(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態として構造化照明顕微鏡装置を説明する。
【0011】
図1は、構造化照明顕微鏡装置1の構成図である。ここでは、構造化照明顕微鏡装置1を、蛍光性を有した試料(標本)5の表面の極めて薄い層を観察する全反射蛍光顕微鏡(TIRFM:Total Internal Reflection Fluorescence Microscopy)として使用する場合を説明する。
【0012】
先ず、構造化照明顕微鏡装置1の構成を説明する。
【0013】
図1に示すとおり構造化照明顕微鏡装置1には、レーザユニット100と、光ファイバ11と、照明光学系10と、結像光学系30と、撮像素子35と、制御装置39と、画像記憶・演算装置40と、画像表示装置45とが備えられる。なお、照明光学系10は落射型であり、結像光学系30の対物レンズ6及びダイクロイックミラー7を利用して標本5の照明を行う。
【0014】
レーザユニット100には、第1レーザ光源101、第2レーザ光源102、シャッタ1031、1032、ミラー105、ダイクロイックミラー106、レンズ107が備えられる。第1レーザ光源101及び第2レーザ光源102の各々は可干渉光源であって、互いの出射波長は異なる。ここでは、第1レーザ光源101の波長λ1は、第2レーザ光源102の波長λ2よりも長いと仮定する(λ1>λ2)。これらの第1レーザ光源101、第2レーザ光源102、シャッタ1031、1032は、それぞれ制御装置39によって駆動される。
【0015】
光ファイバ11は、レーザユニット100から射出したレーザ光を導光するために、例えば、偏波面保存型のシングルモードファイバによって構成される。この光ファイバ11の出射端の光軸AZ方向の位置は、位置調整機構11Aによって調節可能である。この位置調整機構11Aは、制御装置39によって駆動される。
【0016】
照明光学系10には、光ファイバ11の出射端側から順に、コレクタレンズ12と、偏光板23と、光束分岐部15と、集光レンズ16と、間隔調整部200と、光束選択部24と、レンズ25と、視野絞り26と、フィールドレンズ27と、励起フィルタ28と、ダイクロイックミラー7と、対物レンズ6とが配置される。
【0017】
光束分岐部15には、回折光学素子(回折格子)13と、並進機構15Aとが備えられ、間隔調整部200には、複数のプリズム(詳細は後述)と、調整機構200Aとが備えられ、光束選択部24には、1/2波長板17と、光束選択部材18と、回動機構24Aとが備えられる。なお、並進機構15A、調整機構200A、回動機構24Aは、制御装置39によって駆動される。
【0018】
結像光学系30には、標本5の側から順に、対物レンズ6と、ダイクロイックミラー7と、バリアフィルタ31と、第2対物レンズ32とが配置される。
【0019】
標本5は、例えば、平行平板状のガラス表面に滴下された培養液であって、その培養液におけるガラス界面の近傍には、蛍光性を有した細胞(蛍光色素で染色された細胞)が存在している。この細胞には、波長λ1の光によって励起される第1蛍光領域と、波長λ2の光によって励起される第2蛍光領域との双方が発現している。
【0020】
対物レンズ6は、全反射蛍光観察を可能とするために、液浸型(油浸型)の対物レンズとして構成される。つまり、対物レンズ6と標本5のガラスとの間隙は、浸液(油)で満たされている。
【0021】
撮像素子35は、CCDやCMOS等からなる二次元の撮像素子である。撮像素子35は、制御装置39によって駆動されると、その撮像面36に形成された像を撮像し、画像を生成する。この画像は、制御装置39を介して画像記憶・演算装置40へと取り込まれる。
【0022】
制御装置39は、レーザユニット100、位置調整機構11A、並進機構15A、調整機構200A、回動機構24A、撮像素子35を駆動制御する。
【0023】
画像記憶・演算装置40は、制御装置39を介して与えられた画像に対して演算を施し、演算後の画像を不図示の内部メモリに格納すると共に、画像表示装置45へ送出する。
【0024】
次に、構造化照明顕微鏡装置1におけるレーザ光の振る舞いを説明する。
【0025】
第1レーザ光源101から射出した波長λ1のレーザ光(第1レーザ光)は、シャッタ1031を介してミラー105へ入射すると、ミラー105を反射し、ダイクロイックミラー106へ入射する。一方、第2レーザ光源102から射出した波長λ2のレーザ光(第2レーザ光)は、シャッタ1032を介して
ダイクロイックミラー106へ入射し、第1レーザ光と統合される。ダイクロイックミラー106から射出した第1レーザ光及び第2レーザ光は、レンズ107を介して光ファイバ11の入射端に入射する。
【0026】
なお、制御装置39は、レーザユニット100のシャッタ1031、1032を制御することにより、光ファイバ11の入射端に入射するレーザ光の波長(=光源波長)を、長い波長λ1と短い波長λ2との間で切り替えることができる。
【0027】
光ファイバ11の入射端に入射したレーザ光は、光ファイバ11の内部を伝搬して光ファイバ11の出射端に点光源を生成する。その点光源から射出したレーザ光は、コレクタレンズ12によって平行光束に変換され、偏光板23を介して回折格子13へ入射すると、各次数の回折光束に分岐される。これら各次数の回折光束は、集光レンズ16によって瞳共役面6A’の互いに異なる位置に集光される。
【0028】
ここで、瞳共役面6A’は、集光レンズ16の焦点位置(後ろ側焦点位置)であって、後述する対物レンズ6の瞳6A(±1次回折光が集光する位置)に対してフィールドレンズ27、レンズ25を介して共役な位置のことである。但し、ここでいう「共役な位置」の概念には、当業者が対物レンズ6、フィールドレンズ27、レンズ25の収差、ビネッティング等の設計上必要な事項を考慮して決定した位置も含まれるものとする。
【0029】
また、光ファイバ11から射出したレーザ光は基本的に直線偏光しているので、偏光板23は、省略することも可能であるが、余分な偏光成分を確実にカットするために有効である。また、レーザ光の利用効率を高めるため、偏光板23の軸は、光ファイバ11から射出したレーザ光の偏光方向に一致していることが望ましい。
【0030】
瞳共役面6A’に向かった各次数の回折光束は、瞳共役面6A’の近傍に配置された間隔調整部200を介して、同じく瞳共役面6A’の近傍に配置された光束選択部24へ入射する。
【0031】
ここで、本実施形態の構造化照明顕微鏡装置1は、TIRFM(全反射蛍光顕微鏡)として利用されるので、光束選択部24は、入射した各次数の回折光束のうち、1対の回折光束のみ(ここでは±1次回折光束のみ)を選択的に通過させるものとする。
【0032】
光束選択部24を通過した±1次回折光束は、レンズ25によって視野絞り26付近で回折格子13と共役な面を形成した後に、フィールドレンズ27により収束光に変換され、さらに励起フィルタ28を経てからダイクロイックミラー7で反射し、対物レンズ6の瞳面6A上の互いに異なる位置に集光される。
【0033】
瞳面6A上に集光した±1次回折光束の各々は、対物レンズ6の先端から射出される際には平行光束となり、標本5の表面で互いに干渉し、干渉縞を形成する。この干渉縞が、構造化照明光として使用される。
【0034】
ここで、本実施形態の構造化照明顕微鏡装置1は、TIRFM(全反射蛍光顕微鏡)として利用されるので、標本5の表面に入射する際の±1次回折光束の入射角度は、エバネッセント場の生成条件(全反射条件)を満たしている。以下、全反射条件を「TIRF条件」と称す。
【0035】
TIRF条件を満たすためには、瞳面6Aにおける±1次回折光束の集光点は、瞳面6Aの最外周に位置する所定の輪帯状領域に位置している必要がある。前述した間隔調整部200は、瞳面6Aにおける1対の回折光束の集光点の間隔を調整し、両者の集光点を所定の輪帯状領域に収めるために設けられたものである(詳細は後述)。この調整の結果、標本5の表面近傍には、干渉縞によるエバネッセント場が生起する。
【0036】
このような干渉縞により標本5を照明すると、干渉縞の周期構造と標本5上の蛍光領域の周期構造との差に相当するモアレ縞が現れるが、このモアレ縞においては、蛍光領域の高周波数の構造が元の周波数より低周波数側にシフトしているため、この構造を示す蛍光は、元の角度よりも小さい角度で対物レンズ6へ向かうことになる。よって、干渉縞により標本5を照明すると、蛍光領域の高周波数の構造情報までもが対物レンズ6によって伝達される。
【0037】
標本5の表面近傍(エバネッセント場)で発生した蛍光は、対物レンズ6に入射すると、対物レンズ6で平行光に変換された後、ダイクロイックミラー7及びバリアフィルタ31を透過し、第2対物レンズ32を介して撮像素子35の撮像面36上に標本5の変調像を形成する。
【0038】
この変調像は、撮像素子35により画像化され、蛍光領域の変調画像が生成される。その変調画像は、制御装置39を介して画像記憶・演算装置40へと取り込まれる。さらに、取り込まれた変調画像には、画像記憶・演算装置40において公知の復調演算が施され、復調画像(超解像画像)が生成される。そして、この超解像画像は、画像記憶・演算装置40の内部メモリ(図示せず)に記憶されるとともに、画像表示装置45へと送出される。なお、公知の復調演算としては、例えば、米国特許8115806号明細書に開示された方法が用いられる。
【0039】
次に、回折格子13を詳しく説明する。
【0040】
図2(A)は、回折格子13を光軸AZ方向から見た図であり、
図2(B)は、±1次回折光束が瞳共役面に形成する集光点の位置関係を示す図である。なお、
図2(A)は模式図であるため、
図2(A)に示した回折格子13の構造周期は実際の構造周期と同じとは限らない。
【0041】
図2(A)に示すように、回折格子13は、照明光学系10の光軸AZと垂直な面内において互いに異なる複数方向にかけて周期構造を有した回折格子である。この回折格子13の材質は、例えばガラスである。ここでは、回折格子13は、120°ずつ異なる第1方向V
1、第2方向V
2、第3方向V
3の各々にかけて周期構造を有した3方向回折格子であって、それら周期構造の周期(ピッチ)は共通であると仮定する。
【0042】
なお、回折格子13の周期構造は、濃度(透過率)を利用して形成された濃度型の周期構造、または段差(位相差)を利用して形成された位相型の周期構造の何れであってもよいが、
位相型の周期構造の方が+1次回折光の回折効率が高いという点で好ましい。
【0043】
このような回折格子13に入射した平行光束は、第1方向V
1にかけて分岐した第1回折光束群と、第2方向V
2にかけて分岐した第2回折光束群と、第3方向V
3にかけて分岐した第3回折光束群とに変換される。
【0044】
第1回折光束群には、0次回折光束及び±1次回折光束が含まれ、このうち互いの次数が共通である±1次回折光束は、光軸AZに関して対称な方向に進行する。
【0045】
同様に、第2回折光束群には、0次回折光束及び±1次回折光束が含まれ、このうち互いの次数が共通である±1次回折光束は、光軸AZに関して対称な方向に進行する。
【0046】
同様に、第3回折光束群には、0次回折光束及び±1次回折光束が含まれ、このうち互いの次数が共通である±1次回折光束は、光軸AZに関して対称な方向に進行する。
【0047】
これら第1回折光束群の±1次回折光束、第2回折光束群の±1次回折光束、第3回折光束群の±1次回折光束は、前述した集光レンズ16により、瞳共役面内の互いに異なる位置に集光される。
【0048】
そして、
図2(B)に示すように、第1回折光束群の±1次回折光束の集光点14d、14gは、光軸AZに関して対称であり、集光点14d、14gの配列方向は第1方向V
1に対応している。
【0049】
光ファイバ11から射出されるレーザ光の波長をλ、回折格子13のピッチをP、レンズ16の焦点距離をfcとすると、光軸AZから集光点14d、14gまでの距離Dは下記の式で表される。
【0050】
D=2fcλ/P
したがって、レーザ光の波長を変更すると、集光点14d、14gの位置にずれが生じる。
【0051】
また、第2回折光束群の±1次回折光束の集光点14c、14fは、光軸AZに関して対称であり、集光点14c、14fの配列方向は、第2方向V
2に対応している。なお、第2回折光束群の集光点14c、14fから光軸AZまでの距離は、第1回折光束群の集光点14d、14gのから光軸AZまでの距離と同じである。
【0052】
また、第3回折光束群の±1次回折光束の集光点14b、14eは、光軸AZに関して対称であり、集光点14b、14eの配列方向は、第3方向V
