハWに供給される時点よりも前であればより好ましい。
【0036】
更にまた本発明の効果を得るためには、リフロー直後にウエハWが冷却されていることに限らず、レジスト液がウエハWの周縁に到達する前に冷却されてあればよい。この場合ウエハWの面積に対して70%の面積を覆うようにレジスト液が広がる時点前にミストの供給を開始すればよい。
またウエハWは、ミストの供給終了後も12秒程度は、温度が下がり続ける。そのためミストの供給の終了は、レジスト液がウエハWの外周に到達する時点よりも10秒前であることが好ましく、早くとも15秒前以降であることが好ましい。
【0037】
更にウエハWの裏面のミストの供給される位置を中心寄りの位置や周縁寄りの位置に変更できるようにしてもよい。例えば、ミストノズル3を仕切り板14上で中心から周縁方向に伸ばされるガイドに沿って、移動できるように構成する。ウエハWを回転させた状態で、ミストの供給位置を変更しながら、ミストを供給することで、より広い範囲にミストを供給することができるため、ウエハWをより均一に冷やすことができる。
【0038】
またミストは、ウエハWに接触した後、速やかに気化する大きさ、少なくともウエハWの表面で液滴として凝集しない大きさが好ましく、その直径は例えば100μm以下のサイズであることが好ましい。さらにミストノズル3は、1流体式のミストノズル3であってもよい。このような例としては、ミストノズル3の先端部に多孔質体を設ける例が挙げられる。さらにまたミストは、固体の微粒子群であってもよく、例えばドライアイスの微粒子群を供給することにより冷却するようにしてもよい。また塗布膜形成装置は、排気路と排液路とが共用化されている配管でもよく、配管の途中で分岐されている構成であってもよい。
【0039】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係る塗布膜形成装置について説明する。
図11、
図12に示すようにカップ体10内に対向面部に相当する仕切り板14を備え、仕切り板14の平坦面部25の上面には、回転軸12の周囲を囲うように設けたリング状の液体収容部33が設けられている。液体収容部33は例えば深さ5mmに形成されており、液体収容部33に液体を満たした時の水面とウエハWとの距離はおよそ15mmに設定されている。液体収容部33には例えば純水供給管35の一端を接続されており、純水供給管35の他端側は、例えばポンプ、バルブ、フィルタなどの機器を備えた純水供給機構37と接続され、液体収容部33に所定の純水を供給するように構成されている。
【0040】
また液体収容部33の上面には多孔質部材39を設ける。またウエハWの周囲を囲むカップ体は、
図1に記載されたものと同様に仕切り板14上に平坦面部25、山形部分26、垂直壁27を備え、カップ体10の周縁部から下方側に環状凹部状の液受け部15が形成されており、排液路16及び排気路17設けられ排気路17には排気ダンパ18が設けられている。また仕切り板14と回転軸12との間には隙間28が設けられている。
【0041】
第2の実施の形態の作用について説明すると、例えば、ウエハWがスピンチャック11に受け渡される前に、液体収容部33にウエハW1枚分の冷却に用いる量の水を供給する。ウエハW1値枚分とは、
図6に示す塗布膜形成工程が終了した時に液体収容部33に水が残っていないように設定された水量である。ウエハWがスピンチャック11に受け渡された後、ウエハWを3000rpmの速さで回転させる。そのためウエハWの下面側に旋回流が形成されて、
図13に示すように、ウエハWの下面側が陰圧となり、隙間28からエアーが引き込まれる。このため
図1に示す排気路17への吸引作用と相俟って、ウエハWの下面中心側から、ウエハWの周縁の方向へと向かう気流が発生し、これにより液体収容部33に蓄えられている純水の気化が促進されて水蒸気となる。この時液体収容部33の上方の雰囲気が気化熱を奪われて冷却され、当該雰囲気に曝されることによりウエハWも冷却される。
【0042】
次いで
図6のシンナー吐出以降の動作が行われる。また液体収容部33に収容する水の量は、シンナー吐出前にウエハW冷却のためにウエハWを回転させる工程を終了した時点で水が空になる量であってもよい。さらにまた液体収容部33には順次搬入される複数枚のウエハWを冷却できるに足りる量の水を貯留していてもよい。あるいはまた、ウエハWは1枚分を冷却する水量以上の一定水量を各ウエハWごとに液体収容部33に貯留しておき、ウエハWの塗布膜形成が終了した後、液体収容部33内の水を排出し、次のウエハWがスピンチャック11に搬入されたときに、前記一定量の水を液体収容部33に貯留するようにしてもよい。
