特許第5904313号(P5904313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5904313
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】湿気硬化型ウレタン組成物及び被覆材
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/12 20060101AFI20160331BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20160331BHJP
   C09D 175/08 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   C08G18/12
   C08G18/66 A
   C09D175/08
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-551651(P2015-551651)
(86)(22)【出願日】2015年6月23日
(86)【国際出願番号】JP2015067995
【審査請求日】2015年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-186411(P2014-186411)
(32)【優先日】2014年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】船ヶ山 勝也
(72)【発明者】
【氏名】西村 紀夫
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−179777(JP,A)
【文献】 特開2001−181367(JP,A)
【文献】 特開平10−036481(JP,A)
【文献】 特開平09−286837(JP,A)
【文献】 特開平09−278764(JP,A)
【文献】 特開平06−293821(JP,A)
【文献】 米国特許第04176212(US,A)
【文献】 特開2000−072839(JP,A)
【文献】 特開2001−106898(JP,A)
【文献】 特開平09−278864(JP,A)
【文献】 特表平10−513205(JP,A)
【文献】 米国特許第5929190(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00− 18/87
C08L 1/00−101/14
C09D 4/00−201/10
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が500〜5,000の範囲であるポリテトラメチレングリコール(a−1)と数平均分子量が50〜450の範囲である鎖伸長剤(a−2)とポリイソシアネート(a−3)とを反応させて得られるイソシアネート基を有する重量平均分子量が1,000〜20,000の範囲のウレタンプレポリマー(A)、ポリオール(b−1)とポリイソシアネート(b−2)とN−2−ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(b−3)とを反応させて得られるオキサゾリジン基を有するウレタン化合物(B)、及び、酸触媒(C)を含有することを特徴とする湿気硬化型ウレタン組成物。
【請求項2】
前記ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基含有率が、2〜5質量%の範囲である請求項1記載の湿気硬化型ウレタン組成物。
【請求項3】
前記ポリテトラメチレングリコール(a−1)及び前記鎖伸長剤(a−2)が有する水酸基と前記ポリイソシアネート(a−3)が有するイソシアネート基とのモル比(NCO/OH)が、1.1〜2の範囲である請求項1記載の湿気硬化型ウレタン組成物
【請求項4】
前記鎖伸長剤(a−2)が、ジプロピレングリコール及び/又はプロピレングリコールである請求項1記載の湿気硬化型ウレタン組成物。
【請求項5】
前記ポリイソシアネート(a−3)が、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上である請求項1記載の湿気硬化型ウレタン組成物。
【請求項6】
硬化物のJISA6021:2011に準拠して測定した引張強さ(試験時温度23℃)が10N/mm以上であり、かつ破断時の伸び率(試験時温度23℃)が200%以上である請求項1記載の湿気硬化型ウレタン組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の湿気硬化型ウレタン組成物を湿気硬化して得られたことを特徴とする被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水材として有用な湿気硬化型ウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウレタン系材料の高耐久化を目的として、防水材や補強材用樹脂に対する高強度化・高靭性化のニーズが高まっている。特に、防水材ではJISA6021に「高強度形」の規格が制定されたこともあり、産業界ではこの規格を満たす材料開発が盛んに行われている。
【0003】
