(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マイクロ波侵入阻止管は、前記マイクロ波発生器の発生したマイクロ波の周波数よりも大きい遮断周波数を有する管である、請求項1から請求項3のいずれか記載の化学反応装置。
前記マイクロ波侵入阻止管は、前記リアクターを主導波管、当該マイクロ波侵入阻止管を副導波管とした場合における結合度が−10(dB)以下となる長さ及び断面の大きさの管である、請求項4または請求項5記載の化学反応装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による化学反応装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0019】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による化学反応装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による化学反応装置は、リアクターの内容物に対してマイクロ波を照射するものであり、そのリアクター内の液面レベル位置を検出可能なものである。
【0020】
図1は、本実施の形態による化学反応装置1の構成を示す図である。本実施の形態による化学反応装置1は、混合部12と、リアクター13と、マイクロ波発生器14と、導波管15と、マイクロ波制御部16と、触媒分離部17と、処理液貯留槽18と、マイクロ波侵入阻止管51と、検出部52とを備える。
【0021】
混合部12は、原料と固体触媒とを混合させる。混合部12は、原料等と反応剤とを混合させてもよい。原料は、複数の物質を含むものであってもよい。例えば、リアクター13においてエステル化を行う場合には、油脂とアルコールが原料であってもよい。その原料と、固体触媒とは、
図1で示されるように、ポンプ11によって混合部12に供給されてもよく、あるいは、他の方法によって混合部12に供給されてもよい。混合部12は、例えば、羽根状の部材や翼状の部材、スクリュー状の部材を回転させることによって、2以上の物質を混合してもよい。なお、本実施の形態では、原料と混合される触媒が固体触媒(不均一系触媒)である場合について説明するが、触媒は液状の触媒(均一系触媒)であってもよい。また、固体触媒は、リアクター13内で流動床を形成してもよく、あるいは、そうでなくてもよい。また、その固体触媒の形状は問わない。固体触媒の形状は、例えば、無定型の粒状、円柱状(中空であってもよく、そうでなくてもよい)、球状、ペレット状、リング状、シェル状等であってもよい。また、その固体触媒は、例えば、マイクロ波吸収性もしくはマイクロ波感受性を有してもよく、または、そうでなくてもよい。固体触媒がマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する場合には、後述するリアクター13の内部においてマイクロ波を照射した際に、固体触媒がマイクロ波によって加熱されることになり、その固体触媒近傍での化学反応が促進されることになる。なお、そのマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性については、照射されるマイクロ波の周波数やリアクター13の内部の温度等に依存することになる。すなわち、使用するマイクロ波の周波数、及び原料を反応させるリアクター13の内部の温度において、誘電損失係数の高いものがマイクロ波吸収性の高いものとなる。したがって、例えば、そのようなマイクロ波吸収性の高い物質を含む固体触媒を用いるようにしてもよい。例えば、2.45GHzのマイクロ波が照射される場合には、マイクロ波吸収性を有する物質として、フラーレンを除くカーボン類(例えば、グラファイト、カーボンナノチューブ、または活性炭など)や、鉄、ニッケル、コバルト、フェライト、または、金属酸化物等がある。したがって、固体触媒は、そのようなマイクロ波吸収性を有する物質を含むものであってもよい。具体的には、固体触媒は、そのようなマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する物質と、金属もしくは金属酸化物とを組み合わせたコンポジットであってもよく、そのようなマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する物質と、アルカリ触媒もしくは酸触媒等の触媒とを組み合わせたコンポジットであってもよく、または、マイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する物質と、アルカリ触媒もしくは酸触媒等の触媒と、金属もしくは金属酸化物とを組み合わせたコンポジットであってもよい。そのコンポジット化は、例えば、物理吸着によって行われてもよく、化学結合によって行われてもよく、合金化によって行われてもよく、その他の方法によって行われてもよい。また、混合部12において、リアクター13での反応に備えて、予備的な加熱を行ってもよく、あるいは、行わなくてもよい。その予備的な加熱を行う場合には、原料等がリアクター13に入る時点において所望の温度または所望の温度幅となるように、混合部12における予備的な加熱の温度が制御されることが好適である。なお、混合部12での予備加熱が行われない場合には、その予備加熱に対応する加熱がリアクター13において行われてもよい。混合部12で混合された原料と固体触媒は、リアクター13の上流側に入れられる。
【0022】
リアクター13は、液状の内容物が、上方に未充填空間を有した状態で水平方向に流れる横型のフロー式の反応器である。なお、リアクター13において内容物が水平方向に流れるとは、リアクター13が、内容物が鉛直方向に流れる縦型のフロー式の反応器ではないことを意味するものであり、厳密に水平方向に流れなくてもよい。内容物が全体として水平に近い方向に流れるものであればよい。例えば、リアクター13は、上流側から下流側に向かって傾斜していてもよい。その内容物は、例えば、原料と触媒との混合物である。そのリアクター13の内部を、混合部12で混合された、原料と触媒とが流れることになる。なお、リアクター13における化学反応によって、原料から生成物が生成されるため、リアクター13の内容物には生成物が含まれていると考えてもよい。すなわち、その内容物は、原料及び/または生成物であると言うこともできる。また、内容物の上方に未充填空間が存在するため、内容物は通常、気体以外のものである。また、内容物は、リアクター13内部において、流動性を有するものであるため、固体(例えば、粉体や粒状体等)以外のものである。したがって、内容物は、液状のものである。その液状の内容物は、例えば、水や油、水溶液、コロイド溶液等のように、流動性の高いものであってもよく、あるいは、スラリーや懸濁液のように、流動性の低いものであってもよい。なお、リアクター13の内容物は、後述するように、マイクロ波侵入阻止管51を流通するため、液状の内容物は、流動性が低かったとしても、外部から振動を加えることなく、ある程度の時間の経過に応じてマイクロ波侵入阻止管51を流動する程度の流動性を有していることが好適である。すなわち、液状の内容物は、外部からの振動がなくても、管内を流動しうる程度の流動性を有していることが好適である。リアクター13の内壁は、マイクロ波を反射する物質で構成されていることが好適である。マイクロ波を反射する物質としては、例えば、金属がある。このリアクター13の内部の構成については後述する。
【0023】
マイクロ波発生器14は、マイクロ波を発生する。本実施の形態による化学反応装置1は、1個のマイクロ波発生器14を備えていてもよく、あるいは、2個以上のマイクロ波発生器14を備えていてもよい。そのマイクロ波の周波数は限定されるものではないが、例えば、2.45GHzであってもよく、5.8GHzであってもよく、24GHzであってもよく、913MHzであってもよく、その他の300MHzから300GHzの範囲内の周波数であってもよい。
【0024】
導波管15は、マイクロ波発生器14の発生したマイクロ波を、リアクター13の未充填空間に伝送する。導波管15は、通常、
図1で示されるように、マイクロ波発生器14の個数と同じ個数だけ存在することになる。なお、導波管15は、マイクロ波発生器14が発生するマイクロ波の周波数に応じた規格のものを使用することが好適である。
