(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
数平均分子量が1,500〜5,000の(メタ)アクリレートオリゴマー(a)、平均分子量が170〜500の低分子(メタ)アクリレート(b)、水分反応性有機金属化合物(c)および重合開始剤(d)を少なくとも含有し、
前記(メタ)アクリレートオリゴマー(a)および低分子(メタ)アクリレート(b)における1分子中の(メタ)アクリロイル基数が1.5〜3の多官能(メタ)アクリレートである、電子デバイス封止用硬化性吸湿性樹脂組成物。
前記(メタ)アクリレートオリゴマー(a)が5〜30質量%、前記低分子(メタ)アクリレート(b)が40〜90質量%および前記水分反応性有機金属化合物(c)が5〜30質量%の割合で含有される、請求項1または2に記載の電子デバイス封止用硬化性吸湿性樹脂組成物。
前記水分反応性有機金属化合物(c)が、アセチルアセトナト配位基を有する配位子およびアルコキシド配位子をそれぞれひとつ以上有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子デバイス封止用硬化性吸湿性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の電子デバイス封止用硬化性吸湿性樹脂組成物(以下、単に、封止用樹脂組成物とも称す。)の使用態様を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明の使用態様はこれに限定されるものではない。
【0015】
本発明の電子デバイス封止用硬化性吸湿性樹脂組成物は、
図1に示されるように、有機発光デバイス5における有機発光素子3を封止するために用いられる。より詳細には、素子基板4上に設けられた有機発光素子3等の有機電子デバイス用素子と封止基板1との間に電子デバイス封止用硬化性吸湿性樹脂組成物は封止樹脂2として配設される。これにより、有機発光素子3が素子基板4と封止基板1とで気密封止され、固体密着封止構造を有する有機発光デバイス5等の各種有機電子デバイスが得られる。有機電子デバイスとしては、有機ELディスプレイ、有機EL照明、有機半導体、有機太陽電池等が挙げられる。なお、上記から自明のように封止樹脂2とは、本発明の封止用樹脂組成物を硬化させてなる樹脂を意味する。
【0016】
<<電子デバイス封止用硬化性吸湿性樹脂組成物>>
本発明の電子デバイス封止用硬化性吸湿性樹脂組成物は、数平均分子量が1,500〜5,000の(メタ)アクリレートオリゴマー(a)、平均分子量が170〜500の低分子(メタ)アクリレート(b)、水分反応性有機金属化合物(c)および重合開始剤(d)を少なくとも含有し、前記(メタ)アクリレートオリゴマー(a)および低分子(メタ)アクリレート(b)における1分子中の(メタ)アクリロイル基数が1.5〜3の多官能(メタ)アクリレートである、電子デバイス封止用硬化性吸湿性樹脂組成物である。
【0017】
<(メタ)アクリレートオリゴマー(a)>
本発明における(メタ)アクリレートオリゴマー(a)は、基礎樹脂中に(メタ)アクリル基を含有するオリゴマーである。
基礎樹脂としては、一般的に知られている弾性樹脂を使用することができる。なかでも、不飽和および飽和の脂肪族炭化水素の重合体等が好ましい。
具体的には、不飽和脂肪族炭化水素の重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン等が挙げられる。脂肪族炭化水素の重合体としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び上記不飽和脂肪族炭化水素重合体の水素化化合物(水添化合物)等が挙げられる。ヘテロ元素含有炭化水素としては、例えばポリウレタン、ポリエステル等が挙げられる。
さらに、本願発明においては、上記の脂肪族炭化水素として記載した水添化合物の他、上記基礎樹脂の一部水添化合物等が挙げられる。
【0018】
(メタ)アクリロイル基は、基礎樹脂の主鎖、側鎖および末端のいずれかに含有していればよいが、基礎樹脂の末端に含有していることが好ましい。
また、(メタ)アクリロイル基は、ウレタン結合、エステル結合等の結合を介して基礎樹脂に結合していればよい。
【0019】
本発明における(メタ)アクリレートオリゴマー(a)は、分子量が低いと封止用樹脂組成物の粘度が低くなるため、封止基板とのなじみが良好となり、封止作業が行いやすくなる。ただし、分子量が低いと封止樹脂の架橋密度が高くなり、弾性率が高くなるため、封止コーナー部の剥離が増える。
一方、(メタ)アクリレートオリゴマー(a)が高分子量になると、硬化後の封止用樹脂組成物の屈曲性は改善するが、硬化前の封止用樹脂組成物の粘度が高くなるので封止基板への塗布が困難になる。
【0020】
本発明における(メタ)アクリレートオリゴマー(a)の数平均分子量は、1,500〜5,000である。
柔軟性に優れる観点から、2,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましい。また、低分子(メタ)アクリレート(b)との相溶性に優れる観点から、4,000以下が好ましく、3,500以下がより好ましい。
【0021】
なお、数平均分子量は、テトラヒドロフランに溶解して得た1%溶液を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC装置:Waters社製GPCシステム、カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMHHR−N」、流速:1.0 mL/min)により測定した値を、ポリスチレン換算の数平均分子量として算出したものである。
【0022】
本発明における(メタ)アクリレートオリゴマー(a)は、1分子中に1.5〜3個の(メタ)アクリロイル基が含有される多官能(メタ)アクリレートオリゴマーである。
(メタ)アクリロイル基の数は、1.5〜3個であるが、2〜3個が好ましく、2個がより好ましい。
なお、1.5個の(メタ)アクリロイル基が含有される(メタ)アクリレートオリゴマー(a)とは、例えば、(メタ)アクリレートオリゴマー1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基が含有されるものと(メタ)アクリレートオリゴマー1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基が含有されるものの、等モル混合物が挙げられる。
【0023】
(メタ)アクリレートオリゴマー(a)1分子中の(メタ)アクリロイル基は、通常行われるIR測定、
1H−NMR測定、 熱分解GC/MS測定、GPC測定から構造および分子量を推定することにより求めることができる。
【0024】
(メタ)アクリレートオリゴマー(a)は、市販の製品を購入して使用することができる。
例えば、日本曹達株式会社製のポリブタジエン末端ウレタンジ(メタ)アクリレート樹脂であるTEAI−1000およびTE−2000(いずれも商品名)ならびにポリブタジエン末端メタアクリレート樹脂であるEMA−3000(商品名)、SARTOMER社製の疎水性アクリレートオリゴマーであるCN307、CN308およびCN309(いずれも商品名)ならびに疎水性脂肪族ウレタンアクリレートであるCN310およびCN9104(いずれも商品名)、ならびに大阪有機化学工業株式会社製のポリブタジエン末端ジアクリレートであるBAC−45(商品名)および水添ポリブタジエン末端ジアクリレートであるSPBDA−S30(商品名)が挙げられる。
【0025】
また、(メタ)アクリレートオリゴマー(a)は、水酸基等の反応性基を有する基本樹脂(aa)と、該反応性基と反応する官能基およびアクリロイル基を有する化合物(ab)を反応させることにより合成したものを、使用することもできる。
