特許第5900965号(P5900965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900965
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】内視鏡用カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20160324BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   A61B17/00 320
   A61M25/00 534
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-505609(P2012-505609)
(86)(22)【出願日】2011年3月3日
(86)【国際出願番号】JP2011054971
(87)【国際公開番号】WO2011114902
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2012年8月23日
(31)【優先権主張番号】特願2010-199913(P2010-199913)
(32)【優先日】2010年9月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-64882(P2010-64882)
(32)【優先日】2010年3月19日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、近畿経済産業局、「平成21年度戦略的基盤技術高度化支援事業」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592085964
【氏名又は名称】山科精器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 清一
(72)【発明者】
【氏名】保坂 誠
(72)【発明者】
【氏名】出田 智也
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−318908(JP,A)
【文献】 特開平5−212046(JP,A)
【文献】 米国特許第5830214(US,A)
【文献】 特開2002−301088(JP,A)
【文献】 特開2006−341066(JP,A)
【文献】 特開2010−22825(JP,A)
【文献】 特表平9−506808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端の先端近傍に孔を備え、該遠位端を、処置具チャンネルを介して内視鏡の先端に送達し突出または露出させることが可能な内視鏡用カテーテルであって、該孔が、洗浄液を吐出しかつ排液を吸引し、そして該カテーテルの内径よりも小さい直径を有し、複数存在し、
前記孔が、前記内視鏡のカメラの視線方向に対して直角の方向に洗浄液を吐出するように構成されており、
前記先端近傍が円柱形状を有し、前記孔は前記円柱形状の外周に沿って1周あたり3〜12個、2〜4周にわたって設けられており、
1周同数の孔が隣り合う1周同数の孔と1周毎に外周に沿って所定の角度ずれるように配置されている、カテーテル。
【請求項2】
前記内視鏡が軟性内視鏡である、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記カテーテルの遠位端の先端近傍にエネルギー素子をさらに備える、請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記エネルギー素子が、高周波、ラジオ波、マイクロ波、超音波およびレーザー光からなる群より選択される少なくとも1つを発する、請求項3に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄、吸引、切開、焼灼、凝固止血、排煙などの多機能を発揮する内視鏡用カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床各科においては、様々な病態に対して、診断、治療効果の判定、治療方針の決定などを目的とする体腔内の直接観察、および処置が行われる。従来、これらは開腹あるいは開胸という侵襲の大きなアプローチで行われていた。しかし、近年の内視鏡下手術器具の普及に伴い、より切開創の小さな腹腔鏡や胸腔鏡などの内視鏡下で行われるようになってきた。