【0025】
マイクロ波制御部16は、後述する温度測定部25が測定した温度に応じて、リアクター13に照射するマイクロ波の出力を制御する。このマイクロ波制御部16による制御によって、リアクター13の内部を所望の温度または所望の温度幅に維持することが可能となる。
【0026】
触媒分離部17は、リアクター13における反応後の生成物から触媒を分離する。原料と混合された触媒が固体触媒である場合には、例えば、フィルタによって固体触媒を分離してもよく、固体触媒と生成物の一方を沈澱させることによって固体触媒を分離してもよい。また、固体触媒が磁性体を含むものである場合には、磁石(永久磁石でもよく、電磁石でもよい)によって固体触媒を吸着することによって、固体触媒を分離してもよい。なお、分離された固体触媒は、適宜、再利用することができうる。また、液体の触媒を用いた場合には、触媒分離部17において、蒸留や抽出、中和を行うことによって、触媒を分離してもよい。
【0027】
処理液貯留槽18には、触媒分離部17において触媒の分離された生成物が入れられる。そして、適宜、最終的な製造物と副生成物等に分けられることになる。例えば、原料が遊離脂肪酸であり、リアクター13においてエステル化が行われた場合には、バイオディーゼル燃料である製造物と、水である副生成物とが得られることになる。その場合には、酸触媒が用いられる。また、例えば、原料がトリグリセリドであり、リアクター13においてエステル交換が行われた場合には、バイオディーゼル燃料である製造物と、グリセリンである副生成物とが得られることになる。その場合には、アルカリ触媒が用いられる。
【0028】
なお、リアクター13の後段に、リアクター13での反応後の物質を冷却する図示しない冷却器を備えてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。前者の場合には、例えば、その冷却器は、リアクター13での反応後の物質を水冷するものであってもよい。
【0029】
マイクロ波侵入阻止管51は、リアクター13と接続され、内容物が流通できる管である。また、マイクロ波侵入阻止管51は、マイクロ波発生器14の発生したマイクロ波の侵入を阻止できる属性を有する管である。なお、マイクロ波の侵入を阻止できるとは、マイクロ波の進入を完全に阻止できること、すなわち、マイクロ波侵入阻止管51の内部には全くマイクロ波が侵入できないことであってもよく、あるいは、マイクロ波侵入阻止管51が接続されているリアクター13の箇所よりもマイクロ波の強度を低減できることであってもよい。後者の場合には、マイクロ波侵入阻止管51に少しはマイクロ波が侵入することになるが、その侵入のレベルは、後述する液面レベル位置の検出に影響がなく、また、リアクター13内部におけるマイクロ波の照射に影響のない範囲であることが好適である。マイクロ波侵入阻止管51の断面形状は、例えば、円形であってもよく、矩形であってもよく、あるいは、その他の形状であってもよい。ただし、マイクロ波侵入阻止管51は、リアクター13の内容物が流通しうるだけの径を有していることが好適である。また、マイクロ波侵入阻止管51が接続されるリアクター13の位置は、内容物の液面レベル位置よりも下側(すなわち、鉛直方向における下側である)であれば、どこであってもよい。ただし、その液面レベル位置が変動する場合には、最も低い液面レベル位置よりも下側で接続されることが好適である。また、マイクロ波侵入阻止管51は、リアクター13の最下部でリアクター13と接続されてもよい。そのようにすることで、未充填空間から最も遠い位置で、マイクロ波侵入阻止管51をリアクター13に接続することができる。その結果、リアクター13内においても、特にマイクロ波の強度が弱いであろうと考えられる位置でマイクロ波侵入阻止管51をリアクター13に接続することができ、マイクロ波侵入阻止管51に侵入するマイクロ波をより低減することができると考えられる。なお、マイクロ波の侵入を阻止できるマイクロ波侵入阻止管51の属性は、通常、マイクロ波侵入阻止管51の断面の大きさの属性、例えば、その断面における直径や半径に関する属性(断面が円形の場合)、または、その断面における縦横の長さに関する属性(断面が矩形の場合)である。また、その属性は、マイクロ波侵入阻止管51の長さを含んでいてもよい。マイクロ波侵入阻止管51の長さは、例えば、マイクロ波侵入阻止管51におけるリアクター13との接合点から、検出部52との接合点までの長さであってもよく、または、リアクター13との接合点からのマイクロ波侵入阻止管51が直線である範囲の長さであってもよい。また通常、マイクロ波侵入阻止管51と、そのマイクロ波侵入阻止管51が接合するリアクター13の壁面部分とは直交しているが、そうでなくてもよい。マイクロ波侵入阻止管51は、マイクロ波を透過しない材料で構成されることが好適である。マイクロ波侵入阻止管51は、例えば、鉄やステンレス鋼等の材料で構成されてもよい。
【0030】
ここで、そのマイクロ波侵入阻止管51の断面における直径や縦横の長さについて説明する。導波管には、伝送可能なマイクロ波の最低周波数を意味する遮断周波数がある。したがって、通常、その遮断周波数以上の周波数のマイクロ波を、導波管に伝送させることになる。マイクロ波侵入阻止管51も、内部に内容物が存在するが、その導波管と同様であると考えることができる。したがって、マイクロ波発生器14の発生したマイクロ波の周波数よりも大きい遮断周波数の管であるマイクロ波侵入阻止管51を用いるようにしてもよい。そのようにすることで、マイクロ波侵入阻止管51をマイクロ波発生器14の発生したマイクロ波が伝播しないようにすることができる。なお、例えば、遮断周波数をf(Hz)とし、マイクロ波侵入阻止管51の断面が円形であり、遮断周波数におけるその半径がr(m)であるとすると、
r=c/(3.41f)
となる。ここで、cは光速(3.0×10
8m/s)である。したがって、マイクロ波発生器14の発生するマイクロ波の周波数をfとした場合において、マイクロ波侵入阻止管51の断面の半径が上述のrよりも小さいのであれば、そのマイクロ波侵入阻止管51に対して、マイクロ波発生器14の発生するマイクロ波の周波数は、マイクロ波侵入阻止管51の遮断周波数より小さいことになる。このようにマイクロ波侵入阻止管51の断面の半径を選択してもよい。なお、上述の遮断周波数と半径との関係は、TE11モードにおける関係である。TE11モードにおいて遮断周波数であれば、その他のモードにおいても遮断周波数となるため、そのTE11モードを採用した。また、ここでは、マイクロ波侵入阻止管51の断面が円形である場合について説明したが、その断面がa(m)×b(m)の矩形である場合にも、a,bと遮断周波数との同様の関係が知られているため、それを用いて、遮断周波数がマイクロ波発生器14の発生するマイクロ波の周波数よりも大きくなるように、マイクロ波侵入阻止管51の断面におけるa(m)やb(m)を決定するようにしてもよい。
【0031】
なお、上述のように、マイクロ波発生器14の発生するマイクロ波の周波数よりも大きい遮断周波数の管であるマイクロ波侵入阻止管51を用いることによって、マイクロ波はマイクロ波侵入阻止管51を伝播しない。すなわち、マイクロ波侵入阻止管51に侵入したマイクロ波は、減衰することになる。しかしながら、その減衰のしかたは、マイクロ波の周波数に応じて異なる。例えば、マイクロ波侵入阻止管51の断面が矩形であり、その幅がaであるとする。なお、マイクロ波侵入阻止管51内の電界の向きは、その幅aの面に対して垂直であるとする。すると、遮断周波数以下の周波数であるマイクロ波の電界強度は、次式のように減衰する。
exp(−k'z)
ただし、k'は、次の通りである。
k'=((π/a)
2−(ω/c)
2)
1/2
ここで、ωは、マイクロ波発生器14の発生するマイクロ波の角周波数(角振動数)である。また、zは、リアクター13との接合点を0とするマイクロ波侵入阻止管51の長さ方向の座標である。したがって、マイクロ波の強度が1/10に減衰するzの値をz1とすると、上記式より、
z1=2.3×((π/a)
2−(ω/c)
2)
−1/2