ここで、水酸基等の反応性基を有する基本樹脂(aa)は、(メタ)アクリレートオリゴマー(a)と同様、1.5〜3個の反応性基を有することが好ましく、より好ましくは2〜3個、さらに好ましくは2個である。
【0026】
ここで、(メタ)アクリレートオリゴマー(a)1分子中の(メタ)アクリロイル基は、水酸基等の反応性基を有する基本樹脂(aa)の反応性基に対する、該反応性基と反応する官能基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物(ab)の配合比から算出することができる。
例えば、1分子中に2個の水酸基を有する基本樹脂(aa)1モルに対して、2−イソシアナトエチルアクリレートを2モル反応させた場合には、水酸基とイソシアネート基が全て反応し、得られる(メタ)アクリレートオリゴマー(a)は、アクリロイル基を1分子中に2個有することになる。
なお、上述した測定方法でも、(メタ)アクリロイル基数を求めることができる。
【0027】
基本樹脂(aa)における反応性基および化合物(ab)における官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、メルカプト基、環状酸無水基、エポキシ基、イソシアネート基(−N=C=O)等が挙げられる。
ここで、基本樹脂(aa)における反応性基および化合物(ab)における官能基のうちの一方の基が、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、メルカプト基、または環状酸無水基である場合には、他方の基は、エポキシ基、イソシアネート基が挙げられる。一方の基が環状酸無水基の場合、他方の基は水酸基、カルボキシ基、アミノ基、メルカプト基が挙げられる。なお、一方の基が、エポキシ基である場合は、他方の基はエポキシ基であってもよく、また、一方の基が、カルボキシ基の場合、他方の基は、水酸基、アミノ基、メルカプト基であってもよい。
【0028】
基本樹脂(aa)における反応性基としては、水酸基、カルボキシ基およびメルカプト基が好ましく、水酸基が特に好ましい。
基本樹脂(aa)としては、多官能性オリゴマーが挙げられ、なかでも両末端官能基化オリゴマーが好ましい。オリゴマーとしては、前述の(メタ)アクリレートオリゴマー(a)の好ましい基礎樹脂が好ましい。官能基としては、上記の好ましい反応性基が好ましい。
【0029】
基本樹脂(aa)としては、市販の製品を購入して使用することができる。
例えば、クレイバレー社製の水酸基末端水素化ポリオレフィンであるKRASOL HLBH−P2000、KRASOL HLBH−P3000(いずれも商品名)、出光興産株式会社製の水酸基末端ポリオレフィンであるEPOL(商品名)、水酸基末端ポリブタジエンであるPoly bd R−15HTおよびPoly bd R−45HT(商品名)ならびに水酸基末端ポリイソプレンであるPoly ip(商品名)、日本曹達株式会社製の両末端水酸基水素化ポリブタジエンであるGI−1000、GI−2000およびGI−3000(いずれも商品名)、ならびに三菱化学株式会社製のポリヒドロキシポリオレフィンオリゴマーであるポリテール(商品名)が挙げられる。
【0030】
化合物(ab)における官能基としては、イソシアネート基およびエポキシ基が好ましく、イソシアネート基がより好ましい。
化合物(ab)としては、(メタ)アクリル酸エステルのアルコール部にイソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、なかでもイソシアネート基で置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。このような化合物は、例えば、2−イソシアナトエチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルアクリレートが挙げられる。
また、官能基がイソシアネート基以外の場合の好ましい化合物は、官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。
【0031】
化合物(ab)としては、市販の製品を購入して使用することができる。
例えば、カレンズAOI(昭和電工株式会社製、2−イソシアナトエチルアクリレート)、カレンズMOI(昭和電工株式会社製、2−イソシアナトエチルメタクリレート)が挙げられる。
【0032】
<低分子(メタ)アクリレート(b)>
本発明における低分子(メタ)アクリレート(b)は、一般に低粘度であり、(メタ)アクリレートオリゴマー(a)と併用することで封止用樹脂組成物の粘度を下げ、硬化後は封止樹脂の架橋密度を高めることで水蒸気バリア性を高める効果を奏する。
しかし、分子量が低いと封止樹脂の弾性率が高くなり、柔軟性を下げてしまう。また、分子量が高いと封止樹脂の架橋密度が十分でないため、水蒸気バリア性を低下させてしまう。
【0033】
本発明における低分子(メタ)アクリレート(b)の平均分子量(以下、単に、分子量とも称す。)は、170〜500である。
柔軟性とのバランスに優れる観点から、200以上が好ましく、300以上がより好ましい。また、水蒸気バリア性により優れる観点から、400以下が好ましく、350以下がより好ましい。
なお、平均分子量とは、分子量もしくはゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した数平均分子量を意味する。
【0034】
本発明における低分子(メタ)アクリレート(b)は、1分子中に1.5〜3個の(メタ)アクリロイル基が含有される多官能低分子(メタ)アクリレートである。
(メタ)アクリロイル基の数は、1.5〜3個であるが、2〜3個が好ましく、2個がより好ましい。
なお、1.5個の(メタ)アクリロイル基が含有される低分子(メタ)アクリレート(b)とは、例えば、低分子(メタ)アクリレート(b)1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基が含有されるものと(低分子(メタ)アクリレート(b)1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基が含有されるものの、等モル混合物が挙げられる。
【0035】
低分子(メタ)アクリレート(b)は、市販の製品を購入して使用することができる。
例えば、和光純薬工業株式会社製のエチレンジアクリレート(分子量170)およびトリエチレングリコールジメタクリラート(分子量286)(いずれも商品名)、SARTOMER社製のSR212(分子量198)、SR213(分子量198)、SR349(分子量468)、SR595(分子量314)、SR833(分子量304)、SR351(分子量296)、SR368(分子量423)、SR206(分子量198)、SR214(分子量226)、SR239(分子量254)およびCD262(分子量338)(いずれも商品名)、大阪有機化学工業株式会社製のビスコート#195,1,4−BDDA(分子量198)、ビスコート#230, HDDA(分子量226)、ビスコート#260, 1,9−NDDA(分子量268)およびビスコート#335HP, TEGDA(分子量302)(いずれも商品名)、新中村化学工業株式会社製のA−DCP(分子量304)、A−DOD−N(分子量282)、A−HD−N(分子量226)、A−NOD−N(分子量268)、DCP(分子量332)、DOD−N(分子量310)、HD−N(分子量254)およびNOD−N(分子量298)(いずれも商品名)、ならびに共栄社化学株式会社製のライトアクリレートMOD−A(分子量268)およびライトアクリレートDCP−A(分子量304)(いずれも商品名)が挙げられる。
なかでも、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレートまたはジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレートが好ましい。
【0036】