前記高強度規格を満たす材料としては、例えば、2液系の速硬化型ポリウレタンが開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。前記速硬化型ポリウレタンはスプレー塗布により瞬間硬化するため大面積の施工が容易であるが、大型機械操作が必要である点及び反応が速すぎる点により取扱い性が悪いとの問題点があった。従って、これらの問題のない材料開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−113249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、JISA6021:2011の「表1−屋根用塗膜防水材の性能」中のウレタンゴム系引張性能に規定する試験時温度23℃の高強度形(以下、「高強度形規格」と略記する。)の基準を満たし、かつ、貯蔵安定性に優れ、大型機械による操作を行わなくても簡便に防水材等の被覆材が施工できる材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリテトラメチレングリコール(a−1)と鎖伸長剤(a−2)とポリイソシアネート(a−3)とを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、ポリオール(b−1)とポリイソシアネート(b−2)とN−2−ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(b−3)とを反応させて得られるオキサゾリジン基を有するウレタン化合物(B)、及び、酸触媒(C)を含有することを特徴とする湿気硬化型ウレタン組成物、及び、それを湿気硬化して得られたことを特徴とする被覆材を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の湿気硬化型ウレタン組成物は貯蔵安定性に優れ、鏝塗り等によっても簡便に塗膜を作製でき、大型機械によらなくても施工が可能なものである。また、本発明の湿気硬化型ウレタン組成物を湿気硬化させて得られる硬化物は、高強度形規格を満たすものであるため、高強度性に極めて優れるものであり、また低温時及び高温時でも優れた引張性能を有し、収縮率も少ないものである。従って、本発明の湿気硬化型ウレタン組成物は、土木建築関連の被覆材として好適に使用することができ、防水材として特に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の湿気硬化型ウレタン組成物は、ポリテトラメチレングリコール(a−1)と鎖伸長剤(a−2)とポリイソシアネート(a−3)とを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、ポリオール(b−1)とポリイソシアネート(b−2)とN−2−ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(b−3)とを反応させて得られるオキサゾリジン基を有するウレタン化合物(B)、及び、酸触媒(C)を必須成分として含有するものである。
【0009】
前記ウレタンプレポリマー(A)の原料として用いるポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコール(a−1)を用いることが必須である。前記ポリテトラメチレングリコール(a−1)の代わりに他のポリオールを用いた場合には、高強度形規格(高強度と高伸度の両立)を満たすことができない問題や、貯蔵安定性が不良になる問題がある。通常、強度の高い硬化物を得る場合には、ポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールのような機械的強度の高いポリオールを用いることが一般的であるが、高強度形規格の基準は非常にハードルが高く、これらのポリオールで鋭意検討を行ったものの、前記基準を満たすことができなかった。本発明のように、機械的強度の劣るポリテトラメチレングリコール(a−1)を用いることにより前記基準を満たすことができたのは非常に驚きであった。
【0010】
前記ポリテトラメチレングリコール(a−1)の数平均分子量としては、引張強度及び引張伸度の点から、500〜5,000の範囲が好ましく、800〜3,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリテトラメチレングリコール(a−1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定して得られた値を示す。
【0011】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0012】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0013】
前記ウレタンプレポリマー(A)の原料として用いるポリオールとしては、必要に応じて前記ポリテトラメチレングリコール(a−1)と共にその他のポリオールを併用してもよい。
【0014】
前記その他のポリオールとしては、例えば、前記ポリテトラメチレングリコール(a−1)以外のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオール、ダイマーポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記ポリテトラメチレングリコール(a−1)の使用量としては、引張強度及び引張伸度の点から、前記ウレタンプレポリマー(A)の原料として用いるポリオール中50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0016】