となる。その結果、侵入したマイクロ波の強度が1/10以下になるためには、マイクロ波侵入阻止管51がz1以上の長さを有していればよいことになる。そのため、z1以上の長さのマイクロ波侵入阻止管51を用いるようにしてもよい。なお、上述の式については、例えば、次の文献を参照されたい。
文献:ファインマン、レイトン、サンズ、「電磁波と物性」、岩波書店、1971年
【0032】
また、ここでは、矩形の断面のマイクロ波侵入阻止管51について説明したが、その他の断面、例えば、円形の断面のマイクロ波侵入阻止管51についても、同様に、マイクロ波の強度が1/10に減衰するzの値であるz1を算出することができる。したがって、その場合にも、マイクロ波侵入阻止管51の長さをz1以上とすることにより、液面レベル位置を検出する際におけるマイクロ波が、リアクター13の位置の1/10以下となるようにすることができる。また、ここでは、マイクロ波が1/10となる長さ以上のマイクロ波侵入阻止管51を用いる場合について説明したが、それに限定されないことは言うまでもない。例えば、マイクロ波が1/20となる長さ以上のマイクロ波侵入阻止管51を用いてもよく、マイクロ波が1/50となる長さ以上のマイクロ波侵入阻止管51を用いてもよい。また、マイクロ波侵入阻止管51とリアクター13との接合点においてマイクロ波の強度が十分小さい場合には、その接合点に対して、マイクロ波が1/5となる長さ以上のマイクロ波侵入阻止管51を用いてもよい。
【0033】
また、マイクロ波侵入阻止管51へのマイクロ波の侵入の阻止を考えるにあたって、結合度を考慮してマイクロ波侵入阻止管51の属性を決定してもよい。すなわち、リアクター13を主導波管(主線路)、マイクロ波侵入阻止管51を副導波管(副線路)とした場合における結合度を考え、その結合度が所望の値以下となる長さ及び断面の大きさの管となるように、マイクロ波侵入阻止管51の属性を決定してもよい。なお、その所望の値は、例えば、−10(dB)であってもよく、−30(dB)や−50(dB)などであってもよい。その場合であっても、通常、マイクロ波侵入阻止管51は、マイクロ波発生器14の発生するマイクロ波の周波数よりも大きい遮断周波数を有する管である。
【0034】
上述の結合度の算出方法の一例について、
図9を用いて説明する。
図9は、断面が矩形の主導波管と副導波管とが、その主導波管の長辺上の直径dの円孔を介して接続される場合を示している。その主導波管の断面における長辺の長さをa、短辺の長さをbとしている。また、x
0は、管軸から円孔中心までの距離である。そのような場合に、結合度C(dB)は、次式のようになることが知られている。
【数1】
ここで、S=a×bは、主導波管の断面積であり、tは、導波管結合面の板厚である。また、λは、マイクロ波発生器14が発生するマイクロ波の自由空間波長であり、λ
0は、管内波長であり、λ
c=2aは遮断波長である。なお、主導波管であるリアクター13に、副導波管であるマイクロ波侵入阻止管51を接続する場合には、そのマイクロ波侵入阻止管51の長さがtであると考えることができる。したがって、マイクロ波侵入阻止管51の長さtを用いて上記式を計算すればよい。なお、上記式では、Cが正の値となるようになっている。そのため、上述のように、結合度を−10(dB)とする場合には、上記Cの値が10(dB)となるように、マイクロ波侵入阻止管51の直径(d)や、長さ(t)を決定すればよいことになる。なお、ここでは、主導波管であるリアクター13の断面が矩形であり、円孔を介して副導波管と接続される場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、主導波管であるリアクター13の断面が円形であってもよい。また、例えば、円孔ではなく、矩形の孔を介して副導波管と接続されてもよい。なお、そのような場合には、それに応じた結合度の式を用いてマイクロ波侵入阻止管51の属性を決定することが好適である。
【0035】
なお、上記説明では、マイクロ波侵入阻止管51によって、マイクロ波がどれぐらい減衰するのかを考慮する場合について主に説明した。しかしながら、マイクロ波侵入阻止管51とリアクター13との接合点におけるマイクロ波の強度は、マイクロ波発生器14が発生したマイクロ波の強度や、内容物等に依存することになる。したがって、マイクロ波侵入阻止管51におけるマイクロ波の減衰を考えるのではなく、マイクロ波侵入阻止管51と検出部52との接合点におけるマイクロ波の電力密度を考慮してもよい。例えば、マイクロ波侵入阻止管51と検出部52との接合点において、マイクロ波の電力密度が10(mW/cm
2)以下となるように、マイクロ波侵入阻止管51の属性を決定してもよい。そのマイクロ波の電力密度は、10(mW/cm
2)以外であってもよい。例えば、5(mW/cm
2)以下や、1(mW/cm
2)以下となるように、マイクロ波侵入阻止管51の属性を決定してもよい。このような場合であっても、マイクロ波発生器14の発生するマイクロ波の周波数よりも大きい遮断周波数の管であるマイクロ波侵入阻止管51を用いることが好適であることは言うまでもない。
【0036】
検出部52は、マイクロ波侵入阻止管51内の内容物を介して、リアクター13内の内容物の液面レベル位置を検出可能な構成要素である。なお、マイクロ波侵入阻止管51内の内容物を介して液面レベル位置を検出可能であるとは、その液面レベル位置の検出にマイクロ波侵入阻止管51内の内容物が少なくとも用いられる、ということである。そのことは、例えば、マイクロ波侵入阻止管51内の内容物が検出部52に流入することにより、液面レベル位置の検出が行われることであってもよく、あるいは、マイクロ波侵入阻止管51内の内容物そのものを用いて、液面レベル位置の測定が行われることであってもよい。その液面レベル位置の検出自体は、検出部52が行ってもよく、あるいは、検出部52以外の測定者等が行ってもよい。すなわち、その液面レベル位置は、(1)測定者が検出してもよく、または、(2)検出部52が検出してもよい。(1)の場合には、検出部52は、測定者により液面レベル位置が検出できるようにするものである。以下、それぞれの場合について説明する。
【0037】
(1)液面レベル位置を測定者が検出する場合
この場合には、検出部52は、測定者によって液面レベル位置が検出可能なように、液面レベル位置を示すものである。すなわち、検出部52は、液面レベル位置を目視により検出可能に示す液面レベルゲージであってもよい。具体的には、
図2Aで示されるように、検出部52は、マイクロ波侵入阻止管51を介してリアクター13内の内容物20が流通する鉛直方向に延びる管状部材52aであってもよい。
図2Aにおいて、マイクロ波侵入阻止管51及び検出部52は、それらの外観を示しており、リアクター13は、その長さ方向から見た内部断面を簡略化して示している。なお、その管状部材52aは、少なくとも一部において、内部を見ることができるようになっていることが好適である。すなわち、
図2Aで示されるように、その管状部材52aの内部を見ることができる窓部52bが設けられていてもよい。あるいは、管状部材52aそのものが、透明部材で構成されたものであってもよい(例えば、チューブラーのレベルゲージなど)。すなわち、管状部材52aそのものがガラス管などであってもよい。なお、窓部52bは、例えば、はめ込みの透明部材であってもよい。管状部材52aや、窓部52bは、リアクター13における内容物の最低レベルから最高レベルまでの範囲をカバーできていることが好適である。なお、(1)の場合において、検出部52は、液面レベル位置を直接示すものでなく、間接的に示すものであってもよい。すなわち、管状部材52a内において、マグネットを有するフロートを浮かべ、そのフロートの位置を管状部材52aの外部における指示機構によって磁気的に指示することにより、測定者が液面レベル位置を把握可能なようにしてもよい。また、検出部52は、その他の方式によって液面レベル位置を測定者が検出可能に提示する液面レベルゲージであってもよい。液面レベルゲージについては、すでに種々のものが公知であるため、その説明を省略する。
【0038】
(2)液面レベル位置を検出部52が検出する場合
この場合には、検出部52は、液面レベル位置を測定する。したがって、測定者が目視により液面レベル位置を検出しなくても、自動的に液面レベル位置が測定されることになる。その方法としては、種々のものが知られているが、例えば、次のようなものがある。
【0039】