(メタ)アクリレートオリゴマー(a)を封止用樹脂組成物中に含むことにより、フィルムを形成した際には、良好な屈曲性が得られる。また、低分子(メタ)アクリレート(b)を封止用樹脂組成物に含むことにより、封止用樹脂組成物は低い粘度を有し、硬化して得られる封止樹脂は高い架橋密度を有する封止用樹脂組成物を得ることができる。これら高分子量と低分子量の(メタ)アクリレートの混合樹脂組成物と使用することにより、水蒸気バリア性を高めることが可能となる。
【0037】
水蒸気バリア性を高める要素の一つとしては、これらの高分子量と低分子量の(メタ)アクリレートを含む封止用樹脂組成物を均一に硬化することが挙げられる。均一な状態については、後述の相溶性試験において評価することができる。
【0038】
また、良好な水蒸気バリア性を得るためには、硬化後の封止樹脂の架橋密度を一定水準まで高めることが好ましい。このため、封止用樹脂組成物100g中の(メタ)アクリレートオリゴマー(a)および低分子(メタ)アクリレート(b)の(メタ)アクリロイル基の合計モル数(当量)は、0.05mol/100g以上が好ましく、0.20mol/100g以上がより好ましく、0.30mol/100g以上がさらに好ましい。なお、上限値は、封止樹脂の弾性率、柔軟性の観点から、1.10mol/100g以下であるのが好ましい。
なお、封止用樹脂組成物100g中の(メタ)アクリロイル基のモル数S(mol/100g)は、下記式により算出することができる。
【0039】
S=(na×xa)/Mn+(nb×xb)/M
【0040】
ここで、na、xa、Mnは、順に、(メタ)アクリレートオリゴマー(a)1分子中の(メタ)アクリロイル基数、封止用樹脂組成物100g中における(メタ)アクリレートオリゴマー(a)の質量(g)、(メタ)アクリレートオリゴマー(a)の数平均分子量を表す。
また、nb、xb、Mは、順に、低分子(メタ)アクリレート(b)1分子中の(メタ)アクリロイル基数、封止用樹脂組成物100g中における低分子(メタ)アクリレート(b)の質量(g)、低分子(メタ)アクリレート(b)の分子量を表す。
【0041】
封止用樹脂組成物を設計する際には、上記式により、封止用樹脂組成物100g中の(メタ)アクリロイル基のモル数Sを調整することが可能である。
また、各構成材料を配合後の封止用樹脂組成物における、封止用樹脂組成物100g中の(メタ)アクリロイル基のモル数Sは、通常行われるIR測定、
1H−NMR測定などにより求めることができる。
【0042】
(メタ)アクリレートオリゴマー(a)と低分子(メタ)アクリレート(b)の組み合わせは、メタクリレート同士またはアクリレート同士の組み合わせであっても、メタクリレートとアクリレートの組み合わせであっても構わない。同程度の重合速度で反応が進む観点からメタクリレート同士またはアクリレート同士の組み合わせが好ましく、なかでも重合速度がより速い観点からアクリレート同士が好ましい。
【0043】
<水分反応性有機金属化合物(c)>
本発明における水分反応性有機金属化合物(以下、有機金属化合物とも称す。)(c)は、下記一般式(1)M(XR)
nで表される錯化合物であることが好ましい。
【0045】
一般式(1)において、Mは中心金属を表し、XRはXをドナー原子とする配位子を表し、nはMの原子価を表す。nが2以上である場合、XRは、全てが同一の配位子であっても、複数の異なる種類の配位子から構成されていても構わない。また、複数のXRがある場合、それぞれのRが結合した多座配位子であってもよい。
【0046】
Mは、一般にAl、Ti、Zr、Siが好ましく、中でもAlが好ましい。
XRが、複数の異なる種類の配位子から構成されている場合、それぞれの配位子の解離定数の違いにより水分反応特性を調整することが可能であるため、より好ましい。
Xで表されるドナー原子は、一般に窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、中でも酸素原子が好ましい。
XRは、ドナー原子がアニオンの状態で配位する陰イオン性配位子でも、ドナー原子が中性の状態で配位する中性配位子でもよい。また、その組み合わせである多座配位子であってもよい。
XRは、具体的には、アルコール、カルボン酸、およびチオールが脱プロトン化した配位基、ならびに、ケトン、エステルおよびアミン配位基を有する配位子が好ましい。また、これらの配位子がそれぞれのRで結合した多座配位子も好ましく、2座配位子がより好ましい。
なお、Mの原子価nを用いて、便宜上、M(XR)
nと表記した。しかし、このような錯化合物は、通常多量体として存在する。
【0047】
錯化合物M(XR)
nは、下記反応式(I)で示されるように、水と反応することが好ましい。
M(XR)
n + xH
2O → M(OH)
x(XR)
n−x + xRXH 反応式(I)
水との反応により解離するRXHは、(メタ)アクリレートオリゴマー(a)および低分子(メタ)アクリレート(b)(以下、(メタ)アクリル樹脂とも称す。)と良好に混合できる化合物であることが好ましい。すなわち、XRは、解離化合物RXHが(メタ)アクリル樹脂と良好に混合可能な配位子であることが好ましい。
【0048】
具体的な錯化合物としては、例えば、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノセカンダリーブチレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(ALCH)、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート(ALCHTR)、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート(AL−M)、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート(アルミキレートD)、アルミニウムトリスアセチルアセトネート(アルミキレート−A)、アルミニウムオキサイドイソプロポキサイドトリマー、アルミニウムオキサイドオクチレートトリマー、アルミニウムオキサイドステアレートトリマー(いずれも川研ファインケミカル株式会社製)が入手できる。
【0049】
本発明における有機金属化合物は、上述のように水と反応して失活するので、本発明の封止用樹脂組成物は乾燥条件下で製造、取り扱われることが好ましい。また、本発明の封止用樹脂組成物の構成材料は、後述する添加剤を含めて、あらかじめ脱水処理してから使用することが好ましい。
特に、中心金属への配位子がすべてアルコキシドである場合、水分子との反応活性が高いため、封止用樹脂組成物の製造工程中で、大気中に含まれる水分との反応により有機金属化合物は失活し、乾燥能力が低下してしまう。
そのため、上記一般式(1)で表される有機金属化合物の中でも、ひとつの中心金属に対して、少なくともひとつのアセチルアセトナト配位基を有する配位子が配位している、下記一般式(2)で表される有機金属化合物がより好ましい。
【0051】
一般式(2)において、Mは中心金属を表す。R
1〜R
3は、炭素原子数1以上のアルキル基、アルケニル基またはアシル基を表す。Rは炭素原子数1以上のアルキル基またはアルコキシ基を表す。R’は水素原子または炭素原子数1以上のアルキル基を表す。
【0052】
Rは、炭素原子数1以上のアルコキシ基であることが好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂との相溶性の観点から炭素原子数2以上が好ましい。また、水蒸気バリア性の観点から炭素原子数20以下が好ましい。
R’は、水素原子であることが好ましい。
R
1〜R
3、Rのいずれかがアリール基である場合、吸収波長が可視光領域にかかることがあるため、トップエミッション構造のディスプレイへの適用は好ましくない。
【0053】
上記一般式(2)で表される有機金属化合物のなかでも、アセチルアセトナト配位基を有する配位子およびアルコキシド配位子をそれぞれひとつ以上有する有機金属化合物が好ましい。