前記鎖伸長剤(a−2)は、高強度形規格を満たし、かつ貯蔵安定性に優れる湿気硬化型ウレタン組成物を得る上で必須の成分である。なお、鎖伸長剤(a−2)を用いることにより、ウレタン基濃度が増加しポリウレタンに海島構造を形成させることで機械的強度の高い硬化物が得られることはポリウレタンの技術分野においては広く知られている。しかしながら、前記ポリテトラメチレングリコール(a−1)と組合せ用いてウレタンプレポリマー(A)を得、更に後述するオキサゾリジン基を有するウレタン化合物(B)と組合せることにより、高強度形規格を満たし、かつ貯蔵安定性に優れる湿気硬化型ウレタン組成物が得られることが分かり、これ以外の態様では高強度形規格を満たすことは非常に困難であった。
【0017】
前記鎖伸長剤(a−2)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環式ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールS、ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ポリオールなどを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、高強度性及び貯蔵安定性をより一層向上できる点から、ジプロピレングリコール及び/又はプロピレングリコールを用いることが好ましい。
【0018】
前記鎖伸長剤(a−2)の数平均分子量は、機械的強度の点から、50〜450の範囲であることが好ましい。なお、前記鎖伸長剤(a−2)の数平均分子量は、前記ポリテトラメチレングリコール(a−1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0019】
前記ポリイソシアネート(a−3)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、高強度性及び貯蔵安定性をより一層向上できる点から、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のポリイソシアネートを用いることがより好ましい。
【0020】
前記ウレタンプレポリマー(A)の製造方法としては、前記ポリテトラメチレングリコール(a−1)及び前記鎖伸長剤(a−2)が有する水酸基と前記ポリイソシアネート(a−3)が有するイソシアネート基とのモル比(NCO/OH)が、好ましくは1.1〜2の範囲、より好ましくは1.2〜1.5の範囲で、前記ポリテトラメチレングリコール(a−1)、前記伸長剤(a−2)及び前記ポリイソシアネート(a−3)を反応させる方法を使用することが高強度性及び貯蔵安定性をより一層向上できる点から好ましい。
【0021】
前記ウレタンプレポリマー(A)はイソシアネート基を有するものであり、そのイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、高強度性及び貯蔵安定性をより一層向上できる点から、2〜5質量%の範囲であることが好ましく、2.5〜3.5質量%の範囲がより好ましい。なお、高強度性を向上する手法としては、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率を高める手法が一般的であるが、イソシアネート基は自身の高活性により後述するウレタン化合物(B)の有するオキサゾリジン基を開環させる作用が強く、使用前に組成物系中で反応が進行してしまい貯蔵安定性が悪化する傾向があることが分かった。
【0022】
前記ウレタンプレポリマー(A)の重量平均分子量としては、硬化速度、接着性、高強度性及び貯蔵安定性をより一層向上できる点から、1,000〜20,000の範囲であることが好ましく、4,000〜8,000の範囲がより好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマー(A)の重量平均分子量は、前記ポリテトラメチレングリコール(a−1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0023】
前記オキサゾリジン基を有するウレタン化合物(B)の原料として用いる前記ポリオール(b−1)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオール、ダイマージオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、作業性及び柔軟性をより一層向上できる点から、ポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。
【0024】
前期ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレンポリオール等を用いることができる。これらのポリエーテルポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記ポリオール(b−1)の数平均分子量としては、作業性及び柔軟性をより一層向上できる点から、500〜5,000の範囲が好ましく、800〜3,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリオール(b−1)の数平均分子量は、前記ポリテトラメチレングリコール(a−1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0026】
前記オキサゾリジン基を有するウレタン化合物(B)の原料として用いる前記ポリイソシアネート(b−2)としては、前記ポリイソシアネート(a−2)と同様のものを用いることができる。
【0027】
