(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
0℃以上40℃以下における損失弾性率が100Pa以上10,000Pa以下であることを特徴とする請求項1に記載の嚥下・咀嚼困難者用食品の摂食補助用オルガノゲル。
請求項1〜3のいずれか一項に記載の嚥下・咀嚼困難者用食品の摂食補助用オルガノゲルと、摂食可能な食品の細断物又は破砕物とを含有することを特徴とする嚥下・咀嚼困難者用食品。
前記摂食可能な食品が、畜肉加工食品、魚肉加工食品、野菜類、果実類、麺類、ご飯、お粥、パン類、及び海藻類からなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項4又は5に記載の嚥下・咀嚼困難者用食品。
油脂及び油脂ゲル化剤を含有し、0℃以上40℃以下における貯蔵弾性率が1,000Pa以上100,000Pa以下である嚥下・咀嚼困難者用食品の摂食補助用オルガノゲルと、摂食可能な食品の細断物又は破砕物とを混合することを特徴とする嚥下・咀嚼困難者用食品の製造方法。
油脂及び油脂ゲル化剤を含有し、0℃以上40℃以下における貯蔵弾性率が1,000Pa以上100,000Pa以下である嚥下・咀嚼困難者用食品の摂食補助用オルガノゲルと、摂食可能な食品の細断物又は破砕物とを混合し、さらに破砕処理を行うことを特徴とする、嚥下・咀嚼困難者用食品のまとまり感の改善方法。
油脂及び油脂ゲル化剤を含有し、0℃以上40℃以下における貯蔵弾性率が1,000Pa以上100,000Pa以下である嚥下・咀嚼困難者用食品の摂食補助用オルガノゲルと、摂食可能な食品の細断物又は破砕物とを混合し、さらに破砕処理を行うことを特徴とする、嚥下・咀嚼困難者の食品の摂取を容易にする方法。
前記摂食補助用オルガノゲルが、摂食可能な食品の細断物又は破砕物と混合して使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の嚥下・咀嚼困難者用食品の摂食補助用オルガノゲル。
【背景技術】
【0002】
嚥下・咀嚼困難者、例えば要介護高齢者は、食べ物を咀嚼する機能や、嚥下する機能が衰えていることが多い。したがって、食材を食べやすい形態にするための様々な工夫が必要である。介護施設においては、古くから食材を細かく刻んだり、粉砕したりする調理が日常的に行われており、普通食以外に、キザミ食、極キザミ食、ミキサー食、ペースト食、液状食物等が提供されている。
【0003】
「キザミ食(Minced Diet)」とは、咀嚼機能に不具合がある者に配慮して、すでに咀嚼を行ったような形状に食材を細かく切り刻むことにより、咀嚼を行わなくても飲み込みやすく調製したものである。前記キザミ食は、介護施設等において、嚥下・咀嚼機能が低下した高齢者に広く提供されている。ところが近年、キザミ食は、誤嚥性肺炎発症のリスクを高めることが指摘されるようになった。また、普通食よりもむしろ咀嚼回数が増加したとの報告もある。このように、キザミ食が普通食よりも必ずしも飲み込みやすいものであるとは限らない、ということが最近になってわかってきた。
【0004】
そもそも食物を咀嚼するという行為は、食材を粉砕するということだけでなく、粉砕された食材が唾液とうまく混ざり合うことにより食塊(bolus)を形成することにより、飲み込みやすくするものである。しかし、食材を細かく切り刻むことによって逆に食塊形成が困難になり、結果的に誤嚥が惹起されてしまうことが明らかになった。特に高齢者の場合には、認知症や視覚不良による先行期障害や、唾液腺の感知・分泌不良により唾液が不足し、咀嚼により食塊を形成する能力が劣っていることが多いため、さらに食塊形成が困難になると考えられる。
【0005】
食品の嚥下しやすさを改善する方法として、例えば、飲食品の粘性を増大させることにより、口腔内における凝集性を改善する方法がある。咀嚼機能が重度に低下した高齢者には、通常、咀嚼がほぼ不要なミキサー食、ペースト食、液状食物等が提供されている。しかし、これらは固形分が非常に少ないために、誤嚥の危険性が高い。そこで、誤嚥を防止するために、例えば、ゼラチン、寒天、ジェランガム等の増粘剤を添加することにより、液状食物等を増粘させる方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし、特許文献1等に記載されているような水溶性の増粘剤のみを添加することは、液状食物を増粘させることには適しているが、キザミ食やミキサー食へ添加して、食塊形成が容易になる食品を製造することには適するものではない。
【0007】
そこで、キザミ食に変わる新しい食形態として、黒田らにより高齢者用のソフト食が開発された(例えば、非特許文献1参照。)。「ソフト食(Soft Food)」とは、普通食の形態でありつつも、摂食・嚥下障害のある人も咀嚼しやすく、かつ食塊形成が容易で嚥下しやすい食品である。具体的には、硬度及び凝集度が一定の範囲となるように調整されている。
【0008】
