(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
他の端子と接続する接続部と、被覆電線と圧着接続する圧着部とを備える端子の製造方法であって、前記他の端子との接触部、および、前記被覆電線の導体の露出部との接触部を除いた非接触部に、金属部材の打ち抜き時の切断端面と、連鎖端子からの切り離し時の切断端面と、前記接続部の内面全体又は前記接続部における前記他の端子との接触部を除く内面とを含んで実質的にすべて、樹脂を被覆することを特徴とする端子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の一実施形態を以下図面とともに説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の接続構造体10を構成する端子11及び被覆電線12を示す斜視図である。
図1(A)は被覆電線を圧着する前の端子11を幅方向中央で分断した斜視図、
図1(B)は圧着する前の端子11及び被覆電線12を示す斜視図、
図1(C)は接続構造体10を示す斜視図である。
図1(A)、(B)に示すように、端子11は、例えば雌型端子であり、長手方向の一端側から順に、ボックス部21、第1トランジション部22、ワイヤーバレル部23、第2トランジション部24、インシュレーションバレル部25を一体に備える。
【0016】
端子11は、金属部材を打ち抜き、折り曲げ加工(プレス加工)されて形成される。
金属部材とは、金属材料(例えば銅、アルミニウム、鉄、またはこれらを主成分とする合金等)の基材と、その表面に任意に設けられるめっき部とからなる。めっき部は、金属基材の一部あるいは全部に設けられればよく、すず(Sn)めっきや銀(Ag)めっき等の貴金属めっきが好ましい。また、めっき部には下地めっきとして、ニッケル(Ni)やコバルト(Co)またはこれらを主成分とする合金等からなるめっき層を設けても良い。めっき部は通常0.1〜1.2μmの厚みである。
【0017】
ボックス部21は、折り曲げられて箱形に形成され、雄型端子81(
図6参照)を挿入可能にした部分である。ボックス部21の内部には、折り曲げられて雄型端子の挿入タブに接触する接触凸部21aが形成された接触片21bを一体に備える。なお、符号21mはボックス部21の上部に形成された矩形の開口、21nは開口21mを通じて押圧形成された下方凸部である。
第1トランジション部22は、所定の長さを有し、ボックス部21とワイヤーバレル部23とを繋ぐ部分である。
ワイヤーバレル部23は、被覆電線12の導体である芯線14をかしめて圧着する部分である。圧着前のワイヤーバレル部23は、バレル底部31と、バレル底部31の幅方向の両側から斜め外側上方に延出するワイヤーバレル片32、32とで構成され、ワイヤーバレル片32、32で芯線14をかしめて機械的・電気的に接続する。バレル底部31及びワイヤーバレル片32、32は、長手方向の端部から見た場合に略U型に形成されている。
【0018】
第2トランジション部24は、所定の長さを有し、ワイヤーバレル部23とインシュレーションバレル部25とを繋ぐ部分である。
インシュレーションバレル部25は、被覆電線12の絶縁被覆15をかしめて固定する部分である。圧着前のインシュレーションバレル部25は、バレル底部34と、バレル底部34の幅方向の両側から斜め外側上方に延出するインシュレーションバレル片35、35とで構成され、インシュレーションバレル片35、35で絶縁被覆15をかしめて機械的に接続する。バレル底部34及びインシュレーションバレル片35、35は、長手方向の端部から見た場合に略U型に形成されている。
【0019】
被覆電線12は、銅やアルミニウム又はこれらを主成分とする合金製の素線が撚られて形成された撚り線からなる芯線14と、この芯線14を覆う絶縁樹脂からなる絶縁被覆15とから構成されている。芯線14は被覆電線12の導体である。芯線14は、その断面積(電線サイズ)が0.75mm
2〜3mm
2、素線数が11〜37本である。
図1(B)では、被覆電線12の絶縁被覆15の端部が所定長さだけ剥がされ、端部(露出部)14aが露出している。この端部14aは、端子11のワイヤーバレル部23に圧着接続される。また、絶縁被覆15の端部15aが端子11のインシュレーションバレル部25に接続される。
