(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板に第1液処理を行うための第1処理部と、前記第1処理部の上方において前記基板に第2液処理を行うための第2処理部と、を備えた基板処理装置を用いて行われる基板処理方法において、
前記第1処理部において、貯留部に貯留した第1処理液に前記基板を浸漬して、前記基板に第1液処理を施すことと、
前記第1処理部に設けられた前記貯留部に液を貯留した状態で、前記第2処理部において、前記基板を回転させながら前記基板に第2処理液を供給して、前記基板に第2液処理を施すことと、
を備え、
前記第2処理液は薬液であり、第2液処理を行う際に前記貯留部に貯留される液は純水であることを特徴とする基板処理方法。
基板に第1液処理を行うための処理液を貯留する貯留部を備えた第1処理部と、前記第1処理部の上方において基板に第2液処理を行うための第2処理部と、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部を回転させる回転機構と、基板を前記第1処理部と第2処理部との間で移動させることができる基板移動機構と、前記第2処理部において前記第2液処理を行う際に、前記基板保持部により保持されて回転する基板に処理液を供給する処理液供給ノズルと、前記貯留部に液を供給する液供給手段と、を備えた基板処理装置に請求項4または5記載の基板処理方法を実行させるためのプログラムが格納された記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して発明の実施形態について説明する。まず、
図1を用いて、基板洗浄装置として構成された基板処理装置100を含む処理システムについて説明する。処理システムは、外部から被処理基板としての半導体ウエハW(以下単に「ウエハW」と称する)を収容したキャリアを載置するための載置台101と、キャリアに収容されたウエハWを取り出すための搬送アーム102と、搬送アーム102によって取り出されたウエハWを一時的に載置するためのバッファを有する棚ユニット103と、棚ユニット103に載置されたウエハWを受け取り、当該ウエハWを基板洗浄装置10内に搬送する搬送アーム104と、を備えている。
図2に示すように、液処理システムには、複数(
図2に示す態様では10個)の基板処理装置100と、2つのリバーサー(REV、ウエハ裏返し装置)105が組み込まれている。
【0012】
次に、
図2〜
図4を参照して基板処理装置100の構成について説明する。
図2に示すように、基板処理装置100は、ウエハWに第1液処理を行うための第1処理部1と、前記第1処理部の上方においてウエハWに第2液処理を行うための第2処理部2とを有している。本実施形態においては、第
2液処理は、ウエハWを回転させながらノズルからウエハWに処理液を吐出することにより行われる液処理であり、第
1液処理は、ウエハWを処理液に浸漬(DIP)さることにより行われる液処理である。基板処理装置100は、第1処理部1における処理を実行するための複数の第1処理用部材と、第2処理部における処理を実行するための複数の第2処理用部材とを備えている。第1および第2処理用部材については、基板処理装置100の具体的構成を詳述した後に説明する。
【0013】
基板処理装置100は、回路パターン形成面を下方に向けてウエハWを支持する基板保持部10を有している。基板保持部10は、ウエハWの直径より大きな直径を有する円形の天板11と、天板11の周縁部に設けられた3つの把持爪(各図では3つのうちの2つの把持爪12a,12bが示されている)とを有している。3つの把持爪は、天板11の円周を3等分した位置に設けられており、そのうちの1つの把持爪12a(
図2の右側に示したもの)が可動である。可動の把持爪12aは、ウエハWを他の2つ(1つしか図示されていない)の固定された把持爪12bに向けて押し付けるように、バネ(図示せず)により付勢されている。把持解放機構13の押棒13aにより、バネ力に抗して可動の把持爪12aをウエハWを解放する位置に移動させることができる。このような把持爪による把持および把持解放を可能とする機構は当該技術分野において良く知られており、詳細な説明は省略する。把持爪により保持されたウエハWの上面と、天板11の下面との間には隙間が形成されている。
