特許第5904543号(P5904543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5904543コンバージョン反応により充放電を行うリチウム二次電池用活物質、該活物質を用いたリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904543
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】コンバージョン反応により充放電を行うリチウム二次電池用活物質、該活物質を用いたリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/485 20100101AFI20160331BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20160331BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20160331BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20160331BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20160331BHJP
【FI】
   H01M4/485
   H01M4/48
   H01M4/36 E
   H01M4/525
   H01M4/505
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-135583(P2012-135583)
(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公開番号】特開2014-2847(P2014-2847A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2014年12月11日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発/次世代技術開発/液相マイクロ波プロセスによる次世代高容量活物質の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】木嶋 倫人
(72)【発明者】
【氏名】石崎 晴朗
(72)【発明者】
【氏名】吉永 昌史
(72)【発明者】
【氏名】秋本 順二
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−028264(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/061825(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/131709(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/053553(WO,A1)
【文献】 特開2013−80658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/485
H01M 4/36
H01M 4/48
H01M 4/505
H01M 4/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバージョン反応により充放電を行う非水系リチウム二次電池用活物質であって、金属酸リチウム化合物と金属不完全酸化物の混合物、又は、金属不完全酸化物のリチウム化合物を主要成分とし、前記金属酸リチウム化合物が、LiFeO2、Li5FeO4、Li2CuO2、Li2TiO3、LiVO3、Li2MnO3から選択されるものであり、前記金属不完全酸化物が、Fe34、FeO、Cu2O、Ti23、TiO、VO2、V23、VO、Mn23、Mn34、MnOから選択されるものであり、前記金属不完全酸化物のリチウム化合物が、LiCuO、LiTi24、LiV25、LiMn24から選択されるものである非水系リチウム二次電池用活物質。
【請求項2】
コンバージョン反応により充放電を行う非水系リチウム二次電池用活物質であって、その初回リチウム挿入処理前の主要成分が、金属酸リチウム化合物と金属不完全酸化物の混合物、又は、金属不完全酸化物のリチウム化合物であり、前記金属酸リチウム化合物が、LiFeO2、Li5FeO4、Li2CuO2、Li2TiO3、LiVO3、Li2MnO3から選択されるものであり、前記金属不完全酸化物が、Fe34、FeO、Cu2O、Ti23、TiO、VO2、V23、VO、Mn23、Mn34、MnOから選択されるものであり、前記金属不完全酸化物のリチウム化合物が、LiCuO、LiTi24、LiV25、LiMn24から選択されるものである、非水系リチウム二次電池用活物質。
【請求項3】
コンバージョン反応により充放電を行う非水系リチウム二次電池用活物質の製造方法であって、金属酸リチウム化合物と金属不完全酸化物の混合物、又は、金属不完全酸化物のリチウム化合物に対して、初回リチウム挿入処理、又は、初回リチウム挿入処理及び初回リチウム脱離処理を行うことを特徴とし、前記金属酸リチウム化合物が、LiFeO2、Li5FeO4、Li2CuO2、Li2TiO3、LiVO3、Li2MnO3から選択されるものであり、前記金属不完全酸化物が、Fe34、FeO、Cu2O、Ti23、TiO、VO2、V23、VO、Mn23、Mn34、MnOから選択されるものであり、前記金属不完全酸化物のリチウム化合物が、LiCuO、LiTi24、LiV25、LiMn24から選択されるものである非水系リチウム二次電池用活物質の製造方法
【請求項4】
前記金属酸リチウム化合物が鉄酸リチウム(リチウムフェライト:LiFeO2)、金属不完全酸化物がマグネタイト(Fe34)、前記金属不完全酸化物のリチウム化合物が銅(I)酸リチウム(LiCuO)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の非水系リチウム二次電池用活物質。
【請求項5】
請求項1、2、4のいずれか1項に記載の非水系二次電池用活物質を含む電極。
【請求項6】
請求項5に記載の電極を正極又は負極として具備する非水系リチウム二次電池。
【請求項7】
請求項6に記載の非水系リチウム二次電池を具備する電子機器、車輌、又は、電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバージョン反応により充放電を行う非水系リチウム二次電池用活物質、該活物質を含む電極、及び、該電極を具備する非水系リチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池その他の二次電池は、車両搭載用電源、家庭用蓄電システム、或いは携帯型情報家電などの電源としての重要性が高まっている。リチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池は水の電気分解電圧以上の高い電圧が得られ、特に、リチウムイオン二次電池は軽量で高エネルギー密度が得られることから大きく期待されている。その一方でリチウムイオン二次電池に欠かせないリチウム(Li)よりも、資源的に豊富なナトリウム(Na)に代えたナトリウムイオン二次電池、リチウムよりも電気容量的に有利なカルシウム(Ca)に代えたカルシウムイオン二次電池などの非水系二次電池の研究も始まっている。
【0003】
これら非水系二次電池では、金属陽イオンが正極と負極との間を行き来することによって、すなわちリチウムイオン二次電池ではLiイオンが正極と負極との間を行き来することによって、充電および放電が行われている。リチウムイオン二次電池に関する従来技術として例えば特許文献1,2等が開示されている。リチウムイオン二次電池の典型的な構成は、Liイオンを可逆的に吸蔵および放出し得る電極活物質が電極集電体の上に形成された電極を備えたものである。リチウムイオン二次電池では現在、負極用の活物質としてはグラファイトが広く用いられている。しかし、グラファイトでは炭素原子6個当たり1個のリチウムがインターカレートする(活物質の層間にLiが出入りする)ため、その充放電容量には372mAh/gという理論上の限界がある。
【0004】
そこで、グラファイト以上の充放電容量を実現し得る負極活物質が種々検討されている。かかる負極活物質の一例として、Fe23等の金属酸化物が挙げられる。これらの金属酸化物は、グラファイトに代表されるインターカーレーション(活物質の層間にLiが出入りする)材料とは異なり、コンバージョン型の充放電反応(酸化物とLiイオン間の酸化還元反応)を行うと言われている。例えば金属酸化物のうちFe23の場合、充電時にLiイオンを吸蔵すると還元を伴って分解し、鉄(Fe)と酸化リチウム(Li2O)が生成する。また、放電時にLiイオンが脱離すると鉄系酸化物(Fe23)が再生する。充放電の反応式で表すと、以下のようになる。

