特許第5901345号(P5901345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日清オイリオグループ株式会社の特許一覧 ▶ 大東カカオ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901345
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】冷菓用チョコレート
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/00 20060101AFI20160324BHJP
   A23G 1/30 20060101ALI20160324BHJP
   A23G 9/32 20060101ALI20160324BHJP
   A23G 9/44 20060101ALI20160324BHJP
   A23G 9/52 20060101ALI20160324BHJP
   A23G 9/00 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   A23G1/00
   A23G9/02
   A23G9/00
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-39562(P2012-39562)
(22)【出願日】2012年2月27日
(65)【公開番号】特開2013-172679(P2013-172679A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2014年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】397059157
【氏名又は名称】大東カカオ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森山 葉
(72)【発明者】
【氏名】春成 麻未
【審査官】 鶴 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/065726(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/114914(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/115063(WO,A1)
【文献】 特開平07−264981(JP,A)
【文献】 特開2004−065070(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/048169(WO,A1)
【文献】 特開2006−280209(JP,A)
【文献】 特開平04−135453(JP,A)
【文献】 特開昭61−219338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00
A23G 1/30
A23G 9/00
A23G 9/32
A23G 9/44
A23G 9/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPIDS/WPIX(STN)
CAplus(STN)
FROSTI(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョコレートに含まれる油脂が下記(a)から(g)の条件を満たすチョコレート。
(a)XOX含量が44〜70質量%
(b)StOSt含量が10〜32質量%
(c)StOSt/XOXの質量比が0.30〜0.49
(d)POSt+StOSt含量が30〜60質量%
(e)XU2含量が8.8〜27.5質量%
(f)O3+O2L含量が24質量%以下
(g)XU2+U3含量が25〜48質量%
上記の(a)から(g)の条件において、X、P、St、U、O、L、XOX、POSt、StOSt、XU2、U3、O3、O2L、はそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16〜20の飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
O:オレイン酸
L:リノール酸
XOX:1位と3位にX、2位にOが結合しているトリグリセリド
POSt:1位と3位にP、Stがそれぞれ1分子ずつ、2位にOが結合しているトリグリセリド
StOSt:1位と3位にSt、2位にOが結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
O3:Oが3分子結合しているトリグリセリド
O2L:Oが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
【請求項2】
前記チョコレートがテンパリング型である請求項1に記載のチョコレート。
【請求項3】
前記チョコレートが冷菓に用いられる請求項1又は請求項2に記載のチョコレート。
【請求項4】