【0043】
このような構成にすることで、ウエハWを純水の気化熱を利用して冷却することができるため効率よく冷却することができる。また液体収容部33に貯留した純水の気化熱を利用して冷却しているため、ウエハWの回転による遠心力により、カップ体10内へ水滴が飛散することを抑えることができるため、同様な効果が得られる。
【実施例】
【0044】
[実施例1]
本発明を評価するために本発明の実施の形態に示したレジスト塗布装置を用いて、次のような試験を行った。
中心部から周縁部に向かって65か所に温度センサを設けた測定用ウエハ(直径12インチ)に表面側から種々の冷媒を供給すると同時にウエハWを回転させ、各冷媒毎にウエハWの温度推移を調べた。このウエハには温度センサの温度検出データを記憶するコントローラが設けられており、65点の温度検出値の平均値をウエハの温度として取り扱っている。
(実施例1−1)
ウエハを300rpmの回転速度で回転させると同時に、ウエハWの中心から
7.5cm変位した位置に向かって純水のミストを10秒噴射した(ミスト噴射中はウエハは回転している)。
(実施例1−2)
ウエハWの回転速度が900rpmであることを除いて、実施例1と同様の処理を行った。
(比較例1−1)
ウエハWの中央部に純水5ccを供給し、ウエハW上にパドル(水たまり)を形成させた後、3秒経過後ウエハを1000rpmの速さで回転させて、パドルをウエハの全面に広げた。
(比較例1−2)
ウエハWに供給した冷媒がシクロヘキサンであることを除いた他は、比較例1と同様の処理を行った。
(比較例1−3)
ウエハWに供給した冷媒がPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)/PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)混合液であることを除いた他は、比較例1−1と同様の処理を行った。
【0045】
[検証結果]
図14は上述の各例におけるウエハの温度推移を示し、ウエハの回転開始後の経過時間を横軸にウエハWの温度を縦軸としている。横軸の3秒に相当するタイミング(t
0)は、ミストの供給開始時点であり、タイミング(t
1)は、ミストの供給停止時点を示している。
【0046】
比較例1−1〜1−3においては、ミストの供給の開始後10秒程度までウエハWの温度は下がり続け、22.0℃程度まで下がっている。これに対して実施例1−1、1−2では、ミスト供給後、3.5秒経過の時点でウエハの温度は22.0℃程度になっていた。その後もさらに温度は低下を続け、ミストの供給を停止した時点で実施例1−1は、21.2℃、実施例1−2では、20.8℃まで下がっていた。ミストの供給停止後も、夫々の実施例のウエハの温度は下がり続け、ウエハの回転開始から20秒経過後の時点で実施例1−1は、20.5℃、実施例1−2では、20.0℃まで下がっていた。またウエハWの温度は、ミストの供給の終了後、12秒後程度下がり続けていた。
本発明の塗布膜形成方法を用いた場合には、ウエハWをより低い温度まで冷却することができるといえる。
【0047】
[実施例2]
ウエハに塗布膜を形成するときにウエハを冷却した場合の効果についての確認データを示す。
図15は、第1の実施の形態に係る塗布膜形成方法において、ウエハ(直径18インチ)の平均温度を23℃に冷却した後1.5gのレジスト液により塗布膜を形成した場合、ウエハの平均温度を21.5℃に冷却した後1.42gのレジスト液により塗布膜を形成した場合、ウエハの平均温度を20℃に冷却した後1.35gのレジスト液により塗布膜を形成した場合の夫々において、ウエハの中心からの距離を横軸に、形成された塗布膜の膜厚を縦軸に示した特性図である。
図15に示すようにウエハWの冷却温度が低くなるに従い少量のレジストでもウエハの周縁部の膜厚の盛り上がりを抑制できる。ウエハの冷却温度と23℃から20℃まで下げた場合では、レジスト液は10%程度減少されており、ウエハWを冷却することによりレジストの使用を抑制することができることが裏付けられる。