前記N−2−ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(b−3)としては、例えば、アルデヒド化合物とジヒドロキシアルキルアミン化合物とを反応させて得られたものを用いることができる。
【0028】
前記アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記ジヒドロキシアルキルアミン化合物としては、例えば、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記ウレタン化合物(B)は、前記ポリオール(b−1)、前記ポリイソシアネート(b−2)及び前記N−2−ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(b−3)を公知の方法で反応させたものであり、そのオキサゾリジン基の数としては、低温時及び高温時の引張性能並びに作業性の点から、1〜4の範囲であることが好ましく、1〜3の範囲がより好ましい。
【0031】
前記ウレタン化合物(B)の数平均分子量としては、基材への接着性及び硬化速度をより一層向上できる点から、500〜15,000の範囲であることが好ましい。なお、前記ウレタン化合物(B)の数平均分子量は、前記ポリテトラメチレングリコール(a−1)と同様に測定した値を示す。
【0032】
前記ウレタン化合物(B)の使用量としては、低温時及び高温時での引張性能、硬化速度、基材への接着性、高強度性並びに貯蔵安定性をより一層向上できる点から、前記ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、10〜100質量部の範囲であることが好ましく、30〜50質量部の範囲がより好ましい。
【0033】
前記酸触媒(C)は、前記ウレタン化合物(B)が有するオキサゾリジン基の解離を促進するものであり、例えば、硫酸、塩酸、燐酸、炭酸、アルキルベンゼンスルホン酸、安息香酸、サリチル酸、蟻酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸等の有機酸又は無機酸;それらの塩などを用いることができる。これらの酸触媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硬化性がより一層向上する点から、燐酸、サリチル酸及び燐酸塩からなる群より選ばれる1種以上の酸触媒を用いることが好ましい。
【0034】
前記酸触媒(C)の使用量としては、硬化性の点から、前記ウレタン化合物(B)100質量部に対して、0.01〜1質量部の範囲であることが好ましい。
【0035】
本発明の湿気硬化型ウレタン組成物は、前記ウレタンプレポリマー(A)、前記ウレタン化合物(B)、及び、前記酸触媒(C)を必須成分として含有するものであるが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0036】
前記その他の添加剤としては、例えば、有機溶剤、可塑剤、充填剤、顔料、チキソ性付与剤、プロセスオイル、紫外線防止剤、補強材、骨材、硬化促進剤、難燃剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記有機溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン等を用いることができる。これらの有機溶剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記有機溶剤を用いる場合の使用量としては、湿気硬化型ウレタン組成物中0.5〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0038】
前記可塑剤としては、例えば、2−エチルヘキシルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジオクチルアゼレート、ジオクチルセバケート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等を用いることができる。これらの可塑剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記可塑剤を用いる場合の使用量としては、湿気硬化型ウレタン組成物中1〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0039】
前記充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、クレー、タルク、酸化チタン、硫酸アルミニウム、カオリン、硅そう土、ガラスバルーン等を用いることができる。これらの充填剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記充填剤を用いる場合の使用量としては、湿気硬化型ウレタン組成物中1〜40質量%の範囲であることが好ましい。
【0040】
本発明の湿気硬化型ウレタン組成物は貯蔵安定性に優れ、鏝塗り等によっても簡便に塗膜を作製でき、大型機械によらなくても施工が可能なものである。また、本発明の湿気硬化型ウレタン組成物を湿気硬化させて得られる硬化物は、高強度形規格を満たすものであるため、高強度性に極めて優れるものであり、また低温時及び高温時でも優れた引張物性を有し、収縮率も少ないものである。従って、本発明の湿気硬化型ウレタン組成物は、土木建築関連の被覆材として好適に使用することができ、防水材として特に好適に使用することができる。
【0041】