Fe23+6Li++6e- ⇔ 2Fe+3Li2

このようなコンバージョン型の反応は種々の酸化物で起こりうることが報告されているが、鉄はその資源量の豊かさから特に注目を集めている。
【0005】
しかし、Fe23等の酸化物系負極活物質は、従来のグラファイト系活物質と比較して、初回充放電の充放電効率が悪い、すなわち、最初の充電で負極にリチウムを挿入し、次いで放電でリチウムを取り出そうとしたとき、挿入量に対する放出量が低いという問題がある。金属酸化物系負極に限らず、このように充放電効率が100%に達しないということは、その分、余分に正極活物質が必要になり、その正極活物質も完全放電時に元来戻ってくるべき量のリチウムが戻らないので不安定な状態になっており、電池の安全性を損なう危険性が高くなる。
【0006】
このような問題を解決する手法、すなわち初回充放電効率を改善する手法としては、リチウムをドープする方法がよく知られている。例えば、特許文献3などでは集電体と活物質層の間、または活物質層内に金属リチウムを直接混在させることで、不可逆容量となって失われる分のリチウムを補うというものである。しかしながら、金属リチウムは二酸化炭素や酸素や水分と反応するのみならず、一般的には不活性といわれている窒素とも反応することが知られている。従って、このような電極は活物質を含む合剤を調整する段階からアルゴンなどの不活性ガス雰囲気内で行う必要があり、当然、その塗工や乾燥、プレス、裁断、電池の組み立てなど全ての段階を不活性ガス中で行う必要があり、実用的とは言いがたい。
【0007】
また、特許文献4などでは、作成した電極に金属リチウムなどを対極にして電気化学的にリチウムをドープしてから電池を組むことを提案している。リチウム・ドープを行った電極は化学的に活性になるため、上述したようにアルゴンなどの不活性ガス雰囲気内で行う必要があるので、電極のジャンボ・ロール(多くの場合、幅数十センチメートル、長さ数百メートル)のまま行うことは上述の金属リチウム片を加えた電極の場合と同様に扱いが悪くなることから現実的ではなく、電池に組み込む直前のシート電極(多くの場合、幅数センチメートル、長さ数十センチメートル)で行うにしてもシート毎に電気化学的処理を行うので時間が掛かることは否めない。
【0008】
また、特許文献5などでは従来と同様に電極を作成し、電池に組み込む際に金属リチウム片を加えて不可逆容量となって失われる分のリチウムを補うというものである。この方法では電池組立前までの工程は空気中で行うことが出来るものの、組立は金属リチウムを用いるのでアルゴンなどの不活性ガス雰囲気内で行う必要があり、また、金属リチウムを正極活物質層または負極活物質層に行き渡らせるために電気化学的処理を行う必要があり、さらには局在化している金属リチウムをリチウムイオンとして電池全体に均一に行き渡らせる必要があるが、そのためにはその電気化学的処理は時間も回数も掛けた方が良いことは想像に難くない。
【0009】
その他にも、負極活物質もしくは負極電極をn-ブチルリチウムや臭化リチウムなどで処理する化学的リチウム・ドープなどが提案されているが、これらリチウム・プレドープ法は、それが化学的手法か上述した電気的・機械的・物理的手法かに関係なく、還元されたリチウムを負極電極中に混在させることになるので、アルゴン雰囲気などの不活性雰囲気中で取り扱う必要があり、ハンドリング性が悪化し、実用的ではない。
【0010】
また、特許文献6に代表される技術、すなわち正極・負極とも穴の開いた集電体を用い、該集電体からなる電極を積層し、その積層体の所々にリチウム金属箔を挟み、該リチウム金属と負極電極の間でショートまたは通電させることで、負極で起こり得る初期不可逆容量すなわち低い充放電効率分のリチウムを予め負極に挿入する技術は、上述してきたように活性な金属リチウムを用いるのでアルゴンなどの不活性ガス雰囲気内で電池を組み立てる必要があり、またリチウムを電極にドープするという手間がかかることは言うまでもない。