しかしながら、高齢者用のソフト食は、食品の硬度及び凝集度を調整するために、食材(素材)そのものが限定されてしまう上に、素材段階からの調理の工夫が必要であり、調理工程を根本的に変更する必要もある。つまり、高齢者用のソフト食は、キザミ食よりもはるかに調理に手間がかかるという問題がある。さらに、専用器具が必要な場合もある。このため、介護施設等において、キザミ食に代えて高齢者用のソフト食を導入することは、予算面や設備投資的な面から容易ではない。
【0009】
その他、嚥下・咀嚼困難者に供される食品の問題として、摂取カロリーの減少が挙げられる(例えば、非特許文献2参照)。例えば、食材を粉砕してペースト食を作るためには、多量のダシ汁等の水分を配合することになるため、加水により容量が増してしまうケースが多い。このため、普通食と同じ重量を摂取したとしても、実質的には減量となってしまい、摂取カロリーが減少してしまう。キザミ食の場合にも、刻むことにより容量が増大してしまい、普通食を摂取する場合と同じ重量を皿に盛り付けることが難しい場合が多く、やはり、摂取カロリーが減少してしまうという問題がある。
【0010】
一方で、粘性と弾性の両方を備えるゲルは、食品用基材として用いられている。ゲルは、少量の固体状成分が多量の連続相である液体成分を吸収して一定限度の容積まで膨張したものであり、液体よりもむしろ弾性固体としての挙動を示す。固体状成分はゲル化剤と呼ばれ、ゲル化剤の作る三次元網目構造によって液体が包含される。連続相の液体成分が水又は水溶液であるものをハイドロゲルという。一方、連続相が液状油又は有機溶剤であるものをオルガノゲルという。
【0011】
ゲルの貯蔵弾性率は、ゲルの内部に蓄えられた応力を保持する能力であり、動的挙動中におけるゲルの弾性を示す。一方、ゲルの損失弾性率は、ゲルに与えたエネルギーを熱として放出する能力であり、動的挙動中におけるゲルの粘性を消失エネルギーとして示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明の嚥下・咀嚼困難者用食品の摂食補助用オルガノゲルについて説明する。
本発明の嚥下・咀嚼困難者用食品の摂食補助用オルガノゲル(以下、「本発明の摂食補助用オルガノゲル」ということがある。)は、摂食可能な食品の細断物又は破砕物に混合して使用することにより、嚥下困難者や咀嚼困難者が、前記食品の摂取を容易にするもの(摂取を補助するもの)である。従来のキザミ食においては、食品の細断物がほぐれやすく、口腔内で食塊を形成しにくいことが、誤嚥が惹起される大きな要因と考えられる。本発明の摂食補助用オルガノゲルを、従来のキザミ食やペースト食等の細断物や破砕物を含有する食品と混合することにより、各固形分が適度に凝集し、ばらけることなく、まとまり感が付与された食品、つまり、嚥下・咀嚼困難者が摂取しやすい食品を得ることができる。
【0020】
また、本発明の摂食補助用オルガノゲルは、油脂を主成分とするため、普通食に比べて固形分の摂取量が少なくなりやすい従来のキザミ食やペースト食と混合した場合に、摂取カロリーの低減を防止することができる。
【0021】
本発明及び本願明細書において、「摂食可能な食品(Ingestible food)」とは、さらに調理を要することなく摂食することが可能な食品を意味し、加熱処理や味付け等の調理済みの食品と、果実等の生のまま摂食可能な食品とのいずれをも含む。また、「摂食可能な食品の細断物又は破砕物」とは、摂食可能な食品中の固形分を細断又はほぐしたり、破砕又はすり潰したりしたものを意味する。細断又は破砕処理後の固形分の大きさは特に限定されるものではないが、0.1mm以上5.0mm以下が好ましい。また、「摂食可能な食品の細断物又は破砕物」には、摂食可能な食品を包丁やカッター等で刻んだもの、摂食可能な食品を小さくほぐしたもの、摂食可能な食品をカッターミキサー等で破砕したもの、摂食可能な食品をすり潰したもの等が含まれる。
【0022】
なお、食品の破砕処理の方法は、特に限定されるものではなく、固形分を小さくする際に通常用いられるいずれの処理方法であってもよい。例えば、カッターミキサー等の破砕機を用いることにより、食品を破砕することができる。
【0023】
具体的には、本発明の摂食補助用オルガノゲルは、油脂及び油脂ゲル化剤を含有するオルガノゲルであって、0℃以上40℃以下における貯蔵弾性率が1,000Pa以上100,000Pa以下であることを特徴とする。本発明の摂食補助用オルガノゲルの0℃以上40℃以下における貯蔵弾性率は、1,000Pa以上50,000Pa以下であることが好ましく、2,000Pa以上50,000Pa以下であることがより好ましく、2,000Pa以上30,000Pa以下であることがさらに好ましい。0℃以上40℃以下の範囲における貯蔵弾性率が1,000Pa以上100,000Pa以下の範囲内であることにより、摂食可能な食品又は摂食可能な食品の細断物や破砕物と混合させやすく、また、前記食品中の細断物や破砕物がばらけない、まとまり感のある食品を得ることができる。0℃以上40℃以下の範囲における貯蔵弾性率が1,000Pa未満である場合には、摂食補助用オルガノゲルの流動性が過大となり、硬さが不足し、キザミ食等の細断物をまとめることができないおそれがある。0℃以上40℃以下の範囲における貯蔵弾性率が100,000Pa超である場合には、摂食補助用オルガノゲルが硬くなりすぎ、固形分と混合しにくくなるおそれがある。
