(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明にかかる吸水性樹脂
本発明にかかる吸水性樹脂は、逆相懸濁重合法によって水溶性エチレン性不飽和単量体を重合して製造される1次粒子を、さらに逆相懸濁重合法によって凝集させて形成される。
【0022】
上記1次粒子の中位粒子径は100〜250μmである。好ましくは110〜240μmであり、さらに好ましくは130〜230μmである。
【0023】
1次粒子の中位粒子径は、液体を吸収し膨潤した後の通液性能の良い吸水性樹脂を得る観点から、100μm以上であり、2次粒子の凝集強度の低下及び吸収速度が遅くなることを防止する観点から、250μm以下である。中位粒子径の測定については、後述する実施例にて記載する方法によって実施できる。
【0024】
本発明にかかる1次粒子の形状は特に限定されないが、逆相懸濁重合法によって製造される1次粒子であるために、例えば、真球状、楕円球状等のような円滑な表面形状を有する略球状の単粒子形状が挙げられる。このような形状の1次粒子は、表面形状が円滑であることにより、粉体としての流動性が高くなるうえに、凝集した粒子が密に充填されやすいために衝撃を受けても破壊されにくいので、粒子強度が高い吸水性樹脂となる。
【0025】
上述の範囲を満たす1次粒子を、さらに逆相懸濁重合法によって凝集させて形成される、30g/g以下の生理食塩水保水能を有する吸水性樹脂を、本発明にかかる吸水性樹脂とする。吸収性物品として、より優れた効果を付与する観点から、生理食塩水保水能を25〜30g/gとする吸水性樹脂が好ましい。
【0026】
生理食塩水保水能とは、単位質量当りの吸水性樹脂が吸収し得る生理食塩水の質量を示し、吸水性樹脂の液体の吸収容量の度合いを表す。生理食塩水保水能の測定は、後述する本願実施例にて記載する方法によって実施することができる。
【0027】
このような中位粒子径、及び生理食塩水保水能の数値範囲を満たす本発明にかかる吸水性樹脂は、吸収体等として使用された場合に、液拡散性を阻害する現象、いわゆるゲルブロッキング現象を防ぐことが可能となる。さらに、吸収体等に使用した場合に吸収した液の逆戻り、液漏れ等を防ぐことが可能となる。
【0028】
上述した本発明にかかる吸水性樹脂の特徴を示す指標として、0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度が挙げられ、具体的には10分あたり通常200g以上である。好ましくは200〜800gであり、さらに好ましくは250〜700gである。
【0029】
0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度とは、既に液体を吸収して膨潤した単位質量当りの吸水性樹脂を、単位時間当たりに通過する0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の量を示し、液体を吸収した後の吸水性樹脂がどの程度の通液性能を有するかを表す。0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度の測定は、後述の実施例にて記載する方法によって実施できる。
【0030】
また、上述した本発明にかかる吸水性樹脂の特徴を示す指標として、生理食塩水吸水速度も挙げられ、具体的には通常45〜180秒であり、好ましくは50〜170秒であり、さらに好ましくは60〜150秒である。
【0031】
生理食塩水吸水速度とは、単位質量当りの吸水性樹脂が、所定量の生理食塩水を吸収するまでの時間を示す。生理食塩水吸水速度の測定は、後述の実施例にて記載する方法によって実施できる。
【0032】
なお、本発明にかかる吸水性樹脂の中位粒子径は、吸収体等に使用された場合の液拡散性を阻害する現象、すなわちゲルブロッキング現象を防ぐ観点から通常250μm以上(好ましくは300μm以上)とすればよく、吸収体等に使用された場合の部分的に堅くなるのを防ぎ、柔軟性を保つ観点から、通常600μm以下(好ましくは500μm以下)とすればよい。中位粒子径の測定については、後述する実施例にて記載する方法によって実施できる。
【0033】
またさらに、本発明にかかる吸水性樹脂は、粉体としての流動性の低下を防ぐ観点から、水分率を通常20質量%以下にすればよく、好ましくは5〜10質量%である。水分率の測定については、後述する実施例にて記載する方法によって実施できる。
【0034】
本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法
本発明にかかる製造方法は2段以上の逆相懸濁重合法によって実施される。より具体的には、下記の工程1及び2を含む製造方法が挙げられる。
(1)分散安定剤の存在下に水溶性エチレン性不飽和単量体を逆相懸濁重合法によって重合し、1次粒子が分散するスラリーを作製する工程1。
(2)工程1にて得られるスラリーに、水溶性エチレン性不飽和単量体を加えて重合反応させる逆相懸濁重合法によって、該スラリー中に分散する1次粒子を凝集させる工程2。
【0035】
また、工程2によって得られる凝集体もスラリーの状態で得られるために、生産性の向上を目的として、工程2によって得られる凝集体が分散したスラリーに対して、さらに水溶性エチレン性不飽和単量体を加え、重合反応させる逆相重合反応法を用いた工程を繰り返し行って凝集体を形成させ、吸水性樹脂としてもよい。
【0036】
以下に本発明にかかる吸水性樹脂を製造する方法の一態様について詳述するが、かかる態様のみには限定されない。
【0037】
工程1について
本工程における逆相懸濁重合法とは、分散安定剤を含む分散媒に、水溶性エチレン性不飽和単量体を含む水溶液を添加し、撹拌することで懸濁させ、分散した水溶液中にて水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させる方法である。よって、工程1では分散媒中に単量体が重合して製造される上述の中位粒子径の範囲を満たす1次粒子が分散するスラリーが得られる。
【0038】
