(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
レベルワウンドコイル(Level Wound Coil:以下、LWCと言う)は、銅又は銅合金等からなる長尺の金属管をトラバース巻き且つ整列巻きするとともに、径方向に多層に巻き付けた円筒形のコイル体であり、伝熱管や給湯・給水配管などの製造工程或いは製造後において長尺の金属管を運搬するために用いられている。
【0003】
例えば、
図13に示すように、LWC10は、中心軸CLを中心として最内層Lfの下面レベルDLから最内層Lfの上面レベルULに向かって順次一列に隙間なく巻き付け、上面レベルULまで達すると、下面レベルDLへ向かって折り返し、最内層Lfの銅管11間の径外方R側の凹部4に嵌るように順次一列に隙間なく巻き付けていく。
【0004】
さらに、下面レベルDLまで達すると、上面レベルULへ向かって折り返し、下面レベルDLへ向かって巻き付けた銅管11間の径外方R側の凹部4に嵌るように順次一列に隙間なく巻き付けていく。これを径外方Rへ向かって所定回数分繰り返すことにより、径方向に多層に巻き付けた円筒形のコイル状であるLWC10を構成することができる。
【0005】
なお、最内層Lfから最外層Laに向けて巻き付けて構成したLWC10において、銅管11の長さや巻き付け方によっては、
図13に示すように、LWC10の最外層Laの銅管11が上面レベルULから下面レベルDLに向かって巻き回された最外層Laの管端11aが下面レベルDLまで達しないことがある。
【0006】
このようにコイル状に巻き付けて構成したLWC10から銅管11を巻き解いて金属管を供給する方法のひとつとして、例えば、特許文献1に示すように、コイル体の中心軸CLを鉛直方向にしてLWC10を載置し、LWC10の最内層Lfにおける上面レベルUL又は下面レベルDLに配置された管端11u,11dを巻き解きの始端とし、最内層Lfから最外層Laへと順次LWC10の上方へ向かって巻き解き、銅管11を供給する方法がある。
【0007】
しかしながら、最内層Lfから最外層Laへ銅管11を巻き解く方法では、上述したように最外層Laの管端11aが下面レベルDLにまで達しない場合において、最外層Laの内側の層が巻き解かれることによって最外層Laの銅管11が緩み、最外層Laに巻き回されている銅管11が、
図13の矢印Iに示すように、下方にずり落ち、銅管11の表面が傷ついたり、折れ曲がったりすることによる不良となる。
【0008】
このような不良の発生を防止するためには、LWC10の最外層Laにおいて高さ方向の途中まで巻き回される銅管11を、少なくとも最外層Laから1つ内側の層の上面レベルULで切断する必要があり、それゆえ歩留まりの低下を招いていた。
【0009】
このような問題を回避する方法として、LWC10の最内層Lfから最外層Laに向かって銅管11を巻き解く方法に対して、最外層Laから最内層Lfに向かって銅管11を巻き解く方法が想定される。
【0010】
この最外層Laから最内層Lfに向かって銅管11を巻き解く方法では、最外層Laの管端11aから巻き解くため、最外層Laの管端11aはLWC10の上面レベルULから下面レベルDLまでの何処に位置していてもずり落ちることがなく、また上述したように最外層Laにおいて端数となる銅管11を切断する必要も無く、歩留まりが低下することがない。
【0011】
しかし、上述のLWC10の最外層Laから最内層Lfに向かって銅管11を巻き解く方法では、LWC10の外側面10bから巻き解いた銅管11がLWC10の上方に向かって案内されるため、一般に、巻き解かれている銅管11にLWC10の外側から中心軸CLに向かう力が作用する。
【0012】
このように、LWC10の外側から中心軸CLに向かう力が作用することにより、巻き解かれている銅管11がLWC10の外側面10bを巻き締め、外側面10bの巻き締めにより銅管11に上記不良が発生して歩留まりが大幅に低下するおそれがあった。さらには、巻き解かれている銅管11によるLWC10の外側面10bの巻き締めにより、巻き解きが中断されるため、生産効率が悪化するおそれがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、この発明は、LWCの最外層から最内層に向かって金属管を巻き解く際に、巻き解かれた金属管による巻き締まりを防止し、LWCから金属管をスムーズに供給することができる金属管供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、金属管をトラバース巻き且つ整列巻きしたレベルワウンドコイルを、コイル体の軸方向が鉛直方向となるように載置し、前記レベルワウンドコイルの上面より上方の中央位置に、前記コイル体に対して位置固定された位置固定体を設置し、該位置固定体より上方、かつ前記レベルワウンドコイルの平面視内側の位置に、前記金属管の挿通を許容するガイドを配置し、前記コイル体の前記最外層から前記上方に向かって前記金属管を巻き解くとともに、前記ガイドを通じて前記レベルワウンドコイルから前記金属管を供給
し、前記金属管の巻き解かれて引き上げられている引き上げ部分において、前記レベルワウンドコイルの外側面から前記金属管が巻き解かれる巻き解き開始位置から前記ガイドまでの間を囲繞するチューブを備え、前記レベルワウンドコイルの中心から巻き解き前の外周縁までの幅方向の間隔をコイル幅方向間隔とするとともに、前記レベルワウンドコイルの底面から前記ガイドの下端までの鉛直方向の間隔をコイル底面鉛直方向間隔とし、前記チューブを、前記チューブを所定の肉厚で形成するとともに、前記コイル幅方向間隔、及びコイル底面鉛直方向間隔を直交させた直角三角形の斜辺以上の長さに形成し、前記チューブの上端を、前記ガイドの下端にベアリングを介して回動自在に接続し、前記チューブの下端を、前記巻き解き開始位置の近傍に配置する金属管供給方法であることを特徴とする。
【0016】
上記金属管は、例えばエアコン等の空調冷凍機の伝熱管及び建築物の給湯・給水配管として使用される銅又は銅合金からなる長尺の金属管のみならず、例えば、アルミニウムやアルミ合金等の適宜の金属で構成する長尺状の金属管であることを含む概念である。【0017】
また、前記レベルワウンドコイル(以下においてLWCという)には、前記金属管を巻き付けたコイル体のみ、或いは、巻取りボビンの付いた前記コイルの両方を含む概念であり、また、上述のLWCの上方に配置したガイドは、LWCの中心軸の上方に配置するガイドとすることができる。【0018】
上述の前記レベルワウンドコイルの上面より上方の中央位置に、前記コイル体に対して位置固定された位置固定体は、LWCに装着し、LWCの上面から連続して突出する
位置固定体、LWCの上面から間隔を隔てて突出する位置固定体であることを含み、少なくとも、LWCの中心より径方向に広がる位置固定体とすることができる。
【0019】
