【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「低炭素社会を実現する革新的カーボンナノチューブ複合材料開発プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
NING LI, et al.,Electromagnetic Interference (EMI) Shielding of Single-Walled Carbon Nanotube Epoxy Composites,NANO LETTERS,2006年,Vol.6, No.6,pp.1141-1145
【文献】
M.B.BRYNING, et al.,Very Low Conductivity Threshold in Bulk Isotropic Single-Walled Carbon Nanotube-Epoxy Composites,Advanced Materials,2005年 5月,Volume 17, Issue 9,,pp.1186-1191
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カーボンナノチューブの配合量は、前記カーボンナノチューブ複合材料全体の質量を100重量%とした場合の0.0001重量%以上5重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ複合材料。
前記樹脂は、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール(レゾール型)、ユリア・メラミン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、スチレン系樹脂、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメチレンメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレンから選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項14に記載のカーボンナノチューブ複合材料。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明に係るカーボンナノチューブ複合材料について説明する。本発明のカーボンナノチューブ複合材料は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び後述する実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0031】
従来の技術開発は導電性フィラーをできるだけ均一にマトリックスに分散させる方向で発展してきたが、本発明はそれとは大きく異なる技術思想に基づくものである。本発明に係るカーボンナノチューブ複合材料は、カーボンナノチューブ(以下、CNTという)を均一にマトリックスに分散させるのではなく、マトリックスにCNTを不均一に分散させるものである。すなわち、本発明のカーボンナノチューブ複合材料は、複数のCNTより構成されるカーボンナノチューブ群(以下、CNT群という)と、CNTがほとんど存在しない、もしくは存在したとしてもCNT群におけるCNTの密度と比較して小さいCNT密度を有する母材領域を備えることを特徴とする。また、後述するように、本明細書において、CNTが存在しないとは、波長633nmのラマン分光分析で1560cm
−1以上1600cm
−1以下の範囲内で、目視においてグラフ上に顕著な変曲点、および/または、ベースライン強度に対して500%以上の突出部が確認されないことを言う。
【0032】
本発明のカーボンナノチューブ複合材料は、CNT群を構成するCNTの間に連続的な導電路が形成されることで、導電性をカーボンナノチューブ複合材料に付与することを特徴とする。ここで、CNT群内におけるCNT密度が母材領域より高くなることで、CNT群内のCNT同士の接触確率と頻度を高めることができる。そのため、少ないCNTの添加量で、CNT群は高導電性を有することができる。そのような高導電性を有するCNT群が連続的な導電路を形成するため、結果として、少ないCNTの添加量で、カーボンナノチューブ複合材料に高導電性を付与することができる。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブ複合材料100の模式図であり、カーボンナノチューブ複合材料100の一部を切り取り、内部を露出させた図である。本発明に係るカーボンナノチューブ複合材料100においては、カーボンナノチューブ10はマトリックス30に不均一に分散している。
図1に示すように、カーボンナノチューブ複合材料100の断面を光学顕微鏡で観察すると、複数のカーボンナノチューブから構成されるCNT群15と、カーボンナノチューブの存在密度が小さい母材領域35とを観察することができる。
【0034】
[CNT群]
CNT群は、複数のCNT(もしくはCNTのバンドル)とCNT(もしくはCNTのバンドル)が絡み合い離散集合したネットワーク構造(網目構造)を備えることを特徴とする。ここで、複数のCNTが「集合」したCNT群において、CNTが「離散集合」するとは、一部のCNTが局所的に集合したり、離れたりする、すなわち「離散」した状態を有することを意味する。(便宜的に
図2においては、複数のCNT10が集合したCNT群15において、集合部11と、離散部13とを有するものとして示した。また、
図2において、集合部11aと集合部11bとは、互いに離散している。)カーボンナノチューブ複合材料100の中で、CNT群15は、三次元的な網目構造を備える。CNT群15が備える網目体構造は、非常に発達した、広い領域まで張り巡らされたCNT10のネットワークであり、CNT群15を構成するCNT10が連通してカーボンナノチューブ複合材料100の中に連続的な導電路が形成されることで、導電性をカーボンナノチューブ複合材料100に付与する。本明細書においてCNT群15は、光学顕微鏡による観察で、カーボンナノチューブ10の集合体が観察される領域である。
【0035】
[母材領域]
本明細書において母材領域とは、光学顕微鏡による観察で、カーボンナノチューブ10の集合体が観察されない領域である。上述したように、カーボンナノチューブ複合材料100においては、カーボンナノチューブ10がマトリックス30に不均一に分散しているため、母材領域35が観察される。
【0036】
母材領域35はマトリックス30により形成された領域であるため、カーボンナノチューブ複合材料100は導電性を有するにも関わらずマトリックス30が備える物理特性を保持することができる。例えば、マトリックス30がエラストマーである場合には、エラストマーが備える力学特性や柔軟性と同等な力学特性や柔軟性を導電性カーボンナノチューブ複合材料100に付与することができる。本発明のカーボンナノチューブ複合材料100は、CNT群15と、母材領域35を複数備えることが、本発明の効果を得るために好ましい。本発明のカーボンナノチューブ複合材料は、CNT群15が母材領域35の周縁に配設されていることが好ましい。本発明のカーボンナノチューブ複合材料は、CNT群15が母材領域35を囲むように配設されていることが好ましい。このようなCNT群15を備えると、いわば、CNT群15がシャボン玉の膜のように配置され、母材領域35を囲むとともに、CNT群15が連続的な導電路が形成されやすくなり、本発明の効果を得るのに好適である。本発明のカーボンナノチューブ複合材料100が母材領域35とCNT群15とによって形成される海島構造を備えると、上記効果がいっそう顕著になり、CNT群15が連続的な導電路を形成しやすい。この場合、CNT群15が島で、母材領域35が海、もしくは、CNT群15が海、母材領域35が島、いずれでの場合でも好適に用いることができる。
【0037】
[ラマンスペクトル]
CNT群15や、母材領域35に存在するカーボンナノチューブはラマン分光分析により同定し定量的に評価することが可能である。本発明に係わるカーボンナノチューブ複合材料の光学顕微鏡による観察でCNT群15と、母材領域35が観察されるものの、光学顕微鏡のみでは、母材領域35へのCNTの存在の有無は判別できない。また存在する場合にその量を定量的に評価できない。そのため、ラマン分光分析による解析はカーボンナノチューブ複合材料100の構造を規定するのに有効である。本発明のカーボンナノチューブ複合材料100に用いるカーボンナノチューブは、共鳴ラマン散乱測定法の測定により得られるスペクトルで1560cm
−1以上1600cm
−1以下の範囲内での最大のピーク強度をGバンド(カーボンナノチューブのグラファイト構造に起因)の強度とすると、CNT群15においては、明瞭なGバンドが観察される。ここで、ピークとは、目視においてグラフ上に顕著な変曲点、および/または、ベースライン強度に対して500%以上の突出部をいう。方や、母材領域35においては、Gバンドは観測されないか、もしくは観測されてもCNT群15のGバンドと比較して強度が小さい。すなわち、母材領域35においては、共鳴ラマン散乱測定法の測定により得られるスペクトルで1560cm
−1以上1600cm
−1以下の範囲内で、ピークは観測されない、もしくは観測されてもCNT群15のピークと比較して非常に小さい。ここで、ピークが観測されないとは、ベースライン強度に対して500%以上の突出部が観察されないことをいう。ここでピークが観測されないとは、波長633nmのラマン分光分析で1560cm
−1以上1600cm
−1以下の範囲内で、目視においてグラフ上に顕著な変曲点、および/または、ベースライン強度に対して500%以上の突出部が確認されないことを言う。すなわち、本発明のカーボンナノチューブ複合材料100に用いるカーボンナノチューブは、共鳴ラマン散乱測定法の測定により得られるスペクトルで、1560cm