【0003】
例えば、内視鏡下手術において切開や焼灼を行う場合、通常電極鉗子を用いる。この場合、処置対象となる粘膜表面を切開または焼灼する前に洗浄し、切開中または焼灼中に電極鉗子や周辺組織に付着した焼灼片を洗浄・除去することが望まれる。しかし、現在の内視鏡の処置具チャンネルを介して用いられるデバイスは、切開や焼灼時の想定外の出血または発煙に対して、処置性が低い。例えば、想定外の出血に対しては、内視鏡レンズ面を血液に漬け、鉗子口から血液を吸引する。この方法では、内視鏡レンズを血液に漬けるため、吸引の間、内視鏡の視野が失われ、その結果、迅速な止血操作が困難になるという問題がある。切開や焼灼に伴う発煙も、内視鏡の視野を妨げるが、現在のデバイスでは効率よく排煙できない。
【0004】
現在使用されている内視鏡用カテーテルは、単にチューブを切断したものにすぎず、そのまま使用すると、吸引すべきでない粘膜や組織、臓器なども一緒に吸引してしまう。また、このようなデバイスは吸引孔が1つしかないため、同孔が何らかの組織の誤吸引によって閉塞すると、以後の吸引操作が不可能となってしまう。さらに、このようなデバイスはほとんどの場合、単機能である。したがって、洗浄、吸引などの処置・操作に必要な器具は、その都度、処置具チャンネルを介して交換しなければならないため操作が煩雑となり、術者への負担が大きく、器具のコストも高くなり、処置・操作時間も長くなるという問題がある。
【0005】
内視鏡用デバイスに種々の機能を付与することが検討されている。例えば、特許文献1には、内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱される電気絶縁性のシース内に、シースの手元側からの操作によってシース先端から前方に突没する高周波電極を設け、高周波電極を囲む空間を送水路として用い、シース先端から水を噴出する装置が開示されている。特許文献2には、特許文献1のシース先端から水を噴出する装置の改良型が開示されている。特許文献3には、洗浄用の注水機構を設けた高周波電極からなる止血具が開示されている。しかし、これらの装置は、吸引のために他のデバイスを使用する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−292685号公報
【特許文献2】特開2006−187474号公報
【特許文献3】特開2002−125981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、洗浄、吸引、切開、焼灼、凝固止血、排煙などの多機能を発揮し得る内視鏡用デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、遠位端の先端近傍に孔を備える内視鏡用カテーテルを提供し、該孔は、該カテーテルの内径よりも小さい直径を有し、複数存在する。
【0009】
1つの実施態様では、上記内視鏡は、軟性内視鏡である。
【0010】
1つの実施態様では、上記先端近傍は円柱形状を有し、上記孔の数は該円柱形状の外周に沿って1周あたり3〜12個である。
【0011】
1つの実施態様では、上記カテーテルは、上記先端近傍にエネルギー素子をさらに備える。
【0012】
1つの実施態様では、上記エネルギー素子は、高周波、ラジオ波、マイクロ波、超音波およびレーザー光からなる群より選択される少なくとも1つを発する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の内視鏡用カテーテルは、遠位端の先端近傍に備えられた、カテーテルの内径よりも小さい直径を有する複数の孔を通して、処置対象となる管腔表面を洗浄し、血液を吸引し、切開中または焼灼中に電極鉗子や周辺組織に付着した焼灼片を洗浄または除去することが可能となる。本発明の内視鏡用カテーテルはまた、上記機能に加えて、切開、焼灼、凝固止血、排煙などの機能を発揮することができる。このように、本発明の内視鏡用カテーテルは、洗浄、吸引、切開、焼灼、凝固止血、排煙などの多機能を発揮し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の内視鏡用カテーテルの第1実施態様の部分斜視図を示す模式図である。
図2】本発明の内視鏡用カテーテルの第2実施態様の部分斜視図を示す模式図である。
