特許第5903891号(P5903891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5903891露光方法、露光装置、及びデバイス製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903891
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】露光方法、露光装置、及びデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
   G03F7/20 501
   G03F7/20 521
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-550037(P2011-550037)
(86)(22)【出願日】2011年1月18日
(86)【国際出願番号】JP2011050744
(87)【国際公開番号】WO2011087129
(87)【国際公開日】20110721
【審査請求日】2014年1月10日
(31)【優先権主張番号】特願2010-8004(P2010-8004)
(32)【優先日】2010年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 義昭
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−345243(JP,A)
【文献】 特開平06−291020(JP,A)
【文献】 特開2007−158263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板に生じる変形の非線形成分のうち、算出のために前記第1基板において第1点数のマーク計測が必要な第1成分と、前記第1点数よりも少ない第2点数のマーク計測で算出可能であって前記第1成分とは異なる第2成分とを求めることと、
前記第1成分と前記第2成分との関係を導出することと、
第2基板において第2点数のマーク計測を実行することと、
前記第2基板における前記第2点数のマーク計測の結果と、前記関係とに基づいて、前記第2基板の変形情報を取得することと、
取得した前記変形情報に基づいて、前記第2基板を露光光で露光することと、
を含む露光方法。
【請求項2】
前記第2点数のマーク計測の結果に基づいて、前記第2基板の第2成分を算出することと、
前記第2成分に影響する第1成分に基づいて、前記第2成分を補正することと、
を含み、
前記第2基板の変形情報は、補正された前記第2成分と、前記関係とに基づいて取得される請求項1記載の露光方法。
【請求項3】
取得した前記変形情報に基づいて露光条件を調整することを含み、
調整された前記露光条件に基づいて、前記第2基板を露光する請求項1又は2記載の露光方法。
【請求項4】
前記関係の導出は、複数の前記第1基板に関して、
前記第1点数のマーク計測の結果に基づいて前記第1成分を算出することと、
前記第2点数のマーク計測の結果に基づいて前記第2成分を算出することと、
算出された前記第1、第2成分を重回帰分析することと、
を含む請求項1〜3のいずれか一項記載の露光方法。
【請求項5】
前記第1成分の算出は、前記第1点数の複数回のマーク計測の結果の平均値を求めることを含み、
前記第2成分の算出は、前記第2点数の複数回のマーク計測の結果の平均値を求めることを含む請求項1〜4のいずれか一項記載の露光方法。
【請求項6】
前記関係の導出は、前記第1成分と前記第2成分との一次式の関係を導出することを含む請求項1〜5のいずれか一項記載の露光方法。
【請求項7】
ロットに含まれる複数の基板が順次露光され、
前記第1基板は、前記ロット外の基板であり、
前記第2基板は、前記ロット内の基板である請求項1〜6のいずれか一項記載の露光方法。
【請求項8】
ロットに含まれる複数の基板が順次露光され、
前記第1基板は、前記ロットの先頭の基板を含む前記ロット内の所定数の基板であり、
前記第2基板は、前記ロット内の前記第1基板以外の基板である請求項1〜6のいずれか一項記載の露光方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項記載の露光方法を用いて基板を露光することと、
露光された前記基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項10】
第1基板に生じる変形の非線形成分のうち、算出のために前記第1基板において第1点数のマーク計測が必要な第1成分と、前記第1点数よりも少ない第2点数のマーク計測で算出可能であって前記第1成分とは異なる第2成分との関係を記憶する記憶装置と、
第2基板において第2点数のマーク計測を実行するマーク計測装置と、
前記マーク計測装置の計測結果と、前記記憶装置の情報とに基づいて、前記第2基板の変形情報を取得する制御装置と、を備え、
取得した前記変形情報に基づいて、前記第2基板を露光光で露光する露光装置。
【請求項11】
請求項10記載の露光装置を用いて基板を露光することと、
露光された前記基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光方法、露光装置、及びデバイス製造方法に関する。
本願は、2010年1月18日に出願された特願2010−8004号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ等の電子デバイスの製造工程において、例えば特許文献1に開示されているような、露光光で基板を露光する露光装置が使用される。デバイスは、基板上に複数のパターン(パターン化された膜)を積層することによって形成される。露光処理において、基板に既に形成されているパターンに次のパターンの像を重ね合わせる際、基板のアライメントマークを計測し、そのアライメントマークの計測結果に基づいて、基板と次のパターンの像との位置合わせを行うアライメント処理が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−215718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