−1以上1600cm
−1以下の範囲内、CNT群15と母材領域35は異なるスペクトルを示す。
【0038】
ここで、CNT群15で観測されるGバンドの最大強度と、母材領域35で観測される1560cm
−1以上1600cm
−1以下の範囲内でのラマンの最大強度の比は5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上である。このような、最大強度の比を備えるカーボンナノチューブ複合材料は、CNTがマトリックス中に不均一に分散しているため、本発明の効果を得やすい。
【0039】
ラマン分光分析は波長633nmで測定することが好ましい。この場合様々なマトリックスを用いてもカーボンナノチューブ複合材料中のCNTを適切に評価できる。波長532nmでの測定は、ラマンスペクトルがマトリックスの種類に依存するために、あまり適切ではない。さらにラマン分光で用いるレーザーの直径は、500nm以上、10μm以下がCNT群15と、母材領域35を観察するために適切である。
【0040】
カーボンナノチューブ複合材料100は、領域サイズが10μm以上、より好ましくは15μm,さらに好ましくは20μmのCNT群15を備える。ここで、CNT群15は、広い領域の細部まで三次元的に張り巡らされたCNTのネットワークであり、CNT群15同士もお互いに接触しているため、各々のCNT群15の領域サイズを測定することは難しい。そこで、本発明では、CNT群15の領域サイズを規定するために、カーボンナノチューブ複合材料の破断面等の光学顕微鏡写真などで観察された2次元画像を用いる。CNT群15の領域サイズは2次元画像で観察されたCNT群15の網目構造を構成する全ての点に関し、該点と、該点に対して最も遠い位置に存在するCNT群15の点との距離の最大値と定義する。
【0041】
ここで、CNT群15同士がお互いに接触し、連続的な導電路を形成するため、上記測定法で、実質的に領域サイズが無限大になるCNT群15が存在する。そのため、カーボンナノチューブ複合材料100は、1000倍の光学顕微鏡画像の300μm角の領域において、画像の上端と下端、および/または、左端と右端を、連続的に結ぶCNT群15を有することが好ましい。
【0042】
本発明のカーボンナノチューブ複合材料100は、配合量1.0重量%以下、好ましくは配合量0.5重量%以下で、さらに好ましくは配合量0.2重量%以下、さらに好ましくは配合量0.1重量%以下で、領域サイズが10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上のCNT群15を備える。
【0043】
さらに、本発明のカーボンナノチューブ複合材料100は、配合量1.0重量%以下、好ましくは配合量0.5重量%以下で、さらに好ましくは配合量0.2重量%以下、さらに好ましくは配合量0.1重量%以下で、カーボンナノチューブ複合材料100の1000倍の光学顕微鏡画像の300μm角の領域において、画像の上端と下端、および/または、左端と右端を、連続的に結ぶCNT群15を有することが好ましい。
【0044】
このような、カーボンナノチューブ複合材料100は、CNT群15の内と、CNT群15間でカーボンナノチューブ10が効率良く互いに接触して、連続的な導電路が形成されるため、パーコレーション閾値におけるカーボンナノチューブ10の添加量が低減されるとともに、少ない配合量で高い導電性を示す。
【0045】
カーボンナノチューブ複合材料100は、領域サイズが10μm以上、より好ましくは15μm以上,さらに好ましくは20μm以上の母材領域35を備えることが好ましい。ここで、母材領域35は、三次元的に張り巡らされたCNTのネットワークに囲まれているため、各々の母材領域35のサイズを測定することは難しい。そこで、本発明では、母材領域35の領域サイズを規定するために、カーボンナノチューブ複合材料の破断面等の光学顕微鏡写真などで観察された2次元画像を用いる。母材領域35の領域サイズは、2次元画像で観察された母材領域35を構成する全ての点に関し、該点と、該点に対して最も遠い位置に存在する母材領域35の点との距離の最大値と定義する。
【0046】
本発明のカーボンナノチューブ複合材料100は、CNT群15によって囲まれた母材領域35を有することが好ましい。ここで、CNT群15によって囲まれた母材領域35の領域サイズが10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上の母材領域35を備える。
【0047】
本発明のカーボンナノチューブ複合材料100は、配合量1.0重量%以下、好ましくは配合量0.5重量%以下で、さらに好ましくは配合量0.2重量%以下、さらに好ましくは配合量0.1重量%以下で、CNT群15によって囲まれた母材領域35を有することが好ましい。ここで、CNT群15によって囲まれた母材領域35の領域サイズが10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上の母材領域35を備える。
【0048】
このような母材領域35を備えると、いわば、CNT群15がシャボン玉の膜のように配置され、CNT群15が連続的な導電路が形成されやすくなるとともに、大きな母材領域35がカーボンナノチューブ複合材料100にマトリックスの物理特性を付与し、本発明の効果を得るのに好適である。
【0049】
マトリックス30により形成された母材領域35は、カーボンナノチューブ10を少量しか含まない。この結果、母材領域35は、マトリックスの物理特性を保持することができる。この母材領35領域が上記し領域サイズで存在することで、カーボンナノチューブ複合材料100はマトリックス30が備える物理特性を有することができる。
【0050】
[パーコレーション]
パーコレーション理論(percolation theory)とは、対象とする物質が系内でのどのように繋がっているか、その繋がり方の特徴が系の特性にどの様な影響を与えるかを対象にする理論である。導電体を含む複合材料において、特定濃度(閾値)以上で導電体が連結し、複合材料の系全体を連なる無限大のサイズのクラスターが形成されて導電性が生じる。無限大サイズのクラスターが存在するためには、導電体の濃度(確立)pが臨界パーコレーション濃度、あるいはパーコレーション閾値p
cよりも大きいことが必要である。ここで、アスペクト比の大きな導電体は、パーコレーション閾値が低くなる。
【0051】
パーコレーション閾値は例えば以下の方法で求めることができる。CNT濃度pから変数p’を引いた(p−p’)に対して、導電率Sの対数logSの近似直線の残渣が最小になる時のp’をパーコレーション閾値p
cとする。後述する実施例4、実施例5に記載の本発明のカーボンナノチューブ複合材料のパーコレーション閾値は、0.048重量%であり、従来の報告と比較して極めて小さい。
図3は、過去の文献(J. Kovacs and W. Bauhofer Composite Science and Technology 69, 1486-1498 (2009))で報告されたカーボンナノチューブ複合材料のパーコレーション閾値と本発明のパーコレーション閾値を比較したものであるが、本発明のカーボンナノチューブ複合材料は従来のカーボンナノチューブ複合材料と比較して、極めて小さなパーコレーション閾値を有することがわかる。
【0052】
本発明のカーボンナノチューブ複合材料100のパーコレーション閾値は、配合量が0.0001重量%以上であることが好ましく、また、0.2重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下である。
【0053】
[フラクタル次元]
上述したように、本発明のカーボンナノチューブ複合材料100の断面を観察すると、不均一にカーボンナノチューブ10がマトリックス30に分散したCNT群15が観察される。このように、平面的に不均一な形状を有するCNT群15は、フラクタル次元解析により定義することができる。本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ複合材料100において、CNT群15は1.7以上のフラクタル次元を備える。
【0054】
上述したパーコレーション理論において、無限大のサイズのクラスターのフラクタル次元は、二次元では91/48(1.895)であることが証明されており、また三次元では2.5と考えられている。本発明に係るカーボンナノチューブ複合材料100は、断面を観察すると、アスペクト比の大きなカーボンナノチューブが効率良く互いに接触して、連続的な導電路が形成するため、導電領域のフラクタル次元が、二次元で無限大のサイズのクラスターを形成するフラクタル次元である1.895に近くなる。
【0055】
従って、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ複合材料100は、アスペクト比の大きなカーボンナノチューブ10を用いることで連続的な導電路が形成されるため、カーボンナノチューブの少ない添加量で、CNT群15が1.66以上、より好ましくは1.7以上のフラクタル次元を備えて、導電性を付与することができる。
【0056】
本実施形態において、フラクタル次元解析は、カーボンナノチューブ複合材料100の断面の光学顕微鏡像を、オープンソースの画像処理ソフトウェアであるImageJと、そのフラクタル次元解析用プラグインであるFracLacを用いて行うことができる。フラクタル次元解析においては、まず解析対象の顕微鏡像を、ImageJを用いて二値化し、次にFlacLac2.5 Release 1dにより二値化像のLocal Connected Flactal Dimension(LCFD)解析を行う。ここで、諸解析パラメーターは各々Minimum Bin=0、Maximum Bin=2、Bin Size for Frequency Distribution=0.0133とする。