使用する水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(本明細書においては、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」、「アクリレート」及び「メタクリレート」を合わせて「(メタ)アクリレート」とそれぞれ表記する。)、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそれらの塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体、並びに、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体やその4級化物等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種を用いればよい。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体のなかでも、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びN,N−ジメチルアクリルアミドが好適に用いられる。
【0039】
単量体を含む水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度は、特に限定はされないが、単量体を含む水溶液当り、好ましくは20質量%以上飽和濃度以下であり、より好ましくは25〜70質量%であり、さらに好ましくは30〜55質量%である。
【0040】
なお、水溶性エチレン性不飽和単量体として、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のように酸基を有する単量体を用いる場合、その酸基を予めアルカリ金属塩等のアルカリ性中和剤によって中和してもよい。このようなアルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びアンモニア等の水溶液を挙げることができる。これらアルカリ性中和剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
アルカリ性中和剤による全酸基に対する中和度は、得られる吸水性樹脂の浸透圧を高めることで吸収性能を高め、かつ余剰のアルカリ性中和剤の存在により、安全性等に問題が生じないようにする観点から、通常10〜100モル%の範囲とすればよく、好ましくは30〜80モル%である。
【0042】
分散媒には石油系炭化水素分散媒を用いればよく、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、リグロイン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができる。これらの分散媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの分散媒のなかでも、工業的に入手が容易であり、品質が安定しており、かつ安価であるため、n−ヘキサン、n−ヘプタン、及びシクロヘキサンが好適に用いられる。また、同観点から、上記石油系炭化水素分散媒の混合物の例として、市販されているエクソールヘプタン(エクソンモービル社製:ヘプタンおよび異性体の炭化水素75〜85%含有)が好適に用いられる。
【0043】
分散安定剤としては界面活性剤を用いればよく、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、N−アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。これらの分散安定剤のなかでも、単量体水溶液の分散安定性の面から、ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルが好適に用いられる。これらの分散安定剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
分散安定剤として用いる界面活性剤のHLB値は、得られる1次粒子の形状に影響を及ぼす。上述したような略球状の1次粒子の形態を有する吸水性樹脂を得るために選択される界面活性剤のHLB値は、使用する界面活性剤の種類によって、それぞれのHLB値が異なるため、一概には決定されないが、例えば、ショ糖脂肪酸エステルであれば、HLB値が5以下の範囲を満たすものを使用すればよい。
【0045】
また分散安定剤として、界面活性剤とともに高分子系分散剤を併用してもよい。使用される高分子系分散剤としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、エチレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・プロピレン・無水マレイン酸共重合体、ブタジエン・無水マレイン酸共重合体、酸化型ポリエチレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらの高分子系分散剤のなかでも、単量体水溶液の分散安定性の面から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、及びエチレン・アクリル酸共重合体が好適に用いられる。これらの高分子系分散剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
分散安定剤の使用量は、分散媒として用いる石油系炭化水素分散媒中における、単量体を含む水溶液の分散状態を良好に保ち、かつ使用量に見合う分散効果を得るため、単量体を含む水溶液100質量部に対して、通常0.1〜5質量部とすればよい。好ましくは0.2〜3質量部である。
【0047】
単量体を含む水溶液には、必要に応じて架橋剤(内部架橋剤)を添加して重合してもよい。単量体の重合反応前の単量体水溶液に添加する内部架橋剤としては、重合性不飽和基を2個以上有する化合物を用いればよい。例えば、(ポリ)エチレングリコール(本明細書において、例えば、「ポリエチレングリコール」と「エチレングリコール」を合わせて「(ポリ)エチレングリコール」と表記する。)、(ポリ)プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、(ポリ)グリセリン等のポリオール類のジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類、前記のポリオールとマレイン酸、フマール酸等の不飽和酸類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビスアクリルアミド類、ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類、アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N”−トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0048】