露光処理において、基板が変形すると、パターンの重ね合わせ精度が低下し、その結果、露光不良の発生、及び不良デバイスの発生をもたらす。基板が変形した場合でも、パターンの重ね合わせ精度の低下を抑制するために、基板の変形情報を精確に取得することが有効である。基板の変形が非線形成分(非線形歪み)を含む場合、アライメントマークの計測点数を多くすることによって、その非線形歪みを含む基板の変形情報を精確に取得することができる。しかし、アライメントマークの計測点数を多くした場合、その計測のために時間を要し、スループットが低下してしまう可能性がある。
【0005】
本発明の態様は、スループットの低下を抑制しつつ、基板の変形情報を精確に取得して露光不良の発生を抑制できる露光方法及び露光装置を提供することを目的とする。また本発明の態様は、スループットの低下を抑制しつつ、不良デバイスの発生を抑制できるデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、第1基板に生じる非線形歪みのうち、算出のために前記第1基板において第1点数のマーク計測が必要な第1成分と、前記第1点数よりも少ない第2点数のマーク計測で算出可能な第2成分との関係を導出することと、第2基板において第2点数のマーク計測を実行することと、前記第2基板における前記第2点数のマーク計測の結果と、前記関係とに基づいて、前記第2基板の変形情報を取得することと、取得した前記変形情報に基づいて、前記第2基板を露光光で露光することと、を含む露光方法が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様に従えば、第1の態様の露光方法を用いて基板を露光することと、露光された前記基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様に従えば、第1基板に生じる非線形歪みのうち、算出のために前記第1基板において第1点数のマーク計測が必要な第1成分と、前記第1点数よりも少ない第2点数のマーク計測で算出可能な第2成分との関係を記憶する記憶装置と、第2基板において第2点数のマーク計測を実行するマーク計測装置と、前記マーク計測装置の計測結果と、前記記憶装置の情報とに基づいて、前記第2基板の変形情報を取得する制御装置と、を備え、取得した前記変形情報に基づいて、前記第2基板を露光光で露光する露光装置が提供される。
【0009】
本発明の第4の態様に従えば、第3の態様の露光装置を用いて基板を露光することと、露光された前記基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様によれば、スループットの低下を抑制しつつ、露光不良の発生を抑制できる。また本発明の態様によれば、スループットの低下を抑制しつつ、不良デバイスの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る露光装置の一例を示す概略構成図である。
図2】第1実施形態に係る露光装置の一例を示す斜視図である。
図3】第1実施形態に係る投影システムの一例を説明するための概略構成図である。
図4】第1実施形態に係る投影システムの投影領域とアライメントシステムの検出領域と基板との関係の一例を示す模式図である。
図5】基板の変形の非線形成分の一例を示す図である。
図6】基板の変形の非線形成分の一例を示す図である。
図7】基板の変形の非線形成分の一例を示す図である。
図8】基板の変形の非線形成分の一例を示す図である。
図9】基板の変形の非線形成分の一例を示す図である。
図10】基板の変形の非線形成分の一例を示す図である。
図11】基板の変形の非線形成分の一例を示す図である。
図12】アライメントマークの計測点数の一例を示す模式図である。
図13】第1実施形態に係る露光方法の一例を示すフローチャートである。
図14】基板に生じる非線形歪みのうち、第1成分及び第2成分の一例を示す模式図である。
図15】アライメントマークの計測点数の一例を示す模式図である。
図16】第2実施形態に係る露光方法の一例を示すフローチャートである。
図17】本実施形態に係るデバイス製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0013】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る露光装置EXの一例を示す概略構成図、図2は、斜視図である。図1及び図2において、露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージ1と、基板Pを保持して移動可能な基板ステージ2と、マスクステージ1を移動する駆動システム3と、基板ステージ2を移動する駆動システム4と、マスクMを露光光ELで照明する照明システムISと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板Pに投影する投影システムPSと、露光装置EX全体の動作を制御する制御装置5と、制御装置5に接続され、露光に関する各種の情報を記憶する記憶装置5Rとを備えている。
【0014】
マスクMは、基板Pに投影されるデバイスパターンが形成されたレチクルを含む。基板Pは、例えばガラスプレート等の基材と、その基材上に形成された感光膜(塗布された感光剤)とを含む。本実施形態において、基板Pは、大型のガラスプレートを含み、その基板Pの一辺のサイズは、例えば500mm以上である。本実施形態においては、基板Pの基材として、一辺が約3000mmの矩形のガラスプレートを用いる。
【0015】
また、本実施形態の露光装置EXは、マスクステージ1及び基板ステージ2の位置情報を計測する干渉計システム6と、マスクMの表面(下面、パターン形成面)の位置情報を検出する第1検出システム7と、基板Pの表面(露光面、感光面)の位置情報を検出する第2検出システム8と、基板P上のアライメントマーク計測を実行するアライメントシステム9とを備えている。
【0016】