【0054】
また、一般式(2)で表される有機金属化合物は、1つの中心金属Mに対して、二分子のアルコキシド配位子と、一分子のアセチルアセトナト配位基を有する配位子が配位する有機金属化合物がより好ましい。
アセチルアセトナト配位基を有する配位子は、安定なケトエノール構造を有する2座配位子であるため、解離定数は小さく、水分子との反応活性は低い。
このため、水分子との反応活性の高いアルコキシド配位子と、反応活性の低いアセチルアセトナト配位基を有する配位子を共に有する有機金属化合物を用いることで、水分子との反応活性を調整することができる。
【0055】
具体的な有機金属化合物としては、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(ALCH)、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート(AL−M)(いずれも川研ファインケミカル株式会社製)などが挙げられる。
【0056】
また、本発明の封止用樹脂組成物中には、水分反応性有機金属化合物(c)および水分反応性有機金属化合物(c)と水との反応生成物である金属水酸化物が並存している状態がより好ましい。
一般に、有機樹脂は容易に吸水し、数千ppmもの水分を含有することも多い。このような大量の水分を含んでいる樹脂を、真空乾燥や加熱乾燥によって数ppm以下になるよう脱水を行うことは現実的ではない。このため、有機樹脂中の水分が脱水されていない有機樹脂で有機発光素子を封止した場合には、封止剤中の水分により有機発光素子が劣化してしまう。
これに対して、あらかじめ封止用樹脂組成物中の水分を水分反応性有機金属化合物(c)により脱水しておくことで、樹脂中の水分を脱水し、封止用樹脂組成物中の水分量を数ppm以下とすることが可能である。このため、脱水された封止用樹脂組成物を用いて封止した有機発光素子の寿命は長くなる。
さらに、封止用樹脂組成物中に残存する水分反応性有機金属化合物(c)は、封止後に有機発光デバイス中に浸入してくる水分と反応し、脱水する役割も果たす。
【0057】
また、封止樹脂中に含まれる水分反応性有機金属化合物(c)は、基板表面の疎水性を高める。この結果、素子基板や封止基板との親和性の低い封止樹脂の場合には親和性が向上し、封止樹脂と基材の界面からの水の侵入を低減できるため、効果的である。
さらに、水分反応性有機金属化合物(c)と封止用樹脂組成物の相溶性が良いと、水分反応性有機金属化合物(c)は硬化前の液体状態でも、硬化後の固体状態でも相分離や白濁が起こらず、水分反応性有機金属化合物による吸水効果と基板との高い親和力(接着力)の相乗効果により、高い水蒸気バリア性が得られる。しかし、硬化前後で相分離や白濁がみられる樹脂組成物はこのような効果が得られず、十分な封止性能を示せない。
【0058】
<重合開始剤(d)>
本発明における重合開始剤(d)は、紫外線(UV線)のような電磁エネルギー線により分解されてラジカルを発生するラジカル光重合開始剤、または熱により分解されてラジカルを発生する熱分解ラジカル重合開始剤が好ましい。
特に、熱による有機発光素子などの有機電子デバイスへの影響も少なく、封止工程が簡便になるため、ラジカル光重合開始剤が好ましい。
【0059】
このようなラジカル光重合開始剤としては、一般的に用いられるものを使用可能である。
具体的には、BAFSジャパン株式会社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、651、754、184、2959、907、369、379、819)およびダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、TPO、1173)、クオンタキュア(Quantacure)PDOならびにDKSHジャパン社から市販されているエザキュア(Esacure)シリーズ(例えば、KIP100F、KIP150、1001M、KB1、KS300、KL200、ONE、HEA、ITX、TZM、TZT、TPO、KTO46)等が挙げられる。
【0060】
ラジカル光重合開始剤の量は、反応に関与する(メタ)アクリレート樹脂に対して0.1質量%以上が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
【0061】
本発明の封止用樹脂組成物には、(メタ)アクリレートオリゴマー(a)が5〜30質量%、低分子(メタ)アクリレート(b)が40〜90質量%および水分反応性有機金属化合物(c)が5〜30質量%の割合で含有されることが好ましい。なお、(メタ)アクリレートオリゴマー(a)、低分子(メタ)アクリレート(b)、水分反応性有機金属化合物(c)および重合開始剤(d)の合計質量を100質量%として計算した値である。
【0062】
(メタ)アクリレートオリゴマー(a)の割合は、5質量%以上であれば柔軟性に優れ、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。また、30質量%以下であれば水蒸気バリア性に優れ、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
低分子(メタ)アクリレート(b)の割合は、40%以上であれば水蒸気バリア性に優れ、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。また、90質量%以下であれば柔軟性に優れ、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
水分反応性有機金属化合物(c)の割合は、5%以上であれば封止樹脂中の水分除去能力に優れ、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。また、30質量%以下であれば水蒸気バリア性に優れ、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0063】
(添加剤)
本発明の封止用樹脂組成物は、封止樹脂の水蒸気バリア性や屈曲性を損なわない範囲で、他の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、希釈剤、粘着付与剤、架橋助剤、難燃剤、重合禁止剤、フィラー、カップリング剤等が挙げられる。
希釈剤としては低粘度の(メタ)アクリルモノマーやポリブテンが挙げられる。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、石油系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン樹脂、及びこれらの水素化化合物等が挙げられる。
また本発明の封止用樹脂組成物は、封止対象との接着力を高めるために、エポキシ基含有の樹脂やカチオン重合開始剤、およびカチオン重合開始剤で重合を開始する樹脂を含有していても良い。
【0064】
封止用樹脂組成物を配合した後、硬化を行う前の状態における相溶性試験は、以下の方法で行うことができる。
まず、(メタ)アクリレートオリゴマー(a)、低分子(メタ)アクリレート(b)、水分反応性有機金属化合物(c)および重合開始剤(d)を、封止用樹脂組成物を構成する配合比で、合計が10gとなるように配合し、常温(23℃)にて1時間撹拌する。撹拌後の封止用樹脂組成物を静置し、1時間後および24時間後の状態を目視で確認する。
封止用樹脂組成物は、均一な状態が好ましく、白濁せず、均一に透明な状態がより好ましい。
なお、二層分離した状態では、均一に硬化することができないため、好ましくない。
【0065】
また、配合した封止用樹脂組成物を硬化した後の状態における相溶性試験は、以下の方法で行うことができる。なお、上記相溶性試験で使用した、24時間静置後の封止用樹脂組成物を、封止用樹脂組成物として用いる。