図3】本発明の内視鏡用カテーテルと従来の内視鏡との間で流量性能を比較した結果を示すグラフである。
図4】本発明の内視鏡用カテーテルの圧力と流量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す本発明の第1実施態様のカテーテル1は、遠位端の先端近傍に孔2を備え、該孔は、該カテーテルの内径よりも小さい直径を有し、複数存在する。
【0016】
本明細書において、カテーテルとは、医療分野において用いられる中空の柔らかい管であって、消化管や尿管などの管腔、腹腔内などに挿入し、洗浄液や体液の吸引、薬液や造影剤などの注入に用いられる医療器具をいう。
【0017】
対象となる管腔臓器としては、特に限定されないが、気管支、食道、胃、小腸、大腸、膣、膀胱、胸腔、腹腔などが挙げられる。
【0018】
本発明のカテーテルは、遠位端を有する遠位端部、近位端を有する近位端部、および該遠位端部と該近位端部との間に介在する導管部からなる。各部は、一体成形されていてもよく、適宜継手で接続されていてもよい。
【0019】
本明細書において、内視鏡とは、医療用の内視鏡をいう。内視鏡には、体内へ挿入する部分が曲がる軟性内視鏡と、曲がらない硬性内視鏡とがある。硬性内視鏡は、筒の両端にレンズがついたシンプルな構造を有する。硬性内視鏡としては、例えば、膀胱鏡、胸腔鏡、腹腔鏡が挙げられる。軟性内視鏡は、柔軟であり、内蔵する観察光学系として、グラスファイバーを用いたものと、CCDを用いたものとがある。また、照明光学系として、体外の近位端側に光源を備え、導管部内を光ファイバーで光を導いて遠位端側から照射するものが一般的である。また、LEDを内視鏡遠位端に内蔵したタイプもある。軟性内視鏡としては、例えば、気管支鏡、上部消化管(胃など)内視鏡、小腸内視鏡、大腸内視鏡が挙げられる。内視鏡は、一般的に、これらの光学系とは別に処置具チャンネル(サブルーメン)を有する。このチャンネルを介し、気体や液体の注入や吸引、専用デバイスによる処置(把持、切断・穿刺など)などが可能である。また、近位端側の操作で内視鏡の遠位端の向きを自在に変更可能である。目的の管腔に応じて適切なサイズの内視鏡が選択される。
【0020】
本発明のカテーテルは、このような内視鏡の処置具チャンネルに挿入可能な外径を有している。処置具チャンネルの内径は、通常約1〜4mmである。したがって、本発明のカテーテルの外径は、1〜4mm未満であり得る。
【0021】
本発明のカテーテルの長さは、内視鏡の処置具チャンネルに挿入して用いる場合に、カテーテル遠位端を処置具チャンネルから管腔内に突出(または露出)させて、処置・操作を行うために十分な長さであればよく、通常、内視鏡用の処置具に延設されているワイヤー類と同等であり得る。
【0022】
本発明のカテーテルの壁厚は、カテーテル遠位端を、処置具チャンネルを介して内視鏡の先端に送達しそして管腔内に突出(または露出)させることが可能な可撓性および強度を有する限り、特に限定されない。好ましくは、0.3mm以下である。
【0023】
本発明のカテーテルの素材は、カテーテル遠位端を、処置具チャンネルを介して内視鏡の先端に送達しそして管腔内に突出(または露出)させることが可能な可撓性、強度、低摩擦性および必要に応じて絶縁性を有する限り、特に限定されない。このような素材としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、シリコーン樹脂、PTFE、PFA、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、POMなどの軟質樹脂が挙げられる。これらの素材は単独で用いてもよく、他の素材と組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明のカテーテルの断面の形状は、中空である限り、特に限定されないが、中空の同心円形が好ましい。
【0025】
本発明のカテーテルの遠位端の先端形状は、特に制限されない。平面であってもよく、丸く突出していてもよい。
【0026】
本発明のカテーテルの遠位端の先端近傍の形状は、特に制限されないが、好ましくは円柱形状である。
【0027】
先端近傍とは、遠位端の先端から50mm以内、好ましくは10mm以内の遠位端部をいう。
【0028】
本発明のカテーテルは、遠位端の先端近傍に孔を備え、該孔は、該カテーテルの内径よりも小さい直径を有し、複数存在する。
【0029】