また、内部架橋剤としては、重合性不飽和基を2個以上有する前記化合物に加えて、その他の反応性官能基を2個以上有する化合物を用いてもよい。例えば、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のグリシジル基含有化合物、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
これらの内部架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
添加する内部架橋剤の使用量は、得られる吸水性樹脂の吸収容量を十分に高める観点から本工程における単量体の総量に対して、通常1モル%以下とすればよく、好ましくは0.5モル%以下である。
【0051】
単量体を含む水溶液には、吸水性樹脂の吸収性能を制御するために、連鎖移動剤を添加してもよい。このような連鎖移動剤として、次亜りん酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等を例示することができる。
【0052】
単量体を含む水溶液には、ラジカル重合開始剤が含まれていてもよい。具体的なラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、過酸化水素等の過酸化物類、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(N−フェニルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(N−アリルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
ラジカル重合開始剤の使用量は、本工程における単量体の総量に対して、通常0.005〜1モル%である。使用量が0.005モル%未満の場合、単量体の重合反応に多大な時間を要するので、好ましくない。使用量が1モル%を超える場合、急激な重合反応が起こるので、好ましくない。
【0054】
なお、ラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤と併用し、レドックス重合開始剤として用いてもよい。
【0055】
単量体の重合反応の反応温度は、ラジカル重合開始剤の使用の有無や、その使用するラジカル重合開始剤の種類によって異なるが、通常20〜110℃とすればよく、好ましくは40〜90℃である。このような範囲の温度で単量体の重合反応を行うことによって、単量体の重合に係る時間を適度にすることができる。また、単量体の重合反応により発生する熱の除去が容易となるために、円滑な重合反応を行うことができる。反応時間は、通常0.1時間以上4時間以下とすればよい。
【0056】
工程1において作製する1次粒子の中位粒子径は、例えば、各種の攪拌翼を用いて、単量体の重合反応時の攪拌回転数を変更することによって制御することができる。攪拌翼としては、例えば、プロペラ翼、パドル翼、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、リボン翼、フルゾーン翼(神鋼パンテック(株)製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)、スーパーミックス翼(サタケ化学機械工業(株)製)等を使用することが可能である。通常、同一種の撹拌翼であれば、撹拌回転数を高めるほど得られる1次粒子の中位粒子径は小さくなる。
【0057】
また、1次粒子の中位粒子径は、水溶性エチレン性不飽和単量体を含む水溶液に増粘剤を添加して、水溶液粘度を変えることによっても制御できる。増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸(部分)中和物、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を用いることができる。通常、攪拌回転数が同じであれば、単量体水溶液の粘度が高いほど得られる1次粒子の中位粒子径は大きくなる。
【0058】
上記のように、本発明にかかる1次粒子の中位粒子径は、例えば撹拌回転数の制御、水溶性エチレン性不飽和単量体を含む水溶液の粘度を調節することによって制御することができる。
【0059】
工程2について
工程2では、工程1にて得られる1次粒子が分散するスラリーに、水溶性エチレン性不飽和単量体を含む水溶液を加えて単量体を重合反応させる逆相懸濁重合法によって、該スラリー中に分散する1次粒子を凝集させる。
【0060】
工程2において、単量体の重合反応を行う前に、工程1にて得られたスラリーを冷却して、該スラリー中に含まれる分散安定剤の一部を析出させる工程が含まれていてもよい。冷却温度は、特に限定されず、通常は10〜50℃とすればよい。分散安定剤の析出は、スラリー中の白濁によって確認すればよく、例えば、目視、濁度計等の手法によって確認すればよい。
【0061】
すなわち、工程2における水溶性エチレン性不飽和単量体を含む水溶液の添加は、工程1における重合にて得られた1次粒子を凝集し、衛生材料用途に適した粒径とするために実施される。
【0062】
工程2にて使用する水溶性エチレン性不飽和単量体は、工程1にて使用した水溶性エチレン性不飽和単量体として例示したものと同様なものが使用できるが、単量体の種類、中和度、中和塩種及び水溶液中における単量体の濃度は、工程1にて用いた水溶性エチレン性不飽和単量体と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0063】
工程2にて使用する水溶性エチレン性不飽和単量体を含む水溶液には重合開始剤を添加してもよい。使用する重合開始剤は、工程1の重合に用いた重合開始剤として例示したものから適宜選択して使用することができる。
【0064】
工程2にて使用する水溶性エチレン性不飽和単量体の添加量は、適度な凝集体となる吸水性樹脂を得る観点から、工程1にて使用した水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、通常50〜300質量部とすればよく、好ましくは100〜200質量部であり、より好ましくは120〜160質量部である。