まず、封止用樹脂組成物を、厚み50μmの離型処理PETフィルム(商品名「E7004」、東洋紡株式会社製)上に厚さ100μmで塗布し、さらに、塗布した封止用樹脂組成物上に厚み25μmの離型処理PETフィルム(商品名「E7004」、東洋紡株式会社製)をラミネート加工する。2枚の離型処理PETフィルムで挟んだ封止用樹脂組成物に、紫外線照射装置で3J/cm
2の紫外線を照射し、2枚の離型処理PETフィルムを剥離し、封止用樹脂組成物の硬化フィルムを得た。この硬化フィルムの状態を、目視で確認する。
硬化フィルムは、均一に透明な状態が好ましく、白濁した状態では、均一に硬化ができていないため、好ましくない。
【0066】
樹脂粘度の測定は、以下の方法で行うことができる。
上記で調整した硬化前の封止用樹脂組成物を、1時間静置後、動的粘弾性測定装置(装置名「ARES」、レオメトリック・サイエンティフィック社製)において、コーン直径25mm、コーン角度0.1radのコーンプレートを用いて、せん断速度1s
−1の角速度で常温(25℃)の複素粘度n
*を測定する。
封止用樹脂組成物の複素粘度n
*は、5Pa・s以下が好ましく、2Pa・s以下がより好ましい。複素粘度n
*が5Pa・sを超えて高いと、封止基板への塗布作業が困難となる。
具体的には、複素粘度n
*は2Pa・s以下が特に好ましく、2Pa・sを超えて5Pa・s以下が次いで好ましい。
【0067】
屈曲性試験は、以下の方法で行うことができる。
上述の硬化後の封止用樹脂組成物の相溶性試験において作製した、厚さ100μmの封止用樹脂組成物の硬化フィルムを、試験対象として用いる。この試験対象を直径2mmおよび4mmのマンドレルを用いて、JIS K 5600−5−1の耐屈曲性(円筒形マンドレル法)に準じて試験を行う。
硬化フィルムは、直径4mmのマンドレルにおいて白化や割れがなく、ヒビが入らないものが好ましく、直径2mmのマンドレルにおいても白化や割れがなく、ヒビが入らないものがより好ましい。
なお、マンドレルの直径が小さくなるほど、要求される屈曲性は高くなる。
屈曲性が上記の好ましい範囲にあることで、基板に屈曲性のある樹脂フィルムや極薄ガラスフィルムを使用した際でも、封止樹脂が基板に追従して屈曲し、また剥離を生じない。
【0068】
水蒸気バリア性試験は、以下の方法で行うことができる。
電子デバイス封止用硬化性吸湿性樹脂組成物から水分反応性有機金属化合物(c)を除い
てなる組成物を硬化した後の状態における相溶性試験と同様に作製された厚さ100μmの封止用樹脂組成物の硬化フィルムを試験対象として用い、JIS Z 0208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準じ、40℃、相対湿度90%の条件で透湿度を測定する。
なお、40℃、相対湿度90%の恒温槽に投入した際に、カップ内空気の体積変化によりフィルムが膨張して、表面積やサンプルフィルムの厚みが変化し、測定値が不正確になる恐れがあるため、サンプルは厚み20μmのセロハンで補強を行う。この厚み20μmのセロハンの透湿度は、同様の条件で3,000g/m
2/24hrであり、本発明で測定するサンプルの透湿度に比べて十分に大きいため、サンプルの透湿度測定の妨げにはならない。
【0069】
上記水蒸気バリア性試験で測定される、
電子デバイス封止用硬化性吸湿性樹脂組成物から水分反応性有機金属化合物(c)
を除いた組成物を硬化、形成されてなる、厚さ100μmの硬化フィルムの透湿度は、40℃、相対湿度90%の条件で10g/m
2/24hr以下が好ましく、7g/m
2/24hr以下がより好ましい。なお、下限値は、現実的には1g/m
2/24hr以上である。
上記好ましい範囲内の水蒸気バリア性(透湿度)を有する、
上記組成物に、水分反応性有機金属化合物(c)に添加することで、封止樹脂は、水蒸気バリア効果を十分に発揮することができる。
【0070】
また、上述の屈曲性試験と同じ試験対象をサンプルとして用い、上記水蒸気バリア性試験により測定される、本発明の封止用樹脂組成物を硬化、形成されてなる、厚さ100μmの硬化フィルムの透湿度は、40℃、相対湿度90%の条件で30g/m
2/24hr以下が好ましく、20g/m
2/24hr以下がより好ましい。なお、下限値は、現実的には10g/m
2/24hr以上である。
【0071】
Ca腐食試験は、以下の方法で行うことができる。
寸法1.2mm×22.5mm×14mmである市販のガラス基板を45℃で10分間、超音波洗浄とUVオゾン洗浄を行う。続いて、このガラス基板上に、真空蒸着機により10mm×10mm角で、厚さ100nmの金属カルシウム層を形成する。次いで、硬化後の封止樹脂の厚さが30μmとなるように、液状の封止用樹脂組成物10μLを金属カルシウム層上に滴下し、0.15mm×18mm×18mmの封止ガラスをさらに重ね、紫外線照射装置で3J/cm
2の紫外線を照射して金属カルシウム層を封止し、試験片を得る。
ここで、封止ガラスの外周の辺から金属カルシウム層の外周の辺までの距離は、四辺とも均等に4mmとした。
図5(a)は、ガラス基板(透明ガラスを用いた〉を介して見える前記試験片を上から見た図(ただし、前記封止ガラスの部分を除く。)である。
得られた試験片を60℃、相対湿度90%の高温高湿下保存を行い、48時間経過後の金属カルシウム54のコーナー部分を観察する。
【0072】
なお、このCa腐食試験は、ガラス基板上に封止された、金属光沢を有する銀白色の金属カルシウムが、樹脂中に浸入してきた水分子と反応して透明の水酸化カルシウムになることを利用して、封止樹脂の封止能力を測るものである。そのため、本試験は、実際の封止の姿により近い試験方法である。
より具体的には、腐食の進行に伴い、腐食部分は透明な水酸化カルシウムとなる。このため、金属光沢を有する銀白色の金属カルシウム54のコーナー部分は丸くなって見える。本試験における腐食度合いは、
図5(b)に示すように、金属カルシウム54のコーナー部分の曲率半径Rを用いて評価することができる。
腐食によるカルシウムの丸みの曲率半径Rが1mm以上5mm未満のものが好ましく、Rが0mmを超え1mm未満のものがより好ましく、Rが0mmのもの、すなわち腐食が生じていないものがさらに好ましい。
【0073】
ここで、上記の水蒸気バリア性試験で透湿度の低い封止樹脂は、このCa腐食試験でも、良い評価となることが多い。
ただし、水分子の侵入経路としては、大気と封止樹脂の接触面から封止樹脂中を経由する他に、封止樹脂と基板の界面(封止界面)を経由する場合も挙げられる。このため、封止樹脂と基板間の親和性が十分でない場合には封止界面経由の水分の影響が大きくなり、水蒸気バリア性試験とCa腐食試験の評価が一致しないこともある。
【0074】
上記の評価試験のなかでも、Ca腐食試験の評価が、封止樹脂に関する水蒸気バリア性指標として最も重要である。次に、封止作業性に関わる樹脂粘度の評価が重要であり、ついで屈曲性試験の評価が重要である。
【0075】
<<封止樹脂>>
本発明の封止樹脂は、上述の本発明の樹脂組成物をフィルム状に成形し、硬化することで得られる。電子デバイス等において使用され、具体的な効果については、下記の電子デバイスにおいて記載する。
【0076】
<<電子デバイス>>
本発明の電子デバイスは、上述の本発明の樹脂組成物を用いて封止された電子デバイス、なかでも、有機電子デバイスある。
以下に、有機電子デバイスの例として、有機発光デバイス(画像表示装置)について説明する。
【0077】
有機発光デバイス5は、いわゆるトップエミッションまたはボトムエミッションであり、
図1に示すように、素子基板4上に設けられた有機発光素子3が、封止樹脂2を介して封止基板1により封止されている。なお、封止樹脂2とは、本発明の封止用樹脂組成物を硬化させてなる樹脂を意味する。