また、露光装置EXは、ボディ13を備えている。ボディ13は、例えばクリーンルーム内の支持面(例えば床面)FL上に防振台BLを介して配置されたベースプレート10と、ベースプレート10上に配置された第1コラム11と、第1コラム11上に配置された第2コラム12とを有する。本実施形態において、ボディ13は、投影システムPS、マスクステージ1、及び基板ステージ2のそれぞれを支持する。本実施形態において、投影システムPSは、定盤14を介して、第1コラム11に支持される。マスクステージ1は、第2コラム12に対して移動可能に支持される。基板ステージ2は、ベースプレート10に対して移動可能に支持される。
【0017】
本実施形態において、投影システムPSは、複数の投影光学系を有する。照明システムISは、複数の投影光学系に対応する複数の照明モジュールを有する。また、本実施形態の露光装置EXは、マスクMと基板Pとを所定の走査方向に同期移動しながら、マスクMのパターンの像を基板Pに投影する。すなわち、本実施形態の露光装置EXは、所謂、マルチレンズ型スキャン露光装置である。
【0018】
本実施形態において、投影システムPSは、7つの投影光学系PL1〜PL7を有し、照明システムISは、7つの照明モジュールIL1〜IL7を有する。なお、投影光学系及び照明モジュールの数は7つに限定されず、例えば投影システムPSが、投影光学系を11個有し、照明システムISが、照明モジュールを11個有してもよい。
【0019】
照明システムISは、所定の照明領域IR1〜IR7に露光光ELを照射可能である。照明領域IR1〜IR7は、各照明モジュールIL1〜IL7から射出される露光光ELの照射領域に含まれている。本実施形態において、照明システムISは、異なる7つの照明領域IR1〜IR7のそれぞれを露光光ELで照明する。照明システムISは、マスクMのうち照明領域IR1〜IR7に配置された部分を、均一な照度分布の露光光ELで照明する。本実施形態においては、照明システムISから射出される露光光ELとして、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)を用いる。
【0020】
マスクステージ1は、マスクMを保持した状態で、照明領域IR1〜IR7に対して移動可能である。マスクステージ1は、マスクMを保持可能なマスク保持部15を有する。マスク保持部15は、マスクMを真空吸着可能なチャック機構を含み、マスクMをリリース可能に保持する。本実施形態において、マスク保持部15は、マスクMの下面(パターン形成面)とXY平面とがほぼ平行となるように、マスクMを保持する。駆動システム3は、例えばリニアモータを含み、第2コラム12のガイド面12G上においてマスクステージ1を移動可能である。本実施形態において、マスクステージ1は、駆動システム3の作動により、マスク保持部15でマスクMを保持した状態で、ガイド面12G上を、X軸、Y軸、及びθZ方向の3つの方向に移動可能である。
【0021】
投影システムPSは、所定の投影領域PR1〜PR7に露光光ELを照射可能である。投影領域PR1〜PR7は、各投影光学系PL1〜PL7から射出される露光光ELの照射領域に相当する。本実施形態において、投影システムPSは、異なる7つの投影領域PR1〜PR7のそれぞれにパターンの像を投影する。投影光学システムPSは、基板Pのうち投影領域PR1〜PR7に配置された部分に、マスクMのパターンの像を所定の投影倍率で投影する。
【0022】
基板ステージ2は、基板Pを保持した状態で、投影領域PR1〜PR7に対して移動可能である。基板ステージ2は、基板Pを保持可能な基板保持部16を有する。基板保持部16は、基板Pを真空吸着可能なチャック機構を含み、基板Pをリリース可能に保持する。本実施形態において、基板保持部16は、基板Pの表面(露光面)とXY平面とがほぼ平行となるように、基板Pを保持する。駆動システム4は、例えばリニアモータを含み、ベースプレート10のガイド面10G上において基板ステージ2を移動可能である。本実施形態において、基板ステージ2は、駆動システム4の作動により、基板保持部16で基板Pを保持した状態で、ガイド面10G上を、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。
【0023】
アライメントシステム9は、基板Pに設けられているアライメントマークを計測する。アライメントシステム9は、所謂、オフアクシス方式のアライメントシステムであり、基板ステージ2に保持された基板Pの表面と対向配置される複数の顕微鏡9A〜9Fを有する。顕微鏡9A〜9Fのそれぞれは、検出領域AL1〜AL6に検出光を照射する投射部と、検出領域AL1〜AL6に配置されたアライメントマークの光学像を取得可能な受光部とを有する。
【0024】
制御装置5は、投影システムPSにより形成されるマスクMのパターンの像を、基板Pに既に形成されているパターンに重ね合わせるように、露光処理を実行する。露光処理の際、制御装置5は、基板Pのアライメントマークを計測し、そのアライメントマークの計測結果に基づいて、基板PとマスクMのパターンの像との位置合わせを行うアライメント処理を実行する。
【0025】
図3は、本実施形態に係る投影システムPS、アライメントシステム9、及び投影領域PR1〜PR7に配置された基板ステージ2の一例を示す図である。
【0026】
第1投影光学系PL1について説明する。図3において、第1投影光学系PL1は、第1照明モジュールIL1により露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板Pに投影する。第1投影光学系PL1は、像面調整部33と、シフト調整部34と、二組の反射屈折型光学系31,32と、視野絞り35と、スケーリング調整部36とを備えている。
【0027】
照明領域IR1に照射され、マスクMを透過した露光光ELは、像面調整部33に入射する。像面調整部33は、第1投影光学系PL1の像面の位置(Z軸、θX、及びθY方向に関する位置)を調整可能である。像面調整部33は、マスクM及び基板Pに対して光学的にほぼ共役な位置に配置されている。像面調整部33は、第1光学部材33A及び第2光学部材33Bと、第2光学部材33Bに対して第1光学部材33Aを移動可能な駆動装置(不図示)とを備えている。第1光学部材33Aと第2光学部材33Bとは、気体軸受により、所定のギャップを介して対向する。第1光学部材33A及び第2光学部材33Bは、露光光ELを透過可能なガラス板であり、それぞれくさび形状を有する。制御装置5は、駆動装置を作動して、第1光学部材33Aと第2光学部材33Bとの位置関係を調整することにより、第1投影光学系PL1の像面の位置を調整することができる。像面調整部33を通過した露光光ELは、シフト調整部34に入射する。
