(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、
A)熱可塑性ポリエステル29〜99.7質量%、
B)式
【化1】
のイミド塩又はそれらの混合物0.3〜3質量%(A)+B)100質量%を基準として)、ここで、Meはアルカリ金属を意味する、
C)更なる添加物質0〜70質量%を含み、その際、A)〜C)の質量%値の合計が100%である、熱可塑性成形材料の使用に関する。
【0002】
さらに、本発明は、繊維、シート及び成形体、殊にレーザー透過性の成形体を製造するための、並びにレーザー透過溶着法によって成形体を製造するための成形材料の使用、このような成形体の製造法並びに様々な適用領域における該成形体の使用に関する。
【0003】
このような成分B)は、例えばEP021648及びEP2022826の中で、PETコンパウンドの核形成剤として言及されている。該コンパウンドの光学特性は調べられていなかった。
【0004】
プラスチック成形部材の溶着のために、様々な方法が存在している(Kunststoffe 87,(1997),11,1632〜1640)。安定した溶着部の条件は、広く行きわたった熱溶着(Heizelementschweissen)及び(例えば自動車両のインテークマニホールドの)振動溶着の方法の場合、実際の接合工程に先立つ接触ゾーンでの結合相手の十分な軟化である。
【0005】
振動溶着及び熱溶着の代わりとなる方法として、殊にダイオードレーザーを用いた、レーザー透過溶着が、最近ますます広まってきている。
【0006】
レーザー透過溶着の基本原理は、専門文献に記載されている(Kunststoffe 87,(1997)3,348−350;Kunststoffe 88,(1998),2,210−212;Kunststoffe 87(1997)11,1632−1640;Plastverarbeiter 50(1999)4,18−19;Plastverarbeiter 46(1995)9,42−46)。
【0007】
レーザー透過溶着の適用の条件は、まず、レーザーから放出されたビームが、用いられる波長のレーザー光に対して十分透過性である成形部材(下記において、この出願文献中では、レーザー透過性の成形部材とする)を通り抜け、次いで、レーザー透過性の成形部材と接触している第二の成形部材(下記において、レーザー吸収性の成形部材と呼ぶ)に、より薄い層で吸収されることである。レーザー光を吸収するこの薄い層内で、レーザーエネルギーは熱に変換され、これは接触ゾーン内での溶融並びに最終的には溶着部による該レーザー透過性の成形部材と該レーザー吸収性の成形部材との結合を生む。
【0008】
レーザー透過溶着には、通常、600〜1200nmの波長領域のレーザーが用いられる。熱可塑性樹脂溶着のために用いられるレーザーの波長の領域中では、Nd:YAGレーザー(1064nm)又は高出力ダイオードレーザー(800〜1000nm)がよく用いられる。下記において、レーザー透過性及びレーザー吸収性との用語が使用される場合、それらは上述の波長領域を常に指す。
【0009】
レーザー透過性の成形部材には、レーザー吸収性の成形部材とは対照的に、レーザービームが溶着面まで所要のエネルギーで突き進むことができるように、有利な波長領域中での高いレーザー透過性が必要とされる。IRレーザー光に対する透過能の測定は、例えば、分光光度計及び球形光束計を用いて行われる。この測定構成は、透過ビームの散乱割合も検出する。それは1つの波長においてのみならず、目下、溶着プロセスのために用いられる全てのレーザー波長を包含するスペクトル領域中で測定される。
【0010】
今日、ユーザーは、全てが透過原理に基づく種々のレーザー溶着法の別形を利用することができる。例えば、軌跡溶着は、連続的な溶着処理であり、その際、レーザービームが、自由に設定可能な溶着部の輪郭に沿って動かされるか、又はコンポーネントが、固定設置されたレーザーに対して動かされる。同時溶着の場合、個々の高出力ダイオードのライン状に放出されたビームが、溶着されるべき溶着部の輪郭に沿って配置される。したがって、輪郭全体の溶融及び溶着は同時に行われる。擬似同時溶着は、軌跡溶着と同時溶着とを組み合わせたものである。レーザービームは、ガルバノミラー(スキャナー)を用いて、10m/s以上の非常に高い速度で溶着部の輪郭に沿って導かれる。高い移動速度によって、接合領域は徐々に加熱及び溶融される。同時溶着と比べて、溶着部の輪郭を変えた場合の高い融通性が存在する。マスク溶着は、ライン状のレーザービームを、接合されるべき部材に対して横方向に動かす方法である。マスクによって、ビームは目的に応じてシルエットを描き、かつ接合面の溶着されるべき箇所にのみ当たる。該方法は、非常に精確に位置決めされた溶着部を作り出すことを可能にする。これらの方法は当業者に知られており、例えば"Handbuch Kunststoff−Verbindungstechnik"(G.W.Ehrenstein,Hanser,ISBN 3−446−22668−0)及び/又はDVS−Richtlinie 2243"Laserstrahlschweissen thermoplastischer Kunststoffe"に記載されている。
【0011】
該方法の別形とは無関係に、レーザー溶着処理は、2つの接合相手の材料特性に大きく左右される。透過される部分のレーザー透過性の度合い(LT)は、単位時間当たりの導入可能なエネルギー量による処理速度に直接影響を及ぼす。部分結晶性熱可塑性樹脂は、通例、たいていの場合は球晶の形態における、その固有の微細構造によって、比較的僅かなレーザー透過性を有する。これらは、入射したレーザー光を、純粋非晶質の熱可塑性樹脂の内部構造より強く散乱させる:後方散乱が、透過における全エネルギー量の低下につながり、散漫(横方向)散乱が、しばしばレーザービームの拡がり、ひいては溶着精度の損失につながる。ポリブチレンテレフタレート(PBT)の場合、これらの現象が特に強く目立っており、それは、十分に結晶化する他の熱可塑性樹脂、例えばPAと比較して特に低いレーザー透過性及び甚だしいビーム拡大を示す。それゆえ、PBTは、レーザー溶着コンポーネント用の材料としては、その特性プロファイルの他の点(例えば良好な寸法安定性及び僅かな吸水性)がこのような適用にとってそれを非常に魅力的なものにしているにも関わらず、依然として比較的あまり使用されていない。たしかに、部分結晶性組織は、高いレーザー透過性にとって一般に妨げとなるが、しかし、それは他の特性においては利点を提供する。例えば、部分結晶質物は、ガラス転移温度より上でも機械的負荷に耐えることができ、かつ一般的に非晶質物より良好な耐化学薬品性を有する。素早く晶出する物質は、そのうえ、加工の上での利点、殊に素早い離型性ひいては短いサイクル時間を提供する。それゆえ、望ましいのは、部分結晶性、素早い結晶化及び高いレーザー透過性からの組合せである。
