特許第5900528号(P5900528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900528
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】内包磁石型インナーロータの製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20160324BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   H02K15/02 K
   H02K15/03 C
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-76484(P2014-76484)
(22)【出願日】2014年4月2日
(65)【公開番号】特開2015-198540(P2015-198540A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2015年7月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 匡
(72)【発明者】
【氏名】松岡 浩
(72)【発明者】
【氏名】橋本 擁二
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−057433(JP,A)
【文献】 特開2012−161209(JP,A)
【文献】 特開2010−074926(JP,A)
【文献】 特開2008−172965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02− 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転シャフトと該回転シャフトに嵌着されたシャフト穴の周囲に複数均等に配設されたスロットを有するロータコアと該回転シャフトに固定され該ロータコアの外径よりも突出した部分を有する付属回転体とからなるコア組立体をすくなくとも該付属回転体がある一方から保持し得ると共に該ロータコアの該一方にある端面側を支持し得る保持金型と、
該コア組立体の他方から該ロータコアを収容し得る収容部と該収容部の周囲に複数均等に配設されて該スロットへ印加する配向磁場を誘導する配向ヨークと該配向ヨークの周囲に配設された配向磁場源である永久磁石とを有する配向金型と、
該収容部に収容され該配向磁場が印加された該ロータコアの該他方にある端面側から該スロットへ、加熱されて流動状態にあるバインダ樹脂と異方性磁石粒子との混合物である流動混合物を充填する充填金型とを備え、
該流動混合物が固化した異方性ボンド磁石を磁極とする内包磁石型インナーロータが該付属回転体を有する該回転シャフトに嵌着した状態で得られることを特徴とする内包磁石型インナーロータの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性ボンド磁石を磁極とする内包磁石型インナーロータの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機(発電機を含めて単に「モータ」という。)には種々のタイプがある。最近ではインバータ制御の発達と高磁気特性の希土類磁石の普及に伴い、省電力、高効率、高トルクまたは高出力が望める同期機が着目されている。
【0003】
同期機(Synchronous Motor)は、回転子(ロータ)に永久磁石を、固定子(ステータ)に電機子巻線(コイル)を備えるモータであり、電機子巻線に交流(AC)を供給して固定子に回転磁界を生じさせることにより回転子を駆動するACモータである。同期機には、永久磁石が回転子の表面に配設された表面磁石型モータ(Surface Permanent Magnet Synchronous Motor/単に「SPMモータ」ともいう。)と、その永久磁石が回転子の内部に配設された内包(埋込)磁石型モータ(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor/単に「IPMモータ」ともいう。)とがある。現在では、マグネットトルクと突極比に応じたリラクタンストルクにより高トルク化や省電力化を図れ、また永久磁石の飛散防止により信頼性の向上も図れるIPMモータが主流となりつつある。
【0004】
