【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、伝達情報である微弱信号に雑音が重畳した入力信号を、確率共鳴現象により、該微弱信号を再生する信号再生装置において、非線形素子と、入力信号に対する非線形素子の時間を変数として変化する出力信号の補間を行う補間装置と、
を有し、補間装置は、N個(Nは2以上の自然数)の分岐線路と、該分岐線路により分岐されたN個の信号に対して、それぞれ異なる時間だけ遅延させるN個の遅延素子と、N個の分岐線路において、少なくともそれぞれの遅延素子を通過した信号を一つの信号に合成する合成器と
を有することを特徴とする信号再生装置である。
【0013】
補間には、非線形素子から直接、出力される信号に対して補間する場合と、非線形信号に入力される入力信号に対して、処理されて、その処理された結果の信号が非線形素子に入力することで、結果的に非線形素子の出力信号が補間される場合とがある。
非線形素子が、例えば、信号レベルをある閾値により2値化する2値化素子であるとすると、伝達情報である微弱信号に雑音が重畳した入力信号を非線形素子に入力すると、雑音のレベル変動により、非線形素子の出力は雑音の周波数に応じた幅のパルス列となる。このパルスの占有率(ある時間区間当たりのレベルの時間積分、すなわち面積密度)は微弱信号のレベルに比例することになる。補間は、このパルスの占有率を拡大(増幅)する処理を意味する。非線形素子の出力である時間を変数として変化するパルス列において、パルスが存在しない期間を、パルスの存在(占有率)に応じて、埋める処理(占有率の拡大又は増幅)が行われる。本明細書では、補間は、このような時間軸方向での信号レベルの補間処理を意味するものとして使用している。
【0014】
非線形素子が2値化素子でなくとも、非線形素子の出力信号は雑音レベルの変動により、微弱信号のレベルに比例して、非線形素子の出力信号の単位時間区間当たりのレベルの時間積分(レベル占有率)が大きくなる。したがって、非線形素子が2値化素子でなくとも、補間は、非線形素子の出力信号のレベル占有率に比例させて、レベルが比較的低い領域のレベル占有率を拡大(増幅)する処理であるとして定義される。このような補間は、後述するように、非線形素子の出力信号を複数の異なる遅延時間だけ遅延して合成することにより、占有率の小さい領域の占有率を微弱信号のレベルに応じて増加させることができる。
補間の間隔は、雑音の相関時間よりも長くすることが望ましい。また、補間の間隔は、微弱信号の再生すべき最大周波数fの2倍の逆数1/(2f)以下とすることが望ましい。
また
、非線形素子の出力信号をローパスフィルタや積分器を通過させて、ある周波数以上の周波数成分を遮断することで、非線形素子の出力信号のパルスをブロードにする、または、信号の変化を滑らかにすることで、占有率の小さい領域の占有率を微弱信号のレベルに応じて増加させることができる。なお、補間には、遅延合成
やパルス面積の累積の後の時間微分など、任意の補間を用いることがで
きる。
【0015】
上記発明において、非線形素子は、閾値を越える信号に対して信号を出力する閾値応答素子のような2値出力の素子、入力レベルが低い場合には入力レベルの増加に対する出力レベルの増加率が小さく、入力レベルが高い場合には入力レベルの増加に対する出力レベルの増加率が大きくなるような非線形特性を有した素子である。閾値応答素子にはコンパレータやトランジスタなどを用いることができる。非線形素子には、非線形領域を動作領域とするバイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタなどのユニポーラトランジスタを用いることができる。
【0016】
また、入力信号には、アナログ信号や、アナログ信号をサンプリングしA/D変換した後のディジタル信号であっても良い。非線形素子としては、入力信号をディジタル信号とする場合に、関数演算器を用いることができる。関数演算器による非線形関数には、ロジスティック関数、シグモイド関数、ステップ関数などを用いることができる。また、アナログ信号を扱う非線形素子には、入力と出力との関係がこれらの非線形関係にある素子であれば、任意の素子が使用可能である。