ここで、端子11において、被覆電線12の芯線14及び雄型端子と全く接触しない部分を非接触部というが、非接触部には、被覆電線12の芯線14の一部及び雄型端子の一部と接触する部分を含んでいても良い。本実施形態では、上記の非接触部は、金属部材の打ち抜き時の切断端面を含んで、実質すべて、その表面が絶縁樹脂からなる樹脂被覆部40(複数のドットで描かれた部分である。)で被覆されている。ここで実質すべて、とは端子の表面積の95%以上のことを言い、好ましくは99%以上である。
このような端子11と被覆電線12により接続構造体10が構成される。より具体的には、
図1(C)に示すように、端子圧着機(図示せず)により、被覆電線12の芯線14に、ワイヤーバレル部23のワイヤーバレル片32、32が圧着され、被覆電線12の絶縁被覆15に、インシュレーションバレル部25のインシュレーションバレル片35、35が圧着されて、接続構造体10が形成される。
【0020】
以上に述べた端子11の製造方法、詳しくは、打ち抜きから樹脂被覆部形成までを次に説明する。
図2は、連鎖端子61を形成する手順を示す説明図である。
まず、例えば板厚が0.25mmの銅合金製の基材に、めっき部として錫めっきを施した金属部材が、プレス機等により打ち抜かれて複数の平板状の端子素材11Eと、これらの端子素材11Eを連結する枠部62とが形成される。
このプレス工程の際に、各端子素材11Eは、その一端がそれぞれ図中に示すH−H線で枠部62から切り離され(半打ち抜き)、端子素材11Eの他端が連結された連鎖端子61が形成される。なお、図中の符号63は連鎖端子61の長手方向の位置を検出するために開けられたパイロットホールである。端子素材11Eの各部の名称については、折り曲げ加工を施した後の端子11(
図1(B)参照)の各部と同一の名称を用いる。
【0021】
図3は、連鎖端子61に形成された端子素材11Eの樹脂被覆部40を示す説明図である。
図3(A)は金属部材から打ち抜かれた連鎖端子61の一方の面を示す平面図、
図3(B)は金属部材から打ち抜かれた連鎖端子61の他方の面を示す平面図である。
連鎖端子61の一方の面は、
図1(B)に示した端子11の内面11A側となる面である。また、連鎖端子61の他方の面は、
図1(B)に示した端子11の外面11B側となる面である。
連鎖端子61の一方の面、および、他方の面の非接触部には、それぞれ複数のドットで示すように、樹脂被覆部40が形成される。
【0022】
上記した樹脂被覆部40の形成要領を次に説明する。
図3(A)、(B)において、まず、連鎖端子61に電解脱脂、酸洗処理、水洗、乾燥の各工程がこの順に施される。
次に、紫外線硬化型の樹脂(アクリレート系樹脂、スリーボンド製3052C)が、被覆厚t=10μm(±1μm)となる塗布厚さで、各端子素材11Eの内面11A、外面11B及び端面11C、面取り23d、25dに塗布され、次に所定の紫外線照射が施され、更に樹脂が架橋・硬化されて、端子素材11Eの内面11A、外面11B、端面11C及び面取り23d、25dにそれぞれ内側樹脂被覆部41、外側樹脂被覆部42、端面樹脂被覆部43、面取り樹脂被覆部44が形成される。
【0023】
また、樹脂被覆部40の別の形成方法としては、連鎖端子61に電解脱脂、酸洗処理、水洗、乾燥の各工程を施した後、N−メチル2−ピロリドンを溶媒とするポリアミドイミド(PAI)溶液のワニス(固形分約30%)を、端子素材11Eの所定箇所に、焼付け後の被覆厚tが10μm(±1μm)となる塗布厚さで、各端子素材11Eの内面11A、外面11B、端面11C及び面取り23d,25dに塗布する。次いで所定の加熱処理が施され、溶媒乾燥とともに硬化されて、各樹脂被覆部41〜44が形成される。
【0024】
なお、パルススプレイ方式は、樹脂流体(ワニスなど)を霧状にして噴きつけることで樹脂の塗装を行う方法である。
従来、工業的な樹脂流体の塗装は、樹脂流体を一方向から流入させて塗装している。例えば、ロールコーターなどが代表的であり、このような方法は、板状のものに対しては塗装しやすいものの、複雑な形状のものや立体的形状のものに対しては塗装が出来ない。そこで、スプレイによって樹脂の塗装をすることが考えられるが、工業用途で使用されている樹脂流体のほとんどは粘度が高いため、通常のスプレイによって塗装しようとすると、スプレイの噴出口で樹脂が詰まったり、霧にならずに液玉になってしまったりする。また、耐熱性や硬さなどに優れた樹脂は、焼付けを考慮しワニス中の樹脂分を調整した場合、粘度が高くなってしまう傾向にある。そのため、特に高機能な樹脂(例えばポリイミドなど)を、スプレイによって塗装し樹脂被膜を形成させることは技術的困難が伴っていた。
【0025】