3に対応している。なお、第3光束群の集光点14b、14eから光軸AZまでの距離は、第1回折光束群の集光点14d、14gから光軸AZまでの距離と同じである。
【0053】
なお、ここでいう「集光点」とは、最大強度の8割以上の強度を有する領域の重心位置のことである。そのため、照明光学系10は、完全な集光点が形成されるまで光束を集光する必要はない。
【0054】
そして、以上の回折格子13は、ピエゾモータ等からなる並進機構15A(
図1参照)によって並進移動が可能である。並進機構15Aによる回折格子13の並進移動の方向は、照明光学系10の光軸AZと垂直な方向であって、前述した第1方向V
1、第2方向V
2、第3方向V
3の各々に対して非垂直な方向である。この方向に回折格子13が並進移動すると、干渉縞の位相がシフトする(詳細は後述。)。
【0055】
次に、1/2波長版17及び光束選択部材18の機能を詳しく説明する。
【0056】
図3は、1/2波長板17の機能を説明する図であり、
図4は、光束選択部材18の機能を説明する図である。
【0057】
図3に示すとおり、1/2波長板17は、入射した各次数の回折光束の偏光方向を設定する波長板であって、
図4に示すとおり、光束選択部材18は、第1〜第3回折光束群のうち何れか1群の±1次回折光束のみを選択的に通過させるマスクである。
【0058】
そして、これらの1/2波長版17及び光束選択部材18は、回動機構24A(
図1参照)によって光軸AZの周りに回動可能である。回動機構24Aは、光束選択部材18を回動させることにより、選択される±1次回折光束を第1〜第3回折光束群の間で切り替えると共に、光束選択部材18に連動して1/2波長板17を光軸AZの周りに回動させることにより、選択された±1次回折光束が標本5に入射するときの偏光方向をS偏光に保つ。
【0059】
つまり、1/2波長板17及び光束選択部材18は、干渉縞の状態を保ちつつ、干渉縞の方向を切り替える。以下、縞の状態を保つための条件を具体的に説明する。
【0060】
先ず、1/2波長板17の進相軸の向きは、選択される±1次回折光束の分岐方向(第1方向V
1〜第3方向V
3のいずれか)と、その±1次回折光束の偏光方向とが垂直となるように設定される必要がある。なお、ここでいう1/2波長板17の進相軸とは、その軸の方向に偏光した光が1/2波長板17を通過するときの位相遅延量が最小となるような方向のことである。
【0061】
また、光束選択部材18の開口パターンは、同一の回折光束群に属する±1次回折光束の一方及び他方を個別に通過させる第1の開口部19及び第2の開口部20からなり、これら第1の開口部19と第2の開口部20との各々の光軸AZ周りの長さは、前述した方向に直線偏光した回折光束が通過できるような長さに設定されている。よって、第1の開口部19及び第2の開口部20の各々の形状は、部分輪帯状に近い形状である。
【0062】
ここで、
図3(A)に示すように、1/2波長板17の進相軸の方向が偏光板23の軸の方向と平行になるときの1/2波長板17の回転位置を、1/2波長板17の回転位置の基準とする(以下、「第1の基準位置」と称する。)。
【0063】
また、光束選択部材18の光束選択方向(=選択される±1次回折光束の分岐方向)が、偏光板23の軸の方向と垂直になるときの光束選択部材18の回転位置を、光束選択部材18の回転位置の基準とする(以下、「第2の基準位置」と称する。)。
【0064】
このとき、
図3(B)に示すように、1/2波長板17の第1基準位置からの回転量は、光束選択部材18の第2基準位置からの回転量の2分の1に制御されるべきである。すなわち、1/2波長板17の第1基準位置からの回転量がθ/2であるときには、光束選択部材18の第2基準位置からの回転量は、θに設定されるべきである。
【0065】
そこで、回動機構24A(
図1参照)は、第1回折光束群の±1次回折光束(分岐方向は第1方向V
1)を選択するために、
図4(A)に示すように、光束選択部材18の光束選択方向を第2の基準位置から右方に回転角θ
1だけ回転させた場合、1/2波長板17の進相軸の方向を、第1の基準位置から右方に回転角θ
1/2だけ回転させる。
【0066】
このとき、1/2波長板17を通過する前における各次数の回折光束の偏光方向は、
図4(A)中に破線両矢印で示すとおり、偏光板23の軸の方向と平行となっているのに対し、1/2波長板17を通過した後における各次数の回折光束の偏光方向は、右方に回転角θ
1だけ回転するので、選択された±1次回折光束の偏光方向は、
図4(A)に実線両矢印で示すとおり、それら±1次回折光束の分岐方向(第1方向V
1)に対して垂直となる。
【0067】
換言すると、1/2波長板17の進相軸の方向は、光束選択部材18により選択される±1次回折光束の分岐方向(=第1方向V
1)に応じた方向であって、1/2波長板17へ入射する±1次回折光束が有していた偏光方向(=偏光板23の軸方向)と、1/2波長板17から射出する±1次回折光束が有するべき偏光方向(=第1方向V
1に垂直)とが成す角度の2等分線方向に、設定される。
【0068】
また、回動機構24A(
図1参照)は、第2回折光束群の±1次回折光束(分岐方向は第2方向V
2)を選択するために、
図4(B)に示すように、光束選択部材18の光束選択方向を第2の基準位置から右方に回転角θ
2だけ回転させた場合、1/2波長板17の進相軸の方向を、第1の基準位置から右方に回転角θ
2/2だけ回転させる。
【0069】
このとき、1/2波長板17を通過する前における各次数の回折光束の偏光方向は、
図4(B)中に破線両矢線で示すとおり、偏光板23の軸の方向と平行となっているのに対し、1/2波長板17を通過した後における各次数の回折光束の偏光方向は、右方に回転角θ
2だけ回転するので、選択された±1次回折光束の偏光方向は、
図4(B)に実線両矢印で示すとおり、それら±1次回折光束の分岐方向(第2方向V
2)に対して垂直となる。
【0070】
換言すると、1/2波長板17の進相軸の方向は、光束選択部材18により選択される±1次回折光束の分岐方向(=第2方向V
2)に応じた方向であって、1/2波長板17へ入射する±1次回折光束が有していた偏光方向(偏光板23の軸方向)と、1/2波長板17から射出する±1次回折光束が有するべき偏光方向(第2方向V
2に垂直)とが成す角度の2等分線方向に、設定される。
【0071】
また、回動機構24A(
図1参照)は、第3回折光束群の±1次回折光束(分岐方向は第3方向V
3)を選択するために、
図4(C)に示すように、光束選択部材18の光束選択方向を第2の基準位置から左方(標本側から見て。以下同じ)に回転角θ
3だけ回転させた場合、1/2波長板17の進相軸の方向を、第1の基準位置から左方に回転角θ
3/2だけ回転させる。
【0072】
このとき、1/2波長板17を通過する前における各次数の回折光束の偏光方向は、
図4(C)中に破線両矢線で示すとおり、偏光板23の軸の方向と平行となっているのに対し、1/2波長板17を通過した後における各次数の回折光束の偏光方向は、左方に回転角θ
3だけ回転するので、選択された±1次回折光束の偏光方向は、
図4(C)に実両矢印で示すとおり、それら±1次回折光束の分岐方向(第3方向V
3)に対して垂直となる。
【0073】
換言すると、1/2波長板17の進相軸の方向は、光束選択部材18により選択される±1次回折光束の分岐方向(=第3方向V
3)に応じた方向であって、1/2波長板17へ入射する±1次回折光束が有していた偏光方向(=偏光板23の軸方向)と、1/2波長板17から射出する±1次回折光束が有するべき偏光方向(=第3方向V
3に垂直)とが成す角度の2等分線方向に、設定される。
【0074】
したがって、回動機構24Aは、1/2波長板17及び光束選択部材18をギア比2:1で連動すればよい。
【0075】
図5は、以上説明した1/2波長板17及び光束選択部材18の機能を説明する図である。なお、
図5において円形枠で囲まれた両矢線は、光束の偏光方向を示し、四角枠で囲まれた両矢線は、光学素子の軸方向を示している。
【0076】
なお、以上の説明では、標本5に入射する±1次回折光束をS偏光に保つために回動可能な1/2波長板17を使用したが、回動可能な1/2波長板17の代わりに固定配置された液晶素子を使用し、その液晶素子を1/2波長板17として機能させてもよい。液晶素子の配向を電気的に制御すれば、液晶素子の屈折率異方性を制御することができるので、1/2波長板としての進相軸を光軸AZ周りに回転させることができる。因みに、標本5に入射する±1次回折光束をS偏光に保つための方法は他にもある(後述)。
【0077】
また、
図6に示すように、光束選択部材18の外周部には、複数の(
図6に示す例では6個の)切り欠き21が形成されており、回動機構24A(
図1参照)には、これらの切り欠き21を検出するためのタイミングセンサ22が備えられている。これによって、回動機構24Aは、光束選択部
材18の回動位置、ひいては1/2波長板17の回動位置を検知することができる。
【0078】
次に、並進機構15A(
図1参照)の機能を詳しく説明する。
【0079】
図7は、並進機構15Aの機能を説明する図である。
【0080】
先ず、上述した復調演算を可能とするためには、例えば、同一の標本5かつ同一方向の干渉縞に関する変調画像であって、干渉縞の位相の異なる3枚以上の変調画像が使用される。なぜなら、構造化照明顕微鏡装置1が生成する変調画像には、標本5の蛍光領域の構造のうち、干渉縞により空間周波数の変調された構造情報である0次変調成分、+1次変調成分、−1次変調成分が含まれており、それら3つの未知パラメータを復調演算で既知とするためには、複数数の変調画像が必要だからである。
【0081】
そこで、並進機構15Aは、干渉縞の位相をシフトするために、
図7(A)に示すように、照明光学系10の光軸AZと垂直な方向であって、前述した第1方向V
1、第2方向V
2、第3方向V
3の全てに対して非垂直な方向(x方向)にかけて回折格子13をシフトさせる。
【0082】
但し、干渉縞の位相を所望のシフト量φだけシフトさせるのに必要な回折格子13のシフト量Lは、光束選択部24による光束選択方向が第1方向V
1であるときと、第2方向V
2であるときと、第3方向V
3であるときとでは、同じとは限らない。
【0083】
図7(B)に示すとおり、回折格子13の第1方向V
1、第2方向V
2、第3方向V
3の各々の構造周期(ピッチ)をPとおき、回折格子13のシフト方向(x方向)と第1方向V
1とのなす角をθ
1とおき、回折格子13のシフト方向(x方向)と第2方向V
2とのなす角をθ
2とおき、回折格子13のシフト方向(x方向)と第3方向V
3とのなす角をθ
3とおくと、光束選択方向が第1方向V
1であるときに必要な回折格子13のx方向のシフト量L
1は、L
1=φ×P/(4π×|cosθ
1|)で表され、光束選択方向が第2方向V
2であるときに必要な回折格子13のx方向のシフト量L
2は、L
2=φ×P/(4π×|cosθ
2|)で表され、光束選択方向が第3方向V
3であるときに必要な回折格子13のx方向のシフト量L
3は、L
3=φ×P/(4π×|cosθ
3|)で表される。
【0084】
すなわち、干渉縞の位相シフト量を所望の値φとするために必要な回折格子13のx方向のシフト量Lは、波長選択方向(第1方向V
1、第2方向V
2、第3方向V
3の何れか)とx方向とのなす角θにより式(1)のとおり表される。
【0085】
L=φ×P/(4π×|cosθ|) …(1)
因みに、構造化照明光の縞の位相シフト量φを2πとするために必要な回折格子13のx方向のシフト量Lは、P/(2×|cosθ|)となる。これは、回折格子13の半周期に相当する量である。つまり、回折格子13を半周期分シフトさせるだけで、構造化照明光の位相を1周期分シフトできる(なぜなら、±1次回折光からなる構造化照明光の縞ピッチは、回折格子13の構造周期の2倍に相当する。)。
【0086】
次に、間隔調整部200を詳しく説明する。
【0087】
図8は、間隔調整部200が備えられなかった場合の照明光学系10の光路を示しており、
図9は、間隔調整部200が備えられた場合の照明光学系10の光路を示している。
図8、
図9における(A)は、光源波長が長い波長λ1であった場合を示しており、
図8、
図9における(B)は、光源波長が短い波長λ2であった場合を示している。なお、
図8、
図9では、励起フィルタ28及びダイクロイックミラー7の図示は省略した。
【0088】
図8(A)→