なお、この有機発光デバイス5は、封止側面が露出していてもよい。すなわち、側面部封止剤としてガラスフリットや接着剤などによるさらなる密閉処理が行われていなくともよい。これは、本発明の封止用樹脂組成物が、高い水蒸気バリア性と接着性を兼ね備えていることに起因する。このように、ガラスフリットなどによるさらなる密閉処理を行う必要がないため、有機発光デバイス5の構造を簡略化することができ、軽量化や低コスト化を図ることもできる。
また、剛直なガラスフリット等を用いないため、素子基板4や封止基板1に柔軟性のある材料を用いる場合、有機発光デバイス5自体に柔軟性を付与した、いわゆるフレキシブルデバイスの提供が可能となる。また、デバイス全体が柔軟かつ軽量であるため、落下等の衝撃を受けても壊れにくくなる。
【0078】
本発明では、
図1のような有機発光デバイス5以外に、
図2のような有機発光デバイス5Aも好ましい。
図2では、封止基板1と素子基板4を平行に設置するため、目的とする封止樹脂の厚みに対して適当な高さを有するスペーサーbを組み込んだものである。
使用するスペーサーbの高さは、実質、いずれのスペーサーbも同じでなければ、封止基板1と素子基板4を平行に設置することが困難となる。
【0079】
スペーサーbは、球状フィラーまたはフォトリソグラフィ法によって形成された柱状ピラーが好ましい。また、材質としては、有機発光素子を封止時の圧力で押しつぶして破壊する危険性がなければ、有機もしくは無機のいずれでも構わない。なお、有機樹脂であると本発明の封止用樹脂組成物との親和性に優れるので好ましく、架橋系アクリルであるとガスバリア性の劣化が少ないのでより好ましい。
スペーサーbは、例えば、JX日鉱日石エネルギー株式会社製のENEOSユニパウダーや早川ゴム株式会社製のハヤビーズなどが挙げられる。
【0080】
基板1mm
2あたりのスペーサーbの配置密度は、封止基板1と素子基板4を平行に設置する観点からは、10個/mm
2以上が好ましく、より好ましくは50個/mm
2以上、さらに好ましくは100個/mm
2以上である。配置密度が10個/mm
2未満であると、上下の基板間距離を均一に保つことが難しくなる。
樹脂粘度の観点からは、基板1mm
2あたりのスペーサーの配置密度は1000個/mm
2以下が好ましく、より好ましくは500個/mm
2以下、さらに好ましくは300個/mm
2以下である。配置密度が1000個/mm
2を超えると、樹脂粘度が高くなりすぎて封止作業が困難になる。
【0081】
封止樹脂の厚さは、基板(封止面)への凹凸追従性の観点からは、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上がさらに好ましい。封止樹脂の厚さが0.5μm未満になると、有機発光素子の凹凸を十分に吸収できずに基板間を完全に封止できない。
また、水蒸気バリア性の観点からは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。封止樹脂の厚さが100μmを超えると、大気に露出する封止樹脂の面積が大きくなり、水分浸入量が多くなるので封止効果が低下する。
なお、封止樹脂の厚さは、スペーサーbを使用する場合には、スペーサーbの高さに対応する。
【0082】
本発明の封止用樹脂組成物は、
図3に示すような、側面部封止剤(ガラスフリットや接着剤)10などによるさらなる密閉処理が行われている有機発光デバイス15に使用してもよい。この場合、本発明の封止用樹脂組成物と側面部封止剤(ガラスフリットや接着剤)10の相乗効果により、高い気密性が保たれる。このため、有機発光デバイス15の長期寿命化の観点からは、本発明の封止用樹脂組成物により得られる封止樹脂12と側面部封止剤(ガラスフリットや接着剤)10を併用した有機発光デバイス15が好ましい。
【0083】
本発明の封止用樹脂組成物を用いた有機発光デバイスの製造方法は次の通りである。
図1のように額縁部分に密閉処理の無い有機発光デバイス5では、まず、有機ELの素子部を積層形成した有機発光素子基板4の上に有機発光素子3を覆って本発明の封止用樹脂組成物を適量塗布し、さらにその上から封止基板1で本発明の封止用樹脂組成物を挟むように設置する。これにより、素子基板4と封止基板1の間に空間が生じないよう密閉し、その後、紫外線照射により本発明の封止用樹脂組成物を硬化し、封止樹脂2を形成することで封止される。
または、初めに封止基板1に本発明の封止用樹脂組成物を塗布し、この封止用樹脂組成物の上に有機発光素子3を載せ、素子基板4で挟んだ後、紫外線照射により本発明の封止用樹脂組成物を硬化し、封止樹脂2を形成することで封止しても良い。
【0084】
図3のように、有機発光素子13の周りを囲むように、側面部封止剤10として、接着剤やガスバリア性シール剤、またはガラスフリット硬化物などでダム構造部分を形成することで、封止端部からの水分浸入を低減させる構造の場合、先に側面部封止剤(接着剤)10を素子基板14または封止基板11の上に形成する。その後、この有機発光素子13の周りを囲むように形成された側面部封止剤(接着剤)10の内部に、本発明の封止用樹脂組成物を流し込み、さらにもう片方の基板で本発明の封止用樹脂組成物を挟むように設置する。これにより、素子基板14と封止基板11の間に空間が生じないよう密閉し、その後、紫外線照射により本発明の封止用樹脂組成物を硬化し、封止樹脂2を形成することで封止する。
これらの封止工程は乾燥環境下で行われると、本発明の封止用樹脂組成生物の吸湿特性の劣化が少なくなるので好ましい。
【0085】
さらに、本発明の封止用樹脂組成物より得られる封止樹脂は、
図4に示すような、ガスバリア性の素子基板24上に形成された、有機発光素子23の上部全体を覆う無機薄膜21上に、本発明の封止用樹脂組成物を塗布し、これを硬化させた有機薄膜22を配し、この上に、さらに無機薄膜21を形成することで得られる、有機薄膜22と無機薄膜21の複数積層により密閉処理がなされた有機発光デバイス25に使用してもよい。この場合、有機樹脂が封止樹脂となる。本発明の封止用樹脂組成物により得られる有機薄膜22と無機薄膜21の相乗効果により、高い気密性が保たれる。上記の効果が得られる限り、前記積層数は
図4の態様に限定されるものではなく任意に設計できる。
ここで無機薄膜21は、窒化ケイ素化合物や酸化ケイ素化合物、酸化アルミニウム化合物、アルミニウムなどから構成される。無機薄膜21の形成は、プラズマCVD(PECVD)、PVD(物理気相堆積)、ALD(原子層堆積)などで形成される。一層の無機薄膜21の厚みは1μm以下が屈曲性の点から好ましい。
有機薄膜22はインクジェット法やスプレーコート法、スリットコート法、バーコート法など既存の方法で塗布された後、紫外線照射で硬化させることにより形成される。一層の有機薄膜22の厚みは、屈曲性の点からは5μm以下が好ましいが、有機EL素子への耐衝撃性の点からは1μm以上、より好ましくは5μm以上が好ましい。
【0086】
本発明の封止用樹脂組成物を用いた有機発光デバイスは、色度調整のためのカラーフィルタが設置されていても良い。この場合のカラーフィルタの設置場所は、
図1〜3の態様の場合は、本発明の封止樹脂2(12)と封止基板1(11)、または素子基板4(14)との間であっても良く、カラーフィルタと有機発光素子3(13)で素子基板4(14)を挟んでも、または、カラーフィルタと素子基板4(14)で封止基板1(11)および封止樹脂2(12)を挟むように設置しても良い。
図4の態様の場合は、無機薄膜21の上、または素子基板24の下に設置しても良い。その場合、本発明の封止用樹脂組成物、またはその他の透明樹脂組成物で固定されることが好ましい。
【実施例】
【0087】
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0088】
(メタ)アクリレートオリゴマー(a)
アクリレートオリゴマー(a−1)の調整
基本樹脂(aa)として、水酸基を有する液状ポリブタジエンGI−1000(数平均分子量1,500、日本曹達株式会社製)20gを窒素置換したフラスコ中に入れた。撹拌している液状ポリブタジエンGI−1000中へ、官能基およびアクリロイル基を有する化合物(ab)として、2−イソシアナトエチルアクリレート(商品名「カレンズAOI」、昭和電工株式会社製)3.8gを10分かけて滴下し、そのまま2時間反応させ、アクリレートオリゴマー(a−1)(数平均分子量1800、1分子中のアクリロイル基数2.0)を調整した。