なお、上記位置固定体は、少なくとも前記金属管同士の摩擦係数よりも小さい摩擦係数の素材が好ましく、例えば、ダンボール、あるいは、ポリエチレン、塩化ビニル又はフッ素樹脂といったプラスチックで構成することができる。
【0020】
上記チューブは、金属管及び位置固定体に対する摩擦係数が小さい、例えば、ポリエチレン、塩化ビニル又はフッ素樹脂といったプラスチックで形成し、所定の肉厚を有するチューブで構成することができる。【0021】
この発明により、LWCの最外層から最内層に向かって金属管を巻き解く際に、巻き解かれた金属管による巻き締まりを防止し、LWCから金属管をスムーズに供給することができる。
詳述すると、前記レベルワウンドコイルの上面より上方の中央位置に、前記コイル体に対して位置固定された位置固定体を設置することにより、前記最外層から前記レベルワウンドコイルの上方に向かって巻き解かれ、位置固定体より上方、かつ前記レベルワウンドコイルの平面視内側の位置に配置したガイドを通じて供給される金属管は、位置固定体によって径外方へ案内される。
【0022】
すなわち、LWCの上方に向かって直接案内されることにより、巻き解かれている金属管にLWCの外側から中心軸に向かう力が作用することを抑制し、巻き解かれている前記金属管が前記LWCの外側面を巻き締めることを回避できる。
【0023】
したがって、巻き締りによって前記金属管に負荷が作用することに起因する金属管の破断、折れ曲がり、変形及び傷付き等の不良の発生を回避でき、前記金属管の歩留まりと生産効率を格段に向上することができる。
【0024】
また、前記金属管の巻き解かれて引き上げられている引き上げ部分において、前記レベルワウンドコイルの外側面から前記金属管が巻き解かれる巻き解き開始位置から前記ガイドまでの間を囲繞するチューブを備えたことにより、前記金属管と前記位置固定体との間に前記チューブが介在するため、前記金属管と前記位置固定体の側面とが直接接触して、摩擦により金属管表面が傷付くことを回避できる。【0025】
また、前記レベルワウンドコイルの中心から巻き解き前の外周縁までの幅方向の間隔をコイル幅方向間隔とするとともに、前記レベルワウンドコイルの底面から前記ガイドの下端までの鉛直方向の間隔をコイル底面鉛直方向間隔とし、前記チューブを、前記チューブを所定の肉厚で形成するとともに、前記コイル幅方向間隔、及びコイル底面鉛直方向間隔を直交させた直角三角形の斜辺以上の長さに形成し、前記チューブの上端を、前記ガイドの下端にベアリングを介して回動自在に接続し、前記チューブの下端を、前記巻き解き開始位置の近傍に配置することにより、前記LWCの外側面から径外方へ外れようとしている前記金属管の巻き解き開始位置及び、前記位置固定体に対する前記チューブの相対位置を安定させ、前記金属管をスムーズに前記ガイドに案内することができる。【0026】
また、前記チューブを、前記コイル幅方向間隔、及びコイル底面鉛直方向間隔を直交させた直角三角形の斜辺以上の長さに形成することにより、チューブの必要長さがもっとも長い巻き解き前のLWCの最外層における下端が巻き解きの始端となる場合であっても、前記金属管をスムーズに前記ガイドに案内することができる。【0027】
また、前記チューブの下端を、前記レベルワウンドコイルの外側面から前記金属管が巻き解かれる巻き解き開始位置の近傍に配置するため、前記金属管を前記LWCの外側面から容易に径外方へ外すことができる。【0028】
詳しくは、下面レベルから上面レベルに向かって前記金属管を巻き解く層において、前記LWCの載置面や下側フランジと前記層の最下端の前記金属管との間に隙間が無い場合、最下端の前記金属管の上に位置する前記金属管と載置面や下側フランジに挟まれて最下端の前記金属管を前記LWCの最外層から外すことが困難となる。【0029】
しかし、このような場合であっても、前記チューブの下端を巻き解き開始位置に配置することにより、前記チューブの肉厚分径外側に前記金属管を案内し、前記金属管を前記LWCの最外層から容易に径外方へ逃がすことができる。 したがって、前記LWCの外側面の前記金属管と巻き解かれている前記金属管とが接触して前記金属管に上記不良が生じることをより確実に回避できる。【0030】
また、前記LWCから前記金属管を上方へ巻き解く際、前記チューブが前記コイルの中心軸の周りを回ることによって前記チューブに捻れが生じることを防止できる。したがって、前記チューブにより前記金属管を安定して前記ガイドに案内することができる。【0031】
この発明の態様として、前記位置固定体を、前記レベルワウンドコイルの内周空間に装着する柱状体で構成することができる。
上記柱状体は、円柱状、円筒状、多角柱状、あるいは多角筒状とすることができ、多角柱状や多角筒状の場合、角部が面取りされた略多角柱状や略多角筒状であることが好ましい。さらには、コイル体の上部に露出する部分を、逆円錐台や逆多角錐台に形成した柱状体とすることができる。
【0032】
この発明により、LWCの最外層から最内層に向かって金属管を巻き解く際に、巻き解かれた金属管による巻き締まりをさらに防止し、LWCから金属管をよりスムーズに供給することができる。
【0033】
詳しくは、前記位置固定体を、前記レベルワウンドコイルの内周空間に装着する柱状体で構成することにより、位置固定体がLWCの上面より連続して突出し、巻き解かれた金属管は、柱状体の側面に沿って前記最外層から前記レベルワウンドコイルの上方に向かって巻き解かれるため、巻き解かれている金属管にLWCの外側から中心軸に向かう力が作用することを抑制し、巻き解かれている前記金属管が前記LWCの外側面を巻き締めることを回避できる。
【0034】
またこの発明の態様として、前記柱状体を、前記内周空間の内周面に沿うとともに、円筒状に構成することができる。
この発明により、LWCの最外層から最内層に向かって金属管を巻き解く際に、巻き解かれた金属管による巻き締まりをより確実に防止し、LWCから金属管をさらにスムーズに供給することができる。
詳しくは、前記位置固定体を円筒状に構成することにより、LWCの前記内周空間の内周面に沿って装着することができるため、装着状態が安定する。また、巻き解かれた金属管は、円筒状体の側周面に沿って前記最外層から前記レベルワウンドコイルの上方に向かって巻き解かれる。したがって、巻き解かれている金属管にLWCの外側から中心軸に向かう力が作用することを抑制し、巻き解かれている前記金属管が前記LWCの外側面を巻き締めることを回避できる。
また、位置固定体を円筒状体で構成することにより、中実な円柱状体で構成した位置固定体と比べ軽量であり、取扱い性が向上する。
【0035】
またこの発明の態様として、前記柱状体の上端付近に、外周面に沿って径方向外側向きに突出する鍔部を備えることができる。
上記鍔部は、上記柱状体と同じ材質、異なる材質であってもよく、また、鍔部と柱状体を一体構成、あるいは別体構成してもよいが、上記鍔部は、少なくとも前記金属管同士の摩擦係数よりも小さい摩擦係数の素材が好ましく、例えば、ダンボール、あるいは、ポリエチレン、塩化ビニル又はフッ素樹脂といったプラスチックで構成することができる。