前記チョコレートが冷菓中に固体の状態で混合して使用される請求項3に記載のチョコレート。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のチョコレートを含む冷菓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷菓中に固体の状態で混合して使用するテンパリング型の冷菓用チョコレートに適したチョコレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは、チョコレートのみからなる商品以外に、チョコレートと他の食品とを組み合わせた商品にも使用されている。チョコレートと他の食品とを組み合わせた商品において、チョコレートとアイスクリーム等の冷菓とを組み合わせた商品は人気のある商品の一つである。チョコレートと冷菓とを組み合わせる方法としては、冷菓をチョコレートでコーティングする方法や冷菓中にチョコレートを混合する方法等が知られている。冷菓中にチョコレートを混合した冷菓は、食感及び風味が良いことから、広く好まれている。
【0003】
冷菓中にチョコレートを混合する方法としては、融解させた液状のチョコレートを流動状態にある冷菓中に滴下することで凝固させ、冷菓中にチョコレートを粒状や破片状で存在させる方法が知られている(例えば、特許文献1)。しかし、この方法で得られる冷菓は、チョコレートが食べごたえのないものであり、チョコレートの食べごたえの面では物足りないものであった。
【0004】
この他に冷菓中にチョコレートを混合する方法としては、チップ状等に成形した固体のチョコレートを流動状態にある冷菓中に投入して、冷菓中にチョコレートを混合する方法も知られている。この方法で得られる冷菓は、混合したチョコレートがそのまま存在するため、チョコレートが食べごたえのあるものとなる。チップ状等に成形した固体のチョコレートとしては、ベーカリー製品との組み合わせに使用するものが存在する。しかし、このベーカリー製品に使用される固体のチョコレートと冷菓とを組み合わせた場合、冷菓と共に喫食した時のチョコレートの食感が硬すぎるという問題があった。
【0005】
冷菓中に固体の状態で混合する冷菓用チョコレートで冷菓と共に喫食した時の食感が比較的軟らかいタイプのものとしては、例えば、特許文献2のチョコレートが提案されている。しかし、特許文献2のチョコレートは、テンパリング処理されていないノンテンパリング型チョコレートである。ノンテンパリング型チョコレートは、テンパリング型チョコレートと比較して、ココアバターとの相溶性が悪いため、カカオマス、ココアバターを多量に配合することができない。チョコレート中のカカオマス、ココアバターの量は風味や口溶けに影響するため、ノンテンパリング型チョコレートは、テンパリング型チョコレートと比較して、風味や口溶けの面で劣るという欠点があった。また、軟らかいタイプのノンテンパリング型チョコレートは、流通保管時に物性変化(べたつき、ブルーム等)が起こりやすい。チップ状等に成型した固体のチョコレートは、流通保管を経て使用されることが多いため、軟らかいタイプのノンテンパリング型チョコレートは流通保管の面でも劣るという欠点があった。
【0006】
従って、冷菓中に固体の状態で混合して使用するテンパリング型の冷菓用チョコレートでありながら、冷菓と共に喫食した時の食感が軟らかいタイプの冷菓用チョコレートの開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−101017号公報
【特許文献2】特開昭55−114261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、冷菓中に固体の状態で混合して使用するテンパリング型の冷菓用チョコレートに適している、かつ、冷菓と共に喫食した時の食感が軟らかいチョコレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、チョコレートに含まれる油脂中に特定のトリグリセリドを特定量含むと、冷菓中に固体の状態で混合するテンパリング型の冷菓用チョコレートに適している、かつ、冷菓と共に喫食した時の食感が軟らかいチョコレートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明は、チョコレートに含まれる油脂が下記(a)から(g)の条件を満たすチョコレートである。
(a)XOX含量が44〜70質量%
(b)StOSt含量が10〜32質量%
(c)StOSt/XOXの質量比が0.30〜0.49
(d)POSt+StOSt含量が30〜60質量%
(e)XU2含量が8.8〜27.5質量%
(f)O3+O2L含量が24質量%以下
(g)XU2+U3含量が25〜48質量%
上記の(a)から(g)の条件において、X、P、St、U、O、L、XOX、POSt、StOSt、XU2、U3、O3、O2L、はそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16〜20の飽和脂肪酸
P:パルミチン酸
St:ステアリン酸
U:炭素数18の不飽和脂肪酸
O:オレイン酸
L:リノール酸
XOX:1位と3位にX、2位にOが結合しているトリグリセリド
POSt:1位と3位にP、Stがそれぞれ1分子ずつ、2位にOが結合しているトリグリセリド
StOSt:1位と3位にSt、2位にOが結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
O3:Oが3分子結合しているトリグリセリド
O2L:Oが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
本発明の第2の発明は、前記チョコレートがテンパリング型である第1の発明に記載のチョコレートである。
本発明の第3の発明は、前記チョコレートが冷菓に用いられる第1の発明又は第2の発明に記載のチョコレートである。
本発明の第4の発明は、前記チョコレートが冷菓中に固体の状態で混合して使用される第3の発明に記載のチョコレートである。