【0012】
ポリエステル、殊にPBTのレーザー透過性を高める様々の試みが知られている。基本的に、これらはブレンド/混合物法と屈折率整合法とに区別されることができる。
【0013】
ブレンド/混合物法による試みは、レーザー透過性の低いPBTを、レーザー透過性の高い配合−/混合相手で希釈することに拠っている。これに関する例は、文献JP2004/315805A1(PBT+PC/PET/SA+充填剤+エラストマー)、DE−A1−10330722(部分結晶性熱可塑性樹脂と非晶質熱可塑性樹脂との、LTを高めるための一般配合物;特にPBT+PET/PC+ガラス繊維)、JP2008/106217A(PBT+1,4−シクロヘキサンジメタノールとのコポリマー;16%から28%へのLTの上昇)。ここでの欠点は、主にマトリックスとしてPBTを基礎とする生成物とは明らかに異なる特性を有するポリマー配合物が不可避的に発生することである。
【0014】
屈折率整合法の試みは、非晶質及び結晶質のPBT並びに充填剤の様々の屈折率を引き合いに出している。この場合、例えばコモノマーが用いられていた:JP2008/163167(PBTとシロキサンより成るコポリマー)、JP2007/186584(PBT+ビスフェノールAジグリシジルエーテル)及びJP2005/133087(PBT+PC+エラストマー+高屈折シリコーン)が、例として挙げられる。たしかに、これはレーザー透過性の上昇につながるが、しかしながら、機械的特性を損なう。充填剤とマトリックスとの屈折率の差も減らすことができる。JP2009/019134(繊維とマトリックスとの光の移り変わりを適合させるために、ガラス繊維上にコーティングされたエポキシ樹脂)又はJP2007/169358(高屈折性ガラス繊維を有するPBT)を参照されたい。しかしながら、このような出発物質は、それらの高いコスト及び/又は製造処理における付加的な段階が生じる故に欠点である。
【0015】
全般的に、レーザー透過性の上昇に関して達成される効果は比較的僅かなものでもあり、そのため改善の余地がある。
【0016】
それゆえ、本発明の課題は、ポリエステルのレーザー透過性を改善することであった。それに従って、冒頭で定義した成形材料が見出された。有利な実施形態及びそれらの使用は、従属請求項から読み取ることができる。
【0017】
成分A)として、本発明による成形材料は、成分A)に関して、29〜99.7質量%、有利には80〜99.6質量%、殊に80〜99.2質量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリエステルを含有する。
成分A)における該ポリエステル種の少なくとも1種は、部分結晶性ポリエステルである。有利なのは、部分結晶性ポリエステル少なくとも50質量%を含む成分A)である。特に有利には、この割合は70質量%である(そのつどA)100質量%を基準として)。
【0018】
A)〜C)より成る(すなわちCを含んだ)成形材料100%を基準として、これらは、
A)+B)30〜100質量%、好ましくは50〜100質量%
C)0〜70質量%、好ましくは0〜50質量%
を含む。
【0019】
上記基準値の重要な要素は、成分B)の割合が常にポリエステルを基準としていることであり、なぜなら、この比率は、上述の範囲内にあるべきだからである。添加物質C)は、レーザー透過性に影響を及ぼし得る。これは、本質的に該添加物質の散乱特性及び吸収特性に左右される。コンパウンドの光学特性は、本質的に、本発明によるマトリックス(成分A+B)の光学特性と添加剤(成分C)のそれとを合わせたものである。
【0020】
一般に、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族又は芳香族のジヒドロキシ化合物を基礎とするポリエステルA)が使用される。
【0021】
有利なポリエステルの第一の群は、ポリアルキレンテレフタレート、殊にアルコール部分に炭素原子2〜10個を有するものである。
【0022】
このようなポリアルキレンテレフタレートは自体公知であり、かつ文献に記載されている。それらは、芳香族ジカルボン酸に由来する芳香族環を主鎖に含む。該芳香族環は、例えば、塩素及び臭素といったハロゲンによって、又はメチル基、エチル基、i−若しくはn−プロピル基及びn−ブチル基、i−ブチル基若しくはt−ブチル基といったC
1〜C
4−アルキル基によって置換されていてもよい。
【0023】
これらのポリアルキレンテレフタレートは、芳香族ジカルボン酸、それらのエステル又はエステルを形成する他の誘導体と脂肪族ジヒドロキシ化合物との自体公知の方法での反応によって製造されることができる。
【0024】
有利なジカルボン酸として、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸及びイソフタル酸又はそれらの混合物が挙げられる。芳香族ジカルボン酸の30モル%まで、好ましくは10モル%以下が、脂肪族又は脂環式のジカルボン酸、例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸及びシクロヘキサンジカルボン酸によって置き換えられていてよい。
【0025】
脂肪族ジヒドロキシ化合物の内、炭素原子2〜6個を有するジオール、殊に1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコール又はそれらの混合物が有利である。
【0026】
特に有利なポリエステル(A)として、炭素原子2〜6個を有するアルカンジオールから誘導されるポリアルキレンテレフタレートが挙げられる。これらの内、殊にポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート又はそれらの混合物が有利である。さらに有利なのは、1,6−ヘキサンジオール及び/又は2−メチル−1,5−ペンタンジオール1質量%まで、好ましくは0.75質量%までを更なるモノマー単位として含むPET及び/又はPBTである。
