特許第5900736号(P5900736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900736
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ分散剤
(51)【国際特許分類】
   B01F 17/52 20060101AFI20160324BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20160324BHJP
   C01B 31/02 20060101ALI20160324BHJP
   C08F 12/34 20060101ALN20160324BHJP
   C08L 25/04 20060101ALN20160324BHJP
   C08K 3/04 20060101ALN20160324BHJP
   C08L 101/02 20060101ALN20160324BHJP
【FI】
   B01F17/52ZNM
   B01J13/00 B
   C01B31/02 101F
   C01B31/02 101A
   !C08F12/34
   !C08L25/04
   !C08K3/04
   !C08L101/02
【請求項の数】14
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2011-521957(P2011-521957)
(86)(22)【出願日】2010年7月8日
(86)【国際出願番号】JP2010061621
(87)【国際公開番号】WO2011004864
(87)【国際公開日】20110113
【審査請求日】2013年5月17日
(31)【優先権主張番号】特願2009-162253(P2009-162253)
(32)【優先日】2009年7月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】飛田 将大
(72)【発明者】
【氏名】西村 直也
(72)【発明者】
【氏名】原口 将幸
【審査官】 森井 隆信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−276232(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/139839(WO,A1)
【文献】 特開2010−189552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 17/52
B01J 13/00
C01B 31/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ官能基又はイミノ官能基を末端に有し、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が1,000乃至2,000,000である高分岐ポリマーからなるカーボンナノチューブ分散剤であって、
該高分岐ポリマーが、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAを、該モノマーAに対して5乃至200モル%のアミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる高分岐ポリマーであり、
前記モノマーAはジビニルベンゼンであり、そして
前記重合開始剤Bが式[2]で表される重合開始剤である、
カーボンナノチューブ分散剤。
【化1】
(式[2]中、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基又は炭素原子数1乃至6のヒドロキシアルキル基を表し、またはR、R及びRの任意の2つ以上はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、環を形成していてもよく、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載のカーボンナノチューブ分散剤、及びカーボンナノチューブを含む組成物。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブから選ばれる少なくとも一種である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブ分散剤が、前記カーボンナノチューブの表面に付着又は配位
して複合体を形成している、請求項2又は請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
さらに有機溶媒を含む、請求項2乃至請求項4のうち何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブが、前記有機溶媒に分散されてなる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
さらに有機溶媒を含み、前記複合体が有機溶媒に分散している、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
さらに有機溶媒に可溶な熱硬化性化合物を含む、請求項2乃至請求項7のうち何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記熱硬化性化合物が、多官能エポキシ化合物である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項2乃至請求項9のうち何れか一項に記載の組成物から得られる薄膜。
【請求項11】
請求項8又は請求項9に記載の組成物から得られる薄膜に、熱処理を施すことで得られる硬化膜。
【請求項12】
請求項1に記載のカーボンナノチューブ分散剤、カーボンナノチューブ、及び有機溶媒を混合して混合物を調製する工程と、この混合物を機械的処理する工程とを含むことを特徴とする、組成物の製造方法。
【請求項13】
前記機械的処理が、超音波処理であることを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記カーボンナノチューブ分散剤を前記有機溶媒に溶かしてなる溶液中に、前記カーボンナノチューブを添加して前記混合物を調製する工程と、この混合物を超音波処理する工程を含むことを特徴とする、請求項13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ分散剤に関し、更に詳述すると、アミノ官能基又はイミノ官能基を末端に含有する高分岐ポリマーからなるカーボンナノチューブ分散剤、並びに該分散剤及びカーボンナノチューブを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下、CNTとも略記する。)はナノテクノロジーの有力な素材として、広範な分野で応用の可能性が検討されている。その用途としてはトランジスターや顕微鏡用プローブなどのように単独のCNTそのものを使用する方法と、電子放出電極や燃料電池用電極、又はCNTを分散した導電性複合体などのように多数のCNTをまとめてバルクとして使用する方法とに大別される。
単独のCNTを使用する場合、CNTを溶媒中に添加してこれに超音波を照射した後、電気泳動などで単一に分散しているCNTのみを取り出す方法などが用いられている。
一方、バルクで用いる導電性複合体ではマトリックス材となるポリマー中などにCNTを良好に分散させる必要がある。しかし、一般的にCNTは分散しにくいという問題があり、通常の複合体ではCNTの分散が不完全なまま用いられている。そのため、十分にカーボンナノチューブの性能を発現させて用いられているとは言い難く、さらにこの問題はカーボンナノチューブの各種用途への応用を難しくさせることにもつながっている。このためCNT表面の改質、化学修飾などによって分散性を向上する方法が種々検討されている。
【0003】
このようなCNTを分散させる方法としては、例えばCNTをドデシル硫酸ナトリウムなどの低分子界面活性剤を含有する水溶液に添加する方法(特許文献1参照)が提案されている。しかしながらこれら低分子界面活性剤を使用した場合、CNTを分散させた溶液の薄膜形成能が低く、薄膜化を容易にするために重合性のモノマーやポリマーを更に添加する必要がある。このため、薄膜中にこれら非導電性の有機物が存在し、導電性が損なわれるという問題がある。またこの方法では、数mmオーダーのCNTの塊を数μmオーダーの塊にサイズダウンさせる程度のものであり、CNT単独のサイズ(直径0.8〜100nm)への分散には到底達していないものであった。
【0004】
一方、ポリマーを用いてCNTを分散させる方法として、コイル状構造を持つポリ(m−フェニレンビニレン−co−ジオクトキシ−p−フェニレンビニレン)をCNT表面に付着させる方法(例えば特許文献2参照)も提案されている。ここでは、有機溶媒中にCNTを孤立に分散させることが可能で、CNT1本にポリマーが付着しているTEM影像も示されている(図1乃至図4参照)。しかしこの発明の目的は、一度ある程度にまでCNTを分散させた後沈殿させ、CNTの構造を損傷させることなく精製・回収するというものである。しかし、この方法は長期的にCNTを分散させた状態で保つことを意図するものではないため、CNTを長期間分散状態で保存することはできなかった。
【0005】
更に、CNTに官能基を付加させる等の方法により化学修飾を施し、分散性を付与したもの(例えば非特許文献1参照)が報告されている。しかしCNTに化学修飾を施すとCNTを構成するπ共役系が破壊されやすく、高導電性等のCNT本来の特性が損なわれるという問題点があった。
【0006】
上記の問題点を解決する方法として、水溶性ポリマーであるポリビニルピロリドンのようなポリマーによりCNTを分散させる方法(例えば非特許文献2参照)も知られている。しかし、そられポリマーは水溶性ポリマーであるため、その応用範囲は限られている。
【0007】
一方、有機溶媒を用いる方法として、塩基性官能基を有する化合物を用い、ケトン系の有機溶媒に分散させる方法(例えば特許文献3参照)が提案されている。しかし、この方法は塩基性官能基に関する詳細な規定がなく、安定的に分散できるCNTの直径が限定されている。
更に、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン系化合物を用い、アミド系の極性有機溶媒中に分散させる方法(例えば特許文献4参照)や、前記ポリビニルピロリドンによりアミド系極性有機溶媒中に分散させる方法(例えば特許文献5参照)、アルコール系有機溶媒中に分散させる方法(例えば特許文献6参照)も提案されている。しかし、分散剤として用いられるポリマーは直鎖状ポリマーであることを特徴としたものであり、高分岐ポリマーについての知見は明らかにされていない。
【0008】
CNTの分散剤として高分岐ポリマーに着目した方法(例えば非特許文献3参照)も提案されている。高分岐ポリマーとはスターポリマーや、デンドリティック(樹枝状)ポリマーとして分類されるデンドリマー、ハイパーブランチポリマーなどのように、骨格内に分岐を有するポリマーである。これらの高分岐ポリマーは、従来の高分子が一般的に紐状の形状であるのに対し、積極的に分岐を導入している点で比較的疎な内部空間や粒子性を有するという特異な形状を示すと共に、各種官能基の導入により修飾可能な多数の末端を有しており、これらの特徴を利用することで直鎖状のポリマーと比較してCNTを高度に分散させる可能性がある。
しかし、前述の高分岐ポリマーを分散剤として用いた非特許文献の例では、長期的にCNTの孤立分散状態を保つには、機械的な処理のほかに熱処理も必要としており、さらにCNTの分散能はそれほど高いものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、有機溶媒中などの媒体中で、CNTをその単独サイズまで分散させ得る、CNT分散剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、アミノ官能基又はイミノ官能基を末端に導入した高分岐ポリマーが、CNTの分散能に優れること、及びこの高分岐ポリマーをCNTの分散剤として用いた場合に、CNT(の少なくとも一部)を、その単独サイズまで孤立分散させ得ることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、第1観点として、アミノ官能基又はイミノ官能基を末端に有し、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が1,000乃至2,000,000である高分岐ポリマーからなることを特徴とする、カーボンナノチューブ分散剤に関する。