【0028】
シフト調整部34は、基板P上におけるマスクMのパターンの像をX軸方向及びY軸方向にシフトさせることができる。シフト調整部34を透過した露光光ELは、1組目の反射屈折型光学系31に入射する。反射屈折型光学系31は、マスクMのパターンの中間像を形成する。反射屈折型光学系31から射出された露光光ELは、視野絞り35に供給される。
【0029】
視野絞り35は、反射屈折型光学系31により形成されるパターンの中間像の位置に配置されている。視野絞り35は、投影領域PR1を規定する。本実施形態において、視野絞り35は、基板P上における投影領域PR1を台形状に規定する。視野絞り35を通過した露光光ELは、2組目の反射屈折型光学系32に入射する。
【0030】
反射屈折型光学系32は、反射屈折型光学系31と同様に構成されている。反射屈折型光学系32から射出された露光光ELは、スケーリング調整部36に入射する。スケーリング調整部36は、マスクMのパターンの像の倍率(スケーリング)を調整することができる。スケーリング調整部36を介した露光光ELは、基板Pに照射される。本実施形態において、第1投影光学系PL1は、マスクMのパターンの像を、基板P上に、正立等倍で投影する。
【0031】
上述の像面調整部33、シフト調整部34、及びスケーリング調整部36により、第1投影光学系PL1の結像特性(光学特性)を調整する結像特性調整装置30が構成される。結像特性調整装置30は、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に関する第1投影光学系PL1の像面の位置を調整可能であり、パターンの像の倍率を調整可能である。
【0032】
以上、第1投影光学系PL1について説明した。第2〜第7投影光学系PL2〜PL7は、第1投影光学系PL1と同等の構成を有する。第2〜第7投影光学系PL2〜PL7についての説明は省略する。
【0033】
図4は、投影領域PR1〜PR7と、検出領域AL1〜AL6と、基板Pとの位置関係の一例を示す模式図であり、基板Pの表面を含む平面内の位置関係を示している。図4に示すように、本実施形態おいて、基板Pの表面は、マスクMのパターンの像が投影される複数の露光領域(被処理領域)PA1〜PA6を有する。本実施形態において、基板Pの表面は、6つの露光領域PA1〜PA6を有する。露光領域PA1、PA2、PA3が、Y軸方向にほぼ等間隔で離れて配置され、露光領域PA4、PA5、PA6が、Y軸方向にほぼ等間隔で離れて配置されている。露光領域PA1、PA2、PA3は、露光領域PA4、PA5、PA6に対して+X側に配置されている。
【0034】
本実施形態において、投影領域PR1〜PR7のそれぞれは、XY平面内において台形である。本実施形態において、投影光学系PL1、PL3、PL5、PL7による投影領域PR1、PR3、PR5、PR7が、Y軸方向にほぼ等間隔で配置され、投影光学系PL2、PL4、PL6による投影領域PR2、PR4、PR6が、Y軸方向にほぼ等間隔で配置されている。投影領域PR1、PR3、PR5、PR7は、投影領域PR2、PR4、PR6に対して−X側に配置されている。また、Y軸方向に関して、投影領域PR1、PR3、PR5、PR7の間に、投影領域PR2、PR4、PR6が配置される。
【0035】
本実施形態において、顕微鏡9A〜9Fによる検出領域AL1〜AL6が、投影領域PR1〜PR7に対して−X側に配置されている。検出領域AL1〜AL6は、Y軸方向に離れて配置される。複数の検出領域AL1〜AL6のうち、Y軸方向に関して外側2つの検出領域AL1と検出領域AL6との間隔は、複数の露光領域PA1〜PA6のうち、Y軸方向に関して外側2つの露光領域PA1(PA4)の−Y側のエッジと露光領域PA3(PA6)の+Y側のエッジとの間隔とほぼ等しい。
【0036】
アライメントシステム9は、基板Pに設けられている複数のアライメントマークm1〜m6を検出する。本実施形態において、基板P上にはY軸方向に離れて6つのアライメントマークm1〜m6が配置され、それらアライメントマークm1〜m6のグループが、X軸方向に離れた4箇所に配置されている。アライメントマークm1,m2は、露光領域PA1,PA4の各両端部に隣接して設けられ、アライメントマークm3,m4は、露光領域PA2,PA5の各両端部に隣接して設けられ、アライメントマークm5,m6は、露光領域PA3,PA6の各両端部に隣接して設けられている。
【0037】
本実施形態においては、基板P上においてY軸方向に離れて配置された6つのアライメントマークm1〜m6に対応して、顕微鏡9A〜9F(検出領域AL1〜AL6)が配置されている。顕微鏡9A〜9Fは、アライメントマークm1〜m6が検出領域AL1〜AL6に同時に配置されるように設けられている。アライメントシステム9は、顕微鏡9A〜9Fを用いて、6つのアライメントマークm1〜m6を同時に検出可能である。
【0038】
ところで、基板Pは、変形する可能性がある。基板Pは、例えば露光処理の前後に行われる各種のプロセス処理によって加熱される場合がある。その結果、基板Pの変形(熱変形)が発生する可能性がある。また、基板保持部16の保持状態に起因して、基板Pの変形(歪み変形)が発生する可能性がある。なお、基板保持部16の保持状態は、例えば基板保持部16に設けられている吸着機構の吸着むらを含む。
【0039】
基板Pの変形は、線形成分と非線型成分とに分けることができる。以下の説明において、基板Pの変形の非線形成分を適宜、非線形歪み、と称する。
【0040】
非線形成分(非線形歪み)は、多項式で表すことができる。非線形成分は、例えば3次の多項式で表すことができる。非線形成分は、最小自乗法により展開することによって、例えば以下の3次の多項式で表すことができる。