【0011】
さらには、この初回充放電効率の問題を解決する全く別の手法として、特許文献7が提案されている。これは活物質の結晶子サイズが小さくなることで化学反応が起こり易くなることに着目し、初回充放電効率を改善するもので、リチウム・プレドープを利用しない手法であることから、電池製造時の取り扱い性を損なうことがない点で注目に値する。しかしながら、その原理から推しても判るように初回充放電効率を100%にする可能性が低いことは想像に難くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−228195号公報
【特許文献2】特開平8−055624号公報
【特許文献3】特開2012−009209号公報
【特許文献4】特開2008−004466号公報
【特許文献5】特開平09−293512号公報
【特許文献6】特開2009−199963号公報
【特許文献7】特開2011−29139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
充放電の際にコンバージョン型反応を行うFe23等の酸化物系活物質は、従来のグラファイト系活物質と比較して、初回の充放電効率が低い、すなわち、最初の充電でリチウムを挿入し、次いで放電でリチウムを取り出そうとしたとき、挿入量に対して放出量が小さいという問題がある。上述したように、この解決手法として電極へのリチウム・プレドープが検討されてきたが、従来の手法は安全性・作業性を損なう危険性がある。
そこで本発明は、コンバージョン反応により充放電を行う非水系リチウム二次電池において、安全性・作業性を損なうことなしにリチウムをプレドープ(初回リチウム挿入処理)することができ、該電池の初回充放電効率を良好とすることのできる活物質を提供することを課題とする。
また、本発明の別の課題は、コンバージョン反応により充放電を行う電極や非水系リチウム二次電池であって、初回充放電効率が良好な電極や非水系リチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、電極活物質として金属酸化物を用いた電極の初回充放電効率を改善するため鋭意検討を重ねた結果、金属酸化物として、金属酸リチウム化合物と金属不完全酸化物の混合物を用いるか、または金属不完全酸化物のリチウム化合物を用いることにより、反応式上、初回リチウム挿入量以上のリチウムを放電時に放出し得ることに着目し、このような反応によれば、安全性や作業性を損なうことなく初回充放電効率を改善することができるとの知見に到達し、さらに、各種の試験研究において、充放電効率を改善することに成功し、前記知見が実際上も妥当性を有することを確認した。
【0015】
本発明はそのような知見や試験研究に基づいてなされたものであり、本発明により提供される非水系リチウム二次電池は、正極および負極の各電極と電解質とを備えた非水系二次電池であって、上記電極の少なくとも一方は、電極活物質として充放電の際にコンバージョン反応を行う金属酸化物を主要構成要素とする。そして、上記金属酸化物として、金属酸リチウム化合物と金属不完全酸化物の混合物を用いるか、金属不完全酸化物のリチウム化合物を用いることを特徴とする。
【0016】
例えば、負極活物質に金属酸リチウム化合物のみを用いた場合、その例として鉄酸リチウム(LiFeO2)を挙げると、その初回充電(リチウム挿入)に伴う反応は、以下のように考えられる。

2LiFeO2+6Li++6e- ⇒ 2Fe+4Li2

すなわち、LiFeO2 2当量に対して6当量のリチウムが反応し、鉄(Fe)2当量と酸化リチウム(Li2O)4当量に分解される。続く放電(リチウム放出)およびその後の充放電ではLiFeO2に戻る反応と、それとは別に酸化鉄(Fe23)に戻る反応が考えられる。