これまでのIPMモータでは、所定の寸法に切削や研磨等された希土類焼結磁石をロータコアのスロット内へ挿入して磁極とした内包磁石型モータ用ロータが用いられてきた。しかし、焼結磁石は形状自由度が小さいにも拘わらず、その最適化設計を考慮した磁石形状は、略円弧形状あるいは略楕円形状となることが多く、しかもその内周側面と外周側面の半径が異なったり、磁石厚さが周方向で変化したりする。このような磁石加工は困難であり、焼結磁石の利用は高コスト化し易い。またスロットへ挿入する際に欠損等が生じ易い。このため、多くのIPMモータにおいては、やむをえず板形状のような単純形状の焼結磁石が用いられてきた。そこで、希土類異方性磁石粉末とバインダ樹脂の流動混合物を配向磁場中のスロット内へ射出して成形した希土類異方性ボンド磁石を磁極とする内包磁石型インナーロータ(適宜、「IPMインナーロータ」または単に「インナーロータ」という。)が下記の特許文献1で提案されている。但し、特許文献1にはインナーロータ単体に関する記載しかない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−206075号公報
【特許文献2】特開2000−92762号公報
【特許文献3】特開2003−244903号公報
【特許文献4】特開2003−299291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、インナーロータは、モータの回転軸または各機器の駆動軸となる回転シャフトに焼嵌めされて固定されることが多い。この焼嵌めは、インナーロータを高温(通常は300〜500℃)に加熱してなされる。この加熱の影響を受けて、インナーロータに内包されている永久磁石は磁力を低下させる(つまり熱減磁を生じる)。このため、これまでの永久磁石はその熱減磁を見込んで設計されており、その分、永久磁石ひいてはIPMモータの大型化、稀少な希土類元素の使用量増加を招来していた。
【0007】
このような観点から、インナーロータの回転シャフトへの焼嵌め時に生じる永久磁石の熱減磁を抑制する提案が多くなされている。例えばこれに関連した記載が上記の特許文献2〜3にある。しかし、いずれの場合でも、永久磁石(焼結磁石またはボンド磁石)を内包したインナーロータを加熱して回転シャフトへ焼嵌めをしていることに変わりなく、多かれ少なかれ、焼嵌め時に永久磁石の熱減磁が生じる。
【0008】
ここで、回転シャフトへロータコアを焼嵌めした後に、焼結磁石をロータコアのスロットへ装填等することも考えられる。しかし、このような製造工程では、装填等後にリベット固定が必要になるなど、種々の製造上の問題を生じることが考えられる。
【0009】
また、焼結磁石は、作業性や取扱性等の観点から、通常、未着磁状態でインナーロータのスロットへ装填され、そのインナーロータを回転シャフトへ焼嵌めした後に着磁がなされる。この着磁は、インナーロータをステータ内に配設した後に、ステータコイルに瞬間的な大電流(パルス電流)を流すことによってなされることが多い(このような着磁を「組込み着磁」という。)。しかし、組込み着磁を行うと、着磁の際に発生する強力な磁力により、ステータコイルがインナーロータの外周面側へ吸引されて変形等を生じ得る。これを回避するには、別途、そのためだけの対策が必要となる(特許文献4参照)。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、ロータコアを回転シャフトへ焼嵌めして固定する場合でも、内包する永久磁石に熱減磁を生じさせない内包磁石型インナーロータ(単に「インナーロータ」という。)の製造方法と、ロータコアの他に付属回転体が回転シャフトに焼嵌め等により固定された内包磁石型インナーロータの製造に適した製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、ロータコアを回転シャフトへ焼嵌めした後に、そのスロット中に磁極となる異方性ボンド磁石を充填成形することを思いついた。この着想を具現化し発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
【0012】
《内包磁石型インナーロータの製造方法》
(1)本発明の製造方法は、中央に設けられたシャフト穴の周囲に複数均等に配設されたスロットを有するロータコアを加熱し、該シャフト穴へ回転シャフトを嵌挿して該回転シャフトに該ロータコアを焼嵌めする焼嵌工程と、該焼嵌工程後の余熱状態にある該ロータコアのスロットへ加熱されて流動状態にあるバインダ樹脂と異方性磁石粒子との混合物である流動混合物を配向磁場中で充填する充填工程とを備え、該スロット内の流動混合物を固化させた異方性ボンド磁石を磁極とする内包磁石型インナーロータが得られることを特徴とする。
【0013】
(2)本発明の内包磁石型インナーロータ(適宜、「インナーロータ」または単に「ロータ」という。)の製造方法では、磁極となる異方性ボンド磁石の充填成形前にロータコアを回転シャフトへ焼嵌めした後に、その余熱を利用しつつロータコアのスロットへ流動混合物を配向磁場中で充填して、磁極となる異方性ボンド磁石を成形している。従って、本発明に係る異方性ボンド磁石は焼嵌め時に高温に曝されることがなく、熱減磁することがない。また、本発明の製造方法では、焼嵌め時の余熱により加熱状態にあるロータコアのスロットへ流動混合物が充填される。このため、充填時にロータコアをわざわざ加熱するまでもなく、スロット内における流動混合物の流動性を十分に確保でき、スロット内に緻密な異方性ボンド磁石を成形することができる。