第2観点として、前記高分岐ポリマーが、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAを、該モノマーAに対して5乃至200モル%のアミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる高分岐ポリマーである、第1観点に記載のカーボンナノチューブ分散剤に関する。
第3観点として、前記アミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bが、ヘテロ環アミン構造を有する重合開始剤である、第1観点又は第2観点に記載のカーボンナノチューブ分散剤に関する。
第4観点として、前記アミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bが、式[1]で表される官能基を有する重合開始剤である、第1観点又は第2観点に記載のカーボンナノチューブ分散剤に関する。
【0012】
【化1】
【0013】
(式[1]中、R1,R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基又は炭素原子数1乃至6のヒドロキシアルキル基を表し、またはR1,R2及びR3の任意の2つ以上はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、環を形成していてもよい。)
第5観点として、前記アミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bが、式[2]で表される重合開始剤である、第2観点に記載のカーボンナノチューブ分散剤に関する。
【0014】
【化2】
【0015】
(式[2]中、R1,R2及びR3は前記式[1]で定義されたものを表し、R4及びR5はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基を表す。)
第6観点として、前記高分岐ポリマーが、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーA及び該モノマーCの合計モルに対して、5モル%以上200モル%以下の量のアミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる高分岐ポリマーである、第1観点に記載のカーボンナノチューブ分散剤に関する。
第7観点として、前記アミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bが、ヘテロ環アミン構造を有する重合開始剤である、第6観点に記載のカーボンナノチューブ分散剤に関する。
第8観点として、前記アミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bが、式[1]で表される官能基を有する重合開始剤である、第6観点に記載のカーボンナノチューブ分散剤に関する。
【0016】
【化3】
【0017】
(式[1]中、R1,R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基又は炭素原子数1乃至6のヒドロキシアルキル基を表し、またはR1,R2及びR3の任意の2つ以上はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、環を形成していてもよい。)
第9観点として、前記アミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bが、式[2]で表される重合開始剤である、第8観点に記載のカーボンナノチューブ分散剤に関する。
【0018】
【化4】
【0019】
(式[2]中、R1,R2及びR3は前記式[1]で定義されたものを表し、R4及びR5はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基を表す。)
第10観点として、第1観点乃至第9観点のうち何れか一項に記載のカーボンナノチューブ分散剤、及びカーボンナノチューブを含む組成物に関する。
第11観点として、前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブから選ばれる少なくとも一種である、第10観点に記載の組成物に関する。
第12観点として、前記カーボンナノチューブ分散剤が、前記カーボンナノチューブの表面に付着又は配位して複合体を形成している、第10観点又は第11観点に記載の組成物に関する。
第13観点として、さらに有機溶媒を含む、第10観点乃至第12観点のうち何れか一項に記載の組成物に関する。
第14観点として、前記カーボンナノチューブが、前記有機溶媒に分散されてなる、第13観点に記載の組成物に関する。
第15観点として、前記複合体が前記有機溶媒に分散している、第13観点に記載の組成物に関する。
第16観点として、さらに有機溶媒に可溶な熱硬化性化合物を含む、第10観点乃至第15観点のうち何れか一項に記載の組成物に関する。
第17観点として、前記熱硬化性化合物が、多官能エポキシ化合物である、第16観点に記載の組成物に関する。
第18観点として、第10観点乃至第17観点のうち何れか一項に記載の組成物から得られる薄膜に関する。
第19観点として、第16観点又は第17観点に記載の組成物から得られる薄膜に、熱処理を施すことで得られる硬化膜に関する。
第20観点として、第1観点乃至第9観点のうち何れか一項に記載のカーボンナノチューブ分散剤、カーボンナノチューブ、及び有機溶媒を混合して混合物を調製する工程と、この混合物を機械的処理する工程とを含むことを特徴とする、組成物の製造方法に関する。
第21観点として、前記機械的処理が、超音波処理であることを特徴とする、第20観点に記載の製造方法に関する。
第22観点として、前記カーボンナノチューブ分散剤を前記有機溶媒に溶かしてなる溶液中に、前記カーボンナノチューブを添加して前記混合物を調製する工程と、この混合物を超音波処理する工程を含むことを特徴とする、第21観点に記載の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の分散剤は、アミノ官能基又はイミノ官能基を末端に導入した高分岐ポリマーからなり、カーボンナノチューブの分散能に優れ、カーボンナノチューブの少なくとも一部をその単独のサイズ(直径0.8乃至100nm)にまで分離して、所謂「孤立溶解」の状態で安定に(凝集することなく)有機溶媒に分散させることができる。なお本発明において「孤立溶解」とは、カーボンナノチューブが相互の凝集力によって塊状や束状、縄状となることなく、カーボンナノチューブの1本1本がバラバラになって媒体に分散して存在している状態を指す。
しかも分散剤、カーボンナノチューブ及び有機溶媒を含有する溶液を超音波処理などの機械的処理だけで、カーボンナノチューブを分散させることができ、分散にあたり更なる加熱などの工程を省略し且つ処理時間を短縮することができる。
したがって、本発明のカーボンナノチューブ分散剤を用いることで、カーボンナノチューブ(の少なくとも一部)を孤立溶解の状態で分散させた、カーボンナノチューブ含有組成物を容易に得ることができる。
【0021】
そして本発明により得られるカーボンナノチューブ含有組成物は、基板に塗布するだけで容易に薄膜形成が可能であり、しかも高導電性薄膜を得ることができる。
そして上記組成物において、カーボンナノチューブの量をその用途に応じて調整することが容易であるため、各種半導体素材、電導体素材等として幅広い用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施例1で合成した高分岐ポリマー1の1H NMRスペクトルを示す図である。
図2図2は、実施例1で合成した高分岐ポリマー1の13C NMRスペクトルを示す図である。
図3図3は、実施例2で合成した高分岐ポリマー2の1H NMRスペクトルを示す図である。
図4図4は、実施例2で合成した高分岐ポリマー2の13C NMRスペクトルを示す図である。
図5図5は、実施例3で合成した高分岐ポリマー3の1H NMRスペクトルを示す図である。
図6図6は、実施例3で合成した高分岐ポリマー3の13C NMRスペクトルを示す図である。
図7図7は、実施例4で合成した高分岐ポリマー4の1H NMRスペクトルを示す図である。
図8図8は、実施例4で合成した高分岐ポリマー4の13C NMRスペクトルを示す図である。
図9図9は、参考製造例1で合成した高分岐ポリマー5の1H NMRスペクトルを示す図である。
図10図10は、参考製造例1で合成した高分岐ポリマー5の13C NMRスペクトルを示す図である。
図11図11は、カーボンナノチューブのカイラルベクトルを示す図である。
図12図12は、実施例15で合成した高分岐ポリマー6の1H NMRスペクトルを示す図である。
図13図13は、実施例15で合成した高分岐ポリマー6の13C NMRスペクトルを示す図である。
図14図14は、実施例16で合成した高分岐ポリマー7の1H NMRスペクトルを示す図である。
図15図15は、実施例16で合成した高分岐ポリマー7の13C NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<カーボンナノチューブ(CNT)分散剤>
本発明に係るCNT分散剤は、アミノ官能基又はイミノ官能基を末端に有する高分岐ポリマー、より詳細には、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAを、該モノマーAに対して5モル%乃至200モル%の量のアミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られ、且つ、重量平均分子量が1,000乃至2,000,000である高分岐ポリマーからなる。
この高分岐ポリマーは、CNTやCNTの欠陥部位に存在するカルボキシル基に対して、高い親和性を示すと考えられる塩基性官能基(アミノ官能基又はイミノ官能基)を末端に多数有しているために、CNTの高い分散能が期待できる。また、この高分岐ポリマーは、上記モノマーAと開始剤Bの組合せや条件により、様々な骨格のデザインや官能基導入、分子量や分布の制御、更には機能付与を行うことが可能であるなどの特徴を有する。また分岐構造を有することで、直鎖状のものでは見られない高溶解性をも有している。
【0024】
本発明において、当該ポリマーの重量平均分子量が1,000未満であると、CNTの分散能が著しく低下する、若しくは分散能を発揮しなくなる虞があり、2,000,000を超えると、分散処理における取り扱いが極めて困難となる虞がある。重量平均分子量が2,000乃至1,000,000の高分岐ポリマーがより好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定値(ポリスチレン換算)である。
【0025】
本発明において、前記分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAは、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有することが好ましく、特にジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。なお、本発明では(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方をいう。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸をいう。
【0026】
このようなモノマーAとしては、例えば、以下の(A1)乃至(A7)に示した有機化合物が例示される。
(A1)ビニル系炭化水素:
(A1−1)脂肪族ビニル系炭化水素類;イソプレン、ブタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン等。
(A1−2)脂環式ビニル系炭化水素;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン等。
(A1−3)芳香族ビニル系炭化水素;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジビニルフルオレン、ジビニルカルバゾール、ジビニルピリジン等。
(A2)ビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル、ビニルケトン:
(A2−1)ビニルエステル;アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、イタコン酸ジビニル、ビニル(メタ)アクリレート等。
(A2−2)アリルエステル;マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、アリル(メタ)アクリレート等。
(A2−3)ビニルエーテル;ジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等。
(A2−4)アリルエーテル;ジアリルエーテル、ジアリルオキシエタン、トリアリルオキシエタン、テトラアリルオキシエタン、テトラアリルオキシプロパン、テトラアリルオキシブタン、テトラメタリルオキシエタン等。
(A2−5)ビニルケトン;ジビニルケトン、ジアリルケトン等。
(A3)(メタ)アクリル酸エステル:
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシチタントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ウンデシレノキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[2−(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジエトキシジ(メタ)アクリレート等。
(A4)ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物:
ポリエチレングリコール(分子量300)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)ジ(メタ)アクリレート等。
(A5)含窒素ビニル系化合物:
ジアリルアミン、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルシアヌレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビスマレイミド等。
(A6)含ケイ素ビニル系化合物:
ジメチルジビニルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシラザン、ジエトキジビニルシラン等。
(A7)含フッ素ビニル系化合物:
1,4−ジビニルパーフルオロブタン、1,6−ジビニルパーフルオロヘキサン、1,8−ジビニルパーフルオロオクタン等。
【0027】
これらのうち好ましいものは、上記(A1−3)群の芳香族ビニル系炭化水素化合物、(A2)群のビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル及びビニルケトン、(A3)群の(メタ)アクリル酸エステル、(A4)群のポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物、並びに(A5)群の含窒素ビニル系化合物である。特に好ましいのは、(A1−3)群に属するジビニルベンゼン、(A2)群に属するフタル酸ジアリル、(A3)群に属するエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジエトキシジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン並びに(A5)群に属するメチレンビス(メタ)アクリルアミドである。これらの中でもジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAジエトキシジ(メタ)アクリレートが好ましく、ジビニルベンゼンがより好ましい。
【0028】
本発明における、アミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bは、アミノ基、及びアンモニアの水素原子を一価又は二価の炭化水素残基で置換したアミン又はイミン化合物の他、ヘテロ環アミンを含む重合開始剤である。
これらの例としては、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、フェネチルアミン、ジベンジルアミンなどの第1級乃至第3級脂肪族アミン;アニリン、ジメチルアミノピリジン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミンなどの第1級乃至第3級芳香族アミン;メタンイミン、プロパン−2−イミン、N−メチルエタンイミンなどのイミン;ピロリン、ピロリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、ヘキサヒドロピリミジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロピラジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどの脂環式へテロ環アミン;ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、カルバゾールなどの芳香族へテロ環アミン等の構造を含む重合開始剤が挙げられる。
【0029】
したがって、前記アミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bとしては、好ましくはヘテロ環アミン構造を含む重合開始剤や、下記式[1]で表される官能基を有する重合開始剤、特にアゾ系重合開始剤を挙げることができる。
【0030】
【化5】
【0031】
式[1]中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基又は炭素原子数1乃至6のヒドロキシアルキル基を表し、またはR1,R2及びR3の任意の2つ以上はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、環を形成していてもよい。
【0032】
上記式[1]で表される官能基の例としては、例えば下記式[A]乃至[M]で表される基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
【化6】
【0034】
上記式[A]乃至[M]で表される官能基を有する化合物からなるアゾ系重合開始剤としては、下記式[2]で表される重合開始剤を挙げることができる。
【0035】
【化7】
【0036】
式[2]中、R1、R2及びR3は前記式[1]で定義されたものを表し、R4及びR5はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基を表す。
【0037】
上記式[2]で表されるアゾ系重合開始剤としては、例えば以下の(1)〜(2)に示す化合物を挙げることができる;
(1)環状アゾアミジン化合物:
2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジヒドレート、2,2’−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]−プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド等。
(2)アゾアミジン化合物:
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラヒドレート等。
【0038】
上記アゾ系重合開始剤の中でも、ヘテロ環アミン構造を含む、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]又は2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリドが特に好ましい。
【0039】
前記重合開始剤Bは、前記モノマーA対して、5モル%乃至200モル%の量で使用され、好ましくは15モル%乃至200モル%、より好ましくは15モル%乃至170モル%、より好ましくは50モル%乃至100モル%の量で使用される。
【0040】
本発明における分散剤は、前述の分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAに加えて、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCを用い、該モノマーA及び該モノマーCの合計モルに対して、5モル%以上200モル%以下の量の前述のアミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる高分岐ポリマーからなる分散剤も対象とする。
【0041】
本発明において、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCは、好ましくはビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有することが好ましい。
このようなモノマーCとしては、例えば、以下の(C1)乃至(C3)に示した有機化合物が例示される。
(C1)(メタ)アクリル化合物:
(C1−1)(メタ)アクリル酸類;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、2−トリフルオロメチルアクリル酸、2−エチルアクリル酸、2−プロピルアクリル酸、2−ブロモメチルアクリル酸、2−アセトアミドアクリル酸、2−エチルアクリロイルクロリド、3,3−ジメチル(メタ)アクリロイルクロリド。
(C1−2)(メタ)アクリル酸エステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアセトアセテート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]トリメチルアンモニウムクロリド、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2−[9H−カルバゾール−9−イル]エチル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(R)−α―(メタ)アクリロイルオキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、2−ナフチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールシクロペンテニルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート、ジエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール 2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールアリルエーテル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールメチルエーテルプロポキシレート(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール 4−ノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、エチル 2−エチルアクリレート、ベンジル 2−エチルアクリレート、エチル 2−プロピルアクリレート、ベンジル 2−プロピルアクリレート、メチル 2−アセトアミドアクリレート、エチル cis−2−シアノアクリレート、ビニルクロトネート、ビニルシンナメート、イソプロピルシンナメート、イソブチルシンナメート、tert−ブチルシンナメート、イソアミルシンナメート、エチル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート。