本実施形態では、パルススプレイ方式を用いることによって、端子に対する立体的な樹脂被覆部40の形成を可能にした。
パルススプレイ方式とは、スプレイによる樹脂流体の塗装を、一定のパルス間隔でオン・オフを切り替えながら行う手法である。パルス間隔が極めて短いことが特徴であり、流体に連続で力(圧力)を与えないことで粘度が低い状態でスプレイをすることが可能になる。これにより、流体詰まりや液玉化といった不具合が少なくなる。結果、樹脂流体を好適に霧状にすることができ、複雑な形状のものに対しても樹脂流体の塗装が可能となる。すなわち、端子の打ち抜き面(端面)に対しても容易に均一な樹脂被覆することが可能となる。なお、スプレイのパルス周期や噴出方向、噴出口の数などは目的に応じて適宜調整して行う。
パルススプレイ方式による樹脂流体の吹き付けは、連鎖端子61の少なくとも上記一方及び他方の両面に向けて同時に行われ、端子素材11Eの内面11A、外面11B、端面11C及び面取り23d、25dに同時に樹脂被覆部40が形成される。
金属部材が、プレス機等により打ち抜かれる段階では、打ち抜き端面にはめっき部が無い。従って、必要がある場合は、当該端面に別途めっき部を形成しても良い。
【0026】
図3(A)において、各端子素材11Eの内面11Aは、ボックス部21の内面21cと、接触片21bの内面21dと、第1トランジション部22の内面22aと、ワイヤーバレル部23の内面23aと、第2トランジション部24の内面24aと、インシュレーションバレル部25の内面25aとを備える。内面11Aには、ワイヤーバレル部23の外面23aの一部を除いて内側樹脂被覆部41が設けられている。
内側樹脂被覆部41は、ボックス部21の内面21cに設けられた第1内面被覆部41aと、第1トランジション部22の内面22aに設けられた第2内面被覆部41bと、ワイヤーバレル部23の内面23aに設けられた第3内面被覆部41cと、第2トランジション部24の内面24aに設けられた第4内面被覆部41dと、インシュレーションバレル部25の内面25aに設けられた第5内面被覆部41eと、接触片21bの内面21dに設けられた第6内面被覆部41fとから構成されている。
第3内面被覆部41cは、ワイヤーバレル部23の一端から距離L1、他端から距離L2の範囲のみに形成され、端子素材11Eの長手方向の長さL3内には形成されていない。このワイヤーバレル部23の内面23aの樹脂被覆が設けられていない部分は、被覆電線12(
図1(B)参照)の芯線14(
図1(B)参照)に接触する非被覆部46である。
非被覆部46の幅L3は、芯線14の端部(露出部)14a(
図1(B)参照)と接触する幅であり、端部14aよりも短く形成される。
【0027】
図3(B)において、各端子素材11Eの外面11Bは、ボックス部21の外面21eと、接触片21bの外面21fと、第1トランジション部22の外面22bと、ワイヤーバレル部23の外面23bと、第2トランジション部24の外面24bと、インシュレーションバレル部25の外面25bとを備える。外面11Bには、接触片21bの外面21fの一部を除いて外側樹脂被覆部42が設けられている。
外側樹脂被覆部42は、ボックス部21の外面21eに設けられた第1外側被覆部42aと、第1トランジション部22の外面22bに設けられた第2外面被覆部42bと、ワイヤーバレル部23の外面23bに設けられた第3外面被覆部42cと、第2トランジション部24の外面24bに設けられた第4外面被覆部42dと、インシュレーションバレル部25の外面25bに設けられた第5外面被覆部42eと、接触片21bの外面21fのうち、接触凸部21aを除く部分に設けられた第6外面被覆部42fとから構成されている。
接触凸部21aには、樹脂被覆部40が形成されず、雄型の端子に接触する非被覆部48が設けられている。
【0028】
図4は、連鎖端子61に形成された端子素材11Eにおける端面樹脂被覆部43及び面取り樹脂被覆部44を示す要部平面図である。
端子素材11Eに内側樹脂被覆部41(
図3(A)参照)及び外側樹脂被覆部42が形成されるときに同時に端面樹脂被覆部43と面取り樹脂被覆部44とが形成される。
端子素材11Eは、ボックス部21の長手方向に延びる端面21g,21g、幅方向に延びる端面21h、21h、21j、21j及び開口21mの端面21kと、第1トランジション部22の端面22c、22cと、ワイヤーバレル部23の端面23c、23c、23e、23e、23f、23fと、第2トランジション部24の端面24c、24cと、インシュレーションバレル部25の端面25c、25c、25e、25e、25f、25fと、連鎖端子61の枠部62に設けられた端部突出部26から端子素材11Eが切り離されたときにインシュレーションバレル部25に出来る端面25gと、接触片21bの端面21p、21pと、連鎖端子61の枠部62から端子素材11Eが切り離されたときに接触片21bの先端に出来る端面21qとを備える。
