(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901273
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】封口用マスクの洗浄方法及び洗浄装置、並びにハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 11/02 20060101AFI20160324BHJP
B28B 11/00 20060101ALI20160324BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
B28B11/02
B28B11/00
B08B3/02 B
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-277676(P2011-277676)
(22)【出願日】2011年12月19日
(65)【公開番号】特開2013-126751(P2013-126751A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2014年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】森 正春
(72)【発明者】
【氏名】キョウ エイ
【審査官】
佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−145856(JP,A)
【文献】
特開2005−046729(JP,A)
【文献】
特開2001−070896(JP,A)
【文献】
実開昭64−032047(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 11/00−19/00
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一方の主面及び他方の主面と、前記一方の主面及び前記他方の主面に開口する複数の貫通孔と、を有し、ハニカム構造体の複数のセルのうち所定のセルを封口するために用いられる封口用マスクの洗浄方法であって、
前記一方の主面及び前記他方の主面と交差する軸線回りに前記封口用マスクを回転させながら、前記一方の主面及び前記他方の主面のそれぞれに対して洗浄用の液体を噴射し、
前記一方の主面において前記液体が噴射される領域と、前記他方の主面において前記液体が噴射される領域とが、前記軸線に平行な方向から見た場合に互いにずれるように、前記一方の主面及び前記他方の主面のそれぞれに対して前記液体を噴射する、封口用マスクの洗浄方法。
【請求項2】
回転する前記封口用マスクに抗力が作用するように、少なくとも前記一方の主面に対して前記液体を噴射する、請求項1記載の封口用マスクの洗浄方法。
【請求項3】
少なくとも前記一方の主面に対して前記液体を噴射した後に、前記軸線回りに前記封口用マスクを回転させながら、少なくとも前記一方の主面に対して前記液体の除去用の気体を噴射する、請求項1又は2記載の封口用マスクの洗浄方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載の封口用マスクの洗浄方法の使用によって洗浄された前記封口用マスクを用いて、前記ハニカム構造体の前記所定のセルを封口する、ハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
互いに対向する一方の主面及び他方の主面と、前記一方の主面及び前記他方の主面に開口する複数の貫通孔と、を有し、ハニカム構造体の複数のセルのうち所定のセルを封口するために用いられる封口用マスクの洗浄装置であって、
前記封口用マスクを支持し、前記一方の主面及び前記他方の主面と交差する軸線回りに前記封口用マスクを回転させる回転装置と、
前記一方の主面に対して洗浄用の液体を噴射する第1ノズルを有する噴射装置と、を備え、
前記噴射装置は、前記他方の主面に対して前記液体を噴射する第2ノズルを更に有し、
前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、前記一方の主面において前記液体が噴射される領域と、前記他方の主面において前記液体が噴射される領域とが、前記軸線に平行な方向から見た場合に互いにずれるように、前記一方の主面及び前記他方の主面のそれぞれに対して前記液体を噴射する、封口用マスクの洗浄装置。
【請求項6】
前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、前記軸線に平行な方向から見た場合に互いに異なる位置に配置されている、請求項5記載の封口用マスクの洗浄装置。
【請求項7】