【0057】
[カーボンナノチューブ複合材料の導電性]
本発明のカーボンナノチューブ複合材料100は10
−11S/cm以上、より好ましくは10
−10S/cm以上、さらに好ましくは10
−9S/cm以上、さらに好ましくは10
−7S/cm以上、さらに好ましくは10
−6S/cm以上、さらに好ましくは10
−5S/cm以上、さらに好ましくは10
−4S/cm以上の導電性を有する。カーボンナノチューブ複合材料の導電性の上限は特にないが、炭素の導電性である10
5S/cmを超えることは困難である。
【0058】
[カーボンナノチューブの配合量]
本発明のカーボンナノチューブ複合材料100の好ましいカーボンナノチューブの配合量は、母材(マトリックス)の物理特性を損なわない観点から、カーボンナノチューブ複合材料全体の質量を100重量%とした場合、パーコレーション閾値よりも配合量を多くするために、0.0001重量%以上であり、また、母材(マトリックス)の物理特性を損なわない観点から、5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下である。カーボンナノチューブの配合量が5%を超えると、本発明のカーボンナノチューブ複合材料のカーボンナノチューブが観測されない母材領域35が存在しなくなる。
【0059】
[カーボンナノチューブ複合材料の導電性とカーボンナノチューブの配合量]
本発明のカーボンナノチューブ複合材料100は、
図4に示すように、少ない配合量で、高い導電性を有する。一般的に、少ない配合量で、高い導電性を有する導電性複合材料を製造することは極めて困難である。
図4には、本発明の製造方法により製造されたカーボンナノチューブ複合材料100のパーコレーション閾値の配合量と、パーコレーション閾値での導電性を示す。△や、○の点は、過去の文献で報告された、単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブの他の事例である。図から明らかなように、本発明の製造方法により製造されたカーボンナノチューブ複合材料100は、他の事例に比較して非常に小さな配向量でパーコレーション閾値を示すとともに、パーコレーション閾値における導電性が他の事例と比較して極めて高いというと特長がある。
【0060】
本発明のカーボンナノチューブ複合材料100は、好ましくは配合量1重量%以下で導電性10
−7S/cm以上、より好ましくは配合量1重量%以下で導電性10
−4S/cm以上、配合量0.5重量%以下で導電性10
−7S/cm以上、より好ましくは配合量0.5重量%以下で導電性10
−4S/cm以上、さらに好ましくは配合量0.2重量%以下で導電性10
−7S/cm以上、さらに好ましくは配合量0.2重量%以下で導電性10
−4S/cm以上、さらに好ましくは配合量0.1重量%以下で導電性10
−7S/cm以上、さらに好ましくは配合量0.05重量%以下で導電性10
−7S/cm以上を有する。
【0061】
このように、少ない配合量で、高い導電性を有する導電性複合材料は本発明ではじめて得られた物である。
【0062】
[母材の物理特性の保持]
本発明のカーボンナノチューブ複合材料100は、パーコレーション閾値が低く、また簿い材料領域を有するために、導電性を有する配合量において、母材の物理特性を保持するという特長がある。
図5はCNTの配合量に対するフッ素ゴム複合材料の導電率およびヤング率の変化を示している。CNT複合材料の導電率はCNT配合量2x10
−2重量%程度から増加し始めるが、ヤング率はCNT配合量10重量%付近から増加し始める。これは2x10
-2重量%から10重量%の間では導電性を持ちながらゴム本来の柔らかいという特徴が失われていないことを意味している。
【0063】
これは、従来技術で製造された、導電性複合材料が、導電性を付与させる量のフィラーを母材に配合すると、母材が堅くなるなど、母材の物理特性が損なわれることとは大きくことなる、本発明ではじめて得られた効果である。
【0064】
[カーボンナノチューブの導電性]
本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるカーボンナノチューブの導電率は1S/cm以上、より好ましくは10S/cm以上、さらに好ましくは50S/cm以上である。このような導電率を有するカーボンナノチューブは、高導電性のカーボンナノチューブ複合材料を得るために好ましい。カーボンナノチューブの導電性の上限は特にないが、炭素の導電性である10
5S/cmを超えることは困難である。
【0065】
[カーボンナノチューブの特性]
本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるカーボンナノチューブの特性は、カーボンナノチューブ複合材料からカーボンナノチューブのみを抽出し、例えばバッキペーパーにして評価することができる。抽出は、溶媒を用いてマトリックスを溶解するなどの公知の手段を適宜用いることができる。本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるカーボンナノチューブの長さは、0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。このようなカーボンナノチューブは、アスペクト比が大きく、効率良く互いに接触するため、少ないカーボンナノチューブの添加量で連続的な導電路を形成することができる。
【0066】
本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるカーボンナノチューブの平均直径は、1nm以上30nm以下の範囲であり、好ましくは1nm以上10nm以下の範囲である。平均直径が小さすぎると、凝集性が強すぎて分散しない。逆に平均直径が大きすぎると、カーボンナノチューブ同士の接触抵抗が増加するため、高導電性を有する導電路の形成が阻害される。なお、本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるカーボンナノチューブの平均直径は、マトリックスに分散させる前のカーボンナノチューブ配向集合体の透過電子顕微鏡(以下、TEMという)画像から一本一本のカーボンナノチューブの外径、すなわち直径を計測してヒストグラムを作成し、このヒストグラムから求める。
【0067】
本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるカーボンナノチューブの蛍光X線を用いた分析による炭素純度が90重量%以上であることが好ましく、より好ましくは95重量%以上であり、更に好ましくは98重量%以上である。このような高純度のカーボンナノチューブは導電路形成に寄与が少ない不純物の量が少ないため、少ない添加量で高導電性を得るのに好適である。なお、炭素純度とは、カーボンナノチューブの重量の何パーセントが炭素で構成されているかを示し、本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるカーボンナノチューブの炭素純度は、蛍光X線による元素分析から求める。
【0068】
[共鳴ラマン散乱測定のG/D比]
本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるカーボンナノチューブは、共鳴ラマン散乱測定法の測定により得られるスペクトルで1560cm
−1以上1600cm
−1以下の範囲内での最大のピーク強度をG、1310cm
−1以上1350cm
−1以下の範囲内での最大のピーク強度をDとしたときに、G/D比が3以上あることが好ましい。
【0069】
[RBMにおけるラマンスペクトル]
波長633nmのラマン分光分析で、110±10cm
−1、190±10cm
−1、かつ200cm
−1以上の領域に少なくとも一つのピークが観測されるカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ複合材料は、本発明の効果を得るのに好適である。カーボンナノチューブの構造は、ラマン分光分析法により評価が可能である。ラマン分光分析法で使用するレーザー波長は種々あるが、ここでは532nmおよび633nmの波長を利用する。ラマンスペクトルの350cm
−1以下の領域はラジアルブリージングモード(以下、RBMという)と呼ばれ、この領域に観測されるピークは、カーボンナノチューブの直径と相関がある。
【0070】
本発明に係わるカーボンナノチューブは、波長633nmのラマン分光分析で、110±10cm
−1、190±10cm
−1、及び200cm
−1以上の領域に少なくとも一つのピークが観測されるため、大きく異なる複数の直径を有するカーボンナノチューブから構成される。そのため、カーボンナノチューブのバンドルを形成および保持する相互作用が比較的弱い。そのため、カーボンナノチューブをマトリックス中に容易に分散させることができ、少ないカーボンナノチューブの配合量で、高い導電性を有するカーボンナノチューブ複合材料を得ることができる。
【0071】
本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるカーボンナノチューブは、グラフェンシートの欠陥が少ないほど品質がよく、導電性が向上するため、好ましい。このグラフェンシートの欠陥は、ラマン分光分析法により評価が可能である。ラマン分光分析法で使用するレーザー波長は種々あるが、ここでは532nmおよび633nmの波長を利用する。ラマンスペクトルにおいて、1590cm
−1付近に見られるラマンシフトはグラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm
−1付近に見られるラマンシフトはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来するDバンドと呼ばれる。カーボンナノチューブの品質を測定するために、ラマン分光分析によるGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)が用いられる。このG/D比が高いカーボンナノチューブほど、グラファイト化度が高く、高品質である。ここでラマンG/D比を評価するときは、波長532nmを用いる。G/D比は高いほど良いが、3以上であれば導電性材料に含まれるカーボンナノチューブは十分に導電性が高く、高電気導電性のカーボンナノチューブ複合材料を得るのに好ましい。G/D比は、好ましくは4以上200以下であり、さらに好ましくは5以上150以下である。また、ラマン分光分析法は、サンプリングによってばらつくことがある。そこで少なくとも3カ所、別の場所をラマン分光分析し、その相加平均をとるものとする。
【0072】
[単層カーボンナノチューブ]
本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブが好ましい。単層カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブと比較して、密度が低いため、重量当たりのカーボンナノチューブの長さが長くなり、少ない添加量で高導電性を得るのに好ましい。
【0073】
[マトリックス]
本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるマトリックスは、エラストマーが好ましい。エラストマーは、優れた変形能を有するため好ましい。本発明のカーボンナノチューブ複合材料に適用可能なエラストマーとしては、柔軟性、導電性、耐久性の点で、例えば、エラストマーとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPR,EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,CEO)、ウレタンゴム(U)、ポリスルフィドゴム(T)などのエラストマー類、オレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系(TPEE)、ポリウレタン系(TPU)、ポリアミド系(TPEA)、スチレン系(SBS)等の熱可塑性エラストマーから選ばれる一種以上が挙げられる。また、これらの共重合体、変性体、および2種類以上の混合物などであってもよい。特に、エラストマーの混練の際にフリーラジカルを生成しやすい極性の高いエラストマー、例えば、天然ゴム(NR)、ニトリルゴム(NBR)等が好ましい、本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるエラストマーは、上記の群より選ばれる一種以上を架橋しても良い。
【0074】
また、本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるマトリックスはとしては、樹脂を用いてもよい。本発明のカーボンナノチューブ複合材料に適用可能な樹脂としては、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のどちらも使用することができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール(レゾール型)、ユリア・メラミン、ポリイミド等や、これらの共重合体、変性体、および、2種類以上ブレンドした樹脂などを使用することができる。また、更に耐衝撃性向上のために、上記熱硬化性樹脂にエラストマーもしくはゴム成分を添加した樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他や、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂であってもよい。
【0075】
本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるマトリックスはとしては、特にフッ素樹脂や、フッ素ゴムが好ましい。フッ素樹脂とCNTとの親和性が高く、CNTを良好に分散させることができるためである。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン
、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、エチレン・四フッ化エチレン共重合体、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体のいずれか、もしくはこれらの混合物、いずれも好適に用いることができる。
【0076】
架橋剤としては、上記のエラストマーの種類に応じて異なるが、例えば、イソシアネート基含有架橋剤(イソシアネート、ブロックイソシアネート等)、硫黄含有架橋剤(硫黄等)、過酸化物架橋剤(パーオキサイド等)、ヒドロシリル基含有架橋剤(ヒドロシリル硬化剤)、メラミン等の尿素樹脂、エポキシ硬化剤、ポリアミン硬化剤や、紫外線や電子線等のエネルギーによってラジカルを発生する光架橋剤等が挙げられる。これらは単独または二種以上で用いてもよい。
【0077】
なお、本発明のカーボンナノチューブ複合材料には、上述の成分以外に、例えば、イオン導電剤(界面活性剤、アンモニウム塩、無機塩)、可塑剤、オイル、架橋剤、架橋促進剤、老化防止剤、難燃剤、着色剤等を適宜用いてもよい。
【0078】
[カーボンナノチューブ複合材料の用途]
本発明のカーボンナノチューブ複合材料は高導電性を備え、マトリックスの本来もっている特性が損なわれないため、静電防止材等に用いることができる。
【0079】
[製造方法]
以下に、本発明のカーボンナノチューブ複合材料の製造方法について説明する。本発明のカーボンナノチューブ複合材料は、上述の特性を有するカーボンナノチューブをマトリックス中に分散させて得る。
[カーボンナノチューブの製造]
本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるカーボンナノチューブは、
図6に示す製造装置500を用いた、化学気相成長法により製造することができる。本製造方法においては、原料ガスを含む第1ガスと、触媒賦活物質を含む第2ガスとを別々のガス供給管から供給し、加熱領域内の別々の配管により構成されたガス流路を流すことにより、触媒層の近傍に到達する前に原料ガスと触媒賦活物質とが混合して反応することなく供給し、触媒層の近傍で第1ガスと第2ガスとを混合して反応させて触媒層に接触させることができるため、非常に高効率で、通常は10分程度で失活してしまう成長を長時間連続的に行うことができるため、非常に長尺で、高純度の単層カーボンナノチューブを合成することができ、本発明の複合材料を得るために好適である。
【0080】
まず、触媒層503(例えばアルミナ−鉄薄膜)が予め成膜した基材501(例えばシリコンウエハ)が基材ホルダ505に載置され、合成炉510内には、第1ガス供給管541から第1ガス流路545を介して供給された雰囲気ガス(例えばヘリウム)が満たされている。触媒層503表面と第1ガス流路545および第2ガス流路547とは概して垂直に交わるように基材501を配設し、原料ガスが効率良く触媒に供給されるようにする。
【0081】
次いで第1ガス供給管541から第1ガス流路545を介して合成炉510内に還元ガス(例えば水素)を供給しながら、合成炉510内を所定の温度(例えば750℃)に加熱し、その状態を所望の時間保持する。
【0082】
この還元ガスにより、触媒層503が還元され、様々なサイズを有する微粒子になり、カーボンナノチューブの触媒として好適な状態に調整される。
【0083】
次いで第1ガス流路545からの還元ガスおよび雰囲気ガスの供給を所望(反応条件)に応じて停止あるいは低減すると共に、原料ガスと触媒賦活物質の各々を、合成炉510内に配設された互いに異なる配管から触媒層503の近傍のガス混合領域580に供給する。すなわち、原料ガス(例えばエチレン)と、雰囲気ガスを含む第1ガスを、第1ガス供給管541から第1ガス流路545を介して合成炉510内に供給し、触媒賦活物質(例えば水)を含む第2ガスを第2ガス供給管543から第2ガス流路547を介して合成炉510内に供給する。第1ガス流路545および第2ガス流路547から供給されたこれらのガスは、基材
501の触媒層503表面に対して略平行方向に向いたガス流を形成した後に、触媒層503の近傍のガス混合領域580で混合し、所定量で、基材501上の触媒層503表面に供給される。
【0084】
ここで、第1ガス流路545を通過する間に第1ガスに含まれる原料ガスは分解反応が進み、カーボンナノチューブの製造に好適な状態となる。また、第2ガス流路547から供給されることで、原料ガスとは反応せずに所定量の触媒賦活物質がガス混合領域580に供給される。このように最適化された第1ガスと第2ガスとをガス混合領域580で混合して触媒層503に接触させるため、非常に高効率で、通常は10分程度で失活してしまう成長を長時間連続的に行うことができる。そのため、非常に長尺で、高純度の単層カーボンナノチューブから構成されるカーボンナノチューブ集合体を、基材501に被着した触媒層から高速にかつ高収量で効率良く製造できる。
【0085】
カーボンナノチューブの生産終了後、合成炉510内に残余する、第1ガスに含まれる原料ガス、第2ガスに含まれる触媒賦活物質、それらの分解物、または合成炉510内に存在する炭素不純物等がカーボンナノチューブ集合体へ付着することを抑制するために、第1ガス流路545から雰囲気ガスのみを流す。
【0086】
冷却ガス環境下でカーボンナノチューブ集合体、触媒、および基材501を、好ましくは400℃以下、より好ましくは200℃以下に冷却する。冷却ガスとしては、第2ガス供給管