【0041】
【数1】
【0042】
【数2】
【0043】
図5図6、及び図7に、展開した2次の非線形成分を示し、図8図9図10、及び図11に、展開した3次の非線形成分を示す。なお、(1)式は、X軸方向に関する基準の格子点からの変位量を示し、(2)式は、Y軸方向に関する基準の格子点からの変位量を示す。
【0044】
上述のように、露光処理は、基板Pに既に形成されているパターンに重ね合わせるように、マスクMのパターンの像を投影する処理を含む。その露光処理において、基板Pとパターンの像との位置合わせのためにアライメント処理が実行される。基板Pが変形した場合、パターンの重ね合わせ精度の低下を抑制するために、基板Pの変形情報を精確に取得することが有効である。
【0045】
基板Pに非線形歪みが発生した場合、アライメントマークの計測点数を多くすることによって、その非線形歪みに関する変形情報を取得することができる。すなわち、アライメントマークの計測点数が多いほど、非線形歪みの高次成分に関する情報を取得することができる。基板Pの変形情報のうち、高次の非線形成分に関する情報を取得するために、基板Pにアライメントマークを多数配置し、それら多数のアライメントマークをアライメントシステム9で計測することが有効である。
【0046】
例えば、非線形成分のうち、Y軸方向のx2成分を算出するためには、図12の模式図に示すように、基板P上において少なくともX軸方向に関して異なる複数ヵ所にアライメントマークを配置し、それらアライメントマークの全てを計測する必要がある。
【0047】
このように、基板P上に多数のアライメントマークを配置し、それら多数のアライメントマークをアライメントシステム9によって計測することで、高次の非線形成分に関する情報を取得することができる。高次の非線形成分に関する情報まで取得することによって、パターンの重ね合わせ精度の低下を抑制するための補正処理を良好に実行することができる。なお、補正処理は、結像特性調整装置30を用いて投影領域PR1〜PR7を調整する処理を含む。
【0048】
しかし、アライメントマークの計測点数を多くした場合、その計測のために時間を要し、スループットが低下してしまう可能性がある。
【0049】
そこで、本実施形態においては、図13のフローチャートに示すように、基板Pに生じる非線形歪みのうち、算出のために基板Pにおいて第1点数のアライメントマーク計測が必要な第1成分と、第1点数よりも少ない第2点数のアライメントマーク計測で算出可能な第2成分との関係(相関性)を導出する処理(ステップSA1)と、基板Pにおいて第2点数のアライメントマーク計測を実行する処理(ステップSA2)と、ステップSA2で計測した結果と、ステップSA1で導出した関係とに基づいて、基板Pの変形情報を取得する処理(ステップSA3)と、取得した変形情報に基づいて、基板Pを露光光ELで露光する処理(ステップSA4)と、が実行される。
【0050】
本実施形態において、相関性を導出する処理(ステップSA1)は、露光される基板Pのアライメント処理及び露光処理(ステップSA2〜SA4)に先立って、事前に実行される。
【0051】
以下、本実施形態の原理について説明する。(1)式、(2)式、及び図5図11に示したように、非線形歪みは、複数の成分に分解(展開)できる。本発明者の知見によれば、非線形歪みの複数の成分のうち、所定の成分同士は、相関性があることが分かった。
【0052】
以下、説明を簡単にするために、図14に示す非線形成分を例にして説明する。図14(C)に示す非線形成分は、図14(A)に示す2次成分(Y軸方向のx2成分)と、図14(B)に示す2次成分(X軸方向のxy成分)とに分解することができる。この場合、図14(A)に示す2次成分(Y軸方向のx2成分)と図14(B)に示す2次成分(X軸方向のxy成分)とは相関性がある。
【0053】
すなわち、図14(A)に示す2次成分が生じている場合、内部応力として図14(A)の矢印で示すような力が発生し、その作用のため図14(B)に示す2次成分が発生し、その結果、図14(C)に示すような非線形歪みが発生すると考えられる。この場合、図14(A)に示す2次成分と図14(B)に示す2次成分とは相関性がある。
【0054】
そのため、図14(A)に示す2次成分、及び図14(B)に示す2次成分のいずれか一方の成分を計測することにより、その計測結果と、上述の相関性とに基づいて、他方の成分を求めることができる。
【0055】
図14(A)に示す2次成分を求める場合、あるいは図14(C)に示す非線形成分を求める場合、図12に示したように、8つのアライメントマークを計測する必要がある。一方、図14(B)に示す2次成分を求める場合、図15に示すように、4つのアライメントマークを計測すれば足りる。
【0056】
本実施形態においては、図14(A)に示す2次成分と図14(B)に示す2次成分との相関性が、基板Pの露光に先立って事前に導出される(ステップSA1)。そして、実際に基板Pを露光する場合、図15に示すようにその基板Pにおいて4つのアライメントマークの計測が実行される(ステップSA2)。4つのアライメントマークの計測結果に基づいて、図14(B)に示す2次成分が求められる。ステップSA2で計測した4つのアライメントマークの計測結果、すなわち、図14(B)に示す2次成分と、ステップSA1で導出された相関性とに基づいて、図14(A)に示す2次成分が求められる。図14(A)に示す2次成分と図14(B)に示す2次成分とが求められたので、図14(C)に示したような非線形成分に関する情報が取得可能である(ステップSA3)。
【0057】
このように、本実施形態においては、基板Pに生じる非線形歪みのうち、図14(A)に示す2次成分(Y軸方向のx2成分)と、図14(B)に示す2次成分(X軸方向のxy成分)との相関性が予め導出される。図12に示したように、図14(A)に示す2次成分(Y軸方向のx2成分)は、その2次成分の算出のために基板Pにおいて8点のアライメントマーク計測が必要な成分である。一方、図15に示したように、図14(B)に示す2次成分(X軸方向のxy成分)は、基板Pにおいて4点のアライメントマーク計測で算出可能な成分である。ステップSA1において求められた相関性は、記憶装置5Rに記憶される。