少なくとも前記第1ノズルは、回転する前記封口用マスクに抗力が作用するように、前記一方の主面に対して前記液体を噴射する、請求項5又は6記載の封口用マスクの洗浄装置。
【請求項8】
前記噴射装置は、少なくとも前記一方の主面に対して、前記液体の除去用の気体を噴射する第3ノズルを更に有する、請求項5〜7のいずれか一項記載の封口用マスクの洗浄装置。
【請求項9】
前記噴射装置は、少なくとも前記第1ノズルから前記液体を噴射する液体噴射状態と、少なくとも前記第1ノズルから前記液体の除去用の気体を噴射する気体噴射状態と、を切り替える切替装置を更に有する、請求項5〜7のいずれか一項記載の封口用マスクの洗浄装置。
【請求項10】
前記噴射装置は、少なくとも前記第1ノズルの向きを変更可能とする可動機構を更に有する、請求項5〜9のいずれか一項記載の封口用マスクの洗浄装置。
【請求項11】
前記可動機構は、少なくとも前記第1ノズルを揺動させる動力源を有する、請求項10記載の封口用マスクの洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の複数のセルのうち所定のセルを封口するために用いられる封口用マスクの洗浄方法及び洗浄装置、並びにハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DPF(Dieselparticulate filter)等、内燃機関から排出されるガスを浄化するフィルタ用として、ハニカム構造体が広く知られている。ハニカム構造体は、一端部が封口材で封じられたセルに対し、他端部が封口材で封じられたセルが少なくとも一つ隣接するように、各セルが配列された構造を有している。
【0003】
ハニカム構造体の端部で、所定のセルのみを封口材で封じるに際しては、ハニカム構造体の封口すべきセルに対応する箇所に貫通孔が設けられた封口用マスクが用いられる。下記特許文献1,2には、封口用マスクを用いてハニカム構造体を封口する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−290766号公報
【特許文献2】特開2008−132749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハニカム構造体の封口に使用された封口用マスクは、付着した異物(残存した封口材や空気中のダスト等)を除去するために洗浄され、再利用される。ハニカム構造体の封口状態を安定させるために、封口用マスクの洗浄に際しては異物を十分に除去することが求められる。一方、ハニカム構造体の製造効率を高めるために、封口用マスクの洗浄時間を短くすることが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、異物を短時間で十分に除去することができる封口用マスクの洗浄方法及び洗浄装置、並びにハニカム構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の封口用マスクの洗浄方法は、互いに対向する一方の主面及び他方の主面と、一方の主面及び他方の主面に開口する複数の貫通孔と、を有し、ハニカム構造体の複数のセルのうち所定のセルを封口するために用いられる封口用マスクの洗浄方法であって、一方の主面及び他方の主面と交差する軸線回りに封口用マスクを回転させながら、少なくとも一方の主面に対して洗浄用の液体を噴射する。
【0008】
この洗浄方法では、一方の主面及び他方の主面と交差する軸線回りに封口用マスクが回転することで、封口用マスクの少なくとも一方の主面の全体に対して満遍なく液体が噴射される。また、液体の移動速度に封口用マスクの回転速度が加算されるため、液体の衝突によって異物に加わる力が強まる。更に、遠心力によって、液体と異物とが封口用マスクの外側に飛ばされる。従って、異物を短時間で十分に除去することができる。
【0009】
一方の主面及び他方の主面のそれぞれに対して液体を噴射すると、異物をより短時間で十分に除去することができる。
【0010】
また、一方の主面において液体が噴射される領域と、他方の主面において液体が噴射される領域とが、軸線に平行な方向から見た場合に互いにずれるように、一方の主面及び他方の主面のそれぞれに対して液体を噴射してもよい。この洗浄方法によれば、軸線に平行な方向から見た場合のより広い領域に対して、同時に液体を噴射することができ、異物をより短時間で十分に除去することができる。
【0011】
また、回転する封口用マスクに抗力が作用するように、少なくとも一方の主面に対して液体を噴射してもよい。この洗浄方法によれば、封口用マスクに付着した異物の移動方向と、液体の移動方向とが互いに逆向きとなるため、液体の衝突によって異物に加わる力が更に強まる。従って、異物をより短時間で十分に除去することができる。