【0014】
天板11は、モータ(回転機構)14により鉛直軸線周りに回転せることができる。天板11を回転させることにより、把持爪により把持されたウエハWも、天板11と一緒に回転する。天板11の上方に、ウエハWを加熱するためのヒータ15が設けられている。ヒータ15は、ウエハWを加熱するのに適した波長の光、例えば880nmの波長の光を照射する複数のLEDランプからなるランプアレイにより構成することができる。ヒータ15には図示しない電源装置から通電される。この場合、ランプアレイの真下にある天板11の部分は、880nmの波長の光を良く透過する材料であって後述するSPM液により腐食しない材料、例えば、石英またはテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成することが好ましい。ヒータ15は、天板11を回転させても回転しないように、天板11から構造的に分離されている。把持解放機構13、モータ14およびヒータ15を薬液雰囲気から保護するために、天板11の上方に概ね円筒形のカバー16が設けられている。このカバー16も、天板11を回転させても回転しないように、天板11から構造的に分離されている。
【0015】
モータ14は中空の回転軸14aを有しており、回転軸14aの空洞の内部および天板の中心に形成された穴に、上ノズル20が通されている。上ノズル20は、モータ14を駆動しても回転しないように、回転軸14aに対して相対回転可能であるか、または回転軸14aから構造的に分離されている。上ノズル20内を、その軸線方向に、リンス液(本実施形態では常温の純水(「CDIW」とも称する)が流れるリンス液通路21aおよびN2ガスが流れるN2ガス通路22aが延びている。リンス液通路21aの下端はリンス液吐出口21bとなっており、N2ガス通路22aの下端はN2ガス吐出口22bとなっている。リンス液通路21aには、リンス液供給機構21cからリンス液としての常温の純水が供給される。N2ガス通路22aには、N2ガス供給機構22cからN2ガス(窒素ガス)が供給される。
【0016】
基板保持部10は支持アーム17により支持されている。支持アーム17は、昇降機構18により昇降可能である。昇降機構18は、例えばボールねじ機構により構成することができる。昇降機構18を駆動することにより、天板11、把持爪12a、12b、把持解放機構13、モータ14、ヒータ15、カバー16および上ノズル20を一緒に昇降させることができる。基板保持部10は、基板保持部10に対してウエハWの搬出入が行われる搬出入位置(
図2に示す位置よりもさらに高い位置)と、第1処理位置(第1処理部1における処理のための
図2に示す位置)と、第1処理位置よりも低い第2処理位置(第2処理部2における処理のための
図3および
図4に示す位置)とをとることができる。
【0017】
基板保持部10の下方には、ウエハWが浸漬される処理液を貯留する槽を形成する貯留部30が設けられている。貯留部30は、円形の底板(底壁)31と、底板31の外周縁を囲むリング状の堰部材32とから構成されている。堰部材32は、エアシリンダ等の昇降機構33により昇降させることができ、これにより底板31と堰部材32との相対的高さ位置関係を変更することができる。堰部材32は、上昇位置(
図3に示す位置)、中間位置(
図2に示す位置)および下降位置(
図4に示す位置)をとることができる。底板31の外周縁と堰部材32の内周面との間には隙間34が形成されている。なお、図示の便宜上、隙間34のサイズは実際より大きく描かれている。
【0018】
底板31の上面は、中心部が最も高く、周縁に近づくに従って低くなるように、傾斜している。これにより貯留部30からの排液を効率良く行うことができる。底板31には、超音波振動子35が設けられている。貯留部30内に洗浄液を貯留した状態で超音波振動子35に図示しない超音波発振子から電力供給することにより、超音波洗浄を行うことができる。
【0019】