【0058】
以下の説明において、その成分の算出のために基板Pにおいて6点のアライメントマーク計測が必要な図14(A)に示す2次成分を適宜、第1成分、と称し、6点よりも少ない4点のアライメントマーク計測で算出可能な図14(B)に示す2次成分を適宜、第2成分、と称する。
【0059】
制御装置5は、基板Pを露光する際、その基板Pにおいて4点のアライメントマークを、アライメントシステム9を用いて計測する(ステップSA2)。制御装置5は、ステップSA2で計測した4点のアライメントマークの計測結果と、記憶装置5Rに記憶されている相関性に関する情報とに基づいて、基板Pの変形情報を取得することができる(ステップSA3)。
【0060】
制御装置5は、その取得した変形情報に基づいて、その基板Pを露光光ELで露光する(ステップSA4)。制御装置5は、取得した変形情報に基づいて、露光条件を調整し、その調整された露光条件に基づいて、基板Pを露光する。露光条件の調整は、結像特性調整装置30を用いて投影領域PR1〜PR7を調整することを含む。制御装置5は、取得した基板Pの変形情報に基づいて、パターンの重ね合わせ精度が低下しないように(重ね合わせ誤差が生じないように)、結像特性調整装置30を用いて投影領域PR1〜PR7の位置、大きさ、及び形状の少なくとも一つを調整し、その調整された投影領域PR1〜PR7に照射される露光光ELで基板Pを露光する。
【0061】
本実施形態において、制御装置5は、図14(A)に示す第1成分と図14(B)に示す第2成分との相関性を重回帰分析によって求める。すなわち、ステップSA1において、制御装置5は、6点のアライメントマークの計測結果に基づいて、図14(A)に示す第1成分を算出し、4点のアライメントマークの計測結果に基づいて、図14(B)に示す第2成分を算出し、その算出された第1成分及び第2成分を重回帰分析することによって、第1成分と第2成分との相関性(関係)を導出する。本実施形態において、第1成分と第2成分との相関性は、所定の関係式を含む。本実施形態においては、所定の関係式として、一次式を採用する。すなわち、本実施形態において、第1成分と第2成分との相関性(関係)の導出は、第1成分と第2成分との一次式の関係を導出することを含む。
【0062】
例えば、図14(B)に示す第2成分を説明変数、図14(A)に示す第1成分を目的関数として、重回帰分析を用いて関係式を算出する。その際、有効な目的変数の選択にはステップワイズ法等を用いることが好ましい。求められた関係式は、記憶装置5Rに記憶される。
【0063】
なお、本発明者の知見によれば、相関性(関係式)は、例えば基板Pの形状、大きさ、厚み、及び基板Pに対して施される各種のプロセス処理の条件に応じて変化すると考えられる。
【0064】
このように、本実施形態によれば、第1成分と第2成分との相関性(関係式)を事前に求めておき(ステップSA1)、実際の基板Pの露光時において、4点のアライメントマークの計測結果に基づいて図14(B)に示す第2成分がどれくらい生じているのかを知ることによって、図14(A)に示す第1成分を知ることができる。また、図14(C)に示す非線形成分も知ることができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、基板Pに生じる非線形成分のうち、6点のアライメントマークを計測しなければ算出できない第1成分を、4点のアライメントマークの計測結果に基づいて取得することができる。すなわち、本実施形態によれば、事前に求めた相関性(関係式)を用いて、少ないアライメントマーク計測点数で、多いアライメントマーク計測点数で計測した計測結果から導出可能な基板Pの変形状態を推定することができる。したがって、アライメントマークの計測に長時間を要することなく、図14(C)に示したような基板Pの変形情報を取得することができる。そのため、スループットの低下を抑制しつつ、重ね合わせ精度の低下を抑制することができ、露光不良の発生及び不良デバイスの発生を抑制することができる。
【0066】
なお、本実施形態において、6点のアライメントマークの計測を複数回実行し、その6点の複数回のアライメントマークの計測の結果の平均値を、第1成分の算出に用いてもよい。また、4点のアライメントマークの計測を複数回実行し、その4点の複数回のアライメントマークの計測の結果の平均値を、第2成分の算出に用いてもよい。
【0067】
なお、本実施形態においては、一例として、図14に示す非線形成分について説明した。(1)式、(2)式、図5図11を参照して説明したように、非線形成分を例えば3次の多項式に展開した場合、その展開された成分は、20個存在する。本実施形態において、20個の成分のうち、どの成分とどの成分とに相関性があるかについて、重回帰分析を用いて導出することができる。また、その相関性がある成分同士の関係式についても、重回帰分析を用いて導出することができる。
【0068】
なお、相関性がある成分(連成する成分)は、例えば基板Pの形状等に応じて決定される。また、相関性がある成分同士のうち、一方の成分の変形量に応じて、他方の成分の変形量が決定される。その変形量は、例えば基板Pに施されるプロセス処理の条件に応じて決定されると考えられる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0070】
第2実施形態においては、より詳細な手順について、図16のフローチャートを参照しながら説明する。まず、制御装置5は、第1成分と第2成分との相関性(関係式)を導出するための処理を開始する(ステップSB1)。以下の説明において、相関性(関係式)を導出するための処理を適宜、導出シーケンス、と称する。
【0071】
導出シーケンスにおいて、制御装置5は、第1成分と第2成分との相関性(関係式)を導出するための基板Pの露光処理を実行する(ステップSB2)。
【0072】
ステップSB2の露光は、相関性(関係式)を導出するための露光である。以下の説明において、ステップSB2の露光を適宜、テスト露光、と称する。
【0073】