【0012】
また、少なくとも一方の主面に対して液体を噴射した後に、軸線回りに封口用マスクを回転させながら、少なくとも一方の主面に対して液体の除去用の気体を噴射してもよい。この洗浄方法によれば、一方の主面及び他方の主面と交差する軸線回りに封口用マスクが回転することで、封口用マスクの少なくとも一方の主面の全体に対して満遍なく気体が噴射される。また、気体の移動速度に封口用マスクの回転速度が加算されるため、気体の吹き付けによって液体に加わる力が強まる。更に、遠心力によって、液体が封口用マスクの外側に飛ばされる。従って、封口用マスクに残存した液体を短時間で除去することができる。
【0013】
本発明に係るハニカム構造体の製造方法は、上記封口用マスクの洗浄方法の使用によって洗浄された封口用マスクを用いて、ハニカム構造体の所定のセルを封口する。この製造方法では、上記洗浄方法によって異物が十分に除去された封口用マスクを用いるため、ハニカム構造体の封口状態を安定させることができる。また、上記洗浄方法では異物が短時間で除去されるため、封口用マスクの洗浄完了を待つ時間が短くなり、ハニカム構造体の製造効率を高めることができる。
【0014】
本発明に係る封口用マスクの洗浄装置は、互いに対向する一方の主面及び他方の主面と、一方の主面及び他方の主面に開口する複数の貫通孔と、を有し、ハニカム構造体の複数のセルのうち所定のセルを封口するために用いられる封口用マスクの洗浄装置であって、封口用マスクを支持し、一方の主面及び他方の主面と交差する軸線回りに封口用マスクを回転させる回転装置と、一方の主面に対して洗浄用の液体を噴射する第1ノズルを有する噴射装置と、を備える。
【0015】
この洗浄装置では、回転装置によって、一方の主面及び他方の主面と交差する軸線回りに封口用マスクを回転させながら、噴射装置の第1ノズルから液体を噴射することができる。これにより、一方の主面の全体に対して満遍なく液体が噴射される。また、液体の移動速度に封口用マスクの回転速度が加算されるため、液体の衝突によって異物に加わる力が強まる。更に、遠心力によって、液体と異物とが封口用マスクの外側に飛ばされる。従って、異物を短時間で十分に除去することができる。
【0016】
噴射装置は、他方の主面に対して液体を噴射する第2ノズルを更に有すると、一方の主面及び他方の主面のそれぞれに対して液体を噴射することができ、異物をより短時間で十分に除去することができる。
【0017】
また、第1ノズル及び第2ノズルは、一方の主面において液体が噴射される領域と、他方の主面において液体が噴射される領域とが、軸線に平行な方向から見た場合にずれるように、一方の主面及び他方の主面のそれぞれに対して液体を噴射してもよい。この洗浄装置によれば、軸線に平行な方向から見た場合のより広い範囲に、同時に液体を到達させることができ、異物をより短時間で十分に除去することができる。
【0018】
また、第1ノズル及び第2ノズルは、軸線に平行な方向から見た場合に互いに異なる位置に配置されていていてもよい。この製造装置によれば、簡素な構成で、一方の主面において液体が噴射される領域と、他方の主面において液体が噴射される領域とが、軸線に平行な方向から見た場合にずれた状態とすることができる。
【0019】
また、少なくとも第1ノズルは、回転する封口用マスクに抗力が作用するように、一方の主面に対して液体を噴射してもよい。この洗浄装置によれば、封口用マスクに付着した異物の移動方向と、液体の移動方向とが互いに逆向きとなるため、液体の衝突によって異物に加わる力が更に強まる。従って、異物をより短時間で十分に除去することができる。
【0020】
また、噴射装置は、少なくとも一方の主面に対して、液体の除去用の気体を噴射する第3ノズルを更に有してもよい。この洗浄装置によれば、液体を噴射した後に、回転装置によって封口用マスクを回転させながら、第3ノズルによって一方の主面に対して気体を噴射することができる。これにより、封口用マスクの少なくとも一方の主面の全体に対して満遍なく気体が噴射される。また、気体の移動速度に封口用マスクの回転速度が加算されるため、気体の吹き付けによって液体に加わる力が強まる。更に、遠心力によって、液体が封口用マスクの外側に飛ばされる。従って、封口用マスクに残存した液体を短時間で除去することができる。
【0021】
また、噴射装置は、少なくとも第1ノズルから液体を噴射する液体噴射状態と、少なくとも第1ノズルから液体の除去用の気体を噴射する気体噴射状態と、を切り替える切替装置を更に有してもよい。この洗浄装置によれば、切替装置によって液体噴霧状態と気体噴霧状態とを切り替えることで、同じノズルを液体噴射状態と気体噴射状態とで用いることができる。このため、ノズルの数を削減し、洗浄装置の簡素化を図ることができる。
【0022】