図8(B)に示すとおり、光源波長が長い波長λ1から短い波長λ2へ切り替わると、回折格子13から射出する±1次回折光束の回折角度(分岐量)が小さくなるため、間隔調整部200が仮に備えられなかった場合は、
図8(A)、(B)の左端に示すとおり瞳面6Aにおける±1次回折光束それぞれの集光点の光軸AZからの高さが変化してしまう。なお、ここでは、光軸AZから光線までの距離を単に「高さ」と称す。
【0089】
このように集光点の高さが波長λ1、λ2の間で変化してしまうと、波長λ1、λ2の間で超解像効果が変化してしまう。超解像効果とは、非変調時の解像力(一様照明光による解像力)を基準とした変調時の解像力(構造化照明光による解像力)の割合のことであって、(超解像効果)=(構造化照明光による解像力)/(一様照明光による解像力)=(瞳径+集光点間の距離)/(瞳径)が成り立つ。よって、対物レンズ6の瞳半径に対する集光点の高さの割合が大きいほど、超解像効果は高くなる。
【0090】
そこで、
図9に示すとおり、間隔調整部200には、集光レンズ16の側から入射した±1次回折光束の一方(ここでは+1次回折光束とする。)の光路の方向を偏向するためのプリズム202(ここではその偏向方向を光軸AZから離れる方向とする。)と、プリズム202にて偏向した+1次回折光束を反射し、その+1次回折光束の光路の方向を、元の方向(プリズム202へ入射する際の光路と同じ方向)に戻すためのプリズム201とが備えられる。
【0091】
また、
図9に示すとおり、間隔調整部200には、集光レンズ16の側から入射する±1次回折光束の他方(ここでは−1次回折光束)の光路の方向を偏向するためのプリズム202’(ここではその偏向方向を光軸AZから離れる方向とする。)と、プリズム202’にて偏向した−1次回折光束を反射し、その−1次回折光束の光路の方向を、元の方向(プリズム202’へ入射する際の光路と同じ方向)に戻すためのプリズム201’とが備えられる。
【0092】
なお、本実施形態の構造化照明光に使用される回折光束は、前述したとり次数が共通の回折光束(±1次回折光束)であり、その±1次回折光束の光路は、光軸AZに関して対称な関係に保たれる必要がある。
【0093】
よって、間隔調整部200の上流側のプリズム202、202’の反射面の配置関係は、光軸AZに関して対称な関係に保たれ、下流側のプリズム201、201’の反射面の配置関係は、光軸AZに関して対称な関係に保たれる。
【0094】
そして、間隔調整部200の上流側のプリズム202、202’は、
図9(A)→
図9(B)に示すとおり、互いの位置関係を光軸AZに関して対称な関係に保ちつつ、互いの間隔を変化させることが可能である。
【0095】
したがって、
図9(A)、(B)に示すとおり、光源波長に応じてプリズム202、202’の間隔を調整すれば、瞳面6Aにおける±1次回折光束の集光点の間隔を、一定に保つことができる。これによって、超解像効果も一定に保たれる。
【0096】
また、
図8に示すとおり、間隔調整部200が備えられなかった場合は、瞳面6Aにおける±1次回折光束の集光点は、所定の輪帯状領域(エバネッセント場の生成条件を満たすTIRF領域)に収まっているとは限らない。
【0097】
よって、
図9に示すとおり、間隔調整部200の下流側のプリズム201、201’の間隔は、±1次回折光束が瞳面6Aに形成する集光点が所定の輪帯状領域(エバネッセント場の生成条件を満たすTIRF領域)に収まるような最適値に保たれる。これによって、エバネッセント場の生成条件(TIRF条件)が維持される。
【0098】
また、このような間隔調整部200によれば、±1次回折光束の回折角度(分岐量)が小さかったとしても、瞳面6Aにおける±1次回折光束の集光点の間隔を適正値にすることができるので、回折格子13の構造ピッチに対する自由度が高い。
【0099】
したがって、本実施形態では、回折格子13として、構造ピッチの粗い安価な回折格子(製造が容易な回折格子)を使用することが可能である。
【0100】
また、上述した制御装置39は、瞳面6Aにおける集光点の間隔が最適値に保たれるよう、光源波長の切り替えに応じてプリズム202、202’の間隔を自動的に切り替えることが望ましい。なお、制御装置39によるプリズム202、202’の間隔の切り替えは、間隔調整部200の調整機構200Aを介して行われる。
【0101】
但し、プリズム202、202’の間隔が変化すると、±1次回折光束の光路長も変化するため、±1次回折光束の集光点が瞳面6Aの前側又は後側へとずれる可能性がある。そこで、上述した制御装置39は、プリズム202、202’の間隔と、光ファイバ11の出射端の光軸AZ方向の位置とを連動させることにより、このような集光点のズレを補償することが望ましい。なお、制御装置39による出射端の位置の調整は、位置調整機構11A(
図1を参照。)を介して行われる。
【0102】
以下、間隔調整部200の調整機構200Aの具体例を説明する。
【0103】
図10は、間隔調整部200の調整機構200Aの具体例を示す図である。
図10に示す調整機構200Aは、プリズム201、202の間隙の一部(光路を妨げない位置)に対して挿脱される楔状部材203と、プリズム201’、202’の間隙の一部(光路を妨げない位置)に対して挿脱される楔状部材203’とを備える。
【0104】
このうち一方の楔状部材203は、プリズム201、202の間隙に対して標本側から挿入され、楔状部材203の光軸AZと垂直な方向の厚さは、標本側ほど厚く設定されている。
【0105】
また、他方の楔状部材203’は、プリズム201’、202’の間隙に対して標本側から挿入され、楔状部材
203’の光軸AZと垂直な方向の厚さは、標本側ほど厚く設定されている。
【0106】
よって、楔状部材203、203’の各々の挿入量が多いほど、上流側のプリズム202、202’の間隔は狭まり、楔状部材203、203’の各々の挿入量が少ないほど、上流側のプリズム202、202’の間隔は広がる。
【0107】
なお、図示省略したが、この調整機構200Aには、楔状部材203、203’の移動方向を光軸AZ方向に制限する不図示のガイド部材や、プリズム202、202’の移動方向を光軸AZと垂直な方向に制限する不図示のガイド部材や、プリズム201、201’を固定する不図示の固定部材なども備えられる。
【0108】
また、楔状部材203の移動方向及び移動量と、楔状部材203’の移動方向及び移動量とは、互いに共通であるので、これらの楔状部材203、203’は、互いに共通の部材で構成されてもよい。或いは、これらの楔状部材203、203’は、互いに固定されていてもよい。
【0109】
ところで、本実施形態では、干渉縞の方向を上述した3方向(第1方向V
1、第2方向V
2、第3方向V
3)の間で切り替える。それに対応するため、間隔調整部200も、以上のプリズム群(プリズム201、202、201’、202’)及び調整機構200Aを、
図11に示すとおり上述した3方向(第1方向V
1、第2方向V
2、第3方向V
3)の各々について予め用意している。
【0110】
なお、
図11に示すのは、間隔調整部200の一例を光源側から見た図である。この例では、プリズム群(プリズム201、202、201’、202’)が3群配置されており、そのうち1群は、分岐方向が第1方向V
1である±1次回折光束を導光するためのプリズム群であり、他の1群は、分岐方向が第2方向V
2である±1次回折光束を導光するためのプリズム群であり、残りの1群は、分岐方向が第3方向V
3である±1次回折光束を導光するためのプリズム群である。
【0111】
また、この例では、各方向の楔状部材が共通の部材(符号203)で構成されている。また、
図11の符号204で示す部材は、各方向のプリズム201、201’を固定するための固定部材である。
【0112】
[第1実施形態の変形例]
なお、第1実施形態では、
図1に示したとおり同一の瞳共役面6A’の近傍に間隔調整部200と光束選択部24との双方を配置したが、照明光学系10に対してリレー光学系を挿入することで瞳共役面の数を増やし、互いに異なる2つの瞳共役面の一方の近傍及び他方の近傍に対して間隔調整部200及び光束選択部24を個別に配置してもよい。
【0113】
但し、その場合も、光束選択部24の挿入先は、間隔調整部200の挿入先よりも下流側であることが望ましい。なぜなら、光束選択部24の配置先を間隔調整部200の配置先よりも下流側にしておけば、光束選択部材18に対する±1次回折光束の入射位置が間隔調整部200の作用により不変となるため、光束選択部材18の開口部のサイズを最小限とすることができるからである。
【0114】
また、第1実施形態では、光源波長の数の切り替え数を2としたが、3以上に拡張してもよい。その場合、間隔調整部200におけるプリズム202、202’の間隔の可変ステップ数を3以上とすればよい。
【0115】
また、第1実施形態の間隔調整部200は、プリズム群(プリズム201、202、201’、202’)を3方向(第1方向V
1、第2方向V
2、第3方向V
3)の各々について予め用意したが、1方向についてのみ用意すると共に、それらのプリズム群(プリズム201、202、201’、202’)の全体を光軸AZの周りに回動させる機構を、更に備えてもよい。
【0116】
その場合、上述した制御装置39は、そのプリズム群(プリズム201、202、201’、202’)の回動位置を、光束選択部
材18の回動位置に連動させればよい。
【0117】
また、第1実施形態の間隔調整部200は、
図9に矢印で示したとおり、下流側に配置されたプリズム(プリズム201、201’)と、上流側に配置されたプリズム(プリズム202、202’)のうち、後者の間隔のみを可変としたが、それに加えて、
図12に矢印で示すとおり、下流側に配置されたプリズム(プリズム201、201’)の間隔を可変としてもよい。
【0118】
但し、その場合であっても、瞳面6Aの最外周の輪帯状領域(エバネッセント場の生成条件を満たすための領域)から±1次回折光束の集光点が外れないよう、プリズム201、201’の間隔の調整範囲を制限することが望ましい。
【0119】
このようにすれば、エバネッセント場の生成条件(TIRF条件)を維持しながら、エバネッセント場の深さ(=標本5に対するエバネッセント光の浸み出し量)を微調整することができる。具体的には、プリズム201、201’の間隔が微調整されれば、
図12の左端に矢印で示すとおり、±1次回折光束の集光点の間隔が微調整されるので、標本5の表面に入射する±1次回折光束の入射角度が微調整され、エバネッセント場の深さが微調整される。
【0120】
また、上述した制御装置39は、この微調整をユーザからの指示に応じて行うことが望ましい。これによってユーザは、エバネッセント場の深さを自由に調整することが可能となる。
【0121】
また、第1実施形態では光源波長を可変としたが、光源波長が不変である場合には、回折格子13から射出する±1次回折光束の回折角度(分岐量)が不変となるので、上流側のプリズム(プリズム202、202’)の間隔を不変とし、下流側のプリズム(プリズム201、201’)の間隔のみを可変としてもよい。
【0122】
また、第1実施形態の
図9、
図12では、プリズム201、201’の各々における回折光束の(主光線の)偏向角度を約90°としたが、90°から外れた角度としてもよいことは言うまでもない。同様に、
図9、
図12では、プリズム202、202’の各々における回折光束の(主光線の)偏向角度を90°としたが、90°から外れた角度としてもよいことは言うまでもない。
【0123】
また、第1実施形態では、光源からの射出光束を分岐する手段として、分岐方向の異なる複数の回折光束群を同時に生成する回折格子13(
図2(A)参照)を使用したが、分岐方向が共通の回折光束群を1群のみ生成する回折格子(1方向回折格子)を使用してもよい。但し、その場合は、構造化照明光の縞方向を切り替えるために、1方向回折格子を光軸AZの周りに回動させる機構が備えられる。
【0124】
また、その場合は、回動可能な光束選択部
材18の代わりに、非回動の0次光カットマスクを使用してもよい。0次光カットマスクは、2次以降の高次回折光束の光路となり得る領域にマスク部を配し、かつ、±1次回折光束の光路となり得る領域に開口部を配し、かつ、0次回折光束の光路となる領域にマスク部を配したマスクである。
【0125】
また、第1実施形態では、間隔調整部200の配置先を瞳共役面の近傍としたが、構造化照明光に寄与する回折光束の光路が互いに分離されている箇所(0次回折光束と+1次回折光束と−1次回折光束とが空間的に分離されている箇所)であれば、瞳共役面から多少離れた箇所としてもよい。但し、瞳共役面に近い方がプリズムで反射すべき回折光束の断面が小さくなるので、プリズムのサイズを小さくしてプリズムの可動範囲を確保することが容易となる。
