(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901058
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】ターゲット供給装置
(51)【国際特許分類】
H05G 2/00 20060101AFI20160324BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
H05G2/00 K
H01L21/30 531S
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-12955(P2012-12955)
(22)【出願日】2012年1月25日
(65)【公開番号】特開2013-152845(P2013-152845A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(74)【代理人】
【識別番号】100110777
【弁理士】
【氏名又は名称】宇都宮 正明
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(74)【代理人】
【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
(72)【発明者】
【氏名】柳田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】若林 理
【審査官】
伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−123928(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0140513(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0035865(US,A1)
【文献】
特開2008−041436(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/137625(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 2/00
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット物質を放出するための貫通孔が形成されたノズル部と、
導電性部材を含み、前記ターゲット物質が通過するように貫通孔が設けられ、前記ノズル部を覆うように設けられるカバーと、
第1電極であって、前記カバーに対して前記ノズル部とは反対側に設置され、且つ前記ターゲット物質が通過するように貫通孔が設けられた前記第1電極と、
前記ノズル部に対向して設けられた第2電極と、
電位制御部であって、
前記第1電極の電位を、前記カバーに含まれる前記導電性部材の第1の電位より低い第2の電位となるように制御し、
前記ターゲット物質の電位を、前記第1の電位より高い第3の電位となるように制御し、
前記第2電極の電位を、前記第1の電位より高く且つ前記第3の電位以下である第4の電位から、前記第1の電位以上で且つ前記第4の電位より低い第5の電位に、パルス状に制御する前記電位制御部と、
を備えるターゲット供給装置。
【請求項2】
前記電位制御部は、前記ノズル部から前記ターゲット物質を出力してから一定時間、前記第1電極の電位を前記第2の電位より高い第6の電位となるように制御し、その後、前記第1電極の電位を前記第2の電位となるように制御する、請求項1記載のターゲット供給装置。
【請求項3】
前記第6の電位と前記第1の電位との差は、前記第6の電位と前記第2の電位との差より小さい、請求項2記載のターゲット供給装置。
【請求項4】
ターゲット物質を放出するための貫通孔が形成されたノズル部と、
導電性部材を含み、前記ターゲット物質が通過するように貫通孔が設けられ、前記ノズル部を覆うように設けられるカバーと、
第1電極であって、前記カバーに対して前記ノズル部とは反対側に設置され、且つ前記ターゲット物質が通過するように貫通孔が設けられた第1電極と、
前記第1電極の電位を、前記カバーに含まれる前記導電性部材の第1の電位より低い第2の電位となるように制御する電位制御部と、
を備え、
前記第1電極は、前記カバーの外側に配置された、ターゲット供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ターゲット供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、70nm〜45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、例えば32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度の極端紫外(EUV)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)式の装置と、放電によって生成されるプラズマが用いられるDPP(Discharge Produced Plasma)式の装置と、軌道放射光が用いられるSR(Synchrotron Radiation)式の装置との3種類の装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7838854号明細書
【0005】
本開示の1つの観点に係るターゲット供給装置は、ターゲット物質を放出するための貫通孔が形成されたノズル部と、導電性部材を含み、前記ターゲット物質が通過するように貫通孔が設けられ、前記ノズル部を覆うように設けられるカバーと、第1電極であって、前記カバーに対して前記ノズル部とは反対側に設置され、且つ前記ターゲット物質が通過するように貫通孔が設けられた
前記第1電
極と、
前記ノズル部に対向して設けられた第2電極と、電位制御部であって、前記第1電極の電位を、前記カバーに含まれる前記導電性部材の第1の電位より低い第2の電位となるように制御