また、噴射装置は、少なくとも第1ノズルの向きを変更可能とする可動機構を更に有してもよい。この洗浄装置によれば、封口用マスクに合わせてノズルの向きを最適化することで、異物をより短時間で十分に除去することができる。
【0023】
また、可動機構は、少なくとも第1ノズルを揺動させる動力源を有してもよい。この洗浄装置によれば、第1ノズルを揺動させ、異物に対して液体が衝突する角度を変動させることで、異物をより短時間で十分に除去することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、異物を短時間で十分に除去することができる封口用マスクの洗浄方法及び洗浄装置、並びにハニカム構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図5】本発明に係る洗浄装置の第1実施形態の概略構成を示す側面図である。
【
図8】送液ポンプ及び送気ポンプとノズルとを接続する管路を示す図である。
【
図9】封口用マスクに対する液体又は気体の噴射領域を示す図である。
【
図10】本発明に係る洗浄装置の第2実施形態の概略構成を示す側面図である。
【
図11】本発明に係る洗浄装置の第3実施形態の概略構成を示す側面図である。
【
図12】ノズルを増やした場合の噴射領域を示す図である。
【
図13】液体噴射状態で用いるノズルと気体噴射状態で用いるノズルとを別々にした場合に、送液ポンプ及び送気ポンプとノズルとを接続する管路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
まず、ハニカム構造体及び封口用マスクについて説明する。
図1は、ハニカム構造体の斜視図である。
図2は、
図1中のII−II線に沿う断面図である。
図1及び2に示されるハニカム構造体100は、多孔質(例えば、平均細孔直径20μm以下)のセラミクス材料等からなる円柱状部材であり、複数のセル110を有している。セル110のそれぞれは、ハニカム構造体100の端面100aから端面100bにかけて、ハニカム構造体100の軸線方向に沿って形成された孔である。セル110同士の間には、多孔質の隔壁112が形成されている。
図2に示されるように、端面100a側では、複数のセル110のうち所定のセル110aが封口材114によって封口されている。端面100b側では、セル110のうちセル110a以外のセル110bが封口材114によって封口されている。
【0028】
ハニカム構造体100は、内燃機関から排出されるガスGを浄化するフィルタとして用いられる。具体的には、端面100aから端面100bにガスGが通される。ガスGは、端面100aでセル110b内に導入され、隔壁112を透過してセル110aに進入し、端面100bでセル110aから排出される。この過程で、ガスGに含まれていた粒子(すす等)が隔壁112によって補足されるため、ガスGが浄化される。
【0029】
図3は、封口用マスクの平面図である。
図4は、
図3中のIV−IV線に沿う断面図である。
図3及び4に示される封口用マスク200は、ハニカム構造体100の製造工程においてセル110を封口するときに、ハニカム構造体100の端面100a側又は端面100b側に配置され、封口すべきセル110のみを開放するものである。封口用マスク200は、互いに対向する主面200a,200bと、主面200a,200bに開口する複数の貫通孔210,220と、を有する円板状部材である。主面200aは、セル110を封口するときに、ハニカム構造体100の端面100a又は端面100bに当接する。貫通孔210は、封口すべきセル110に対応する位置に形成されており、封口すべきセル110を開放する。これにより、封口すべきセル110のみに、封口材114が注入される。貫通孔220は、封口用マスク200の外周側の周方向に沿って4箇所に形成されており、後述するように洗浄時の位置決めに用いられる。
[第1実施形態]
【0030】
続いて、封口用マスク200の洗浄装置について説明する。
図5は、本発明に係る洗浄装置の第1実施形態の概略構成を示す側面図である。
図6は、
図5の洗浄装置の平面図である。
図5及び6に示されるように、洗浄装置1は、封口用マスク200を回転させる回転装置2と、封口用マスク200に洗浄用の液体を噴射する噴射装置3と、を備えている。
【0031】
回転装置2は、封口用マスク200を支持する支持部4と、支持部4を回転させる駆動部5と、を有している。駆動部5は、床面M1に設置されている。駆動部5は、略鉛直な回転軸5aと、回転軸5aを回転させるモータ等の動力源5bと、を有している。支持部4は、駆動部5の上に水平に設置された回転板6と、回転板6から上方に突出した4本の支持柱7と、を有している。回転板6は、回転軸5aの上端部に連結され、回転軸5aの中心軸線L1を中心とする円形を呈している。支持柱7は、回転板6の外周側の周方向に沿って配置されている。回転板6が回転軸5aに連結されていることから、支持部4は、回転軸5aと共に中心軸線L1回りに回転する。