【0014】
このように本発明の製造方法によれば、異方性磁石粒子の含有量に応じた磁力を発揮する異方性ボンド磁石がスロット内に形成され、インナーロータひいてはIPMモータの小型化や低コスト化を図れる。
【0015】
ちなみに、焼結磁石をスロットへ装填する従来のインナーロータの製造方法でも焼嵌めはなされる。この従来の製造方法と本発明の製造方法を比較すると、スロット内に永久磁石が配設されるときが、その焼嵌め前か焼嵌め後かで異なるものの、両製造方法は類似している工程も多い。従って本発明の製造方法を用いれば、従来の製造方法との置換や混在も行い易い。
【0016】
この点を具体例を挙げて詳細に説明すると、次の通りである。焼結磁石を用いたモータの製造工程を異方性希土類ボンド磁石を用いたモータの製造工程へ変更した場合を考えると、基本的に相違する点は、磁石の材質および形状およびロータにおけるスロットの形状、スロットへの磁石の挿入方法およびそのタイミングに留まる。その他の点、例えば、ステータや制御回路等も両モータ間で相違がなく、両モータの組付けや加工等も既設の設備で同様に行うことができる。そして焼結磁石を用いたモータを異方性ボンド磁石を用いたモータに変更することにより、上述したように工程省略と省エネルギー化等を図れる。
【0017】
そこで、例えば、現行の焼結磁石を用いたモータの製造ラインの近接スペースに、異方性希土類ボンド磁石を用いたモータの製造スペースを設けて、焼結磁石を用いたモータを製造する場合と同様に、部品等を前工程から受け入れて、加工し、後工程へ供給するゾーンを設ける。これにより、既設の焼結磁石を用いたモータラインと異方性希土類ボンド磁石を用いたモータラインを混在させることが可能となる。
【0018】
このような混流ラインの形成に必要な設備投資は、汎用の樹脂充填成形機と、製品形状に合せた磁場成形金型の準備程度である。つまり、立地場所の確保、建屋の建設、全工程を行う製造設備の新設等に大きな投資をしなければならないという、一般的に想定される状況は回避され得る。このように本発明の製造方法によれば、希土類焼結磁石を用いたモータを異方性希土類ボンド磁石を用いたモータへ切り替えても、設備投資は大幅に削減され得る。
【0019】
なお、本発明に係るインナーロータは、磁極が充填成形された異方性ボンド磁石からなるため、磁極が焼結磁石からなる従来のインナーロータよりも、スロットの形状自由度が大きく、スロット内にエアギャップ等が形成されることなく、正確な位置に磁極が配設される。この観点からも、本発明に係るインナーロータを用いれば、IPMモータの高性能化、小型化、低コスト化等の促進が図り易い。
【0020】
(3)本発明の製造方法では、焼嵌工程または充填工程におけるロータコアの温度は問わない。通常、ロータコアは焼嵌工程時に200〜500℃程度まで高温加熱されるが、充填工程時のロータコアの温度は50〜200℃さらには100〜150℃程度でよい。焼嵌め時の温度は、ロータコアと回転シャフトの締め代(インナーロータと回転シャフトの間に生じるトルク)等に応じて適宜決定され、充填時の温度はバインダ樹脂の種類、流動混合物の組成等に応じて適宜決定される。そこで本発明に係る充填工程は、緻密な異方性ボンド磁石がスロット内に効率的に形成されるように、ロータコアの温度(適宜、「コア温度」という。)を流動混合物のスロットへの充填に適した温度に調節する温度調節工程を備えると好適である。通常は、焼嵌め時の温度が充填時の温度よりもかなり高いため、温度調節工程は焼嵌め時のロータコアを充填に適切な温度まで冷却する冷却工程であると好ましい。
【0021】
本発明に係る充填工程では、配向磁場が印加されたスロットへ、異方性磁石粒子とバインダ樹脂の流動混合物が充填される。この際、各異方性磁石粒子は、その磁化容易軸が配向磁場方向に配列した状態になると共に、配向磁場の強さに応じた着磁が実質的になされた状態となる。つまり、充填工程後にスロット内に形成された異方性ボンド磁石は、樹脂が固化した後は、既に強力な磁力を発現した永久磁石となっている。このため本発明の製造方法によれば、焼結磁石を磁極とする従来の製造方法のように、スロットに磁石を挿入し、その後別途着磁工程を行う場合とは異なり、充填工程後に異方性ボンド磁石に対して着磁工程を別途行う必要がなく、製造工程の簡素化が図られる。
【0022】
但し、本発明の製造方法は着磁工程を排除するものではない。特に、異方性ボンド磁石を磁極とするインナーロータと焼結磁石を磁極とするインナーロータが、同一工場内さらには同一ライン上で混在しているような場合、本発明の製造方法の場合でも着磁工程を行うことにより両者間の工程差やインナーロータの性能差を少なくすることができて好ましいこともある。
【0023】