543から供給する不活性ガスが好ましく、特に安全性、経済性、およびパージ性などの点から窒素が好ましい。このようにして、本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるカーボンナノチューブを製造することができる。
【0087】
〔基材(基板)〕
基材501(基板)とは、その表面にカーボンナノチューブを成長させる触媒を担持することのできる部材であり、最低限400℃以上の高温でも形状を維持できるものであれば適宜のものを用いることができる。
【0088】
基材501の形態としては、平板等の平面状の形態が、本発明の効果を用いて、大量のカーボンナノチューブを製造するために好ましい。
【0089】
〔触媒〕
触媒層503を形成する触媒としては、これまでのカーボンナノチューブの製造に実績のあるものであれば適宜のものを用いることができるが、具体的には、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、およびこれらの塩化物並びに合金や、これらがさらにアムミニウム、アルミナ、チタニア、窒化チタン、酸化シリコンと複合化、または重層化したものでもよい。
【0090】
触媒の存在量は、これまでのカーボンナノチューブ製造に実績のある範囲内であればよいが、例えば鉄やニッケルの金属薄膜を用いる場合、その厚さは、0.1nm以上100nm以下が好ましく、0.5nm以上5nm以下がより好ましく、0.8nm以上2nm以下が特に好ましい。
【0091】
〔還元ガス〕
還元ガスは、触媒の還元、触媒のカーボンナノチューブの成長に適合した状態の微粒子化促進、および触媒の活性向上の少なくとも一つの効果を持つガスである。還元ガスとしては、これまでのカーボンナノチューブの製造に実績のある、例えば水素、アンモニア、水、およびそれらの混合ガス等を適用することができる。
【0092】
〔不活性ガス(雰囲気ガス)〕
化学気相成長の雰囲気ガス(キャリアガス)としては、カーボンナノチューブの成長温度で不活性であり、成長するカーボンナノチューブと反応しないガスであればよく、これまでのカーボンナノチューブの製造に実績のある不活性ガスが好ましく、窒素、ヘリウム、アルゴン、水素、およびこれらの混合ガスが好適である。
【0093】
〔原料(原料ガス)〕
カーボンナノチューブの製造に用いる原料としては、これまでのカーボンナノチューブの製造に実績のあるものであれば、適宜な物質を用いることができる。原料ガスとしては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、プロピレン、エチレン、ブタジエン、ポリアセチレン、アセチレンなどの炭化水素が好適である。
【0094】
〔触媒賦活物質の添加〕
カーボンナノチューブの成長工程において、触媒賦活物質を添加する。触媒賦活物質の添加により、触媒の寿命を延長し、且つ活性を高め、結果としてカーボンナノチューブの生産効率向上や高純度化を推進することができる。触媒賦活物質としては、酸素もしくは、硫黄などの酸化力を有する物質であり、且つ成長温度でカーボンナノチューブに多大なダメージを与えない物質であればよく、水、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、エーテル類、アルコール類が好ましいが、特に、極めて容易に入手できる水が好適である。
【0095】
〔触媒賦活物質および原料の条件〕
成長工程において触媒賦活物質と原料とを用いてカーボンナノチューブを製造する際には、(1)原料は炭素を含み酸素を含まず、(2)触媒賦活物質は酸素を含むことが、カーボンナノチューブを高効率で製造するのに好ましい。上述したように、原料ガスを含む第1ガスは第1ガス流路545を介して合成炉510内に供給し、触媒賦活物質(例えば水)を含む第2ガスは第2ガス流路547を介して合成炉510内に供給する。これにより、第1ガス流路545を通過する間に原料ガスは分解反応が進み、カーボンナノチューブの製造に好適な状態となる。また、第2ガス流路547から供給されることで、原料ガスとは反応せずに所定量の触媒賦活物質がガス混合領域580に供給される。このように最適化された第1ガスおよび第2ガスがガス混合領域580で混合して触媒層503に接触させることにより、非常に高効率で、通常は10分程度で失活してしまう成長を長時間連続的に行うことができる。そのため、非常に長尺で、高純度の単層カーボンナノチューブを合成することができ、本発明の複合材料を得るために好適である。
【0096】
〔反応温度〕
カーボンナノチューブを成長させる反応温度は、好ましくは400℃以上1000℃以下とする。400℃未満では触媒賦活物質の効果が発現せず、1000℃を超えると触媒賦活物質がカーボンナノチューブと反応してしまう。
【0097】
〔カーボンナノチューブの分散〕
次に、得られたカーボンナノチューブ集合体を用いたカーボンナノチューブ複合材料の製造方法について
図7を参照して説明する。カーボンナノチューブ集合体を基材501から物理的、化学的あるいは機械的な方法を用いて剥離する(S101)。剥離方法としては、例えば電場、磁場、遠心力、および表面張力を用いて剥離する方法、基材501から機械的に直接剥ぎ取る方法、圧力や熱を用いて基板から剥離する方法などが適用可能である。また、カーボンナノチューブ集合体をカッターブレードなどの薄い刃物を使用して基材501から剥ぎ取る方法や、真空ポンプを用いてカーボンナノチューブ集合体を吸引し、基材501から剥ぎ取る方法が好ましい。
【0098】
剥離したカーボンナノチューブ集合体に乾燥工程を実施する(S101)。乾燥工程を実施することで分散性が高まり、本発明に係わるカーボンナノチューブ複合材料を製造するために好適である。本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるカーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブは大気中に保存、搬送時に、カーボンナノチューブの間に容易に大気中の水分を吸着する。このように水分が吸着した状態では、水の表面張力により、カーボンナノチューブ同士がくっついているため、カーボンナノチューブが非常にほどけにくくなり、マトリックス中での良好な分散性が得られない。そこで、分散工程の前にカーボンナノチューブの乾燥工程を実施することで、カーボンナノチューブに含まれる水分を除去し、分散媒への分散性を高めることができる。乾燥工程には、例えば、加熱乾燥や真空乾燥を用いることができ、加熱真空乾燥を好適に用いる。
【0099】
剥離したカーボンナノチューブ集合体を分級工程により分級すると好ましい(S103)。分級工程は、カーボンナノチューブ集合体の大きさを所定の範囲にすることで、均一なサイズのカーボンナノチューブ集合体を得る工程である。基材501から剥離したカーボンナノチューブ集合体は、サイズの大きな塊状の合成品も含まれる。これらのサイズの大きな塊状のカーボンナノチューブ集合体は分散性が異なるため、安定した分散液の作成を阻害する。そこで、網、フィルター、メッシュ等を通過した、大きな塊状のカーボンナノチューブ集合体を除外したカーボンナノチューブ集合体だけを以後の工程に用いると、安定したカーボンナノチューブ分散液を得る上で好適である。
【0100】
分級したカーボンナノチューブ集合体は、次の分散工程の前にプレ分散工程を実施することが好ましい(S105)。プレ分散工程とは、溶媒中にカーボンナノチューブ集合体を攪拌して分散させる工程である。本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるカーボンナノチューブは、後述するように、ジェットミルを用いた分散方法が好ましいが、プレ分散工程を実施することにより、ジェットミルにカーボンナノチューブが詰まるのを防止するとともに、カーボンナノチューブの分散性を高めることができる。プレ分散工程には、撹拌子を用いることが好ましい。
【0101】
プレ分散工程を施したカーボンナノチューブ集合体の分散液に分散工程を施す(S107)。カーボンナノチューブ集合体の分散液への分散工程には、剪断応力によりカーボンナノチューブを分散させる方法が好ましく、ジェットミルを用いるのが好ましい。特に、湿式ジェットミルを好適に用いることができる。湿式ジェットミルは、溶媒中の混合物を高速流として、耐圧容器内に密閉状態で配置されたノズルから圧送するものである。耐圧容器内で対向流同士の衝突、容器壁との衝突、高速流によって生じる乱流、剪断流などによりカーボンナノチューブを分散させる。湿式ジェットミルとして、例えば、株式会社常光のナノジェットパル(JN10、JN100、JN1000)を用いた場合、分散工程における処理圧力は、10MPa以上150MPa以下の範囲内の値が好ましい。
【0102】
このように分散させたカーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブの優れた電気的特性や熱伝導性、機械的性質を維持しつつ、分散性が高く、安定した分散液を提供することができる。
【0103】
次に、マトリックスを溶媒に溶解させたマトリックス溶液を準備し、カーボンナノチューブ分散液に添加して、十分に攪拌し、マトリックス中にカーボンナノチューブを分散させる(S109)。上述したように、本発明のカーボンナノチューブ複合材料においては、カーボンナノチューブ複合材料全体の質量を100重量%とした場合、0.0001重量%以上5重量%以下、より好ましくは、0.005重量%以上2重量%以下となるように、カーボンナノチューブ分散液とマトリックス溶液とを混合する。
【0104】
十分に混合した溶液をシャーレ等の型に流しこみ、室温で乾燥させることにより、カーボンナノチューブ複合材料を固化させる(S111)。
【0105】