【0032】
封口用マスク200は、支持柱7上に略水平に設置される。封口用マスク200は、主面200a,200bのいずれが上方に向くように設置されてもよいが、ここでは主面200aが上方に向くように設置されているものとする。
図6に示されるように、封口用マスク200の貫通孔220は、それぞれ支持柱7に対応する。なお、支持柱7及び貫通孔220の数や配置は、封口用マスク200の大きさや形状に応じて適宜変更される。
【0033】
図7は、支持柱の端部を示す断面図である。
図7に示されるように、支持柱7の端面7aには、上方に突出した位置決凸部7bが設けられている。位置決凸部7bは、それぞれ貫通孔220に挿入される。これにより、支持部4に対する封口用マスク200の位置が決まり、封口用マスク200は支持部4と共に回転する。すなわち、封口用マスク200は、主面200a,200bと交差する中心軸線L1回りに回転する。
【0034】
図5に示されるように、噴射装置3は、回転装置2と並んで床面M1に設置された本体部8と、封口用マスク200の上方に位置するノズル9(第1ノズル)と、封口用マスク200の下方に位置するノズル10(第2ノズル)と、ノズル9を本体部8に連結するアーム11と、ノズル10を本体部8に連結するアーム12と、ノズル9の向きを変更可能とする可動機構13と、ノズル10の向きを変更可能とする可動機構14と、を有している。
【0035】
本体部8は、液体を圧送する送液ポンプ8aと、気体を圧送する送気ポンプ8bと、アーム11を駆動するアーム駆動部8cと、を有している。アーム駆動部8cによってアーム11を駆動し、ノズル9を移動させることで、支持部4への封口用マスク200の着脱を容易に行うことが可能となっている。
【0036】
ノズル9,10は、それぞれ送液ポンプ8a及び送気ポンプ8bから圧送された液体及び気体を噴射する。
図8は、送液ポンプ及び送気ポンプとノズルとの関係を示す模式図である。
図8に示されるように、送液ポンプ8aとノズル9,10との間には送液管路17が設けられ、送気ポンプ8bとノズル9,10との間には送気管路18が設けられている。送液管路17と送気管路18とは、ノズル9,10の近傍で接続され、その接続部Jとノズル9,10との間には共通管路19が設けられている。送液ポンプ8aから圧送された液体及び送気ポンプ8bから圧送された気体は、それぞれ送液管路17及び送気管路18を通り、接続部Jで合流し、共通管路19を通ってノズル9,10から噴射される。送液管路17、送気管路18、及び共通管路19は、アーム11,12の内部に通されている。
【0037】
送液管路17の途中には電磁弁15が設けられ、送気管路18の途中には電磁弁16が設けられている。電磁弁15,16が開かれると、液体と気体とが共通管路19を通り、ノズル9,10から噴射される。すなわち、ノズル9,10から洗浄用の液体を噴射する液体噴射状態となる。また、電磁弁15が閉じられ、電磁弁16のみが開かれると、気体のみが共通管路19を通り、ノズル9,10から噴射される。すなわち、ノズル9,10から液体除去用の気体を噴射する気体噴射状態となる。このように、電磁弁15,16は、液体噴射状態と気体噴射状態とを切り替える切替装置Sを構成している。これにより、同じノズル9,10を液体噴射状態と気体噴射状態とで用いることができるため、ノズル9,10の数が削減され、洗浄装置1の簡素化が図られている。なお、液体噴射状態では、電磁弁15のみが開かれ、液体のみが噴射されてもよい。
【0038】
図5に示されるように、ノズル9は、中心軸線L1に対して本体部8と逆側に位置し、封口用マスク200の主面200aに向かうように下方に開口している。ノズル9の中心軸線L2は主面200aと交差しており、中心軸線L2と主面200aとの交点P1は、中心軸線L1に対して本体部8と逆側に位置している。これにより、ノズル9から噴射された液体は、主面200aにおいて交点P1を中心とする領域に到達する。
【0039】
ノズル10は、本体部8と回転装置2との間に位置し、封口用マスク200の主面200bに向かうように斜め上方に開口している。すなわち、ノズル10は、中心軸線L1に対して本体部8と同じ側に位置している。ノズル10の中心軸線L3は主面200bと交差しており、中心軸線L3と主面200bとの交点P2は、中心軸線L1に対して本体部8と同じ側に位置している。これにより、ノズル10から噴射された液体は、支持部4の支持柱7同士の間を通り、主面200bにおいて交点P2を中心とする領域に到達する。
【0040】