【0036】
この発明により、鍔部により、位置固定体の最外周を、位置固定体を装着するLWCの内周径より径大に形成でき、前記最外層から前記レベルワウンドコイルの上方に向かって巻き解かれ、位置固定体より上方、かつ前記レベルワウンドコイルの平面視内側の位置に配置したガイドを通じて供給される金属管を、さらに径外方へ案内することができる。したがって、LWCの最外層から最内層に向かって金属管を巻き解く際に、巻き解かれた金属管による巻き締まりをさらに確実に防止し、LWCから金属管をスムーズに供給することができる。殊に、金属管の巻き解きが進み、LWCの径が小さくなった状態においても巻き解かれた金属管による巻き締まりをさらに確実に防止し、LWCから金属管をスムーズに供給することができる。
【0037】
またこの発明の態様として、前記位置固定体の中心から外周縁までの幅方向の間隔を固定体幅方向間隔とするとともに、前記位置固定体から前記ガイドの下端までの鉛直方向の間隔を固定体鉛直方向間隔とし、前記固定体鉛直方向間隔に対する前記固定体幅方向間隔の比を2以下とすることができる。
【0038】
これにより、固定体鉛直方向間隔を問わず、位置固定体を巻き解かれる金属管に作用させて、金属管を確実に径外方へ案内し、LWCから金属管をスムーズに供給することができる。
【0039】
詳しくは、前記固定体鉛直方向間隔に対する前記固定体幅方向間隔の比が2以上の場合、巻き解かれる金属管が位置固定体と接触せず、金属管を径外方へ十分に案内することができず、巻き解かれた金属管による巻き締まりが生じる場合がある。これに対し、前記固定体鉛直方向間隔に対する前記固定体幅方向間隔の比を2以下とすることにより、つまり、ガイドの下端と、位置固定体の外周縁とを結ぶ傾斜角度が45度以上となるため、巻き解かれる金属管に位置固定体を作用させて、金属管を確実に径外方へ案内し、LWCから金属管をスムーズに供給することができる。
【0040】
またこの発明の態様として、前記レベルワウンドコイルの中心から巻き解き前の外周縁までの幅方向の間隔をコイル幅方向間隔とするとともに、前記レベルワウンドコイルの上面から前記ガイドの下端までの鉛直方向の間隔をコイル鉛直方向間隔とし、前記コイル鉛直方向間隔に対する前記コイル幅方向間隔の比を4以下とすることができる。
【0041】
これにより、コイル鉛直方向間隔を問わず、位置固定体を巻き解かれる金属管に作用させて、金属管を確実に径外方へ案内し、LWCから金属管をスムーズに供給することができる。
【0042】
詳しくは、コイル鉛直方向間隔に対するコイル幅方向間隔の比が4以上の場合、ガイドの下端とLWCの最外層とを結ぶ傾斜角度が最も水平方向に近づく傾斜である巻き解き前の状態において、巻き解かれる金属管が位置固定体と接触せず、金属管を径外方へ十分に案内することができず、巻き解かれた金属管による巻き締まりが生じる場合がある。これに対し、コイル鉛直方向間隔に対するコイル幅方向間隔の比を4以下とすることにより、巻き解かれる金属管に位置固定体を作用させて、金属管を確実に径外方へ案内し、LWCから金属管をスムーズに供給することができる。
【0043】
またこの発明の態様として、前記レベルワウンドコイルの上面から前記ガイドの下端までの鉛直方向の間隔を500mm以上2000mm以下に設定することができる。
この発明により、LWCの最外層から最内層に向かって金属管を巻き解く際に、巻き解かれた金属管による巻き締まりをより確実に防止し、LWCから金属管をさらにスムーズに供給することができる。
【0044】
詳しくは、前記LWCの上面から前記ガイドの下端までの鉛直方向の間隔が短いと巻き解かれる前記金属管に径外方に向かう力が強くなり、前記金属管は前記コイルから容易に離れる。したがって、前記金属管を巻き解く際に、前記金属管が巻き締まるなどして傷や折曲がり等の不良が生じたりすることがない。また、巻き癖も均一に生じて消失しやすく前記ガイドに擦れて金属管の表面が傷付くことも無い。
一方、前記LWCの上面から前記ガイドの下端までの鉛直方向の間隔が短すぎる500mm以下の場合、逆に前記金属管が屈曲し過ぎて巻き解き難くなる。
【0045】
逆に、前記LWCの上面から前記ガイドの下端までの鉛直方向の長すぎる2000mm以上の場合、巻き解かれている金属管の長さが長くなり、金属管を巻き解くために要する引張り力が増大し、金属管に折曲がり等の不良が生じたりする可能性が高くなるとともに、巻き癖が生じやすくなる。
【0046】
これに対し、前記LWCの上面から前記ガイドの下端までの鉛直方向の間隔、つまり前記LWCの上面に対する前記ガイドの高さを、適切な高さである上記範囲に設定することにより、LWCの最外層から最内層に向かって金属管を巻き解く際に、巻き解かれた金属管による巻き締まりをより確実に防止し、LWCから金属管をさらにスムーズに供給することができる。
【発明の効果】
【0047】
この発明により、LWCの最外層から最内層に向かって金属管を巻き解く際に、巻き解かれた金属管による巻き締まりを防止し、LWCから金属管をスムーズに供給することができる金属管供給方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
この発明の実施形態を以下図面と共に説明する。
まずは、本実施形態の巻き解き方法で巻き解くLWC10について、
図1乃至3とともに説明する。
【0050】
図1は本実施形態のLWC10の斜視図であり、
図2及び
図3は
図1における中心軸CLと、最外層Laの管端11aとを含むLWC10の一部を拡大した概略縦断面図であり、
図2は巻き付け方法を示し、
図3は巻き解き方法を示している。
【0051】
LWC10は、
図1に示す、長尺の銅管11を多層にトラバース巻き且つ整列巻きしたコイルであり、伝熱管や給湯・給水配管などの製造工程或いは製造後において長尺の銅管11を運搬するために用いられている。
【0052】
LWC10は、
図2に示すように、長尺の銅管11を、LWC10の中心軸CLに最も近い最内層Lfから最外層Laに向かって巻き付けることで得られる。
詳述すると、図示省略する巻取りボビンの巻き胴の外周に沿って、銅管11を最内層Lfの上端部11u(あるいは下端部11dからであっても良い)から巻き始め、上面レベルULから下面レベルDLに向かって、順次隙間なく一列に巻き付ける。下端部11dまで巻き付けると、折り返して、最内層Lfの銅管11の間の凹部4に銅管11が嵌るように最内層Lfと同じ回数だけ巻き付けていく。以降同様にして、巻き付け順序X1に沿って長尺の銅管11を所定回数巻き付け、図示省略する巻取りボビンから取り外すことによりLWC10を得る。
【0053】