本発明の第5の発明は、第1の発明から第4の発明のいずれか1つの発明に記載のチョコレートを含む冷菓である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、冷菓中に固体の状態で混合して使用するテンパリング型の冷菓用チョコレートに適している、かつ、冷菓と共に喫食した時の食感が軟らかいチョコレートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が下記の(a)から(g)の条件を満たすものである。
(a)XOX含量が44〜70質量%
(b)StOSt含量が10〜32質量%
(c)StOSt/XOXの質量比が0.30〜0.49
(d)POSt+StOSt含量が30〜60質量%
(e)XU2含量が8.8〜27.5質量%
(f)O3+O2L含量が24質量%以下
(g)XU2+U3含量が25〜48質量%
【0013】
本発明においてチョコレートとは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上の規定により限定されるものではなく、食用油脂、糖類を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品、香料、乳化剤等を加え、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、調温工程、成形工程、冷却工程等)を経て製造されたもののことである。また、本発明におけるチョコレートは、ダークチョコレート、ミルクチョコレートの他に、ホワイトチョコレート、カラーチョコレートも含むものである。
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、好ましくはテンパリング型チョコレートである。
【0014】
本発明においてチョコレートに含まれる油脂とは、チョコレート中の全油脂分のことであり、配合される油脂の他に、含油原料(カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳等)中の油脂(ココアバター、乳脂等)をも含むものである。
【0015】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のXOX含量(条件(a))が44〜70質量%であり、好ましくは44〜65質量%であり、より好ましくは45〜61質量%である。XOX含量が前記範囲にあると、チョコレートが、テンパリング型チョコレートに適している、かつ、冷菓と共に喫食した時の食感が軟らかいものとなる。
なお、本発明において、XOXは1位と3位にX、2位にOが結合しているトリグリセリドである(トリグリセリドとは、グリセロールに3分子の脂肪酸が結合したトリアシルグリセロールのことである。)。また、本発明において、Xは炭素数16〜20の飽和脂肪酸であり、Oはオレイン酸(炭素数18の1価の不飽和脂肪酸)である。
【0016】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のStOSt含量(条件(b))が10〜32質量%であり、好ましくは12〜31質量%であり、より好ましくは15〜28質量%である。StOSt含量が前記範囲にあると、チョコレートが、テンパリング型チョコレートに適している、かつ、冷菓と共に喫食した時の食感が軟らかいものとなる。
なお、本発明において、StOStは1位と3位にSt、2位にOが結合しているトリグリセリドである。また、本発明において、Stはステアリン酸(炭素数18の飽和脂肪酸)である。
【0017】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のStOSt/XOXの質量比(条件(c))が0.30〜0.49であり、好ましくは0.32〜0.49であり、より好ましくは0.34〜0.46である。StOSt/XOXの質量比が前記範囲にあると、チョコレートが、テンパリング型チョコレートに適している、かつ、冷菓と共に喫食した時の食感が軟らかいものとなる。
なお、本発明において、StOSt/XOXの質量比は、XOX含量(質量%)に対するStOSt含量(質量%)の比のことである。
【0018】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のPOSt+StOSt含量(POStとStOStの合計含量)(条件(d))が30〜60質量%であり、好ましくは33〜57質量%であり、より好ましくは35〜55質量%である。POSt+StOSt含量が前記範囲にあると、チョコレートが、テンパリング型チョコレートに適している、かつ、冷菓と共に喫食した時の食感が軟らかいものとなる。
なお、本発明において、POStは1位と3位にP、Stがそれぞれ1分子ずつ、2位にOが結合しているトリグリセリド(POSt+StOP)である。また、本発明において、Pはパルミチン酸(炭素数16の飽和脂肪酸)である。
【0019】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のXU2含量(条件(e))が8.8〜27.5質量%であり、好ましくは9.0〜26.5質量%であり、より好ましくは9.0〜26.0質量%である。XU2含量が前記範囲にあると、チョコレートが、テンパリング型チョコレートに適している、かつ、冷菓と共に喫食した時の食感が軟らかく、口溶けの良いものとなる。
なお、本発明において、XU2はXが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド(XUU+UXU+UUX)である。また、本発明において、Uは炭素数18の不飽和脂肪酸である。