⇔ 2LiFeO2+6Li++6e-
または、
⇔ Fe23+Li2O+6Li++6e-

どちらの放電過程を取ろうとも、単に鉄酸リチウムだけでは6当量のリチウムが反応に関与するだけであり、放電後にも酸化状態のリチウムが電極中に残存しており、それを放出できれば充放電効率の向上に繋がるものと考えられる。
【0017】
また、負極の電極活物質に金属不完全酸化物のみを用いた場合、その例としてマグネタイト(Fe34)を挙げると、その初回充電に伴う反応は、以下のように考えられる。

Fe34+8Li++8e- ⇒ 3Fe+4Li2

すなわち、Fe34 1当量に対して8当量のリチウムが反応し、鉄(Fe)3当量と酸化リチウム(Li2O)4当量に分解される。続く放電(リチウム放出)およびその後の充放電ではFe34に戻る反応や、それとは別に酸化鉄(Fe23)に戻る反応などが考えられる。

⇔ Fe34+8Li++8e-
または、
⇔ Fe23+Fe+Li2O+6Li++6e-
または、
⇔ Fe23+FeO+8Li++8e-
【0018】
マグネタイトの場合も、いずれの反応が起きているかは判らないが、鉄は3価が安定な酸化状態であることから推して、いずれの場合もまだ酸化される余地のあることは明らかであり、十分な量の酸化リチウム(Li2O)が存在すれば、放電の際にその酸素と鉄が反応し、Fe23となり、リチウムを放出できる可能性がある。
これらのことから、リチウム化合物と金属不完全酸化物を混合した場合、上述の鉄酸リチウム(LiFeO2)とマグネタイト(Fe34)を例に挙げると、その初回充電(リチウム挿入)に伴う反応は、以下のように考えられる。

LiFeO2+Fe34+11Li++11e- ⇒ 4(Fe)+6Li2

すなわち、LiFeO2およびFe34 1当量に対して最初の充電(リチウム挿入)では11当量のリチウムが挿入され、4当量の鉄(Fe)と6当量の酸化リチウム(Li2O)に分解される。続く放電(リチウム放出)およびその後の充放電ではLiFeO2とFe34に戻る反応と、それとは別に酸化鉄(Fe23)に戻る反応が考えられる。

⇔ LiFeO2+Fe34+11Li++11e-
または、
⇔ 2Fe23+12Li++12e-

この場合も、鉄は3価が安定な酸化状態であることから推して、Fe23が生成する可能性は否めない。そして、このFe23に戻る反応が起きたとすると、初回充電(リチウム挿入)では11当量のリチウムしか使われないが、その後の放電では12当量のリチウムが放出されることになる。すなわち、リチウム 1当量分の充放電効率が改善される可能性があり、従来にないリチウム・プレドープ法と言える。また、この充放電効率の改善は、完全酸化のリチウム化合物と金属不完全酸化物を単独で用いた場合には期待できないことは上述したとおりである。
【0019】
また、金属不完全酸化物のリチウム化合物を用いる場合も同様で、例えば銅(I)酸リチウム(LiCuO)を例に挙げると、初回充電(リチウム挿入)に伴う反応は、以下のように考えられる。