し、前記ターゲット物質の電位を、前記第1の電位より高い第3の電位となるように制御し、前記第2電極の電位を、前記第1の電位より高く且つ前記第3の電位以下である第4の電位から、前記第1の電位以上で且つ前記第4の電位より低い第5の電位に、パルス状に制御する
前記電位制御部と、を備えてもよい。
本開示の他の1つの観点に係るターゲット供給装置は、ターゲット物質を放出するための貫通孔が形成されたノズル部と、導電性部材を含み、前記ターゲット物質が通過するように貫通孔が設けられ、前記ノズル部を覆うように設けられるカバーと、第1電極であって、前記カバーに対して前記ノズル部とは反対側に設置され、且つ前記ターゲット物質が通過するように貫通孔が設けられた第1電極と、前記第1電極の電位を、前記カバーに含まれる前記導電性部材の第1の電位より低い第2の電位となるように制御する電位制御部と、を備え、前記第1電極は、前記カバーの外側に配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、例示的なLPP式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るターゲット供給装置を含むEUV光生成装置の構成を示す一部断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すターゲット供給装置及びその周辺部を示す一部断面図である。
【
図4A】
図4Aは、ターゲット供給装置の各部に印加される電位の例を示すグラフである。
【
図4B】
図4Bは、第1の実施形態においてターゲット供給装置の各部に印加される電位の例を示すグラフである。
【
図4C】
図4Cは、第1電極の電位に応じたプラズマ生成後の電位P2及びP3の変化量を示すグラフである。
【
図5A】
図5Aは、第1の実施形態に係るターゲット供給装置において用いられる第1電極の例を示す平面図である。
【
図6A】
図6Aは、第1の実施形態に係るターゲット供給装置において用いられる第1電極の他の例を示す平面図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係るターゲット供給装置及びその周辺部を示す一部断面図である。
【
図8】
図8は、第3の実施形態に係るターゲット供給装置及びその周辺部を示す一部断面図である。
【
図9】
図9は、偏向電極(以下、第4電極と記載する)を用いたターゲットの方向制御について説明するための図である。
【
図10】
図10は、第4の実施形態に係るターゲット供給装置を含むEUV光生成装置の構成を示す一部断面図である。
【
図11】
図11は、第4の実施形態においてターゲット供給装置の各部に印加される電位の例を示すグラフである。
【
図12】
図12は、第5の実施形態に係るターゲット供給装置の一部を示す断面図である。
【0007】
<内容>
1.概要
2.極端紫外光生成システムの全体説明
2.1 構成
2.2 動作
3.第1電極を有するターゲット供給装置
3.1 構成
3.2 動作
3.3 第1電極の例
4.加速電極(以下、第3電極と記載する)を含むターゲット供給装置
5.リザーバの全体を遮蔽するカバーが設けられたターゲット供給装置
5.1 構成
5.2 動作
6.第1電極にパルス電圧を印加するターゲット供給装置
7.他のターゲット供給方式
【0008】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0009】
1.概要
LPP式のEUV光生成装置においては、ターゲット供給装置がターゲット物質を出力し、プラズマ生成領域に到達させてもよい。ターゲット物質がプラズマ生成領域に到達した時点で、ターゲット物質にパルスレーザ光を照射することで、ターゲット物質がプラズマ化し、このプラズマからEUV光が放射され得る。
【0010】
しかしながら、EUV光を生成するためのプラズマには荷電粒子(電子及びターゲット物質のイオン)が含まれている。この荷電粒子がターゲット供給装置のノズル部付近に到達すると、ターゲット物質をプラズマ生成領域に安定して供給できなくなる場合がある。
【0011】
本開示の1つの観点によれば、ターゲット物質が通過するための貫通孔が設けられ、ノズル部を覆うように設けられるカバーと、ターゲット物質が通過するための貫通孔が設けられた電極と、を具備してもよい。この電極の電位を、カバーの第1の電位より低い第2の電位となるように制御することにより、荷電粒子がターゲット供給装置のノズル部に到達することを抑制し得る。これにより、ターゲット物質をプラズマ生成領域に安定して供給し得る。
【0012】
2.極端紫外光生成システムの全体説明
2.1 構成
図1に、例示的なLPP式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、少なくとも1つのレーザ装置3と共に用いられてもよい。本願においては、EUV光生成装置1及びレーザ装置3を含むシステムを、EUV光生成システム11と称する。
図1に示し、かつ、以下に詳細に説明するように、EUV光生成装置1は、チャンバ2、ターゲット供給装置26を含んでもよい。チャンバ2は、密閉可能であってもよい。ターゲット供給装置26は、例えば、チャンバ2の壁を貫通するように取り付けられてもよい。ターゲット供給装置26から供給されるターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0013】
チャンバ2の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられていてもよい。その貫通孔には、ウインドウ21が設けられてもよく、ウインドウ21をレーザ装置3から出力されるパルスレーザ光32が透過してもよい。チャンバ2の内部には、例えば、回転楕円面形状の反射面を有するEUV集光ミラー23が配置されてもよい。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を有し得る。EUV集光ミラー23の表面には、例えば、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されていてもよい。EUV集光ミラー23は、例えば、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点が中間集光点(IF)292に位置するように配置されるのが好ましい。EUV集光ミラー23の中央部には貫通孔24が設けられていてもよく、貫通孔24をパルスレーザ光33が通過してもよい。