なお、本実施形態においてLWC10は、直径7mmの銅管11を巻き付けて、コイル高さh1を350mm、コイル外径OD1を1000mm、コイル内径ID1を600mmに形成しているが、これに限定されず、適宜のサイズで形成すればよい。例えば、コイル高さh1を0〜500mm、コイル外径OD1を500〜1500mm、コイル内径ID1を300〜800mmの範囲で形成してもよい。また、図示省略する巻取りボビンの巻き胴から取り外し、コイル内径ID1で形成される内周側における円筒状の空間を内周空間Sとしている。
【0054】
また、LWC10の巻き付けは、
図2において、LWC10の中心軸CLの軸方向が鉛直方向となるように図示しているが、実際に銅管11を巻き付ける際には中心軸CLの軸方向が水平方向であってもよい。
【0055】
また、LWC10は、
図2に示すように、銅管11の長さや巻き付け方法によっては最外層Laにおいて下面レベルDLから上面レベルULに向かって巻き回され、上面レベルULに至らずに途中で銅管11が巻き終わる場合もある。
【0056】
また、巻き付けの際には、図示省略する上側フランジ及び下側フランジの付いた巻取りボビンを用い、巻き付け終了後は、該巻取りボビンをLWC10から取り外してLWC10のみを次の製造工程へと運搬する。
【0057】
次の製造工程において、この発明ではLWC10の最外層Laから銅管11を巻き解いて供給する。この方法では、
図3に示すように、巻取り時の上端部11uが下端部11dとなり、巻取り時の下端部11dが上端部11uとなるように、中心軸CLの軸方向を鉛直方向にしてLWC10を上下さかさまに載置し、上述の巻き付けの場合とは逆に、銅管11を最外層Laの管端11aから最内層Lfに向かって巻き解き順序X2に沿って順次巻き解く。
また、後述するように銅管11を管端11aに付した矢印Bの方向へ、すなわち、一旦径外方へ向かわせ、その後LWC10の中心軸CLの上部へと巻き解く。
【0058】
このような供給方法について、
図4乃至
図7とともに、以下で詳述する。なお、
図4は鍔付プロテクトパイプ20を用いた巻き解き方法を示す斜視図を示し、
図5は鍔付プロテクトパイプ20を用いた巻き解き方法についての断面概略図を示している。また、
図6はガイド16とチューブ18の接続部分の拡大断面図を示し、
図7は鍔付プロテクトパイプ20を用いた巻き解き方法において巻き解かれている様子の斜視説明図を示している。
【0059】
LWC10の最外層Laから銅管11を巻き解く方法においては、銅管11を巻き解く前に、
図4に示すように、まず、水平に置かれたパレット24上に載置した円板形状の緩衝プレート23の中心軸CL23とLWC10の中心軸CLを一致させて緩衝プレート23上にLWC10を載置する。
【0060】
次に、鍔付プロテクトパイプ20を、LWC10に装着する。鍔付プロテクトパイプ20は、円筒状のプロテクトパイプ本体21と、プロテクトパイプ本体21の上端に備えた鍔リング22とで構成している。プロテクトパイプ本体21は、LWC10のコイル内径ID1(
図1参照)と同じパイプ外径OD2を有するとともに、LWC10のコイル高さh1に比べておよそ2倍弱となる筒高さh2を有し、金属管同士の摩擦係数よりも摩擦係数が小さいダンボール製の筒状体で構成している。
【0061】
詳しくは、プロテクトパイプ本体21は、直径7mmの銅管11を巻き付けて、コイル高さh1を350mm、コイル外径OD1を1000mm、コイル内径ID1を600mmに形成したLWC10に対して、筒高さh2を600mm、パイプ外径OD2を595mmとして形成している。したがって、コイル半径に対応するコイル幅方向間隔OR1は500mm、パイプ半径に対応するパイプ幅方向間隔OR2は300mmとなる。
【0062】
このプロテクトパイプ本体21をLWC10の内側面10aに沿わせて内周空間Sに完全に嵌め込むことにより、プロテクトパイプ本体21は、LWC10のコイル上面10Uより、250mm(突出高さh3)突出することとなる。なお、プロテクトパイプ本体21の筒高さh2を600mmに設定したが、これに限定されず、突出高さh3が、コイル内径ID1の0.2〜1.2倍、且つコイル外径OD1の0.1〜0.8倍となる範囲で筒高さh2を設定すればよい。
【0063】
鍔リング22は、プロテクトパイプ本体21の上端において、径外側に突出するように配置された片断面略半円状のリング体であり、内周面をプロテクトパイプ本体21の上端に沿わせて配置している。
なお、鍔リング22は、金属管同士の摩擦係数よりも摩擦係数が小さい樹脂で構成している。
【0064】
このように、パレット24上に載置するとともに、鍔付プロテクトパイプ20を装着したLWC10を、
図5に示すように、引き上げられた銅管11の巻き癖を解消するために設けられたプラスチック製でパイプ状のガイド16に対して、以下に説明する所定の位置に配置する。
【0065】
まず、LWC10の中心軸CLの上部において、LWC10の上面レベルULからガイド16のガイド下端16aまでの鉛直方向の間隔である第1鉛直方向間隔H1が500mmから2000mmまでとなるようにLWC10を設置する。
【0066】
また、鍔付プロテクトパイプ20におけるプロテクトパイプ本体21の中心から外周縁までの幅方向の距離、つまりプロテクトパイプ本体21の半径をパイプ幅方向間隔OR2とするとともに、プロテクトパイプ本体21の上端からガイド16のガイド下端16aまでの鉛直方向の間隔を第2鉛直方向間隔H2とし、第2鉛直方向間隔H2に対するパイプ幅方向間隔OR2の比を2以下となるよう配置する。
【0067】
さらに、巻き解き前のLWC10の中心軸CLから外周縁までの幅方向の距離、つまりLWC10における巻き解き前の半径を、コイル幅方向間隔OR1とし、第1鉛直方向間隔H1に対するコイル幅方向間隔OR1の比を4以下となるよう配置する。
なお、本実施例においては、コイル幅方向間隔OR1を500mm、パイプ幅方向間隔OR2を300mm、第1鉛直方向間隔H1を1500mm、第2鉛直方向間隔H2を1250mmとしている。
【0068】
また、ガイド16のガイド下端16aには、巻き解かれた銅管11の挿通を許容するチューブ18を接続している。
なお、
図6に示すように、ガイド16のガイド下端16aにベアリング17を介して銅管11との摩擦係数が小さいプラスチック製のチューブ18のチューブ上端18aを接続することで、チューブ18をガイド16に対して回動自在となるように接続している。
【0069】
また、
図4に示すように、チューブ18のチューブ下端18bがちょうどLWC10の外側面10bから銅管11が外れようとしている巻き解き開始位置10cの近傍となるようにチューブ18の長さを調整する。
【0070】
詳しくは、
図5に示すように、チューブ18は、銅管11に対して所定の肉厚である1.0mmで形成するとともに、LWC10の底面10Dからガイド16のガイド下端16aまでの鉛直方向の間隔を第3鉛直方向間隔H3とした場合において、LWC10のコイル幅方向間隔OR1及び第3鉛直方向間隔H3を直交させた直角三角形の斜辺OL以上の長さである2500mmに形成し、チューブ18のチューブ下端18bがちょうどLWC10の外側面10bから銅管11が外れようとしている巻き解き開始位置10cの近傍となるように配置している。