LiCuO+Li++e- ⇒ Cu+Li2

そして、続く放電(リチウム放出)およびその後の充放電では、やはり元の原料化合物に戻る反応と、より安定な酸化状態である銅(II)に戻る反応が考えられる。

⇔ CuO+2Li++2e-

このCuOに戻る反応が起きるとすると、初回充電(リチウム挿入)では1当量のリチウムしか使われないが、その後の放電では2当量のリチウムが戻ってくることになる。すなわち、リチウム 1当量分の充放電効率が改善される可能性があり、原理的には上述としたものと同じことだが、これもまた新たなるリチウム・プレドープ法と言える。
すなわち、本発明はコンバージョン反応を起こす金属酸化物を電極活物質とし、該電極活物質に金属酸リチウム化合物と金属不完全酸化物の混合物を用いるか、金属不完全酸化物のリチウム化合物を用いることにより、初回充電(リチウム挿入)に必要なリチウム以上の量のリチウムを取り出せる可能性があることに着目し、充放電効率を改善しようとしたものである。
【0020】
以上のような本発明をまとめると、次のような構成を具備するものと言える。
(1)コンバージョン反応により充放電を行う非水系リチウム二次電池用活物質であって、金属酸リチウム化合物と金属不完全酸化物の混合物、又は、金属不完全酸化物のリチウム化合物を主要成分とし、前記金属酸リチウム化合物が、LiFeO2、Li5FeO4、Li2CuO2、Li2TiO3、LiVO3、Li2MnO3から選択されるものであり、前記金属不完全酸化物が、Fe34、FeO、Cu2O、Ti23、TiO、VO2、V23、VO、Mn23、Mn34、MnOから選択されるものであり、前記金属不完全酸化物のリチウム化合物が、LiCuO、LiTi24、LiV25、LiMn24から選択されるものである非水系リチウム二次電池用活物質。
(2)コンバージョン反応により充放電を行う非水系リチウム二次電池用活物質であって、その初回リチウム挿入処理前の主要成分が、金属酸リチウム化合物と金属不完全酸化物の混合物、又は、金属不完全酸化物のリチウム化合物であり、前記金属酸リチウム化合物が、LiFeO2、Li5FeO4、Li2CuO2、Li2TiO3、LiVO3、Li2MnO3から選択されるものであり、前記金属不完全酸化物が、Fe34、FeO、Cu2O、Ti23、TiO、VO2、V23、VO、Mn23、Mn34、MnOから選択されるものであり、前記金属不完全酸化物のリチウム化合物が、LiCuO、LiTi24、LiV25、LiMn24から選択されるものである、非水系リチウム二次電池用活物質。
(3)コンバージョン反応により充放電を行う非水系リチウム二次電池用活物質の製造方法であって、金属酸リチウム化合物と金属不完全酸化物の混合物、又は、金属不完全酸化物のリチウム化合物に対して、初回リチウム挿入処理、又は、初回リチウム挿入処理及び初回リチウム脱離処理を行うことを特徴とし、前記金属酸リチウム化合物が、LiFeO2、Li5FeO4、Li2CuO2、Li2TiO3、LiVO3、Li2MnO3から選択されるものであり、前記金属不完全酸化物が、Fe34、FeO、Cu2O、Ti23、TiO、VO2、V23、VO、Mn23、Mn34、MnOから選択されるものであり、前記金属不完全酸化物のリチウム化合物が、LiCuO、LiTi24、LiV25、LiMn24から選択されるものである非水系リチウム二次電池用活物質の製造方法
(4)前記金属酸リチウム化合物が鉄酸リチウム(リチウムフェライト:LiFeO2)、金属不完全酸化物がマグネタイト(Fe34)、前記金属不完全酸化物のリチウム化合物が銅(I)酸リチウム(LiCuO)であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の非水系リチウム二次電池用活物質。
(5)上記(1)、(2)、(4)のいずれか1項に記載の非水系二次電池用活物質を含む電極。
(6)上記(5)に記載の電極を正極又は負極として具備する非水系リチウム二次電池。
(7)上記(6)に記載の非水系リチウム二次電池を具備する電子機器、車輌、又は、電源装置。
【0021】
なお、本発明において、「金属不完全酸化物」、「金属不完全酸化物のリチウム化合物」、「金属酸リチウム化合物」は、それぞれ、次のように定義される。
「金属不完全酸化物」とは、金属の酸化物のうち、室温大気下において該金属の最も安定な酸化物となる価数(以下、「安定価数」という。)に応じた化学量論組成より酸素含有量が少ない方向にずれたリチウム以外の金属の酸化物をいう。
「金属不完全酸化物のリチウム化合物」とは、該金属の前記安定価数とリチウムの価数(=1)との両方に応じた化学量論組成より酸素含有量が少ない方向にずれた前記金属とリチウムの酸化物をいう。
「金属酸リチウム化合物」とは、該金属の前記安定価数とリチウムの価数(=1)との両方に応じた化学量論組成の酸素含有量を有する金属とリチウムの酸化物をいう。
【0022】
また、本発明の活物質に対する「初回リチウム挿入処理」は、該活物質を負極に用いる場合にはその電池の初回充電時に、該活物質を正極に用いる場合にはその電池の初回放電時に、それぞれなされることになる。
【発明の効果】
【0023】
コンバージョン反応により充放電を行う非水系二次電池において、その活物質として、金属酸リチウム化合物と金属不完全酸化物の混合物、又は、金属不完全酸化物のリチウム化合物を用いることにより、安全性、作業性を損なうことなく、初回充電効率を高めることができる。したがって、該活物質を含む電極や、該電極を含む該非水系二次電池を充放電効率の良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】液系円筒型電池の構造を示す図である。