【0027】
ポリエステル(A)の粘度数は、ISO 1628に従って、一般的に50〜220、好ましくは80〜160の範囲にある(フェノール/o−ジクロロベンゼン混合物(25℃にて1:1の質量比)に溶かした0.5質量%の溶液中で測定)。
【0028】
殊に有利なのは、カルボキシル末端基含量がポリエステル1kg当たり0〜100mval、有利には10〜50mval、殊に15〜40mvalのポリエステルである。このようなポリエステルは、例えばDE−A4401055の方法に従って製造されることができる。該カルボキシル末端基含量は、通常、滴定法(例えば電位差測定)によって測定される。
【0029】
殊に有利な成形材料は、成分A)としてポリエステル種より成る混合物を含み、その際、少なくとも1種はPBTである。例えばポリエチレンテレフタレートの割合は、好ましくは、混合物中で、A)100質量%を基準として50質量%まで、殊に10〜35質量%である。
【0030】
さらに、好ましいのは、PETリサイクル材料(スクラップPETとも呼ばれる)を、場合により、ポリアルキレンテレフタレート、例えばPBTと混合物の形で用いることである。
【0031】
リサイクル材料とは、一般的に:
1)いわゆる工業過程後のリサイクル材料:これらは、重縮合に際しての、又は加工に際しての製造廃棄物、例えば射出成形加工に際してのスプルー、射出成形加工若しくは押出に際しての始動屑、又は押出シート若しくは押出フィルムのエッジ断片である。
2)消費者使用後のリサイクル材料:これらは、最終消費者による利用後に集められ、再処理されているプラスチック類である。量的に圧倒的に多い類は、ミネラルウォーター、ソフトドリンク及びジュース用の吹込成形されたPETボトルである。
【0032】
両類型のリサイクル材料は、粉砕物として又は顆粒の形態で存在していてよい。後者の場合、粗製リサイクル材料が、分離及び精製後に押出機中で溶融及び顆粒化される。これによって、たいていの場合、操作、易流動性及び更なる加工工程における供給性が促進される。
【0033】
顆粒化されたリサイクル材料も、粉砕物として存在するリサイクル材料も用いられることができ、ここで、最大エッジ長さは、10mm、好ましくは8mm未満であることが望ましい。
【0034】
加工に際しての(微量の湿分による)ポリエステルの加水分解開裂に基づき推奨されるのは、リサイクル材料を予め乾燥することである。該乾燥後の残留湿分率は、好ましくは<0.2%、殊に<0.05%である。
【0035】
更なる群として挙げられるのは、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する全芳香族ポリエステルである。
【0036】
芳香族ジカルボン酸として適しているのは、すでにポリアルキレンテレフタレートの所で記載した化合物である。有利には、イソフタル酸5〜100モル%とテレフタル酸0〜95モル%より成る混合物、殊にテレフタル酸約50モル%〜約80%とイソフタル酸20%〜約50モル%との混合物が使用される。
【0037】
芳香族ジヒドロキシ化合物は、好ましくは、一般式
【化2】
[式中、Zは、炭素原子8個までを有するアルキレン基若しくはシクロアルキレン基、炭素原子12個までを有するアリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子若しくは硫黄原子又は化学結合であり、かつ、mは0〜2の値を有する]を有する。該化合物は、フェニル基上に、C
1〜C
6−アルキル基又はアルコキシ基及びフッ素、塩素又は臭素も置換基として有していてよい。
【0038】
これらの化合物の母体は、例えば、
ジヒドロキシフェニル、
ジ−(ヒドロキシフェニル)アルカン、
ジ−(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、
ジ−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、
ジ−(ヒドロキシフェニル)エーテル、
ジ−(ヒドロキシフェニル)ケトン、
ジ−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、
α,α'−ジ−(ヒドロキシフェニル)−ジアルキルベンゼン、
ジ−(ヒドロキシフェニル)スルホン、ジ−(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、
レソルシン及び
ヒドロキノン並びにそれらの環アルキル化又は環ハロゲン化された誘導体が挙げられる。
【0039】
これらの内、
4,4'−ジヒドロキシジフェニル、
2,4−ジ−(4'−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、
α,α'−ジ−(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、
2,2−ジ−(3'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン及び
2,2−ジ−(3'−クロロ−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、
並びに、殊に
2,2−ジ−(4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ジ−(3',5−ジクロロジヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ジ−(4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
3,4'−ジヒドロキシベンゾフェノン、
4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン及び
2,2−ジ(3,5'−ジメチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン
又はそれらの混合物が有利である。
【0040】
当然の事ながら、ポリアルキレンテレフタレートと全芳香族ポリエステルの混合物も用いることができる。これらは、一般的に、ポリアルキレンテレアフタレート20〜98質量%及び全芳香族ポリエステル2〜80質量%を含有する。
【0041】