【0065】
また、工程2にて使用する水溶性エチレン性不飽和単量体を含む水溶液にも、必要に応じて、内部架橋剤、連鎖移動剤等を添加してもよく、工程1にて例示したものから選択して使用することができる。これらの剤の使用量についても、工程1にて規定した量と同様にすればよい。
【0066】
工程2における単量体の重合反応温度は、使用するラジカル重合開始剤によって異なるが、通常20〜110℃とすればよく、好ましくは40〜90℃である。反応時間は、通常0.1時間以上4時間以下とすればよい。
【0067】
工程2の逆相懸濁重合法における攪拌は、全体が均一に混合されていればよい。
【0068】
上述の方法によって得られる吸水性樹脂の中位粒子径は、分散安定剤の析出状態や、工程1にて使用した水溶性エチレン性不飽和単量体の使用量に対して、工程2での水溶性エチレン性不飽和単量体の量を制御することによって適宜調節ができる。
【0069】
工程2において、1次粒子を凝集した後に、架橋剤(後架橋剤)を添加して処理を施す工程が含まれていてもよい。この工程によって、得られる凝集体の表面架橋密度がより高くなり、荷重下吸水能、吸収速度、ゲル強度、更に液体の吸収容量等の諸性能に優れ、衛生材料用途に好適な吸水性樹脂の製造が可能となる。
【0070】
このような後架橋剤としては、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。その例としては、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロール(ポリ)グリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のジグリシジル基含有化合物、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。これらの後架橋剤のなかでも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル及び(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルが好適に用いられる。これらの後架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
後架橋剤の添加量は、得られる吸水性樹脂の吸収性能を低下させず、かつ表面近傍の架橋密度を強めて、上述の諸性能を高める観点から、使用した単量体の総量に対して、通常0.005モル%から1モル%の範囲とすればよく、好ましくは0.01モル%から0.5モル%の範囲である。
【0072】
後架橋剤の添加時期は、特に限定されないが、水溶性エチレン性不飽和単量体の総量100質量部に対し、通常1〜400質量部の水を含有する状態で添加すればよい。好ましくは5〜200質量部であり、より好ましくは10〜100質量部である。
【0073】
吸水性樹脂が含有する水分量に従って後架橋剤の添加時を選択することで、より好適に吸水性樹脂の表面近傍における架橋を施すことができ、得られる凝集体を吸水性樹脂としたときに、好適な吸収性能を付与することができる。
【0074】
また、1次粒子の中位粒子径の大きさによっても異なるが、上述の後架橋剤の添加時期に従って、吸水性樹脂の液体の吸収容量を制御することもできる。例えば、吸水性樹脂の水分の含有量が少ない場合に後架橋処理を行えば、得られる吸水性樹脂の吸収容量が、多くなる傾向が確認できる。
【0075】
後架橋剤を添加する際には、後架橋剤をそのまま添加しても水溶液として添加してもよいが、必要に応じて、溶媒として親水性有機溶媒を用いた溶液として添加してもよい。必要に応じて溶媒として親水性有機溶媒を用いてもよい。この親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これら親水性有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよく、2種類以上を併用、あるいは水との混合溶媒として使用してもよい。
【0076】
後架橋処理における反応温度は、50〜250℃であることが好ましく、60〜180℃であることがより好ましく、60〜140℃であることがさらに好ましく、70〜120℃であることがよりさらに好ましい。反応時間は、通常0.1時間以上5時間以下とすればよい。
【0077】
上述のように後架橋処理された後、乾燥することにより吸水性樹脂を得ることができる。
【0078】
前記乾燥は、常圧下で行っても減圧下で行ってもよく、乾燥効率を高めるため、窒素等の気流下で行ってもよい。乾燥が常圧の場合、乾燥温度は70〜250℃であることが好ましく、80〜180℃であることがより好ましく、80〜140℃であることがさらに好ましく、90〜130℃であることがよりさらに好ましい。また、減圧下の場合、乾燥温度は60〜100℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。
【0079】
このようにして得られた本発明にかかる吸水性樹脂は、通液性能に優れ、吸収体として用いた際に、ゲルブロッキング現象を抑制する作用も示す。そして、前記吸収体は吸収性物品に好適に使用される。
【0080】
本発明にかかる吸収体及び吸収性物品
本発明にかかる吸収体は、上述した吸水性樹脂と親水性繊維より構成されている。吸収体の構成としては、例えば、吸水性樹脂と親水性繊維を均一な組成となるように混合することによって得られた混合分散体、層状の親水性繊維の間に吸水性樹脂が挟まれたサンドイッチ構造体、吸水性樹脂と親水性繊維とをティッシュで包んだ構造体等が挙げられるが、本発明はかかる例示に限定されるものではない。
【0081】
吸収体には、吸収体の形態保持性を高めるために、熱融着性合成繊維、ホットメルト接着剤、接着性エマルジョン等の接着性バインダーを添加してもよい。
【0082】
親水性繊維としては、例えば、木材から得られる綿状パルプ、メカニカルパルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維、親水化処理されたポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成樹脂からなる繊維等が挙げられる。
【0083】
本発明にかかる吸収性物品は、上記の吸収体を液体透過性シートと、液体不透過性シートとの間に保持した構造を有する。