底板31の中央部を上下に貫通する穴に下ノズル40が通されている。下ノズル40内には、その軸線方向に、薬液(本実施形態では加熱された硫酸と常温の過酸化水素水とを混合することにより生成されたSPM(Sulfuric Acid Hydrogen Peroxide Mixture)液)が流れる薬液通路41a、リンス液(本実施形態では常温のDIW(純水))が流れるリンス液通路42aおよびN2ガス通路43aが延びている。薬液通路41aの上端は薬液吐出口41bとなっており、リンス液通路42aの上端はリンス液吐出口42bとなっており、そして、N2ガス通路43aの上端はN2ガス吐出口43bとなっている。薬液通路41aには、薬液供給機構41cから、SPM液が供給される。リンス液通路42aには、リンス液供給機構42cから常温のDIWが供給される。N2ガス通路43aには、N2ガス供給機構43cからN2ガスが供給される。
【0020】
下ノズル40は、エアシリンダ等の昇降機構44により上昇位置(
図2に示す位置)と下降位置(
図3、
図4に示す位置)との間で昇降可能である。下ノズル40は、板状の支持体44bにより支持されており、支持体44bが昇降機構44により昇降させられることにより、下ノズル40が昇降する。下ノズル40が通される底板31の穴の内周面と下ノズル40の外周面との間には図示しない適当なシール部材が設けられている。また、当該シール部材からのリークが発生した場合に備えて、底板31の下面と支持体44bとの間に、下ノズル40の周囲を取り囲むようにベローズ44aが設けられている。
【0021】
さらに、底板31には、リンスノズル45が設けられている。リンスノズル45には、リンス液供給機構45cから加熱された純水(「HDIW」とも称する)が供給される。
【0022】
以上述べた各種処理流体の供給機構(具体的には、リンス液供給機構21c、N2ガス供給機構22c、薬液供給機構41c、リンス液供給機構42c、N2ガス供給機構43c、リンス液供給機構45c)は、各処理流体の供給源と、前記供給源に接続された管路と、前記管路に介設された流量調整装置(開閉弁、流量調整弁等)と、必要に応じて設けられる処理流体の温度を調整するための温調装置(ヒータ等)と、から構成することができる。なお、SPM液を供給するための薬液供給機構41cは、加熱した硫酸(H
2SO
4)を供給する硫酸供給機構と、常温の過酸化水素水(H
2O
2)を供給する過酸化水素水供給機構と、硫酸供給機構および過酸化水素水供給機構から供給された硫酸と過酸化水素水とを混合するインラインミキサー等の混合部から構成することができる。各供給機構としては当該技術分野における周知のものを採用することができるので、詳細な説明は省略する。
【0023】
貯留部30の周囲には、カップ体50が設けられている。カップ体50は、円環状の内壁51および外壁52と、仕切壁53と、底壁54とを有している。カップ体50内には、内壁51と仕切壁53との間に形成される環状の第1内部空間50Aと、外壁52と仕切壁53との間に形成される環状の第2内部空間50Bとが設けられている。後に詳述するように、第1内部空間50Aおよび第2内部空間50Bはそれぞれ、処理に供した流体をこの基板処理装置の外部に排出する第1排出路および第2排出路の一部をなす。第1内部空間50Aは、堰部材32により内側部分50A1と外側部分50A2とに分割される。
【0024】
カップ体50の底壁54には、第1内部空間50Aに流入する流体(具体的には主としてDIW)を排出する第1排出口55が形成されている。また、カップ体50の底壁54には、さらに、第2内部空間50Bに流入する流体(具体的には主としてSPM液)を排出する第2排出口56が形成されている。第2排出口56には、排出管56aが接続されており、排出管56aにはミストトラップ56bおよびイジェクタ56cが順次介設されている。排出管56aにミストトラップ56bを介設することに代えて、カップ体50の第2内部空間50B内に、気液分離のための構造を設けてもよい。
【0025】
第1内部空間50A内には、前述した貯留部30の堰部材32が位置しており、第1内部空間50Aは堰部材32により内側部分50A1と外側部分50A2とに区画されている。
【0026】