【0020】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のO3+O2L含量(O3とO2Lの合計含量)(条件(f))が24質量%以下であり、好ましくは23質量%以下であり、より好ましくは22質量%以下である。O3+O2L含量が前記範囲にあると、テンパリング型チョコレートに適している、かつ、冷菓と共に喫食した時の食感が軟らかく、口溶けの良いものとなる。
なお、本発明において、O3はOが3分子結合しているトリグリセリドである。また、本発明において、O2LはOが2分子、Lが1分子結合しているトリグリセリド(OOL+OLO+LOO)である。また、本発明において、Lはリノール酸(炭素数18の2価の不飽和脂肪酸)である。
【0021】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のXU2+U3含量(XU2とU3の合計含量)(条件(g))が25〜48質量%であり、好ましくは26〜48質量%であり、より好ましくは27〜46質量%である。XU2+U3含量が前記範囲にあると、テンパリング型チョコレートに適している、かつ、冷菓と共に喫食した時の食感が軟らかく、口溶けの良いものとなる。
なお、本発明において、U3はUが3分子結合しているトリグリセリドである。
【0022】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のX3含量が好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。
なお、本発明において、X3はXが3分子結合しているトリグリセリドである。
【0023】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のX2U含量が好ましくは45〜75質量%であり、より好ましくは47〜73質量%であり、さらに好ましくは50〜70質量%である。
なお、本発明において、X2UはXが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド(XXU+XUX+UXX)である。
【0024】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のX2O/X2Uの質量比が好ましくは0.80以上であり、より好ましくは0.83以上であり、さらに好ましくは0.85以上である。
なお、本発明において、X2O/X2Uの質量比は、X2U含量(質量%)に対するX2O含量(質量%)の比のことである。また、本発明において、X2OはXが2分子、Oが1分子結合しているトリグリセリド(XXO+XOX+OXX)である。
【0025】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中のXOX/X2Oの質量比が好ましくは0.85以上であり、より好ましくは0.87以上であり、さらに好ましくは0.90以上である。
なお、本発明において、XOX/X2Oの質量比は、X2O含量(質量%)に対するXOX含量(質量%)の比のことである。
【0026】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、油脂を構成する脂肪酸中のリノール酸含量が好ましくは5.5〜38.0質量%であり、より好ましくは6.0〜25.5質量であり、さらに好ましくは16.0〜25.5質量である。
【0027】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、油脂を構成する脂肪酸中のトランス脂肪酸含量が好ましくは5質量%未満であり、より好ましくは3質量%未満、さらに好ましくは1質量%未満である。
【0028】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸(好ましくは炭素数16〜24の脂肪酸)含量が好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは97質量%以上であり、さらに好ましくは98質量%以上である。
【0029】
トリグリセリド組成の分析は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111−1114(1993)準拠)及び銀イオンカラム−HPLC法(J.High Resol.Chromatogr.,18,105−107(1995)準拠)を用いて行うことができる。また、油脂の構成脂肪酸の分析は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f−96準拠)を用いて行うことができる。
【0030】
本発明の実施の形態に係るチョコレートの原料油脂は、油脂中のトリグリセリドの組成等が前記範囲であれば、特に制限されることなく、通常の食用油脂(ココアバター、パーム油、パーム分別油(パーム中融点等)、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、コクム脂、マンゴー脂、マンゴー分別油、エステル交換により製造したXOX型トリグリセリドに富む油脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、牛脂、豚脂、乳脂等)を使用することができる。
【0031】
本発明の実施の形態に係るチョコレートの油脂中のトリグリセリド組成、脂肪酸組成等は、例えば、StOSt高含有油脂、液状油、ココアバター(カカオマス、ココアパウダー等由来のココアバターも含む)を使用することで調整することができる。