図9は、封口用マスクに対する液体又は気体の噴射領域を示す図である。
図9に示されるように、ノズル9は、主面200aにおいて交点P1を中心とする領域A1に対して、液体又は気体を噴射する。ノズル10は、主面200bにおいて交点P2を中心とする領域A2に対して、液体又は気体を噴射する。上述したように、交点P1と交点P2とは、中心軸線L1に対して互いに逆側に位置している。すなわち、交点P1の位置と交点P2の位置とは、中心軸線L1に平行な方向から見た場合に互いに異なっている。このため、領域A1と領域A2とは、中心軸線L1に平行な方向から見た場合に互いにずれている。このように、ノズル9,10が、中心軸線L1に平行な方向から見た場合に互いに異なる位置に配置された簡素な構成によって、領域A1と領域A2とがずれるようになっている。
【0041】
可動機構13は、アーム11の端部とノズル9との間に介在している。可動機構13は、ノズル9を揺動させるモータ等の動力源13aを有している。可動機構14は、アーム12の端部とノズル10との間に介在している。可動機構14は、ノズル10を揺動させるモータ等の動力源14aを有している。
【0042】
続いて、洗浄装置1を用いた封口用マスク200の洗浄方法について説明する。まず、封口に使用され、異物が付着した封口用マスク200を、支持部4上に設置する。この際、本体部8のアーム駆動部8cによってアーム11を駆動し、ノズル9を支持部4の上方から移動させることで、封口用マスク200を容易に設置することができる。
【0043】
次に、駆動部5によって、支持部4及び封口用マスク200を中心軸線L1回りに回転させる。そして、封口用マスク200を回転させながら電磁弁15,16を開き、ノズル9,10から主面200a,200bのそれぞれに対して洗浄用の液体を噴射する。すると、主面200a,200bと交差する中心軸線L1回りに封口用マスク200が回転することで、主面200a,200bの全体に対して満遍なく液体が噴射される。また、液体の移動速度に封口用マスク200の回転速度が加算されるため、液体の衝突によって異物に加わる力が強まる。更に、遠心力によって、液体と異物とが封口用マスク200の外側に飛ばされる。従って、異物を短時間で十分に除去することができる。
【0044】
また、主面200a,200bのそれぞれに対して液体が噴射されるため、異物をより短時間で十分に除去することができる。
【0045】
また、主面200aにおいて液体が噴射される領域A1と、主面200bにおいて液体が噴射される領域A2とが、中心軸線L1に平行な方向から見た場合に互いにずれるように、主面200a,200bのそれぞれに対して液体が噴射される。このため、中心軸線L1に平行な方向から見た場合のより広い領域に対して、同時に液体を噴射することができ、異物をより短時間で十分に除去することができる。
【0046】
なお、可動機構13及び可動機構14によってノズル9,10の向きを変更し、封口用マスク200に合わせてノズル9,10の向きを最適化してもよい。これにより、異物をより短時間で十分に除去することができる。
【0047】
例えば、可動機構13,14によってノズル9,10の向きを調整し、回転する封口用マスク200に抗力が作用するように液体を噴射してもよい。すなわち、封口用マスク200に対して、回転方向とは逆側の力が作用するように液体を噴射してもよい。具体的には、封口用マスク200の回転による主面200a,200bの移動方向と、ノズル9,10からの液体の噴射方向とが、互いに逆向きとなるように、ノズル9,10の向きを調整する。これにより、液体の衝突によって異物に加わる力が更に強まる。従って、異物をより短時間で十分に除去することができる。
【0048】
また、可動機構13,14の動力源13a,14aによって、ノズル9,10を揺動させてもよい。これにより、異物に対して液体が衝突する角度を変動させることで、異物をより短時間で十分に除去することができる。
【0049】
次に、電磁弁15を閉じ、ノズル9,10から主面200a,200bのそれぞれに対して液体除去用の気体を噴射する。主面200a,200bと交差する中心軸線L1回りに封口用マスク200が回転することで、主面200a,200bの全体に対して満遍なく気体が噴射される。また、気体の移動速度に封口用マスク200の回転速度が加算されるため、気体の吹き付けによって液体に加わる力が強まる。更に、遠心力によって、液体が封口用マスク200の外側に飛ばされる。従って、封口用マスク200に残存した液体を短時間で除去することができる。
【0050】
次に、電磁弁16を閉じて気体の噴射を停止し、駆動部5による支持部4の回転を停止し、封口用マスク200を外す。この際も、本体部8のアーム駆動部8cによってアーム11を駆動し、ノズル9を封口用マスク200の上方から移動させることで、封口用マスク200を容易に外すことができる。