図2に概略的に示すように、基板処理装置100は、その全体の動作を統括制御するコントローラ(制御部)200を有している。コントローラ200は、基板処理装置100の全ての機能部品(例えば、基板保持部11、モータ14、ヒータ15および超音波振動子の電源、各種処理流体の供給機構等)の動作を制御する。コントローラ200は、ハードウエアとして例えば汎用コンピュータと、ソフトウエアとして当該コンピュータを動作させるためのプログラム(装置制御プログラムおよび処理レシピ等)とにより実現することができる。ソフトウエアは、コンピュータに固定的に設けられたハードディスクドライブ等の記憶媒体に格納されるか、あるいはCD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の着脱可能にコンピュータにセットされる記憶媒体に格納される。このような記憶媒体が
図2において参照符号201で示されている。プロセッサ202は必要に応じて図示しないユーザーインターフェースからの指示等に基づいて所定の処理レシピを記憶媒体201から呼び出して実行させ、これによってコントローラ200の制御の下で基板処理装置100の各機能部品が動作して所定の処理が行われる。
【0027】
次に、上述した基板処理装置100を用いて実行される基板処理方法の一実施形態として、ウエハWの上面にある不要なレジスト膜を除去する一連の処理について説明する。以下に説明する一連の処理は、コントローラ200が基板処理装置100の各機能部品の動作を制御することにより行われる。なお、本実施形態では、コントローラ200は、
図1に示す基板処理システム全体の動作を制御する機能も有している。
【0028】
除去すべき不要なレジスト膜を表面に有するウエハWが、キャリア101にから搬送アーム102により取り出され、棚ユニット103に置かれる。搬送アーム104が棚ユニット103からウエハWを取り出し、リバーサー105に搬入する。リバーサー105において、ウエハWは、回路パターン形成面すなわちレジスト膜が形成されている面が下を向くように裏返される。搬送アーム104は、リバーサー105からウエハWを取り出す。一方、基板処理装置100内において、昇降機構18を動作させて、基板保持部10を搬出入位置(基板保持部10の全体がカップ体40の最上部よりも十分に上にある位置)に位置させる。この状態で、搬送アーム104(
図2には図示せず)によって、搬出入位置にある基板保持部10の把持爪が把持可能な位置にウエハWが搬入される。ウエハWが基板保持部10の把持爪により保持されると、搬送アーム104は基板処理装置100から退出する。
【0029】
[薬液処理]
次に、ウエハWを保持した基板保持部10を、搬出入位置から、
図2に示す第
2処理位置まで下降させる。このときウエハWは、カップ体50の外壁52の上縁52aより低く、かつ仕切壁53の上縁53aより高い高さ位置に位置する。また、貯留部30の堰部材32を中間位置に位置させ、リンスノズル45から60℃〜80℃程度に加熱したDIWを噴出させ、貯留部30内にDIWを貯留する。なお、次工程が常温の処理液でウエハWを処理する場合には、常温のDIWを用いてもよい。噴出開始から貯留部30内にDIWが満たされるまでの間は、迅速に貯留部30内にDIWを満たすことができるような噴出流量でリンスノズル45からDIWを供給する。貯留部30内にDIWが満たされた後は、リンスノズル45からのDIWの噴出流量は、貯留部30の堰部材32と底板31との間の隙間34から第1内部空間50Aの内側部分50A1に漏出するDIWの漏出流量とほぼ均衡するように、減少させる。なお、このとき、堰部材32の上縁32aを越えて第1内部空間50Aの外側空間50A2にオーバーフローするDIWがあっても構わない。
【0030】
さらに、下ノズル40を上昇させ、下ノズル40の先端の薬液吐出口41bが、堰部材32の上縁32aより高い高さ位置、すなわち、貯留部30内に貯留されたDIWの液面より上の高さ位置に位置するようにする。また、基板保持部10に保持したウエハWを回転させ、次いで、ヒータ15への通電を開始し、基板保持部10に保持したウエハWを裏面側(上面側)から加熱する。また、イジェクタ55cを作動させ、カップ体50の第2内部空間50B内を吸引する。これにより、天板11と外壁52の上縁52aとの間の隙間から第2内部空間50B内に向かう空気流F1が形成される。
【0031】