(2−1)圧力を検知する方法
図3Aで示されるように、検出部52は、マイクロ波侵入阻止管51を介してリアクター13内と連通した状態において、内容物20の圧力を測定する。そして、その圧力を液面レベル位置に換算することによって、液面レベル位置を測定してもよい。なお、その圧力の測定の方法としては、例えば、圧力センサを用いる方法や、気泡を内容物20中に放出する際の気泡の圧力を測定する方法などがある。なお、それ以外の方法を用いて圧力を測定してもよい。
【0040】
(2−2)フロートを用いる方法
図3Bで示されるように、検出部52は、管状部材52eと、その管状部材52e内の内容物の液面位置に浮かぶフロート52cと、そのフロート52cの位置を検出するフロート検出センサ52dとを備えてもよい。
図3Bにおいて、検出部52及びリアクター13は、それらの内部構造を簡略化して示している。その管状部材52eは、前述の管状部材52aと同様のものであり、リアクター13の液面レベル位置と同じ範囲において鉛直方向に延びるものである。また、フロート52cは、例えば、マグネットを有するものであり、フロート検出センサ52dは、マグネットの位置を検出可能なセンサ、例えば、リードスイッチであってもよい。そのフロート検出センサ52dによって検出したフロート52cの位置が、検出部52が測定した液面レベル位置となる。なお、マグネットを用いる以外の方法により、フロート52cを用いた液面レベル位置の検出を行ってもよい。例えば、液面レベル位置に応じたフロート52cの位置を抵抗の変化で検出してもよく、フロート52cを固定し、そのフロート52cの浮力を測定することによって、液面レベル位置を測定してもよく(液面より下になるフロート52cの範囲が多くなるほど、浮力が大きくなることを利用する)、液面レベル位置に応じたフロート52cの位置を、受光量を用いて検出してもよく(例えば、特開2010−2203参照)、その他の方法によってフロート52cを用いた液面レベル位置の測定を行ってもよい。
【0041】
(2−3)光を用いる方法
図3Bと同様の管状部材52eにおいて、センサ52dと同様に、発光部と、その発光部が発光した光を受光する受光部とのセットを縦方向に複数を備える。そして、その発光部と受光部との間に内容物が位置するようにする。すると、内容物が存在する場合と、内容物が存在しない場合とにおいて、受光量が異なるため、その差により、内容物の液面レベル位置を検出することができるようになる。また、光を用いる方法としては、光ファイバを用いて、連続的に液面レベル位置を測定する方法もある(例えば、特開2006−47018参照)。また、その他の方法によって、光を用いた液面レベル位置の測定を行ってもよい。
【0042】
(2−4)超音波を用いる方法
図3Bと同様の管状部材52eにおいて、超音波を用い、液面レベル位置を測定してもよい。その超音波を用いて液面レベル位置を測定する方法としては、例えば、反射式の測定方法と、透過式の測定方法とが知られている。そのどちらを用いてもよい。また、その他の方法によって、超音波を用いた液面レベル位置の測定を行ってもよい。
【0043】
(2−5)サーミスタを用いる方法
図3Bと同様の管状部材52eにおいて、センサ52dと同様に、サーミスタを縦方向に複数備える。内容物と空気では熱伝導率が異なるため、サーミスタが内容物に接している場合と、接していない場合とにおいて、サーミスタの放熱効率が異なる。そのため、サーミスタに給電した際の電気抵抗が、液面より上のサーミスタと、液面より下のサーミスタとで異なることになる。したがって、その電気抵抗の違いを用いて、液面がどのサーミスタの位置にあるのかを特定することができ、液面レベル位置を測定できる。また、その他の方法によって、サーミスタを用いた液面レベル位置の測定を行ってもよい。
【0044】
(2−6)電気伝導度、インピーダンスの変化を用いる方法
図3Bと同様の管状部材52eにおいて、センサ52dと同様に、電気伝導度やインピーダンスの測定器を縦方向に複数備える。内容物と空気では電気伝導度やインピーダンスが異なるため、測定器が内容物に接している場合と、接していない場合とにおいて、測定器が測定する電気伝導度等が異なる。そのため、液面より上の測定器と、液面より下の測定器とで電気伝導度等が異なることになる。したがって、その電気伝導度等の違いを用いて、液面がどの測定器の位置にあるのかを特定することができ、液面レベル位置を測定できる。また、その他の方法によって、電気伝導度やインピーダンスの変化を用いた液面レベル位置の測定を行ってもよい。
【0045】
なお、ここでは、液面レベル位置を自動的に測定するいくつかの方法について説明したが、これら以外の方法を用いてもよいことは言うまでもない。例えば、
図3Bと同様の管状部材52eの各レベルにおいて、撹拌部材を回転させ、その回転に対して抵抗があるかどうかを検知し、その位置が液中か、液中でないかを検出することによって、液面レベル位置を測定してもよく、その他の方法を用いてもよい。また、検出部52を構成する材料は問わない。マイクロ波透過性のものであってもよく、マイクロ波吸収性のものであってもよく、マイクロ波を反射するものであってもよく、あるいは、それらの任意の2以上の組み合わせであってもよい。
【0046】
また、上述のようにして検出部52が自動的に液面レベル位置を測定する場合に、その測定された液面レベル位置は、
図3Bで示されるように、出力部53によって表示されてもよい。また、出力部53は、表示以外の出力を行ってもよい。具体的には、出力部53は、測定された液面レベル位置を示す情報を、図示しない記録媒体に蓄積してもよく、他の装置等に送信してもよく、印刷してもよく、音声出力してもよく、あるいは、その他の出力を行ってもよい。その出力部53は、出力を行うためのハードウェア(例えば、表示デバイスや、送信デバイス、プリンタ等)を有していてもよく、あるいは、それらを駆動するドライバであってもよい。
【0047】
また、
図1では、リアクター13の上流側の位置にマイクロ波侵入阻止管51が接続されている場合について示しているが、そうでなくてもよい。リアクター13の中流の位置や、下流側の位置にマイクロ波侵入阻止管51が接続されてもよいことは言うまでもない。
【0048】
図4は、本実施の形態によるリアクター13の内部構造の一例を示す図である。
図4において、リアクター13は、内部が仕切り板21によって複数の室31,32,33,34に仕切られている。その複数の室31〜34は、直列に連続した室である。前述のように、リアクター13の内部では、上方に未充填空間22が存在する。その未充填空間22に対して、導波管15を介して、マイクロ波発生器14で発生されたマイクロ波が照射されることになる。なお、
図4では、リアクター13内部に単一の未充填空間22が存在する場合、すなわち、すべての室31〜34において未充填空間22が共有されている場合について示しているが、そうでなくてもよい。すなわち、未充填空間22は、すべての室のうち、少なくとも一部の2以上の室において共有されていてもよく、あるいは、すべての室において共有されていなくてもよい(この場合には、各仕切り板21によって未充填空間22が分断されていることになる)。各導波管15が接続されるリアクター13の位置は問わない。例えば、導波管15が、各室の中央付近の位置に設けられてもよく、仕切り板21の位置に設けられてもよく、あるいは、その他の位置であってもよい。なお、マイクロ波は未充填空間22を伝わるため、例えば、室31の位置の導波管15によって伝送されたマイクロ波が、未充填空間22を介して室32や室33の内容物にも照射されることになる。なお、導波管15を仕切り板21の位置、すなわち、仕切り板21の上方の位置に設けることで、一の導波管15によって未充填空間22に伝送されたマイクロ波が、その導波管15に対応する位置の仕切り板21で区切られる2個の室に主に照射されることになる。なお、未充填空間22が複数の室で共有されている場合には、その共有されている未充填空間22に伝送されたマイクロ波は、その未充填空間22を共有している複数の室の内容物20に対して照射されることになる。仕切り板21は、マイクロ波透過性のものであってもよく、マイクロ波吸収性のものであってもよく、あるいは、マイクロ波を反射するものであってもよい。マイクロ波を透過する材料としては、例えば、テフロン(登録商標)や、石英ガラス、セラミック、窒化珪素アルミナ等がある。したがって、マイクロ波透過性の仕切り板21は、そのようなマイクロ波を透過する材料で構成されたものであってもよい。また、マイクロ波を吸収する材料としては、例えば、フラーレンを除くカーボン類等がある。したがって、マイクロ波吸収性の仕切り板21は、そのようなマイクロ波を吸収する材料で構成されたものであってもよい。また、マイクロ波を反射する材料としては、例えば、金属がある。したがって、マイクロ波を透過しない仕切り板21は、そのようなマイクロ波を反射する材料で構成されたものであってもよい。また、仕切り板21は、マイクロ波透過性の材料、マイクロ波吸収性の材料、マイクロ波反射性の材料のうち、任意の2以上の材料の組み合わせによって構成されてもよい。