【0084】
液体透過性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の繊維からなる、エアスルー型、スパンボンド型、ケミカルボンド型、ニードルパンチ型等の不織布が挙げられる。
【0085】
液体不透過性シートとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂からなる合成樹脂フィルム等が挙げられる。
【0086】
吸収性物品の種類は、特に限定されない。その代表例としては、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生材料、ペット用の尿吸収材料等をはじめ、パッキング材等の土木建築用資材、ドリップ吸収剤、保冷剤等の食品鮮度保持用材料、土壌用保水材等の農園芸用物品等が挙げられる。
【0087】
上述したように本発明にかかる吸水性樹脂は、1次粒子の中位粒子径が適度であり、液体を吸収して膨潤した後の液拡散性を示す通液速度に優れることから、吸収体として用いた際に浸透速度が速く、逆戻りが少ない効果を示す。
【実施例】
【0088】
以下に、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0089】
各実施例及び比較例で得られた吸水性樹脂の、中位粒子径、水分率、生理食塩水保水能、生理食塩水吸水速度、0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度は、以下に示す方法により評価した。
【0090】
<中位粒子径>
別に規定のない限り、吸水性樹脂の粒径を中位粒子径として規定し、次のようにして測定した。吸水性樹脂50gに、滑剤として、0.25gの非晶質シリカ(デグサジャパン(株)、Sipernat200)を混合した。
【0091】
前記吸水性樹脂を、JIS標準篩の目開250μmの篩を用いて通過させ、その通過量が50質量%以上の場合には(A)の篩の組み合わせを、その通過量が50質量%未満の場合には(B)の篩の組み合わせを用いて中位粒子径を測定した。
【0092】
(A)JIS標準篩を上から、目開き425μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、目開き106μmの篩、目開き75μmの篩、目開き45μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
【0093】
(B)JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
【0094】
組み合わせた最上の篩に、前記吸水性樹脂を入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。
【0095】
分級後、各篩上に残った吸水性樹脂の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
【0096】
<水分率>
吸水性樹脂約2gを、あらかじめ秤量したアルミホイールケース(8号)に精秤した(Wa(g))。上記サンプルを、内温を105℃に設定した熱風乾燥機(ADVANTEC社製)で2時間乾燥させた後、デシケーター中で放冷して、乾燥後の吸水性樹脂の質量Wb(g)を測定した。以下の式から、吸水性樹脂の水分率を算出した。
水分率(%)=[Wa―Wb]/Wa×100
【0097】
<生理食塩水保水能>
500mL容のビーカーに、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)500gを量り取り、600r/minで撹拌させながら、吸水性樹脂2.0gを、ママコが発生しないように分散させた。撹拌させた状態で30分間放置し、吸水性樹脂を十分に膨潤させた。その後、綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)中に注ぎ込み、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機(国産遠心機株式会社製、品番:H−122)を用いて綿袋を1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wc(g)を測定した。吸水性樹脂を添加せずに同様の操作を行ない、綿袋の湿潤時の空質量Wd(g)を測定し、以下の式から保水能を算出した。
生理食塩水保水能(g/g)=[Wc−Wd](g)/吸水性樹脂の質量(g)
【0098】
<生理食塩水吸水速度>
本試験は、25℃±1℃に調節された室内で行った。100mL容のビーカーに、生理食塩水50±0.1gを量りとり、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mmのリング無し)を投入し、ビーカーを恒温水槽に浸漬して、液温を25±0.2℃に調節した。次に、マグネチックスターラー上にビーカーを置いて、回転数600r/minとして、生理食塩水に渦を発生させた後、吸水性樹脂2.0±0.002gを、前記ビーカーに素早く添加し、ストップウォッチを用いて、吸水性樹脂の添加後から液面の渦が収束する時点までの時間(秒)を測定し、吸水性樹脂の吸水速度とした。
【0099】
<0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度>
(a)合成尿の調整
1L容の容器に、塩化カリウム2g、無水硫酸ナトリウム2g、塩化カルシウム0.19g、塩化マグネシウム0.23g、リン酸二水素アンモニウム0.85g、リン酸一水素アンモニウム0.15g及び適量の蒸留水を入れ、完全に溶解した。更に蒸留水を追加して、水溶液全体の体積を1Lに調整した。
【0100】
(b)測定装置の設置
測定装置として、
図1に機略構成を示したものを用いた。装置としては、タンク11には、静圧調整用ガラス管12が具備されており、ガラス管12の下端は、0.69質量%塩化ナトリウム水溶液13のシリンダー22内の液面の高さが膨潤ゲル25の底部から、5cm上の高さに維持できるように配置した。タンク11中の0.69質量%塩化ナトリウム水溶液13は、コック付L字管14を通じてシリンダー22内へ供給された。シリンダー22の下には、通過した液を捕集する容器33を配置し、捕集容器33を上皿天秤34の上に配置した。シリンダー22の内径は6cmであり、下部の底面にはNo.400ステンレス製金網(目開き38μm)26が設置されていた。ピストン型重り21の下部には液が通過するのに十分な穴23があり、底部には吸水性樹脂あるいはそれらの膨潤ゲルが、穴23へ入り込まないように透過性の良いガラスフィルター24が取り付けた。