【0071】
上述のようにLWC10に対して鍔付プロテクトパイプ20を装着するとともに、ガイド16及びチューブ18に対してLWC10を設置し、チューブ18及びガイド16に銅管11を通して上方へ引き抜くことで、
図7に示すように、銅管11はLWC10の外側面10bから外れて、一旦径外方へと向かい、次にチューブ18が鍔付プロテクトパイプ20の鍔リング22に接触するか接近して、LWC10の上方に設置されたガイド16に向かって、中心軸CLの周りを矢印Eの方向に回転しながら巻き解かれ、LWC10から銅管11を供給することとなる。
【0072】
この方法により、LWC10から銅管11を巻き解く際に、巻き締まりを回避でき、LWC10から銅管11をスムーズに供給することができる。
詳述すると、銅管11をトラバース巻き且つ整列巻きしたLWC10を、コイル体の中心軸CLの方向が鉛直方向となるように載置し、LWC10のコイル上面10Uより上方の中央位置に、コイル体に対して位置固定された鍔付プロテクトパイプ20を設置し、鍔付プロテクトパイプ20より上方、かつLWC10の平面視内側の位置に、銅管11の挿通を許容するガイド16を配置し、コイル体の最外層Laから上方に向かって銅管11を巻き解くとともに、ガイド16を通じてLWC10から銅管11を供給するため、LWC10の最外層Laから最内層Lfに向かって銅管11を巻き解く際に、巻き解かれた銅管11による巻き締まりを防止し、LWC10から銅管11をスムーズに供給することができる。
【0073】
詳述すると、LWC10のコイル上面10Uより上方の中央位置に、コイル体に対して位置固定された鍔付プロテクトパイプ20を設置することにより、最外層LaからLWC10の上方に向かって巻き解かれ、鍔付プロテクトパイプ20より上方、かつLWC10の平面視内側の位置に配置したガイド16を通じて供給される銅管11は、鍔付プロテクトパイプ20によって径外方へ案内される。
【0074】
すなわち、LWC10の上方に向かって直接案内されることにより、巻き解かれている銅管11にLWC10の外側から中心軸CLに向かう力が作用することを抑制し、巻き解かれている銅管11がLWC10の外側面を巻き締めることを回避できる。
【0075】
したがって、LWC10の外側面の巻き締めによって銅管11に負荷が作用することに起因する銅管11の破断、折れ曲がり、変形及び傷付き等の不良の発生を回避でき、銅管11の歩留まりと生産効率を格段に向上することができる。
【0076】
また、この最外層Laから巻き解く方法では、銅管11を上方に向かって巻き解くため、最外層Laの管端11aが上面レベルULから下面レベルDLの間の何処にあっても巻き解きの際に最外層Laの銅管11がずり落ちることがなく、銅管11の破断、折れ曲がり、擦り傷付き等の不良の発生を回避することができる。
このことにより、巻き締まって銅管11に負荷が作用することで上記不良の発生を回避できるため、銅管11の歩留まりと生産効率を大きく向上させることができる。
【0077】
また、鍔付プロテクトパイプ20を、LWC10の内周空間Sに装着する柱状体で構成することにより、LWC10の最外層Laから最内層Lfに向かって銅管11を巻き解く際に、巻き解かれた銅管11による巻き締まりをさらに防止し、LWC10から銅管11をよりスムーズに供給することができる。
【0078】
詳しくは、鍔付プロテクトパイプ20を、LWC10の内周空間Sに装着する柱状体で構成することにより、鍔付プロテクトパイプ20がLWC10のコイル上面10Uより連続して突出し、巻き解かれた銅管11は、柱状体の側面に沿って最外層LaからLWC10の上方に向かって巻き解かれるため、巻き解かれている銅管11にLWC10の外側から中心軸CLに向かう力が作用することを抑制し、巻き解かれている銅管11がLWC10の外側面を巻き締めることを回避できる。
【0079】
さらには、鍔付プロテクトパイプ20を、内周空間Sを構成する内側面10aに沿うとともに、円筒状に構成しているため、LWC10の最外層Laから最内層Lfに向かって銅管11を巻き解く際に、巻き解かれた銅管11による巻き締まりをより確実に防止し、LWC10から銅管11をさらにスムーズに供給することができる。
【0080】
詳しくは、鍔付プロテクトパイプ20を円筒状に構成することにより、LWC10の内周空間Sを構成する内側面10aに沿って装着することができるため、装着状態が安定する。また、巻き解かれた銅管11は、円筒状体の側周面に沿って最外層LaからLWC10の上方に向かって巻き解かれる。したがって、巻き解かれている銅管11にLWC10の外側から中心軸CLに向かう力が作用することを抑制し、巻き解かれている銅管11がLWC10の外側面を巻き締めることを回避できる。
また、鍔付プロテクトパイプ20を円筒状体で構成することにより、中実な円柱状体で構成したプロテクトパイプと比べ軽量であり、取扱い性が向上する。
【0081】
また、鍔付プロテクトパイプ20におけるプロテクトパイプ本体21の上端付近に、外周面に沿って径方向外側向きに突出する鍔リング22を備えているため、プロテクトパイプ本体21を装着する内周空間Sのコイル内径ID1より径大に形成でき、最外層LaからLWC10の上方に向かって巻き解かれ、鍔付プロテクトパイプ20より上方、かつLWC10の平面視内側の位置に配置したガイド16を通じて供給される銅管11を、さらに径外方へ案内することができる。
【0082】
したがって、LWC10の最外層Laから最内層Lfに向かって銅管11を巻き解く際に、巻き解かれた銅管11による巻き締まりをさらに確実に防止し、LWC10から銅管11をスムーズに供給することができる。殊に、銅管11の巻き解きが進み、LWC10の径が小さくなった状態においても巻き解かれた銅管11による巻き締まりをさらに確実に防止し、LWC10から銅管11をスムーズに供給することができる。
【0083】
また、鍔付プロテクトパイプ20の中心から外周縁までの幅方向の距離であるパイプ幅方向間隔OR2を300mmとするとともに、鍔付プロテクトパイプ20からガイド16のガイド下端16aまでの鉛直方向の間隔である第2鉛直方向間隔H2を1250mmとし、第2鉛直方向間隔H2に対するパイプ幅方向間隔OR2の比を2以下である0.24に設定しているため、第2鉛直方向間隔H2を問わず、鍔付プロテクトパイプ20を巻き解かれる銅管11に作用させて、銅管11を確実に径外方へ案内し、LWC10から銅管11をスムーズに供給することができる。
【0084】