【0014】
EUV光生成装置1は、EUV光生成制御部5、ターゲットセンサ4等を含んでもよい。ターゲットセンサ4は、撮像機能を有してもよく、ターゲット27(ターゲット物質のドロップレット)の存在、軌道、位置、速度等を検出するよう構成されてもよい。
【0015】
また、EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部と露光装置6の内部とを連通させる接続部29を含んでもよい。接続部29内部には、アパーチャが形成された壁291が設けられてもよい。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点位置に位置するように配置されてもよい。
【0016】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光進行方向制御部(ビームステアリング装置)34、レーザ光集光ミラー22、ターゲット27を回収するためのターゲット回収部28等を含んでもよい。レーザ光進行方向制御部34は、レーザ光の進行方向を規定するための光学素子と、この光学素子の位置、姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備えてもよい。
【0017】
2.2 動作
図1を参照に、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光進行方向制御部34を経て、パルスレーザ光32としてウインドウ21を透過してチャンバ2内に入射してもよい。パルスレーザ光32は、少なくとも1つのレーザ光経路に沿ってチャンバ2内を進み、レーザ光集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33として少なくとも1つのターゲット27に照射されてもよい。
【0018】
ターゲット供給装置26は、ターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力するよう構成されてもよい。ターゲット27には、パルスレーザ光33に含まれる少なくとも1つのパルスが照射されてもよい。パルスレーザ光が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマから放射光251が放射され得る。放射光251に含まれるEUV光252は、EUV集光ミラー23によって選択的に反射されてもよい。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光252は、中間集光点292で集光され、露光装置6に出力されてもよい。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0019】
EUV光生成制御部5は、EUV光生成システム11全体の制御を統括するよう構成されてもよい。EUV光生成制御部5は、ターゲットセンサ4によって撮像されたターゲット27のイメージデータ等を処理するよう構成されてもよい。また、EUV光生成制御部5は、例えば、ターゲット27が出力されるタイミング、ターゲット27の出力方向等を制御するよう構成されてもよい。さらに、EUV光生成制御部5は、例えば、レーザ装置3の発振タイミング、パルスレーザ光32の進行方向、パルスレーザ光33の集光位置等を制御するよう構成されてもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよい。
【0020】
3.第1電極を有するターゲット供給装置
3.1 構成
図2は、第1の実施形態に係るターゲット供給装置を含むEUV光生成装置の構成を示す一部断面図である。
図3は、
図2に示すターゲット供給装置及びその周辺部を示す一部断面図である。
図2に示すように、チャンバ2の内部には、レーザ光集光光学系22aと、EUV集光ミラー23と、ターゲット回収部28と、EUV集光ミラーホルダ41と、プレート42及び43と、ビームダンプ44と、ビームダンプ支持部材45とが設けられてもよい。
【0021】
チャンバ2は、導電性を有する材料(例えば、金属材料)からなる部材(導電性部材)を含んでもよい。さらに、チャンバ2は、電気絶縁性を有する部材を含んでもよい。その場合には、例えば、チャンバ2の外壁自体は導電性部材で構成され、外壁の内側に電気絶縁性を有する部材が配置されるように構成されてもよい。
【0022】
チャンバ2には、プレート42が固定され、プレート42には、プレート43が固定されてもよい。EUV集光ミラー23は、EUV集光ミラーホルダ41を介してプレート42に固定されてもよい。
【0023】
レーザ光集光光学系22aは、軸外放物面ミラー221及び平面ミラー222と、それらのミラーをそれぞれ保持するためのホルダ223及び224とを含んでもよい。軸外放物面ミラー221及び平面ミラー222は、それぞれのミラーで反射されたパルスレーザ光がプラズマ生成領域25で集光するような位置及び姿勢となるように、それぞれのホルダを介してプレート43に固定されてもよい。
【0024】
ビームダンプ44は、平面ミラー222により反射されたパルスレーザ光の光路の延長線上に位置するように、ビームダンプ支持部材45を介してチャンバ2に固定されてもよい。ターゲット回収部28は、ターゲット27の軌道の延長線上に配置されてもよい。
【0025】
チャンバ2には、ターゲット供給装置26が取り付けられてもよい。ターゲット供給装置26は、リザーバ61と、ターゲット制御部52と、圧力調節器53と、不活性ガスボンベ54と、DC高圧電源55と、パルス電圧電源58と、DC電源59とを含んでもよい。
【0026】