本発明の湿気硬化型ウレタン組成物を土木建築関連の被覆材として用いる場合に塗布する基材(下地材)としては、コンクリート、アスファルト、モルタル等の無機質基材;金属、木材、布帛、プラスチックなどを用いることができる。また、塗布する際の厚さは、用途に応じて適宜決定されるが、例えば、0.1〜10mmの範囲である。
【0042】
前記湿気硬化型ウレタン組成物は、湿気により硬化し硬化物を得る。前記湿気硬化させる方法としては、例えば、25℃、湿度50%の条件下で5〜10日間養生させる方法が挙げられる。
【0043】
前記方法により得られる硬化物は、高強度形規格を満たすものであり、すなわち試験時温度23℃における引張り強さが10N/mm以上であり、かつ温度23℃における破断時の伸び率が200%以上である。また、前記方法により得られる硬化物は、JISA6021:2011に準拠して測定した破断時のつかみ間伸び率(試験時温度23℃)が、300%以上であることが好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0045】
[合成例1]ウレタンプレポリマー(A−1)の合成
ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量;1,000、以下、「PTMG1000」と略記する。)1,000質量部、ジプロピレングリコール(以下、「DPG」と略記する。)を297質量部を混合し、そこへトリレンジイソシアネート(以下、「TDI」と略記する。)を661質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;2.5質量%、重量平均分子量;6,080のウレタンプレポリマー(A−1)を得た。
【0046】
[合成例2]ウレタンプレポリマー(A−2)の合成
PTMG1000を1,000質量部、DPGを201質量部を混合し、そこへTDIを557質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;3.4質量%、重量平均分子量;5,200のウレタンプレポリマー(A−2)を得た。
【0047】
[合成例3]ウレタンプレポリマー(A−3)の合成
ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量;2,000、以下、「PTMG2000」と略記する。)2,000質量部、DPGを282質量部を混合し、そこへTDIを685質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;2.4質量%、重量平均分子量;8,190のウレタンプレポリマー(A−3)を得た。
【0048】
[合成例4]ウレタンプレポリマー(A−4)の合成
PTMG1000を1,000質量部、プロピレングリコール(以下、「PG」と略記する。)を114質量部を混合し、そこへTDIを557質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;3.5質量%、重量平均分子量;4,155のウレタンプレポリマー(A−4)を得た。
【0049】
[合成例5]ウレタンプレポリマー(A−5)の合成
ポリプロピレングリコール(数平均分子量;3,000、以下、「PPG3000」と略記する。)640質量部、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル(日油株式会社製「ユニオールTG−3000」、以下、「TG−3000」と略記する。)60質量部を混合し、そこへTDIを88質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;3.1質量%、重量平均分子量;5,120のウレタンプレポリマー(A−5)を得た。
【0050】
[合成例6]ウレタンプレポリマー(A−6)の合成
ポリプロピレングリコール(数平均分子量;1,000、以下、「PPG1000」と略記する。)1,000質量部を容器に入れ、そこへTDIを392質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;7.6質量%のウレタンプレポリマー(A−6)を得た。
【0051】
[合成例7]ウレタンプレポリマー(A−7)の合成
PTMG1000を1,000質量部を容器に入れ、そこへTDIを296質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;4.5質量%、重量平均分子量;3,890のウレタンプレポリマー(A−7)を得た。
【0052】
[合成例8]ウレタンプレポリマー(A−8)の合成
PTMG1000を1,000質量部を容器に入れ、そこへTDIを392質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;7.2質量%、重量平均分子量;2,120のウレタンプレポリマー(A−8)を得た。
【0053】
[合成例9]ウレタンプレポリマー(A−9)の合成
PPG1000を1,000質量部、DPGを167質量部を混合し、そこへTDIを664質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;7.2質量%、重量平均分子量;2,685のウレタンプレポリマー(A−9)を得た。
【0054】
[合成例10]ウレタンプレポリマー(A−10)の合成