【0101】
(c)通液速度の測定
円筒状容器20に0.9gの吸水性樹脂を均一に入れ、吸水性樹脂を合成尿中で、ピストン型重り21を用いて2.07kPaの荷重下で60分間膨潤させ、膨潤ゲル25を形成した。
【0102】
次に、2.07kPaの荷重下の状態で、0.69質量%塩化ナトリウム水溶液13を、0.69質量%塩化ナトリウム水溶液13のシリンダー22内の液面の高さが膨潤ゲル25の底部から、5cm上の高さに維持できる一定の静水圧でタンク11から膨潤ゲル25に供給した。
【0103】
水溶液の供給開始から10分間のうちに、膨潤ゲル25を通過し、捕集容器33に入った0.69質量%塩化ナトリウム水溶液13の質量を測定し、通液速度([g/10分])とした。この測定は室温(20〜25℃)で行った。
【0104】
[実施例1]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管並びに攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径110mm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン340gをとり、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)、リョートーシュガーエステルS−370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学(株)、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、撹拌しつつ80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、50℃まで冷却した。
【0105】
一方、500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.11g(0.41ミリモル)、内部架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド9.2mg(0.06ミリモル)を加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
【0106】
攪拌機の回転数を350r/minとして、前記の第1段目の単量体水溶液の全量を、前記セパブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第1段目の重合を30分間行った後、室温まで冷却して第1段目の重合スラリー液を得た。(なお、この重合後スラリーを120℃の油浴を用いて、水とn−ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n−ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、球状の1次粒子の中位粒子径は110μmであった。)
【0107】
一方、別の500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.16g(0.59ミリモル)、内部架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド12.9mg(0.08ミリモル)を加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製した。
【0108】
攪拌機の回転数を1000r/minに変更し系内を24℃に冷却した後、前記の第2段目の単量体水溶液の全量を、前記1段目の重合スラリー液に添加して、系内を窒素で十分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第2段目の重合を30分間行った。
【0109】
第2段目の重合後、125℃の油浴で反応液を昇温し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留によりn−ヘプタンを還流しながら222gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液3.97g(0.46ミリモル)を添加し、80℃で2時間保持した後、n−ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂(A)230.2gを得た。吸水性樹脂の中位粒子径は386μm、水分率は8.2%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0110】
[実施例2]
実施例1において、第1段目の攪拌機の回転数を300r/minに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂(B)233.5gを得た。1次粒子の中位粒子径は130μm、吸水性樹脂の中位粒子径は415μm、水分率は7.3%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0111】
[実施例3]
実施例2において、第2段目重合後のn−ヘプタン還流による脱水量を217gに変更した以外は、実施例2と同様の操作を行い、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂(C)232.9gを得た。1次粒子の中位粒子径は130μm、吸水性樹脂の中位粒子径は424μm、水分率は10.0%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0112】
[実施例4]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管並びに攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径110mm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン340gをとり、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)、リョートーシュガーエステルS−370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学(株)、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、撹拌しつつ80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、50℃まで冷却した。