【0024】
本発明の摂食補助用オルガノゲルは、20℃における貯蔵弾性率と40℃における貯蔵弾性率の差が、比較的小さいほうが好ましい。20℃(室温付近)における貯蔵弾性率と40℃(口腔内に近い温度)における貯蔵弾性率との差が大きくないことにより、前記摂食補助用オルガノゲルを混合した食品が、口腔内においてよりばらけにくく、かつ、口の中でべとつきにくくなる。例えば、本発明の摂食補助用オルガノゲルは、20℃における貯蔵弾性率と40℃における貯蔵弾性率の差が、20℃における貯蔵弾性率の0%以上50%以下であることが好ましく、0%以上30%以下であることがより好ましく、0%以上20%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明の摂食補助用オルガノゲルの0℃以上40℃以下における損失弾性率は、100Pa以上10,000Pa以下であることが好ましく、100Pa以上5,000Pa以下であることがより好ましく、200Pa以上5,000Pa以下であることがさらに好ましく、200Pa以上3,000Pa以下であることが最も好ましい。0℃以上40℃以下の範囲における損失弾性率が100Pa以上10,000Pa以下の範囲内であることにより、摂食可能な食品又は摂食可能な食品の細断物や破砕物と混合させやすく、また、前記食品中の細断物や破砕物がばらけない、まとまり感のある食品を得ることができる。0℃以上40℃以下の範囲における損失弾性率が100Pa未満である場合には、摂食補助用オルガノゲルの流動性が過大となり、硬さが不足し、キザミ食等の細断物をまとめることができないおそれがある。0℃以上40℃以下の範囲における損失弾性率が10,000Pa超である場合には、摂食補助用オルガノゲルが硬くなりすぎ、固形分と混合しにくくなるおそれがある。
【0026】
本発明の摂食補助用オルガノゲルは、20℃における損失弾性率と40℃における損失弾性率の差が、比較的小さいほうが好ましい。20℃(室温付近)における損失弾性率と40℃(口腔内に近い温度)における損失弾性率との差が大きくないことにより、前記摂食補助用オルガノゲルを混合した食品が、口腔内においてよりばらけにくく、かつ、口の中でべとつきにくくなる。例えば、本発明の摂食補助用オルガノゲルは、20℃における損失弾性率と40℃における損失弾性率の差が、20℃における損失弾性率の0%以上50%以下であることが好ましく、0%以上30%以下であることがより好ましく、0%以上20%以下であることがさらに好ましい。
【0027】
なお、本発明の摂食補助用オルガノゲルの貯蔵弾性率及び損失弾性率は、粘弾性測定装置を用いて常法により測定することができる。
【0028】
本発明の摂食補助用オルガノゲルは、常温で液状である油脂(以下、単に「液状油脂」ということがある。)と前記液状油脂よりも融点の高い油脂ゲル化剤とを混合して形成される。本発明の摂食補助用オルガノゲルの原料である液状油脂は、常温で液状の可食性の油脂であれば特に限定されるものではない。本発明において常温とは、15℃以上25℃以下を意味する。
また、本発明の摂食補助用オルガノゲルに含まれる油脂は、1種類であってもよく、複数種類であってもよい。本発明の摂食補助用オルガノゲルの原料としては、20℃で液状である油脂を用いることが好ましい。複数種類の油脂を用いる場合には、少なくとも1種類の油脂が20℃で液状である油脂であることが好ましく、全ての油脂が20℃で液状である油脂であることがより好ましい。
【0029】
本発明の摂食補助用オルガノゲルに含有させる20℃で液状の油脂としては、20℃で液状の植物油であることが好ましい。20℃で液状の植物油としては、具体的には、菜種油、オリーブ油、米油、ゴマ油、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、大豆油、ヒマワリ油、紅花油、炭素数8及び/又は10の中鎖脂肪酸を構成脂肪酸とする中鎖脂肪酸トリグリセリド、炭素数8及び/又は10の中鎖脂肪酸と炭素数12〜24の長鎖脂肪酸とを構成脂肪酸とするトリグリセリド、パーム分別油、及びこれらの混合油等が挙げられる。パーム分別油としては、具体的には、2段分別油であるパームオレイン(パームスーパーオレイン)等が例示できる。なお、パーム油を分別する方法には特に制限はなく、溶剤分別、乾式分別、乳化分別の何れの方法を用いてもよい。
【0030】
本発明の摂食補助用オルガノゲルに含有させる20℃で液状の油脂としては、これらのうちの1種を用いてもよく、2種以上を任意に混合した油脂を用いてもよい。特に、0℃において5.5時間保存後、液状かつ清澄である植物油、すなわち、サラダ油が好ましく、その中でも、風味にくせがなく、安定供給の点で菜種油がより好ましい。
【0031】