【0126】
また、第1実施形態では、標本5に入射する±1次回折光束をS偏光に保つために、光軸AZの周りを回動可能な1/2波長板17を使用したが、固定配置された1/4波長板と光軸AZの周りを回動可能な1/4波長板とを使用してもよい。但し、その場合は、第1の基準位置を基準とした1/4波長板の回転位置は、第2の基準位置を基準とした光束選択部材18の回転位置と同じに設定される。
【0127】
また、第1実施形態では、構造化照明顕微鏡装置1が全反射蛍光顕微鏡(TIRFM)として利用される場合を説明したが、構造化照明顕微鏡装置1を3次元構造化照明顕微鏡装置(3D−SIM:3D-Structured Illumination Microscopy)として利用することもできる。
【0128】
但し、構造化照明顕微鏡装置1を3D−SIMとして使用する場合は、回折格子13で発生した0次回折光束を瞳共役面6A’にてカットせずに±1次回折光と共に標本5へ入射させる必要がある。そのためには、例えば、
図6に示した光束選択部材18の代わりに、
図13に示すような光束選択部材18’を使用すればよい。この光束選択部材18’は、
図6に示した光束選択部材18において、0次回折光束を通過するための開口部29を設けたものである。
【0129】
なお、この開口部29の形成先は、光軸AZの近傍であって、この開口部29の形状は、例えば円形である。このような光束選択部材18’によると、±1次回折光束だけでなく0次回折光束をも干渉縞に寄与させることができる。
【0130】
このように、3つの回折光束の干渉(3光束干渉)によって生成される干渉縞は、標本5の面方向だけでなく、標本5の深さ方向にも空間変調されている。よって、この干渉縞によると、標本5の深さ方向にも超解像効果を得ることが可能となる。
【0131】
但し、構造化照明顕微鏡装置1を3D−SIMとして使用する場合、間隔調整部200の外形は、0次回折光束の光路を妨げないよう適切に整えられるものとする。
【0132】
そして、この3次元構造化照明顕微鏡装置においては、間隔調整部200がプリズム202、202’の間隔を光源波長に応じて調整すれば、超解像効果を一定に保つことができる。
【0133】
また、この3次元構造化照明顕微鏡装置においては、間隔調整部200がプリズム201、201’の間隔を調整すれば、超解像効果を調整することができる。
【0134】
また、第1実施形態では、回折格子13における±1次回折光束の回折角度(分岐量)が比較的小さい場合を想定し、
図9、
図12に示すとおり、それら±1次回折光束の光路の間隔を広げる機能を間隔調整部200へ付与したが、回折格子13における±1次回折光束の回折角度(分岐量)が比較的大きい場合には、
図14に示すとおり、それら±1次回折光束の光路の間隔を狭める機能を間隔調整部200へ付与すればよい。
【0135】
その場合、上流側のプリズム202、202’による±1次回折光束の偏向方向は、光軸AZから離れる方向ではなく、光軸AZに近づく方向となるので、上流側のプリズム202、202’の方が、下流側のプリズム201、201’よりも内側(光軸AZに近い側)に位置する。
【0136】
また、第1実施形態の間隔調整部200は、プリズム群(プリズム201、202、201’、202’)を使用したが、それらプリズムの一部又は全部の代わりに反射鏡を使用してもよいことは言うまでもない。
【0137】
また、第1実施形態では、構造化照明顕微鏡装置1をTIRF−SIMとして使用する際に、干渉縞に寄与する回折光束として、+1次回折光束と−1次回折光束との組み合わせを使用したが、他の組み合わせを使用してもよいことは言うまでもない。
【0138】
また、第1実施形態では、構造化照明顕微鏡装置1を3D−SIMとして使用する際に、干渉縞に寄与する回折光束として、+1次回折光束と−1次回折光束と0次回折光束との組み合わせを使用したが、他の組み合わせを使用してもよいことは言うまでもない。
【0139】
また、以上の説明では、対物レンズ6の交換について言及しなかったが、瞳面サイズの異なる複数の対物レンズの間で対物レンズ6が切り替わる場合には、対物レンズ6の切り替えに応じて調整機構200Aを駆動することにより、超解像効果を維持することが望ましい。
【0140】
[第1実施形態の作用効果]
以上、第1実施形態の構造化照明装置は、光源(100)からの射出光束を少なくとも2つの分岐光束に分岐する分岐手段(13)と、前記2つの分岐光束を対物レンズ(6)の瞳面(6A)の互いに異なる位置へそれぞれ集光させることで前記2つの分岐光束を前記対物レンズ(6)の物体側で互いに干渉させ、その干渉縞で標本(5)を照明する照明光学系(10)と、前記照明光学系(10)の光軸(AZ)から、前記2つの分岐光束が前記瞳面(6A)に形成する2つの集光点までの高さを、調整又は制御する調整手段(200)とを備え、前記調整手段(200)は、前記2つの分岐光束の波長に応じた偏向角で前記2つの分岐光束を偏向する光学部材(201、202、201’、202’)を含む。
【0141】
そして、前記調整手段(200)は、前記2つの分岐光束の一方である第1光束の光路を偏向するための第1反射面(202)と、前記第1反射面(202)で偏向した前記第1光束の光路の方向を元の方向に戻すための第2反射面(201)と、前記2つの分岐光束の他方である第2光束の光路を偏向するための第3反射面(202’)と、前記第3反射面(202’)で偏向した前記第2光束の光路の方向を元の方向に戻すための第4反射面(201’)とを備え、前記1反射面(202)及び前記第3反射面(202’)の位置関係と、前記第2反射面(201)及び前記第4反射面(201’)の位置関係との少なくとも一方は、可変である。
【0142】
したがって、第1実施形態の構造化照明装置は、構造化照明顕微鏡装置(1)の超解像効果を調整又は制御することが可能である。
【0143】
なお、第1実施形態の構造化照明装置は、前記2つの集光点の光軸(AZ)方向の位置を調整するための位置調整手段(11A)を更に備える。
【0144】
したがって、第1実施形態の構造化照明装置は、前記超解像効果の調整時に発生し得るフォーカスズレにも対処できる。
【0145】
また、前記調整手段(200)は、前記2つの集光点の位置関係を光軸(AZ)に関して対称な関係に保つ。
【0146】
したがって、第1実施形態の構造化照明装置は、前記超解像効果の調整時に発生し得る干渉縞の品質低下を防ぐことができる。
【0147】
また、前記分岐手段(13)は、回折光学素子である。
【0148】
このように、前記分岐手段(13)として回折光学素子を使用すると、前記2つの分岐光束の分岐量が波長に依存してしまうので、前記2つの集光点の光軸(AZ)からの高さが波長に依存する、つまり、超解像効果が波長に依存する虞があった。しかし、第1実施形態の構造化照明装置は、前記調整手段(200)を備えるので、超解像効果の波長依存性を抑えることが可能である。
【0149】
また、前記高さは、所定範囲内の値に調整され、前記所定範囲は、前記2つの分岐光束が前記標本の表面近傍にエバネッセント場を生成可能な範囲のことである。
【0150】
したがって、第1実施形態の構造化照明装置は、超解像効果の調整時に発生し得るTIRF条件の崩れを防止することができる。
【0151】
また、前記高さは、ユーザからの指示に応じて前記所定範囲内で微調整される。
【0152】
したがって、ユーザは、TIRF条件が崩れない範囲内で自由に超解像効果を調節することができる。
【0153】
また、前記光源(100)は、前記射出光束の波長を切り替え可能であり、前記高さは、前記波長の切り替えに拘らず所定値に調整される。
【0154】
したがって、第1実施形態の構造化照明装置は、超解像効果の波長依存性を確実に抑えることができる。
【0155】
また、第1実施形態の構造化照明装置は、前記2つの集光点の位置を光軸(AZ)の周りの複数の回転位置の間で切り替える切替手段(18)を更に備え、前記調整手段(200)は、前記複数の回転位置毎に用意されている。
【0156】
或いは、第1実施形態の構造化照明装置は、前記2つの集光点の位置を光軸(AZ)周りの複数の回転位置の間で切り替える第1切替手段(18)と、前記調整手段(200)の位置を前記複数の回転位置の間で切り替える第2切替手段とを更に備える。
【0157】
また、第1実施形態の構造化照明装置は、前記干渉縞の位相をシフトさせる位相シフト手段(15A)を更に備える。
【0158】
したがって、第1実施形態の構造化照明装置は、標本(5)に投影される干渉縞の方向及び位相を切り替えることが可能である。
【0159】
また、第1実施形態の構造化照明顕微鏡装置(1)は、以上説明した何れかの構造化照明装置と、前記干渉縞で変調された前記標本(5)からの観察光束を光検出器(35)に結像する結像光学系(30)とを備える。
【0160】
したがって、第1実施形態の構造化照明顕微鏡装置(1)は、前記標本(5)の変調像を画像化することができる。
【0161】
また、第1実施形態の構造化照明顕微鏡装置(1)は、前記光検出器(35)が生成した画像に基づき前記標本(5)の復調像を演算する演算手段(40)を更に備える。
【0162】
したがって、第1実施形態の構造化照明顕微鏡装置(1)は、前記標本(5)の超解像画像を取得することができる。
【0163】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態として構造化照明顕微鏡装置を説明する。
【0164】
先ず、本実施形態の構造化照明顕微鏡装置の構成を説明する。第1実施形態との主な相違点は、間隔調整部200の構成及び配置先である。
【0165】
なお、本実施形態の間隔調整部200によると、2種類の波長による同時観察が可能となるので、ここでは同時観察を行うための装置の構成例を説明する。
【0166】
図15に示すとおり本実施形態の構造化照明顕微鏡装置1には、レーザユニット100と、光ファイバ11と、照明光学系10と、結像光学系30と、第1撮像素子351と、第2撮像素子352と、制御装置39と、画像記憶・演算装置40と、画像表示装置45とが備えられる。なお、照明光学系10は落射型であり、結像光学系30の対物レンズ6及びダイクロイックミラー7を利用して標本5の照明を行う。
【0167】
レーザユニット100には、第1レーザ光源101、第2レーザ光源102、シャッタ1031、1032、ミラー105、ダイクロイックミラー106、レンズ107が備えられる。第1レーザ光源101及び第2レーザ光源102の各々は可干渉光源であって、互いの出射波長は異なる。ここでは、第1レーザ光源101の波長λ1は、第2レーザ光源102の波長λ2よりも長いと仮定する(λ1>λ2)。これらの第1レーザ光源101、第2レーザ光源102、シャッタ1031、1032は、それぞれ制御装置39によって駆動される。
【0168】
光ファイバ11は、レーザユニット100から射出したレーザ光を導光するために、例えば、偏波面保存型のシングルモードファイバによって構成される。この光ファイバ11の出射端の光軸AZ方向の位置は、位置調整機構11Aによって調節可能である。この位置調整機構11Aは、制御装置39によって駆動される。
【0169】
照明光学系10には、光ファイバ11の出射端側から順に、コレクタレンズ12と、偏光板23と、光束分岐部15と、間隔調整部200と、集光レンズ16と、光束選択部24と、レンズ25と、視野絞り26と、フィールドレンズ27と、励起フィルタ28と、ダイクロイックミラー7と、対物レンズ6とが配置される。
【0170】
光束分岐部15には、第1実施形態と同様の回折光学素子(回折格子)13と、第1実施形態と同様の並進機構15Aとが備えられ、間隔調整部200には、複数のプリズム(詳細は後述)が備えられ、光束選択部24には、第1実施形態と同様の1/2波長板17と、第1実施形態と同様の光束選択部材18と、第1実施形態と同様の回動機構24Aとが備えられる。なお、並進機構15A、回動機構24Aは、制御装置39によって第1実施形態と同様に駆動される。
【0171】
結像光学系30には、標本5の側から順に、対物レンズ6と、ダイクロイックミラー7と、バリアフィルタ31と、第2対物レンズ32と、第2ダイクロイックミラー35と、が配置される。
【0172】
標本5は、例えば、平行平板状のガラス表面に滴下された培養液であって、その培養液におけるガラス界面の近傍には、蛍光性を有した細胞(蛍光色素で染色された細胞)が存在している。この細胞には、波長λ1の光によって励起される第1蛍光領域と、波長λ2の光によって励起される第2蛍光領域との双方が発現している。