詳しくは、第2鉛直方向間隔H2に対するパイプ幅方向間隔OR2の比が2以上の場合、巻き解かれる銅管11が鍔付プロテクトパイプ20と接触せず、銅管11を径外方へ十分に案内することができず、巻き解かれた銅管11による巻き締まりが生じる場合がある。これに対し、第2鉛直方向間隔H2に対するパイプ幅方向間隔OR2の比を2以下である0.24に設定することにより、ガイド16のガイド下端16aと、鍔付プロテクトパイプ20の外周縁とを結ぶ傾斜角度が45度以上となり、巻き解かれる銅管11に鍔付プロテクトパイプ20を作用させて、銅管11を確実に径外方へ案内し、LWC10から銅管11をスムーズに供給することができる。
【0085】
また、LWC10の中心から巻き解き前の外周縁までの幅方向の距離であるコイル幅方向間隔OR1を500mmとするとともに、LWC10のコイル上面10Uからガイド16のガイド下端16aまでの鉛直方向の間隔である第1鉛直方向間隔H1を1500mmとし、第1鉛直方向間隔H1に対するコイル幅方向間隔OR1の比を4以下である0.33に設定したことにより、第1鉛直方向間隔H1を問わず、鍔付プロテクトパイプ20を巻き解かれる銅管11に作用させて、銅管11を確実に径外方へ案内し、LWC10から銅管11をスムーズに供給することができる。
【0086】
詳しくは、第1鉛直方向間隔H1に対するコイル幅方向間隔OR1の比が4以上の場合、ガイド16のガイド下端16aとLWC10の最外層Laとを結ぶ傾斜角度が最も水平方向に近づく傾斜である巻き解き前の状態において、巻き解かれる銅管11が鍔付プロテクトパイプ20と接触せず、銅管11を径外方へ十分に案内することができずに、巻き解かれた銅管11による巻き締まりが生じる場合がある。これに対し、第1鉛直方向間隔H1に対するコイル幅方向間隔OR1の比を4以下である0.33に設定することにより、巻き解かれる銅管11に鍔付プロテクトパイプ20を作用させて、銅管11を確実に径外方へ案内し、LWC10から銅管11をスムーズに供給することができる。
【0087】
また、銅管11の巻き解かれて引き上げられている引き上げ部分において、LWC10の外側面から銅管11が巻き解かれる巻き解き開始位置10cからガイド16までの間の少なくとも一部を囲繞するチューブ18を備えているため、銅管11と鍔付プロテクトパイプ20との間にチューブ18が介在し、銅管11と鍔付プロテクトパイプ20の側面とが直接接触して、摩擦により銅管11の表面が傷付くことを回避できる。
【0088】
また、LWC10の中心から巻き解き前の外周縁までの幅方向の間隔であるコイル幅方向間隔OR1を500mmとするとともに、LWC10の底面からガイド16のガイド下端16aまでの鉛直方向の間隔である第3鉛直方向間隔H3を1850mmとし、チューブ18を、所定の肉厚である1.0mmに形成するとともに、コイル幅方向間隔OR1、及び第3鉛直方向間隔H3を直交させた直角三角形の斜辺OL以上の長さである2500mmに形成し、チューブ18のチューブ上端18aを、ガイド16のガイド下端16aに接続し、チューブ18のチューブ下端18bを、巻き解き開始位置10cの近傍に配置するため、LWC10の外側面から銅管11が径外方へ外れようとしている巻き解き開始位置10c及び、鍔付プロテクトパイプ20に対するチューブ18の相対位置を安定させ、銅管11をスムーズにガイド16に案内することができる。
【0089】
また、チューブ18を、コイル幅方向間隔OR1、及び第3鉛直方向間隔H3を直交させた直角三角形の斜辺OL以上の長さに形成することにより、チューブ18の必要長さがもっとも長い巻き解き前のLWC10の最外層Laにおける下端が巻き解きの始端となる場合であっても、銅管11をスムーズにガイド16に案内することができる。
【0090】
また、チューブ18のチューブ下端18bを、LWC10の外側面から銅管11が巻き解かれる巻き解き開始位置10cの近傍に配置するため、銅管11をLWC10の外側面から容易に径外方へ外すことができる。
【0091】
詳しくは、
図3に示すように、下面レベルDLから上面レベルULに向かって銅管11を巻き解く層Lb,Ld,LfにおいてLWC10の下面レベルDLと層Lb,Ld,Lfの最下端となる銅管11(下端部11d)との間に隙間が無い場合、最下端となる銅管11の上に位置する銅管11と緩衝プレート23に挟まれて最下端となる銅管11をLWC10から外すことが困難となる。
【0092】
しかし、このような場合であっても、チューブ18のチューブ下端18bが、銅管11が径外方へ外れようとしている巻き解き開始位置10cにある銅管11をLWC10から容易に外すことができる。
【0093】
しかし、このような場合であっても、チューブ18のチューブ下端18bを巻き解き開始位置10cに配置することにより、チューブ18の肉厚分径外側に銅管11を案内し、銅管11をLWC10の最外層Laから容易に径外方へ逃がすことができ、LWC10の外側面の銅管11と巻き解かれている銅管11とが接触して銅管11に上記不良が生じることをより確実に回避できる。
【0094】
またチューブ18のチューブ上端18aとガイド16のガイド下端16aとを、ベアリング17を介して互いに回動自在に接続するため、LWC10から銅管11を上方へ巻き解く際、チューブ18がコイルの中心軸CLの周りを回ることによってチューブ18に捻れが生じることを防止できる。したがって、チューブ18により銅管11を安定してガイド16に案内することができる。
【0095】
また、LWC10のコイル上面10Uからガイド16のガイド下端16aまでの鉛直方向の間隔である第1鉛直方向間隔H1を500mm以上2000mm以下である1850mmに設定しているため、LWC10の最外層Laから最内層Lfに向かって銅管11を巻き解く際に、巻き解かれた銅管11による巻き締まりをより確実に防止し、LWC10から銅管11をさらにスムーズに供給することができる。
【0096】
詳しくは、LWC10のコイル上面10Uからガイド16のガイド下端16aまでの鉛直方向の間隔が短いと巻き解かれる銅管11に径外方に向かう力が強くなり、銅管11はコイルから容易に離れる。したがって、銅管11を巻き解く際に、銅管11が巻き締まるなどして傷や折曲がり等の不良が生じたりすることがない。また、巻き癖も均一に生じて消失しやすくガイド16に擦れて、銅管11の表面が傷付くことも無い。
一方、LWC10のコイル上面10Uからガイド16のガイド下端16aまでの鉛直方向の間隔が短すぎる500mm以下の場合、逆に銅管11が屈曲し過ぎて巻き解き難くなる。
【0097】
逆に、LWC10のコイル上面10Uからガイド16のガイド下端16aまでの鉛直方向の長すぎる2000mm以上の場合、巻き解かれている銅管11の長さが長くなり、銅管11を巻き解くために要する引張り力が増大し、銅管11に折曲がり等の不良が生じたりする可能性が高くなるとともに、巻き癖が生じやすくなる。
【0098】
これに対し、LWC10のコイル上面10Uに対するガイド16の高さを、適切な高さである上記範囲に設定することにより、LWC10の最外層Laから最内層Lfに向かって銅管11を巻き解く際に、巻き解かれた銅管11による巻き締まりをより確実に防止し、LWC10から銅管11をさらにスムーズに供給することができる。