本発明の摂食補助用オルガノゲルに含有させる油脂ゲル化剤は、三次元網目構造を形成し、前記構造の内部に液状油脂を包含し得るものであれば特に限定されるものではなく、油脂ゲル化能を有する公知の物質の中から、液状油脂の種類等を考慮して適宜選択して用いることができる。油脂ゲル化剤としては、例えば、液状油脂よりも融点が高い極度硬化油、乳化剤、レシチン及びソルビタントリステアレートの混合物(例えば、非特許文献3参照)、米糠ワックス(例えば、非特許文献4又は5参照)、カルナウバワックス(例えば、非特許文献4参照)、キャンデリラワックス(例えば、非特許文献5又は8参照)、ステロール及びγ−オリザノールの混合物(例えば、非特許文献6又は7参照)等が挙げられる。本発明の摂食補助用オルガノゲルは、1種類の油脂ゲル化剤を含有していてもよく、2種類以上の油脂ゲル化剤を適宜組み合わせて含有していてもよい。
【0032】
本発明の摂食補助用オルガノゲルに含有させる油脂ゲル化剤は、融点が、液状油脂の融点よりも10℃以上高いものであることが好ましい。中でも、融点が50℃以上である油脂ゲル化剤がより好ましい。
【0033】
本発明において、油脂ゲル化剤として用いられる液状油脂よりも融点が高い極度硬化油としては、融点が50℃以上のものが好ましい。具体的には、極度硬化油の融点が50℃以上80℃以下のものが好ましく、55℃以上80℃以下のものがより好ましく、55℃以上75℃以下のものがさらに好ましい。
【0034】
本発明において、油脂ゲル化剤として用いられる乳化剤としては、融点が50℃以上のものが好ましい。具体的には、乳化剤の融点が50℃以上85℃以下のものが好ましい。乳化剤としては、例えば、DES−70V(理研ビタミン株式会社製、グリセリンモノ脂肪酸エステル、融点:60℃)、ポエムB−100(理研ビタミン株式会社製、グリセリンモノ脂肪酸エステル、融点:69〜75℃)、ポエムB−200(理研ビタミン株式会社製、グリセリンモノ脂肪酸エステル、融点:75〜85℃)、リケマールPB−100(理研ビタミン株式会社製、プロピレングリコール脂肪酸エステル、融点:54〜60℃)等が挙げられる。
【0035】
本発明の摂食補助用オルガノゲルは、油脂ゲル化剤として、ベヘン酸組成が45%以上55%以下であり、かつ融点が50℃以上である極度硬化油と、米糠ワックスと、キャンデリラワックスと、カルナウバワックスと、融点が50℃以上の乳化剤と、ステロール及びγ−オリザノールの混合物と、レシチン及びソルビタントリステアレートの混合物とからなる群より選択される1種又は2種以上の物質を含有することが好ましい。
【0036】
液状油脂と油脂ゲル化剤の含有量比を適宜調整することにより、本発明の摂食補助用オルガノゲルの貯蔵弾性率及び損失弾性率を所望の範囲内に調整することができる。本発明の摂食補助用オルガノゲルにおける油脂ゲル化剤の含有量は、液状油脂に対して1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
本発明の摂食補助用オルガノゲルには、油脂や油脂ゲル化剤の他にも、必要に応じて、本発明の機能を損なわない範囲で、一般的に食品に用いられる乳化剤、脱脂粉乳、大豆蛋白、糖類、澱粉、化工澱粉、デキストリン、トコフェロールやビタミンC等の抗酸化剤、着色剤、香料、増粘剤等を配合することができる。増粘剤としては、例えば、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン等が挙げられる。
【0038】
本発明の摂食補助用オルガノゲルは、油脂と油脂ゲル化剤とを混合することにより、形成することができる。用いる油脂ゲル化剤の種類によっては、両者を均一に混合するために、油脂と油脂ゲル化剤の混合物を加熱し、油脂ゲル化剤を融解させて混合させた後、冷却することが好ましい。その他、加熱した油脂に、加熱溶融させた油脂ゲル化剤を混合してもよい。油脂と油脂ゲル化剤の混合物を加熱融解させる温度は、油脂ゲル化剤の融点を考慮して適宜決定することができるが、50℃以上100℃以下に加熱することが好ましく、60℃以上90℃以下に加熱することがより好ましい。
【0039】
加熱融解させた油脂と油脂ゲル化剤の混合物は、徐々に放冷させてもよく、急速に冷却させてもよい。急冷混捏によりゲル化可能な場合には、加熱融解させた油脂と油脂ゲル化剤の混合物を急冷混捏処理することが好ましい。急冷混捏するとゲル化しない場合には、徐々に放冷させることが好ましい。
【0040】
急冷混捏処理は、通常、マーガリンやショーニングを製造する場合と同様にして行うことができる。例えば、冷却条件は、−0.5℃/分以上、好ましくは−5℃/分以上とすることができる。
【0041】
また、急冷混捏処理は、通常、マーガリンやショーニングを製造する場合に用いられている急冷混捏機を用いることにより行うことができ、必要に応じてガス、例えば空気、窒素等を混入することもできる。例えば、マーガリン製造機として用いられているボテーター、コンビネーター、パーフェクター、オンレーター等の密閉型連続式チューブ冷却機や、プレート型熱交換機等を使用することにより、急冷混捏処理を行うことができる。また、急冷混捏処理には、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組合せを用いることもできる。