【0173】
なお、第1蛍光領域は、波長λ1の光に応じて中心波長λ1’の第1蛍光を発生させ、第2蛍光領域は、波長λ2の光に応じて中心波長λ2’の第2蛍光を発生させる。
【0174】
対物レンズ6は、全反射蛍光観察を可能とするために、液浸型(油浸型)の対物レンズとして構成される。つまり、対物レンズ6と標本5のガラスとの間隙は、浸液(油)で満たされている。
【0175】
第1撮像素子351、第2撮像素子352の各々は、CCDやCMOS等からなる二次元の撮像素子である。第1撮像素子351、第2撮像素子352の各々は、制御装置39によって駆動されると、第1撮像素子351の撮像面361、第2撮像素子352の撮像面362の各々に形成された像を撮像し、画像を生成する。これら第1撮像素子351、第2撮像素子352の各々が生成した画像は、制御装置39を介して画像記憶・演算装置40へと取り込まれる。
【0176】
制御装置39は、レーザユニット100、位置調整機構11A、並進機構15A、回動機構24A、第1撮像素子351、第2撮像素子352を駆動制御する。
【0177】
画像記憶・演算装置40は、制御装置39を介して与えられた画像に対して演算を施し、演算後の画像を不図示の内部メモリに格納すると共に、画像表示装置45へ送出する。
【0178】
次に、構造化照明顕微鏡装置1におけるレーザ光の振る舞いを説明する。
【0179】
第1レーザ光源101から射出した波長λ1のレーザ光(第1レーザ光)は、シャッタ1031を介してミラー105へ入射すると、ミラー105を反射し、ダイクロイックミラー106へ入射する。一方、第2レーザ光源102から射出した波長λ2のレーザ光(第2レーザ光)は、シャッタ1032を介して
ダイクロイックミラー106へ入射し、第1レーザ光と統合される。ダイクロイックミラー106から射出した第1レーザ光及び第2レーザ光は、レンズ107を介して光ファイバ11の入射端に入射する。
【0180】
なお、制御装置39は、レーザユニット100のシャッタ1031、1032を制御することにより、光ファイバ11の入射端に入射するレーザ光の波長(=光源波長)を、長い波長λ1と短い波長λ2との間で切り替えたり、光源波長を長い波長λ1と短い波長λ2との双方に設定したりすることができる。
【0181】
光ファイバ11の入射端に入射したレーザ光は、光ファイバ11の内部を伝搬して光ファイバ11の出射端に点光源を生成する。その点光源から射出したレーザ光は、コレクタレンズ12によって平行光束に変換され、偏光板23を介して回折格子13へ入射すると、各次数の回折光束に分岐される。これら各次数の回折光束は、間隔調整部200を介して集光レンズ16に入射すると、集光レンズ16によって瞳共役面6A’の互いに異なる位置に集光される。
【0182】
ここで、瞳共役面6A’は、集光レンズ16の焦点位置(後ろ側焦点位置)であって、後述する対物レンズ6の瞳6A(±1次回折光が集光する位置)に対してフィールドレンズ27、レンズ25を介して共役な位置のことである。但し、ここでいう「共役な位置」の概念には、当業者が対物レンズ6、フィールドレンズ27、レンズ25の収差、ビネッティング等の設計上必要な事項を考慮して決定した位置も含まれるものとする。
【0183】
なお、光ファイバ11から射出したレーザ光は基本的に直線偏光しているので、偏光板23は、省略することも可能であるが、余分な偏光成分を確実にカットするために有効である。また、レーザ光の利用効率を高めるため、偏光板23の軸は、光ファイバ11から射出したレーザ光の偏光方向に一致していることが望ましい。
【0184】
瞳共役面6A’に向かった各次数の回折光束は、瞳共役面6A’の近傍に配置された光束選択部24へ入射する。
【0185】
ここで、本実施形態の構造化照明顕微鏡装置1は、TIRFM(全反射蛍光顕微鏡)として利用されるので、光束選択部24は、入射した各次数の回折光束のうち、1対の回折光束のみ(ここでは±1次回折光束のみ)を選択的に通過させるものとする。
【0186】
光束選択部24を通過した±1次回折光束は、レンズ25によって視野絞り26付近で回折格子13と共役な面を形成した後に、フィールドレンズ27により
収束光に変換され、さらに励起フィルタ28を経てからダイクロイックミラー7で反射し、対物レンズ6の瞳面6A上の互いに異なる位置に集光される。
【0187】
瞳面6A上に集光した±1次回折光束の各々は、対物レンズ6の先端から射出される際には平行光束となり、標本5の表面で互いに干渉し、干渉縞を形成する。この干渉縞が、構造化照明光として使用される。
【0188】
また、本実施形態の構造化照明顕微鏡装置1は、TIRFM(全反射蛍光顕微鏡)として利用されるので、標本5の表面に入射する際の入射角度は、エバネッセント場の生成条件(全反射条件)を満たしている。以下、全反射条件を「TIRF条件」と称す。
【0189】
TIRF条件を満たすためには、瞳面6Aにおける±1次回折光束の集光点は、瞳面6Aの最外周に位置する所定の輪帯状領域に位置している必要がある。前述した間隔調整部200は、瞳面6Aにおける1対の回折光束の集光点の間隔を調整し、両者の集光点を所定の輪帯状領域に収めるために設けられたものである(詳細は後述)。この調整の結果、標本5の表面近傍には、干渉縞によるエバネッセント場が生起する。
【0190】
このような干渉縞により標本5を照明すると、干渉縞の周期構造と標本5上の蛍光領域の周期構造との差に相当するモアレ縞が現れるが、このモアレ縞においては、蛍光領域の高周波数の構造が元の周波数より低周波数側にシフトしているため、この構造を示す蛍光は、元の角度よりも小さい角度で対物レンズ6へ向かうことになる。よって、干渉縞により標本5を照明すると、蛍光領域の高周波数の構造情報までもが対物レンズ6によって伝達される。
【0191】
標本5の表面近傍(エバネッセント場)で発生した蛍光は、対物レンズ6に入射すると、対物レンズ6で平行光に変換された後、ダイクロイックミラー7及びバリアフィルタ31を透過し、第2ダイクロイックミラー35へ入射する。第2ダイクロイックミラー35へ入射した波長λ1’の第1蛍光は、第2ダイクロイックミラー35を反射し、第2ダイクロイックミラー35へ入射した波長λ2’の第2蛍光は、第2ダイクロイックミラー35を透過する。
【0192】
第2ダイクロイックミラー35を反射した第1蛍光は、第1撮像素子351の撮像面361上に第1蛍光領域の変調像を形成し、第2ダイクロイックミラー35を透過した第2蛍光は、第2撮像素子352の撮像面362上に第2蛍光領域の変調像を形成する。
【0193】
撮像面361に形成された第1蛍光領域の変調像、撮像面362に形成された第2蛍光領域の変調像は、第1撮像素子351、第2撮像素子352によって個別に画像化され、第1蛍光領域の変調画像と、第2蛍光領域の変調画像とが生成される。
【0194】
第1蛍光領域の変調画像と、第2蛍光領域の変調画像とは、制御装置39を介して画像記憶・演算装置40へと取り込まれる。さらに、取り込まれた第1蛍光領域の変調画像と、第2蛍光領域の変調画像との各々には、画像記憶・演算装置40において公知の復調演算が施され、第1蛍光領域の復調画像(超解像画像)と、第2蛍光領域の復調画像(超解像画像)とが生成される。そして、これらの超解像画像は、画像記憶・演算装置40の内部メモリ(図示せず)に記憶されるとともに、画像表示装置45へと送出される。なお、公知の復調演算としては、例えば、米国特許8115806号明細書に開示された方法が用いられる。
【0195】
次に、本実施形態の間隔調整部200を詳しく説明する。
【0196】
図16は、間隔調整部200が備えられなかった場合の照明光学系10の光路を示しており、
図17は、間隔調整部200が備えられた場合の照明光学系10の光路を示している。
図16、
図17における(A)は、光源波長が長い波長λ1であった場合を示しており、
図16、
図17における(B)は、光源波長が短い波長λ2であった場合を示している。なお、
図16、
図17では、励起フィルタ28及びダイクロイックミラー7の図示は省略した。
【0197】
光源波長が長い波長λ1である場合と光源波長が短い波長λ2である場合を比較すると、回折格子13から射出する±1次回折光束の回折角度(分岐量)が異なるため、
図16(A)、
図16(B)に示すとおり間隔調整部200が仮に備えられないと、瞳面6Aにおける±1次回折光束の集光点の高さが異なる(±1次回折光束の集光点の間隔が異なる。)。なお、ここでは、光軸AZから光線までの距離を単に「高さ」と称す。
【0198】
このように集光点の高さが波長λ1、λ2の間で異なると、超解像効果も波長λ1、λ2の間で異なる。超解像効果とは、非変調時の解像力(一様照明光による解像力)を基準とした変調時の解像力(構造化照明光による解像力)の割合のことであって、対物レンズ6の瞳半径に対する集光点の高さの割合が大きいほど、超解像効果は高くなる。
【0199】
また、集光点の高さが波長λ1、λ2の間で異なると、波長λ1、λ2の双方の集光点をTIRF領域に収めることができない虞がある。TIRF領域とは、瞳面6Aの最外周に位置する所定の輪帯状領域であって、このTIRF領域に集光点を収めなければTIRF条件を満すことができないので、全反射観察ができなくなる。
【0200】
そこで、本実施形態では、
図17に示すような間隔調整部200(
図17参照)を採用する。
【0201】
先ず、間隔調整部200の配置先は、回折格子13から瞳面6Aまでの光路のうち、0次回折光束と+1次回折光束と−1次回折光束とが空間的に分離されている箇所であって、瞳面6A又は瞳共役面6A’から外れた箇所である。因みに、間隔調整部200の配置先が瞳面6A又は瞳共役面6A’に近過ぎると、間隔調整部200の機能を十分に発揮させることができなくなる。
【0202】
また、間隔調整部200の配置先は、+1次回折光束と−1次回折光束との各々が集光光束又は発散光束となっている箇所(集光レンズ16とレンズ25との間、フィールドレンズ27と瞳面6Aとの間)よりも、+1次回折光束と−1次回折光束との各々が平行光束となっている箇所(回折格子13と集光レンズ16との間、レンズ25とフィールドレンズ27との間)である方が望ましい。その方が間隔調整部200の設計が容易になるからである。
【0203】
また、間隔調整部200の配置先は、+1次回折光束と−1次回折光束とが互いに離れながら進行する箇所(回折格子13と集光レンズ16との間、視野絞り26とフィールドレンズ27との間)であっても、+1次回折光束と−1次回折光束とが互いに近づきながら進行する箇所(レンズ25と視野絞り26との間)であっても構わない。配置先をどちらにするかは、照明光学系10内の配置スペースに応じて適切に選択されればよい。
【0204】
ここでは、間隔調整部200の配置先を、
図17に示すとおり回折格子13と集光レンズ16との間と仮定する。この配置先は、+1次回折光束と−1次回折光束との各々が平行光束となり、かつ、+1次回折光束と−1次回折光束とが互いに離れながら進行する箇所である。
【0205】
さて、間隔調整部200には、+1次回折光束の単独光路へ挿入される屈折部材(プリズム)201と、−1次回折光束の単独光路へ挿入される屈折部材(プリズム)201’とが備えられる。プリズム201の材質とプリズム201’の材質とは互いに等しく、プリズム201の形状とプリズム201’の形状との関係は光軸AZに関して対称である。よって、光軸AZに関する+1次回折光束と−1次回折光束との対称性が間隔調整部200の配置によって崩れる虞はない。
【0206】
また、1対のプリズム201、201’の各々の光軸AZ方向の厚さは、光軸AZから離れるほど大きく設定されている。この場合、互いに離れながら進行する+1次回折光束と−1次回折光束とは、両者の乖離量が更に大きくなるような方向(光軸AZから離れる方向)へと偏向される。
【0207】
この場合、集光レンズ16に向かう±1次回折光束の角度は、大きくなる。波長λ1、波長λ2の間では角度の拡大量に差異はあるものの、光線の角度は波長λ1、λ2の双方について拡大される。なお、ここでは、光線が光軸AZと成す角度を単に「角度」と称す。
【0208】
したがって、1対のプリズム201、201’には、瞳共役面6A’における集光点の高さ(ひいては瞳面6Aにおける集光点の高さ)が拡大される方向に±1次回折光束を偏向する機能がある。
【0209】
ここで、1対のプリズム201、201’の各々の材質は、例えばガラスであって、ガラスの屈折率は、長い波長λ1の光に対する値よりも、短い波長λ2に対する値の方が大きい。このため、1対のプリズム201、201’による偏向角度は、長い波長λ1に対する値(