図2】評価用コイン電池の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明にかかわる非水系リチウム二次電池は、上述したように、その活物質に金属酸リチウム化合物と金属不完全酸化物の混合物を用いるか、または金属不完全酸化物のリチウム化合物を用いることを特徴としている。
ここで、金属不完全酸化物の金属としては、例えば、Fe、Cu、Ti、V、Mn、Nb、Mo等の遷移金属(第3族〜第11族元素)、Mg、Ca等の第2族の典型金属、Sn、Pb等の第12〜第15族の典型金属などが挙げられる。
金属元素ごとに、安定価数、金属不完全酸化物の例を挙げると、次のようになる。
Fe(3価):Fe34、FeO;Cu(2価):Cu2O;Ti(4価):Ti23、TiO;V(5価):VO2、V23、VO;Mn(4価):Mn23、Mn34、MnO
また、「金属不完全酸化物のリチウム化合物」としては、例えば、LiCuO、LiTi24、LiV25、LiMn24等が挙げられる。
また、「金属酸リチウム化合物」としては、例えば、LiFeO2、Li5FeO4、Li2CuO2、Li2TiO3、LiVO3、Li2MnO3等が挙げられる。
【0026】
本発明の非水系リチウム2次電池は、このような活物質を除いて、通常の非水系リチウム2次電池やリチウムイオン二次電池と特に異なる点がある訳ではない。
すなわち、該活物質を負極活物質として用いる場合、正極には一般式LiMxOy(M、x、yは、それぞれ金属の種類、金属の組成比、酸素の組成比を表す)で表される金属酸リチウム化合物やリン酸鉄リチウム化合物等の正極活物質と、導電性を増すためにアセチレンブラック等の導電剤とを、ポリフッ化ビニリデン等の結着剤と共に分散し、アルミニウム箔等の導電性の基板に薄膜状に塗布し乾燥して形成する。この塗布は必要に応じて基板の両面に行なってもよい。また、所望の密度を得るために、プレスを行なってもよい。
【0027】
また、該活物質を負極活物質として用いる場合、負極には上述の金属酸リチウム化合物と不完全酸化物の混合物を用いるか、または不完全酸化物のリチウム化合物を用いること以外、特に異なる点がある訳ではない。すなわち、該活物質を、導電性を増すためにアセチレンブラック等の導電剤と、ポリフッ化ビニリデンやスチレン−ブタジエン・ゴム等の結着剤と共に分散し、銅箔等の導電性の基板に薄膜状に塗布し乾燥して形成する。正極と同様に、この塗布も必要に応じて基板の両面に行なってもよいし、また、所望の密度を得るために、プレスを行なってもよい。
【0028】
また、該活物質を用いた電極の対極の活物質に、より卑なる物質、すなわちリチウム金属やリチウム合金などを用いた場合、この電極は正極として作用する。すなわち、酸化物系活物質の対リチウム電位が+1V前後であることから高電圧電池を構成することはできないが、高容量電池の材料として使用することは可能である。
【0029】
これら活物質を用いた電極の用途としては、リチウムイオン二次電池などの非水系液系二次電池や、非水系ポリマー電池、固体電解質二次電池等に用いることが出来る。非水系液系二次電池とは、六フッ化リン酸リチウム、過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム等のリチウム塩を、エチレンカーボネートやエチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの溶媒に溶解した電解液を用いたものである。また、非水系ポリマー電池とは上述のリチウム塩と溶媒からなる電解液をポリアクリロニトリル等の樹脂成分に担持させたものに代表され、固体電解質電池とはリチウム−イオウ化合物などのようにイオン伝導性のある固体を電解質としたものに代表される。
【0030】
電池の構成としても従来の非水系二次電池と変わることはなく、正負両極の活物質層を塗設した面が互いに対向するよう配置する。このとき、互いの活物質層が物理的に接触することを避けるために、その間にセパレーターを挟んでもよい。このセパレーターとしては、ポリエチレンやポリプロピレン製の微多孔膜等が例示できる。
【0031】
電池の構造としても従来の非水系二次電池と変わることはない。円筒型電池に用いることも、その他のコイン型電池や角型電池、ボタン型電池など種々の形状にすることが出来る。いわゆる液系円筒型電池を例に取れば、図1に示す構造が一般的である。すなわち、正極に正極リードを溶接し、正極、セパレーター、負極、セパレーターを順次重ね合わせ、これをロール状に巻き取って電池素子とし、その電池素子より取り出した負極リードを鋼板製のケース(負極端子)の底に溶接し、ケースの底に絶縁板を配設して前記電池素子をケースに収納している。このケースに非水系電解液を注入し、その後、電池素子の上部に絶縁板、パッキン、安全弁などの安全機構を設置し、正極リードを正極端子に溶接して該正極端子を前記ケースに嵌め、その縁をかしめて一体化して電池にするものである。
【0032】
また、懸濁液を作成する分散方法、分散機器、電極を作成するための塗工方法、塗工装置、乾燥方法、乾燥装置、プレスの方法および装置なども、従来の非水系二次電池と何ら変わることはない。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例にそって具体的に説明する。言うまでもなく、ここに示す実施例は本発明を説明するものであって、本発明の実施方法をこれに限定するものではない。