【0029】
端面樹脂被覆部43は、ボックス部21の端面21g、21g、21h、21h、21j、21j、21kに設けられた第1端面被覆部43aと、第1トランジション部22の端面22c、22cに設けられた第2端面被覆部43bと、ワイヤーバレル部23の端面23c、23c、23e、23e、23f、23fに設けられた第3端面被覆部43cと、第2トランジション部24の端面24c、24cに設けられた第4端面被覆部43dと、インシュレーションバレル部25の端面25c、25c、25e、25e、25f、25f、25gに設けられた第5端面被覆部43eと、接触片21bの端面21p、21p、21qに設けられた第6端面被覆部43fとから構成されている。
【0030】
ワイヤーバレル部23及びインシュレーションバレル部25は、端面11Cの一部を構成する端面23e、25eに面取り23d、25dが施されている。面取り23d、25dにはそれぞれ樹脂被覆が施されて第1面取り被覆部44a、第2樹脂面取り被覆部44bが設けられている。第1面取り被覆部44a及び第2面取り被覆部44bは、面取り樹脂被覆部44を構成している。面取り樹脂被覆部44は、樹脂被覆部40(
図1(B)参照)の一部を構成している。
【0031】
上述した樹脂被覆部40の形成の後に、連鎖端子61は、G−G線で切断されて、各端子素材11Eが枠部62から切り離される。この切り離しの後に、打ち抜き面である端面25gに対し、同様に、パルススプレイ方式により樹脂被覆部40が形成される。そして、ボックス部21、第1トランジション部22、ワイヤーバレル部23、第2トランジション部24、インシュレーションバレル部25等が折り曲げ形成されて、端子11(
図1(B)参照。)となる。
【0032】
上述したパルススプレイ方式は、
図3(A)、(B)を参照し、連鎖端子61を、例えば図中で上から下に向けて移動しながら、樹脂が塗布される。この際、移動方向に断続的に樹脂を塗布することが難しい。本実施形態では、2か所に亘る非被覆部46、48が、連鎖端子61の移動方向に連続し、塗布が容易である。
上記実施形態では、金属部材を、プレス機等により打ち抜く過程で、H−H線(
図2参照)で枠部62から切り離し、連鎖端子61とした状態で、パルススプレイ方式により樹脂を塗布し、樹脂被覆部40を形成したが、これに限定されず、金属部材を、プレス機等により打ち抜く過程で、H−H線、及び、G−G線で枠部62から切り離して、端子素材11E毎にばらばらにした状態で、片面ずつ両面に、パルススプレイ方式により樹脂を塗布し、樹脂被覆部40を形成しても良い。
なお、上述の非被覆部46、48、73(
図5参照)の形成に際しては、必要に応じて、所定のマスキングを行なっても良いが、パルススプレイ前の任意のタイミングで、マスキングを行なうことが可能である。
【0033】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の内側樹脂被覆部71を示す平面図である。
図3及び
図4に示した第1実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
金属部材から打ち抜かれた連鎖端子61の端子素材11Eには、その内面11Aに内側樹脂被覆部71が設けられている。端子素材11Eの外面11B(
図3(B)参照)及び端面11C(
図4参照)にはそれぞれ外側樹脂被覆部42(
図3(B)参照)、端面樹脂被覆部43(
図4参照)が設けられている。
内側樹脂被覆部71は、第1実施形態の内側樹脂被覆部41(
図3(A)参照)の第1内面被覆部41aに対して第1内面被覆部71aが異なる。内側樹脂被覆部71の被覆材料、形成手順等の形成要領は第1実施形態の内側樹脂被覆部41と同一である。
【0034】
ボックス部21は、
図1(A)〜(C)及び
図5において、接触片21bの付け根部となる底部21Sと、底部21Sの両縁から立ち上げられる一対の側部21T、21Uと、側部21Tから折り曲げられる内側天井部21Vと、側部21Uから内側天井部21Vの外側に重なるように折り曲げられる外側天井部21Wとから構成されている。