【0032】
本発明においてStOSt高含有油脂は、StOSt含量が好ましくは60質量%以上、より好ましくは60〜80質量%、さらに好ましくは63〜73質量%である。StOSt高含有油脂は、例えば、2位にオレイン酸が結合したトリグリセリドに富む油脂(ハイオレイックヒマワリ油等)と、ステアリン酸低級アルキルエステル(ステアリン酸エチルエステル等)とを、1、3位選択的エステル交換反応を行い、得られるエステル交換油を分別処理して高融点部及び低融点部を除去する(中融点部を得る)ことにより製造することができる。
【0033】
本発明において液状油は、好ましくは25℃で液状である。液状油としては、例えば、大豆油、菜種油、ハイリノールヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、ハイオレイックサフラワー油、ハイリノールサフラワー油、米油、綿実油、ゴマ油、コーン油、ぶどう種子油、オリーブ油、パーム分別油(パームスーパーオレイン等)が挙げられるが、好ましくはリノール酸高含有油脂である。本発明においてリノール酸高含有油脂は、油脂を構成する脂肪酸中のリノール酸含量が好ましくは45質量%以上、より好ましくは45〜80質量%、さらに好ましくは48〜60質量%である。
【0034】
本発明の実施の形態に係るチョコレートの油脂中のStOSt高含有油脂、液状油、ココアバターの含量は、好ましくはStOSt高含有油脂1〜35質量%、液状油15〜50質量%、ココアバター40〜60質量%、より好ましくはStOSt高含有油脂2〜30質量%、液状油20〜48質量%、ココアバター43〜57質量%、さらに好ましくはStOSt高含有油脂3〜21質量%、液状油27〜46質量%、ココアバター45〜55質量%である。
【0035】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、油脂含量が好ましくは25〜70質量%、より好ましくは30〜60質量%、さらに好ましくは35〜50質量%である。
【0036】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、油脂以外にも、チョコレートに一般的に配合される原料を使用することができる。例えば、ショ糖(砂糖、粉糖)、乳糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、還元澱粉糖化物、液糖、酵素転化水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、還元糖ポリデキストロース、オリゴ糖、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトース、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラフィノース、デキストリンなどの糖類、全脂粉乳、脱脂粉乳等の乳製品、カカオマス、ココアパウダー等のカカオ成分、大豆粉、大豆蛋白、果実加工品、野菜加工品、抹茶粉末、コーヒー粉末等の各種粉末、ガム類、澱粉類、レシチン、リゾレシチン、酵素分解レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、酸化防止剤、着色料、香料等を挙げることができる。
【0037】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、従来公知の方法により製造することができる。本発明の実施の形態に係るチョコレートは、例えば、油脂、カカオ成分、糖類、乳化剤等の原料をとして、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)、調温工程(テンパリング)、成形工程、冷却工程等を経て製造することができる。
【0038】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、性状は特に限定されないが、好ましくは固体である。また、本発明の実施の形態に係るチョコレートは、形状は特に限定されないが、好ましくはチップ状、チャンク状である。
【0039】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、テンパリング型チョコレートに適したものである。テンパリング型チョコレートに適していることは、例えば、最下点の温度を25〜30℃、リヒートの温度を26〜35℃の条件でテンパリングを行った時に、チョコレート表面にブルームが発生しない及びチョコレートがモールドから型抜けすることで確認することができる。
【0040】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、油脂中にココアバターを40質量%以上配合可能であるため、風味や口溶けのよいものとすることができる。
【0041】
本発明の実施の形態に係るチョコレートは、冷菓と共に喫食した時の食感が軟らかく、口溶けの良いものである。このため、本発明の実施の形態に係るチョコレートは、冷菓用チョコレートに適している。さらに、本発明の実施の形態に係るチョコレートは、冷菓中に固体の状態で混合して使用する用途に適している。
【0042】
本発明の実施の形態に係る冷菓は、本発明の実施の形態に係るチョコレートを含むことを特徴としている。冷菓としては、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等が挙げられる。
【0043】