【0051】
このように洗浄された封口用マスク200は、ハニカム構造体100の封口に再利用される。再利用に際して、封口用マスク200の異物は十分に除去されているため、ハニカム構造体100の封口状態を安定させることができる。また、封口用マスク200の異物が短時間で除去されるため、封口用マスク200の洗浄完了を待つ時間が短くなり、ハニカム構造体100の製造効率を高めることができる。
[第2実施形態]
【0052】
続いて、本発明に係る洗浄装置の第2実施形態について説明する。
図10は、本発明に係る洗浄装置の第2実施形態の概略構成を示す側面図である。
図10に示される洗浄装置1Aは、ノズル10から噴射された液体又は気体を反射させて封口用マスク200の主面200bに到達させるものである。
【0053】
洗浄装置1Aの回転装置2Aは、支持部4の代わりに支持部4Aを有している。支持部4Aは、支持部4における回転板6の上面中央部に、円錐状の隆起部20を設けたものである。ノズル10は、隆起部20の円錐面20aに向かうように側方に開口している。円錐面20aの角度とノズル10の配置とは、ノズル10の中心軸線L3に沿って噴射された液体又は気体が円錐面20aによって反射され、中心軸線L1に対して本体部8と同じ側で封口用マスク200の主面200bに到達するように調整されている。
【0054】
洗浄装置1Aによれば、ノズル10を封口用マスク200の主面200bに向けなくても、主面200bに液体を噴射することができるため、ノズル10の配置の自由度が高くなる。また、主面200bに対して略垂直に液体を噴射することができるため、異物をより短時間で十分に除去することができる。
[第3実施形態]
【0055】
続いて、本発明に係る洗浄装置の第3実施形態について説明する。
図11は、本発明に係る洗浄装置の第3実施形態の概略構成を示す側面図である。
図11に示される洗浄装置1Bは、ノズル10を支持部4の内側に配置したものである。
【0056】
洗浄装置1Bは、回転装置2及び噴射装置3の代わりに回転装置2B及び噴射装置3Bを備えている。噴射装置3Bは、アーム12の代わりにアーム12Bを有している。回転装置2Bは、支持部4の代わりに支持部4Bを有している。支持部4Bは、中心軸線L1に沿って回転軸5aに設けられた貫通孔21と、回転板6の中心部に設けられ貫通孔21の上端部を露出させる開口22と、を有している。アーム12Bは、本体部8から延在し、貫通孔21の下方から上方に通されている。アーム12Bは、回転軸5aに固定されてはおらず、支持部4Bが回転してもアーム12Bは回転しない。
【0057】
ノズル10は、可動機構14を介してアーム12Bの上端部に連結されて中心軸線L1上に位置し、支持柱7に囲まれている。ノズル10は斜め上方に開口しており、ノズル10の中心軸線L3と主面200bとの交点P2は、中心軸線L1に対して本体部8と同じ側に位置している。
【0058】
洗浄装置1Bによれば、ノズル10から噴射された液体は、支持部4の支持柱7同士の間を通らずに主面200bに到達する。このため、主面200bに向かって噴射された液体の全てが、支持柱7と衝突することなく主面200bに到達する。従って、異物をより短時間で十分に除去することができる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、ノズル9,10の数が適宜増減されてもよく、第1ノズル、第2ノズル、第3ノズル、第4ノズル、第5ノズル、第6ノズル、第7ノズル、第8ノズル、第9ノズル、第10ノズル等を設けることができる。ノズルの数を増加させることにより、マスク一枚あたりの洗浄時間を短縮可能となる。
図12は、ノズル9,10を2個ずつに増やした場合の噴射領域を示す図である。
図12では、主面200aに対してノズル9,9から液体が噴射される領域A1,A1と、主面200bに対してノズル10,10から液体が噴射される領域A2,A2とが互いにずれている。これにより、更に広い範囲に同時に液体を噴射することができる。また、
図13に示されるように、液体噴射状態に用いられるノズル9A,10Aと、気体噴射状態に用いられるノズル9B,10B(第3ノズル)とを別々に設けてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1,1A,1B…洗浄装置、2,2A,2B…回転装置、3,3B…噴射装置、9,9A…ノズル(第1ノズル)、10,10A…ノズル(第2ノズル)、9B,10B…ノズル10(第3ノズル)、13,14…可動機構、13a,14a…動力源、100…ハニカム構造体、200…封口用マスク、200a…主面、200b…主面、210…貫通孔、A1,A2…領域、L1…中心軸線、S…切替装置。