リザーバ61は、ターゲット物質を溶融した状態で内部に貯蔵してもよい。リザーバ61は、ターゲット物質と反応しにくい材料で構成されてもよい。例えば、ターゲット物質としてスズを用いる場合に、リザーバ61は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、石英(SiO
2)、炭化ケイ素(SiC)等の少なくともひとつで構成されてもよい。ターゲット物質を溶融させるために、図示しないヒーター及びヒーター電源が用いられてもよい。リザーバ61は、チャンバ2の壁と電気的に絶縁されていてもよい。
【0027】
図3に示すように、ターゲット供給装置26は、さらに、ノズル板62と、電気絶縁部材65と、引出電極(以下、第2電極と記載する)66と、カバー67と、第1電極68とを含んでもよい。
ノズル板62は、リザーバ61の出力側の端部付近に固定されていてもよい。ノズル板62には、液体のターゲット物質が通過するための貫通孔が形成されていてもよい。また、ノズル板62は、ターゲット物質に電界を集中させるために、出力側に突き出た先端部62bを有してもよい。上記貫通孔はこの先端部62bに開口していてもよい。
【0028】
電気絶縁部材65は、円筒形状を有し、その内側にリザーバ61の出力側の端部を収容するようにして、リザーバ61に固定されてもよい。電気絶縁部材65には、その内側にノズル板62及び第2電極66が保持されていてもよい。電気絶縁部材65によって、ノズル板62と第2電極66との間が電気的に絶縁されてもよい。第2電極66は、ノズル板62に形成された貫通孔からターゲット物質を引き出すために、ノズル板62の出力側の面に対向して配置されてもよい。第2電極66には、ターゲット27を通過させるための貫通孔66aが形成されていてもよい。
【0029】
チャンバ2の壁には、貫通孔が形成されてもよく、この貫通孔を覆うように、フランジ84が固定されてもよい。フランジ84には貫通孔が形成されてもよく、この貫通孔を貫通するようにターゲット供給装置26のリザーバ61が配置され、フランジ84に固定されてもよい。フランジ84は絶縁性材料で構成されてもよい。
【0030】
カバー67は、フランジ84に取り付けられてもよい。カバー67は、ターゲット供給装置26の少なくとも電気絶縁部材65を含む先端部(リザーバ61の一部、ノズル板62及び第2電極66)を覆うように配置されてもよい。カバー67には、ターゲット27を通過させるための貫通孔67aが形成されてもよい。
【0031】
カバー67は、導電性を有する材料(例えば、金属材料)を含むことにより、導電性を有してもよい。カバー67は、プラズマ生成領域25において生成されるプラズマより放出される荷電粒子から、電気絶縁部材65等の電気的な絶縁物をある程度保護してもよい。
【0032】
第1電極68は、カバー67の内側(カバー67に対してターゲット27の進行方向上流側)の位置に、電気絶縁性を有する第1リング69を介して固定されてもよい。第1電極68には、ターゲット27を通過させるための貫通孔68fが形成されてもよい。
【0033】
ターゲット制御部52は、圧力調節器53、DC高圧電源55、パルス電圧電源58及びDC電源59に、制御信号を出力するよう構成されてもよい。
不活性ガスボンベ54は、不活性ガスを供給するための配管によって圧力調節器53に接続されていてもよい。圧力調節器53は、さらに、不活性ガスを供給するための配管によってリザーバ61の内部と連通してもよい。
【0034】
DC高圧電源55の出力端子は、リザーバ61に設けられたフィードスルー57aを介してリザーバ61内の電極63に電気的に接続されていてもよい。電極63は、リザーバ61に貯蔵されたターゲット物質に接触していてもよい。リザーバ61が導電性の部材によって構成されている場合には、DC高圧電源55の出力端子は、リザーバ61に電気的に接続されていてもよく、フィードスルー57aが設けられていなくてもよい。
【0035】
パルス電圧電源58の出力端子は、フランジ84に設けられたフィードスルー58aと電気絶縁部材65の側面に設けられた貫通孔65aとを介して、第2電極66に電気的に接続されてもよい。
DC電源59の出力端子は、フランジ84に設けられたフィードスルー59aを介して、第1電極68に電気的に接続されてもよい。
【0036】
図2を再び参照し、チャンバ2の外部には、ビームステアリングユニット34aと、EUV光生成制御部5とが設けられてもよい。ビームステアリングユニット34aは、高反射ミラー341及び342と、それらのミラーをそれぞれ保持するためのホルダ343及び344とを含んでもよい。
【0037】
3.2 動作
圧力調節器53は、ターゲット制御部52から出力される制御信号に応じて、不活性ガスボンベ54から供給される不活性ガスの圧力を調整して、リザーバ61内部へ導入された不活性ガスによりリザーバ61内の溶融したターゲット物質を加圧するよう構成されてもよい。以上のように不活性ガスがターゲット物質を加圧することにより、ノズル板62の貫通孔が開口する先端部62bからターゲット物質を僅かに突出させてもよい。
【0038】
DC高圧電源55は、ターゲット制御部52から出力される制御信号に応じて、リザーバ61内の電極63を介してターゲット物質に電位P3を印加してもよい。パルス電圧電源58は、ターゲット制御部52から出力される制御信号に従って、パルス状の電圧信号(電位P7≠P3)を第2電極66に印加してもよい。これによって、ターゲット物質と第2電極66との間に電界が発生し、ターゲット物質と第2電極66との間にクーロン力が発生し得る。
【0039】
特に、前記したように不活性ガスによって加圧されて先端部62bから突出したターゲット物質の周囲には電界が集中するので、先端部62bから突出したターゲット物質と第2電極66との間には、より強力なクーロン力が発生し得る。このクーロン力により、ターゲット27が、帯電したドロップレットの状態で先端部62bから放出され得る。
【0040】
カバー67とチャンバ2の壁とは、一定の電位P1に電気的に接続されてもよい。一定の電位P1は、接地電位(0V)であってもよい。DC電源59は、第1電極68に電位P2を印加してもよい。
【0041】