【0099】
なお、上述の説明では、プロテクトパイプ本体21の上端に鍔リング22を装着して構成した鍔付プロテクトパイプ20をLWC10に装着したが、第2鉛直方向間隔H2に対するパイプ幅方向間隔OR2の比が2以下に設定していれば、
図8及び
図9に示すように、鍔リング22を装着しないプロテクトパイプ本体21のみでプロテクトパイプ20aを構成してもよい。
【0100】
その場合であっても、第2鉛直方向間隔H2に対するパイプ幅方向間隔OR2の比を2以下に設定するとともに、第1鉛直方向間隔H1に対するコイル幅方向間隔OR1の比を4以下に設定し、第1鉛直方向間隔H1を500mm以上2000mm以下に設定する。
【0101】
さらには、チューブ18を、所定の肉厚で形成するとともに、コイル幅方向間隔OR1、及び第3鉛直方向間隔H3を直交させた直角三角形の斜辺OL以上の長さに形成し、チューブ18のチューブ上端18aをガイド16のガイド下端16aに接続し、チューブ18のチューブ下端18bを巻き解き開始位置10cの近傍に配置することにより、プロテクトパイプ20aは、鍔リング22を装着した鍔付プロテクトパイプ20を用いた巻き解き方法における作用と同様の作用を奏することができる。
【0102】
また、上述の説明においてプロテクトパイプ本体21を段ボールで構成したが、少なくとも銅管11同士の摩擦係数よりも小さい摩擦係数の素材であればポリエチレン、塩化ビニル又はフッ素樹脂といったプラスチックで構成してもよい。
【0103】
また、鍔付プロテクトパイプ20を内周空間Sに装着したが、巻取りボビンの巻き胴を取り外さず、巻き胴の内側に鍔付プロテクトパイプ20を装着してもよい。さらには、円筒状のプロテクトパイプ本体21を用いたが、内部が中実な円柱状や、断面が四角形や六角形である多角柱状、あるいは多角筒状とすることもできる。しかし、多角柱状や多角筒状のプロテクトパイプ本体21の場合、角部が面取りされた略多角柱状や略多角筒状であることが好ましい。また、プロテクトパイプ本体21のうち、LWC10のコイル上面10Uからに露出する部分を、逆円錐台や逆多角錐台に形成した柱状体に形成してもよい。この場合、内周空間Sのコイル内径ID1より径大に形成できるため、鍔リング22を備えないプロテクトパイプ20aであっても、鍔リング22を備えた鍔付プロテクトパイプ20と同様の作用を奏することができる。
【0104】
また、鍔リング22を装着した鍔付プロテクトパイプ20の場合において、鍔リング22とプロテクトパイプ本体21とを一体構成してもよい。また、上述の説明において、鍔リング22を樹脂で構成したが、プロテクトパイプ本体21と同じダンボールで構成してもよい、あるいは、ポリエチレン、塩化ビニル又はフッ素樹脂といったプラスチックで構成することができる。
上記チューブ18は、所定の肉厚を有する樹脂で構成したが、銅管11及び鍔付プロテクトパイプ20(プロテクトパイプ20a)に対する摩擦係数が小さい他の素材で構成してもよい。
【0105】
次に、LWC10の巻き解き方法として、上述の鍔付プロテクトパイプ20の代わりに上面フランジカバー120を用いた巻き解き方法として
図10乃至
図12とともに説明する。
なお、
図10はLWC10から銅管11を巻き解く際にLWC10に装着するフランジ部材121、筒状芯材122及び緩衝プレート23の分解斜視図である。
図11は上面フランジカバー120を用いた巻き解き方法を示す斜視図であり、
図12はフランジ部材12
1及びチューブ18を取り付けた状態でLWC10から銅管11を巻き解く様子について説明する説明斜視図である。
【0106】
このような供給方法について詳述すると、LWC10の最外層Laから銅管11を巻き解く方法においては、銅管11を巻き解く前に、
図10に示すように、まず、水平に置かれたパレット24上に載置した円板形状の緩衝プレート23の中心軸CLとLWC10の中心軸CLを一致させて緩衝プレート23上にLWC10を載置する。
【0107】
次に、上面フランジカバー120を、LWC10に装着する。上面フランジカバー120は、フランジ部材121と筒状芯材122とで構成している。フランジ部材121は、LWC10のコイル外径OD1(
図1参照)よりフランジ径D3が大きく、ダンボール製の円形板材で構成している。筒状芯材122は、LWC10のコイル内径ID1(
図1参照)と同じパイプ外径OD2及びLWC10のコイル高さh1と同じ筒高さh2を有する、ダンボール製の筒状体で構成している。筒状芯材122をLWC10の内側面10aに沿わせて内周空間Sに完全に嵌め込むことで上面フランジカバー120を装着する。
【0108】
なお、フランジ部材121と筒状芯材122とは、これらの中心を一致させて一体構成している。また、フランジ部材121においてLWC10に装着した際における
筒状芯材122のパイプ外径OD2よりも径外側に突出している部分をフランジ突出部121aとし、さらに、フランジ部材121の側面をフランジ側面121bとする。
【0109】
また、引き上げられた銅管11の巻き癖を解消するために、
図11に示すように、プラスチック製でパイプ状のガイド16を、LWC10の中心軸CLの上部において、LWC10の上面レベルULからガイド16のガイド下端16aまでの鉛直方向の間隔である第1鉛直方向間隔H1が500mmから2000mmまでの範囲である1850mmとなるように設置する。
【0110】
さらに、
図6に示すように、ガイド16のガイド下端16aにベアリング17を介して銅管11との摩擦係数が小さいプラスチック製のチューブ18のチューブ上端18aを接続することで、チューブ18をガイド16に対して回動自在となるように接続している。
【0111】
また、
図11に示すように、チューブ18のチューブ下端18bがちょうどLWC10の外側面10bから銅管11が外れようとしている巻き解き開始位置10cの近傍となるようにチューブ18の長さを調整している。
【0112】
上述のように上面フランジカバー120を装着したLWC10を、ガイド16及びチューブ18に対して上述の相対位置に配置し、チューブ18及びガイド16に銅管11を通して上方へ引き抜くことで、LWC10から銅管11を巻き解いて供給することとなる。
【0113】
この方法により、LWC10から銅管11を巻き解く際に、LWC10の外側面10bに対する銅管11による巻き締まりを回避し、LWC10から銅管11をスムーズに供給することができる。
詳述すると、LWC10のコイル外径OD1よりも大きいフランジ径D3を有するフランジ部材121をLWC10の上面レベルULでこれらの中心を中心軸CLを一致させて固定しておくことで、
図12に示すように、銅管11はLWC10の外側面10bから外れて、一旦径外方へと向かい、次にチューブ18がフランジ突出部121aのフランジ側面121bに接触するか接近して、LWC10の上方に設置されたガイド16に向かって、中心軸CLの周りを矢印Eの方向に回転しながら巻き解かれる。