(C1−3)エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;グリシジル(メタ)アクリレート。
(C1−4)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル 2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、カプロラクトン 2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メチル 3−ヒドロキシ−2−メチレンブチレート。
(C1−5)ハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類;ペンタブロモベンジル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、メチル 2―ブロモアクリレート、tert−ブチル 2−ブロモアクリレート、メチル 2−ブロモメチルアクリレート、エチル 2−ブロモメチルアクリレート。
(C1−6)ケイ素含有(メタ)アクリル酸エステル類;エチル 2−トリメチルシリルメチルアクリレート、3−トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、2−トリメチルシリルオキシエチル(メタ)アクリレート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリル(メタ)アクリレート。
(C1−7)イオウ含有(メタ)アクリル酸エステル類;2−メチルチオエチル(メタ)アクリレート。
(C1−8)(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチルオキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−[3−ジメチルアミノプロピル](メタ)アクリルアミド、3−((メタ)アクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、4−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、2−アクリルアミドグリコール酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸。
(C2)(メタ)アクリロニトリル類:
(メタ)アクリロニトリル、2−クロロアクリロニトリル、1−シアノビニルアセテート。
(C3)ビニル化合物:
(C3−1)スチレン類;スチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、3,4−ジメトキシスチレン、4−ベンジルオキシ−3−メトキシスチレン、4−エトキシスチレン、4−tert−ブチルスチレン、4−tert−ブトキシスチレン、4−アセトキシスチレン、2−トリフルオロメチルスチレン、3−トリフルオロメチルスチレン、4−トリフルオロメチルスチレン、3,5−ビス(トリフルオロメチル)スチレン、4−ビニルアニリン、4−ビニルアニソール、N,N−ジメチルビニルベンジルアミン、4−ビニルビフェニル、2−フルオロスチレン、3−フルオロスチレン、4−フルオロスチレン、2,6−ジフルオロスチレン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2−ブロモスチレン、3−ブロモスチレン、4−ブロモスチレン、3−ニトロスチレン、3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸、tert−ブチル 4−ビニルフェニルカーボネート、4−スチレンスルホン酸、4−ビニルフェニルボロン酸、α−メチルスチレン、α,2−ジメチルスチレン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、4−クロロ−α−メチルスチレン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2−イソプロペニルアニリン、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、1−フェニル−1−トリメチルシロキシエチレン、α−ブロモスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、9−ビニルアントラセン。
(C3−2)含窒素ヘテロ環ビニル化合物;N−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、9−ビニルカルバゾール、1−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルフタルイミド、N−ビニルカプロラクトン。
(C3−3)ビニルエステル類;ビニルアセテート、ビニルトリフルオロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルピバレート、ビニルデカノエート、ビニルネオデカノエート、ビニルステアレート、ビニルベンゾエート。
(C3−4)ビニルエーテル類;4−ビニルオキシメチルシクロヘキシルメチルベンゾエート、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、4−ビニルオキシブチルベンゾエート、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−ペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ビニルオキシトリメチルシラン、1,4−ブタンジオールビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールビニルエーテル、エチレングリコールビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、エチル 1−プロペニルエーテル。
(C3−5)その他ビニル化合物;塩化ビニリデン、cis−1,3−ジクロロ−1−プロペン、2−メチル−2−ビニルオキシラン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、4−ビニル−1−シクロヘキサノン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ビニルフェロセン、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、臭化ビニル、エチルビニルスルフィド、メチルビニルスルホン、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、trans−4,4’−ジフルオロカルコン。
【0042】
これら化合物のうち、好ましいものとしては、上記(C1)群、(C2)群、(C3−1)群及び(C3−2)群に記載の化合物であり、特に好ましいものとしては(C1−2)群の(メタ)アクリル酸エステル類、(C1−4)群のヒドロキシ(メタ)アクリル酸エステル類、(C3−1)群のスチレン類及び(C3−2)群の含窒素ヘテロ環ビニル化合物であり、より好ましいものとしてはメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、スチレン、2−ビニルナフタレン、N−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリドンである。
【0043】
本発明の分散剤として用いる高分岐ポリマーの、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(以下Mwと略記)は、好ましくは1,000乃至2,000,000、さらに好ましくは2,000乃至1,000,000である。
【0044】
前記高分岐ポリマーは、前述のモノマーA、又はモノマーAとモノマーCに対して所定量の重合開始剤Bの存在下で重合させて得られる。該重合方法としては公知の方法、例えば溶液重合、分散重合、沈殿重合、及び塊状重合等が挙げられ、中でも溶液重合又は沈殿重合が好ましい。特に分子量制御の点から、有機溶媒中での溶液重合によって反応を実施することが好ましい。
【0045】
このとき用いられる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶媒;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロリド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系又はエステルエーテル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル等のアルコール系溶媒;N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;酢酸、プロピオン酸等の脂肪族カルボン酸系溶媒、並びにこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
【0046】
これらのうち好ましいものは、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、脂肪族カルボン酸系溶媒等であり、特に好ましいものはベンゼン、トルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン及び酢酸であり、最も好ましいものは、n−プロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン及び酢酸である。
【0047】
上記重合反応を有機溶媒の存在下で行う場合、重合反応物全体における有機溶媒の含量は前記モノマーAの1質量部に対し、好ましくは5乃至120質量部、さらに好ましくは10乃至110質量部、最も好ましくは30乃至100質量部である。
【0048】
重合反応は常圧、加圧密閉下、又は減圧下で行われ、装置及び操作の簡便さから常圧下で行うのが好ましい。また、N2等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
重合温度は、反応混合物の沸点以下であれば任意であるが、重合効率と分子量調節の点から、好ましくは50℃以上200℃以下、さらに好ましくは80℃以上150℃以下、より好ましくは80℃以上120℃以下である。
より好ましくは、重合反応の温度は前述の重合開始剤Bの10時間半減期温度より20℃以上高い温度で実施され、より具体的には、前記モノマーA(及び所望によりさらに前記モノマーC)、前記重合開始剤B及び有機溶媒を含む溶液を、該重合開始剤Bの10時間半減期温度より20℃以上高い温度に保たれた該有機溶媒中へ滴下することにより、重合反応を行うことが好ましい。また、さらにより好ましくは反応圧力下での前記有機溶媒の還流温度で重合反応を実施することが好ましい。
反応時間は、反応温度や、モノマーA(及びモノマーC)及び重合開始剤Bの種類及び割合、有機溶媒種等によって変動するものであるため一概には規定できないが、好ましくは30分以上720分以下、さらに好ましくは40分以上540分以下である。
【0049】
より好ましくは、特定の酸の存在下で、有機溶媒中での溶液重合を実施することが好ましい。なお、前述したように酢酸を有機溶媒として使用して溶液重合を行うことは好ましい。しかしながら、臭気等の観点から多量の酸を重合溶媒として用いることは実用上困難といえることから、実際には、特定の酸を前記重合開始剤Bに対して100モル%乃至400モル%の量で存在させて、重合を行うことが望ましい。