当然の事ながら、ポリエステルブロックコポリマー、例えばコポリエーテルエステルも使用することができる。このような製品は自体公知であり、かつ文献に、例えばUS−A3651014に記載されている。相応する製品は、例えばHytel
(R)(DuPont)として市販もされており、入手可能である。
【0042】
ポリエステルとは、本発明によれば、ハロゲン不含のポリカーボネートとも解される。適したハロゲン不含のポリカーボネートは、例えば、一般式
【化3】
[式中、Qは、単結合、C
1〜C
8−アルキレン基、C
2〜C
3−アルキリデン基、C
3〜C
6−シクロアルキリデン基、C
6〜C
12−アリーレン基並びに−O−、−S−又は−SO
2−を意味し、かつ、mは0〜2の整数である]のジフェノールを基礎とするものである。
【0043】
該ジフェノールは、フェニレン基上に、C
1〜C
6−アルキル又はC
1〜C
6−アルコキシといった置換基も有していてよい。
【0044】
該式の有利なジフェノールは、例えば、ヒドロキノン、レソルシン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサンである。特に有利なのは、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン及び1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、並びに1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
【0045】
ホモポリカーボネートもコポリカーボネートも成分Aとして適しており、有利なのは、ビスフェノールA−ホモポリマーのほかに、ビスフェノールAのコポリカーボネートである。
【0046】
適したポリカーボネートは、公知の方法で、それも好ましくは、用いられるジフェノールの合計を基準として0.05〜2.0モル%の少なくとも三官能性の化合物、例えば3個より多いフェノール性OH基を有するものを組み入れることによって分岐させられていてよい。
【0047】
特に適していると判明したのは、1.10〜1.50、殊に1.25〜1.40の相対粘度η
relを有するポリカーボネートである。これは、10000〜200000g/モル、好ましくは20000〜80000g/モルの平均分子量M
w(重量平均値)に相当する。
【0048】
該一般式のジフェノールは自体公知であるか又は公知の方法に従って製造可能である。
【0049】
該ポリカーボネートの製造は、例えば、ジフェノールを、界面法に従ったホスゲンとの反応によって、又は均一相での方法(いわゆるピリジン法)に従った反応によって行ってよく、その際、そのつど用いられる分子量は、公知の方法で、相応する量の公知の連鎖停止剤によって達成される(ポリジオルガノシロキサンを含むポリカーボネートに関して、例えばDE−OS3334782を参照されたい)。
【0050】
適した連鎖停止剤は、例えば、DE−OS2842005に記載の、フェノール、p−t−ブチルフェノール、或いはまた4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノールといった長鎖アルキルフェノール、又はDE−A3506472に記載の、p−ノニルフェニル、3,5−ジ−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール及び4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールといった、アルキル置換基中に計8〜20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノール又はジアルキルフェノールである。
【0051】
本発明に従ったハロゲン不含のポリカーボネートは、該ポリカーボネートが、ハロゲン不含のジフェノール、ハロゲン不含の連鎖停止剤及び場合によりハロゲン不含の分岐剤から構成されていることを意味し、その際、例えば界面法に従ったホスゲンを用いたポリカーボネートの製造から生じる、僅かなppm量のけん化性塩素含量は、本発明に従ってハロゲン含有とは見なされない。ppm含量のけん化性塩素を有するこのようなポリカーボネートは、本発明に従ってハロゲン不含のポリカーボネートである。
【0052】
更なる適した成分A)として、非晶質ポリエステルカーボネートが挙げられ、その際、ホスゲンの代わりに、芳香族ジカルボン酸単位、例えばイソフタル酸及び/又はテレフタル酸単位が製造に際して用いられていた。より詳細な点については、今ここでEP−A711810を指摘しておく。
【0053】
モノマー単位としてシクロアルキル基を有する更なる適したコポリカーボネートは、EP−A365916に記載されている。
【0054】
さらに、ビスフェノールAの代わりに、ビスフェノールTMCを用いることができる。このようなポリカーボネートは、Bayer社の商標APEC HT
(R)で入手可能である。
【0055】
成分B)として、本発明による成形材料は、式
【化4】
のイミド塩又はそれらの混合物0.3〜3質量%、好ましくは0.4〜2.5質量%、殊に0.8〜2質量%を含み、その際、Meはアルカリ金属、好ましくはナトリウム及び/又はカリウムを意味する。
【0056】
有利な化合物Bは:
【化5】
【0057】
製造法は当業者に知られているため、これに関する更なる説明は不要である。
【0058】
成分C)として、本発明による成形材料は、A)、B)及びC)100質量%を基準として、B)及び/又はA)とは異なる更なる添加物質及び加工助剤0〜70質量%、殊に50質量%までを含んでいてよい。
【0059】
慣用の添加物質C)は、例えば、弾性ポリマー(耐衝撃性改良剤、エラストマー又はゴムとも呼ばれることが多い)40質量%までの量、好ましくは15質量%までの量である。
【0060】
極めて一般に、これらは、有利には少なくとも2種の以下のモノマーから構成されているコポリマーである:エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、及びアルコール成分中に炭素原子1〜18個を有するアクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルである。
【0061】