【0049】
リアクター13に入った原料等の内容物20は、各室31〜34の間を流通し、最終的に下流(
図4のリアクター13の右端)から出力されることになる。なお、その仕切り板21には、内容物が流通する流路が存在する。その流路は、内容物が主にリアクター13の上流側(
図4の左側)から、下流側(
図4の右側)に向かって流れていく流路であるが、
図4で示す矢印のように、一部は下流側から上流側に流れてもよい。その仕切り板21の流路は、例えば、仕切り板21の上方において内容物がオーバーフローする流路であってもよく、あるいは、仕切り板21の隙間において内容物が流れる流路であってもよい。
図5A〜
図5Fは、円筒形のリアクター13に設けられた仕切り板21を、そのリアクター13の長さ方向から見た図である。前者のオーバーフローの流路の場合には、例えば、
図5A、
図5Bのように、未充填空間22の位置に仕切り板21が存在せず、その位置(すなわち、仕切り板21の上方)を内容物が流れてもよい。その場合に、
図5Bのように、仕切り板21の上方の辺に、内容物が流れる凹部41が設けられていてもよい。その場合には、例えば、内容物20の液面が仕切り板21の上辺と同じレベルであったとしても、その凹部41の切り込み(切り欠き)を介して内容物が流通することになる。なお、その凹部41の形状は問わない。
図5Bでは、凹部41が半円形状の場合を示しているが、凹部41の切り込み形状は、例えば、三角形であってもよく、矩形であってもよく、台形であってもよく、あるいは、その他の形状であってもよい。また、その凹部41の個数も問わない。例えば、
図5Bのように1個であってもよく、あるいは、複数であってもよい。また、後者の隙間の流路の場合には、例えば、
図5Cのように、仕切り板21とリアクター13の内壁との間に隙間27が存在してもよく、
図5Dのように、仕切り板21自体に隙間27が存在してもよい。その隙間27の大きさは、内容物が流通可能である以上の大きさであることが好適である。なお、その隙間27の形状や個数は問わない。
図5Cでは、隙間27が円環形状の場合を示しているが、隙間27の形状は、例えば、円環の一部が塞がれたC字形状であってもよい。また、
図5Dでは、隙間27が円形状の場合を示しているが、隙間27の形状は、例えば、三角形であってもよく、矩形であってもよく、その他の形状であってもよい。また、隙間27の個数は、例えば、
図5Dよりも多くてもよく、少なくてもよい(1個でもよく、複数でもよい)。また、
図5Eや
図5Fのように、オーバーフローの流路と、仕切り板21の隙間27の流路とを組み合わせるようにしてもよい。なお、リアクター13は、上流側から下流側に向かって低くなる傾斜を有してもよく、そうでなくてもよい。なお、
図5A、
図5B、
図5E、
図5Fでは、その仕切り板21によって仕切られる2個の室において未充填空間22が共有される場合の仕切り板について示しているが、未充填空間22が共有されない場合には、未充填空間22の位置にも仕切り板21が存在してもよい。また、リアクター13が円筒形以外の形状である場合には、その形状に応じた仕切り板21の形状となることは言うまでもない。また、リアクター13の内部に複数の仕切り板21が存在する場合に、各仕切り板21は、同じ形状であってもよく、あるいは、そうでなくてもよい
【0050】
また、
図4で示されるように、化学反応装置1は、撹拌手段23をさらに有してもよい。すなわち、本実施の形態による化学反応装置1は、リアクター13内の内容物20を回転撹拌する1以上の撹拌手段23をも有してもよい。
図4では、各室31〜34に撹拌手段23が存在する場合について示しているが、そうでなくてもよい。1以上の室に撹拌手段23が存在しなくてもよい。また、
図4では、撹拌手段23が羽根状のものである場合について示しているが、これは撹拌手段23を模式的に示したものであり、その撹拌は、例えば、羽根状、翼状、あるいは、棒状の回転部材が回転されることによって行われてもよい。その回転部材は、マイクロ波透過性のものであってもよく、マイクロ波吸収性のものであってもよく、マイクロ波反射性のものであってもよく、あるいは、マイクロ波透過性の材料、マイクロ波吸収性の材料、マイクロ波反射性の材料のうち、任意の2以上の材料の組み合わせによって構成されたものであってもよい。その回転は、例えば、シャフトに装着された回転部材がシャフトの回転に応じて回転されることによって行われてもよく、あるいは、マグネティックスターラーのように、磁性を用いて回転部材が回転されてもよい。シャフトを用いる前者の場合には、そのシャフトは室ごとに独立したものであってもよく、あるいは、複数の室において共通して用いられるものであってもよい。磁性を用いる後者の場合には、棒状や羽根状、翼状等の回転部材(磁性撹拌子)が、磁石によって回転されることになる。なお、撹拌手段23による内容物の撹拌が、内容物を上流から下流の方向、もしくは、逆の方向に流すために用いられてもよく、または、そうでなくてもよい。なお、回転撹拌については、すでに公知であり、それらの詳細な説明を省略する。また、化学反応装置1が撹拌手段23を備える場合に、マイクロ波侵入阻止管51は、その撹拌手段23によって内容物が流動させられる位置ではない箇所に接続されることが好適である。その撹拌によって、マイクロ波侵入阻止管51内に内容物が流入すると、正確に液面レベル位置を検出できないこともありうるからである。
【0051】
ここで、撹拌手段23がリアクター13の内容物を回転撹拌する理由について簡単に説明する。撹拌手段23が内容物を撹拌する第1の理由は、マイクロ波によって内容物が均一に加熱されるようにするためである。内容物の種類や内容物の温度にも依存するが、あるマイクロ波が浸透する深さは決まっているため、内容物の全体に均一にマイクロ波が照射され、均一に加熱されるように撹拌することになる。また、未充填空間22における内容物の表面積が大きくなると、マイクロ波をより効率よく内容物に照射することができるようになる。したがって、内容物を撹拌する第2の理由は、マイクロ波の照射面積をより広くするためである。そのため、撹拌手段23による内容物の撹拌は、未充填空間22における内容物の表面に波が起こる程度の激しさであることが好適であるが、そうでなくてもよい(第1の理由に応じた撹拌が行われるのであれば、結果として内容物の全体が加熱され、それで十分である場合もあるからである)。また、このように、撹拌手段23を用いて原料等の撹拌を行うため、原料に密度の異なる2以上の物質が含まれている場合であっても、両者を適切に混合して反応させることができるようになる。例えば、縦型のフロー式のリアクターにおいて、アルコールと廃油のように、密度の違うものを反応させようとしても、両者が容易に分離してしまうことになるが、本実施の形態のように横型のフロー式のリアクター13であって、撹拌手段23が存在する場合には、両者を適切に混合して反応させることができるようになる。
【0052】
また、
図4で示されるように、リアクター13は、温度測定部25をも有してもよい。すなわち、本実施の形態による化学反応装置1は、リアクター13の内部の温度を測定する温度測定部25を備えていてもよい。リアクター13の内部の温度は、リアクター13の内容物の温度であることが好適である。
図4では、各室31〜34に温度測定部25が存在する場合について示しているが、そうでなくてもよい。1以上の室に温度測定部25が存在しなくてもよい。また、