(4)本発明に係る焼嵌工程を行う際に必要となる具体的な加熱方法(炉内加熱、高周波加熱等)、加熱条件(加熱温度、加熱時間等)は、インナーロータの仕様に応じて適宜選択される。また充填工程についても同様であり、用いる充填成形機の種類(射出成形機、トランスファ成形機、縦型、横型、専用機、汎用機等)、射出条件(射出温度、射出圧力、射出時間)、配向磁場条件(配向強度、印加時間、印加方法等)も、流動混合物の性状やインナーロータの仕様に応じて適宜選択される。
【0024】
但し、充填工程中にスロット内の流動混合物へ印加する配向磁場の起磁源として、電磁石(電磁コイル)を用いるよりも永久磁石を用いる方が、省エネルギー化を図れるのみならず、成形金型または成形装置のコンパクト化や簡素化を図れ、例えば汎用射出成形機等の利用も容易となり、本発明の製造方法の実施が容易となる。
【0025】
そこで本発明に係る充填工程は、ロータコアを収容し得る収容部と収容部の周囲に複数均等に配設されてスロットへ印加する配向磁場を誘導する配向ヨークと配向ヨークの周囲に配設された配向磁場源である永久磁石とを備えた配向金型内に前記ロータコアを配置してなされる工程であると好ましい。
【0026】
なお、ロータコアが焼嵌めされる回転シャフトには、IPMモータの仕様や用途等により、インナーロータ以外の付属物が固定(焼嵌めには限らない)されていることも多い。そこで本発明に係る充填工程は、ロータコア以外の付属回転体が回転シャフトに固定された状態でなされる工程でもよい。但し、付属回転体の配置や大きさ等により、充填工程を行い難い場合も生じ得る。このような場合でも、次に述べる本発明の製造装置を用いれば、例えば汎用射出成形機等を利用しつつインナーロータを製造することが可能である。
【0027】
《内包磁石型インナーロータの製造装置》
(1)本発明は、上述した製造方法としてのみならず、その製造方法の実施に好適な製造装置としても把握できる。すなわち本発明は、回転シャフトと該回転シャフトに嵌着されたシャフト穴の周囲に複数均等に配設されたスロットを有するロータコアと該回転シャフトに固定され該ロータコアの外径よりも突出した部分を有する付属回転体とからなるコア組立体を(例えば該付属回転体がある)一方から保持し得ると共に該ロータコアの該一方にある端面側を支持し得る保持金型と、該コア組立体の(例えばロータコアがある)他方から該ロータコアを収容し得る収容部と該収容部の周囲に複数均等に配設されて該スロットへ印加する配向磁場を誘導する配向ヨークと該配向ヨークの周囲に配設された配向磁場源である永久磁石とを有する配向金型と、該収容部に収容され該配向磁場が印加された該ロータコアの該他方にある端面側から該スロットへ、加熱されて流動状態にあるバインダ樹脂と異方性磁石粒子との混合物である流動混合物を充填する充填金型とを備え、該流動混合物が固化した異方性ボンド磁石を磁極とする内包磁石型インナーロータが該付属回転体を有する該回転シャフトに嵌着した状態で得られることを特徴とする内包磁石型インナーロータの製造装置としても把握できる。
【0028】
この本発明の製造装置は、さらに、前記配向金型と前記該充填金型または該配向金型と該保持金型を型締めする型締手段を備えると好ましい。
【0029】
(2)先ず、付属回転体が回転シャフトにない場合さらにいえばインナーロータ単体の場合であれば、保持金型を兼ねる配向金型の収容部に対象物を収容(配置)して、配向磁場が印加された状態のスロットへ、その一方から流動混合物を射出することは容易である。しかし、本発明に係るコア組立体の場合、付属回転体が干渉するため、従来の配向金型へロータコアを収容して配置することはできない。ここで、通常の熱可塑性樹脂による射出成形装置で行われるように、金型を径方向または放射方向に進退する部分に分割した割型を用いることも考えられる。しかし、そのような割型の使用は、強力な永久磁石を配向磁場源とする場合、割型を用いると、一回射出する毎に配向ヨークの周囲に微細な鉄粉、磁石粉等が付着し易くなり、また配向磁場等のバラツキに伴う異方性ボンド磁石の品質のバラツキ、清掃工数の増加、作業性の悪化等を招来することになる。また、開閉スペースや進退(開閉)機構等が必要となり、装置の大型化、複雑化、高コスト化等を招き好ましくない。
【0030】
これに対して本発明の製造装置では、外径の大きな付属回転体を保持金型に固定した後、その反対側(例えば上方)から配向金型を保持金型へ移動させ、配向金型内の収容部内にロータコアを収容している。そしてその状態で、ロータコアのスロットへ付属回転体の反対側(例えば上方)から流動混合物を注入して、ロータコア内に配向磁場中で充填成形された異方性ボンド磁石を形成している。このようにして本発明の製造装置によれば、インナーロータが嵌装される回転シャフトに、そのインナーロータよりも少なくとも部分的に外径方向に大きな付属回転体が固定されているコア組立体に対しても、ロータコアのスロット内に磁極となる異方性ボンド磁石を容易に充填成形できる。
【0031】