【0113】
一方、500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.92g(住友精化(株)、HEC AW−15F)、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.11g(0.41ミリモル)、内部架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド9.2mg(0.06ミリモル)を加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
【0114】
攪拌機の回転数を600r/minとして、前記の第1段目の単量体水溶液の全量を、前記セパブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第1段目の重合を30分間行った後、室温まで冷却して第1段目の重合スラリー液を得た。(なお、この重合後スラリーを120℃の油浴を用いて、水とn−ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n−ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、球状の1次粒子の中位粒子径は160μmであった。)
【0115】
一方、別の500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.16g(0.59ミリモル)、内部架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド12.9mg(0.08ミリモル)を加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製した。
【0116】
攪拌機の回転数を1000r/minに変更し系内を21℃に冷却した後、前記の第2段目の単量体水溶液の全量を、前記1段目の重合スラリー液に添加して、系内を窒素で十分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第2段目の重合を30分間行った。
【0117】
第2段目の重合後、125℃の油浴で反応液を昇温し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留によりn−ヘプタンを還流しながら222gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液3.97g(0.46ミリモル)を添加し、80℃で2時間保持した後、n−ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂(D)231.3gを得た。吸水性樹脂の中位粒子径は434μm、水分率は7.9%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0118】
[実施例5]
実施例4において、第1段目の攪拌機の回転数を500r/minに変更し、第2段目重合後のn−ヘプタン還流による脱水量を213gに変更した以外は、実施例4と同様の操作を行い、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂(E)232.8gを得た。1次粒子の中位粒子径は230μm、吸水性樹脂の中位粒子径は458μm、水分率は10.0%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0119】
[実施例6]
実施例5において、第1段目の攪拌機の回転数を400r/minに変更した以外は、実施例5と同様の操作を行い、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂(F)234.2gを得た。1次粒子の中位粒子径は250μm、吸水性樹脂の中位粒子径は470μm、水分率は7.2%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0120】
[比較例1]
実施例1において、第1段目の攪拌機の回転数を500r/minに変更し、第2段目重合後のn−ヘプタン還流による脱水量を230gに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂(G)229.6gを得た。1次粒子の中位粒子径は90μm、吸水性樹脂の中位粒子径は364μm、水分率は7.0%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0121】
[比較例2]
実施例4において、第1段目の攪拌機の回転数を350r/minに変更し、第2段目重合後のn−ヘプタン還流による脱水量を213gに変更した以外は、実施例4と同様の操作を行い、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂(H)227.6gを得た。1次粒子の中位粒子径は280μm、吸水性樹脂の中位粒子径は519μm、水分率は6.9%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0122】
[比較例3]
実施例2において、第2段目重合後のn−ヘプタン還流による脱水量を230gに変更した以外は、実施例2と同様の操作を行い、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂(I)231.7gを得た。1次粒子の中位粒子径は130μm、吸水性樹脂の中位粒子径は420μm、水分率は6.4%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0123】
[比較例4]