固化したカーボンナノチューブ複合材料を真空乾燥炉に入れて乾燥させて、溶媒を除去する(S113)。ここで、乾燥温度は、カーボンナノチューブ複合材料から溶媒を十分に除去可能で、且つ、マトリックスが劣化しない温度とする。従って、カーボンナノチューブ複合材料に用いるマトリックスにより変更可能であるが、例えば、80℃程度であれば、溶媒を十分に除去し、且つ、マトリックスを劣化させることはない。
【0106】
[溶媒]
本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いるカーボンナノチューブの分散媒及びマトリックスの溶解に用いる溶媒としては、マトリックスを溶解可能な有機溶媒であればよく、用いるマトリックスにより適宜選択することができる。例えば、トルエン、キシレン、アセトン、四塩化炭素等を用いることができる。特に、本発明のカーボンナノチューブ複合材料に用いる溶媒として、フッ素ゴム及びシリコーンゴムを含む多くのゴムが可溶であり、カーボンナノチューブの良溶媒であるメチルイソブチルケトン(以下、MIBKという)が好ましい。
【0107】
分散剤をカーボンナノチューブ分散液に添加してもよい。分散剤は、カーボンナノチューブの分散能や分散安定化能等を向上させるのに役立つ。
【0108】
このようにして、低添加量のカーボンナノチューブで高導電性を発揮できる本発明のカーボンナノチューブ複合材料を製造することができる。
【実施例】
【0109】
(実施例1)
[カーボンナノチューブ集合体の製造]
上述した
図6の製造装置500を用いてカーボンナノチューブ集合体を製造した。本実施例において、縦型合成炉510としては、円筒等の石英管を用いた。中心部の水平位置から20mm下流に石英からなる基材ホルダ505を設けた。合成炉510を外囲して設けられた抵抗発熱コイルからなる加熱手段530と加熱温度調整手段を設け、所定温度に加熱された合成炉510内の加熱領域
531を規定した。
【0110】
直径78mmの円筒状で扁平な中空構造をなす耐熱合金インコネル600からなるガス流形成手段521を、第1ガス供給管541の合成炉510内の端部に連通して接続するように設けた。第1ガス供給管541はガス流形成手段521の中心に連通して接続した。ガス流形成手段521は基材501の触媒層の表面に対して、略平行な同一面内に配設し、基材501の中心が、ガス流形成手段521の中心と一致するように配設された。本実施例においては、ガス流形成手段521は中空構造を有する円柱状の形状で、寸法は、一例としては、上端直径22mm×下端直径78mmの円筒形であり、径:32mmの4本の配管
555を接続した。また、第1ガス供給管541の中心と一致するように配設された第2ガス供給管543は、ガス流形成手段521およびの中心と一致するように延伸し、の中心と一致して、径:13mmの出口が配設された。
【0111】
ガス流形成手段521の配管555および配管557の接続部と対向する触媒層の表面との距離は150mmとした。
【0112】
ここで、意図的にガス流形成手段521と触媒表面の間に150mmの距離を設け、第1ガス流路545および第2ガス流路547の加熱体積を増加させ、その加熱体積を設けた。第1ガス流路545は、ガス流形成手段521と接続され、
乱流防止手段を備える。第1ガス流路545は、耐熱合金インコネル600からなるハニカム構造のように配設されたφ32mmの4本の配管555を備え、第2ガス流路547は、4本の配管555の中心と一致するように配設されたφ13mmの配管557を備える。
【0113】
第1炭素重量フラックス調整手段571はカーボンナノチューブの原料となる炭素化合物となる原料ガスボンベ561、原料ガスや触媒賦活物質のキャリアガスである雰囲気ガスボンベ563、ならびに触媒を還元するための還元ガスボンベ565をそれぞれガスフロー装置に接続して構成し、それぞれ供給量を独立に制御しながら、第1ガス供給管541に供給することで、原料ガスの供給量を制御した。また、第2炭素重量フラックス調整手段573は、触媒賦活物質ボンベ567をガスフロー装置に接続して構成し、第2ガス供給管543に供給することで、触媒賦活物質の供給量を制御した。
【0114】
基材
501としては、触媒であるAl
2O
3を30nm、Feを1.8nmスパッタリングした厚さ500nmの熱酸化膜付きSi基材(縦40mm×横40mm)を用いた。
【0115】
基材501を合成炉502の加熱領域531の中心の水平位置から20mm下流に設置された基板ホルダ508上に搬入した。基板は水平方向になるように設置した。これにより、基板上の触媒と混合ガスの流路が概して垂直に交わり、原料ガスが効率良く触媒に供給される。
【0116】
次いで、還元ガスとしてHe:200sccm、H
2:1800sccmの混合ガス(全流量:2000sccm)を第1ガス流路545から供給しながら、炉内圧力を1.02×10
5Paとした合成炉510内を、加熱手段530を用いて合成炉510内の温度を室温から15分かけて830℃まで上昇させた。さらに触媒賦活物質として水:80sccmを第2ガス供給管543から供給しながら、830℃に保持した状態で3分間触媒付き基材を熱した。これにより、鉄触媒層は還元されて単層カーボンナノチューブの成長に適合した状態の微粒子化が促進され、サイズの異なるナノメートルサイズの触媒微粒子がアルミナ層上に多数形成された。
【0117】
次いで、炉内圧力を1.02×10
5Pa(大気圧)とした合成炉510の温度を830℃とし、第1ガス流路545から雰囲気ガスHe:総流量比89%(1850sccm)、原料ガスであるC
2H
4:総流量比7%(150sccm)を、第2ガス供給管543から触媒賦活物質としてH
2O含有He(相対湿度23%):総流量比4%(80sccm)を10分間供給した。
【0118】
これにより、単層カーボンナノチューブが各触媒微粒子から成長し、配向した単層カーボンナノチューブの集合体が得られた。このようにして、触媒賦活物質含有環境下で、カーボンナノチューブを基材
501上より成長させた。
【0119】
成長工程の後、3分間、雰囲気ガス(総流量4000sccm)のみを第1ガス流路545から供給し、残余の原料ガス、発生した炭素不純物、触媒賦活剤を排除した。
【0120】
その後、基板を400℃以下に冷却した後、合成炉510内から基板を取り出すことにより、一連の単層カーボンナノチューブ集合体の製造工程を完了させた。
【0121】
〔実施例1で製造されるカーボンナノチューブの特性〕
カーボンナノチューブ集合体の特性は、製造条件の詳細に依存するが、実施例1の製造条件では、典型値として、長さが100μm、平均直径が3.0nmである。
【0122】
〔カーボンナノチューブ集合体のラマンスペクトル評価〕
実施例1により得られたカーボンナノチューブ集合体のラマンスペクトルを計測した。鋭いGバンドピークが1590cm
−1近傍で観察され、これより本発明のカーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブにグラファイト結晶構造が存在することが分かる。
【0123】
また欠陥構造などに由来するDバンドピークが1340cm
−1近傍で観察されているため、カーボンナノチューブに有意な欠陥が含まれていることを示している。複数の単層カーボンナノチューブに起因するRBMモードが低波長側(100〜300cm
−1)に観察されたことから、このグラファイト層が単層カーボンナノチューブであることが分かる。G/D比は8.6であった。
【0124】
〔カーボンナノチューブ集合体の純度〕
カーボンナノチューブ集合体の炭素純度は、蛍光X線を用いた元素分析結果より求めた。基板から剥離したカーボンナノチューブ集合体を蛍光X線によって元素分析したところ、炭素の重量パーセントは99.98%、鉄の重量パーセントは0.013%であり、その他の元素は計測されなかった。この結果から、炭素純度は99.98%と計測された。
【0125】
[カーボンナノチューブの分散]
得られたカーボンナノチューブ集合体は、真空ポンプを用いて配向したカーボンナノチューブ集合体を吸引し基材501から剥離して、フィルターに付着したカーボンナノチューブ集合体を回収した。その際、配向したカーボンナノチューブ集合体は分散して、塊状のカーボンナノチューブ集合体を得た。
【0126】
次に、目開き0.8mmの網の一方にカーボンナノチューブ集合体を置き、網を介して掃除機で吸引し、通過したものを回収して、カーボンナノチューブ集合体から、サイズの大きな塊状のカーボンナノチューブ集合体を取り除き、分級を行った(分級工程)。
【0127】
カーボンナノチューブ集合体はカール・フィッシャー反応法(三菱化学アナリテック製電量滴定方式微量水分測定装置CA−200型)で測定した。カーボンナノチューブ集合体を所定の条件(真空下、200℃に1時間保持)で乾燥後、乾燥窒素ガス気流中のグローブボックス内で、真空を解除してカーボンナノチューブ集合体を約30mg取り出し、水分計のガラスボートに移した。ガラスボートは、気化装置に移動し、そこで150℃×2分間加熱され、その間に気化した水分は窒素ガスで運ばれて隣のカール・フィッシャー反応によりヨウ素と反応させた。その時消費されたヨウ素と等しい量のヨウ素を発生させるために要した電気量により、水分量を検知した。この方法により、乾燥前のカーボンナノチューブ集合体は、0.8重量%の水分を含有していた。乾燥後のカーボンナノチューブ集合体は、0.3重量%の水分に減少した。
【0128】
分級したカーボンナノチューブ集合体を100mg正確に計量し、100mlフラスコ(3つ口:真空用、温度調節用)に投入して、真空下で200℃に達してから24時間保持し、乾燥させた。乾燥が終了後、加熱・真空処理状態のまま、分散媒MIBK(メチルイソブチルケトン)(シグマアルドリッチジャパン社製)を20ml注入しカーボンナノチューブ集合体が大気に触れることを防いだ(乾燥工程)。
【0129】