なお、本発明の製造装置を用いる場合、スロットの付属回転体側(例えば下側)にある開口端面側は、保持金型により直接的または間接的に支持されて閉塞状態となる。このため、充填された流動混合物がその開口端面側から漏出することが防止される。ちなみに、保持金型により開口端面側が間接的に支持される場合とは、スロットの軸方向端面に配設された端板等を介在させてロータコアの端面側を保持金型が支持している場合である。
【0032】
保持金型によるコア組立体の保持方法(手段)、ロータコアの端面側の支持方法(手段)、それらの駆動方法(手段)は種々考えられる。例えば、金型の駆動手段(型締手段)とは別に設けたアクチュエータ(油圧動、空圧動、電動等)により、保持治具を作動させてコア組立体を保持してもよい。また、金型の駆動または型締手段を利用してもよい。例えば、配向金型に配設したアンギュラーカムに連動するスライダを保持金型に配設し、型締時にそのスライダによってコア組立体の保持やロータコアの端面の支持等を行ってもよい。
【0033】
なお、本発明の製造装置と製造方法は密接に関連しているが、一方が他方を必須とするものではない。例えば、本発明の製造方法は、上述した配向金型を用いることが必須要件ではない。また本発明の製造装置は、ロータコアが回転シャフトに焼嵌めされたもののみを対象とするものではない。なお、本明細書でいう「嵌着」とは、焼嵌めされる場合のみならず、焼嵌めされずに圧入される場合も含む意味である。
【0034】
《その他》
(1)本明細書でいうモータには、特に断らない限り、電動機の他に発電機(ジェネレータ)も含まれる。また、本明細書でいう内包磁石型モータには、固定子に設けたコイル(電機子巻線)へ供給する交流電流の周波数に同期して回転数が変化する本来的な同期機の他、ホール素子、ロータリエンコーダ、レゾルバ等の検出手段により検出されたロータの位置に基づいて固定子側に回転磁界を生じさせるブラシレス直流(DC)モータ等も含まれる。ちなみに、ブラシレスDCモータは、インバータに供給する直流電圧を変化させて回転数を変化させ得るので、通常の直流モータと同様に制御性に優れる。
【0035】
(2)本明細書でいう「均等に配設」とは、周方向に配設されるスロット等のピッチが均等という意味である。また、本明細書では、適宜、ロータの回転中心に近い側を「内周側」といい、逆にその回転中心から遠い側を「外周側」という。
【0036】
(3)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を、新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A】ロータアッシーの正面図である。
図1B】そのロータアッシーに組み込まれたインナーロータの平面図である。
図2】希土類異方性ボンド磁石の充填成形に用いた成形金型を下方から見た斜視図である。
図3】保持金型を上方から観た斜視図である。
図4】配向金型に組み込まれる配向磁場体を上方から観た斜視図である。
図5】配向金型に収容したロータコアのスロットへ流動混合物を充填する様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書中に記載した事項から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を上述した本発明の構成に付加し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。製造方法に関する構成要素は、プロダクトバイプロセスクレームとして理解すれば物に関する構成要素ともなり得る。
【0039】
《配向金型》
ロータコアを収容する収容部と、収容部の周囲に配設された配向ヨークと、配向ヨークの周囲に配設された配向磁場源である永久磁石とからなる。収容部はロータコアを収容できる筒状であれば、配向ヨークと一体でも別体でもよい。
【0040】
配向ヨークは、収容部の外周囲に複数均等に配設され、ロータコアのスロットへ配向磁場を誘導する。配向ヨークは、その具体的な形状を問わないが、放射状に延在して周方向の幅が外周側(大径側)ほど小さくなる先細り放射状であると、配向金型のコンパクト化を図りつつ所定以上の永久磁石体積を確保し易くて好ましい。
【0041】
配向磁場源である永久磁石が希土類焼結磁石であると、配向金型のコンパクト化を図りつつ、強力な配向磁場をロータコアのスロットへ印加できる。なお、配向磁場源が電磁コイルである場合、その冷却等が必要となるが、本発明のように配向磁場源が永久磁石である場合、冷却等が不要となり、配向金型の簡素化が可能となる。また、射出時におけるロータコアの温度管理も容易となり易く、なによりも汎用充填成形機が使用可能となるため生産ラインを構成することが容易となる。また、配向磁場を高めるため、永久磁石は配向ヨークの対向側面に同極を対面させて配置されていると好ましい。
【0042】
《ロータコア》