このようなポリマーは、例えば、Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,Vol.14/1(Georg−Thieme−Verlag,Stuttgart,1961),第392頁〜第406頁及びC.B.Bucknall,"Toughened Plastics"(Applied Science Publishers,London,1977)に記載されている。
【0062】
以下に、かかるエラストマーのいくつかの有利な類型を表す。
【0063】
エラストマーの有利な類型は、いわゆるエチレン−プロピレン(EPM)ゴム若しくはエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムである。
【0064】
EPMゴムは、一般的に実際は二重結合をもはや有していないのに対して、EPDMゴムは、炭素原子100個当たり1〜20個の二重結合を有していてよい。
【0065】
EPDMゴムのジエンモノマーとして、例えば、イソプレン及びブタジエンといった共役ジエン、ペンタ−1,4−ジエン、ヘキサン−1,4−ジエン、ヘキサ−1,5−ジエン、2,5−ジメチルヘキサン−1,5−ジエン及びオクタ−1,4−ジエンといった炭素原子5〜25個を有する非共役ジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサンジエン、シクロオクタジエン及びジシクロペンタジエンといった環状ジエン並びに5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネンといったアルケニルノルボルネン及び3−メチル−トリシクロ(5.2.1.0.2.6)−3,8−デカジエンといったトリシクロジエン又はそれらの混合物が挙げられる。有利なのは、ヘキサ−1,5−ジエン、5−エチリデンノルボルネン及びジシクロペンタジエンである。EPDMゴムのジエン含量は、該ゴムの全質量を基準として、好ましくは0〜50質量%、殊に1〜8質量%である。
【0066】
EPMゴム若しくはEPDMゴムは、好ましくは、反応性カルボン酸又はそれらの誘導体ともグラフトされていてよい。この場合、例えば、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、並びに無水マレイン酸が挙げられる。
【0067】
有利なゴムの更なる群は、エチレンとアクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はこれらの酸のエステルとのコポリマーである。付加的に、該ゴムは、さらにジカルボン酸、例えばマレイン酸及びフマル酸若しくはこれらの酸の誘導体、例えばエステル及び無水物、並びに/又はエポキシ基を含むモノマーを含んでいてよい。これらのジカルボン酸誘導体若しくはエポキシ基を含むモノマーは、好ましくは、一般式I又はII又はIII又はIV
【化6】
[式中、R
1〜R
9は、水素又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ、mは0〜20の整数であり、gは0〜10の整数であり、かつ、pは0〜5の整数である]のジカルボン酸基若しくはエポキシ基を含むモノマーをモノマー混合物に添加することによってゴム中に組み入れられる。
好ましくは、R
1〜R
9基は水素を意味し、その際、mは0又は1を表し、かつ、gは1を表す。相応する化合物は、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アリルグリシジルエーテル及びビニルグリシジルエーテルである。
【0068】
式I、II及びIVの有利な化合物は、マレイン酸、無水マレイン酸及びエポキシ基を含むアクリル酸及び/又はメタクリル酸のエステル、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート及び第三級アルコールとの該エステル、例えばt−ブチルアクリレートである。後者は、たしかに遊離カルボキシル基を有していないが、しかし、それらの挙動は遊離酸にほぼ等しく、したがって、潜在性カルボキシル基を有するモノマーとされる。
【0069】
好ましくは、該コポリマーは、エチレン50〜98質量%、エポキシ基を含むモノマー及び/又はメタクリル酸及び/又は無水マレイン酸基を含むモノマー0.1〜20質量%並びに(メタ)アクリル酸エステルの残留量から成る。
【0070】
特に有利なのは、
エチレン50〜98質量%、殊に55〜95質量%、
グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレート、(メタ)アクリル酸及び/又は無水マレイン酸0.1〜40質量%、殊に0.3〜20質量%、並びに
n−ブチルアクリレート及び/又は2−エチルヘキシルアクリレート1〜45質量%、殊に10〜40質量%
より成るコポリマーである。
【0071】
更なる有利なアクリル酸及び/又はメタクリル酸のエステルは、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びi−若しくはt−ブチルエステルである。
【0072】
そのほかに、ビニルエステル及びビニルエーテルもコモノマーとして用いてよい。
【0073】
前述のエチレンコポリマーは、自体公知の方法に従って製造されることができ、好ましくは、高圧及び高められた温度下でのランダム共重合によって製造されることができる。相応する方法が一般に知られている。
【0074】
有利なエラストマーはエマルジョンポリマーであり、その製造は、例えばBlackleyにてモノグラフ"Emulsion Polymerization"に記載されている。使用可能な乳化剤及び触媒は自体公知である。
【0075】
基本的に、均一に合成されたエラストマー、さもなければシェル構造を有するものを用いることができる。シェル状の構造は、個々のモノマーの添加順序によって決められる;ポリマー組織も、この添加順序により影響を及ぼされる。
【0076】
ここで、単に例示的に、エラストマーのゴム部分を製造するためのモノマーとして、アクリレート、例えばn−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレート、相応するメタクリレート、ブタジエン及びイソプレン並びにそれらの混合物を挙げておく。これらのモノマーは、更なるモノマー、例えばスチレン、アクリロニトリル、ビニルエーテル及び更なるアクリレート又はメタクリレート、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート及びプロピルアクリレートと共重合されていてよい。