図17(A)参照)よりも、短い波長λ2に対する値(
図17(B)参照)の方が大きくなる。
【0210】
この場合、回折格子13から小角度で射出した短い波長λ2の光線の角度は、回折格子13から大角度で射出した長い波長λ1の光線の角度に近づく。
【0211】
したがって、1対のプリズム201、201’は、瞳共役面6A’における集光点の高さ(ひいては瞳面6Aにおける集光点の高さ)を、波長λ1、λ2の間で近づけることができる。
【0212】
なお、1対のプリズム201、201’の各々の材質としては、波長λ1、λ2に対する分散がなるべく高いもの(高分散ガラス)が使用されていることが望ましい。このようにすれば、1対のプリズム201、201’が波長λ1、λ2に与える偏向角度の差を大きくすることができる。
【0213】
これを利用し、本実施形態では、1対のプリズム201、201’が波長λ1、λ2に与える偏向角度の差は、回折格子13が波長λ1、λ2に与えた回折角度の差が相殺されるような値に設定される。
【0214】
この場合、回折格子13から小角度で射出した短い波長λ2の光線の角度は、回折格子13から大角度で射出した長い波長λ1の光線の角度と一致するので、瞳共役面6A’における集光点の高さ(ひいては瞳面6Aにおける集光点の高さ)は、波長λ1、λ2の間で共通となる。
【0215】
したがって、本実施形態では、波長λ1、λ2の間で超解像効果が共通になる。
【0216】
しかも、本実施形態では、1対のプリズム201、201’が波長λ1、λ2の双方に与える偏向角度の程度は、瞳面6Aにおける集光点がTIRF領域に収まるような値に設定されている。
【0217】
したがって、本実施形態では、全反射観察を波長λ1、λ2の双方で実施することができる。
【0218】
なお、本実施形態において、1対のプリズム201、201’の各々の姿勢は、1対のプリズム201、201’の各々に入射する光線の入射角度が0°近傍となるように設定されることが望ましい。このようにすれば、1対のプリズム201、201’による光線の偏向角度を大きくすることができるので、1対のプリズム201、201’の各々として頂角の小さいプリズムを使用することができる。
【0219】
また、本実施形態のように、1対のプリズム201、201’が光線に与える偏向角度を大きくすれば、回折格子13が光線に与える回折角度(分岐量)が仮に小さかったとしても、瞳面6Aにおける集光点の高さを大きくすることができるので、回折格子13として構造周期の粗い回折格子を使用することができる。
【0220】
また、本実施形態では、間隔調整部200の配置先を光束選択部材18の配置先より上流側としたので、光束選択部材18に対する光線の入射位置が波長λ1、λ2の間で不変となる。よって、本実施形態では、光束選択部材18に形成される開口部19、20の高さ方向のサイズを最小限に抑えることができる。
【0221】
ところで、本実施形態では、干渉縞の方向を上述した3方向(第1方向V
1、第2方向V
2、第3方向V
3)の間で切り替える。それに対応するため、間隔調整部200も、前述した1対のプリズム201、201’を、
図18に示すとおり上述した3方向(第1方向V
1、第2方向V
2、第3方向V
3)の各々について予め用意しているものとする。
【0222】
なお、
図18に示すのは、間隔調整部200の一例を光源側から見た図である。この例では、1対のプリズム201、201’が3方向(第1方向V
1、第2方向V
2、第3方向V
3)の各々に亘って配置されており、そのうち或る1対のプリズムは、分岐方向が第1方向V
1である±1次回折光束を導光するためのプリズムであり、他の1対のプリズムは、分岐方向が第2方向V
2である±1次回折光束を導光するためのプリズムであり、残りの1対のプリズムは、分岐方向が第3方向V
3である±1次回折光束を導光するためのプリズムである。
【0223】
[第2実施形態の変形例]
なお、第2実施形態では、間隔調整部200の配置先を、
図15に示したとおり回折格子13と集光レンズ16との間にしたが、視野絞り26とフィールドレンズ27との間にしてもよい。
【0224】
但し、その場合は、間隔調整部200の配置先が光束選択部材18の配置先より下流側となるので、光束選択部材18に対する±1次回折光束の入射位置が波長λ1、λ2の間でずれてしまう。
【0225】
よって、その場合は、光束選択部材18の開口部19、20の高さ方向のサイズを大きめにしておく必要がある。
【0226】
また、第2実施形態では、間隔調整部200の配置先を、+1次回折光束と−1次回折光束と互いに離れながら進行する箇所としたが、+1次回折光束と−1次回折光束とが互いに近づきながら進行する箇所(レンズ25と視野絞り26との間)としてもよい。
【0227】
但し、その場合、1対のプリズム201、201’の各々の光軸AZ方向の厚さは、光軸AZから離れるほど小さく設定される。つまり、その場合は、1対のプリズム201、201’の形状が反転する。このような1対のプリズム201、201’は、互いに近づきながら進行する+1次回折光束と−1次回折光束とを、両者の乖離量が更に小さくなるような方向(光軸AZに近づく方向)へと偏向する。
【0228】
また、第2実施形態の間隔調整部200は、干渉縞の方向の切り替えに対処するために、1対のプリズム201、201’を3組み備えたが(
図18を参照。)、これらのプリズムの一部又は全部を共通の部材で構成してもよい。例えば、全てのプリズムを1つのリング状部材で構成してもよい。
【0229】
また、第2実施形態の間隔調整部200は、干渉縞の方向の切り替えに対処するために、1対のプリズム201、201’を3組み備えたが(
図18を参照。)、1対のプリズム201、201’を1組みだけ備えると共に、その1対のプリズム201、201’の全体を光軸AZの周りに回動させる機構を更に備えてもよい。
【0230】
その場合、上述した制御装置39は、1対のプリズム201、201’の回動位置を、光束選択部
材18の回動位置に連動させればよい。
【0231】
また、第2実施形態では、光源からの射出光束を分岐する手段として、分岐方向の異なる複数の回折光束群を同時に生成する回折格子13(
図2(A)参照)を使用したが、分岐方向が共通の回折光束群を1群のみ生成する回折格子(1方向回折格子)を使用してもよい。但し、その場合は、干渉縞の方向を切り替えるために、1方向回折格子を光軸AZの周りに回動させる機構が備えられる。
【0232】
また、その場合は、回動可能な光束選択部
材18の代わりに、非回動の0次光カットマスクを使用してもよい。0次光カットマスクは、2次以降の高次回折光束の光路となり得る領域にマスク部を配し、かつ、±1次回折光束の光路となり得る領域に開口部を配し、かつ、0次回折光束の光路となる領域にマスク部を配したマスクである。
【0233】
また、第2実施形態では、標本5に入射する±1次回折光束をS偏光に保つために、光軸AZの周りを回動可能な1/2波長板17を使用したが、固定配置した1/4波長板と光軸AZの周りを回動可能な1/4波長板とを使用してもよい。但し、その場合は、第1の基準位置を基準とした1/4波長板の回転位置は、第2の基準位置を基準とした光束選択部材18の回転位置と同じに設定される。
【0234】
また、第2実施形態では、構造化照明顕微鏡装置1が全反射蛍光顕微鏡(TIRFM)として利用される場合を説明したが、構造化照明顕微鏡装置1を3次元構造化照明顕微鏡装置(3D−SIM:3D-Structured Illumination Microscopy)として利用することもできる。
【0235】
但し、構造化照明顕微鏡装置1を3D−SIMとして使用する場合は、回折格子13で発生した0次回折光束を瞳共役面6A’にてカットせずに±1次回折光と共に標本5へ入射させる必要がある。そのためには、例えば、
図6に示した光束選択部材18の代わりに、
図13に示すような光束選択部材18’を使用すればよい。この光束選択部材18’は、
図6に示した光束選択部材18において、0次回折光束を通過するための開口部29を設けたものである。
【0236】
なお、この開口部29の形成先は、光軸AZの近傍であって、この開口部29の形状は、例えば円形である。このような光束選択部材18’によると、±1次回折光束だけでなく0次回折光束をも干渉縞に寄与させることができる。
【0237】
このように、3つの回折光束の干渉(3光束干渉)によって生成される干渉縞は、標本5の面方向だけでなく、標本5の深さ方向にも空間変調されている。よって、この干渉縞によると、標本5の深さ方向にも超解像効果を得ることが可能となる。
【0238】
但し、構造化照明顕微鏡装置1を3D−SIMとして使用する場合、1対のプリズム201、201’の外形は、0次回折光束の光路を妨げないよう適切に整えられるものとする。なお、回折格子13から射出する0次回折光束の角度は、波長λ1、λ2の何れであってもゼロとなるので、0次回折光束の光路にプリズムを配置する必要は無い。
【0239】
また、第2実施形態では、構造化照明顕微鏡装置1をTIRF−SIMとして使用する際に、干渉縞に寄与する回折光束として、+1次回折光束と−1次回折光束との組み合わせを使用したが、他の組み合わせを使用してもよいことは言うまでもない。
【0240】
また、第2実施形態では、構造化照明顕微鏡装置1を3D−SIMとして使用する際に、干渉縞に寄与する回折光束として、+1次回折光束と−1次回折光束と0次回折光束との組み合わせを使用したが、他の組み合わせを使用してもよいことは言うまでもない。
【0241】
また、第2実施形態では、光源波長の数を「2」とし、撮像素子の個数を「2」としたので、2種類の蛍光を同時励起して2種類の蛍光変調像を同時に撮像することができる。しかし、第2実施形態では、撮像素子の個数を1とし、2種類の蛍光を順次に励起して2種類の蛍光変調像を順次に撮像することにしても構わない。
【0242】
また、第2実施形態では、光源波長の数を「2」としたが、3以上に拡張してもよいことは言うまでもない。
【0243】
また、第2実施形態では、間隔調整部200を1つしか備えなかったが、瞳面サイズの異なる複数の対物レンズの間で対物レンズ6が切り替わる場合には、間隔調整部200を対物レンズ毎に用意し、対物レンズ6の切り替えに応じて間隔調整部200を切り替えればよい。
【0244】
[第2実施形態の作用効果]
以上、第2実施形態の構造化照明装置は、光源(100)からの射出光束を少なくとも2つの分岐光束に分岐する回折光学素子(13)と、前記2つの分岐光束を対物レンズ(6)の瞳面(6A)の互いに異なる位置へそれぞれ集光させることで前記2つの分岐光束を前記対物レンズ(6)の物体側で互いに干渉させ、その干渉縞で標本(5)を照明する照明光学系(10)と、前記照明光学系(10)の光軸(AZ)から、前記2つの分岐光束が前記瞳面(6A)に形成する2つの集光点までの高さを、調整又は制御する調整手段(200)とを備え、前記調整手段(200)は、前記2つの分岐光束の波長に応じた偏向角で前記2つの分岐光束を偏向する光学部材(201、201’)を含む。
【0245】
そして、前記調整手段(200)は、前記光軸(AZ)から、前記2つの分岐光束が前記瞳面(6A)に形成する2つの集光点までの高さを、波長の異なる少なくとも2種類の前記射出光束(λ1、λ2)の間で略一致させる。
【0246】
具体的に、前記調整手段(200)は、前記2つの分岐光束の各々を偏向するものであり、前記調整手段(200)が前記2種類の射出光束に与える偏向角度の差は、前記回折光学素子(13)が前記2種類の射出光束に与える回折角度の差を相殺する値に設定されている。
【0247】
また、前記調整手段(200)の配置先は、前記2つの分岐光束が空間的に分離した箇所である。
【0248】
また、前記調整手段(200)は、前記2つの分岐光束が互いに離れながら進行する箇所に配置された屈折部材(201、201’)を備え、前記屈折部材の光軸(AZ)方向の厚さは、前記光軸(AZ)から離れるほど大きく設定されている。
【0249】
或いは、前記調整手段(200)は、前記2つの分岐光束が互いに近づきながら進行する箇所に配置された屈折部材(不図示)を備え、前記屈折部材(不図示)の光軸(AZ)方向の厚さは、前記光軸(AZ)から離れるほど小さく設定されている。
【0250】
したがって、第2実施形態の構造化照明装置は、前記2種類の射出光束(λ1、λ2)の間で超解像効果を共通にすることができる。
【0251】
なお、前記光源(100)は、前記2種類の射出光束(λ1、λ2)を同時又は順次に出射する。
【0252】