【0042】
次に、本発明の嚥下・咀嚼困難者用食品及びその製造方法について説明をする。
本発明の嚥下・咀嚼困難者用食品は、本発明の摂食補助用オルガノゲルと、摂食可能な食品の細断物又は破砕物とを含有することを特徴とする。
【0043】
摂食可能な食品としては、例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、馬肉等の畜肉類や、アジ、サバ、サンマ、シーラ、カラスガレイ、カツオ、キハダマグロ、カジキマグロ、シャケ、タラ、メルルーサ等の魚類、キャベツ、にんじん、玉ねぎ、ジャガイモ、ホウレンソウ、レタス、トマト等の野菜類、リンゴ、ミカン、梨、パイナップル、イチゴ、柿、スイカ、メロン等の果物、ワカメ、昆布、ヒジキ等の海藻類、ごはん、お粥、パン、うどん、そば、パスタ等を調理した食品が挙げられる。果物やトマト、刺身用の魚類等の生で食することが可能なものについても、摂食可能な食品に含まれる。その他、摂食可能な食品には、ハンバーグ等の畜肉類を加工した畜肉加工食品、マグロフレークやつみれ等の魚肉類を加工した魚肉加工食品等の調理済み加工食品も含まれる。本発明の嚥下・咀嚼困難者用食品としては、畜肉加工食品、魚肉加工食品、野菜類、果実類、麺類、ご飯、お粥、パン類、及び海藻類からなる群より選択される1種又は2種以上の食品又はその破砕物と、本発明の摂食補助用オルガノゲルとを含有することが好ましい。
【0044】
本発明の嚥下・咀嚼困難者用食品は、食品中の小さな固形分がばらけず、まとまり感のある食品である。これは、細断や破砕により固形分を小さくした食品と、本発明の摂食補助用オルガノゲルとを混合することにより、固形分同士が適度に凝集し、食品をまとまりやすくする。すなわち、食品のまとまり感を改善することができるためである。このため、本発明の嚥下・咀嚼困難者用食品は、食品を摂食する際に、こぼさずに容易に口に運ぶことができ、かつ、口腔内でも固形分がばらけにくく、食塊形成が容易であり、嚥下・咀嚼困難者にも嚥下しやすい。さらに、加水したペースト食であっても、摂取カロリーの低減を防止することができる。
【0045】
本発明の嚥下・咀嚼困難者用食品は、食品の小さな固形分と本発明の摂食補助用オルガノゲルとを混合することにより製造することができる。例えば、予め細かく刻んだり、カッターミキサー等の破砕機を使用して破砕した食品に、本発明の摂食補助用オルガノゲルを混合することにより、本発明の嚥下・咀嚼困難者用食品を製造することができる。破砕処理前の固形分が大きな食品と、本発明の摂食補助用オルガノゲルとを混合した後、カッターミキサー等により破砕処理を行うことによっても、本発明の嚥下・咀嚼困難者用食品を製造することができる。また、予め固形分を小さくした食品と本発明の摂食補助用オルガノゲルとを混合した後、さらに、ミキサー等により破砕処理を行ってもよい。
【0046】
本発明の嚥下・咀嚼困難者用食品は、食品の形状でおおまかに分類をすると、ペースト食とまとめ食に分けられる。
ここで、「ペースト食(Paste Food)」とは、加水した摂食可能な食品の細断物又は破砕物をカッターミキサー等で破砕した、流動性の高い食品のことをいう。一方、「まとめ食(Aggregated Food)」とは、摂食可能な食品の細断物又は破砕物を含有し、流動性を有さず又は流動性が低く、固形分がばらけにくい食品のことをいう。
【0047】
例えば、ペースト食は、摂食可能な食品、好ましくは固形分が細かく刻まれた食品(いわゆるキザミ食)、本発明の摂食補助用オルガノゲル、及びだし汁等の水分の混合物を混合・破砕することにより製造することができる。
ペースト食の配合は、どの程度の流動性のペースト食にするか、また、原料として使用する食品の種類や、含有する油分や水分等により、適宜調整することができる。例えば、摂食可能な食品の細断物又は破砕物100質量部、本発明の摂食補助用オルガノゲル1質量部以上100質量部以下(好ましくは1質量部以上50質量部以下)、及び水200質量部以上1000質量部以下という配合を例示することができる。
【0048】
ペースト食の製造方法としては、例えばハンバーグのペースト食の場合、ブロック状に切った調理済みハンバーグに、本発明の摂食補助用オルガノゲルとだし汁を加えた後、フードプロセッサーで10秒間〜1分間、破砕・混合することにより製造することができる。
【0049】
一方、まとめ食は、固形分が細かく刻まれた食品(いわゆるキザミ食)と、本発明の摂食補助用オルガノゲルとを混合することにより製造することができる。必要に応じて、混合後フードプロセッサーで破砕・混合をしてもよい。また、まとめ食は、摂食可能な食品と本発明の摂食補助用オルガノゲルとを混合し、その混合物をフードプロセッサーで破砕・混合することにより製造することもできる。水を適宜配合することにより、得られる食品の流動性を調整することができる。