孔の形状は、特に制限されないが、好ましくは円形または楕円形である。
【0030】
孔の直径は、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上であり、好ましくは0.6mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。吸引の際に組織を巻き込まない点、および洗浄の際に洗浄水を管腔表面の広範囲に勢いよく吐出できる点で、孔の直径は小さいことが好ましい。
【0031】
孔の数は、特に制限されないが、好ましくは15以上、より好ましくは20以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは30以下である。
【0032】
孔の数は、遠位端の先端近傍が円柱形状を有する場合、円柱形状の外周に沿って1周あたり、好ましくは3〜12個であり、より好ましくは8個である。
【0033】
孔は、数周にわたって設けてもよく、好ましくは2〜4周である。
【0034】
孔の配置は特に制限されない。孔を多数配置する場合、孔間を同じ距離にしてもよく、異なる距離にしてもよい。例えば、格子状あるいはらせん状に配置してもよく、ランダムに配置してもよい。
【0035】
好ましくは、1周同数の孔が長手方向に直線状に並ぶように配置する。あるいは、1周同数の孔が隣り合う1周同数の孔と1周毎に外周に沿って所定の角度ずれるように配置する。1周同数の孔が長手方向に直線状に並んだ配置は、同方向に吐出できるので、例えば、強力な洗浄力をもたらす。1周同数の孔が隣り合う1周同数の孔と1周毎に外周に沿って所定の角度ずれた配置は、異方向に吐出できるので、例えば、薬剤を万遍なく散布するのに役立つ。例えば、外周に沿って1周あたり8個の孔を3周設け、1周毎に外周に沿って15°ずれた配置は、24方向に吐出できる。
【0036】
本発明のカテーテルの近位端は、必要に応じて、吐出または吸引手段を介して、それぞれ洗浄水供給源または排液受に接続している。
【0037】
本発明のカテーテルでは、洗浄水は、近位端側の吐出手段により、洗浄水供給源から導管部内を通り、遠位端の先端近傍の孔を経由して管腔表面に吐出される。管腔表面の血液などの体液、管腔表面を洗浄した廃液、または高周波電極による切開や焼灼に伴う発煙は、近位端側の吸引手段により、遠位端の先端近傍の孔から吸引され、導管部内を通り、近位端側の排液受に送られる。吐出手段と吸引手段は近位端側の操作で適宜切り替えられ、内視鏡で管腔表面をモニターしながら操作可能である。
【0038】
カテーテルの流量性能は特に制限されない。吐出流量性能としては、好ましくは150〜600mL/分、より好ましくは250〜450mL/分である。吸引流量性能としては、好ましくは100〜400mL/分、より好ましくは200〜300mL/分である。
【0039】
図2に示す本発明の第2実施態様のカテーテル11は、遠位端の先端近傍に孔12を備え、エネルギー素子13をさらに備える。
【0040】
エネルギー素子は、例えば、高周波電流、ラジオ波、マイクロ波、超音波、レーザー光などを発する。好ましくは、高周波電流を発する高周波電極である。図2のエネルギー素子13は高周波電極(モノポーラ電極)である。
【0041】
エネルギー素子は、導管部内に設けられた導線を介して、カテーテル近位端で、エネルギー源に接続している。導線としては、例えば、高周波電流では1本の電線を用い、ラジオ波およびマイクロ波では同軸ケーブルを用い、超音波では2本の電線を用い、レーザー光ではグラスファイバーを用いる。
【0042】
エネルギー素子は、カテーテル遠位端から突出するように可動的に備えられていてもよい。可動距離は特に制限されないが、好ましくは3〜6mmである。
【0043】
高周波電極の形状は、特に制限されないが、好ましくはボール型、スパチュラ(へら)型、針型、フック(かぎ状の針)型または扇型(しゃもじ型)である。
【0044】
本発明のカテーテルでは、例えば、遠位端の先端近傍の高周波電極を内視鏡でモニターしながら、管腔表面に押し付けることにより、その部位を切開、焼灼または凝固止血することができる。本発明のカテーテルは、エネルギー素子を可動的に備えることにより、切開、焼灼または凝固止血のための操作性を向上することができる。切開や焼灼時の発煙は、上述のように、吸引手段により吸引除去できる。従来のカテーテルは、カメラの視線方向しか水(洗浄液)を吐出できなかったが、本発明のカテーテルは、カメラの視線方向だけでなく、視線方向に対して直角の方向にも水(洗浄液)を吐出でき、カメラ周辺の洗浄が可能である。さらに、吸引孔が複数存在するため、組織誤吸引による閉塞の問題を回避できる。