したがって、第2実施形態の構造化照明装置は、前記2種類の射出光束(λ1、λ2)による照明を同時又は順次に行うことができる。
【0253】
また、第2実施形態の構造化照明装置は、前記2つの集光点の位置を光軸(AZ)周りの複数の回転位置の間で切り替える切替手段(18)を更に備え、前記調整手段(200)は、前記複数の回転位置毎に用意されている。
【0254】
或いは、第2実施形態の構造化照明装置は、前記2つの集光点の位置を光軸(AZ)周りの複数の回転位置の間で切り替える第1切替手段(18)と、前記調整手段(200)の位置を前記複数の回転位置の間で切り替える第2切替手段(不図示)とを更に備える。
【0255】
また、第2実施形態の構造化照明装置は、前記干渉縞の位相をシフトさせる位相シフト手段(15A)を更に備える。
【0256】
したがって、第2実施形態の構造化照明装置は、標本(5)に投影される干渉縞の方向及び位相を切り替えることが可能である。
【0257】
また、第2実施形態の構造化照明顕微鏡装置(1)は、以上説明した何れかの構造化照明装置と、前記干渉縞で変調された前記標本(5)からの観察光束を光検出器(351、352)に結像する結像光学系(30)とを備える。
【0258】
したがって、第2実施形態の構造化照明顕微鏡装置(1)は、前記標本(5)の変調像を画像化することができる。
【0259】
また、第2実施形態の構造化照明顕微鏡装置(1)は、前記光検出器(351、352)が生成した画像に基づき前記標本(5)の復調像を演算する演算手段(40)を更に備える。
【0260】
したがって、第2実施形態の構造化照明顕微鏡装置(1)は、前記標本(5)の超解像画像を取得することができる。
【0261】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態として第2実施形態の変形例を説明する。ここでは、第2実施形態との相違点のみを説明する。相違点は、間隔調整部200の構成にある。
【0262】
図19は、第3実施形態の間隔調整部200を説明する図である。但し、
図19では、−1次回折光束の図示を省略し、長い波長λ1の+1次回折光束と短い波長λ2の+1次回折光束とを同時に描いた。
図19において、回折格子13から大角度で射出した光束が、長い波長λ1の+1次回折光束であり、回折格子13から小角度で射出した光束が、短い波長λ2の+1次回折光束である。
【0263】
図19に示すとおり、本実施形態の間隔調整部200には、1対のプリズム201、201’に加えて、1対の補助屈折部材(プリズム)202、202’とが備えられ、これらのプリズム201、201’と、プリズム202、202’とは、互いに直列の関係で順に配置される。
【0264】
先ず、上流側に配置された1対のプリズム201、201’は、光軸AZに関して対称な形状、かつ、互いに同じ材質を有している。このうち一方のプリズム201の配置先は+1次回折光束の光路であり、他方のプリズム201’の配置先は−1次回折光束の光路である。これらのプリズム201、201’の各々の光軸AZ方向の厚さは、光軸AZから離れるほど大きく設定されている。このような1対のプリズム201、201’には、第2実施形態における1対のプリズムと同様、±1次回折光束を両者の乖離量が更に大きくなるような方向へと偏向する機能がある。
【0265】
但し、本実施形態における1対のプリズム201、201’が波長λ1、λ2に与える偏向角度の差は、第2実施形態におけるそれよりも大きく、1対のプリズム201、201’を射出した直後では、短い波長λ2の光線の角度が、長い波長λ1の光線の角度よりも大きくなっているものとする。そのために、本実施形態における1対のプリズム201、201’の材質としては、波長λ1、λ2に対する分散がなるべく高いものが使用されていることが望ましい。
【0266】
次に、下流側に配置された1対のプリズム202、202’は、光軸AZに関して対称な形状、かつ、互いに同じ材質を有している。このうち一方のプリズム202の配置先は+1次回折光束の光路であり、他方のプリズム202’の配置先は−1次回折光束の光路である。これらのプリズム202、202’の各々の光軸AZ方向の厚さは、光軸AZから離れるほど小さく設定されている。このような1対のプリズム202、202’には、±1次回折光束の角度を抑え、特に、短い波長λ2の角度を強く抑えることにより、波長λ1の角度と波長λ2の角度との双方を小さな値にするという機能がある。そのために、1対のプリズム202、202’の材質としては、波長λ1、λ2に対する分散がなるべく低いものが使用されていることが望ましい。
【0267】
したがって、本実施形態では、集光レンズ16へ入射する光線の角度が、波長λ1、λ2の双方について小さな値に設定される。
【0268】
よって、本実施形態では、第2実施形態と同様の効果が得られるだけでなく、集光レンズ16として屈折力の弱いレンズを使用できるという更なる効果も得られる。
【0269】
なお、本実施形態では、下流側のプリズム202、202’の材質に上流側のプリズム201、201’の材質よりも分散の高いものを使用してしまうと、上流側のプリズム201、201’の機能を妨げてしまう。
【0270】
よって、本実施形態では、上流側のプリズム201、201’の機能を無駄にしないためにも、下流側のプリズム202、202’の材質には、上流側のプリズム201、201’の材質よりも分散の低いものが使用されることが望ましい。
【0271】
[第3実施形態の変形例]
なお、第3実施形態も第2実施形態と同様に変形することが可能である。
【0272】
例えば、第3実施形態における間隔調整部200の配置先は、第2実施形態におけるそれと同様に変更することが可能である。
【0273】
例えば、第3実施形態における間隔調整部200の配置先を、+1次回折光束と−1次回折光束とが互いに近づきながら進行する箇所(レンズ25と視野絞り26との間)とした場合は、プリズム201、201’、202、202’の各々の形状を反転させればよい。つまり、1対のプリズム201、201’の各々の光軸AZ方向の厚さは、光軸AZから離れるほど小さく設定され、1対のプリズム202、202’の各々の光軸AZ方向の厚さは、光軸AZから離れるほど大きく設定される。
【0274】
また、第3実施形態の間隔調整部200においては、上流側のプリズム201、201’の配置先と、下流側のプリズム202、202’の配置先とを、反対にしても構わない。
【0275】
[第3実施形態の作用効果]
以上、第3実施形態の調整手段(200)は、2つの分岐光束が互いに離れながら進行する箇所に配置された屈折部材(201、201’)を備えると共に、前記屈折部材(201、201’)の前側又は後側へ配置され、かつ前記屈折部材(201、201’)より分散の弱い補助屈折部材(202、202’)を備え、前記補助屈折部材(202、202’)の光軸(AZ)方向の厚さは、前記光軸(AZ)から離れるほど小さく設定されている。
【0276】
或いは、第3実施形態の調整手段(不図示)は、2つの分岐光束が互いに近づきながら進行する箇所に配置された屈折部材(不図示)を備えると共に、前記屈折部材(不図示)の前側又は後側へ配置され、かつ前記屈折部材(不図示)より分散の弱い補助屈折部材(不図示)を備え、前記補助屈折部材(不図示)の光軸(AZ)方向の厚さは、前記光軸(AZ)から離れるほど大きく設定されている。
【0277】
したがって、第3実施形態では、第2実施形態と同様の効果が得られるだけでなく、集光点を形成するための集光レンズ(16)として、屈折力の弱いレンズを使用できるという更なる効果も得られる。
【0278】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態として第2実施形態の変形例を説明する。ここでは、第2実施形態との相違点のみを説明する。相違点は、間隔調整部200の構成にある。
【0279】
図20は、第4実施形態の間隔調整部200を説明する図である。但し、
図20では、−1次回折光束の図示を省略し、長い波長λ1の+1次回折光束と短い波長λ2の+1次回折光束とを同時に描いた。
図20において、回折格子13から大きな回折角度で射出した光束が、長い波長λ1の+1次回折光束であり、回折格子13から小さな回折角度で射出した光束が、短い波長λ2の+1次回折光束である。
【0280】
図20に示すとおり、本実施形態の間隔調整部200には、光軸AZに関して対称な形状、かつ互いに同じ材質の1対のプリズム203、203’が備えられる。このうち一方のプリズム203の配置先は+1次回折光束の光路であり、他方のプリズム203’の配置先は−1次回折光束の光路である。これらのプリズム203、203’の各々の光軸AZ方向の厚さは、光軸AZから離れるに従って大きく設定されている。また、1対のプリズム203、203’の各々の材質としては、波長λ1、λ2に対する分散のなるべく低いものが使用される。
【0281】
さて、本実施形態では、プリズム203の光入射面、プリズム203’の光入射面に、回折光学面203a、回折光学面203a’が個別に形成されている。回折光学面203aの構造と、回折光学面203a’の構造との関係は、光軸AZに関して対称である。
【0282】
このようなプリズム203、203’は、プリズムとしての機能と、回折格子としての機能とを併せ持つ。このようなプリズム203、203’の各々は、「楔状基板に回折パターンを形成してなる回折格子」とみなすこともできる。
【0283】
これらの回折光学面203a、203a’には、回折格子13を射出した±1次回折光束の角度を抑え、特に、長い波長λ1の角度を強く抑えることにより、プリズム内部における波長λ1の角度と波長λ2の角度との双方を小さな値(例えばゼロ)にする働きがある。
【0284】
そのために、回折光学面203a、203a’の各々の構造周期は、回折格子13の構造周期と同程度に設定される。
【0285】
なお、図示省略したが、回折光学面203aでは角度の異なる各次数の回折成分が発生している。但し、本実施形態では、回折光学面203aから射出し標本5に到達できる有効な光線は、
図19に示すとおり、回折
光学面203aで発生した−1次回折成分のみと仮定し、回折光学面203aで発生した無効な光線は無視する。
【0286】
同様に、回折光学面203a’でも各次数の回折成分が発生している。しかし、本実施形態では、回折光学面203a’から射出し標本5に到達できる有効な光線は、回折光学面203a’で発生した+1次回折成分のみと仮定し、回折光学面203a’で発生した無効な光線は無視する。
【0287】
さて、上述したとおり本実施形態では、回折光学面203a、203a’の各々の構造周期を、回折格子13の構造周期と同程度に設定した。
【0288】
したがって、プリズム内部における波長λ1の角度と、プリズム内部における波長λ2の角度との各々は、ほぼゼロとなる。
なお、回折光学面203a、203a’は、予め回折光学素子を作成し、プリズム203の光入射面、プリズム203’の光入射面に貼り付けることによって形成することも可能であるし、プリズム203の光入射面、プリズム203’の光入射面にそれぞれエッチング等により直接形成することも可能である。
また、上述したとおり、1対のプリズム203、203’の各々の光軸AZ方向の厚さは、光軸AZから離れるに従って大きく設定されており、しかも、1対のプリズム203、203’の材質の波長λ1、λ2に対する分散はなるべく低く設定されている。
【0289】
したがって、プリズムから射出する際に、波長が共通の1対の光束(
図20では一方の光束は不図示。)は、互いに離れる方向へと偏向され、しかも、その偏向角度は、
図20に示すとおり、波長λ1、λ2の間でほぼ共通となる。
【0290】
したがって、
図20に示すとおり、集光レンズ16へ向かう光線の角度は、波長λ1、λ2の間で等しくなり、瞳共役面6A’における集光点の高さ(瞳面6Aにおける集光点の高さ)も、波長λ1、λ2の間で等しくなる。
【0291】
したがって、本実施形態においても、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0292】
なお、本実施形態では、プリズム内部における光線の角度を波長λ1、λ2の間で完全に一致させてしまうと、プリズムを射出する光線の角度が波長λ1、λ2の間で若干ずれてしまう。なぜなら、プリズムの分散を完全にゼロとすることはできないからである。
【0293】
そこで、本実施形態では、プリズムを射出した直後の角度が波長λ1、λ2の間で完全に一致するよう、回折
光学面203a、203a’の各々の構造周期は、回折格子13の構造周期格よりも僅かに大きく設定しておくことが望ましい。