テスト露光において、制御装置5は、結像特性調整装置30による非線形成分の補正を行わず、線形成分の補正のみを行って、基板Pを露光する。本実施形態においては、テスト露光において、複数(n枚)の基板Pが露光される。
【0074】
次に、制御装置5は、その基板Pに設けられている複数のアライメントマークのそれぞれを、アライメントシステム9を用いて計測する(ステップSB3)。本実施形態において、制御装置5は、1つの基板Pに設けられている24点のアライメントマークm1〜m6のうち、少なくとも16点のアライメントマークを計測する。本実施形態においては、制御装置5は、1つの基板Pに設けられている24点のアライメントマークm1〜m6の全てを、アライメントシステム9を用いて計測することとする。
【0075】
制御装置5は、そのアライメントシステム9の計測結果に基づいて、(1)式、(2)式に示した20個の係数C00〜C19を導出する(ステップSB4)。制御装置5は、n枚の基板Pのそれぞれについて、24点のアライメントマーク計測を実行し、20個の係数C00〜C19を導出する。これにより、(20×n)個の係数C00(i)〜C19(i)(但し、i=1〜n)が導出される。
【0076】
制御装置5は、上述の(20×n)個の係数C00(i)〜C19(i)を重回帰分析して、相関性(関係式)を導出する(ステップSB5)。上述の第1実施形態と同様、本実施形態においても、関係式として一次式を採用する。導出された相関性(関係式)は、記憶装置5Rに記憶される(ステップSB6)。
【0077】
一例として、重回帰分析により、C05とC00との間に相関性があると導出された場合、その一次式は、C05=f05×C00+Const05と表すことができる。また、C05とC01との間に相関性があると導出された場合、その一次式は、C05=f05×C01+Const05と表すことができる。
【0078】
以上により、導出シーケンスが終了する(ステップSB7)。
【0079】
導出シーケンスが終了した後、制御装置5は、デバイスを製造するための基板Pの露光処理を含む露光シーケンスを開始する(ステップSB8)。
【0080】
露光シーケンスにおいては、ロットに含まれる複数の基板Pが順次露光される。本実施形態において、上述の導出シーケンスで使用される基板Pは、露光シーケンスにおいて露光されるロット内の基板Pとは異なる基板Pである。
【0081】
デバイスを製造するための基板Pが基板ステージ2(基板保持部16)に保持(ロード)された後、制御装置5は、アライメントシステム9を用いて、基板Pのアライメントマークを計測する(ステップSB9)。制御装置5は、導出シーケンスにおけるアライメントマーク計測処理(ステップSB3)で計測したアライメントマークの計測点数よりも少ない計測点数のアライメントマーク計測を実行する。上述のように、ステップSB3におけるアライメントマークの計測点数は、24点である。本実施形態においては、図12の模式図に示すように、制御装置5は、ステップSB9において8点のアライメントマーク計測を実行する。
【0082】
制御装置5は、8点のアライメントマーク計測の計測結果に基づいて、第2成分を算出する(ステップSB10)。本実施形態において、8点のアライメントマーク計測で算出可能な第2成分、及び8点のアライメントマーク計測の計測結果からでは算出不可能な第1成分の一例は、以下の通りである。
【0083】
<第2成分>〔X軸方向〕:C00、C01、C02、C03、C04、C06、C07〔Y軸方向〕:C10、C11、C12、C13、C14、C16、C17<第1成分>〔X軸方向〕:C05、C08、C09〔Y軸方向〕:C15、C18、C19
【0084】
また、各第1成分のそれぞれについての関係式の一例は、以下の通りである。
【0085】
【数3】
【0086】
【数4】
【0087】
【数5】
【0088】
【数6】
【0089】
【数7】
【0090】
【数8】
【0091】
ところで、ステップSB9においては、8点のアライメントマークの計測結果に基づいて、その8点のアライメントマーク計測から算出可能な第2成分を求めている。そのため、その8点のアライメントマーク計測から算出される第2成分には、その8点のアライメントマーク計測の計測結果からでは求めることができない非線形歪みの所定の成分が付加されている可能性がある。換言すれば、8点のアライメントマーク計測の計測結果から求めた第2成分には、その8点のアライメントマーク計測の計測結果からでは求めることができないものの、実際に発生している非線形歪みの成分の少なくとも一部が付加されている可能性がある。なお、その付加させる成分は、計測するアライメントマークの位置に応じて変化すると考えられる。
【0092】
そこで、本実施形態においては、制御装置5は、8点のアライメントマーク計測の計測結果に基づいて、基板Pの第2成分を算出した後、その第2成分に影響する第1成分に基づいて、第2成分を補正する(ステップSB11)。
【0093】
すなわち、所定の第2成分に対して第1成分が相関性を有する場合、制御装置5は、その第1成分が第2成分に与える影響を除去するように、第2成分を補正する。
【0094】
上述のように、本実施形態において、第1成分は、C05、C08、C09、C15、C18、C19である。また、第2成分は、C00、C01、C02、C03、C04、C06、C07、C10、C11、C12、C13、C14、C16、C17である。第1成分に含まれる第2成分の係数をγとした場合、補正後の第2成分C00meas、C01meas、C02meas、C03meas、C04meas、C06meas、C07meas、C10meas、C11meas、C12meas、C13meas、C14meas、C16meas、C17measは、以下の通りである。
【0095】
【数9】
【0096】
制御装置5は、補正後の第2成分と、記憶装置5Rに記憶されている相関性(関係式)とに基づいて、基板Pの変形情報を取得する(ステップSB12)。
【0097】