セバシン酸とビスフェノールAのエチレンオキサイド6モル付加物とを反応させて得られたポリエステルポリオール(数平均分子量;1,250、以下、「PEs−1」と略記する。)1,250質量部を容器に入れ、そこへTDIを331質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;4.8質量%、重量平均分子量;3,505のウレタンプレポリマー(A−10)を得た。
【0055】
[合成例11]ウレタンプレポリマー(A−11)の合成
ダイマー酸と2-メチルペンタンジオールとを反応させて得られたポリエステルポリオール(数平均分子量;2,000、以下、「PEs−2」と略記する。)2,000質量部を容器に入れ、そこへTDIを383質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;4.2質量%、重量平均分子量;4,170のウレタンプレポリマー(A−11)を得た。
【0056】
[合成例12]ウレタンプレポリマー(A−12)の合成
PEs−1を1,250質量部、DPGを297質量部入れ混合し、そこへTDIを661質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;2.2質量%、重量平均分子量;6,830のウレタンプレポリマー(A−12)を得た。
【0057】
[合成例13]ウレタン化合物(B−1)の合成
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量;1,000、オキシエチレン構造の含有量;20質量%、以下、「EOPO」と略記する。)を100質量部、TDIを80質量部を反応させ、NCO%;16.8質量%のウレタンプレポリマーを得た。次いで、キシレンを40質量部加えて撹拌しながら、N−2−イソプロピル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−オキサゾリジン(以下、「OXZ−1」と略記する。)を114.5質量部を発熱を抑えながらゆっくり滴下した。発熱が収まったのを確認した後、70℃にて8時間撹拌させ、オキサゾリジン基を有するウレタン化合物(B−1)を得た。
【0058】
[実施例1〜4、比較例1〜8]
密閉した混合容器内で所定量のウレタンプレポリマー(A)とウレタン化合物(B)、更に予め乾燥した炭酸カルシウム(日東粉化製「NS−200」)400質量部、2−エチルヘキシルフタレート50質量部、キシレン50質量部、及び、サリチル酸0.4質量部を均一に混合して湿気硬化型ウレタン組成物を得た。配合表及び試験結果を表1〜2に示す。
【0059】
[貯蔵安定性の評価方法]
500g角缶に実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ウレタン組成物を400g入れた後に、窒素を封入して密栓した状態で50℃にて1週間放置した。放置前後の粘度を測定し、粘度変化が2倍以下であるものを「T」、2倍を超えるものを「F」と評価した。
【0060】
[引張性能試験方法]
JISA6021:2011「6.6.1 23℃における引張性能試験」に準拠して引張試験を行い、引張強さ(N/mm)、破断時の伸び率(%)及び破断時のつかみ間の伸び率(%)を測定した。なお、引張強さが10N/mm以上であり、かつ破断時の伸び率が200%以上であるものは「T」、それ以外のものは「F」と評価した。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
本発明の湿気硬化型ウレタン組成物である実施例1〜4は、高強度形規格の基準を満たし、かつ、貯蔵安定性にも優れることが分かった。
【0064】
一方、比較例1及び2は、鎖伸長剤(a−2)を用いず、ポリテトラメチレングリコール(a−1)の代わりに、ポリプロピレングリコールをポリオールの主成分として用いた態様であるが、いずれも高強度形規格の基準を満たすことができず、NCO%の高い比較例2は貯蔵安定性も不良であった。
【0065】
比較例3及び4は、鎖伸長剤(a−2)を用いない態様であるが、いずれも高強度形規格の基準を満たすことができず、NCO%の高い比較例4は貯蔵安定性も不良であった。
【0066】
比較例5は、ポリテトラメチレングリコール(a−1)の代わりに、ポリプロピレングリコールを用いた態様であるが、高強度形規格の基準を満たすことができなかった。
【0067】
比較例6及び7は、鎖伸長剤(a−2)を用いず、ポリテトラメチレングリコール(a−1)の代わりに、ポリエステルポリオールを用いた態様であるが、いずれも高強度形規格の基準を満たすことができなかった。
【0068】
比較例8は、ポリテトラメチレングリコール(a−1)の代わりに、ポリエステルポリオールを用いた態様であるが、高強度形規格の基準を満たすことができなかった。
【要約】
本発明が解決しようとする課題は、JISA6021:2011の「表1−屋根用塗膜防水材の性能」中のウレタンゴム系引張性能に規定する試験時温度23℃の高強度形の基準を満たし、かつ、貯蔵安定性に優れ、大型機械による操作を行わなくても簡便に防水材等の被覆材が施工できる材料を提供することである。ポリテトラメチレングリコール(a−1)と鎖伸長剤(a−2)とポリイソシアネート(a−3)とを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、ポリオール(b−1)とポリイソシアネート(b−2)とN−2−ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(b−3)とを反応させて得られるオキサゾリジン基を有するウレタン化合物(B)、及び、酸触媒(C)を含有することを特徴とする湿気硬化型ウレタン組成物。