【0077】
エラストマーの軟質相又はゴム相(0℃未満のガラス転移温度を有する)は、コア、外側の被覆又は中間シェル(3つ以上のシェルの構造を有するエラストマーの場合)であってよい;複数のシェルを有するエラストマーの場合、複数のシェルもゴム相から成っていてよい。
【0078】
ゴム相のほかに、さらに1種以上の硬質成分(20℃を上回るガラス転移温度を有する)がエラストマーの構造に関与している場合、これらは、一般的に、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート及びメチルアクリレートを主モノマーとした重合によって製造される。そのほかに、この場合も、比較的少ない割合の更なるコモノマーを用いてよい。
【0079】
いくつかの場合において、好ましくは、表面に反応性基を有するエマルジョンポリマーを用いることが好ましいとわかった。このような基は、例えばエポキシ基、カルボキシレート基、潜在性カルボキシル基、アミノ基又はアミド基、並びに一般式
【化7】
のモノマーの併用によって導入されることができる官能基であり、
ここで、置換基は、以下の意味を有してよい:
R
10は、水素又はC
1〜C
4−アルキル基であり、
R
11は、水素、C
1〜C
8−アルキル基又はアリール基、殊にフェニルであり、
R
12は、水素、C
1〜C
10−アルキル基、C
6〜C
12−アリール基又は−OR
13であり、
R
13は、C
1〜C
8−アルキル基又はC
6〜C
12−アリール基であり、該基は、場合によりO若しくはNを含む基で置換されていてよく、
Xは、化学結合、C
1〜C
10−アルキレン基又はC
6〜C
12−アリーレン基又は
【化8】
であり、
Yは、O−Z又はNH−Zであり、かつ
Zは、C
1〜C
10−アルキレン基又はC
6〜C
12−アリーレン基である。
【0080】
EP−A208187に記載されるグラフトモノマーも、表面に反応性基を導入するのに適している。
【0081】
更なる例として、そのうえに、アクリルアミド、メタクリルアミド及びアクリル酸又はメタクリル酸の置換エステル、例えば(N−t−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、(N,N−ジメチルアミノ)メチルアクリレート及び(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレートが挙げられる。
【0082】
さらに、ゴム相の粒子は架橋されていてもよい。架橋剤として作用するモノマーは、例えばブタ−1,3−ジエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート及びジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート並びにEP−A50265に記載される化合物である。
【0083】
さらになお、いわゆるグラフト架橋モノマー、すなわち、重合に際して異なる速度で反応する2個以上の重合性二重結合を有するモノマーも使用することができる。好ましくは、少なくとも1個の反応性基がその他のモノマーとほぼ同じ速度で重合し、その一方で、他の反応性基は、例えば明らかによりゆっくりと重合する化合物が使用される。異なる重合速度は、特定の割合の不飽和二重結合を必然的にゴム中に伴う。引き続き、かかるゴム上に更なる相がグラフトされる場合、該ゴム中に存在する二重結合は、少なくとも部分的にグラフトモノマーと反応して化学結合を形成し、すなわち、グラフトされた相は、少なくとも部分的に化学結合によりグラフトベースと結び付いている。
【0084】
かかるグラフト架橋モノマーの例は、アリル基を含むモノマー、殊にエチレン性不飽和カルボン酸のアリルエステル、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート又は相応するこれらのジカルボン酸のモノアリル化合物である。そのほかに、数多くの更なる適したグラフト架橋モノマーが存在する;より詳細な点については、ここで、例えばUS−PS4148846を指摘しておく。
一般的に、耐衝撃性を改良するポリマー中でのこれらの架橋モノマーの割合は、該耐衝撃性を改良するポリマーを基準として5質量%まで、好ましくは3質量%以下である。
【0085】
次に、いくつかの有利なエマルジョンポリマーを列挙しておく。まず、ここでは、以下の構造を有する、コアと少なくとも1つの外側のシェルを有するグラフトポリマーを挙げる:
【表1】
【0086】
これらのグラフトポリマー、殊にABSポリマー及び/又はASAポリマーは、40質量%までの量で、好ましくは、PBTの耐衝撃性改良のために、場合によりポリエチレンテレフタレート40質量%までとの混合物の形で用いられる。相応するブレンド製品は、商標Ultradur
(R)S(以前はBASF AGのUltrablend
(R)S)で入手可能である。
【0087】
複数のシェルの構造を有するグラフトポリマーの代わりに、ブタ−1,3−ジエン、イソプレン及びn−ブチルアクリレート又はそれらのコポリマーより成る、均一な、すなわち、単一シェルのエラストマーも用いることができる。これらの生成物も、架橋モノマー又は反応性基を有するモノマーの併用によって製造されることができる。
【0088】
有利なエマルジョンポリマーの例は、n−ブチルアクリレート/(メタ)アクリル酸コポリマー、n−ブチルアクリレート/グリシジルアクリレートコポリマー又はn−ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマー、n−ブチルアクリレートより成るか又はブタジエンを基礎とする内部コアと前述のコポリマーより成る外側の被覆を有するグラフトポリマー、並びにエチレンと、反応性基を供与するコモノマーとのコポリマーである。
記載したエラストマーは、他の通常の方法に従って、例えば懸濁重合によっても製造されることができる。
【0089】
DE−A3725576、EP−A235690、DE−A3800603及びEP−A319290に記載されるようなシリコーンゴムも同様に有利である。
【0090】
当然の事ながら、前で挙げた類型のゴムの混合物も用いることができる。
【0091】