ターゲット制御部52は、EUV光生成制御部5から与えられるタイミングでターゲット27が出力されるように、圧力調節器53及びパルス電圧電源58を制御してもよい。チャンバ2内に出力されたターゲット27は、チャンバ2内のプラズマ生成領域25に供給されてもよい。
【0042】
レーザ装置3から出力されるパルスレーザ光は、高反射ミラー341及び342によって反射されて、ウインドウ21を介してレーザ光集光光学系22aに入射してもよい。レーザ光集光光学系22aに入射したパルスレーザ光は、軸外放物面ミラー221及び平面ミラー222によって反射されてもよい。EUV光生成制御部5は、ターゲット供給装置26から出力されたターゲット27がプラズマ生成領域25に到達するタイミングに合わせて、ターゲット27にパルスレーザ光が照射されるように制御を行ってもよい。
【0043】
図4A及び
図4Bは、ターゲット供給装置の各部に印加される電位の例を示すグラフである。DC高圧電源55は、リザーバ61内のターゲット物質の電位P3を一定電位Phv(例えば20kV)に維持してもよい。パルス電圧電源58は、第2電極66の電位P7を、最初は電位P
H(例えば15kV)に維持し、ターゲット27を出力するときには電位P
L(例えば5kV)に変化させ、所定の時間(パルス幅)ΔT7が経過した後に電位P
Hに戻してもよい。ここで、電位P
H及び電位P
Lは、Phv≧P
H>P
L≧P1の範囲であってもよい。電位P1は、カバー67及びチャンバ2の電位であってもよく、カバー67及びチャンバ2の電位は接地電位(0V)であってもよい。
【0044】
第2電極66によってターゲット27が放出された後、プラズマ生成領域25に到達したターゲット27にパルスレーザ光が照射されると、プラズマが生成し得る。プラズマに含まれる荷電粒子がターゲット供給装置26のノズル板62付近に到達すると、
図4Aに示されるように、ターゲット物質の電位P3と第1電極68の電位P2とが一時的に変化し得る。このときに、次のターゲット27を出力するために第2電極66の電位P7を制御しても、ターゲット物質の電位P3と第2電極66の電位P7との電位差が所望の電位差に制御できない場合があり得る。これにより、ターゲット27の速度及び軌道にばらつきが生じ得る。
【0045】
ここで、
図4Bに示すように、第1電極68の電位P2を、カバー67の電位P1よりも低い電位に制御すると、ターゲット物質の電位P3の変化が抑制されることがわかった。
【0046】
図4Cは、プラズマ生成後の第1電極の電位P2の変化量及びターゲット物質の電位P3の変化量と、第1電極の電位との関係を示すグラフである。プラズマから放出される荷電粒子の影響により、ターゲット物質の電位P3だけでなく、第1電極68の電位P2も変化し得る。このときの電位P3の変化量の最大値をΔP3とし、電位P2の変化量の最大値をΔP2とする(
図4A参照)。
図4Cにおいては、プラズマ生成の繰り返し周波数を10Hzとし、第1電極68の貫通孔68fの直径を3mmとした場合の測定データを示している。
【0047】
図4Cに示すように、第1電極68の電位P2を正の電位とした場合には、ターゲット物質の電位P3の変化量(低下量)ΔP3は、1000V〜1200Vとなり、第1電極68の電位P2の変化量(低下量)ΔP2は、0V〜120Vとなった。これに対して、第1電極68の電位を−500V以下の負の電位とした場合には、プラズマ生成後に、ターゲット物質の電位P3及び第1電極68の電位P2はほぼ変化しなかった。
【0048】
プラズマ生成の繰り返し周波数を10Hzより大きくする場合には、より多くの荷電粒子がチャンバ2内で生成し得るので、第1電極68の電位をより低い負の電位とするのが望ましい。例えば、プラズマ生成の繰り返し周波数を1kHzとする場合には、第1電極68の電位を−800V以下とするのが望ましい。これにより、ターゲット物質の電位P3の変化が抑制され得る。従って、ターゲット物質の電位P3と第2電極66の電位P7との電位差を所望の電位差に制御でき、ターゲット27の速度及び軌道のばらつきを低減し得る。
【0049】
3.3 第1電極の例
図5Aは、第1の実施形態に係るターゲット供給装置において用いられる第1電極の例を示す平面図である。
図5Bは、
図5Aに示す第1電極をカバーに装着した状態を示す断面図である。
【0050】
図5A及び
図5Bに示す第1電極68は、導電性を有する第2リング68a及び導電性を有するメッシュ68bを含んでもよい。第2リング68a及びメッシュ68bは、金属によって構成されてもよい。第2リング68aは、メッシュ68bに固定されてもよい。メッシュ68bは、電気絶縁性を有するシート69aに貼りつけられてもよい。シート69aには、貫通孔69bが形成されてもよい。シート69aが第1リング69に固定され、その固定面の反対側の面がカバー67に固定されることにより、第2リング68a及びメッシュ68bが、カバー67から所定間隔離れた位置に固定されてもよい。メッシュ68bの中央の隙間68cと、シート69aの貫通孔69bと、カバー67の貫通孔67aとは同一直線上に並ぶように配置されてもよい。
【0051】
ターゲット供給装置26から出力されたターゲット27は、第2リング68aの内側と、メッシュ68bの中央の隙間68cと、シート69aの貫通孔69bと、第1リング69の内側と、カバー67の貫通孔67aとを通過し得る。メッシュ68bの中央の隙間68cの寸法は、ターゲット27の通過を阻害しない限りにおいて小さい寸法とすることが望ましい。例えば、メッシュ68bの中央の隙間68cは、ターゲット27の直径より大きい寸法を有し、且つ、3mm以下(好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下)の寸法を有してもよい。これにより、ターゲット供給装置26のノズル板62付近に、荷電粒子が到達することが抑制され得る。これにより、ターゲット物質の電位P3の変化が抑制され得る。
【0052】
図6Aは、第1の実施形態に係るターゲット供給装置において用いられる第1電極の他の例を示す平面図である。
図6Bは、
図6Aに示す第1電極をカバーに装着した状態を示す断面図である。
【0053】
図6A及び