【0034】
[活物質作成]
[実施例1]
α-Fe23(和光純薬工業製)と炭酸リチウム(ナカライテスク製)とを、モル比で1:1になるように調整し、乾式混合したのち、電気炉で800℃ 24時間の焼成を行った後、乳鉢で粉砕し、LiFeO2を得た。これとFe34(和光純薬工業製)をモル比で1:1になるように調整し、乾式混合したものを活物質とした。
[実施例2]
Cu2O(フルウチ化学製)と酸化リチウム(添川理化学製)とを、モル比で1:1になるように調整し、乾式混合したのち、窒素雰囲気にした管状炉内で720℃ 4時間の焼成を行った後、乳鉢で粉砕しLiCuOを主成分とする粉体を得、これを活物質とした。
[比較例1]
α-Fe23(和光純薬工業製)を活物質とした。
[比較例2]
実施例1で得たLiFeO2を活物質とした。
[比較例3]
Fe34(和光純薬工業製)を活物質とした。
[比較例4]
Fe3(和光純薬工業製)と酸化リチウム(添川理化学製)とを、モル比で2:1になるように調整し、乾式混合したものを活物質とした。
[比較例5]
CuO(フルウチ化学製)を活物質とした。
[比較例6]
CuO(和光純薬工業製)を活物質とした。
【0035】
[電池作成]
各活物質を導電剤およびポリフッ化ビニリデンとともに、これらがこの順で60:30:10の重量比になるように調整・混合し、撹拌しながらN−メチルピロリドンを適宜加えて懸濁液を作成した。この懸濁液をドクターブレードを用いて圧延銅箔(18μm厚)に塗工し、乾燥後、プレスして電極シートを得た。次いで、電極シートを直径16mmの円形に打ち抜いて試験用電極を作製した。このようにして得た各電極(直径16mmの作用極)は、対極(負極)として金属リチウム(直径19mm、厚さ0.2mmの金属Li箔)と、セパレーター(直径19mm、厚さ0.02mmの多孔質ポリプロピレンシート)と、非水電解液とを、ステンレス製容器に組み込んで、直径20mm、厚さ3.2mm(2032型)の充放電性能評価用のコイン電池を構築した。その構造概略図を図2に示す。非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを1:1の体積比で混ぜた混合溶媒にLiPF6を約1mol/リットルの濃度で含有させたものを用いた。
【0036】
[初回充放電効率]
以上のようにして構築した各コイン電池に対し、0.2Cの定電流条件にて極間電圧が0.01V(下限電圧)となるまで各電極にLiを挿入する操作(放電)を行い、次いで0.2Cの定電流条件にて極間電圧が3.0V(上限電圧)となるまでLiを放出させる操作(充電)を行った。この初回充放電におけるリチウム挿入容量とリチウム放出容量との比から初回充放電効率を算出した。その結果を、各例の活物質組成と共に表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示されるように、本発明の金属酸リチウム化合物と金属不完全酸化物を組み合わせた実施例1は、その比較例である比較例1乃至4に比べて良好な充放電効率を示している。実施例における充放電効率の向上は、上述の化学式から予想された通り、金属酸リチウム化合物と金属不完全酸化物を組み合わせることにより、リチウム挿入量よりもリチウム放出量が多くなった結果と考えられる。
【0039】
なお、先に示した実施例1の反応式から期待されるリチウム挿入量およびリチウム放出量はそれぞれ11当量および12当量であり、比較例2および比較例3の充放電効率(約75%)に単純に12/11を掛けると、実施例1の充放電効率は80%を超えることが期待されるが、実際にはその値には届いていない。この理由は、金属酸リチウム化合物と金属不完全酸化物の局在化の問題が考えられる。すなわち、活物質は有限の大きさを持つ固体なので、リチウム挿入によって金属原子と酸化リチウムに分解されたとき、金属酸リチウムであった部分と金属不完全酸化物であった部分を比較すると、前者には後者よりもより多くの酸化リチウムが、後者には前者より多くの金属原子が生成する、すなわち金属原子も酸化リチウムも局在して生成することが予想される。気体のように自由に動くことが出来ないために金属原子と酸化リチウムが綺麗に混ざり合うことができない結果、期待通りの充放電効率にならないというものである。
【0040】
このことから逆に、金属酸リチウム化合物も金属不完全酸化物も粒径が小さいほど、それぞれ単独の場合よりも混合したほうが充放電効率があがることが期待される。その究極の形は、金属酸リチウムと金属不完全酸化物が一つの化合物になった金属不完全酸化物のリチウム化合物であることは言うまでもない。
この金属不完全酸化物のリチウム化合物を用いた実施例2(LiCuO)もまた、その比較例である比較例5および比較例6に比べて良好な充放電効率を示している。実施例における充放電効率の向上は、上述の化学式から予想された通り、金属不完全酸化物のリチウム化合物を用いることによって、リチウム挿入量よりもリチウム放出量が多くなった結果と考えられる。
【0041】
なお、金属酸リチウム化合物と不完全酸化物の最適混合比については、上述の局在化の問題があり、限定することは出来ない。さらには、金属酸リチウム化合物にも不完全酸化物にも種類があることからも、最適混合比を限定することは出来ない。すなわち金属酸リチウム化合物や完全酸化物の種類とは、これまで述べてきた鉄系に例をとると、金属酸リチウム化合物にはLiFeO以外にLiFeOという安定化合物が存在し、同様に不完全酸化物にはFeOという化合物が存在する。それぞれの組み合わせた反応を考えると、