【0050】
ここで使用できる酸としては以下のものを挙げることができる。
無機酸:塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸等。
芳香族カルボン酸:安息香酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ベンゼンペンタカルボン酸、メリット酸、アニス酸、トルイル酸、プロピル安息香酸、プロポキシ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、n−オクチル安息香酸、n−オクチルオキシ安息香酸、ヘキシル安息香酸、ヘキシルオキシ安息香酸、ヘプチル安息香酸、ヘプチルオキシ安息香酸、エチル安息香酸、エトキシ安息香酸、n−ブチル安息香酸、sec−ブチル安息香酸、tert−ブチル安息香酸、ブトキシ安息香酸、ブロモ安息香酸、ベンジルオキシ安息香酸、アミル安息香酸、アミルオキシ安息香酸、アミノ安息香酸、アセチル安息香酸、アセトキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、アントラキノンカルボン酸、アントラキノンジカルボン酸、ピレンカルボン酸、ピレンジカルボン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等。
脂肪族カルボン酸:酢酸、トリフルオロ酢酸、吉草酸、ウンデカン酸、トリデカン酸、トリコサン酸、ステアリン酸、プロピオン酸、ペンタデカン酸、ペンタコサン酸、パルミチン酸、ノナン酸、ノナデカン酸、ノナコサン酸、オクタン酸、オクタコサン酸、ヘプタコサン酸、ヘンエイコサン酸、ミリスチン酸、メリシン酸、リグリノセリン酸、ラウリン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ヘプタデカン酸、デカン酸、セロチン酸、酪酸、ベヘン酸、アラキジン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、エルカ酸、エライジン酸、アラキドン酸等。
アミノ酸:L−バリン、L−トリプトファン、L−セリン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−オルニチン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−ヒスチジン、L−グルタミン、L−システイン、L−アスパラギン、L−アラニン、L−チロシン、L−トレオニン、L−リシン、L−アルギニン、L−グリシン及びこれらアミノ酸の窒素原子がアセチル保護、ブトキシカルボニル保護、カルボベンゾキシ保護されたもの等、又はこれらのD体、ラセミ体等。
【0051】
上記酸の中でも、芳香族カルボン酸群が好ましく、最も好ましくは安息香酸である。
【0052】
酸存在下で重合させた場合、重合反応終了後に塩基で中和させることが好ましく、このとき用いられる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物などが挙げられる。
【0053】
重合反応の終了後、得られた高分岐ポリマーを任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等の後処理を行う。反応溶液から高分子を回収する方法としては、再沈殿等の方法が挙げられる。
【0054】
得られた高分岐ポリマーの1次粒子の平均粒子径は、好ましくは1nm以上100nm以下、さらに好ましくは5nm以上50nm以下である。
【0055】
本発明に係るCNT含有組成物(CNT組成物)は、前記CNT分散剤(高分岐ポリマー)とCNTとを含んでなる。
CNTは通常、アーク放電法、化学気相成長法(以下、CVD法という。)、レーザー・アブレーション法等によって作製され、ここで使用されるCNTは何れの方法によって得られたものであってもよい。また、CNTには1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT(以下、SWCNTと記載。)と、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた二層CNT(以下、DWCNTと記載。)と、複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNT(以下、MWCNTと記載。)とがある。本発明のCNT組成物においては、SWCNT、DWCNT、MWCNTをそれぞれ単体で、又は複数を組み合わせて使用できる。
【0056】
上記の方法でSWCNT、DWCNT、MWCNTを作製する際には、同時にフラーレンやグラファイト、非晶性炭素が副生産物として生成され、またニッケル、鉄、コバルト、イットリウムなどの触媒金属も残存するので、これらの不純物の除去、精製を必要とする場合がある。不純物の除去には、硝酸、硫酸などによる酸処理とともに、超音波処理が有効である。しかし、硝酸、硫酸などによる酸処理ではCNTを構成するπ共役系が破壊され、CNT本来の特性が損なわれてしまう可能性があるため、適切な条件下で精製して使用することが望ましい。
【0057】
CNTはグラフェン・シートの巻き方(螺旋度、カイラリティー)により電気特性が金属的なものから半導体的なものまで変化する。
CNTのカイラリティーは図11に示されるカイラルベクトル(R=na1+ma2、ただしm、nは整数)により規定され、n=m及びn−m=3p(ただしpは整数)の場合には金属的性質、それ以外の場合(n≠m、n−m≠3p)には半導体性質をそれぞれ示すことが知られている。このため、特にSWCNTを使用する場合は、ある種のカイラリティーを選択的に分散した組成物とすることが重要である。
本発明の高分岐ポリマーを、CNTの分散剤として使用することで、ある特定のカイラリティーを有するCNTを、選択的に分散させた組成物が得られる可能性がある。
【0058】
本発明のCNT組成物は、さらに上記分散剤(高分岐ポリマー)の溶解能を有する有機溶媒を含んでいてもよい。
このような有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン(DME)などのエーテル系化合物、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系化合物、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類等が挙げられ、これら有機溶媒は、一種単独で又は二種以上混合して用いることができる。
特に、CNTの孤立溶解の割合を向上させ得るという点から、NMP、メタノール、イソプロパノールが好ましい。さらに組成物の成膜性をも向上し得るための添加剤として、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類の溶媒を、少量含むことが望ましい。
【0059】
本発明のCNT組成物の調製法は任意であり、分散剤が液状の場合には、当該分散剤とCNTとを適宜混合し、分散剤が固体の場合には、これを溶融させた後、CNTと混合して調製することができる。
また、有機溶媒を用いる場合には、分散剤、CNT、有機溶媒を任意の順序で混合して組成物を調製すればよく、例えばこれらを一緒に混合してもよいし、或いは、分散剤を有機溶媒に溶解した溶液中に、CNTを添加して混合してもよい。
この際、分散剤、CNT及び有機溶媒からなる混合物を分散処理することが好ましく、この処理により、CNTの孤立分散の割合をより向上させることができる。分散処理としては、機械的処理としてのボールミル、ビーズミル、ジェットミルなどを用いた湿式処理や、バス型やプローブ型のソニケータを用いる超音波処理が挙げられるが、処理効率を考慮すると、超音波処理が好適である。
分散処理の時間は任意であるが、5分間から10時間程度が好ましく、10分間から5時間程度がより好ましい。
【0060】
本発明のCNT組成物における、分散剤とCNTとの混合比率は、質量比で1,000:1乃至1:100程度とすることができる。
また、有機溶媒を使用した組成物中における分散剤の濃度は、CNTを有機溶媒に分散させ得る濃度であれば特に限定されるものではないが、本発明においては、組成物中に0.001乃至30質量%程度とすることが好ましく、0.005乃至20質量%程度とすることがより好ましい。
また、この組成物中におけるCNTの濃度は、少なくともCNTの一部が孤立分散する限りにおいて任意であるが、本発明においては、組成物中に0.0001乃至20質量%程度とすることが好ましく、0.001乃至10質量%程度とすることがより好ましい。
以上のようにして調製されたCNT組成物中では、分散剤がCNTの表面に付着して複合体を形成しているものと推測される。
【0061】
本発明のCNT組成物は、前記有機溶媒に可溶な汎用合成樹脂と混合して複合化させたものでも良い。汎用合成樹脂の例としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)などのポリオレフィン系樹脂;PS(ポリスチレン)、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、MS(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体)などのポリスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;PMMA(ポリメチルメタクリレート)などの(メタ)アクリル樹脂;PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、PLA(ポリ乳酸)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート/アジペートなどのポリエステル樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;変性ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリグルコール酸;変性でんぷん;酢酸セルロース、三酢酸セルロース;キチン、キトサン;リグニン等の熱可塑性樹脂、並びに、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0062】
また、本発明のCNT組成物は、前記有機溶媒に可溶な熱硬化性化合物と混合して複合化させたものでも良い。
好ましい上記熱硬化性化合物としては多官能エポキシ化合物が挙げられる。なお、本明細書における熱硬化性化合物の意味するところは、狭義の単量体化合物(モノマー)だけでなく、二量体、三量体、オリゴマーや反応性高分子をも包含するものである。
前記多官能エポキシ化合物としては、分子内にエポキシ基を2個以上含有するものであれば良く、特に制限されるものではないが、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ダイマー酸グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、ジグリシジルエポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、等が好適に使用され、1種以上が混合して用いられる。
なお、本発明のCNT組成物は、熱硬化性化合物とともに、分子中に1個のエポキシ基を含む化合物を反応性希釈剤として含んでも良い。
本発明のCNT組成物における多官能エポキシ化合物の含量は、前記分散剤の1質量部に対し、好ましくは0.1乃至100質量部、さらに好ましくは1乃至10質量部である。
【0063】
本発明のCNT組成物(溶液)は、PET、ガラス、ITOなどの適当な基板上にキャスト法、スピンコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法などの適宜な方法により、塗布して薄膜を成膜することが可能である。