【0050】
まとめ食の配合は、原料として使用する食品の種類や、含有する油分や水分等により、適宜調整することができる。例えば、摂食可能な食品の細断物又は破砕物100質量部、嚥下・咀嚼困難者用食品の摂食補助用オルガノゲル5質量部以上100質量部以下(好ましくは5質量部以上50質量部以下)という配合を例示することができる。また、必要に応じて、だし汁等の水分を添加することもできる。
【0051】
まとめ食の製造方法としては、例えば鶏肉のまとめ食の場合、ボイルした鶏肉のササミに、本発明の摂食補助用オルガノゲルを加えた後、フードプロセッサーで10秒間〜1分間、破砕・混合することにより製造することができる。
また、キャベツのまとめ食の場合、湯通しをしたキャベツを約5mm以下の大きさに刻んだ後、本発明の摂食補助用オルガノゲルを加え、混合することにより製造することができる。
【0052】
その他、本発明の嚥下・咀嚼困難者用食品は、必要に応じて、本発明の機能を損なわない範囲で、一般的に食品に添加されるトコフェロールやビタミンC等の抗酸化剤、塩、砂糖等の調味料、増粘剤等を配合することができる。増粘剤としては、上記で列挙されたものを用いることができる。
【実施例】
【0053】
(実施例1、比較例1〜2)
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
<摂食補助用オルガノゲルの製造>
菜種油(日清オイリオグループ株式会社製、商品名:日清菜種サラダ油(S))と、ベヘン酸組成が45〜55%であり、かつ融点が50℃以上である極度硬化油とを、質量比が菜種油:極度硬化油脂=9:1となるように容器に入れ、80℃で加熱溶解し、混合した。その後、前記容器を氷水中へ入れて混捏することにより、急冷混捏処理したオルガノゲル(実施例1)を50g得た。
【0055】
<貯蔵弾性率及び損失弾性率の測定>
上記で製造したオルガノゲル(実施例1)の貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定した。比較対象として、ラード(ベル食品株式会社製、商品名:ラード)(比較例1)及びマーガリン(雪印株式会社製、商品名:ネオソフト)(比較例2)の貯蔵弾性率及び損失弾性率も測定した。
貯蔵弾性率[G’(ジープライム)]及び損失弾性率[G’’(ジーダブルプライム)]は、ストレス制御式レオメーターであるレオストレスRS1(HAKKE社製)を用いて測定した。具体的には、センサーに直径3.5cmのコーン型プレートを使用し、まず、0℃に保持された測定器のプレート上に、各サンプルを乗せた。次に、ギャップ幅0.105mmに調整した後、0℃でサンプルを2分間保持した。その後、10℃/分で昇温しながら、0℃から40℃の貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)を測定した。
【0056】
貯蔵弾性率(G’)の測定結果を表1に、損失弾性率(G’’)の測定結果を表2に、それぞれ示す。
この結果、20℃から40℃における貯蔵弾性率の変化率(20℃における貯蔵弾性率に対する、20℃における貯蔵弾性率と40℃における貯蔵弾性率の差の割合の絶対値)は、オルガノゲル(実施例1)は6.2%であり、非常に小さかった。しかし、ラード(比較例1)は99.6%、マーガリン(比較例2)は99.99%と非常に大きかった。
一方、20℃から40℃における損失弾性率の変化率(20℃における損失弾性率に対する、20℃における損失弾性率と40℃における損失弾性率の差の割合の絶対値)は、オルガノゲル(実施例1)は8.3%であり、非常に小さかった。しかし、ラード(比較例1)は99.8%、マーガリン(比較例2)は99.9%と非常に大きかった。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
<オルガノゲル(実施例1)を用いた蒲鉾のまとめ食の製造及び評価>
上記で製造したオルガノゲル(実施例1)と蒲鉾を粉砕混合し、蒲鉾のまとめ食を製造し、評価した。
具体的には、蒲鉾(紀文株式会社製、商品名:まろやか仕込み 鯛入りお造り蒲鉾 白)180gに、オルガノゲル(実施例1)を30g加えた後、フードプロセッサーで3分間、破砕・混合することにより、蒲鉾のまとめ食を製造した。得られた蒲鉾のまとめ食について、外観及び食感を評価した。
この結果、オルガノゲル(実施例1)を用いて製造した蒲鉾のまとめ食は、外観と食感がともに良好なものであった。具体的には、ばらけない、まとまり感のあるものであった。また、食してみると、口の中でまとまり感が持続し、べとつきもないものであり、味の点でもコクが増し、おいしいものであった。
さらに、前記蒲鉾のまとめ食は、60℃の恒温配膳車中で1時間保存した後の外観も良好であり、食してみると、口の中でまとまり感が持続し、べとつきもないものであった。
【0060】
<蒲鉾の破砕食(無添加)の製造及び評価>
対照として、オルガノゲル(実施例1)を添加せず、蒲鉾(紀文株式会社製、商品名:まろやか仕込み 鯛入りお造り蒲鉾 白)180gをそのままフードプロセッサーで3分間、破砕・混合することにより、蒲鉾の破砕食を製造した。