【0017】
また、伝達情報である微弱信号は、周期的信号であっても、非周期的信号であっても、一時間だけ存在する単一信号であっても良い。微弱信号は正弦波、方形波など任意形状の波形であり、正弦波を任意の信号で変調した信号であっても良い。
【0018】
また、非線形素子の非線形特性が、ステップ関数など閾値が設定される特性である場合には、閾値は基準レベルであっても良いし、基準レベルに対して正、負の2領域に閾値が設定されるものであっても良い。また、シュミットトリガーのように、入力と出力との関係にヒステリシス特性が存在しても良い。非線形素子にコンパレータを使用する場合には、第1閾値とこれより大きい第2閾値との間に入力信号レベルが存在する場合には、基準レベルの出力、入力信号レベルが第1閾値より低い場合には基準レベルより低いLレベル、入力信号レベルが第2閾値より高い場合には、基準レベルより高いHレベルを出力するウインドウコンパレータであっても良い。
【0019】
一般的には、検出すべき微弱信号の電圧レベルは、雑音の電力レベルよりも小さいが、大きくてもかまわない。また、各非線形素子の非線形特性が閾値を有する場合には、閾値は、微弱信号に雑音が重畳した入力信号の電圧レベル以下であれば、任意に設定できる。閾値は入力信号の基準レベルに設定しても良い。閾値を基準レベルに設定した場合に、微弱信号が基準レベルを中心として正、負に振動する信号であれば、全周期の微弱信号の波形を再生することができる。例えば、入力信号の基準レベルが0の場合には、閾値は0であっても良い。以下の説明では、微弱信号も、雑音も、雑音が重畳された入力信号も、基準レベル(バイアスレベル)を零レベルとして正、負の電圧で振動する信号とする。閾値を0に設定した場合に、微弱信号が正、負となる全周期の波形の生成が可能となる。微弱信号に雑音が重畳された入力信号は、雑音の電圧レベルが微弱信号の電圧レベルにより変動した信号となる。したがって、閾値を正の領域に設定すると、微弱信号の正期間の波形を、負期間の波形よりはより精度良く再現できる。逆に、閾値を負の領域に設定すると、微弱信号の負期間の波形を、正期間の波形よりもより精度良く再現できる。
【0020】
【0021】
一般的には、微弱信号の最大周波数は、雑音の最大電力の周波数よりも低い。N個の入力信号を、それぞれ、異なる遅延時間で遅延させて、それぞれの遅延信号の非線形出力信号を生成して、合成すると、雑音成分は、遅延に対して相関がなく、微弱信号については遅延に関して相関がある。このため、合成信号は、雑音成分がキャンセルされ、微弱信号は自己相関により増幅される。N個の入力信号の非線形出力信号を生成して、それぞれの非線形出力信号を、 それぞれ、異なる遅延時間だけ遅延して合成した場合にも、雑音成分は、遅延に対して相関がなく、微弱信号については遅延に関して相関がある。このために、合成信号は、雑音成分がキャンセルされ、微弱信号が自己相関により増幅される。本発明はこの原理により合成信号のS/N比を向上させている。
【0022】
また、本発明において、分岐線路、遅延素子の数Nは、2以上の自然数であれば、任意である。Nは10以上が望ましく、さらに、100以上が望ましい。Nが100以上となると、雑音レベルの増加に対して、微弱信号の再生精度の低下が抑制される。Nを1000以上とすると、雑音レベルの増加に対して、ほぼ、確実な一定の精度で微弱信号が再生される。
【0023】
各分岐線路に配設される非線形素子と遅延素子との配置関係は、非線形素子の出力信号を遅延素子に入力させて、遅延素子の出力を合成する場合と、遅延素子の出力信号を非線形素子に入力させて、非線形素子の出力を合成する方法と2通りある。いずれにしても、結果として、非線形素子の出力の遅延合成された信号が得られる。
したがって、上記発明において、入力信号がN個の分岐線路に分岐され、非線形素子はN個存在し、それぞれの非線形素子は、それぞれの分岐線路に設けられ、分岐されたそれぞれの入力信号を入力し、それぞれの非線形素子の出力信号を、それぞれの遅延素子に入力させ、合成器は、それぞれの遅延素子の出力信号を合成するようにしても良い。