得られた薄膜は、CNTの金属的性質を活かした帯電防止膜、透明電極等の導電性材料、あるいは半導体的性質を活かした光電変換素子及び電界発光素子等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
(1)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)
装置:昭和電工(株)製 GPC−101
カラム:昭和電工(株)製 LF−804×3
カラム温度:60℃
溶媒:20mM LiBr添加NMP
流量:0.6mL/分
検出器:UV(280nm)
(2)1H NMRスペクトル及び13C NMRスペクトル
装置:日本電子データム(株)製 JNM−ECA700
溶媒:CDCl3
内部標準:テトラメチルシラン
(3)動的光散乱光度計(粒径測定)
装置:大塚電子(株)製 FDLS−3000
(4)ホットプレート(プリベーク、ポストベーク)
装置:アズワン(株)製 MH−180CS、MH−3CS
(5)プローブ型超音波照射装置(分散処理)
装置:Hielscher Ultrasonics社製 UIP1000
(6)超音波洗浄器(分散処理)
装置:東京硝子器械(株)製 FU−6H
(7)抵抗率計(表面抵抗測定)
装置:三菱化学(株)製 ロレスタ−GP
プローブ:三菱化学(株)製 直列4探針プローブ ASP(探針間距離:5mm)
(8)ヘイズメーター(全光透過率測定)
装置:日本電色工業(株)製 NDH5000
(9)小型高速冷却遠心機(遠心分離)
装置:(株)トミー精工製 SRX−201
(10)紫外・可視・近赤外分光光度計(吸光度測定)
装置:(株)島津製作所製 UV−3600
測定波長:400〜1650nm
【0065】
また、略記号は以下の意味を表す。
DVB:ジビニルベンゼン(新日鐵化学(株)製 DVB−960)
B−1:2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](和光純薬工業(株)製 VA−061)
B−2:2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチル−プロパン)ジハイドロクロリド(和光純薬工業(株)製 VA−067)
MAIB:2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル(大塚化学(株)製 MAIB)
EPL:エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(ダイセル化学工業(株)製 エポリードGT401)
JER:エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製 jER(登録商標)828)
CNT−1:未精製MWCNT(CNT社製 “C Tube 100” 外径10〜30nm)
CNT−2:細径MWCNT(Cheap Tubes社製 “MWNTs>95wt%/外径<8nm”)
CNT−3:未精製SWCNT(Carbon Nanotechnologies社製 HiPco)
CNT−4:中径MWCNT(Bayer社製 “Baytubes C 150 P” 外径5〜20nm)
CNT−5:中径MWCNT(CNano Technology社製 “FloTube 9000” 外径11nm)
CNT−6:中径MWCNT(昭和電工(株)製 “VGCF−X” 外径15nm)
CNT−7:太径MWCNT(Cheap Tubes社製 “MWCNTs>95wt%/20−40nm” 外径20〜40nm)
CNT−8:極太径MWCNT(Cheap Tubes社製 “MWCNTs>95wt%/>50nm”)
PVP:ポリビニルピロリドン(東京化成工業(株)製 K15)
DMF:N,N’−ジメチルホルムアミド
EG:エチレングリコール
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
THF:テトラヒドロフラン
DMSO:ジメチルスルホキシド
IPA:2−プロパノール
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0066】
【化8】
【0067】
[実施例1]
<DVB及びB−1を用いた高分岐ポリマー1の合成>
200mL反応フラスコに、酢酸44gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内温が100℃になるまで加熱した。
別の100mL反応フラスコに、DVB 2.6g(20mmol)、B−1 3.8g(15mmol、DVBに対して75モル%)及び酢酸44gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0℃まで冷却を行った。
前述の200mL反応フラスコ中の100℃に加熱してある酢酸中に、DVB、B−1及び酢酸が仕込まれた前記100mL反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を45分間かけて滴下した。滴下終了後、30分間熟成させた。
次に、この反応液をTHF 294gに添加して、ポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、得られた固体を水19gに再溶解させた。このポリマー水溶液に6N NaOH水溶液13.3mLをゆっくり滴下し中和することで、ポリマーをスラリー状態で再沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、得られた固体をクロロホルム18gに再溶解させた。このポリマー溶液をヘキサン294gに添加して、ポリマーをスラリー状態で再沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー1)2.1gを得た。
得られた目的物の1H NMR及び13C NMRスペクトルの測定結果を図1及び図2に示す。
また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは34,000、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は3.9であった。
【0068】
[実施例2]
<DVB及びB−1を用いた高分岐ポリマー2の合成>
200mL反応フラスコに、DMF 44gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内温が100℃になるまで加熱した。
別の100mL反応フラスコに、DVB 2.6g(20mmol)、B−1 3.8g(15mmol、DVBに対して75モル%)、安息香酸6.1g(50mmol)及びDMF 44gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0℃まで冷却を行った。
前述の200mL反応フラスコ中の100℃に加熱してあるDMF中に、DVB、B−1、安息香酸及びDMFが仕込まれた前記100mL反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を45分間かけて滴下した。滴下終了後、30分間熟成させた。
次に、この反応液をジイソプロピルエーテル260gに添加して、ポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、得られた固体を水/メタノール(質量比1:9)44gに再溶解させた。このポリマー溶液に6N NaOH水溶液13.3mLをゆっくり滴下し中和することで、ポリマーをスラリー状態で再沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、得られた固体をクロロホルム44gに再溶解させた。このポリマー溶液をヘキサン260gに添加して、ポリマーをスラリー状態で再沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー2)3.6gを得た。
得られた目的物の1H NMR及び13C NMRスペクトルの測定結果を図3及び図4に示す。
また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは33,000、分散度:Mw/Mnは15.8であった。
【0069】
[実施例3]
<DVB及びB−1を用いた高分岐ポリマー3の合成>
500mL反応フラスコに、1−プロパノール120gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、1−プロパノールが還流するまで(標準沸点97℃)加熱した。
別の200mL反応フラスコに、DVB 2.6g(20mmol)、B−1 3.1g(12mmol、DVBに対して62モル%)、及び1−プロパノール120gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行った。
前述の500mL反応フラスコ中の還流してある1−プロパノール中に、DVB、B−1及び1−プロパノールが仕込まれた前記200mL反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を90分間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成させた。
次に、ロータリーエバポレーターを用いてこの反応液から1−プロパノールを留去し、得られた残渣をクロロホルム26gに溶解させた。このポリマー溶液をヘキサン260gに添加して、ポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、得られた固体をクロロホルム26gに再溶解させた。このポリマー溶液をヘキサン260gに添加して、ポリマーをスラリー状態で再沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、淡黄色粉末の目的物(高分岐ポリマー3)2.5gを得た。
得られた目的物の1H NMR及び13C NMRスペクトルの測定結果を図5及び図6に示す。
また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは47,000、分散度:Mw/Mnは13.9であった。
【0070】
[実施例4]
<DVB及びB−2を用いた高分岐ポリマー4の合成>
200mL反応フラスコに、EG/DMF(質量比1:1)42gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内温が100℃になるまで加熱した。
別の100mL反応フラスコに、DVB 2.6g(20mmol)、B−2 3.5g(10mmol、DVBに対して50モル%)及びEG/DMF(質量比1:1)42gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0℃まで冷却を行った。
前述の200mL反応フラスコ中の100℃に加熱してあるEG/DMF中に、DVB、B−2及びEG/DMFが仕込まれた前記100mL反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を45分間かけて滴下した。滴下終了後、30分間熟成させた。
次に、この反応液をTHF294gに添加して、ポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、得られた固体を水42gに再溶解させた。このポリマー水溶液に6N NaOH水溶液3.3mLをゆっくり滴下し中和することで、ポリマーをスラリー状態で再沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、得られた固体をクロロホルム42gに再溶解させた。このポリマー溶液をヘキサン260gに添加して、ポリマーをスラリー状態で再沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、褐色粉末の目的物(高分岐ポリマー4)3.1gを得た。
得られた目的物の1H NMR及び13C NMRスペクトルの測定結果を図7及び図8に示す。
【0071】
[実施例15]