ロータコアは、軟磁性材からなり、通常、両面を絶縁被覆した電磁鋼板の積層体や絶縁被覆された金属粒子を加圧成形した圧粉磁心等からなる。軟磁性材は、その材質を問わないが、例えば、純鉄、ケイ素鋼、合金鋼等の鉄系材であると好ましい。
【0043】
ロータコアの中央に設けたシャフト穴の周囲に均等に配設されるスロットは、少なくとも2以上あれば、その形状や数は問わない。スロットは、例えば、中心から半径方向へ直線状に延在する放射型でも、内周側に凸な形状をした凸型でも、半径方向に複数ある多層型でもよい。
【0044】
《異方性ボンド磁石》
ロータコアのスロットに充填成形される異方性ボンド磁石は、異方性磁石粒子(粉末)とバインダ樹脂からなる。用いる異方性磁石粉末の種類は問わないが、高性能な希土類異方性磁石粉末の使用が好ましい。例えば、Nd−Fe−B系磁石粉末、Sm−Fe−N系磁石粉末、Sm−Co系磁石粉末等を用いるとよい。また異方性磁石粉末は、単一粉末にかぎらず、複数種の粉末を混合した混合粉末でもよい。混合粉末は、成分組成が異なるものに限らず、粒径分布が異なるものでもよい。例えば、Nd−Fe−B系磁石粉末の粗粉と微粉を組み合わせたものでも、Nd−Fe−B系磁石粉末の粗粉とSm−Fe−N系磁石粉末の微粉を組み合わせたものでもよい。このような異方性磁石粉末を用いることにより、磁石粒子の高密度化ひいてはインナーロータやIPMモータの高性能化を図れる。なお、本発明に係る異方性ボンド磁石は、異方性磁石粒子が存在する限り、等方性磁石粒子やフェライト磁石粒子等が混在するものでもよい。
【0045】
バインダ樹脂には、ゴムを含む公知の材料を用いることができる。流動混合物の流動性や充填性等を考慮すると、バインダ樹脂は熱可塑性樹脂であると好ましい。特に、本発明に係る異方性ボンド磁石が射出成形される場合(充填工程が射出工程である場合)、バインダ樹脂は熱可塑性樹脂であると好ましい。この熱可塑性樹脂には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、メチルペンテン、ポリカーボネイト、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリアミド等がある。なお、適宜、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂も用いてもよい。なお、本発明に係る異方性ボンド磁石がトランスファ成形される場合なら、バインダ樹脂は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂でもよい。
【0046】
ちなみに、上述した流動混合物は、異方性磁石粒子とバインダ樹脂からなる原料ペレット等を、異方性磁石粒子のキュリー点未満であり、且つ、例えばポリフェニレンサルファイドの場合、バインダ樹脂の融点以上である280〜310℃程度に加熱して調製される。この流動混合物は、スロットへ射出された後、例えば80〜160℃程度以下に冷却されることにより固化し、スロット内に充填された異方性ボンド磁石となる。
【0047】
《内包磁石型モータの用途》
本発明に係るIPMモータは、その用途を問わないが、例えば、電気自動車、ハイブリッド車若しくは鉄道車両等に用いられる車両駆動用モータ、エアコン、冷蔵庫若しくは洗濯機等に用いられる家電製品用モータなどに好適である。
【実施例】
【0048】
実施例を示して本発明をより具体的に説明する。本実施例では、エアコン用コンプレッサの駆動モータ(IPMモータ)に用いられるロータアッシー(ロータ組立体またはコア組立体)の製造方法およびその製造に用いる製造装置について説明する。
【0049】
《ロータアッシー》
本発明に係るインナーロータを用いた一例であるロータアッシーAの正面図を図1Aに示した。また、そのロータアッシーAに組み込まれるロータコア1の平面図を図1Bに示した。なお、便宜上、図1Aに示す矢印方向を上下方向とする。
【0050】
ロータアッシーAは、インナーロータ10と、回転シャフト20と、負荷体30(付属回転体)とからなる。インナーロータ10を構成するロータコア1は、図1Bに示すように、略円筒状をしており、中央に設けられたキー溝111を有するシャフト穴11と、その周囲に均等に配設された略U字状の8つのスロット121〜128(これらをまとめて「スロット12」という。)と、シャフト穴11とスロット12の間に均等に配設された4つのリベット穴131〜134(これらをまとめて「リベット穴13」という。)を有する。なお、ロータコア1は、図1Bに示す形状に打ち抜いた珪素鋼板を積層してなる。
【0051】