【0024】
また、上記発明において、入力信号がN個の分岐線路に分岐され、それぞれの遅延素子は、分岐されたそれぞれの入力信号を入力し、非線形素子はN個存在し、それぞれの非線形素子は、それぞれの分岐線路に設けられ、それぞれの遅延素子の出力信号を、それぞれの非線形素子に入力させ、合成器は、それぞれの非線形素子の出力信号を合成するようにしても良い。
【0025】
また、上記発明において、各分岐線路に設けられている非線形素子が同一特性であるならば、入力信号が各分配回路に分配される前の段階で、一つの非線形素子を設けても良い。
すなわち、上記発明において、非線形素子は入力信号を入力し、非線形素子の出力信号が、N個の分岐線路に分岐され、それぞれの分岐された信号がそれぞれの遅延素子に入力し、合成器は、それぞれの遅延素子の出力信号を合成するようにしても良い。
【0026】
また、非線形素子と遅延素子との接続関係は、信号の入力する側から非線形素子、遅延素子の順と、遅延素子、非線形素子との順の2通りがある。
したがって、上記発明において、入力信号を入力する側から、非線形素子、遅延素子の順で接続された第1線路と、入力信号を入力する側から、遅延素子、非線形素子の順で接続された第2線路とが混在し、合成器は、非線形素子及び遅延素子のうち後段に位置する素子の出力信号を合成するようにしても良い。
この発明において、遅延素子はN個存在し、遅延素子が存在する分岐線路もN個存在するが、非線形素子の数は、N個以下、2以上である。非線形素子の数がN個の場合には、遅延素子と非線形素子との直列接続回路がN個存在することになる。非線形素子が遅延素子の前段に設けられる線路においては、その非線形素子を共通化することができる。この場合には、非線形素子の個数は2以上、N個より少ない。
したがって、上記発明において、第1線路における非線形素子は1個であって、その非線形素子の出力信号が複数に分岐された後に第1線路における各遅延素子に入力しているようにしても良い。
【0027】
また、各分配回路に設けられる非線形素子の特性が不均一であれば、その特性により異なる伝搬遅延時間を与えることができる。
したがって、上記発明において、それぞれの非線形素子は、その特性の不均一性により出力に異なる遅延を生じ、それぞれの遅延素子を兼ねるようにしても良い。
また、上記の発明において、各遅延素子の各遅延時間は、それぞれ異なれば、任意であるが、規則性があっても良い。例えば、遅延時間を、公差Δtの等差数列で与えても良い。遅延時間を等差数列で与えると、微小信号の再現性がより向上する。
【0028】
また、N個の遅延素子における遅延時間の差のうち最小遅延時間差は、入力信号に重畳されている雑音の相関時間よりも大きいことが望ましい。複数の入力信号又は入力信号の非線形出力信号を遅延させて合成する場合に、合成により雑音成分をキャンセルするには、遅延された各雑音に関して相関がないことが必要である。したがって、白色雑音の場合には、相関時間は短いが、相関が一定の値以下に低下する時間よりも、遅延時間差の最小値を大きくすることが望ましい。このときに、合成信号において、効果的に雑音成分をキャンセルして、伝達情報である微弱信号を再生することができる。
【0029】
また、微弱信号の再生すべき最大周波数をfとする時、N個の遅延素子における遅延時間の差のうち最大遅延時間差は1/(2f)以下とすることが望ましい。再生すべき最大周波数とは、微弱信号の目的に応じた再生に必要とする最大周波数であり、微弱信号を構成する最大周波数成分の周波数以下である。微弱信号の波形の必要とする再生の程度によって決定される。1/(2f)は最大周波数の半周期である。最大周波数の正弦波、余弦波を半周期以内の遅延時間で遅延させて合成した場合には、波形が保存されるので、微弱信号の波形の再生が可能である。また、最大遅延時間差を1/(4f)以下、すなわち、周期/4以下としても良い。
【0030】
また、微弱信号の再生単位となる時間幅をTとする時、N個の遅延素子における遅延時間の差のうち最大遅延時間差はT以下であることが望ましい。この時間幅は、上述した微弱信号の再生すべき最大周波数fに対して、1/(2f)に相当する。時間幅Tで変化する信号を再生する場合には、最大遅延時間差はT以下とする必要がある。また、最大遅延時間差をT/2とすると、微小信号の自己相関がより高くなるので、再現精度はより高くなる。