さらに、MIBK(シグマアルドリッチジャパン社製)を追加して300mlとした。そのビーカーに撹拌子を入れて、ビーカーをアルミ箔で封印し、MIBKが揮発しないようにして、600RPMで、24時間スターラーで常温撹拌した。
【0130】
分散工程には、湿式ジェットミル(常光社製ナノジェットパル(登録商標)JN10)を用い、200μmの流路を60MPaの圧力で通過させてカーボンナノチューブ集合体をMIBKに分散させ、重量濃度0.033重量%のカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0131】
その分散液を更に常温で24時間、スターラーで撹拌した。この時、溶液を70℃まで昇温し、MIBKを揮発させ150ml程度とした。この時のカーボンナノチューブの重量濃度は、0.075重量%程度となった(分散工程)。このようにして、本発明に係わるカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0132】
本実施例においては、マトリックスとしてフッ素ゴム(ダイキン工業社製、Daiel-G912)を用いた。カーボンナノチューブ複合材料全体の質量を100重量%とした場合、カーボンナノチューブ含量が1%となるように、カーボンナノチューブ分散液150mlをフッ素ゴム溶液50mlに添加し、スターラーを用い、約300rpm条件下で、室温で16時間攪拌し全量が50ml程度になるまで濃縮した。
【0133】
十分に混合した溶液をシャーレ等の型に流しこみ、室温で12時間乾燥させることにより、カーボンナノチューブ複合材料を固化させた。
【0134】
固化したカーボンナノチューブ複合材料を80℃の真空乾燥炉に入れて、24時間で乾燥させ溶媒を除去した。このようにして、実施例1のカーボンナノチューブ複合材料200を得た(試料の形状は直径77mm、厚さ約300μmの円形のシート状である。)
【0135】
(実施例2)
実施例2として、実施例1と同様の製造方法を用いて、カーボンナノチューブ含量が0.25%となるように調製したカーボンナノチューブ複合材料210を得た。
【0136】
(実施例3)
実施例3として、実施例1と同様の製造方法を用いて、カーボンナノチューブ含量が0.01重量%となるように調製したカーボンナノチューブ複合材料220を得た。
【0137】
(実施例4)
実施例4として、実施例1と同様の製造方法を用いて、カーボンナノチューブ含量が0.048重量%となるように調製したカーボンナノチューブ複合材料230を得た。このときのカーボンナノチューブ含量0.048重量%は、パーコレーション閾値に相当しており、この時のカーボンナノチューブ複合材料の体積導電率は0.12S/cmである。
【0138】
(実施例5)
実施例1と同様の製造方法によるカーボンナノチューブ集合体を50mg正確に計量し、100mlフラスコ(3つ口:真空用、温度調節用)に投入して、真空下で200℃に達してから24時間保持し、乾燥させた。乾燥が終了した後、加熱・真空処理状態のまま、純水を100ml、デオキシコール酸ナトリウム10mgを注入し、カーボンナノチューブ集合体が大気に触れることを防いだ。分散工程には、湿式ジェットミル(常光社製ナノジェットパル(登録商標)JN10)を用い、200μmの流路を60MPaの圧力で通過させてカーボンナノチューブ集合体を純水に分散させ、重量濃度0.033重量%のカーボンナノチューブ分散液を得た。その分散液を更に常温で24時間、スターラーで撹拌した。この時、溶液を70℃まで昇温し、水を揮発させ150ml程度とした。この時のカーボンナノチューブの重量濃度は、0.075重量%程度となった(分散工程)。このようにして、カーボンナノチューブ分散液を得た。本実施例においては、マトリックスとしてフッ素ゴムラテックス(ダイキン工業社製)を用いた。カーボンナノチューブ複合材料全体の質量を100重量%とした場合、カーボンナノチューブ含量が0.013重量%となるように、カーボンナノチューブ分散液150mlをフッ素ゴム溶液50mlに添加し、スターラーを用い、約300rpm条件下で、室温で16時間攪拌し全量が50ml程度になるまで濃縮した。
【0139】
十分に混合した溶液をシャーレ等の型に流しこみ、室温で12時間乾燥させることにより、カーボンナノチューブ複合材料を固化させた。固化したカーボンナノチューブ複合材料を80℃の真空乾燥炉に入れて、24時間で乾燥させ溶媒を除去した。このようにして、実施例5のカーボンナノチューブ複合材料240を得た(試料の形状は直径77mm、厚さ約300μmの円形のシート状である。)
【0140】
(実施例6)
実施例6として、マトリックスとしてPolystyrene(SPJ,PSジャパン製)を用い、実施例1の方法と同様に、カーボンナノチューブ含量が0.1重量%となるように調製したカーボンナノチューブ複合材料250を得た。
【0141】
(実施例7)
実施例7として、マトリックスとしてPMMA(スミペックス,住友化学製)を用い、実施例1の方法と同様に、カーボンナノチューブ含量が0.1重量%となるように調製したカーボンナノチューブ複合材料260を得た。
【0142】
(実施例8)
実施例8として、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)(東レ社製)を用い、実施例1の製造方法と同様に、カーボンナノチューブ含量が0.1重量%となるように調製したカーボンナノチューブ複合材料270を得た。
【0143】
(実施例9)
実施例9として、マトリックスとしてアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)(東レ社製)を用い、実施例1の方法と同様に、カーボンナノチューブ含量が1%となるように調製したカーボンナノチューブ複合材料280を得た。
【0144】
(実施例10)
実施例10として、ポリカーボネート(PC)(帝人化成社製)を用い、実施例1の方法と同様に、カーボンナノチューブ含量が1重量%となるように調製したカーボンナノチューブ複合材料290を得た。
【0145】
(実施例11)
実施例11として、マトリックスとしてエポキシ樹脂であるアデレンカEP-4500およびアデカハードナーEH(ADEKA社製)を用い、実施例1の方法と同様に、カーボンナノチューブ含量が1重量%となるように調製したカーボンナノチューブ複合材料300を得た。
【0146】
(比較例1)
本製造法によるカーボンナノチューブ集合体を50mg正確に計量し、100mlフラスコ(3つ口:真空用、温度調節用)に投入して、真空下で200℃に達してから24時間保持し、乾燥させた。乾燥が終了後、加熱・真空処理状態のまま、分散媒MIBK(メチルイソブチルケトン)(シグマアルドリッチジャパン社製)を100ml注入しカーボンナノチューブ集合体が大気に触れることを防いだ。これにフッ素ゴム(ダイキン工業社製、Daiel-G912)950mgを追加して300mlとした。そのビーカーに撹拌子を入れて、ビーカーをアルミ箔で封印し、MIBKが揮発しないようにして、600RPMで、24時間スターラーで常温撹拌した。その後、80℃で保持し溶媒を完全に揮発させた。これらを80℃で12時間予備乾燥した。次に成形物のカーボンナノチューブ含量が1%となるように、この予備乾燥試料1000mgとフッ素ゴム4000mgを微量型高せん断成形加工機に投入し、ギャップならびに内部帰還型スクリュー内径をそれぞれ1〜2mm、2.5φに設定し、180℃に加熱溶融して混練(スクリュー回転数:100rpm、混練時間10分)した後、T−ダイから押出した。続いて熱プレスにより均一なフィルム(厚さ200
μm)とし、これを比較例1のカーボンナノチューブ複合材料900を得た。
【0147】
(比較例2)
比較例2として、比較例1と同様の製造方法を用いて、カーボンナノチューブ含量が0.025%となるように調製したカーボンナノチューブ複合材料910を得た。
【0148】
(比較例3)
比較例3として、HiPco(High-pressure carbon monoxide process)法により合成した単層カーボンナノチューブ(Unidym社製)を用い、実施例1の方法と同様に、カーボンナノチューブ含量が1%となるように調製したカーボンナノチューブ複合材料930を得た。
【0149】
〔HiPco法によるカーボンナノチューブの特性〕
HiPco法により合成したカーボンナノチューブ集合体(以下、HiPcoという)の特性は、典型値として、長さが1μm以下、平均直径が0.8〜1.2nmである。
【0150】
〔HiPcoのラマンスペクトル評価〕
HiPcoのラマンスペクトルは、鋭いGバンドピークが1590cm
−1近傍で観察され、カーボンナノチューブにグラファイト結晶構造が存在することが分かる。また欠陥構造などに由来するDバンドピークが1340cm
−1近傍で観察されているため、カーボンナノチューブに有意な欠陥が含まれていることを示している。複数の単層カーボンナノチューブに起因するRBMモードが低波長側(100〜300cm
−1)に観察されたことから、このグラファイト層が単層カーボンナノチューブであることが分かる。G/D比は12.1であった。
【0151】
〔カーボンナノチューブ集合体の純度〕
蛍光X線を用いた元素分析結果より求めたHiPcoの炭素純度は、炭素の重量パーセントは70%と実施例に用いたカーボンナノチューブに比して低いものであった。
【0152】
[顕微鏡像]
図8は実施例1のカーボンナノチューブ複合材料200の断面の走査型電子顕微鏡像(以下、SEM像という)である。
【0153】
図9(a)は実施例1のカーボンナノチューブ複合材料200の断面の光学顕微鏡像であり、
図9(b)はレーザー顕微鏡像である。
図10および
図11は実施例2のカーボンナノチューブ複合材料210の断面の光学顕微鏡像を示し、
図10は倍率500倍
、倍率1000倍、
図11は倍率2000倍
、倍率3000倍をそれぞれ示す。また、図
12および