ロータコア1の上端面と下端面には、端板41、42が固定されている。端板41、42によりインナーロータ10のスロット12の上下開口が閉塞される。但し、端板41には、スロット121〜128にそれぞれに連通する8つの小さな充填孔4111〜4118(これらをまとめて「充填孔411」という。/図5参照)が形成されている。また端板41、42上には、それぞれバランスウエイト43、44が固定されている。ロータコア1と端板41、42とバランスウエイト43、44は、リベット穴13を貫通する4つのリベット451〜454(これらをまとめて「リベット45」という。)により共締めされている。
【0052】
ロータコア1の各スロット12には、各充填孔411を通じて射出成形された希土類異方性ボンド磁石b1〜b8(これらをまとめて「希土類異方性ボンド磁石b」という。)が形成される。本実施例では、ロータコア1と各希土類異方性ボンド磁石bのみならず、上述したリベット45によりロータコア1に固定される端板41、42およびバランスウエイト43、44を含めてインナーロータ10という。
【0053】
負荷体30は、エアコン用コンプレッサを駆動する駆動部であり、フランジ31、32と、その間に介装されたクランク33とからなる。これらはインナーロータ10よりも半径方向に突き出した外形状となっている。
【0054】
ところで、負荷体30は回転シャフト20に圧入され(圧入工程)、インナーロータ10は回転シャフト20に焼嵌めされて固定される(焼嵌工程)。但し、インナーロータ10は、ロータコア1が200〜500℃程度に加熱され、そのシャフト穴11へ回転シャフト20を嵌挿することにより回転シャフト20に固定され、ロータアッシーA(希土類異方性ボンド磁石bの充填前)が形成される。そして、このロータコア1の焼嵌め後に、各充填孔411から各スロット12へ流動混合物が充填されることにより(射出工程)、インナーロータ10中に希土類異方性ボンド磁石bからなる磁極が形成される。なお、射出成形にかえてトランスファ成形することもできる。射出成形で用いる熱可塑性樹脂は冷却で固化するが、トランスファ成形で用いる熱硬化性樹脂は、金型内の加熱またはトランスファ成形後のキュア処理(硬化熱処理)により固化させる。
【0055】
《希土類異方性ボンド磁石の射出成形》
回転シャフト20に焼嵌めされたロータコア1のスロット12へ希土類異方性ボンド磁石bを成形する過程を以下に説明する。希土類異方性ボンド磁石bの成形は、汎用縦型射出成形機に、図2に示す成形金型Dをセットして行うことができる。なお、便宜上、図2に示す矢印方向を上下方向とする。
【0056】
(1)成形金型
成形金型Dは、保持金型5と、配向金型6と、射出金型7の3層構造となっている。保持金型5は、図2および図3に示すように、ベース51と、ベース51の各辺中央から中心に向けて進退可能にスライドする4つのスライドコア521〜524(これらをまとめて「スライドコア52」という。)と、ベース51の上面側から垂直方向に突出したガイドピン531〜534(これらをまとめて「ガイドピン53」という。)とからなる。
【0057】
スライドコア52は略角柱状をしており、各スライドコア52の中央外寄りには嵌合穴5211〜5241が形成されている。また、各スライドコア52の中央側(保持金型5の中心側)には、ロータアッシーAのインナーロータ10と負荷体30の間に介在して回転シャフト20を包囲すると共に端板42を下方から支持する支持部5212〜5242が形成されている。また、ベース51の中央下方には、回転シャフト20に固定された負荷体30を収容するスペース(図略)があり、さらには回転シャフト20の下端部が嵌挿されるシャフト穴(図略)も形成されている。
【0058】
配向金型6は、図2に示すように、ベース61と、ベース61の下面側から外向き斜め方向に突出した4つのアンギュラーカム621〜624(これらをまとめて「アンギュラーカム62」という。)と、ベース61の中央に設置された配向磁場体63と、保持金型5のベース51の上面側に設けられたガイドピン531〜534とそれぞれに嵌合するガイド穴641〜644(これらをまとめて「ガイド穴64」という。)を有する。
【0059】
配向磁場体63は、外周側に放射状に細長く突出した8つの配向ヨーク6311〜6318(これらをまとめて「配向ヨーク631」という。)と、各配向ヨーク631間を円弧状に架橋し、中央に滑らかに連続した内周面を有する円筒状の収容部632と、各配向ヨーク631の周方向の対向側面に同極を対面させて配設された配向磁場源となる16個の永久磁石6331a〜6338a(これらをまとめて「永久磁石633a」という。)および永久磁石6331b〜6338b(これらをまとめて「永久磁石633b」という。)と、それらを収容するケース634とからなる。なお、各永久磁石633a、633bは希土類焼結磁石からなる。
【0060】
配向ヨーク631と各永久磁石633a、633bの配置について付言しておく。例えば、配向ヨーク6311の周方向の側面には永久磁石6331aと永久磁石6331bがそれぞれS極を接して配置されており、隣接する配向ヨーク6312の周方向の側面には永久磁石6332aと永久磁石6332bがそれぞれN極を接して配置されている。このような配置により、収容部632に収容されたロータコア1の各スロット12には、隣接間で反対向きとなる配向磁場が効率的に印加される。