図4では、温度測定部25を模式的に示しているが、温度測定部25は、例えば、熱電対によって温度を測定してもよく、赤外線センサによって温度を測定してもよく、光ファイバーによって温度を測定してもよく、その他の方法によって温度を測定してもよい。温度測定部25が測定した温度(厳密に言えば、温度を示すデータである)は、マイクロ波制御部16に渡され、マイクロ波発生器14によるマイクロ波の出力の制御のために用いられる。その制御は、前述のように、各室31〜34の温度を所望の温度または所望の温度幅に維持するための制御である。例えば、
図4で示されるように、仕切り板21の位置にマイクロ波が照射される場合には、その位置に照射されるマイクロ波の出力の制御を、例えば、マイクロ波が照射される位置の仕切り板21で区切られる2個の室の温度のうち、一方を用いて行ってもよく、あるいは、両者を用いて行ってもよい。前者の場合には、例えば、低い方の温度を用いて制御を行ってもよく、高い方の温度を用いて制御を行ってもよく、あるいは、あらかじめ決められた室の温度を用いて制御を行ってもよい。後者の場合には、例えば、両者の平均を用いて制御を行ってもよい。
【0053】
本実施の形態のリアクター13において、内容物20の液面のレベル位置は問わない。なお、
図5C〜
図5Fの仕切り板21のように、隙間27が存在する場合には、リアクター13から生成物等が流出する流出孔の位置によって、その液面の高さが決まることになる。したがって、所望の液面の高さに応じた位置にその流出孔の位置を設ければよいことになる。すなわち、所望の未充填空間22を確保できるように、リアクター13の流出孔の位置を設定すればよいことになる。一方、
図5A、
図5Bの仕切り板21のように、原料等がオーバーフローする場合には、最下流の室34以外の室31〜33の液面の高さは、仕切り板21の高さによって決まることになる(なお、この場合にも最下流の室34の液面の高さは、流出孔の位置によって決まることになる)。したがって、所望の液面の高さに応じた高さを有する仕切り板21をリアクター13内部に設ければよいことになる。すなわち、所望の未充填空間22を確保できるように、仕切り板21におけるオーバーフローの流路の高さ(位置)を設定すればよいことになる。なお、内容物20に対して適切にマイクロ波を照射できるのであれば、内容物20の液面の高さや未充填空間22の高さが上述のものに限定されないことは言うまでもない。
【0054】
また、リアクター13の形状は問わない。例えば、リアクター13は、
図2A,
図3A,
図3Bで示したように、
図4の左右方向が長さ方向となる円筒状のものであってもよく、直方体の形状であってもよく、あるいは、その他の形状であってもよい。リアクター13が直方体である場合には、マイクロ波侵入阻止管51は、例えば、
図2Bで示されるようにリアクター13に接続されてもよい。なお、本実施の形態では、リアクター13が円筒状である場合について主に説明する。
図5A〜
図5Fにおいても、前述のように、リアクター13が円筒状である場合の仕切り板21について示している。
また、リアクター13の壁面は、断熱材で覆われていてもよい。そのようにすることで、リアクター13の内部の熱が外部に放出されることを防止することができる。
【0055】
次に、本実施の形態による化学反応装置1の動作について簡単に説明する。原料と触媒とは、ポンプ11によって混合部12に供給される。そして、混合部12において混合され、リアクター13に投入される。そのリアクター13への原料等の供給速度は、あらかじめ決められていてもよい。
【0056】
リアクター13に供給された原料等は、撹拌手段23によって撹拌されながら、上流側から下流側に流れていく。その際に、マイクロ波発生器14が発生したマイクロ波が導波管15を介してリアクター13の未充填空間22に伝送され、原料等に照射される。その結果、原料等が加熱されることになり、原料等の反応が促進されることになる。なお、各室31〜34の温度は、温度測定部25によって測定され、図示しない経路によって、マイクロ波制御部16に渡される。そして、マイクロ波制御部16は、各室31〜34の温度が所望の温度または所望の温度幅となるようにマイクロ波発生器14の出力を制御する。また、リアクター13における液面レベル位置は、検出部52によって検出可能となる。したがって、例えば、何らかの不都合が発生し、液面レベル位置が下がった場合や上がった場合には、マイクロ波の照射を停止し、その不都合を解消するようにしてもよい。そのようにすることで、安定したマイクロ波の照射を実現することができる。
【0057】
リアクター13から出力された生成物は、触媒分離部17に投入され、触媒が分離される。そして、触媒の分離された生成物がポンプ11によって処理液貯留槽18に投入され、処理液貯留槽18において、目的とする製造物と副生成物とに分けられる。このようにして、最終的な製造物が得られることになる。また、このような処理が繰り返して実行されることにより、目的とする製造物が順次、生成されていくことになる。
【0058】
なお、触媒分離部17における触媒の分離の処理や、処理液貯留槽18における製造物と副生成物との分離の処理は、生成物が投入されるごとに順次、行ってもよく、あるいは、投入された生成物が一定の分量だけたまってから、一括して行ってもよい。すなわち、リアクター13における処理はフロー式(流通式)で処理されるが、その後段の触媒分離部17や処理液貯留槽18における処理は、フロー式で処理されてもよく、あるいは、バッチ式で処理されてもよい。
【0059】
また、本実施の形態による化学反応装置1において行われる化学反応は、マイクロ波の照射自体、あるいは、マイクロ波の照射に応じた加熱によって引き起こされる化学反応であれば、どのようなものであってもよい。例えば、エステル化やエステル交換によるバイオディーゼル燃料の生成であってもよく、エステルであるインク原料の生成であってもよく、その他の化学反応であってもよい。
【0060】
次に、本実施の形態による化学反応装置1を用いて廃油からバイオディーゼル燃料(脂肪酸メチルエステル)を生成する処理について、実施例を用いて説明する。なお、本発明がその実施例に限定されないことはいうまでもない。
【0061】
(反応システム構築例)
本実施例において、原料として、油脂と遊離脂肪酸との混合物、及びアルコールを用いた。アルコールは、反応剤である。その原料と触媒とは、それぞれポンプ11で混合部12へ送られ、均一に混合される。その混合液はリアクター13へ供給される。リアクター13内の混合液に対して、マイクロ波発生器14から発生したマイクロ波が照射され、エステル化反応が促進される。また、そのリアクター13内の混合液は、リアクター13内の仕切り板21で仕切られた各室31〜34に充填される。混合液は触媒と共に撹拌手段23によって撹拌されながらマイクロ波の照射によって反応が進行する。マイクロ波はリアクター13内部に存在する未充填空間22に対して照射され、リアクター13内部へ拡散する。各室内の反応液は仕切り板21に設けられた流路により次段の室へ移動する。反応液はリアクター13内で一定の滞留時間を保持した後、リアクター13外へ排出される。リアクター13から排出された反応後の混合液は触媒分離部17に供給され、その触媒分離部17において触媒が分離されて処理液貯留槽18へ充填される。触媒分離後の反応液は処理液貯留槽18において副生成物である水、グリセリンと分離され、目的物である粗メチルエステルが取り出される。
【0062】
(工業廃油のエステル化反応)
工業廃油を用いた遊離脂肪酸のエステル化反応の典型的な実施例を示す。遊離脂肪酸34wt%含有の工業廃油(その他、トリグリセリドや、ピッチ成分等を含有している)と、反応剤であるメタノール2.8モル当量(工業廃油の遊離脂肪酸をオレイン酸に換算した際のモル当量である)と、固体酸触媒3wt%(工業廃油に対する重量%である)を混合部12で混合した後にリアクター13へ供給した。リアクター13への供給速度は、次に示す空間速度で約1.2/hとした。ここで、反応器容量とは、本実施例では、リアクター13内の全容量から未充填空間22の容量を減算した容量である。
(空間速度)=(廃油の体積流量)/(反応器容量)
【0063】
リアクター13のマイクロ波出力は各室31〜34の内部温度によるフィードバック制御を行い、各室31〜34の温度を一定に保った。本実験では反応温度を70℃に設定した。