次いで、下ノズル40の薬液吐出口41bから、基板保持部10に保持されて回転するウエハWの下面中央部に向けてSPM液を吐出する。SPM液は遠心力によりウエハW下面上を外側に向けて広がり、ウエハWの外方に飛散する。SPM液は、ウエハW下面上を流れていく際にレジスト膜と反応し、これによりレジスト膜が除去される。除去されたレジスト膜および反応生成物は、ウエハWの外方に飛散するSPM液と一緒に、カップ体50の外壁52の上縁52aと仕切壁53の上縁53aとの間から第1内部空間50Bに飛び込む(矢印S1を参照)。空気流F1によりSPM液、反応生成物および除去されたレジスト膜(以下、簡便のため「汚染物質」と呼ぶ)が第1内部空間50Bに飛び込むことが促進される。また、SPM液とレジスト膜との反応により生じた反応生成物であるヒューム(ガス状である)も、空気流F1により、第1内部空間50B内に導かれる。第1内部空間50Bに流入した汚染物質は、第2排出口56から排出され、ミストトラップ56bにより液体分とガス分とが分離され、工場廃液系(アシッドドレイン)および工場排気系に排出される。
【0032】
ウエハW下面に供給されたSPM液、反応生成物、除去されたレジスト膜の一部は、重力によりウエハWの下方に滴下し、貯留部30に向けて落下する。しかし、貯留部30にはDIWが貯留されているため、言い換えれば、
第1処理部1をなす貯留部30を構成する部材の表面がDIWにより覆われているため、当該部材の表面が汚染されることはない。また、貯留部30にはリンスノズル45から継続的にDIWが供給されるとともに貯留部30から隙間34を介してDIWが流出するようになっているため、貯留部30内に汚染物質が落下しても、汚染物質はDIWにより希釈され、また、DIWの流れに乗って貯留部30内から流出する。従って、貯留部30が汚染されることはない。なお、貯留部30カップ体50の第1内部空間50Aに流出したDIWは、排出口55から工場廃液系に排出される。
【0033】
[DIPリンス処理]
薬液処理を所定時間行った後、下ノズル40からのSPM液の吐出を停止し、ヒータ15への通電を停止し、基板保持部10の回転を停止する。また、貯留部30の堰部材32を中間位置から上昇位置へと移動させるとともに、リンスノズル45からのDIWの噴出量を増加させる。
図3に示すように貯留部30がDIWで満たされたら、リンスノズル45からのDIWの噴出流量を、貯留部30の堰部材32と底板31との間の隙間34から第1内部空間50Aの内側部分50A1に漏出するDIWの漏出流量とほぼ均衡するように、減少させる。なお、このときも、堰部材32の上縁32aを超えて第1内部空間50Aの外側部分50A2にオーバーフローするDIWがあっても構わない。また、下ノズル40がウエハWと衝突しないように、下降位置に下降させる。
【0034】
次いで、基板保持部10を下降させて、基板保持部10により保持されたウエハWを貯留部30に貯留された加熱されたDIW中に浸漬する。この状態で、超音波振動子35を駆動して、超音波振動を発生させ、ウエハWの超音波洗浄を行う。なお、図面の簡略化のため超音波振動子35は2個しか示されていないが、実際にはもっと多い数の超音波振動子35が設けられており、ウエハWの下方に均一に分布している。なお、より均一な超音波洗浄を行うために、基板保持部10を低速で回転させてウエハWを回転させてもよい。このように超音波洗浄を行うことにより、ウエハWの下面に付着している薬液処理由来の残渣がウエハWから除去される。除去された残渣は、DIWと一緒に、貯留部30から隙間34を通ってカップ体50の第1内部空間50Aに流出し、第1排出口55から工場廃液系に排出される。
【0035】
[DIWリンス処理]
上記のDIPリンス処理(ホットDIWに浸漬した状態で行われるリンス処理)を所定時間行った後、リンスノズル45からのDIWの噴出を停止し、