【0294】
[第4実施形態の変形例]
なお、第4実施形態も、第2実施形態と同様に変形することが可能である。
【0295】
例えば、第4実施形態における間隔調整部200の配置先は、第1実施形態におけるそれと同様に変更することが可能である。
【0296】
例えば、第4実施形態における間隔調整部200の配置先を、+1次回折光束と−1次回折光束とが互いに近づきながら進行する箇所(レンズ25と視野絞り26との間)とした場合は、プリズム203、203’の各々の形状を反転させればよい。つまり、1対のプリズム203、203’の各々の光軸AZ方向の厚さは、光軸AZから離れるほど小さく設定される。
【0297】
また、第4実施形態の間隔調整部200においては、回折光学面203a、203a’の形成先を、プリズム203、203’の入射面側としたが、プリズム203、203’の射出面側としてもよい。
【0298】
また、第4実施形態の間隔調整部200は、回折光学面の形成先をプリズム(楔状基板)としたが、平行平板としてもよい。但し、その場合は、平行平板から射出する光線の角度(波長λ1、λ2の光線の角度)がゼロ以外の適正値となるように、平行平板の配置姿勢と回折光学面の構造周期との組み合わせが最適化されるものとする。
【0299】
[第4実施形態の作用効果]
以上、第4実施形態の調整手段(200)は、回折光学面(203a、203a’)を備え、前記回折光学面(203a、203a’)の構造周期は、射出光束を分岐する前記回折光学
素子(13)の構造周期と同程度に設定されている。
【0300】
また、第4実施形態の前記調整手段(200)は、2つの分岐光束が互いに離れながら進行する箇所に配置された屈折部材(203、203’)を備え、前記屈折部材(203、203’)の表面には前記回折光学面(203a、203a’)が形成され、前記屈折部材(203、203’)の光軸(AZ)方向の厚さは、前記光軸(AZ)から離れるほど大きく設定されている。
【0301】
或いは、第4実施形態の前記調整手段(不図示)は、2つの分岐光束が互いに近づきながら進行する箇所に配置された屈折部材(不図示)と、前記屈折部材(不図示)に形成された前記回折光学素子(不図示)とを備え、前記屈折部材(不図示)の光軸(AZ)方向の厚さは、前記光軸(AZ)から離れるほど小さく設定されている。
【0302】
したがって、第4実施形態でも、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0303】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態として第1実施形態の変形例を説明する。ここでは、第1実施形態との相違点のみを説明する。相違点は、照明光学系に間隔調整部を備える代わりに変倍機能を搭載した点にある。
【0304】
図21は、本実施形態における構造化照明顕微鏡の概略構成図であり、
図21(A)は、リレー変倍光学系が高倍端状態にあるときの様子であり、
図21(B)は、リレー変倍光学系が低倍端状態にあるときの様子である。
【0305】
図21(A)、(B)では、説明に必要の無い要素、例えば波長板、光束選択部材、機構、制御装置などの要素の図示を省略した。
【0306】
図21(A)、(B)における符号Lは点光源、符号Gcはコレクタレンズ、符号Grは回折格子、符号Pは瞳共役面、符号F.S.は視野絞り、符号Gtはフィールドレンズ、符号DMはダイクロイックミラー、符号Pobは対物レンズの瞳、符号Gobは対物レンズ、符号Sは標本面、符号Giは結像レンズ(第2対物レンズ)、符号CCDは撮像面を示している。また、
図21における実線は、回折格子Grと標本面Sとの共役に関する光線を示しており、破線は、点光源Lと対物レンズGobの瞳Pobとの共役に関する光線を示している。
【0307】
図21(A)、(B)において、第1レンズ群G1〜第5レンズ群G5(正屈折力の第1レンズ群G1、負屈折力の第2レンズ群G2、正屈折力の第3レンズ群G3、正屈折力の第4レンズ群G4、正屈折力の第5レンズ群G5)がリレー変倍光学系を構成している。このうち、第1レンズ群G1〜第4レンズ群G4は、変倍機能を有した変倍光学系であって、第5レンズ群G5は、結像機能を有した結像光学系である。なお、回折格子Grが配置されるのは、リレー変倍光学系G1〜G5の前側焦点の位置である。
【0308】
さて、
図21(A)、(B)に破線で示すように、光源Lからの光線は、コレクタレンズGcによって平行光となり、回折格子Grを照明する。回折格子Grからの光線は、変倍光学系(G1〜G4)によって変倍された後、結像光学系(G5)によって視野絞りF.S.の位置に結像する。視野絞りF.S.からの光線は、フィールドレンズGtによって収束光となり、ダイクロイックミラーDMで反射した後、瞳Pobの位置に集光し、対物レンズGobにより平行光となって標本面Sを照射する。
【0309】
また、
図21(A)、(B)に実線で示すように、標本面Sからの光線は、対物レンズGobに捕らえられ、瞳Pobを通過すると、ダイクロイックミラーDMを透過し、結像レンズGiによって撮像面CCDに結像する。
【0310】
本実施形態の構造化照明顕微鏡装置では、光源波長が長い波長λ1にセットされた場合(つまり回折格子Grにおける±1次回折光束の回折角度が大きい場合)は、リレー変倍光学系G1〜G5の倍率が低くなるように第1レンズ群G1〜第5レンズ群G5の各々の配置先を設定し(
図21(B)参照)、光源波長が短い波長λ2にセットされた場合(つまり回折格子Grにおける±1次回折光束の回折角度が小さい場合)は、リレー変倍光学系G1〜G5の倍率が高くなるように第1レンズ群G1〜第5レンズ群G5の各々の配置先を設定することにより(
図21(A)参照)、波長λ1、λ2の間で超解像効果を共通にすることができる。
【0311】
特に、本実施形態の構造化照明顕微鏡装置では、±1次回折光束の集光点が前述したTIRF領域に収まるようにリレー変倍光学系G1〜G5の倍率(つまり第1レンズ群G1〜第5レンズ群G5の各々の配置先)を制御すれば、エバネッセント場の生成条件(TIRF条件)を維持することもできる。
【0312】
また、リレー変倍光学系G1〜G5に対して、波長に依存した集光位置ズレ特性を付与してもよい。この集光位置ズレ特性は、具体的には、光軸AZに直交する方向における集光位置ズレ特性である。以下、この集光位置ズレ特性を、単に「倍率色収差」という。
【0313】
この倍率色収差は、使用波長λの切り替えに依らず±1次回折光の集光点がTIRF領域に収まり続けるように設定される。
【0314】
この倍率色収差dY(λ)は、以下の条件式を満たす。
【0315】
(fo・nw -afλ/P) ≦ dY(λ) ≦ (fo・NA - afλ/P)、
a=1(M=1、2の場合)、
a=2(M=3の場合) …(2)
但し、Mは回折格子Grが有する周期構造の方向数であり、λは複数波長の各々であり、dY(λ)は、複数波長の基準をλ
0としたときに、像高2f・λ
0/Pにおけるリレー変倍光学系G1〜G5の倍率色収差である。また、foは対物レンズGobの焦点距離、fはリレー変倍光学系G1〜G5の焦点距離、Pは回折格子Grの格子ピッチ、NAは対物レンズGobの開口数、nwは標本の屈折率である。
【0316】
因みに、本実施形態では細胞を標本としたので、nwは水の屈折率にほぼ等しい。また、本実施形態では回折格子Grの周期構造の方向数を3としたので、M=3である。
【0317】
以下、条件式(2)の意義を説明する。
【0318】
先ず、回折格子Grの格子ピッチがP、周期構造の方向数がMである場合、使用波長λのレーザ光に応じて回折格子Grで発生する1次回折光の回折角度θは、下記の式で表される。
【0319】
ここで、θは極めて小さいので、sinθ=θで近似する。
【0320】
θ=aλ/P、
a=1(M=1、2の場合)、
a=2(M=3の場合) …(3)
また、リレー変倍光学系G1〜G5が仮に無収差であって、リレー変倍光学系G1〜G5の焦点距離がfであった場合、回折格子Grから回折角度θで射出した1次回折光は、瞳面上で光軸AZからの高さがYである位置に集光する。この高さYは、下記の式で表される。
【0321】
ここで、θは極めて小さいので、tanθ=θで近似する。
【0322】
Y=fθ …(4)
また、対物レンズGobの焦点距離がfo、対物レンズGobの開口数がNAである場合、対物レンズGobの瞳半径rは下記の式で表される。
【0323】
r=foNA …(5)
よって、使用波長λの切り替えに依らず(Y+dY(λ))が下記の条件式を満たしていれば、使用波長λの切り替えに依らず1次回折光の集光点がTIRF領域に収まり続ける。つまり、TIRF条件が維持される。
【0324】
nwfo≦Y+dY(λ)≦r …(6)
この式(6)に式(3)(4)(5)を代入し、dYについて解くと、条件式(2)が得られる。
【0325】
以上の結果、条件式(2)は、使用波長λの切り替えに依らず±1次回折光の集光点をTIRF領域に収め続けるため(TIRF条件を維持するため)の条件式であることがわかる。
【0326】
また、本実施形態の構造化照明顕微鏡装置では、光軸(AZ)から集光点までの高さの制御に、光軸(AZ)に関して回転対称な光学系(リレー変倍光学系G1〜G5)を利用するので、光軸(AZ)に関する各集光点の対称性は、確実に維持される。
【0327】
また、本実施形態の構造化照明顕微鏡装置では、光軸(AZ)から集光点までの高さの制御に、光軸(AZ)に関して回転対称な光学系(リレー変倍光学系G1〜G5)を利用するので、干渉縞の方向切り替えにも対応できる。
【0328】
また、本実施形態の構造化照明顕微鏡装置では、リレー変倍光学系G1〜G5の倍率を変化させても、リレー変倍光学系G1〜G5の射出瞳位置が殆ど変動しないので、構造化照明顕微鏡装置のテレセントリック性は維持される。
【0329】
また、本実施形態では、変倍光学系G1〜G4の瞳が、その変倍光学系G1〜G4の外部(変倍光学系の後方)に位置しているので、干渉縞を制御する光学要素(前述した光束選択部など)がその瞳へ配置されても、リレー変倍光学系G1〜G5の変倍の妨げにはならない。
【0330】
[第5実施形態の変形例]
なお、第5実施形態における少なくとも1つのレンズ群は、複数のレンズで構成されても単一レンズで構成されても構わない。また、その単一レンズは、複数のレンズを接合した接合レンズであっても構わない。
【0331】
また、第5実施形態も第1実施形態と同様に変形することが可能である。
【0332】
例えば、第5実施形態では、光源波長の数の切り替え数を3以上に拡張してもよい。その場合、リレー変倍光学系G1〜G5の倍率(レンズ群G1〜G5の各々の配置先)の可変ステップ数を3以上とすればよい。
【0333】
また、第5実施形態では、光源波長が一定である期間にリレー変倍光学系G1〜G5の倍率(第1レンズ群G1〜第5レンズ群G5の各々の配置先)を可変としてもよい。
【0334】
但し、その場合であっても、前述したTIRF領域から±1次回折光束の集光点が外れないよう、リレー変倍光学系G1〜G5の倍率(第1レンズ群G1〜第5レンズ群G5の各々の配置先)の調整範囲を制限することが望ましい。
【0335】
このようにすれば、エバネッセント場の生成条件(TIRF条件)を維持しながら、エバネッセント場の深さ(=標本5に対するエバネッセント光の浸み出し量)を微調整することができる。
【0336】
また、制御装置39は、この微調整をユーザからの指示に応じて行うことが望ましい。これによってユーザは、エバネッセント場の深さを自由に調整することが可能となる。
【0337】
[第5実施形態の作用効果]
以上、第5実施形態の調整手段(G1〜G5)は、複数のレンズ群からなる変倍光学系であり、前記複数のレンズ群の配置は、前記2つの分岐光束の波長、つまり、前記分岐手段(Gr)が前記2つの分岐光束に与える偏向角に応じて設定される。
【0338】
したがって、第5実施形態では、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
[その他]
なお、第1実施形態〜第5実施形態の照明光学系10は、対物レンズ6よる落射照明光学系で構成されたが、これに限られず、対物レンズ6に代えてコンデサレンズによる透過・反射照明光学系で構成されてもよい。その場合、集光点が形成されるのは、コンデサレンズの瞳面である。
【0339】
また、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用した装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。