図6は、本実施例における脂肪酸とメタノールのエステル化反応による脂肪酸メチルエステルの転化率を示している。メチルエステル転化率の計算式は次の通りである。
メチルエステル転化率(%)=[メチルエステル濃度]/[脂肪酸初濃度]×100
【0064】
図6から明らかなように、エステル化反応は反応開始後急速に進行し、30分で転化率は87%に達した。その後、転化率は緩やかに増加し、1.5時間で反応はほぼ平衡に達した。なお、廃油中のその他の成分は、特に変化は見られなかった。この結果から、本実施の形態による流通式反応器によるエステル化反応は、廃油中の遊離脂肪酸に対して効率よくエステル化反応を進行させ、かつ安定した反応を連続的に行うことが可能であることがわかる。
【0065】
以上のように、本実施の形態による化学反応装置1によれば、リアクター13において内容物に効率よくマイクロ波を照射することができる。その結果、リアクター13の内部における化学反応を促進することができる。特に、撹拌手段23を用いてリアクター13内部で内容物を回転撹拌することによって、マイクロ波の浸透深さがあまり深くない場合であっても、内容物に対して均等にマイクロ波を照射することができるようになりうる。また、リアクター13が複数の室に分かれていることによって、内容物が各室に滞留しながら反応することになるため、各室において、内容物にマイクロ波を効果的に照射することができうるようになる。その結果、リアクター13から未反応の原料が出力されること(すなわち、リアクター13の流入孔から流出孔に対して原料が短絡して流れること)を回避することができうる。また、固体触媒がマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する場合には、マイクロ波の照射によって、固体触媒が効率よく加熱されることになり、固体触媒の近傍での化学反応を促進することができる。このように、リアクター13内部での化学反応が促進されることによって、より効率よく生成物を得ることができるようになる。
【0066】
また、マイクロ波侵入阻止管51と検出部52とを用いることにより、リアクター13の内容物の液面レベル位置を容易に知ることができるようになる。その結果、液面レベル位置が想定している範囲から外れた場合には、マイクロ波の照射を停止し、その原因を探ったり、その原因を除去したりすることによって、安定した化学反応を継続することができるようになる。また、リアクター13では、マイクロ波を照射しているため、その内部にできるだけ不要なものを設けたくないという要望がある。したがって、マイクロ波侵入阻止管51を介して液面レベル位置の検出を行うことによって、リアクター13の内部におけるマイクロ波の照射に影響を与えることなく、液面レベル位置の検出を行うことができるようになる。また、マイクロ波侵入阻止管51を介して内容物の液面レベル位置の検出を行うことにより、その液面レベル位置の検出に対しても、マイクロ波が影響を与えることを低減することができる。
【0067】
なお、
図4では、室ごとに撹拌手段23が存在する場合について説明したが、そうでなくてもよい。複数の室において、単一または複数の撹拌手段23が存在してもよい。化学反応装置1が単一の撹拌手段23を有する場合には、前述のように、その撹拌手段23は、複数の室において共通して用いられるシャフト(回転軸)を有するものであってもよい。その場合には、撹拌手段23は、回転軸と、複数の回転部材と、回転手段とを備えるものであってもよい。回転軸は、リアクター13の流れ方向に延びる軸である。例えば、
図4において、回転軸は、リアクター13の左端の面から、右端の面まで延びていてもよい。その回転軸は、リアクター13の底面に平行に設けられていてもよい。この回転軸は、例えば、マイクロ波透過性の材料で構成されたものであってもよく、マイクロ波吸収性の材料で構成されたものであってもよく、マイクロ波反射性の材料で構成されたものであってもよく、あるいは、それらの任意の2以上の材料の組み合わせによって構成されたものであってもよい。なお、回転部材は、前述のように、例えば、羽根状の部材であってもよく、あるいは、翼状の部材や、棒状の部材等であってもよい。また、その回転部材は、各室に存在してもよく、あるいは、そうでなくてもよい。回転部材の存在しない室があってもよい。また、一の室に二以上の回転部材が存在してもよい。撹拌手段23は、少なくとも1以上の回転部材を有するものであればよい。また、回転手段は、各回転部材を回転させる。回転部材が回転軸に固定されている場合には、回転手段は、その回転軸を回転させるものであってもよい。その場合には、回転手段は、例えば、モータや、エンジン等であってもよい。また、回転軸が回転部材を回転可能に支持し、回転軸自体は回転しないものであってもよい。その場合には、回転手段は、例えば、磁石を有する回転部材を磁力によって回転させるものであってもよい。具体的には、永久磁石である回転子(ロータ)を、その回転子の周りに設けられた電磁石の固定子(ステータ)で回転させるタイプのモータと同様に、回転部材(回転子)を、回転手段(固定子)によって回転させてもよい。なお、その場合に、固定子である回転手段は、リアクター13の外部に存在することが好適であるが、そうでなくてもよい。リアクター13の材質によっては、リアクター13の外部に固定子である回転手段を設けることができないこともあるからである。また、撹拌手段23が複数の室にわたる回転軸を有する場合には、仕切り板21に、回転軸が貫通する孔が存在してもよく、あるいは、流路である凹形状の位置や隙間27の位置を回転軸が貫通してもよい。
【0068】
また、本実施の形態において、リアクター13が有する2以上の室に対して、マイクロ波侵入阻止管51及び検出部52を用いた内容物の液面レベル位置の検出が行われるようにしてもよい。その際に、すべての室に対して液面レベル位置の検出が行われるようにしてもよく、あるいは、一部の室に対して液面レベル位置の検出が行われるようにしてもよい。後者の場合には、例えば、最上流の室と、最下流の室とに対して液面レベル位置の検出が行われるようにしてもよく、あるいは、その他の2以上の室の組み合わせに対して液面レベル位置の検出が行われるようにしてもよい。
【0069】
また、本実施の形態において、撹拌手段23の有する回転軸や回転手段の個数は問わない。例えば、単数の回転軸、回転手段によって、1以上の回転部材が回転されてもよく、2以上の回転軸や2以上の回転手段を用いて、2以上の回転部材が回転されてもよい。
【0070】
また、本実施の形態では、原料と触媒とを混合する混合部12が存在する場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、あらかじめ混合された原料と触媒とを用いる場合や、リアクター13において混合をも行う場合、リアクター13内を流れる固体触媒がリアクター13内に留まっている場合、または、リアクター13内を流れる固体触媒に代えて固定床の固体触媒を用いる場合などには、化学反応装置1は、混合部12を備えなくてもよい。なお、固定床の固体触媒を用いる場合には、通常、その固定床の固体触媒はリアクター13の内部に存在することになる。その固定床の固体触媒は、例えば、リアクター13の内壁に貼着されたものであってもよく、あるいは、リアクター13の内部において触媒充填層やカラム等に充填されることによって固定されたものであってもよい。その固体触媒の形状は、例えば、無定型の粒状、円柱状(中空であってもよく、そうでなくてもよい)、球状、ペレット状、リング状、シェル状、ハニカム状、発泡体状、繊維状、布状、板状、あるいは、その他の形状であってもよい。
【0071】
また、本実施の形態では、リアクター13の内部が仕切り板で仕切られることによって、複数の室31〜34が構成される場合について説明したが、そうでなくてもよい。すなわち、リアクター13は、単一の室を有してもよい。また、リアクター13が、直列に連続した複数の室を有する場合に、その室の個数は問わない。通常、室の数が多いほど、リアクター13の流入孔から流出孔に対して原料が短絡して流れることを効果的に防止できる。
【0072】
また、本実施の形態では、複数のマイクロ波発生器14を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、