図6Bに示す第1電極68は、メッシュ68bの代わりに、導電性を有するプレート68dを含んでもよい。プレート68dは、金属によって構成されてもよい。プレート68dは、貫通孔68eを有していてもよい。第2リング68aは、プレート68dに固定されていてもよい。プレート68dは、シート69aに貼りつけられてもよい。
【0054】
プレート68dの貫通孔68eの寸法は、ターゲット27の通過を阻害しない限りにおいて小さい寸法とすることが望ましい。他の点については
図5A及び
図5Bを参照しながら説明したものと同様でよい。
【0055】
4.第3電極を含むターゲット供給装置
図7は、第2の実施形態に係るターゲット供給装置及びその周辺部を示す一部断面図である。第2の実施形態においては、第1電極68が、カバー67の外側(カバー67に対してターゲット27の進行方向下流側)の位置に、第1リング69を介して固定されてもよい。また、第2電極66に対してターゲット27の進行方向下流側の位置に、第3電極64が設けられてもよい。第3電極64は、電気絶縁部材65の内側に保持されてもよい。
【0056】
第1の実施形態において説明したように、DC高圧電源55は、リザーバ61内のターゲット物質の電位P3を一定電位Phv(例えば20kV)に維持してもよい。パルス電圧電源58は、第2電極66の電位P7を、最初は電位P
H(例えば15kV)に維持し、ターゲット27を出力するときには電位P
L(例えば5kV)に変化させ、所定の時間(パルス幅)ΔT7が経過した後に電位P
Hに戻してもよい。ここで、電位P
H及び電位P
Lは、Phv≧P
H>P
L>P1の範囲であってもよい。電位P1は、カバー67及びチャンバ2の電位であってもよく、カバー67及びチャンバ2の電位は接地電位(0V)であってもよい。
【0057】
これによって、正に帯電したターゲット27が、ノズル板62から引き出され得る。ターゲット27は、リザーバ61内のターゲット物質に与えられた電位P3より低い電位P7が印加された第2電極66に向かって引き出され、第2電極66の貫通孔66aを通過し得る。
【0058】
ここで、第3電極64は、電位P1に電気的に接続されてもよい。従って、電位P7が与えられた第2電極66の貫通孔66aを通過したターゲット27は、さらに低い電位P1が与えられた第3電極64に向かって加速され得る。
【0059】
このように、ターゲット27は、ノズル板62から第2電極66を経て第3電極64に至る経路上に形成される電位勾配により、加速され、第3電極64の貫通孔64aを通過し得る。第3電極64の貫通孔64aを通過した後のターゲット27の経路上においては、カバー67及びチャンバ2の電位は接地電位(0V)であることから、電位勾配が緩やかであり得る。従って、ターゲット27は、第3電極64の貫通孔64aを通過した後、主に貫通孔64aを通過した時点での運動量によって、チャンバ2内を移動し得る。
【0060】
DC電源59は、第1電極68に電位P2を印加してもよい。第1電極68の電位P2を、カバー67の電位P1よりも低い電位に制御してもよい。この場合においても、電位勾配の効果によってもターゲット供給装置26のノズル板62付近に荷電粒子が到達することが抑制され得る。従って、ターゲット物質の電位P3と第2電極66の電位P7との電位差を所望の電位差に制御し得る。
【0061】
第2の実施形態においても、ターゲット物質の電位P3と第2電極66の電位P7との電位差を所望の電位差に制御できるので、ターゲット27に与えられる電荷のばらつきを低減し得る。従って、第3電極64によって加速されるターゲット27の速度のばらつきを低減し得る。
また、第1電極68の電位P2を、カバー67の電位P1よりも低い電位に制御することにより、第3電極64の付近に荷電粒子が到達することが抑制され得る。従って、第3電極64の電位を安定させ、第3電極64によって加速されるターゲット27の速度のばらつきを低減し得る。
その他の点に関しては、第1の実施形態と同様でよい。なお、第3電極64は、第1の実施形態に係るターゲット供給装置に含まれていてもよい。
【0062】
5.リザーバの全体を遮蔽するカバーが設けられたターゲット供給装置
5.1 構成
図8は、第3の実施形態に係るターゲット供給装置及びその周辺部を示す一部断面図である。第3の実施形態においては、カバー85がリザーバ61の全体、ノズル板62、電気絶縁部材65、及び第2電極66をカバーしてもよい。カバー85は、さらに、第3電極64及び後述の第4電極70をカバーしてもよい。
【0063】
図8に示すように、ターゲット供給装置26の主要な構成要素(リザーバ61等)は、カバー85と、カバー85の開口部に取り付けられた蓋86とによって構成される遮蔽容器に収容されてもよい。カバー85は、チャンバ2の壁に取り付けられてもよい。カバー85には、ターゲット27を通過させるための貫通孔85aが形成されてもよい。蓋86は、チャンバ2の外部において、カバー85の上記開口部を密封してもよい。リザーバ61は、蓋86を介してカバー85に取り付けられてもよい。
【0064】
カバー85は、導電性を有する材料(例えば、金属材料)を含むことにより導電性を有してもよい。カバー85は、チャンバ2の導電性部材(壁)に電気的に接続されてもよい。あるいは、カバー85はワイヤ等の導電性接続部材によって、チャンバ2の導電性部材(壁)に電気的に接続されてもよい。チャンバ2の導電性部材は、接地電位(0V)に電気的に接続されてもよい。また、蓋86の材料としては、例えば、ムライト等の電気絶縁材料が用いられてもよい。カバー85は、プラズマ生成領域において生成されるプラズマから放出される荷電粒子から電気絶縁部材65等の電気的な絶縁物を保護してもよい。
【0065】
第3電極64に対してターゲット27の進行方向下流側の位置には、複数(例えば、2対)の第4電極70が配置されてもよい。第4電極70を構成する各電極は、電気絶縁部材65によって互いに電気絶縁状態で保持されてもよい。
【0066】
第1電極68の配線及び第4電極70の配線は、蓋86に設けられた中継端子90aを介して、DC電源59及び第4電極電圧電源57にそれぞれ電気的に接続されてもよい。第4電極70の配線は、電気絶縁部材65の貫通孔を介して第4電極電圧電源57に電気的に接続されてもよい。第3電極64の配線は、電気絶縁部材65の貫通孔を介して、カバー85に電気的に接続されてもよい。