【0031】
また、
本発明とは別に以下のことが明細書には記載されている。第1の発明において、非線形素子は、入力信号を入力し、補間装置は、非線形素子の出力信号を入力するローパスフィルタであることを特徴とする信号再生装置である。
【0032】
ローパスフィルタには、入力信号がアナログの場合には、アナログフィルタを用いることができる。入力信号がディジタル信号の場合、又は、アナログの場合であってもサンプリングした後ディジタルに変換した信号の場合には、ディジタルフィルタを用いることができる。
【0033】
また、ディジルタフィルタを用いた場合には、タップ数は任意である。タップ数Nは、2以上の自然数であれば、任意である。Nは10以上が望ましく、さらに、100以上が望ましい。Nが100以上となると、雑音レベルの増加に対して、微弱信号の再生精度の低下が抑制される。Nを1000以上とすると、雑音レベルの増加に対して、ほぼ、確実な一定の精度で微弱信号が再生される。また、タップ係数については、所定のローパスフィルタの伝達関数が得られるように設定すれば良い。なお、タップ係数を全て1としても、周波数特性がシグモイド関数となるローパスフィルタとなるので、微弱信号の再生が可能である。
【0034】
また、ディジタルフィルタを用いる場合に、入力信号のサンプリング周期Δtは、入力信号に重畳されている雑音の相関時間よりも大きいことが望ましい。相関時間の逆数を相関周波数と定義すると、雑音において、相関周波数以下の周波数成分は、相関周波数以上の成分に対して、十分に小さい。したがって、サンプリング周期Δtでサンプリングされた入力信号のフーリエ変換の第1ブリルアンゾーン(1/Δt以下の帯域)における雑音成分は、十分に小さくなる。また、換言すれば、ディジタルフィルタは、入力信号の非線形出力信号をタップ毎に、順次、Δtづつ遅延させて合成することと等価である。したがって、合成により雑音成分をキャンセルするには、遅延された各雑音に関して相関がないことが必要である。したがって、サンプリング周期Δtは、雑音の相関が一定の値以下に低下する時間よりも大きくすることが望ましい。このときに、合成信号において、効果的に雑音成分をキャンセルして、伝達情報である微弱信号を再生することができる。また、ウインドの時間T、すなわち、タップ数N×サンプリング周期Δtは、上述した微弱信号の再生すべき最大周波数fに対して、1/(2f)以下とすることが望ましい。NΔtはローパスフィルタの遮断周波数を与えるので、遮断周波数を微弱信号の最大再生周波数fの2倍(2f)以上に設定することと等価であるからである。
【0035】
入力信号のフーリエ変換と、入力信号を非線形素子に入力させて、その非線形素子の出力する非線形出力信号のフーリエ変換とを比べた場合には、非線形による確率共鳴により、後者の場合には、微弱信号成分が雑音よりも相対的に大きくなる。したがって、非線形出力信号をローパスフィルタに入力することにより、効果的に、微弱信号を抽出することができる。したがって、ローパスフィルタの遮断周波数は、非線形素子の出力信号のフーリエ変換によるスペクトルのレベルが、雑音のレベルよりも高くなる周波数範囲の最大値以上に設定されていることが望ましいが、その最大値に設定されていることが最も望ましい。この場合には、入力信号において、雑音レベルよりもレベルが高くなる周波数帯域のみが抽出されることから、相対的に微弱信号の成分がより多く抽出されることになる。この結果、微弱信号を精度良く検出することができる。
また、ローパスフィルタの遮断周波数は、上記最大値の1/2以上、最大値の2倍以下の範囲に設定されていることが望ましい。この範囲であれば、入力信号の成分を精度良く抽出することができる。
また、ローパスフィルタの遮断周波数に関して、次のような見方をすることができる。遮断周波数は、微弱信号の再生すべき最大周波数fまでの信号を再生するには、2f以上に設定される必要がある。一方、雑音の相関周波数(1/相関時間)よりも低く設定される必要がある。したがって、遮断周波数は2f以上、雑音の相関周波数以下に設定することが望ましい。