【0114】
したがって、
図11及び
図12に示すように、LWC10の外側面10bと巻き解かれている銅管11との間に隙間が生じ、銅管11がダイレクトにLWC10の上方へ案内されることを物理的に阻止でき、巻き解かれている銅管11がLWC10の外側面10bに巻き締まることを回避できる。
【0115】
この最外層Laから巻き解く方法では、銅管11を上方に向かって巻き解くため、最外層Laの管端11aが上面レベルULから下面レベルDLの間の何処にあっても巻き解きの際に最外層Laの銅管11がずり落ちることがなく、銅管11の破断、折れ曲がり、擦り傷付き等の不良の発生を回避することができる。
このことにより、巻き締まって銅管11に負荷が作用することで上記不良の発生を回避できるため、銅管11の歩留まりと生産効率を大きく向上させることができる。
【0116】
また、
図11及び
図12に示すように、チューブ18のチューブ下端18bをLWC10の外側面10bから銅管11が径外方へ外れようとしている巻き解き開始位置10cに配置しているため、チューブ18の肉厚分径外側に案内するため、銅管11をLWC10から容易に外すことができる。
【0117】
殊に、
図3に示すように、下から上に向かって銅管11を巻き解く層Lb,Ld,LfにおいてLWC10の下面レベルDLと層Lb,Ld,Lfの最下端となる銅管11(下端部11d)との間に隙間が無い場合、最下端となる銅管11の上に位置する銅管11と緩衝プレート23に挟まれて最下端となる銅管11をLWC10から外すことが困難となる。
【0118】
しかし、このような場合であっても、チューブ18のチューブ下端18bが、銅管11が径外方へ外れようとしている巻き解き開始位置10cにある銅管11をLWC10から容易に外すことができる。
【0119】
さらに、
図11及び
図12に示すように、フランジ部材121によりLWC10の外側面10bと巻き解かれている銅管11との間には常に隙間があり、しかも、LWC10の外側面10bの銅管11と巻き解かれている銅管11とが接触するおそれのあるところは全てチューブ18に覆われているため、外側面10bと巻き解かれている銅管11との接触により銅管11に傷が生じることを確実に回避できる。
【0120】
また、
図6に示すように、チューブ18のチューブ上端18aをガイド16のガイド下端16aに取り付けることにより、LWC10の上面レベルUL及びLWC10の外側面10bから銅管11が径外方へ外れようとしている巻き解き開始部分10cに対するチューブ18の位置関係を安定させることができ、スムーズに銅管11を供給できる。
【0121】
また、
図6に示すように、チューブ18のチューブ上端18aをガイド16のガイド下端16aにベアリング17を介して回動自在となるように接続することで、LWC10から銅管11を巻き解く際に、チューブ18がLWC10の中心軸CLの周りを回ることによるチューブ18の捻れを回避でき、スムーズに銅管11を供給できる。
【0122】
また、
図11に示すLWC10の上面レベルULに対するガイド16のガイド下端16aの鉛直方向の間隔である第1鉛直方向間隔H1を最適に設定するため、スムーズに銅管11を供給できる。
詳述すると、LWC10の上面レベルULとガイド16のガイド下端16aとの鉛直方向の間隔である第1鉛直方向間隔H1が短いと巻き解かれる銅管11に径外方に向かう力が強くなり、銅管11はLWC10から容易に離れる。したがって、銅管11を巻き解く際に、銅管11に傷や折曲がりが生じない。また、巻き癖も均一に生じて消失しやすくガイド16に擦れて傷がつくことも無い。
【0123】
一方、LWC10の上面レベルULとガイド16のガイド下端16aとの鉛直方向の間隔である第1鉛直方向間隔H1が短すぎる500mm以下の場合、逆に銅管11が屈曲し過ぎて巻き解き難くなる。
したがって、適切なLWC10の上面レベルULに対するガイド16のガイド下端16aまでの鉛直方向の間隔である第1鉛直方向間隔H1を、適切な範囲である500mm以上2000mm以下に設定することにより、銅管11をスムーズに供給することができる。
【0124】
さらにまた、筒状芯材122をLWC10の内側面10aに沿って内周空間Sに完全に嵌め込んだ状態で銅管11を巻き解くため、巻き解きの際に内側面10a付近の巻き回されている銅管11が崩れることを防止できる。
【0125】
なお、上述の説明ではLWC10の巻き方として、各層の巻き数が全て同じになる巻き付け方について説明したが、これに限らず、各層で巻き数が異なっていても良い。
また、上述の本実施形態ではフランジ部材121としてダンボールを用いているが、例えば、ポリエチレン、塩化ビニル、フッ素樹脂といったプラスチックを用いても良い。
【0126】
また、上述の本実施形態において、銅管11の巻き解きをよりスムーズにするために、予めフランジ突出部121aにグリスなどの潤滑剤を塗布してもよい。
また、例えば、上述の本実施形態では、巻き解きの直前にフランジ部材121及び筒状芯材122から構成される上面フランジカバー120をLWC10に装着するが、巻き付けの際に用いた巻取りボビンに取り付けたままの状態で上記方法によって銅管11を巻き解いて供給しても、上述の効果を得ることができる。
【0127】
この発明の構成と、上述の本実施形態との対応において、
この発明のレベルワウンドコイルは、本実施形態のLWC10に対応し、
金属管は、銅管11に対応し、
突出部材及び位置固定体は、鍔付プロテクトパイプ20あるいはプロテクトパイプ20aに対応し、
上面位置は、上面レベルULに対応し、
鍔部は、鍔リング22に対応し、
固定体幅方向間隔は、パイプ幅方向間隔OR2に対応し、
固定体鉛直方向間隔は、第2鉛直方向間隔H2に対応し、
コイル幅方向間隔は、コイル幅方向間隔OR1に対応し、
コイル鉛直方向間隔は、第1鉛直方向間隔H1に対応し、
コイル底面鉛直方向間隔は、第3鉛直方向間隔H3に対応するも
この発明は、上述の本実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0128】
例えば、上述の本実施形態では、ガイド16のガイド下端16aの内側に、ベアリング17を介してチューブ18のチューブ上端18aを挿入してガイド16とチューブ18を接続したが、ガイド16とチューブ18の端部同士を付き合わせてベアリング17を介して接続してもよく、また、ガイド16のガイド下端16aの外側にベアリング17を装着してチューブ18のチューブ上端18aを接続してもよい。
【0129】
また、上述の説明では銅管11を巻き付けて構成したLWC10について説明したが、銅管11のみならず、例えば、銅合金あるいは、アルミニウムやアルミ合金等の適宜の金属で構成する長尺状の金属管で構成してもよい。さらに、これらの効果の他、上述した本実施形態の効果と同様の効果を奏することができる。