【0067】
ターゲット物質に電圧を印加するためのリザーバ61内の電極63の配線は、蓋86に設けられた中継端子90bを介して、DC高圧電源55に電気的に接続されてもよい。第2電極66の配線は、電気絶縁部材65の貫通孔および蓋86に設けられた中継端子90cを介して、パルス電圧電源58に電気的に接続されてもよい。
【0068】
図示を省略するが、第1及び第2の実施形態と同様に、不活性ガスボンベが、不活性ガスを供給するための配管を介して圧力調節器53と接続されてもよい。その他の点に関しては、第2の実施形態と同様でよい。
【0069】
5.2 動作
ターゲット制御部52は、圧力調節器53、DC高圧電源55及びパルス電圧電源58に制御信号を出力するよう構成されてもよい。これにより、ノズル板62から帯電したターゲット27が引き出されて、引き出されたターゲット27が第2電極66の貫通孔66aを通過し得る。第2電極66の貫通孔66aを通過したターゲット27は、基準電位(0V)が印加された第3電極64と第2電極66との間の電界の作用によって加速され、第3電極64の貫通孔64aを通過し得る。
【0070】
2対の第4電極70は、第3電極64の貫通孔64aを通過した帯電したターゲット27に電界を作用させて、その進行方向を変更してもよい。ターゲット27の進行方向を変更することが必要な場合には、ターゲット制御部52が、第4電極70の各対間での電位差を制御するための制御信号を第4電極電圧電源57に出力するよう構成されてもよい。第4電極電圧電源57は、第4電極70の各対間に第4電極電圧を印加するよう構成されてもよい。
【0071】
ターゲット27の進行方向の変更は、EUV光生成制御部5からの制御信号に基づいて行われてもよい。EUV光生成制御部5とターゲット制御部52との間では、種々の信号が送受信されてもよい。たとえば、EUV光生成制御部5は図示しないターゲットセンサからターゲット27の軌道情報を取得し、理想的な軌道との差分を算出するよう構成されてもよい。また、EUV光生成制御部5は、その差分が小さくなるように第4電極70に印加される電圧を制御するための信号を、ターゲット制御部52に送出するよう構成されてもよい。なお、2対の第4電極70それぞれの間を通過したターゲット27は、カバー85の貫通孔85aを通過してもよい。
【0072】
図9は、第4電極を用いたターゲットの方向制御について説明するための図である。ここでは、Z軸方向に移動している帯電したターゲット27の進行方向を、一対の平板電極で構成された第4電極を用いて、X軸方向の電界によって変更させる場合について説明する。
【0073】
電荷Qを有する帯電したターゲット27は、平板電極70aと70bとの間の電界Eによって、次式で表されるクーロン力Fを電界方向に受け得る。なお、平板電極間の電気力線は電極間のどこの場所でもほぼ平行という近似条件の下で以下の説明を行う。
F=QE
ここで、電界Eは、平板電極70aに与えられる電位Paと平板電極70bに与えられる電位Pbとの間の電位差(Pa−Pb)と、それらの電極間のギャップ長Gとによって、次式で表され得る。
E=(Pa−Pb)/G
【0074】
ターゲット27が初速度V
0で電界中に入射すると、進行方向に直交する方向にクーロン力Fを受けることによって、ターゲット27の進行方向が変更され得る。ターゲット27は、Z軸方向速度成分Vz(Vz=V
0)でZ軸方向に移動しながら、クーロン力FによってX軸方向に加速され得る。クーロン力Fは、電界中を移動している間中受け続け得る。このときのX軸方向の加速度aは、ターゲット27の質量mが既知であれば、次式から導かれ得る。
F=ma (m:ターゲットの質量、a:加速度)
また、ターゲット27が電界から脱出するときのX軸方向速度成分Vxは次式から導かれ得る。
Vx=aL/Vz (L:電極70のZ方向の長さ)
【0075】
ターゲット27が電界から脱出するときの速度Vは、Z軸方向速度成分VzとX軸方向速度成分Vxとによって、次式で表され得る。
V=(Vz
2+Vx
2)
1/2
このように、電位差(Pa−Pb)を与えてターゲット27の軌道の一部に電界を作用させることによって、ターゲット27の進行方向を変更させてもよい。また、電位差(Pa−Pb)を調節することによって、進行方向の変更量を制御してもよい。電界から脱出したターゲット27は、速度Vで移動して、レーザ光が照射される位置に到達するように制御されてもよい。同様に、Y軸方向に関しても、Y軸方向に一対の平板電極を配置し、前記と同様にターゲット27に電界を作用することによって、ターゲット27の進行方向を制御することが可能である。
【0076】
第3の実施形態においても、第1電極68に電位P2を印加することにより、ターゲット供給装置26のノズル板62付近に荷電粒子が到達することが抑制され得る。従って、ターゲット物質の電位P3と第2電極66の電位P7との電位差を所望の電位差に制御し得る。
【0077】
第3の実施形態においても、ターゲット物質の電位P3と第2電極66の電位P7との電位差を所望の電位差に制御できるので、ターゲット27に与えられる電荷のばらつきを低減し得る。従って、第4電極70によって進行方向を変更されるターゲット27を所望の軌道に制御し得る。
また、第1電極68の電位P2を、カバー85の電位P1よりも低い電位に制御することにより、第4電極70の付近に荷電粒子が到達することが抑制され得る。従って、第4電極70を所望の電位に制御し、第4電極70によって進行方向を変更されるターゲット27を所望の軌道に制御し得る。
その他の点に関しては、第2の実施形態と同様でよい。なお、第4電極70は、第1及び第2の実施形態に係るターゲット供給装置に含まれていてもよい。
【0078】
6.第1電極にパルス電圧を印加するターゲット供給装置
図10は、第4の実施形態に係るターゲット供給装置を含むEUV光生成装置の構成を示す一部断面図である。第4の実施形態においては、DC電源59(