【0036】
また、ローパスフィルタの遮断周波数は、微弱信号の再生すべき最大周波数をfとする時、2fに設定されていることが最も望ましい。遮断周波数を2fに設定すると、このローパスフィルタのインパルス応答は、最初の零点が1/(2f)となるシグモイド関数となる。したがって、これは、時間軸上では、シグモイド関数による1/fの時間ウインドウをトランスバーサルフィルタに設定したことを意味する。これにより、非線形出力信号から微弱信号成分を抽出することができる。ローパスフィルタの伝達関数には、矩形波、シグモイド関数、バターワース関数、チェビシェフ関数、楕円関数、その他、一般にフィルタの設計に用いられる伝達関数を採用することができる。
【0037】
また、
第2の発明は、伝達情報である微弱信号に雑音が重畳した入力信号を、確率共鳴現象により、前記微弱信号を再生する信号再生方法において、非線形の入出力特性により、入力信号に対する非線形出力信号を得て、時間を変数として変化する該非線形出力信号の補間を行うことにより微弱信号を再生する
信号再生方法であって、補間は、入力信号にして、N個(Nは2以上の自然数)の異なる遅延時間だけ遅延されたN個の非線形出力信号を生成した後一つの信号に合成することにより行うことを特徴とする信号再生方法である。
この発明は、第1の装置発明に対応する方法発明である。したがって、上記の装置発明で説明したことが、方法発明においても適用される。
【0038】
【0039】
入力信号のN個の遅延信号又は入力信号の非線形出力信号のN個の遅延信号に関して、微弱信号については相関があり、雑音については相関がない。このため、遅延及び非線形処理された信号を合成することで、雑音をキャンセルして、微弱信号を増幅して、効果的に微弱信号を再生することができる。
【0040】
この方法発明において、信号の遅延と、非線形出力信号の生成との前後関係は、任意であり、上記した通りである。また、入力信号の非線形出力信号を生成してからN個の非線形出力信号に分配して、それぞれの非線形出力信号をそれぞれ異なる遅延時間だけ遅延させても良いことも、装置発明で説明した通りである。
また、最終的には、N個の遅延された非線形出力信号が得られれば良いので、入力信号の遅延の後、非線形出力を得る場合と、入力信号の非線形出力を得た後、遅延させる場合とが、混在していても良い。上記に説明した通りである。
【0041】
この方法発明においても、N個の遅延時間の差のうち最小遅延時間差は、入力信号に重畳されている雑音の相関時間よりも大きいことが望ましい。
また、微弱信号の再生すべき最大周波数をfとする時、N個の前記遅延時間の差のうち最大遅延時間差は1/(2f)以下とすることが望ましい。最大遅延時間差は1/(4f)以下とすることがさらに望ましい。
また、微弱信号の再生単位となる時間幅をTとする時、N個の遅延時間の差のうち最大遅延時間差はT以下であることが望ましい。最大遅延時間差は、さらに、T/2以下であることが望ましい。
【0042】
補間は、非線形出力信号から、遮断周波数以上の高周波成分を除去することにより行うことも
可能である。
【0043】
この場合、遮断周波数は、非線形出力信号のフーリエ変換のレベルが、雑音のレベルよりも高くなる周波数範囲の最大値に設定されていることが望ましい。また、遮断周波数は、微弱信号の再生すべき最大周波数をfとする時、2fに設定されていることが望ましい。また、遮断周波数以上の高周波成分の除去は、ディジタルフィルタによるものであり、入力信号のサンプリング周期は、雑音の相関時間よりも長いことが望ましい。
【発明の効果】
【0044】
本装置発明及び方法発明は、伝達情報である微弱信号に雑音が重畳した入力信号を、確率共鳴現象により、該微弱信号を再生する信号再生装置において、入力信号に対する非線形素子の時間を変数として変化する出力信号の補間を行うようにしている。非線形素子の出力信号は、雑音によるレベル変動により、微弱信号のレベルに比例して、ある時間区間におけるレベルの時間積分(信号の占有率、信号の面積密度)が変化する。時間軸での補間により、この占有率が拡大されることになり、再生される信号の感度が向上する。