第1内面被覆部71aは、底部21Sに設けられた底部内面被覆部41fと、側部21T、21Uに設けられた側部内面被覆部41g、41gと、内側天井部21Vに設けられた内側天井被覆部41hと、外側天井部21Wに設けられた外側天井被覆部41jとから構成されている。
内側天井被覆部41hは、ボックス部21の一方の端面21jから距離L4、他方の端面21hから距離L5の範囲のみに形成され、端子素材11Eの長手方向の幅L6内及び幅W内には形成されていない。このボックス部21の内面21cの樹脂被覆が設けられていない部分は、雄型端子に接触する非被覆部73である。
非被覆部46の長さL6及び幅Wは、内側天井部21Vに接触するように雄型端子に設けられた接触部の長さ及び幅に対して等しいか、小さくなっている。
【0035】
ボックス部21内に挿入される雄型端子の形状は、後述する
図6に示す通り、平板状であり、この雄型端子が、接触片21bの接触凸部21a(
図3(B)参照)の非被覆部48と非被覆部73とに接触し、挟持されて電気的な導通が確保される。
本実施形態では、ボックス部21の内面21cに、底部内面被覆部41f、側部内面被覆部41g、41g、内側天井被覆部41h及び外側天井被覆部41jを設けることで、樹脂被覆部の面積を可及的に大きくすることができる。従って、
図1(C)に示した被覆電線12の芯線14と端子11との間の腐食電流をより一層発生しにくくすることができ、芯線14の腐食を抑制することができる。
【0036】
以上の
図1(A)〜(C)、
図3(A)、(B)及び
図4に示したように、他の端子(雄型端子)と接続する接続部としてのボックス部21と、被覆電線12と圧着接続する圧着部としてのワイヤーバレル部23、インシュレーションバレル部25とを備える端子11であって、雄型端子との接触部(非被覆部48)、および、被覆電線12の導体としての芯線14の露出部である端部14aとの接触部(非被覆部46)を除いた非接触部が、金属部材の打ち抜き時の切断端面としての端面11Cを含んで、実質的にすべて樹脂被覆部40により覆われている。
この構成によれば、端子11は、被覆電線12の芯線14の端部14aとの接触部としての非被覆部46と、外部端子との接触部としての非被覆部48および/または非被覆部73(
図5参照)と、を除いた非接触部が、打ち抜き時の端面11Cを含んで、すべて樹脂被覆部40で覆われるので、ワイヤーバレル部23に被覆電線12の芯線14を圧着したときに、被覆電線12の芯線14及び端子11の表面に水分が付着しても、被覆電線12の芯線14と端子11との間に腐食電流が流れにくくなる。従って、例えば、芯線14がアルミニウム又はアルミニウム合金、端子11が銅又は銅合金という異種金属であっても芯線14の腐食を良好に抑制することができ、被覆電線12の芯線14と端子11との導電機能を長期に亘ってより確実にすることができる。
【0037】
本実施形態では、端子11の非接触部を、端面11Cを含んですべて樹脂被覆部40で覆ったので、例えば、端子11を銅又は銅合金製、芯線14をアルミニウム合金製とした場合、電線サイズ等に関係なく接続構造体10(
図1(C)参照)の腐食試験後の芯線におけるアルミニウム合金残存率が80%以上となった。ちなみに、端面11Cに樹脂被覆部を設けないで上記の腐食試験を行うと、接触部及び端面以外をほとんど樹脂被覆したにも拘わらず、同一条件で腐食試験をしても、アルミニウム合金残存率が70%を下回る結果が出た。なお、上記のアルミニウム合金残存率とは、芯線14の露出部であって、
図1(C)において、ワイヤーバレル片32、32で圧着されている箇所付近をF−F線に沿って切断したときに、アルミニウム合金残存率=(残存している芯線14の断面積)/(腐食する前の芯線14の断面積)で表される。
【0038】
特に、特開2010−257719号公報に記載の端子を評価したが、電線の導体の露出面積と金属部材の非樹脂被覆箇所の面積の比のみを調整しても、所望の防食性が得られないことが判明した。本願では、端面11Cを含んですべて樹脂被覆部40で覆ったので、アルミニウム合金の残存率が高く、防食性に優れていることが示された。
【0039】
また、
図1(B)、(C)に示したように、圧着部が、ワイヤーバレル部23及びインシュレーションバレル部25で構成されているので、ワイヤーバレル部23に被覆電線12の芯線14の端部14aとの接触部位である非被覆部46を確保し、インシュレーションバレル部25に第2内面被覆部41bを設けた場合には、端子11と被覆電線12の芯線14との電気的な導通を確保しつつ端子11の樹脂被覆部40の面積を大きくすることができる。
また、
図4(A)、(B)及び