本発明の実施の形態に係る冷菓は、好ましくは本発明の実施の形態に係るチョコレートを冷菓中に固体の状態で混合したものである。本発明の実施の形態に係るチョコレートを冷菓中に固体の状態で混合した冷菓は、混合したチョコレートがそのまま存在するため、チョコレートが食べごたえのあるものとなる。また、本発明の実施の形態に係る冷菓は、含まれるチョコレートの食感が軟らかく、口溶けの良いものである。
【0044】
本発明の実施の形態に係る冷菓は、例えば、本発明の実施の形態に係るチョコレートを流動状態にある冷菓中に固体の状態で混合することで製造することができる。
【実施例】
【0045】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
〔分析方法〕
トリグリセリド組成の分析は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111−1114(1993)準拠)及び銀イオンカラム−HPLC法(J.High Resol.Chromatogr.,18,105−107(1995)準拠)を用いて行った。また、油脂の構成脂肪酸の分析は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f−96準拠)を用いて行った。
【0046】
油脂及び含油原料は以下のものを使用した。
StOSt高含有油脂(StOSt含量68.0質量%、POSt含量8.9質量%、日清オイリオグループ株式会社社内調製品)(ハイオレイックヒマワリ油とステアリン酸エチルエステルとの1、3位選択的エステル交換油を、分別処理して得られる中融点部)
ハードPMF(StOSt含量1.4質量%、POSt含量12.8質量%、日清オイリオグループ株式会社社内調製品)
ソフトPMF(StOSt含量1.0質量%、POSt含量9.0質量%、日清オイリオグループ株式会社社内調製品)
ココアバター(StOSt含量26.1質量%、POSt含量38.7質量%、商品名:TCココアバター、大東カカオ株式会社製)
大豆油(リノール酸含量52.9質量%、性状:25℃で液状、商品名:大豆白絞油、日清オイリオグループ株式会社社製)
菜種油(リノール酸含量19.9質量%、性状:25℃で液状、商品名:菜種白絞油、日清オイリオグループ株式会社社製)
パームスーパーオレイン(ヨウ素価67)(リノール酸含量13.2質量%、性状:25℃で液状、日清オイリオグループ株式会社社内調製品)
カカオマス(ココアバター含量55質量%)
ココアパウダー(ココアバター含量11質量%)
【0047】
〔チョコレートの製造〕
表1〜5の配合で常法(混合、微粒化、精練、冷却)によりチョコレートを製造した。なお、配合量及び含量の単位は質量%である。
また各チョコレートの油脂中のトリグリセリド組成、脂肪酸組成を前記方法により測定した。測定結果を表6〜10に示した。含量の単位は質量%である(質量比の単位はなし)。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
〔チョコレートのテンパリング適性の評価〕
融解させた各チョコレートを、最下点の温度25.9〜26.6℃、リヒートの温度26.9〜27.9℃の条件下でテンパリングを行い、テンパリングした各チョコレートを型に流し込み、10℃の冷蔵庫でチョコレートが固化するまで冷却した。固化した各チョコレートの表面を観察した後、チョコレートが型から抜け出すかを評価した。
評価は以下の基準に従い行った。評価結果は○である場合、チョコレートはテンパリング適性があると判断した。評価結果を表6〜10に示す。
<テンパリング適性の評価基準>
○:チョコレート表面にブルームが発生していない、かつ、チョコレートが型から抜け出す。
×:チョコレート表面にブルームが発生している、又は、チョコレートが型から抜け出さない。
【0054】
〔チョコレートの官能評価〕
融解させた各チョコレートを、最下点の温度25.9〜26.6℃、リヒートの温度26.9〜27.9℃の条件下でテンパリングを行い、チップ状に成形して冷却した。固体の状態のチップ状チョコレートを、アイスクリームにチョコレート含量が10質量%となるように、混合してチップ状チョコレート入りアイスクリームを製造した。
チップ状チョコレート入りアイスクリームを食した時のチョコレートの食感及び口溶けを評価した。食感は5段階(1点〜5点)で評価した。食感の評価は、点数が低いほど食感が軟らかいことを示しており、4点以下である場合を良好であると判断した。口溶けは3段階(◎、○、×)で評価した。口溶けの評価は、◎又は○である場合を良好であると判断した。評価結果を表6〜10に示す。なお、テンパリング適性が×である比較例5、6、9、10、13〜16、18のチョコレートについては、食感及び口溶けの評価を行わなかった。
【0055】
【表6】
【0056】
【表7】
【0057】
【表8】
【0058】
【表9】
【0059】
【表10】
【0060】
表5〜9から分かるように、実施例のチョコレートは、テンパリング適性があり、アイスクリームと共に食した時のチョコレートの食感、口溶けも良かった。
一方、表5〜10から分かるように、比較例のチョコレートは、テンパリング適性がないか、アイスクリームと共に食した時のチョコレートの食感、口溶けが良くなかった。
【0061】
〔チョコレートの保存試験〕
官能評価のところで用いた実施例1〜4のチップ状チョコレートを、10℃、20℃で1週間保存した。保存後のチップ状チョコレートの外観を観察した。結果は、実施例1〜4のチップ状チョコレート全てにおいて、10℃、20℃共にブルームの発生、べたつき、はりつきは認められなかった。