【実施例】
【0045】
(カテーテルの作製)
3つのカテーテルを作製した。いずれもポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製の遠位端部とステンレス(SUS)製の継手とPFA製の導管部/近位端部とからなる。遠位端の先端近傍は、外径2.5mm、壁厚0.25mmの円柱形状であり、遠位端の先端から長手方向20mmの範囲内に孔径0.4mmの孔を複数設けた。外周に沿って1周あたり6個の孔を4周設けたもの(4×6:24孔:実施例1)、外周に沿って1周あたり8個の孔を3周設けたもの(3×8:24孔)を作製した。3×8孔のカテーテルの1つは、1周あたり8個の孔が長手方向に直線状に並ぶように作製し(実施例2)、他の1つは、1周8あたり個の孔が隣り合う1周あたり8個の孔と1周毎に外周に沿って15°ずれるように作製した(実施例3)。
【0046】
(流量性能の評価)
実施例1のカテーテルと従来の内視鏡との間で流量性能の比較を行った。一定の圧力(50kPa)でカテーテルの近位端または従来の内視鏡ジェットの給水口に500mLの生理食塩水を供給し、カテーテルの遠位端の先端近傍の孔または従来の内視鏡ジェットの吐出口から生理食塩水を吐出し、すべての生理食塩水を吐出するのに要した時間を比較した(吐出試験)。カテーテルの遠位端または従来の内視鏡の鉗子口(φ3.2mm)を500mLの生理食塩水に漬け、一定の圧力(−50kPa)でカテーテルの遠位端の先端近傍の孔または従来の内視鏡の鉗子口から生理食塩水を吸引し、すべての生理食塩水を吸引するのに要した時間を比較した(吸引試験)。吐出試験および吸引試験の結果をそれぞれ図3(A)および図3(B)に示す。
【0047】
図3より明らかなように、実施例1のカテーテルは、従来の内視鏡ジェットより大きい吐出流量および実用的な吸引流量を実現できることがわかった。
【0048】
(圧力と流量の関係)
次いで、実施例1〜3のカテーテルの吐出試験および吸引試験において、吐出圧力と吐出流量との関係、および吸引圧力と吸引流量との関係を調べた。吐出試験は、一定の圧力でカテーテルの近位端に500mLの生理食塩水を供給し、カテーテルの遠位端の先端近傍の孔から生理食塩水を吐出し、種々の圧力における1分あたりの吐出流量(mL/min)を測定した。吸引試験は、カテーテルの遠位端を500mLの生理食塩水に漬け、一定の圧力でカテーテルの遠位端の先端近傍の孔から生理食塩水を吸引し、種々の圧力における1分あたりの吸引流量(mL/min)を測定した。吐出試験および吸引試験の結果をそれぞれ図4に示す。
【0049】
図4より明らかなように、吐出圧力と吐出流量との関係、および吸引圧力と吸引流量との関係はほぼ直線的になり、調べた150〜400mL/分の範囲内では、実用的な吐出流量および吸引流量を実現できることがわかった。なお、図4の1〜3はそれぞれ実施例1〜3のカテーテルである。
【0050】
(安全性の検証)
従来の吸引器具では、吸引時に臓器の吸いだこや組織の誤吸引が見られるのに対して、実施例1〜3のカテーテルでは、臓器の吸いだこや組織の誤吸引は見られなかった。これらより、本発明のカテーテルは、従来の吸引器具に比べて安全性が高いといえる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の内視鏡用カテーテルは、遠位端の先端近傍に備えられた、カテーテルの内径よりも小さい直径を有する複数の孔を通して、処置対象となる管腔表面を洗浄し、血液を吸引し、切開中または焼灼中に電極鉗子や周辺組織に付着した焼灼片を洗浄または除去することが可能となる。本発明の内視鏡用カテーテルはまた、上記機能に加えて、切開、焼灼、凝固止血、排煙などの機能を発揮することができる。このように、本発明の内視鏡用カテーテルは、洗浄、吸引、切開、焼灼、凝固止血、排煙などの多機能を発揮し得る。本発明は、従来複数の器具がそれぞれ有していた機能を1本のカテーテルに集約した多機能機器であり、手術の途中で器具を入れ替える必要がなくなるため、術者の負担軽減および手術時間の短縮に寄与する。
【符号の説明】
【0052】
1 カテーテル
2 孔
11 カテーテル
12 孔
13 エネルギー素子
図1
図2
図3
図4