繊維状若しくは粒子状の充填剤C)として、ガラス繊維、ガラス球、非晶質シリカ、アスベスト、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、チョーク、粉末石英、雲母、硫酸バリウム及び長石が挙げられる。繊維状充填剤C)は、60質量%までの量、殊に35質量%までの量で用いられ、粒子状充填剤は、30質量%までの量、殊に10質量%までの量で用いられる。
【0092】
有利な繊維状充填剤として、アラミド繊維及びチタン酸カリウム繊維が挙げられ、その際、ガラス繊維がEガラスとして特に有利である。これらは、ロービング又はチョップトガラスとして市販の形態で用いられることができる。
【0093】
レーザー吸収性の高い充填剤、例えば炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン又はカーボンナノチューブが、有利には1質量%未満の量で、特に有利には0.05質量%未満の量で用いられる。
【0094】
繊維状充填剤は、熱可塑性樹脂とのより良好な相溶性のために、シラン化合物で表面前処理されていてよい。
【0095】
適したシラン化合物は、一般式
(X−(CH
2)
n)
k−Si−(O−C
mH
2m+1)
4-k
[式中、置換基は、以下の意味を有する:
Xは、
【化9】
であり、
nは、2〜10、有利には3〜4の整数であり、
mは、1〜5、有利には1〜2の整数であり、
kは、1〜3の整数、有利には1である]
のものである。
【0096】
有利なシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、並びに置換基Xとしてグリシジル基を含む、相応するシランである。
【0097】
シラン化合物は、一般的に、(Cを基準として)0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜1.5質量%、殊に0.2〜0.5質量%の量で表面コーティングのために用いられる。
【0098】
適しているのはまた、針状無機充填剤である。
【0099】
針状無機充填剤とは、本発明に従って、特に著しい針状特性を有する無機充填剤と解される。例として、針状ウォラストナイトが挙げられる。好ましくは、該鉱物は、8:1〜35:1、有利には8:1〜11:1のL/D(長さ対直径)比を有する。該無機充填剤は、場合により前で挙げたシラン化合物で前処理されていてよい;しかしながら、前処理は必ずしも必要というわけではない。
【0100】
成分C)として、本発明による熱可塑性成形材料は、慣用の加工助剤、例えば安定化剤、酸化抑制剤、熱分解及び紫外線による分解に対する試剤、滑剤及び離型剤、着色剤、例えば染料及び顔料、可塑剤等を含んでよい。
【0101】
酸化抑制剤及び熱安定化剤の例として、熱可塑性成形材料の質量を基準として1質量%までの濃度における、立体障害フェノール及び/又はホスファイト、ヒドロキノン、芳香族第二級アミン、例えばジフェニルアミン、これらの群の様々な置換された代表物質及びそれらの混合物である。
【0102】
成形材料を基準に、一般的に2質量%までの量で使用されるUV安定化剤として、様々な置換されたレソルシン、サリチレート、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノンが挙げられる。
【0103】
無機及び有機の顔料並びに染料、例えばニグロシン及びアントラキノンを着色剤として添加してよい。特に適した着色剤は、例えばEP1722984B1、EP1353986B1又はDE10054859A1に挙げられる。
【0104】
さらに有利なのは、炭素原子2〜40個、好ましくは2〜6個を含む脂肪族不飽和のアルコール若しくはアミンを有する、炭素原子10〜40個、有利には16〜22個を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族カルボン酸のエステル又はアミドである。
【0105】
該カルボン酸は1価又は2価であってよい。例として、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸、及び特に有利にはステアリン酸、カプリン酸並びにモンタン酸(炭素原子30〜40個を有する脂肪酸の混合物)が挙げられる。
【0106】
脂肪族アルコールは1価又は4価であってよい。アルコールの例は、n−ブタノール、n−オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトールであり、その際、グリセリン及びペンタエリスリトールが有利である。
【0107】
脂肪族アミンは1価又は3価であってよい。これに関する例は、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジ(6−アミノヘキシル)アミンであり、その際、エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンが特に有利である。有利なエステル又はアミドは、相応してグリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、エチレンジアミンジステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリントリラウレート、グリセリンモノベヘネート及びペンタエリスリトールテトラステアレートである。
【0108】
様々のエステル若しくはアミドの混合物又はエステルとアミドとを組み合わせたものを用いることができ、その際、混合比は任意である。
【0109】
更なる滑剤及び離型剤は、通常、1質量%までの量で用いられる。有利なのは、長鎖脂肪酸(例えばステアリン酸若しくはベヘン酸)、それらの塩(例えばステアリン酸カルシウム若しくはステアリン酸亜鉛)又はモンタンワックス(炭素原子28〜32個の鎖長を有する直鎖の飽和カルボン酸より成る混合物)並びにモンタン酸カルシウム又はモンタン酸ナトリウム並びに低分子量のポリエチレン若しくはポリプロピレンワックスである。
【0110】
可塑剤の例としては、フタル酸ジオクチルエステル、フタル酸ジベンジルエステル、フタル酸ブチルベンジルエステル、炭化水素油、N−(n−ブチル)ベンゼンスルホンアミドが挙げられる。
【0111】
本発明による成形材料は、さらにフッ素含有エチレンポリマー0〜2質量%を含んでよい。これらは、55〜76質量%、好ましくは70〜76質量%のフッ素含有率を有するエチレンのポリマーである。
【0112】