Li5FeO4+5Fe34+43Li++43e
⇒ 16Fe+24Li2O ⇔ 8Fe23+48Li++48e-

LiFeO4+5FeO+13Li++13e-
⇒ 6Fe+9Li2O ⇔ 3Fe23+18Li++18e-

LiFeO2+FeO+5Li++5e-
⇒ 2Fe+3Li2O ⇔ Fe23+6Li++6e-

となり、必ずしも金属酸リチウム化合物 1molに対して不完全酸化物 1molとは限らないからである。
実用的には、それらの混合物における両者のモル比を、1:9〜9:1(好ましくは3:7〜7:3、より好ましくは4:6〜6:4)の範囲とすることができる。
【0042】
なお、比較例4は本発明が開示される技術ではないが、反応式は以下のように考えることができる。

2Fe34+Li2O+16Li++16e-
⇒ 6(Fe)+9Li2O ⇔ 3Fe23+18Li++18e-

すなわち、Fe34 2当量に対して16当量のリチウムが挿入され、18当量のリチウムが放出されるので、反応式の上ではLiFeO2およびFe34を組み合わせた場合よりも、優れた充放電効率を示すはずである。しかし、実際には表1からも判るように、その充放電効率は比較例3のFe34単独系よりも劣っている。この理由としては、Li2Oが空気に曝されると、空気中の水分を吸ってLiOHになったり、炭酸ガスを吸ってLi2CO3およびHOになることで、電池中に水分や水酸基が導かれ、その水分や水酸基が電解液の分解を促している可能性が考えられる。
【0043】
本発明は、金属酸化物系負極活物質の充放電効率の改善を目指しており、その手法としてリチウム・プレドープという方法に着目し、さらに、金属リチウムそのものをプレドープする方法などよりも空気中で、安定で生産性に優れるものにすることを目指している。従って、本発明の金属酸リチウム化合物と不完全酸化物を組み合わせて用いる方法や金属不完全酸化物のリチウム化合物を用いる方法は有効な手法だが、反応式上は同等以上の効果が期待される不完全酸化物と酸化リチウムを組み合わせる比較例4は、酸化リチウムの空気中での安定性の乏しさ、および表1の結果から有効な方法とは言えない。
【0044】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、ここに示した物質や組成、構成、使用方法は本発明を限定するものではなく、活物質の種類、電極の組成、電極や電池の作成方法、電解液の種類、電池の構造など種々の改変が可能である。さらには、背景技術には該金属酸化物を負極活物質に展開する場合の有効性を示したが、実施例からも判るようにリチウム金属のように該金属酸化物よりも卑なる活物質を対極に用いた場合、本請求の金属酸化物は正極として作用しているので、正極活物質への展開も可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る非水系リチウム二次電池用活物質は、安全性や作業性を損なうことなく電池に組み込むことができる。しかも、該活物質を含む電極を具備する非水系リチウム二次電池は、上記のとおり初回充放電の効率を改善し、より良好な電池性能を示すことから、特に携帯用電子機器、種々のバックアップ電源、電気自動車などの車両の電源などとして好適に使用し得る。
図1
図2