実施例5において、第2段目重合後のn−ヘプタン還流による脱水量を233gに変更した以外は、実施例5と同様の操作を行い、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂(J)233.4gを得た。1次粒子の中位粒子径は230μm、吸水性樹脂の中位粒子径は448μm、水分率は5.4%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
表1から明らかなように、実施例1〜6の吸水性樹脂は、適度な生理食塩水保水能、生理食塩水吸水速度を有し、0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度に優れた吸水性樹脂であることがわかる。
【0126】
一方、比較例においては、1次粒子の中位粒子径が小さいもの(比較例1)は、0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度が遅く、また生理食塩水吸水速度が速かった。1次粒子の中位粒子径が大きいもの(比較例2)は、0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度は速いものの、生理食塩水吸水速度が遅かった。1次粒子の中位粒子径は適度ながら生理食塩水保水能が高いもの(比較例3、4)は、0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度が遅かった。
【0127】
次に実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた吸水性樹脂を用いて、吸収体及び吸収性物品を作成した。
【0128】
[実施例7]
実施例1で得られた吸水性樹脂(A)10gと粉砕パルプ10gをミキサーを用いて乾式混合したものを、大きさが40cm×12cmで重さが1gのティッシュに吹き付けた後に、同じ大きさ及び重さのティッシュを上部から重ねてシート状にし、これの全体に196kPaの荷重を30秒間加えてプレスすることにより、吸収体を得た。得られた吸収体を大きさ40cm×12cm、坪量20g/m2のポリエチレン製エアスルー型多孔質液体透過性シートと、同じ大きさ、同じ坪量のポリエチレン製不透過性シートで挟みつけることにより吸収体を用いた吸収性物品を得た。
【0129】
[実施例8]
実施例7において、実施例2で得られた吸水性樹脂(B)を用いた以外は、実施例7と同様にして、吸収体及びそれを用いた吸収性物品を得た。
【0130】
[実施例9]
実施例7において、実施例3で得られた吸水性樹脂(C)を用いた以外は、実施例7と同様にして、吸収体及びそれを用いた吸収性物品を得た。
【0131】
[実施例10]
実施例7において、実施例4で得られた吸水性樹脂(D)を用いた以外は、実施例7と同様にして、吸収体及びそれを用いた吸収性物品を得た。
【0132】
[実施例11]
実施例7において、実施例5で得られた吸水性樹脂(E)を用いた以外は、実施例7と同様にして、吸収体及びそれを用いた吸収性物品を得た。
【0133】
[実施例12]
実施例7において、実施例6で得られた吸水性樹脂(F)を用いた以外は、実施例7と同様にして、吸収体及びそれを用いた吸収性物品を得た。
【0134】
[比較例5]
実施例7において、比較例1で得られた吸水性樹脂(G)を用いた以外は、実施例7と同様にして、吸収体及びそれを用いた吸収性物品を得た。
【0135】
[比較例6]
実施例7において、比較例2で得られた吸水性樹脂(H)を用いた以外は、実施例7と同様にして、吸収体及びそれを用いた吸収性物品を得た。
【0136】
[比較例7]
実施例7において、比較例3で得られた吸水性樹脂(I)を用いた以外は、実施例7と同様にして、吸収体及びそれを用いた吸収性物品を得た。
【0137】
[比較例8]
実施例7において、比較例4で得られた吸水性樹脂(J)を用いた以外は、実施例7と同様にして、吸収体及びそれを用いた吸収性物品を得た。
【0138】
得られた吸収性物品を、以下の方法に従って評価した。結果を表2に示す。
【0139】
<吸収性物品の評価>
(a)人工尿の調整
10L容の容器に、塩化ナトリウム60g、塩化カルシウム二水和物1.8g、塩化マグネシウム六水和物3.6g及び適量の蒸留水を入れ、完全に溶解させた。次に、1質量%ポリ(オキシエチレン)イソオクチルフェニルエーテル水溶液15gを添加し、さらに蒸留水を添加して、水溶液全体の質量を6000gに調整した後、少量の青色1号で着色して、人工尿を調製した。
(b)浸透速度
吸収性物品の中心付近に、内径3cmの円筒型シリンダーを置き、50mLの人工尿をそのシリンダー内に一度に投入するとともに、ストップウォッチを用いて、人工尿がシリンダー内から完全に消失するまでの時間を測定し、1回目の浸透速度(秒)とした。次に、前記シリンダーをはずし、吸収性物品をそのままの状態で保存し、1回目の人工尿投入開始から30分後及び60分後にも、1回目と同じ位置に前記円筒型シリンダーを置いて同様の操作を行い、2回目及び3回目の浸透速度(秒)を測定した。1回目〜3回目の秒数の合計を合計浸透速度とした。
(c)逆戻り量
前記浸透速度の測定終了から60分経過後、吸収性物品上の人口尿投入位置付近に、あらかじめ質量(We(g)、約70g)を測定しておいた10cm四方の濾紙(約80枚)を置き、その上に底面が10cm×10cmの5kgの重りを載せた。5分間の荷重後、濾紙の質量(Wf(g))を測定し、増加した質量を逆戻り量(g)とした。
液体逆戻り量(g)=Wf−We
(d)拡散長
前記逆戻り量の測定後5分以内に、人口尿が浸透したそれぞれの吸収性物品の長手方向の拡がり寸法(cm)を測定した。なお、小数点以下の数値は四捨五入した。
【0140】
【表2】
【0141】
表2から明らかなように、生理食塩水保水能、生理食塩水吸水速度及び0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度に優れた吸水性樹脂(A)〜(F)を用いた実施例7〜12の吸収性物品は浸透速度が速く、逆戻りの少ないものであることがわかる。
【0142】
一方、比較例においては、1次粒子の中位粒子径が適切でないため、生理食塩水吸水速度や0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度の性能が劣るもの(比較例5、6)、生理食塩水保水能が高く、0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度の性能が劣るもの(比較例7、8)のいずれもが、吸収性物品の浸透速度や逆戻り量といった性能が劣ったものであった。