図5に示したように、樹脂被覆部40は、パルススプレイ方式により形成されるので、流体にせん断力を与えるようにスプレイをすることになるので、流体詰まりや液玉化といった不具合が少なくなる。
結果、樹脂流体を好適に霧状にすることができ、複雑な形状のものに対しても樹脂流体の塗布が可能となる。すなわち、端子11の打ち抜き時の切断端面(端面11C)に対しても容易に均一な樹脂被覆することが可能となる。
また、
図1(C)に示したように、接続構造体10は、端子11におけるワイヤーバレル部23に、被覆電線12の芯線14を接続するので、被覆電線12の芯線14及び端子11の表面に水分が付着しても、被覆電線12の芯線14と端子11との間に腐食電流が流れにくくなる。従って、異種金属腐食を抑制することができ、被覆電線12の芯線14と端子11との導電機能を長期に亘ってより確実にすることができる。
【0040】
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態の雄型端子81を示す斜視図である。
雄型端子(端子)81は、ボックス部83と、ボックス部83の一端から突出する板状のタブ84と、管状かしめ部85と、ボックス部83及び管状かしめ部85のそれぞれの橋渡しとしてのトランジション部86とを備え、基材が銅または銅合金製である。
ボックス部83は、タブ84が雌型の端子11(
図1参照)のボックス部21(
図1参照)に挿入される際に挿入位置を規制するとともに挿入時に指で把持される部分である。
タブ84は、矩形の平板部84aと、平板部84aの先端部に形成された先の尖ったテーパ部84bとを備える。
平板部84aの一方の第1接触面84cには、端子11の接触凸部21a(
図1(A)参照)が接触し、第1接触面84cの裏面となる第2接触面84dには、ボックス部21の下方凸部21n(
図1(A)参照)が接触する。テーパ部84bは、端子11への挿入がスムーズに行えるように設けられる。
【0041】
管状かしめ部85は、電線を圧着接合する部位であり、トランジション部86から次第に大径となる拡径部91と、拡径部91の縁部から同一径で筒状に延びる筒部92とからなる。
筒部92の一端には、電線を挿入することができる電線挿入口94が開口する。拡径部91のトランジション部86側は、潰した後に溶接して溶接ビード部95が形成され、溶接ビード部95によりトランジション部86側からの水分等の浸入を防いでいる。管状かしめ部85には、軸方向に伸びる溶接ビード部96が形成される。
【0042】
図7は、タブ84の端子11との接触面を示す模式図である。
図7(A)はタブ84の第1接触面84cを示す図、
図7(B)はタブ84の第2接触面84dを示す図である。
図7(A)に示すように、第1接触面84cは、長手方向のボックス部83寄りの部分で且つ幅方向(図の上下方向)の中央に、接触凸部21a(
図1(A)参照)が接触する矩形の接触部84eが設けられる。また、第1接触面84cの接触部84eを除く部分は、非接触部84f(ハッチングを施した部分)であり、非接触部84fに樹脂被覆が形成される。
【0043】
図7(B)に示すように、第2接触面84dは、接続端子11(
図1参照)の下方凸部21n(
図1(A)参照)が接触する矩形の接触部84gが設けられる。また、第2接触面84dの接触部84gを除く部分は、非接触部84h(ハッチングを施した部分)であり、非接触部84hに樹脂被覆が形成される。
以上の
図6及び
図7に示した雄型端子81では、電線の芯線及び端子11と全く接触しない非接触部84f,84hには、金属部材の打ち抜き時の切断端面を含んで、実質すべて、その表面が絶縁樹脂で被覆されている。従って、これまでに説明してきた第1実施形態の端子11(
図1参照)と同様、異種金属腐食を良好に抑制することができる。
【0044】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。特に、本発明は雌型端子を用いて説明をしてきたが、雄型端子に対しても適用可能である。
また、例えば、上記実施形態において、端子11に設けられる絶縁被覆の材質を、アクリレート系樹脂、ポリアミドイミドとしたが、これに限らず、アクリル樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、塩化ビニリデン樹脂、フッ素樹脂でも良い。
また、端子11の材質を銅又は銅合金、被覆電線12の芯線14の材質をアルミニウム又はアルミニウム合金としたが、これに限らない。
また、端子11の形状は、本実施形態のものに限らない。