これに関する例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー又は比較的少ない割合(ふつうは50質量%まで)の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを有するテトラフルオロエチレンコポリマーである。これらは、例えば、Schildknechtにより"Vinyl and Related Polymers",Wiley−Verlag,1952,第484頁〜第494頁に、またWallにより"Fluorpolymers"(Wiley Interscience,1972)に記載されている。
【0113】
これらのフッ素含有エチレンポリマーは、成形材料中に均一に分散されて存在しており、かつ有利には、0.05〜10μm、殊に0.1〜5μmの範囲の粒径d
50(数平均値)を有する。これらの小さい粒径は、フッ素含有エチレンコポリマーの水性分散液の使用及びポリエステル溶融物中へのそれらの混入によって達成されることができる。
【0114】
本発明による熱可塑性成形材料は、出発成分を、慣用の混合装置、例えばスクリュー押出機、ブラベンダーミル又はバンバリーミル中で混合し、引き続き押出する自体公知の方法に従って製造されることができる。押出後、押出物を冷却し、かつ微粉砕してよい。個々の成分を予め混合し(例えば顆粒への成分Bの施与、又はドラム混合)、次いで残りの出発物質を個々にかつ/又は同様に混合して加えてもよい。混合温度は、通例、230〜290℃である。好ましくは、成分B)は、押出機の供給口にホットフィード方式又は直接方式で添加することができる。
【0115】
更なる有利な操作に従って、成分B)並びに場合によりC)を、ポリエステルプレポリマーと混合し、調製し、かつ顆粒化することができる。得られた顆粒は、固相で、引き続き不活性ガス下で連続的又は不連続的に、成分A)の融点を下回る温度にて所望の粘度になるまで凝縮される。
【0116】
本発明により使用可能な成形材料は、レーザー透過性の成形体の製造に適している。これらは、好ましくは、少なくとも33%、殊に少なくとも40%のレーザー透過率(1064nmにて、例に記載した測定法に従って2mm厚の成形体で測定)を有する。
【0117】
このようなレーザー透過性の成形体は、本発明により、レーザー透過溶着法によって成形体を製造するために使用される。
【0118】
レーザー吸収性の成形部材として、一般的には、全てのレーザー吸収性の材料を用いることができる。これらは、例えば複合物質、熱硬化性樹脂、又は特別な熱可塑性成形材料より成る有利な成形体であってよい。適した熱可塑性成形材料は、用いられる波長領域中で十分なレーザー吸収を有する成形材料である。適した熱可塑性成形材料は、例えば、有利には、無機顔料、例えばカーボンブラックの添加によって、かつ/又は有機顔料又はその他の添加剤の添加によってレーザー吸収性の熱可塑性樹脂である。例えば、レーザー吸収を達成するための適した有機顔料は、例えばDE19916104A1に記載されているような、有利にはIR吸収性の有機化合物である。
【0119】
さらになお、本発明の対象は、本発明による成形部材をレーザー透過溶着で結合した成形体及び/又は成形部材組合せ物である。
【0120】
本発明による成形部材は、レーザー透過溶着法で、レーザー吸収性の成形部材に持続的かつ安定的に固定するのに際立って適している。それゆえ、それらは殊に、例えば自動車両、電子機器、遠距離通信、情報技術、コンピューター、家庭、スポーツ、医療又は娯楽の用途における、カバー、ハウジング、取り付け部品及びセンサーの材料のために適している。
【0121】
例
成分A/1:
130ml/gの粘度数及び34mval/kgのカルボキシル基末端含量を有するポリブチレンテレフタレート(BASF SEのUltradur
(R)B4500)(粘度数は、ISO 1628に従って、25℃にてフェノール/o−ジクロロベンゼン,1:1の混合比より成る0.5質量%の溶液中で測定)。
【0122】
【表2】
【0123】
成形材料の製造は、ZSK 25で、250〜260℃のフラットな温度プロファイル及び顆粒化により行った。
【0124】
熱量試験を、DSCによりISO 11357に従って行った(加熱速度及び冷却速度20K/分)。結晶化のピーク温度T
PCを、第一の冷却過程において突き止めた。
【0125】
引張試験をISO 527に従って実施し、また耐衝撃性試験をISO 179に従って実施した。
【0126】
レーザー透過性の測定
1064nmの波長でのレーザー透過率の測定を、熱電能測定によって実施した。測定形状は、以下の通りに作り出していた:
2ワットの総出力を有するレーザービームから(1064nmの波長を有するダイオード励起形Nd−YAGレーザー、FOBA DP50)、ビーム分割器(Laseroptik GmbH社のSQ型非偏光ビーム分割器)を用いて、1ワットの出力を有する90°の角度における基準ビームを分割した。この基準ビームは、基準センサーに当たった。ビーム分割器を通過する元のビーム分は、同様に1ワットの出力を有する測定ビームとなる。このビームは、分割器後方のモード絞り(Modenblenden)(5.0)によって0.18μmの焦点径に集束していた。該焦点から下方に80mmの間隔をあけて、レーザー透過性(LT)測定センサーを位置決めしていた。試験シートを、LT測定センサーから上方に2mmの間隔をあけて位置決めしていた。射出成形された試験シートの寸法は60×60×2mm
3であり、エッジゲートを有していた。シートの真ん中で(2本の対角線の交点)測定した。射出成形パラメーターは、以下の値に設定した:
【表3】
【0127】
全体の測定時間は30秒であり、その際、測定結果を最後の5秒の間に突き止める。基準センサー及び測定センサーのシグナルを同時に検知した。測定は、サンプルの挿入と同時に行う。透過率ひいてはレーザー透過性は、以下の式からもたらされる:
LT=(シグナル(測定センサー))/シグナル(基準センサー))×100%
【0128】
この測定法によって、レーザーシステムの変動及び主観的な読み取り誤差が除かれた。
【0129】
シートのLT平均値を少なくとも5つの測定から算出した。平均値算出は、各々の材料について10枚のシートを用いて行った。個々のシート測定の平均値から、該材料の平均値並びに標準偏差を計算した。
【0130】
【表4】
【0131】
【表5】