<DVB及びB−1を用いた高分岐ポリマー6の合成>
3L反応フラスコに、1−プロパノール180gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、1−プロパノールが還流するまで(標準沸点97℃)加熱した。
別の2L反応フラスコに、DVB 15.6g(120mmol)、B−1 21.0g(84mmol、DVBに対して70モル%)、及び1−プロパノール720gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行った。
前述の3L反応フラスコ中の還流してある1−プロパノール中に、DVB、B−1及び1−プロパノールが仕込まれた前記2L反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を70分間かけて滴下した。滴下終了後、2時間熟成させた。
次に、ロータリーエバポレーターを用いてこの反応液から1−プロパノール820gを留去し、ヘプタン1,600gに添加して、ポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、得られた固体を1−プロパノール78gに再溶解させた。このポリマー溶液を水3,100gに添加して、ポリマーをスラリー状態で再沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー6)22.1gを得た。
得られた目的物の1H NMR及び13C NMRスペクトルの測定結果を図12及び図13に示す。なお、測定溶媒は少量のCDCl3を添加したd6−DMSOを用いた。
また、目的物のGPCによる分子量測定を試みたが、前記条件では測定できなかった。
【0072】
[実施例16]
<DVB及びB−1を用いた高分岐ポリマー7の合成>
3L反応フラスコに、1−プロパノール180gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、1−プロパノールが還流するまで(標準沸点97℃)加熱した。
別の2L反応フラスコに、DVB 15.6g(120mmol)、B−1 21.1g(84mmol、DVBに対して70モル%)、及び1−プロパノール720gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行った。
前述の3L反応フラスコ中の還流してある1−プロパノール中に、DVB、B−1及び1−プロパノールが仕込まれた前記2L反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を50分間かけて滴下した。滴下終了後、2時間熟成させた。
次に、ロータリーエバポレーターを用いてこの反応液から1−プロパノール820gを留去し、ヘプタン1,600gに添加して、ポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、得られた固体を1−プロパノール78gに再溶解させた。このポリマー溶液を水3,100gに添加して、ポリマーをスラリー状態で再沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー7)23.9gを得た。
得られた目的物の1H NMR及び13C NMRスペクトルの測定結果を図14及び図15に示す。なお測定には、装置:BRUKER社製 AVANCE III、溶媒:少量のCDCl3を添加したd6−DMSO、内部標準:テトラメチルシランを用いた。
また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは100,000、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は10.0であった。
【0073】
[参考製造例1]
<DVB及びMAIBを用いた高分岐ポリマー5の合成>
500mL反応フラスコに、トルエン74gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、トルエンが還流するまで加熱した(標準沸点111℃)。
別の200mL反応フラスコに、DVB 3.9g(30mmol)、MAIB 5.5g(24mmol、DVBに対して80モル%)及びトルエン74gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行った。
前述の500mL反応フラスコ中の還流状態にいるトルエン中に、DVB、MAIB及びトルエンが仕込まれた前記200mL反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、6時間熟成させた。
次に、ロータリーエバポレーターを用いてこの反応液からトルエン121gを留去し、0℃に冷却したメタノール391gに添加して、ポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー5)6.1gを得た。
得られた目的物の1H NMR及び13C NMRスペクトルの測定結果を図9及び図10に示す。
また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは37,000、分散度:Mw/Mnは2.6であった。
【0074】
実施例1乃至実施例4、実施例15及び実施例16で合成した高分岐ポリマー1,2,3,4,6,7の、13C NMRスペクトルより算出したモノマーAと重合開始剤Bの断片の組成比(モル比)、及び動的光散乱光度計による平均粒径を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
[実施例5]
<高分岐ポリマー2を用いたCNT−1の分散(1)>
分散剤として実施例2において合成した高分岐ポリマー2 0.50gをNMP 49.25gに溶解させ、この溶液へMWCNTとしてCNT−1 0.25gを添加した。この混合物に、プローブ型超音波照射装置を用いて室温(およそ25℃)で30分間超音波処理を行い、沈降物がなくMWCNTが均一に分散した黒色のMWCNT含有分散液を得た。
上記MWCNT含有分散液1.0gに、ブチルセロソルブ0.25gを添加し、薄膜作製用の組成物を調製した。得られた組成物50μLを、スリット幅25.4μmのアプリケータを用いてガラス基板上に均一に展開し、100℃で2分間乾燥することで透明で均一なMWCNT/高分岐ポリマー2薄膜複合体を作製した。得られた薄膜複合体の薄膜均一性、表面抵抗及び全光透過率を評価した。なお、薄膜の均一性については、目視により、以下の基準に従って評価した。各評価結果を表2に示す。
<薄膜均一性>
○:凝集物のような塊や膜ムラ(濃淡)が全く確認できない。
△:MWCNTの凝集物や膜ムラ(濃淡)が見られる。
×:MWCNTの凝集物や膜ムラ(濃淡)が薄膜の殆どの部分で見られ、膜としての評価ができない。
【0077】
また、別途、上記MWCNT含有分散液を室温(およそ25℃)で1ヶ月静置後、分散液中の沈降物の存在を目視にて確認し、以下の基準に従って、本分散液の分散安定性を評価した。評価結果を表2に合わせて示す。
<分散安定性>
○:沈降物が確認できない。
△:沈降物が見られる。
×:分散状態を保てず、MWCNTの大部分が沈降物として現れる。
【0078】
[実施例6]
<高分岐ポリマー2を用いたCNT−1の分散(2)>
実施例5において、高分岐ポリマー2の添加量を0.25gに、NMPの量を49.50gにそれぞれ変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表2に合わせて示す。
【0079】
[実施例7]
<高分岐ポリマー4を用いたCNT−1の分散(1)>
実施例5において、分散剤を実施例4において合成した高分岐ポリマー4に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表2に合わせて示す。
【0080】
[実施例8]
<高分岐ポリマー4を用いたCNT−1の分散(2)>
実施例5において、分散剤及びその添加量を、実施例4において合成した高分岐ポリマー4 0.25gに、NMPの量を49.50gにそれぞれ変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表2に合わせて示す。
【0081】
[実施例17]
<高分岐ポリマー6を用いたCNT−1の分散(1)>
実施例5において、分散剤を実施例15において合成した高分岐ポリマー6に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表2に合わせて示す。
【0082】
[実施例18]
<高分岐ポリマー6を用いたCNT−1の分散(2)>
実施例17において、分散溶媒をNMPからIPAに変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表2に合わせて示す。
【0083】
[実施例19]
<高分岐ポリマー6を用いたCNT−1の分散(3)>
実施例17において、分散溶媒をNMPからPGMEに変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表2に合わせて示す。
【0084】
[実施例20]
<高分岐ポリマー7を用いたCNT−1の分散(1)>
実施例5において、分散剤を実施例16において合成した高分岐ポリマー7に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表2に合わせて示す。
【0085】
[実施例21]
<高分岐ポリマー7を用いたCNT−1の分散(2)>
実施例5において、分散剤及びその添加量を、実施例16において合成した高分岐ポリマー7 0.25gに、NMPの量を49.50gにそれぞれ変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表2に合わせて示す。
【0086】
[比較例1]
<高分岐ポリマー5を用いたCNT−1の分散(1)>
実施例5において、分散剤を参考製造例1において合成した高分岐ポリマー5に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表2に合わせて示す。
【0087】
[比較例2]
<高分岐ポリマー5を用いたCNT−1の分散(2)>
実施例5において、分散剤及びその添加量を、参考製造例1において合成した高分岐ポリマー5 0.25gに、NMPの量を49.50gにそれぞれ変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表2に合わせて示す。
【0088】
[比較例3]
<PVPを用いたCNT−1の分散(1)>
実施例5において、分散剤をPVPに変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表2に合わせて示す。
【0089】
[比較例4]
<PVPを用いたCNT−1の分散(2)>
実施例5において、分散剤及びその添加量を、PVP 0.25gに、NMPの量を49.50gにそれぞれ変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表2に合わせて示す。
【0090】
【表2】
【0091】
[実施例9]
<高分岐ポリマー2を用いたCNT−2の分散(1)>
実施例5において、MWCNTをCNT−2に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0092】
[実施例10]
<高分岐ポリマー2を用いたCNT−2の分散(2)>
実施例5において、MWCNTをCNT−2に、高分岐ポリマー2の添加量を0.25gに、NMPの量を49.50gにそれぞれ変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表3に合わせて示す。
【0093】
[実施例11]
<高分岐ポリマー4を用いたCNT−2の分散>
実施例5において、MWCNTをCNT−2に、分散剤を実施例4において合成した高分岐ポリマー4にそれぞれ変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表3に合わせて示す。