この結果、得られた蒲鉾破砕食は、ばらけてまとまり感のないものであった。また、得られた蒲鉾破砕食を食してみると、口の中でばらけた。
【0061】
<ラード(比較例1)を用いた蒲鉾のまとめ食の製造及び評価>
蒲鉾(紀文株式会社製、商品名:まろやか仕込み 鯛入りお造り蒲鉾 白)180gに、ラード(比較例1)を30g加えた後、フードプロセッサーで3分間、破砕・混合することにより、蒲鉾のまとめ食(蒲鉾のラード和え)を製造した。
得られた蒲鉾のラード和えは、ばらけない、まとまり感のあるものであった。しかし、得られた蒲鉾のラード和えを食してみると、口の中でまとまり感が持続せず、油っぽさを感じるものであった。
また、蒲鉾のラード和えを60℃の恒温配膳車中で1時間保存した後の外観を観察したところ、油がしみ出ていた。また、食してみると、口の中でまとまり感が持続せず、油っぽさを感じるものであった。
【0062】
<マーガリン(比較例2)を用いた蒲鉾のまとめ食の製造及び評価>
蒲鉾(紀文株式会社製、商品名:まろやか仕込み 鯛入りお造り蒲鉾 白)180gに、マーガリン(比較例2)を30g加えた後、フードプロセッサーで3分間、破砕・混合することにより、蒲鉾のまとめ食(蒲鉾のマーガリン和え)を製造した。
得られた蒲鉾のマーガリン和えは、ばらけない、まとまり感のあるものであった。しかし、得られた蒲鉾のマーガリン和えを食してみると、口の中でまとまり感が持続せず、油っぽさを感じるものであった。
また、蒲鉾のマーガリン和えを60℃の恒温配膳車中で1時間保存した後の外観を観察したところ、油がしみ出ていた。また、食してみると、口の中でまとまり感が持続せず、油っぽさを感じるものであった。
【0063】
(実施例2〜3)
<摂食補助用オルガノゲルの製造>
菜種油(日清オイリオグループ株式会社製、商品名:日清菜種サラダ油(S))と米糠ワックス(東亜化成株式会社製、商品名:TOWAX−3F9、融点80.9℃)とを、質量比が菜種油:米糠ワックス=97:3となるように容器に入れ、100℃で加熱溶解し、混合した。その後、放冷することにより、オルガノゲル(実施例2)を50g得た。
【0064】
<摂食補助用オルガノゲルの製造>
菜種油(日清オイリオグループ株式会社製、商品名:日清菜種サラダ油(S))とキャンデリラワックス(東亜化成株式会社製、商品名:TOWAX−4F2、融点72.0℃)とを、質量比が菜種油:
キャンデリラワックス=97:3となるように容器に入れ、80℃で加熱溶解し、混合した。その後、放冷することにより、オルガノゲル(実施例3)を50g得た。
【0065】
<貯蔵弾性率及び損失弾性率の測定>
実施例1のオルガノゲルと同様にして、実施例2〜3のオルガノゲルの貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定した。貯蔵弾性率(G’)の測定結果を表3に、損失弾性率(G’’)の測定結果を表4に、それぞれ示す。
この結果、20℃から40℃における貯蔵弾性率の変化率は、オルガノゲル(実施例2)では49.6%、オルガノゲル(実施例3)では46.9%であった。一方、20℃から40℃における損失弾性率の変化率は、オルガノゲル(実施例2)では9.7%、オルガノゲル(実施例3)では2.3%あり、非常に小さかった。
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
<オルガノゲル(実施例2)を用いた蒲鉾のまとめ食の製造及び評価>
上記で製造したオルガノゲル(実施例2)と蒲鉾を粉砕混合し、蒲鉾のまとめ食を製造し、評価した。
具体的には、蒲鉾(紀文株式会社製、商品名:まろやか仕込み 鯛入りお造り蒲鉾 白)180gに、オルガノゲル(実施例2)を30g加えた後、フードプロセッサーで3分間、破砕・混合することにより、蒲鉾のまとめ食を製造した。得られた蒲鉾のまとめ食について、外観及び食感を評価した。
この結果、オルガノゲル(実施例2)を用いて製造した蒲鉾のまとめ食は、外観と食感がともに良好なものであった。具体的には、ばらけない、まとまり感のあるものであった。また、食してみると、口の中でまとまり感が持続し、べとつきもないものであり、味の点でもコクが増し、おいしいものであった。
さらに、前記蒲鉾のまとめ食は、60℃の恒温配膳車中で1時間保存した後の外観も良好であり、食してみると、口の中でまとまり感が持続し、べとつきもないものであった。
【0069】
<オルガノゲル(実施例3)を用いた蒲鉾のまとめ食の製造及び評価>
上記で製造したオルガノゲル(実施例3)と蒲鉾を粉砕混合し、蒲鉾のまとめ食を製造し、評価した。
具体的には、蒲鉾(紀文株式会社製、商品名:まろやか仕込み 鯛入りお造り蒲鉾 白)180gに、オルガノゲル(実施例3)を30g加えた後、フードプロセッサーで3分間、破砕・混合することにより、蒲鉾のまとめ食を製造した。得られた蒲鉾のまとめ食について、外観及び食感を評価した。