図7で示されるように、マイクロ波発生器14で発生されたマイクロ波を、分岐を有する導波管15によって、複数の箇所に伝送してもよい。複数の箇所は、例えば、複数の室であってもよい。なお、
図7では、化学反応装置1が一のマイクロ波発生器14のみを備えている場合について示しているが、化学反応装置1が2以上のマイクロ波発生器14を備えている場合に、その複数のマイクロ波発生器14のいずれかで発生されたマイクロ波が、分岐を有する導波管15によって複数の箇所に伝送されてもよい。例えば、マイクロ波発生器14で発生されたマイクロ波が複数の室に伝送される場合には、マイクロ波制御部16は、そのマイクロ波発生器14で発生されたマイクロ波が伝送される各室の温度のいずれか、あるいは、すべてを用いて、そのマイクロ波発生器14の出力を制御してもよい。例えば、マイクロ波制御部16は、各室のすべての温度の平均を用いて制御を行ってもよく、各室の温度の最高値または最低値を用いて制御を行ってもよい。
【0073】
また、本実施の形態では、化学反応装置1が温度測定部25とマイクロ波制御部16とを備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、マイクロ波の出力をあらかじめ決められた値にすることによって、リアクター13の内部の温度を所望の温度や温度幅に維持することができる場合には、温度を用いたマイクロ波の出力の制御を行わなくてもよい。
【0074】
また、本実施の形態では、リアクター13の後段に触媒分離部17を備えた場合について説明したが、そうでなくてもよい。他の装置によって触媒を分離する場合や、リアクター13内を流れる固体触媒がリアクター13内に留まっている場合、リアクター13内を流れる固体触媒に代えて固定床の固体触媒を用いる場合、リアクター13での化学反応に触媒を用いない場合などのように、本実施の形態による化学反応装置1において触媒の分離を行わなくてもよい場合には、触媒分離部17を備えていなくてもよい。
【0075】
また、本実施の形態では、原料と触媒とが混合されてリアクター13に投入される場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、原料のみがリアクター13に投入されてもよい。また、原料と触媒との混合が行われない場合には、リアクター13の内部を、原料のみが流れてもよい。すなわち、リアクター13の内容物は、例えば、複数の原料の混合物であってもよい。また、原料と触媒との混合が行われない場合であっても、例えば、リアクター13内を流れる固体触媒がリアクター13内に留まっているときには、リアクター13の内部を原料と触媒とが流れてもよい。また、原料と触媒との混合が行われない場合には、混合部12は、例えば、原料を混合させてもよく、あるいは、原料(基質)と反応剤とを混合させてもよい。また、その原料等の混合が必要ない場合には、前述のように、化学反応装置1は、混合部12を備えていなくてもよい。
【0076】
また、本実施の形態では、リアクター13内の原料を撹拌する1以上の撹拌手段23を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、リアクター13がマイクロ波を原料の全体に容易に照射することができるような構成である場合(例えば、リアクター13の内径が小さい場合等)には、撹拌手段23がなくてもよい。
【0077】
また、本実施の形態では、化学反応装置1が処理液貯留槽18を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、化学反応装置1から出力された生成物や副生成物が混合したものについて、他の装置において生成物の抽出等が行われてもよい。
【0078】
また、本実施の形態において、化学反応装置1は2以上のマイクロ波発生器14を備えており、その2以上のマイクロ波発生器14は、それぞれ2以上の周波数のマイクロ波を発生してもよい。すなわち、リアクター13の内容物に対して、2以上の周波数のマイクロ波が照射されてもよい。その場合において、2以上の周波数のマイクロ波を同じ位置において照射してもよく、2以上の周波数のマイクロ波をそれぞれ異なる位置において照射してもよい。例えば、
図8Aで示されるように、リアクター13の同じ位置において、すなわちリアクター13の中流域において、マイクロ波発生器14a、14dがそれぞれ発生した周波数X,Yのマイクロ波を照射してもよい。なお、周波数X,Yのマイクロ波はそれぞれ、導波管15a,15dを介してリアクター13に伝送される。また、例えば、
図8Bで示されるように、リアクター13の上流側から中流域において、マイクロ波発生器14a、14b、14cが発生した周波数Xのマイクロ波を照射し、リアクター13の下流側において、マイクロ波発生器14dが発生した周波数Yのマイクロ波を照射してもよい。なお、周波数Xのマイクロ波はそれぞれ、導波管15a,15b,15cを介してリアクター13に伝送される。また、周波数Yのマイクロ波は、導波管15dを介してリアクター13に伝送される。ここで、
図8A、
図8Bは、それぞれリアクター13を上方から見た図であり、図中の矢印は、リアクター13内における内容物の流れを示すものである。なお、2以上の周波数のマイクロ波が照射される場合に、その周波数の個数は、2個であってもよく、あるいは、3個以上であってもよい。その2以上の周波数は、300MHzから300GHzの範囲から選択される2以上の周波数であればどのような組み合わせであってもよい。例えば、2個の周波数のマイクロ波が照射される場合に、その周波数の組み合わせは、2.45GHzと5.8GHzであってもよく、2.45GHzと24GHzであってもよく、2.45GHzと913MHzであってもよく、5.8GHzと24GHzであってもよく、5.8GHzと913MHzであってもよく、24GHzと913MHzであってもよい。また、2以上の周波数のマイクロ波を照射する場合に、それらを照射するタイミングは問わない。例えば、2以上の周波数のマイクロ波を同時に照射してもよく、あるいは、周波数ごとに照射する期間が異なるようにマイクロ波を照射してもよい。例えば、後者の場合には、ある期間には周波数Xのマイクロ波が照射され、次の期間には周波数Yのマイクロ波が照射されてもよい。なお、2以上の周波数のマイクロ波を照射した場合には、1個の周波数のマイクロ波の照射ではマイクロ波の作用(例えば、加熱等)の対象とならなかった物質に対してもマイクロ波を作用させることができ、より幅の広い物質に対してマイクロ波を作用させることができるようになる。なお、内容物に2以上の周波数のマイクロ波を照射する場合には、マイクロ波侵入阻止管51は、その2以上の周波数のマイクロ波のそれぞれの侵入を阻止できる属性を有することが好適である。例えば、その複数の周波数のうち、最も大きい周波数よりも大きい遮断周波数を有する管であるマイクロ波侵入阻止管51を用いるようにしてもよい。また、例えば、その複数の周波数のうち、最も大きい周波数を用いて、マイクロ波侵入阻止管51における減衰を考慮したマイクロ波侵入阻止管51の長さを決定してもよい。また、その複数の周波数を用いて結合度を算出し、最も大きい値の結合度が所望の値(例えば、−10(dB)等)以下となるように、マイクロ波侵入阻止管51の断面の大きさや、長さを決定するようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施の形態において、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していない場合であっても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0080】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いるしきい値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していない場合であっても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0081】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。
【0082】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。