【0089】
アクリレートオリゴマー(a−2)〜(a−6)、(a−13)および(a−14)の調整
アクリレートオリゴマー(a−1)におけるGI−1000の代わりに、表1に示す組成の基本樹脂(aa)を使用し、表1に記載のアクリロイル基数となるように配合質量比を変更した以外はアクリレートオリゴマー(a−1)と同様にして、アクリレートオリゴマー(a−2)〜(a−5)、(a−13)および(a−14)を調整した。
また、アクリレートオリゴマー(a−1)における2−イソシアナトエチルアクリレートの代わりに、官能基およびアクリロイル基を有する化合物(ab)として、2−イソシアナトエチルメタクリレート(商品名「カレンズMOI」、昭和電工株式会社製)を使用し、1分子中のメタクリロイル基数が2.0となるように配合質量比を変更した以外はアクリレートオリゴマー(a−1)と同様にして、メタクリレートオリゴマー(a−6)を調整した。
【0090】
(メタ)アクリレートオリゴマー(a−7)〜(a−12)および(a−15)は、表1に示す市販の製品をそのまま使用した。
以下に、(メタ)アクリレートオリゴマー(a−1)〜(a−15)について、表1にまとめて示す。
【0091】
ここで、数平均分子量は、テトラヒドロフラン(溶媒名)に溶解して得た1%溶液を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Waters社製GPCシステム、カラム:東ソー社製TSKgel GMHHR−N 、流速:1.0mL/min)により測定した値を、ポリスチレン換算の数平均分子量として算出したものである。
また、1分子中の(メタ)アクリロイル基数は、
1H−NMR測定により算出した値である。表1においては、(メタ)アクリロイル基数と省略して記載した。
【0092】
【表1】
【0093】
なお、メタアクリレートオリゴマー(a)に使用した素材は、以下に示す通りである。
・基本樹脂(aa)
GI−1000(日本曹達株式会社製、両末端水酸基水素化ポリブタジエン、数平均分子量1,500)
GI−2000(日本曹達株式会社製、両末端水酸基水素化ポリブタジエン、数平均分子量2,100)
GI−3000(日本曹達株式会社製、両末端水酸基水素化ポリブタジエン、数平均分子量3,000)
KRASOL HLBH−P2000(クレイバレー社製、水酸基末端水素化ポリオレフィン、数平均分子量2,100)
KRASOL HLBH−P3000(クレイバレー社製、水酸基末端水素化ポリオレフィン、数平均分子量3,100)
Poly bdR−20LM Resin(クレイバレー社製、水酸基末端水素化ポリオレフィン、数平均分子量1,200)
KRASOL LBH 10000(クレイバレー社製、水酸基末端水素化ポリオレフィン、数平均分子量10,000)
【0094】
・官能基およびアクリロイル基を有する化合物(ab)
カレンズAOI(昭和電工株式会社製、2−イソシアナトエチルアクリレート)
カレンズMOI(昭和電工株式会社製、2−イソシアナトエチルメタクリレート)
【0095】
・(メタ)アクリレートオリゴマー(a)
CN307(SARTOMER社製、疎水性アクリレートオリゴマー)
CN308(SARTOMER社製、疎水性アクリレートオリゴマー)
CN310(SARTOMER社製、疎水性脂肪族ウレタンアクリレート)
CN9014(SARTOMER社製、疎水性脂肪族ウレタンアクリレート)
TE−2000(日本曹達株式会社製、ポリブタジエン末端ウレタンジ(メタ)アクリレート樹脂)
TEAI−1000(日本曹達株式会社製、ポリブタジエン末端ウレタンジ(メタ)アクリレート樹脂)
EMA−3000(日本曹達株式会社製、ポリブタジエン末端メタアクリレート樹脂)
ブレンマー DA−800AU(日油株式会社製、ポリエチレングリコールジアクリレート樹脂)
【0096】
電子デバイス封止用硬化性吸湿性樹脂組成物の調整
実施例1
アクリレートオリゴマー(a−9)としてCN9014(SARTOMER社製)を7g、低分子アクリレート(b)としてエチレンジアクリレート(和光純薬工業株式会社製)を89g、水分反応性有機金属化合物(c)としてアルミニウムトリスエチルアセトアセテート(商品名「AlCH−TR」、川研ファインケミカル株式会社製)を3g、重合開始剤(d)としてEsacure TZT(商品名、DKSHジャパン株式会社製)を1g加え、均一になるまで撹拌し、封止用樹脂組成物を得た。
【0097】
実施例2〜29および比較例1〜9
実施例1で用いた構成材料の代わりに、表2〜4に示す構成材料を表2〜4に記載の質量用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2〜29および比較例1〜9の封止用樹脂組成物を調整した。
なお、表2〜4における構成材料(a)〜(d)の質量単位(g)は省略して記載した。
【0098】
<(メタ)アクリロイル基のモル数>
上記で調整した実施例1〜29および比較例1〜9の封止用樹脂組成物について、封止用樹脂組成物100g中の(メタ)アクリロイル基のモル数S(mol/100g)を、下記式により算出した。
【0099】
S=(na×xa)/Mn+(nb×xb)/M
【0100】
ここで、na、xa、Mnは、順に、(メタ)アクリレートオリゴマー(a)1分子中の(メタ)アクリロイル基数、封止用樹脂組成物100g中における(メタ)アクリレートオリゴマー(a)の質量(g)、(メタ)アクリレートオリゴマー(a)の数平均分子量を表す。
また、nb、xb、Mは、順に、低分子(メタ)アクリレート(b)1分子中の(メタ)アクリロイル基数、封止用樹脂組成物100g中における低分子(メタ)アクリレート(b)の質量(g)、低分子(メタ)アクリレート(b)の分子量を表す。
【0101】
ここで、実施例25の封止用樹脂組成物における、封止用樹脂組成物100g中のアクリロイル基のモル数を、
1H−NMR測定により算出した値は0.44mol/100gであった。上記式から算出した実施例25の封止用樹脂組成物中のアクリロイル基のモル数は0.40mol/100gであり、計算式または測定のどちらを用いた方法でも、ほとんど差のない値が得られた。
なお、表2〜4においては、(メタ)アクリロイル基のモル数(mol/100g)として記載した。
【0102】
上記で調整した実施例1〜29および比較例1〜9の封止用樹脂組成物について、以下の評価を行った。
【0103】
<相溶性試験(硬化前配合後)>
表2〜4に記載の配合比の(メタ)アクリレートオリゴマー(a)、低分子(メタ)アクリレート(b)、水分反応性有機金属化合物(c)および重合開始剤(d)を、表2〜4に記載の配合比で、合計が10gとなるように配合し、常温にて1時間撹拌した。撹拌後の封止用樹脂組成物を静置し、1時間後および24時間後の状態を目視で確認した。
均一に透明な状態を「○」、均一に白濁した状態を「△」、二層分離した状態を「×」として評価した。
なお、表2〜4においては、相溶性試験(硬化前配合後1時間)および相溶性試験(硬化前配合後24時間)として記載した。
【0104】
<相溶性試験(硬化後)>
上記24時間静置後の封止用樹脂組成物を、厚み50μmの離型処理PETフィルム(商品名「E7004」、東洋紡株式会社製)上に厚さ100μmで塗布し、さらに、塗布した封止用樹脂組成物上に厚み25μmの離型処理PETフィルム(商品名「E7004」、東洋紡株式会社製)をラミネート加工した。2枚の離型処理PETフィルムで挟んだ封止用樹脂組成物に、紫外線照射装置で3J/cm
2の紫外線を照射し、2枚の離型処理PETフィルムを剥離し、封止用樹脂組成物の硬化フィルムを得た。この硬化フィルムの状態を、目視で確認した。
均一に透明な状態を「○」、白濁した状態を「×」として評価した。