この結果、オルガノゲル(実施例3)を用いて製造した蒲鉾のまとめ食は、外観と食感がともに良好なものであった。具体的には、ばらけない、まとまり感のあるものであった。また、食してみると、口の中でまとまり感が持続し、べとつきもないものであり、味の点でもコクが増し、おいしいものであった。
さらに、前記蒲鉾のまとめ食は、60℃の恒温配膳車中で1時間保存した後の外観も良好であり、食してみると、口の中でまとまり感が持続し、べとつきもないものであった。
【0070】
(実施例4〜8)
<摂食補助用オルガノゲルの製造>
菜種油(日清オイリオグループ株式会社製、商品名:日清菜種サラダ油(S))と融点が50℃以上の乳化剤(太陽化学株式会社製、商品名:TAISET26、ベヘン酸グリセリルを20%、オクタステアリン酸グリセリルを20%、及び硬化パーム油を60%含む)とを、質量比が菜種油:乳化剤=95:5となるように容器に入れ、80℃で加熱溶解し、混合した。その後、放冷することでオルガノゲル(実施例4)を50g得た。
【0071】
<摂食補助用オルガノゲルの製造>
菜種油(日清オイリオグループ株式会社製、商品名:日清菜種サラダ油(S))と融点が50℃以上の乳化剤(太陽化学株式会社製、商品名:TAISET26、ベヘン酸グリセリルを20%、オクタステアリン酸グリセリルを20%、及び硬化パーム油を60%含む)とを、質量比が菜種油:乳化剤=93:7となるように容器に入れ、80℃で加熱溶解し、混合した。その後、放冷することでオルガノゲル(実施例5)を50g得た。
【0072】
<摂食補助用オルガノゲルの製造>
菜種油(日清オイリオグループ株式会社製、商品名:日清菜種サラダ油(S))と融点が50℃以上の乳化剤(太陽化学株式会社製、商品名:TAISET26、ベヘン酸グリセリルを20%、オクタステアリン酸グリセリルを20%、及び硬化パーム油を60%含む)とを、質量比が菜種油:乳化剤=90:10となるように容器に入れ、80℃で加熱溶解し、混合した。その後、放冷することでオルガノゲル(実施例6)を50g得た。
【0073】
<摂食補助用オルガノゲルの製造>
菜種油(日清オイリオグループ株式会社製、商品名:日清菜種サラダ油(S))と融点が50℃以上の乳化剤(太陽化学株式会社製、商品名:TAISET50、ベヘン酸グリセリルを50%及びオクタステアリン酸グリセリルを50%含む)とを、質量比が菜種油:乳化剤=95:5となるように容器に入れ、80℃で加熱溶解し、混合した。その後、放冷することでオルガノゲル(実施例7)を50g得た。
【0074】
<摂食補助用オルガノゲルの製造>
菜種油(日清オイリオグループ株式会社製、商品名:日清菜種サラダ油(S))と融点が50℃以上の乳化剤(太陽化学株式会社製、商品名:TAISET50、ベヘン酸グリセリルを50%及びオクタステアリン酸グリセリルを50%含む)とを、質量比が菜種油:乳化剤=93:7となるように容器に入れ、80℃で加熱溶解し、混合した。その後、放冷することでオルガノゲル(実施例8)を50g得た。
【0075】
<貯蔵弾性率及び損失弾性率の測定>
実施例1のオルガノゲルと同様にして、実施例4〜8のオルガノゲルの貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定した。貯蔵弾性率[G’(ジープライム)]の測定結果を表5に、損失弾性率[G’’(ジーダブルプライム)]の測定結果を表6に、それぞれ示す。
この結果、20℃から40℃における貯蔵弾性率の変化率(20℃における損失弾性率に対する、20℃における貯蔵弾性率と40℃における貯蔵弾性率の差の割合の絶対値)は、実施例4では38.1%、実施例5では53.2%、実施例6では38.8%、実施例7では4.8%、実施例8では18.8%であった。一方、20℃から40℃における損失弾性率の変化率(20℃における損失弾性率に対する、20℃における貯蔵弾性率と40℃における貯蔵弾性率の差の割合の絶対値)は、実施例4では27.5%、実施例5では34.8%、実施例6では10.9%、実施例7では27.2%、実施例8では1.8%であった。
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】
<オルガノゲル(実施例4〜実施例8)を用いた蒲鉾のまとめ食の製造及び評価>
上記で製造したオルガノゲル(実施例4〜実施例8)と蒲鉾を粉砕混合し、蒲鉾のまとめ食を製造し、評価した。
具体的には、蒲鉾(紀文株式会社製、商品名:まろやか仕込み 鯛入りお造り蒲鉾 白)180gに、実施例4〜実施例8のいずれかのオルガノゲルを30g加えた後、フードプロセッサーで3分間、破砕・混合することにより、実施例4〜実施例8のいずれかのオルガノゲルを含有する蒲鉾のまとめ食を製造した。得られた蒲鉾のまとめ食について、外観及び食感を評価した。
この結果、オルガノゲル(実施例4〜実施例8)を用いて製造した蒲鉾のまとめ食は、外観と食感がともに良好なものであった。具体的には、ばらけない、まとまり感のあるものであった。また、食してみると、口の中でまとまり感が持続し、べとつきもないものであり、味の点でもコクが増し、おいしいものであった。