図13は実施例3のカーボンナノチューブ複合材料220の断面の光学顕微鏡像を示し、
図12は倍率1000倍
、倍率2000倍、
図13は倍率5000倍をそれぞれ示す。なお、
図12および
図13において観察される黒色の粒状の物質は、実施例3のカーボンナノチューブ複合材料220を黒色に着色した際の黒色色素である。
図14(a)は実施例4のカーボンナノチューブ複合材料230の断面の光学顕微鏡像であり、
図14(b)は実施例5のカーボンナノチューブ複合材料240の断面の光学顕微鏡像である。また、
図15は実施例4のカーボンナノチューブ複合材料230の断面の光学顕微鏡像を示し、
図15(a)は倍率3000倍、
図15(b)は倍率2000倍、
図15(c)は倍率1000倍、
図15(d)は倍率2000倍をそれぞれ示す。
図16は実施例5のカーボンナノチューブ複合材料240の断面の光学顕微鏡像を示し、
図16(a)は倍率2000倍、
図16(b)は倍率1000倍、
図16(c)は倍率3000倍、
図16(d)は倍率1000倍をそれぞれ示す。図は示さないが、実施例6〜11においても同様の結果が観察された。
【0154】
図17は比較例1のカーボンナノチューブ複合材料900の光学顕微鏡像を示す。
図18は比較例2のカーボンナノチューブ複合材料910の光学顕微鏡像を示す。また、
図19は比較例3のカーボンナノチューブ複合材料930のSEM像を示す。
【0155】
それぞれ黒く見える部分は、複数のカーボンナノチューブから構成されるCNT群15を示し、白く見える部分は母材領域35を示す。図から明らかなように、実施例1〜5(実施例6〜11も同様)のカーボンナノチューブ複合材料においては、カーボンナノチューブ10がマトリックス30に不均一に分散し、複数のCNT10からなるCNT群15と、カーボンナノチューブ10が少なくとも顕微鏡で観察されない母材領域35がそれぞれ複数存在し、母材領域35とCNT群15とによって形成される海島構造を備えることが分かる。本実施例1〜11においては、
図2に示したように、複数のCNT10が集合したCNT群15において、集合部11と、離散部13とを有し、集合部11aと集合部11bとは、互いに離散した構造を有する。また、それぞれの実施例1〜11において、母材領域35を囲い込むCNT群15が存在し、CNT群15が母材領域35の周縁に配設されている。また、カーボンナノチューブ複合材料は20μmのサイズの母材領域35とCNT群15を備える。CNT群15が連続的な導電路が形成するため、優れた導電性が付与される。
【0156】
本実施例1〜11に係るカーボンナノチューブ複合材料においては、1000倍の光学顕微鏡画像の300μm角の領域において、画像の上端と下端、および/または、左端と右端を、連続的に結ぶCNT群15を有する。また、本実施例1〜11に係るカーボンナノチューブ複合材料は、配合量1.0重量%以下で、CNT群15によって囲まれた母材領域35を有し、CNT群15によって囲まれた母材領域35の領域サイズが10μm以上である。
【0157】
一方、
図17および
図18を参照すると、比較例1及び比較例2のカーボンナノチューブ複合材料においては、実施例のカーボンナノチューブ複合材料に比してカーボンナノチューブが均一に分散し、明確なCNT群15と、母材領域35は観察されない。また、
図19に示した比較例3のカーボンナノチューブ複合材料930においても、実施例のカーボンナノチューブ複合材料に比してカーボンナノチューブが均一に分散し、明確なCNT群15と、母材領域35は観察されない。
【0158】
[ラマンマッピング]
図20は、本実施1のカーボンナノチューブ複合材料200のラマンマッピングを示す図である。(顕微ラマンAlmega XR,スポット径=数マイクロメートル)波長633nmで測定したラマンスペクトルは、RBM及びG/D比について、カーボンナノチューブ複合材料中のマトリックスに依存せずに、カーボンナノチューブ複合材料中のカーボンナノチューブを評価することが可能な優れた指標となることが示された。波長532nmでの測定では、ラマンスペクトルはカーボンナノチューブ複合材料に用いるマトリックスの種類に依存した。
図20(a)はラマンマッピングを行った領域を示す光学顕微鏡像である。
図20(a)に付した番号1、5〜8はCNT群15を示し、番号2〜4は母材領域35を示す。
図20(b)は
図20(a)の番号1、5〜8の部位のラマンスペクトルを示し、
図20(c)は
図20(a)の番号2〜4の部位のラマンスペクトルを示す。図から明らかなように、光学顕微鏡像でCNT群15として認識される部位は、ラマンスペクトルにおいて波長633nmのラマン分光分析で1560cm
−1以上1600cm
−1以下の範囲内でピーク(目視においてグラフ上に顕著な変曲点、および/または、ベースライン強度に対して500%以上の突出部)を示した。一方、光学顕微鏡像で母材領域35として認識される部位は、波長633nmのラマン分光分析で1560cm
−1以上1600cm
−1以下の範囲内で有意なピークは検出されなかった。ここで、本発明に係るカーボンナノチューブ複合材料において、波長633nmのラマン分光分析で1560cm
−1以上1600cm
−1以下の範囲内でピークを有さない(検出されない)とは、
図20(c)に示すように、目視においてグラフ上に顕著な変曲点、および/または、ベースライン強度に対して500%以上の突出部が確認されないことを言う。
【0159】
すなわち、CNT群15の波長633nmのラマン分光分析で1560cm
−1以上1600cm
−1以下の範囲内での最大ピーク強度と、母材領域35の波長633nmのラマン分光分析で1560cm
−1以上1600cm
−1以下の範囲内での最大ピーク強度との比は測定限界を凌駕する。測定限界は、ラマンスペクトルのノイズレベル、及びバックグランドにより異なるが、本測定では1000程度と推察される。図示しないが、実施例2〜11においても同様の結果が得られた。この結果から、実施例のカーボンナノチューブ複合材料では、カーボンナノチューブ10がマトリックス30に不均一に分散していることが分かった。
【0160】
比較例1のカーボンナノチューブ複合材料900は、
図21に示すように、測定した10点すべてにおいて、波長633nmのラマン分光分析で1560cm
−1以上1600cm
−1以下の範囲内で同様なピークが観測され、カーボンナノチューブがマトリックスに均一に分散していることを示している。
【0161】
ここで、実施例1〜11、及び、比較例1〜3のカーボンナノチューブ複合材料の体積導電率を四端子法で測定した結果を
図22に示す。同じマトリックス、カーボンナノチューブとカーボンナノチューブ添加量で得た実施例1及び実施例2と比較例1および2のカーボンナノチューブ複合材料の体積導電率を比較すると、10
12乗の違いがある。
【0162】
実施例3、4、5、6、7、8においては、配合量は0.1重量%以下であり、10μm以上の領域サイズを有する。また、実施例3、4、5、6、7、8においては、カーボンナノチューブ複合材料100の1000倍の光学顕微鏡画像の300μm角の領域において、画像の上端と下端、および/または、左端と右端を、連続的に結ぶCNT群15を有する。
【0163】
[フラクタル次元解析]
図23はカーボンナノチューブ複合材料のフラクタル次元の解析結果を示す図である。フラクタル次元解析には、オープンソースの画像処理ソフトウェアであるImageJと、そのフラクタル次元解析用プラグインであるFracLac Ver. 2.5を用いた。この結果から、実施例1のカーボンナノチューブ複合材料200においては、CNT群15が平均で1.831以上のフラクタル次元を備えていることが示された。したがって、このようなフラクタル次元を備えるカーボンナノチューブ複合材料200は、カーボンナノチューブ群が効率良く互いに接触して、連続的な導電路が形成して、優れた導電性を付与することができる。同様に測定した、実施例2から11、及び比較例1から3のフラクタル次元を
図22に示す。実施例のフラクタル次元が、1.7以上であるのに対して、比較例のフラクタル次元は、1.6台であり、連続的な導電路の形成率が低いことが推察される。
【0164】
[ラマンスペクトル]
上述した実施例及び比較例のカーボンナノチューブ複合材料の波長633nmでのラマン分光分析を行った。実施例1から11のカーボンナノチューブ複合材料は、波長633nmのラマン分光分析で、110±10cm
−1、190±10cm
−1、及び135±10cm
−1、250±10cm
−1、280±10cm
−1にピークを有していて、広い波長範囲に渡ってピークを有する。しかしながら、比較例3のカーボンナノチューブ複合材料は、110±10cm
−1、190±10cm
−1、及び200cm
−1以上の領域に少なくとも一つのピークを有していない。同一の添加量、製造方法である、実施例1と、比較例3の体積導電率を比較すると、実施例1のカーボンナノチューブ複合材料は比較例3のカーボンナノチューブ複合材料より4桁高い導電率を示す。このことより、波長633nmのラマン分光分析で、110±10cm
−1、190±10cm
−1、及び200cm
−1以上の領域に少なくとも一つのピークが観測されるカーボンナノチューブ複合材料が高い導電性を有することが分かる。
【0165】
[G/D比]
実施例1から11、比較例1から3について、G/D比を
図22にまとめた。実施例のカーボンナノチューブ複合材料は、G/D比が3以上である。
【0166】
[カーボンナノチューブの導電性]
実施例1から6のカーボンナノチューブ複合材料を溶媒に晒してマトリックスを取り除いて、カーボンナノチューブのみを抽出し、厚さ100μmのバッキペーパーにして四端子法により導電性を評価した。導電性は、実施例1が60S/cm、実施例2が58S/cm、実施例3が62S/cm、実施例4が58S/cm、実施例5が52S/cm、実施例6が57S/cmとなった。