図2参照)の代わりに、パルス電源59bが第1電極68に電気的に接続されてもよい。このパルス電源59bにより、第1電極68に一定の電位を印加するのではなく、パルス状の電位信号を印加してもよい。
【0079】
図11は、第4の実施形態においてターゲット供給装置の各部に印加される電位の例を示すグラフである。
図11に示すように、パルス電源59bは、第1電極68の電位を、ターゲット27が生成されてからカバー67の貫通孔67aを通過するまでの間は接地電位(0V)付近の所定電位まで上げ、その他の時間は上記所定電位より低い負の電位に維持してもよい。第1電極68の電位を上記所定電位から上記所定電位より低い負の電位に戻した後に、プラズマが生成するようにしてもよい。
【0080】
ターゲット制御部52からパルス電圧電源58にトリガ信号が出力されると同時に、パルス電源59bにもトリガ信号が出力されてよい。これにより、パルス電圧電源58が第2電極66にパルス電圧を出力するのと同時に、パルス電源59bが第1電極68にパルス電圧を出力し得る。第1電極68に出力されるパルス電圧のパルス幅ΔT2は、少なくとも、ターゲット27が生成されてからカバー67の貫通孔67aを通過するまでの時間でもよい。
【0081】
このようにすれば、ターゲット27が第1電極68及びカバー67を通過するまでの間は、第1電極68とカバー67との間の電位勾配を低減し、第1電極68付近におけるターゲット27の加減速を抑制し得る。ターゲット27が第1電極68及びカバー67を通過した後は、第1電極68の電位を所定の負の電位に制御することにより、プラズマから放出される荷電粒子がターゲット供給装置26のノズル板62付近に到達することを抑制し得る。従って、ターゲット物質の電位P3と第2電極66の電位P7との電位差を所望の電位差に制御でき、ターゲット27の速度及び軌道のばらつきを低減し得る。
その他の点に関しては、第1の実施形態と同様でよい。
【0082】
7.他のターゲット供給方式
図12は、第5の実施形態に係るターゲット供給装置の一部を示す断面図である。第5の実施形態においては、リザーバ(図示せず)にノズル管74が接続されてもよい。ノズル管74に、ターゲット27が出力される開口74aが形成されてもよい。ノズル管74に、PZT素子76等の圧電性セラミックス素子が固定されてもよい。PZT素子76には、PZT駆動電源77が電気的に接続されてもよい。PZT駆動電源77は、ターゲット制御部52に信号線を介して接続されてもよい。さらに、第1の実施形態において説明した圧力調節器53(
図3参照)が、リザーバ内の液体ターゲット物質を加圧してもよい。
【0083】
ターゲット制御部52は、EUV光生成制御部5からの信号に従って、PZT駆動電源77に制御信号を送信してもよい。この制御信号に従って、PZT駆動電源77は、PZT素子76に駆動電圧を印加してもよい。
【0084】
ターゲット物質の出力は、PZT素子76に駆動電圧を印加することにより、所定タイミングでノズル管74を縮小させ、ターゲット物質をドロップレットの状態で出力するオンデマンド式でもよい。また、第1の実施形態において説明した圧力調節器53によって連続的にターゲット物質の噴流を発生させるとともに、駆動電圧を印加されたPZT素子76の振動によってターゲット物質の噴流を分離させ、ドロップレットの状態とする方式でもよい。
【0085】
第5の実施形態においても、ノズル管74を、ターゲット27が通過する貫通孔67aが形成されたカバー67で覆ってもよい。カバー67には、ターゲットが通過する貫通孔68fが形成された第1電極68が、第1リング69を介して固定されてもよい。カバー67は、接地電位(0V)に制御されてもよく、第1電極68は、カバー67の電位より低い電位に制御されてもよい。
【0086】
これにより、ターゲット供給装置のノズル管74付近に荷電粒子が到達することが抑制され得る。従って、ノズル管74の開口74aの周囲に荷電粒子が付着することが抑制され得るので、ノズル管74の開口74aの周囲の濡れ性が変化すること(例えば、ターゲット物質が付着しやすくなること)が抑制され得る。その結果、ターゲット27の軌道のばらつきを低減し得る。
【0087】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0088】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0089】
1…EUV光生成装置、2…チャンバ、3…レーザ装置、4…ターゲットセンサ、5…EUV光生成制御部、6…露光装置、11…EUV光生成システム、21…ウインドウ、22…レーザ光集光ミラー、22a…レーザ光集光光学系、23…EUV集光ミラー、24…貫通孔、25…プラズマ生成領域、26…ターゲット供給装置、27…ターゲット、28…ターゲット回収部、29…接続部、31、32、33…パルスレーザ光、34…レーザ光進行方向制御部、34a…ビームステアリングユニット、41…EUV集光ミラーホルダ、42、43…プレート、44…ビームダンプ、45…ビームダンプ支持部材、52…ターゲット制御部、53…圧力調節器、54…不活性ガスボンベ、55…DC高圧電源、57…第4電極電圧電源、57a…フィードスルー、58…パルス電圧電源、58a…フィードスルー、59…DC電源、59a…フィードスルー、59b…パルス電源、61…リザーバ、62…ノズル板、62b…先端部、63…電極、64…第3電極、64a…貫通孔、65…電気絶縁部材、65a…貫通孔、66…第2電極、66a…貫通孔、67…カバー、67a…貫通孔、68…第1電極、68a…第2リング、68b…メッシュ、68c…隙間、68d…プレート、68e、68f…貫通孔、69…第1リング、69a…シート、69b…貫通孔、70…第4電極、70a、70b…平板電極、74…ノズル管、76…PZT素子、77…PZT駆動電源、84…フランジ、85…カバー、85a…貫通孔、86…蓋、90a、90b、90c…中継端子、221…軸外放物面ミラー、222…平面ミラー、223、224…ホルダ、251…放射光、252…EUV光、291…壁、292…中間集光点、341、342…高反射ミラー、343、344…ホルダ