制御装置5は、その取得した変形情報に基づいて、その基板Pを露光光ELで露光する(ステップSB13)。制御装置5は、取得した変形情報に基づいて、露光条件を調整し、その調整された露光条件に基づいて、基板Pを露光する。露光条件の調整は、結像特性調整装置30を用いて投影領域PR1〜PR7を調整することを含む。制御装置5は、取得した基板Pの変形情報に基づいて、パターンの重ね合わせ精度が低下しないように(重ね合わせ誤差が生じないように)、結像特性調整装置30を用いて投影領域PR1〜PR7の位置、大きさ、及び形状の少なくとも一つを調整し、その調整された投影領域PR1〜PR7に照射される露光光ELで基板Pを露光する。
【0098】
以上により、露光シーケンスが終了する(ステップSB14)。
【0099】
以上説明したように、本実施形態においても、スループットの低下を抑制しつつ、露光不良の発生及び不良デバイスの発生を抑制できる。
【0100】
なお、本実施形態においては、露光シーケンスとは異なる導出シーケンスを設け、その導出シーケンスにおいてテスト露光された基板Pのアライメントマーク計測結果に基づいて、相関性(関係式)を導出することとした。そして、導出シーケンスで使用される基板Pは、露光シーケンスで使用されるロット内の基板Pとは異なる基板P、すなわちロット外の基板Pであることとした。露光シーケンスにおいてデバイスを製造するためにロットに含まれる複数の基板Pを順次露光する場合において、ロットの先頭の基板Pを含むロット内の所定数の基板Pを露光し、その露光された複数の基板Pのアライメントマーク計測結果に基づいて、相関性(関係式)を導出することとしてもよい。すなわち、ロットに含まれる複数の基板Pを順次露光する場合において、ロットの先頭を含むロット内の所定数の基板Pのアライメントマーク計測結果から相関性(関係式)を導出し、そのロット内の基板Pであって相関性(関係式)の導出に用いられた基板P以外の基板Pの露光処理において、少ないアライメントマーク計測点数で第2成分を算出し、その第2成分と相関性とに基づいて基板Pの変形情報を取得し、その取得された変形情報に基づいて基板Pを露光することとしてもよい。
【0101】
なお、上述の第1、第2実施形態においては、非線形成分を3次の多項式に展開することとしたが、もちろん、2次の多項式に展開してもよいし、4次の多項式に展開してもよい。その次数は任意である。
【0102】
なお、上述の実施形態の基板Pとしては、ディスプレイデバイス用のガラス基板のみならず、半導体デバイス製造用の半導体ウエハ、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0103】
なお、露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを介した露光光ELで基板Pを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
【0104】
また、本発明は、米国特許第6341007号明細書、米国特許第6208407号明細書、米国特許第6262796号明細書等に開示されているような、複数の基板ステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。
【0105】
また、本発明は、米国特許第6897963号明細書、欧州特許出願公開第1713113号明細書等に開示されているような、基板を保持する基板ステージと、基板を保持せずに、基準マークが形成された基準部材及び/又は各種の光電センサを搭載した計測ステージとを備えた露光装置にも適用することができる。また、複数の基板ステージと計測ステージとを備えた露光装置を採用することができる。
【0106】
露光装置EXの種類としては、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置に限られず、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0107】
なお、上述の各実施形態においては、レーザ干渉計を含む干渉計システムを用いて各ステージの位置情報を計測するものとしたが、これに限らず、例えば各ステージに設けられるスケール(回折格子)を検出するエンコーダシステムを用いてもよい。
【0108】
なお、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6778257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する可変成形マスク(電子マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれる)を用いてもよい。また、非発光型画像表示素子を備える可変成形マスクに代えて、自発光型画像表示素子を含むパターン形成装置を備えるようにしても良い。
【0109】
上述の実施形態の露光装置EXは、各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0110】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図17に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、上述の実施形態に従って、マスクのパターンを用いて露光光で基板を露光すること、及び露光された基板(感光材)を現像することを含む基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。なお、ステップ204では、感光材を現像することで、マスクのパターンに対応する露光パターン層(現像された感光材の層)を形成し、この露光パターン層を介して基板を加工することが含まれる。
【0111】
なお、上述の実施形態及び変形例の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態及び変形例で引用した露光装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0112】
1…マスクステージ、2…基板ステージ、5…制御装置、5R…記憶装置、9…アライメントシステム、EL…露光光、EX…露光装置、P…基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17