【0105】
<粘度測定>
上記相溶性試験(硬化前配合後)で調整した封止用樹脂組成物を、1時間静置後、動的粘弾性測定装置(装置名「ARES」、レオメトリック・サイエンティフィック社製)において、コーン直径25mm、コーン角度0.1radのコーンプレートを用いて、せん断速度1s
−1の角速度で常温(25℃)の複素粘度n
*を測定した。
複素粘度n
*が2Pa・s以下のものを「◎」、2Pa・sを超えて5Pa・s以下のものを「○」、5Pa・sを超えたものを「×」として評価した。
【0106】
<屈曲性試験>
上述の相溶性試験(硬化後)において作製した、厚さ100μmの封止用樹脂組成物の硬化フィルムを試験対象とした。この試験対象を直径2mmおよび4mmのマンドレルを用いて、JIS K 5600−5−1の耐屈曲性(円筒形マンドレル法)に準じて試験を行った。
白化や割れがなく、ヒビが入らなかったものを合格とし、直径2mmおよび4mmのマンドレルで合格したものを「◎」、直径4mmのマンドレルのみ合格したものを「○」、いずれのマンドレルでも合格とならかったものを「×」として評価した。
【0107】
<水蒸気バリア性試験>
水分反応性有機金属化合物(c)を除いた以外は、上述の相溶性試験(硬化後)と同様に作製された厚さ100μmの封止用樹脂組成物の硬化フィルムを試験対象として用い、JIS Z 0208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準じ、40℃、相対湿度90%の条件で透湿度を測定した。
なお、40℃、相対湿度90%の恒温槽に投入した際に、カップ内空気の体積変化によりフィルムが膨張して、表面積やサンプルフィルムの厚みが変化し、測定値が不正確になる恐れがあるため、サンプルは厚み20μmのセロハンで補強を行った。この厚み20μmのセロハンの透湿度は、同様の条件で3,000g/m
2/24hrと、各実施例、比較例のサンプルの透湿度に比べて十分に大きいため、サンプルの透湿度測定の妨げにはならなかった。
【0108】
<Ca腐食試験>
図5を適宜参照して説明する。
寸法1.2mm×22.5mm×14mmである市販のガラス基板(透明ガラス)を45℃で10分間、超音波洗浄とUVオゾン洗浄を行った。続いて、このガラス基板上に、真空蒸着機により10mm×10mm角で、厚さ100nmの金属カルシウム層を形成した。次いで、硬化後の封止樹脂の厚さが30μmとなるように、液状の封止用樹脂組成物10μLを金属カルシウム層上に滴下し、0.15mm×18mm×18mmの封止ガラス(透明ガラス)をさらに重ね、紫外線照射装置で3J/cm
2の紫外線を照射して金属カルシウム層を封止し、試験片を得た。
ここで、封止ガラスの外周の辺から金属カルシウム層の外周の辺までの距離は、四辺とも均等に4mmとした。
図5(a)は、ガラス基板を介して見える前記試験片を上から見た図(ただし、前記封止ガラスの部分を除く。)を示す。
得られた試験片を60℃、相対湿度90%の高温高湿下保存を行い、48時間経過後の金属カルシウム54のコーナー部分を観察した。
【0109】
なお、このCa腐食試験は、ガラス基板上に封止された金属光沢を有する銀白色の金属カルシウムが、樹脂中に浸入してきた水分子と反応して透明の水酸化カルシウムになることを利用して、封止樹脂の封止能力を測るものである。そのため、本試験は、実際の封止の姿により近い試験方法である。
より具体的には、腐食の進行に伴い、腐食部分は透明な水酸化カルシウムとなる。このため、金属光沢を有する銀白色の金属カルシウムのコーナー部分は丸くなって見える。本試験における腐食度合いは、
図5(b)に示すように、金属カルシウムのコーナー部分の曲率半径Rを用いて評価した。
腐食が生じていないもの、すなわち腐食によるカルシウムの丸みの曲率半径Rが0mmのものを「◎」、腐食が生じており、Rが0mmを超え1mm未満のものを「○」、Rが1mm以上5mm未満のものを「△」、Rが5mm以上のものを「×」として評価した。
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】
【0113】
なお、封止用樹脂組成物に使用した素材は、以下に示す通りである。
・低分子(メタ)アクリレート(b)
ライトアクリレートDCP−A(共栄社化学株式会社製、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、分子量304)
DCP(新中村化学工業株式会社製、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、分子量332)
ビスコート#195, 1,4−BDDA(大阪有機化学工業株式会社製、1,4−ブタンジオールジアクリレート、分子量198)
ビスコート#230, HDDA(大阪有機化学工業株式会社製、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、分子量226)
TCDDM(AOI化)(分子量478、アクリロイル基数2.0)
トリシクロデカンジメタノール(略号TCDDM、東京化成工業株式会社、分子量196.3)20gとカレンズAOI(昭和電工株式会社製、2−イソシアナトエチルアクリレート、分子量141.1)28.8gを用いて、前記アクリレートオリゴマー(a−1)の調製と同様に調整した。
エチレンジアクリレート(和光純薬工業株式会社製、分子量170)
アクリル酸無水物(共栄社化学株式会社製、分子量126)
BisA(AOI化)(分子量508、アクリロイル基数2.0)
ビスフェノールA(東京化成工業株式会社、分子量228.3)20gとカレンズAOI(昭和電工株式会社製、2−イソシアナトエチルアクリレート、分子量141.1)25.0gを用いて、前記アクリレートオリゴマー(a−1)の調製と同様に調整した。
SR506(SARTOMER社製、イソボニルアクリレート、分子量208)
ビスコート#192, PEA(大阪有機化学工業株式会社製、フェノキシエチルアクリレート、分子量180)
【0114】
・水分反応性有機金属化合物(c)
ALCH(川研ファインケミカル株式会社製、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート)
ALCH−TR(川研ファインケミカル株式会社製、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート)
アルミキレートM(川研ファインケミカル株式会社製、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート)
アルミニウムエトキサイド(川研ファインケミカル株式会社製、アルミニウムエチレート)
【0115】
・重合開始剤(d)
Esacure TZT(DKSH社製、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンとベンゾフェノンの混合物)
【0116】
表2〜4に示すように、実施例1〜29では、いずれもCa腐食試験および水蒸気バリア性試験の評価がよく、本発明の封止用樹脂組成物の硬化フィルムが高い水蒸気バリア性を有することがわかった。さらに、いずれの樹脂粘度も、封止作業を行う上で十分な低さであった。加えて、いずれも屈曲性に優れ、屈曲性の樹脂フィルムや極薄ガラスフィルムを封止した際にも、基板に追従して屈曲し、封止剤としての効果を十分に発揮できることがわかった。
これに対して、低分子(メタ)アクリレートもしくは水分反応性有機金属化合物を有さない、または、低分子(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アクリレートオリゴマーの分子量もしくは(メタ)アクリロイル基数が本発明の範囲を満たさない比較例1〜9では、いずれも金属カルシウムの腐食が進行していた。加えて、比較例1および3〜9では、樹脂粘度、屈曲性または水蒸気バリア性の少なくとも一つが不十分であった。