【0094】
[実施例22]
<高分岐ポリマー6を用いたCNT−2の分散>
実施例5において、MWCNTをCNT−2に、分散剤を実施例15において合成した高分岐ポリマー6に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表3に合わせて示す。
【0095】
[実施例23]
<高分岐ポリマー7を用いたCNT−2の分散>
実施例5において、MWCNTをCNT−2に、分散剤を実施例16において合成した高分岐ポリマー7に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表3に合わせて示す。
【0096】
[比較例5]
<高分岐ポリマー5を用いたCNT−2の分散>
実施例5において、MWCNTをCNT−2に、分散剤を参考製造例1において合成した高分岐ポリマー5にそれぞれ変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表3に合わせて示す。
【0097】
[比較例6]
<PVPを用いたCNT−2の分散>
実施例5において、MWCNTをCNT−2に、分散剤をPVPにそれぞれ変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表3に合わせて示す。
【0098】
【表3】
【0099】
[実施例24]
<高分岐ポリマー7を用いたCNT−4の分散>
実施例5において、MWCNTをCNT−4に、分散剤を実施例16において合成した高分岐ポリマー7に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0100】
[実施例25]
<高分岐ポリマー7を用いたCNT−5の分散>
実施例24において、MWCNTをCNT−5に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表4に合わせて示す。
【0101】
[実施例26]
<高分岐ポリマー7を用いたCNT−6の分散>
実施例24において、MWCNTをCNT−6に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表4に合わせて示す。
【0102】
[実施例27]
<高分岐ポリマー7を用いたCNT−7の分散>
実施例24において、MWCNTをCNT−7に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表4に合わせて示す。
【0103】
[実施例28]
<高分岐ポリマー7を用いたCNT−8の分散>
実施例24において、MWCNTをCNT−8に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表4に合わせて示す。
【0104】
[比較例9]
<PVPを用いたCNT−4の分散>
実施例5において、MWCNTをCNT−4に、分散剤をPVPに変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表4に合わせて示す。
【0105】
[比較例10]
<PVPを用いたCNT−5の分散>
比較例9において、MWCNTをCNT−5に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表4に合わせて示す。
【0106】
[比較例11]
<PVPを用いたCNT−6の分散>
比較例9において、MWCNTをCNT−6に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表4に合わせて示す。
【0107】
[比較例12]
<PVPを用いたCNT−7の分散>
比較例9において、MWCNTをCNT−7に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表4に合わせて示す。
【0108】
[比較例13]
<PVPを用いたCNT−8の分散>
比較例9において、MWCNTをCNT−8に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表4に合わせて示す。
【0109】
【表4】
【0110】
表2に示すとおり、CNT/分散剤混合比が同一である、実施例5,7,17,20及び比較例3、並びに実施例6,8,21及び比較例4をそれぞれ比較すると、本発明の分散剤を用いて作製したCNT−1薄膜複合体(実施例5〜8、実施例17,20,21)は、CNTの分散剤として公知であるPVPを用いた場合(比較例3,4)よりも表面抵抗値が低く、全光透過率も同等以上であった。さらに、本発明の分散剤が溶解する溶媒(IPAやPGME)であれば、NMP以外の溶媒中にもCNTを分散することが可能であり(実施例18,19)、MWCNTの分散に幅広く適用できることが明らかとなった。また、薄膜の均一性も良好であり、本発明の分散剤が高導電性で均一な薄膜複合体を得る上で、有利であることが明らかとなった。なお、高分岐ポリマー5を分散剤として用いた比較例1及び比較例2は分散状態を保てず、該ポリマーには分散性能がないとする結果が得られた。
更に、より外径が細いMWCNT(CNT−2)の分散では、表3に示したとおり、本発明の分散剤を用いた場合(実施例9〜11、実施例22,23)にのみ、MWCNTが均一に分散したMWCNT含有分散液が得られ、薄膜複合体の調製が可能であった。CNT−2のようなより外径の細いMWCNTを用いることで、薄膜複合体の透明性の向上が期待できるため、本発明の分散剤は透明性の点でも有利であることが明らかとなった。
また表4に示したとおり、本発明の分散剤は、様々なメーカーより市販されているMWCNTでも分散が可能であり、MWCNT種が同じである実施例24及び比較例9(CNT−4)、実施例25及び比較例10(CNT−5)、実施例26及び比較例11(CNT−6)、実施例27及び比較例12(CNT−7)、並びに実施例28及び比較例13(CNT−8)を比較すると、本発明の分散剤を用いて作製したMWCNT薄膜複合体は、(実施例24〜28)は、CNTの分散剤として公知であるPVPを用いた場合(比較例9〜13)よりも表面抵抗値が1桁〜4桁程度も低く、全光透過率も同等以上であった。さらに薄膜の均一性が良好であるため、本発明の分散剤が高導電性で均一な薄膜複合体を得る上で有利であると共に、市販のMWCNTの分散において幅広く適用可能であることが明らかとなった。
【0111】
[実施例12]
<高分岐ポリマー2を用いたCNT−3の分散>
分散剤として実施例2において合成した高分岐ポリマー2 1mgをNMP5mLに溶解させ、この溶液へSWCNTとしてCNT−3 0.5mgを添加した。この混合物に、超音波洗浄器を用いて室温で1時間超音波処理を行い、室温(およそ25℃)で10,000G、1時間の遠心分離により、上澄み液として黒色透明なSWCNT含有溶液を回収した。
得られた黒色透明なSWCNT含有溶液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを測定したところ、半導体性S11バンド(1,400〜1,000nm)、S22バンド(1,000〜600nm)、及び金属性バンド(600〜450nm)の吸収が明確に観察され、SWCNTが孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
【0112】
[実施例29]
<高分岐ポリマー6を用いたCNT−3の分散>
実施例12において、分散剤を実施例15において合成した高分岐ポリマー6に変更した以外は、同様の操作を行った。
得られた黒色透明なSWCNT含有溶液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを測定したところ、半導体性S11バンド(1,400〜1,000nm)、S22バンド(1,000〜600nm)、及び金属性バンド(600〜450nm)の吸収が明確に観察され、SWCNTが孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
【0113】
[実施例30]
<高分岐ポリマー7を用いたCNT−3の分散>
実施例12において、分散剤を実施例16において合成した高分岐ポリマー7に変更した以外は、同様の操作を行った。
得られた黒色透明なSWCNT含有溶液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを測定したところ、半導体性S11バンド(1,400〜1,000nm)、S22バンド(1,000〜600nm)、及び金属性バンド(600〜450nm)の吸収が明確に観察され、SWCNTが孤立分散状態にまで分散されていることが確認された。
【0114】
[比較例7]
<PVPを用いたCNT−3の分散>
実施例12において、高分岐ポリマー2をPVPに変更した以外は同様の操作を行ったが、SWCNTを分散させることはできなかった。
【0115】
[比較例8]
<CNT−3単独での分散>
実施例12において、高分岐ポリマー2の添加を無くした以外は同様の操作を行ったが、SWCNTを分散させることはできなかった。
【0116】
[実施例13]
<高分岐ポリマー2及びJERを用いたCNT−1薄膜複合体の熱硬化>
分散剤として実施例2において合成した高分岐ポリマー2 0.50gをNMP49.25gに溶解させ、この溶液へMWCNTとしてCNT−1 0.25gを添加した。この混合物に、プローブ型超音波照射装置を用いて室温(およそ25℃)で30分間超音波処理を行い、沈降物がなくMWCNTが均一に分散した黒色のMWCNT含有分散液を得た。
上記MWCNT含有分散液1.0gに、あらかじめ調製した多官能エポキシ化合物JERの1.5質量%NMP溶液1.0g、及びブチルセロソルブ0.5gを添加し、薄膜作製用の組成物を調製した。得られた組成物50μLを、スリット幅25.4μmのアプリケータを用いてガラス基板上に均一に展開し、100℃で10分間プリベークし乾燥することで、透明で均一なMWCNT/高分岐ポリマー2/エポキシ化合物薄膜複合体を作製した。この薄膜複合体を、さらに160℃にて30分間ポストベークし熱硬化を行った。
得られた薄膜複合体の、熱硬化前後の表面抵抗、全光透過率及び鉛筆硬度をそれぞれ評価した。なお、鉛筆硬度については、JIS K5400に記載の手かき法に準じて測定した。結果を表5に示す。
【0117】
[実施例14]
<高分岐ポリマー2及びEPLを用いたCNT−1薄膜複合体の熱硬化>
実施例13において、多官能エポキシ化合物をEPLに、ポストベーク温度を230℃に変更した以外は、同様の操作、評価を行った。評価結果を表5に合わせて示す。
【0118】
【表5】
【0119】
実施例13、14で得られた薄膜は均一であり、多官能エポキシ化合物を添加し薄膜を作製した場合でもMWCNTの分散性は維持された。更にポストベークにより熱硬化することで、表面抵抗値の低下と鉛筆硬度の大幅な向上が確認された。このことから、分散剤として用いた本発明の高分岐ポリマーは、エポキシ化合物の硬化促進剤としても作用することが明らかであり、薄膜として硬度の求められる用途に好適に用いることが可能であるとする結果が得られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0120】
【特許文献1】特開平6−228824号公報
【特許文献2】特開2000−44216号公報
【特許文献3】特開2008−24568号公報
【特許文献4】特開2005−75661号公報
【特許文献5】特開2005−162877号公報
【特許文献6】特開2008−24522号公報
【非特許文献】
【0121】
【非特許文献1】Science,vol.282,p.95−98,1998年
【非特許文献2】CHEMICAl PHYSICS LETTERS,Vol.342,p.265−271,2001年
【非特許文献3】第56回高分子学会年次大会予稿集,vol.56,No.1,p.1463,2007年
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