【0045】
ま
た、N個の入力信号又は入力信号の非線形出力信号を、それぞれ異なる遅延時間だけ遅延させて、一つの信号に合成することを特徴としている。この非線形処理及び遅延処理の後の各信号(以下、単に、「遅延信号」という)においては、伝達情報である微弱信号については相関があり、雑音については相関がない。このため、遅延信号を合成(以下、「遅延合成」という)することで、雑音をキャンセルして、微弱信号を増幅して、効果的に微弱信号を再生することができる。
【0046】
このとき、N個の遅延時間の差のうち最小遅延時間差を、入力信号に重畳されている雑音の相関時間よりも大きくすることで、各遅延信号の合成において雑音が効果的に除去される。また、微弱信号の再生すべき最大周波数をfとする時、N個の前記遅延時間の差のうち最大遅延時間差は1/(2f)以下、望ましくは1/(4f)以下とすることで、1/(2f)、1/(4f)の期間は、各遅延信号において、微弱信号の相関が高い期間であるので、遅延合成により微弱信号を増幅することができる。微弱信号の再生単位となる時間幅をTとする時、N個の遅延時間の差のうち最大遅延時間差はT以下、望ましくはT/2以下とすることで、時間T、T/2は、微弱信号の相関が高い期間であるので、遅延合成により微弱信号を増幅することができる。この結果、合成信号において、S/N比を向上させることができる。
【0047】
また、合成すべき遅延信号の数Nは、大きい程、雑音レベルが増加しても、S/N比の低下が抑制される。例えば、Nが10以上の場合には、雑音レベルによらず、0.6以上の確度で微弱信号が再現される。また、Nが100以上の場合に、混入された雑音レベルが増加しても、微弱信号をほぼ再現することができ、合成した再生信号におけるS/N比を大きくでき、低下させることがない。Nが1000以上の場合には、雑音レベルが増加しても、S/N比は最大を維持し、雑音レベルの増加に対して安定して微弱信号を再生することができる。また、本発明は、N個の独立した雑音を入力信号に重畳させる方法ではないために、重畳させる雑音源が不要であり、相関のないN個の雑音源を設けるという複雑な装置、方法を必要としない。
【0048】
また、
本発明とは別に、伝達情報である微弱信号に雑音が重畳した入力信号を、入出力特性が非線形である非線形素子に入力して、非線形出力信号を得て、その非線形出力信号に対して、遮断周波数以上の周波数成分を遮断するよう
にすることも可能である。この場合、入力信号において、微弱信号が雑音に埋もれていても、非線形出力信号では、微弱信号のレベルが雑音のレベルに対して相対的に大きくなる。この結果、非線形出力信号から、ローパスフィルタにより、微弱信号の帯域を抽出すれば、微弱信号の精度の高い検出が実現される。
【0049】
このとき、ディジタル処理の場合には、入力信号のサンプリング周期ΔTを、入力信号に重畳されている雑音の相関時間よりも大きくすることで、各遅延信号の合成において雑音が効果的に除去される。また、微弱信号の再生すべき最大周波数をfとする時、遮断周波数を2fとして、非線形出力信号から、その遮断周波数以上の周波数成分を遮断することで、微弱信号の抽出が可能となり、S/N比を向上させることができる。
【0050】
また、ディジタル処理の場合にディジタルフィルタのタップ数Nは、大きい程、雑音レベルが増加しても、S/N比の低下が抑制される。例えば、Nが10以上の場合には、雑音レベルによらず、0.6以上の確度で微弱信号が再現される。また、Nが100以上の場合に、混入された雑音レベルが増加しても、微弱信号をほぼ再現することができ、合成した再生信号におけるS/N比を大きくでき、低下させることがない。Nが1000以上の場合には、雑音レベルが増加しても、S/N比は最大を維持し、雑音レベルの増加に対して安定して微弱信号を再生することができる。
また、本発明は、N個の独立した雑音を入力信号に重畳させる方法ではないために、重畳させる雑音源が不要であり、相関のないN個の雑音源を設けるという複雑な装置、方法を必要としない。