図4に示すように、貯留部30の堰部材32を上昇位置から下降位置へと移動させる。これにより、貯留部30に貯留されていたDIWの大半は、一気に堰部材32の上縁32aを越えてカップ体50の第1内部空間50Aの外側部分50A2内に流入し、第1排出口55から排出される。貯留部30に貯留されていたDIWの残りは、隙間34を通って第1内部空間50Aの内側部分50A1に流入し、第1排出口55から排出される。基板処理部10および下ノズル40は、DIPリンス処理を実行しているときと同じ高さ位置に維持する。この状態で、基板保持部10によりウエハWを回転させて、下ノズル40のリンス液吐出口42bからウエハWの下面中央部に常温のDIWを吐出し、また、上ノズル20のリンス液吐出口21bからウエハWの上面中央部に常温のDIWを吐出する。ウエハ上下面の中央部に吐出されたDIWは、遠心力により、ウエハW上に残存する汚染物質を洗い流しながらウエハWの周縁に向かって拡がり、ウエハWの外方に飛散する。カップ体50の仕切壁53の上縁53aは、ウエハWよりも高い高さ位置にあるため、飛散したDIWは、仕切壁53に受け止められ、第1内部空間50Aの外側部分50A2を下方に流れて、第1排出口55から排出される。
【0036】
[スピン乾燥処理]
DIWリンス処理を所定時間行った後、下ノズル40のリンス液吐出口42bおよび上ノズル20のリンス液吐出口21bからのDIWの吐出を停止し、ウエハWの回転速度を増加させる。これにより、ウエハW上に残存するDIWが遠心力により振り切られ、これによりウエハWの乾燥が行われる。このとき、ウエハWから飛散したDIWは、仕切壁53に受け止められ、第1内部空間50Aの外側部分50A2を下方に流れて、排出口55から排出される。また、このとき、下ノズル40のN2吐出口43bからウエハWの下面中央部にN2ガスを吐出し、また、上ノズル20のN2ガス吐出口22bからウエハWの上面中央部にN2ガスを吐出する。これによりウエハW周辺の雰囲気の酸素濃度および湿度が低下し、ウオーターマークの発生を防止しつつ、効率よくウエハWの乾燥を行うことができる。
【0037】
以上により、1枚のウエハWに対する一連の処理が終了する。その後、基板保持部10を搬出入位置に位置させ、図示しない搬送アームにより処理済みのウエハWを基板処理装置100外に搬出する。
【0038】
上記の説明より理解できるように、上記実施形態においては、第1処理部1において行われる第1液処理はDIPリンス処理であり、第1処理部の上方の第2処理部で行われる第2液処理は薬液処理(SPM処理)である。また、基板処理装置100は、第1処理部1における第1液処理を実行するための複数の第1処理用部材として、主として貯留部30、基板保持部10およびリンスノズル45を有しており、第2処理部2における第1液処理を実行するための複数の第2処理用部材として、主として基板保持部10、モータ14および下ノズル40を有していることになる。基板保持部10は、第1処理部1および第2処理部2の両方で基板を保持するために用いられているので、第1処理用部材であり第2処理用部材でもある。
【0039】
上記の実施形態によれば、第1処理部1の上方の第2処理部2で第2処理液(SPM液)による薬液処理(SPM処理)が行われる際に、第1液処理を行う際にウエハWが浸漬される第1処理液を貯留する貯留部30に液体(DIW)が貯留されるようになっているため、貯留部30が第2処理液(SPM液)で汚染されることが防止される。このため、第2液処理の後に第1処理部において第1液処理を行う際に、クロスコンタミネーションが生じることを防止することができる。
【0040】
しかも、第1処理部に供給された液体(DIW)をこの基板処理装置100外に排出する第1の排出路の一部を構成するカップ体50の第1内部空間50Aと、第2処理部に供給された液体(SPM)をこの基板処理装置100外に排出する第2の排出路の一部を構成するカップ体50の第2内部空間50Bとが仕切壁53により隔離されているため、第1処理部に供給された液体と第2処理部に供給された液体とが反応性を有していた場合でも、反応による悪影響(発熱、有害物質、汚染物質の発生)が生じるおそれはない。また、第1処理部に供給された液体と第2処理部に供給された液体とが混ざらないため、第2処理部に供給された液体を回収して再利用することができる。
【0041】
また、上記実施形態によれば、貯留部30を構成する底板31と堰部材32とが相対的に上下動可能であるため、例えば堰部材32の上縁32aの高さ底板31の上面と同じ高さにすることにより、貯留部30に貯留されていた液体を迅速に排出することができ、次の工程に迅速に移行することができる。また、底板31と堰部材32とを相対的に上下動させることにより、貯留部30の深さを必要に応じて適宜変更することができる。