【0061】
射出金型7は、図2に示すように、希土類異方性磁石粉末とバインダ樹脂(熱可塑性樹脂)の流動混合物の通路となる流路(図略)が、ベース71の中央内部に形成されてなる。この流路は、図5に示すように、スプール721と、それに連なる8本のランナー7221〜7228(これらをまとめて「ランナー722」という。)と、各ランナー722に連なる細いピンゲート7231〜7238(これらをまとめて「ピンゲート723」という。)とからなる。各ピンゲート723の先端部は端板41の各充填孔411に接続され、各ピンゲート723を通じて各スロット12へ流動混合物が充填される。
【0062】
(2)射出成形
上述した成形金型Dを汎用縦型射出成形機にセットし、各スロット12へ流動混合物を充填する工程について説明する。既述したロータアッシーA(希土類異方性ボンド磁石bの充填前)を、負荷体30を下側にして保持金型5の中央に上方からセットする。このとき、そのロータコア1の温度は、射出に適した温度(例えば、130〜160℃)になる。焼嵌め直後のロータコア1の温度が高いときは、適宜、空冷等をして温度調整を行ってもよい(温度調節工程)。
【0063】
そして、スライドコア52を保持金型5の中心へ移動させ、それと同時に配向金型が保持金型5の方へ下降してくる。そのとき、負荷体30が配向金型に磁気吸引力で引っ張られる。このとき、その支持部521の(内周)下端面に負荷体30の上端面が当接すると共に回転シャフト20を囲繞する。これによりロータアッシーAは、軸方向の移動が仮拘束された状態となる。この結果、配向金型6が保持金型5の方へ下降する際に、ロータアッシーAが不意に配向磁場体63に磁着したりすることが防止される。
【0064】
この状態のロータアッシーAに対して、ロータコア1側から配向金型6を下降させると、保持金型5の各ガイドピン53と配向金型6の各ガイド穴64がそれぞれ嵌合しつつ、保持金型5の上面と配向金型6の下面が近接する。この際、各スライドコア52の嵌合穴5211〜5241に各アンギュラーカム62が嵌合し、アンギュラーカム62の下降と共にスライドコア52は保持金型5の中心に向けて移動する。これにより各スライドコア52の支持部522〜5242は、インナーロータ10と負荷体30の間に位置し、それらの間にある回転シャフト20の外周を囲繞すると共にインナーロータ10の端板42を下側から支持する。こうしてインナーロータ10と回転シャフト20を介して連結された負荷体30も保持される。
【0065】
このような保持金型5と配向金型6の連動により、ロータアッシーAが保持金型5によって確実に保持され、配向磁場体63の収容部632内にロータコア1が収容される。配向磁場体63は、永久磁石633a、633b(これらをまとめて「永久磁石633」という。)を配向磁場源とするため、収容部632内にロータコア1が収容された段階で、各スロット12には所定の配向磁場が印加された状態となる。
【0066】
射出金型7も、配向金型6に連動して下降し、射出金型7の下面と配向金型6の上面が密着する。これにより各ピンゲート723の先端部が端板41の各充填孔411に接続された状態となる。この状態で、希土類異方性磁石粒子とバインダ樹脂からなる流動混合物が汎用縦型射出成形機からスプール721へ圧送されると、その流動混合物は各ランナー722および各ピンゲート723を経て、各充填孔411から各スロット12へ充填される。この際、ロータコア1の各スロット12の下端側開口は端板42により完全に閉塞されていると共に、その端板42がスライドコア52の支持部5212〜5242の上端側で支持された状態となっており、これにより型締力が支承される。
【0067】
その流動混合物の充填が完了した後に流動混合物の圧送を停止して、その状態を数秒から数十秒程度維持する。これにより流動混合物は固化して希土類異方性ボンド磁石bとなる。この希土類異方性ボンド磁石bは、強力な配向磁場が印加された状態で射出成形された永久磁石であるため、着磁するまでもなく既に強力な磁力を発揮している。
【0068】
保持金型5に対して配向金型6および射出金型7を上昇させて型開きすると、磁化された希土類異方性ボンド磁石bが磁極となったロータアッシーAが得られる。このロータアッシーAをステータ内に組み込むことによりIPMモータが得られる。なお、配向金型6および射出金型7の移動は、汎用縦型射出成形機に備えられている油圧アクチュエータ等の駆動手段(型締手段)を用いて行った。
【符号の説明】
【0069】
1 ロータコア
12 スロット
10 インナーロータ
5 保持金型
6 配向金型
7 射出金型
A ロータアッシー(コア組立体)
b 希土類異方性ボンド磁石
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5