【0042】
なお、上記実施形態においては、
図2に示す薬液処理時において堰部材32を中間位置に位置させたが、上昇位置に位置させてもよい。この場合は、薬液処理からDIPリンス処理への移行時間を短縮することができる一方で、下ノズル40の上下動のストローク量を大きくする必要がある。
【0043】
また、上記実施形態においては、貯留部30に一定量の液体を貯留するときの貯留部30からの液体の排出は、主に底板31と堰部材32との隙間34からの漏出により行ったが、これに限定されるものではない。貯留部30の液体の排出を、主として堰部材32の上縁32aでの液体のオーバーフローにより行ってよい。なお、隙間34からの漏出により排出を行うことにより、貯留部30内に落下する汚染物質(詳細後述)を積極的に希釈しながら貯留部30から排出することができる。一方、堰部材32の上縁32aでのオーバーフローにより排出を行うことにより、汚染物質が多く含まれる表層部のDIWを排出することができる。漏出およびオーバーフローを併用することにより、上記の2つの効果を同時に達成することができる。状況に応じて、漏出およびオーバーフローのいずれか一方のみを採用してもよいし、両方を採用することもできる。漏出のみを採用する場合には、オーバーフローが生じないように、リンスノズル45からの噴出流量を制御すればよい。また、オーバーフローのみを採用する場合には、堰部材32と底板31との間の隙間34を廃止するかあるいはシールすればよい。漏出およびオーバーフローの両方を採用する場合には、所望量のオーバーフローが生じるように、リンスノズル45からの噴出流量を制御すればよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、薬液処理において用いる薬液はSPM液であったが、これに限定されるものではなく、他の薬液、例えばSC−1、SC−2、DHFなどであってもよい。また、一連の処理の際に、ウエハWの回路パターン形成面を上に向けて、ウエハW裏面(パターン非形成面)の薬液処理を行ってもよい。
【0045】
また、上記実施形態において、DIWリンス処理とスピン乾燥処理との間に、SC−1洗浄処理および再度のDIWリンス処理を行ってもよい。SC−1洗浄は、下ノズル40にSC−1液吐出のための構成を追加することにより、
図4に示す状況で実行することができる。
【0046】
また、上記実施形態においては、第1処理部1および第2処理部2においてウエハWを保持する部材は同じ基板保持部10であったが、これに限定されるものではない。例えば、貯留部30内においてウエハWを保持する別の基板保持部を設けてもよい。また、当該別の基板保持部を昇降自在として、第1処理部1内で基板保持部10との間でウエハWを受け渡しするように構成してもよい。また、上記実施形態においては、第1処理部1と第2処理部2との間でウエハWを移動させる基板移動機構は、基板保持部10および当該基板保持部10を昇降させる昇降機構18により構成されていたが、これに限定されるものではない。上記のように、基板保持部10とは別の昇降可能な基板保持部を設けた場合には、これが前記基板移動機構となる。また、基板保持部10および前記別の基板保持部以外の部材、例えば昇降するアームまたはピンを前記基板移動機構として設けてもよい。
【0047】
上記実施形態においては、前記第2処理部にて基板に第2液処理を行う際に、前記第1処理部を構成する部材の表面を覆う液体を供給する液供給手段は、第1処理部において第1液処理(DIPリンス処理)のために用いられる液であるDIWを供給するリンスノズル45であったが、これに限定されるものではない。前記第1処理部における第1液処理がDIWリンス処理以外の液処理(例えば第2液処理と別の薬液を用いた液処理)であることも考えられる。このような場合には、第1液処理に用いる処理液を供給するための液供給手段(例えばノズル)と、前記第1処理部を構成する部材の表面を覆う液体を供給する液供給手段と、が別の部材であってもよい。
【0048】
基板処理装置100により処理される基板は、半導体ウエハWに限定されるものではなく、半導体装置製造技術分野において用いられる任意の基板、例えばガラス基板、セラミック基板等であってもよい。