特許第5904570号(P5904570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5904570農作業車の旋回開始位置設定装置及び旋回開始位置設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904570
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】農作業車の旋回開始位置設定装置及び旋回開始位置設定方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
   A01B69/00 303K
   A01B69/00 303M
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-262818(P2010-262818)
(22)【出願日】2010年11月25日
(65)【公開番号】特開2012-110286(P2012-110286A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2013年10月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000107653
【氏名又は名称】株式会社IHIスター
(73)【特許権者】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 和信
(72)【発明者】
【氏名】紺屋 秀之
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 光広
(72)【発明者】
【氏名】重松 健太
(72)【発明者】
【氏名】吉野 知佳
(72)【発明者】
【氏名】森 素広
(72)【発明者】
【氏名】宮西 広樹
(72)【発明者】
【氏名】甲地 重春
【審査官】 植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−72963(JP,A)
【文献】 特開2010−233461(JP,A)
【文献】 特開2002−186309(JP,A)
【文献】 特開2004−301650(JP,A)
【文献】 特開平10−234204(JP,A)
【文献】 特開平7−104846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B69/00−69/08
A01C 3/00− 3/08
A01C11/02
A01C15/00−23/04
A01D34/00−34/01
A01D34/412−34/90
A01D42/00−42/08
A01M 1/00−99/00
G01C 1/00− 1/14
G01C 5/00−11/34
G01C13/00−15/14
G01C21/00−21/36
G01C23/00−25/00
G01S 5/00− 5/14
G01S19/00−19/55
G05D 1/00− 1/12
G08G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の枕地で旋回しながら該圃場をジグザグに往復走行する農作業車の旋回開始位置を設定する旋回開始位置設定装置であって、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、農作業車の走行起点とする原点を設定する原点設定部と、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記原点から前記農作業車を直進させることで直線状の基準線を設定する準線設定部と、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記農作業車の現在位置から前記準線に対して直交するように延長されると共に、農作業車の走行に伴って、前記準線に沿って移動する交差線の、前記原点からの移動距離を計測する移動距離計測部と、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記農作業車の実際の走行距離を計測する走行距離計測部と、前記移動距離計測部で計測された前記交差線の移動距離と、前記走行距離計測部で計測された前記農作業車の実際の走行距離との差を算出する距離差算出部と、前記農作業車の走行中に、前記交差線の移動距離と前記農作業車の実際の走行距離との距離差が増加しつつあり、且つ前記交差線の移動距離が変わらないときに、前記農作業車が旋回終了していると判定する旋回判定部と、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記旋回判定部によって、前記農作業車の旋回が既に終了していると判定された位置に旋回判定点を設定する旋回判定点設定部と、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記準線上の任意の位置に直線基準点を設定する直線基準点設定部と、前記旋回判定点と前記直線基準点の範囲で、前記旋回判定点から前記準線に戻って、該準線上の、前記交差線の移動距離と前記農作業車の実際の走行距離との距離差が増加していない最終地点を検出し、この最終地点を旋回開始位置として設定する旋回開始位置設定部と、を備えていることを特徴とする農作業車の旋回開始位置設定装置。
【請求項2】
前記旋回開始位置の設定後に、前記準線と交差する枕地に沿って旋回開始線を設定するようにされていることを特徴とする請求項1記載の農作業車の旋回開始位置設定装置。
【請求項3】
復路側の旋回開始位置を設定するための原点が、往路側の前記旋回開始線上に自動的に設定されるようにしていることを特徴とする請求項2記載の農作業車の旋回開始位置設定装置。
【請求項4】
圃場の枕地で旋回しながら該圃場をジグザグに往復走行する農作業車の旋回開始位置を設定する旋回開始位置設定方法であって、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、農作業車の走行起点とする原点を設定するステップと、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記原点から前記農作業車を直進させることで直線状の基準線を設定するステップと、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記農作業車の現在位置から前記準線に対して直交するように延長されると共に、農作業車の走行に伴って、前記準線に沿って移動する交差線の、前記原点からの移動距離を計測するステップと、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記農作業車の実際の走行距離を計測するステップと、計測された前記交差線の移動距離と、計測された前記農作業車の実際の走行距離との差を算出するステップと、前記農作業車の走行中に、前記交差線の移動距離と前記農作業車の実際の走行距離との距離差が増加しつつあり、且つ前記交差線の移動距離が変わらないときに、前記農作業車が旋回終了していると判定するステップと、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記農作業車の旋回が既に終了していると判定された位置に旋回判定点を設定するステップと、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記準線上の任意の位置に直線基準点を設定するステップと、前記旋回判定点と前記直線基準点の範囲で、前記旋回判定点から前記準線に戻って、該準線上の、前記交差線の移動距離と前記農作業車の実際の走行距離との距離差が増加していない最終地点を検出し、この最終地点を旋回開始位置として設定するステップと、を備えていることを特徴とする農作業車の旋回開始位置設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、農作業車の旋回開始位置を設定する装置及びその設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星測位システムによる位置情報に基づいて、農作業車が枕地において旋回できるように旋回開始位置を設定することは、例えば、下記特許文献1に開示されているように、圃場の長辺及び短辺等の圃場形状・寸法データや作業行程幅データ等を入力することで、旋回開始位置が設定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−234204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の従来技術によると、前述した各種データを入力することにより、圃場の大きさにかかわらず、正確な旋回開始位置を設定することができるため、表示される各種指示に従って設定された旋回開始位置で農作業車を旋回させることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1の従来技術では、圃場の長辺及び短辺等の圃場形状・寸法データや作業行程幅データ等、多くのデータを入力する極めて面倒な作業が必要であり、その上、圃場の形状が変わるたびに、前述のデータの再入力作業が必要になるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、農作業車が枕地において確実に旋回できる旋回開始位置を自動的、且つ確実に設定できることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0008】
圃場の枕地で旋回しながら該圃場をジグザグに往復走行する農作業車の旋回開始位置を設定する旋回開始位置設定装置であって、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、農作業車の走行起点とする原点を設定する原点設定部と、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記原点から前記農作業車を直進させることで直線状の基準線を設定する準線設定部と、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記農作業車の現在位置から前記準線に対して直交するように延長されると共に、農作業車の走行に伴って、前記準線に沿って移動する交差線の、前記原点からの移動距離を計測する移動距離計測部と、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記農作業車の実際の走行距離を計測する走行距離計測部と、前記移動距離計測部で計測された前記交差線の移動距離と、前記走行距離計測部で計測された前記農作業車の実際の走行距離との差を算出する距離差算出部と、前記農作業車の走行中に、前記交差線の移動距離と前記農作業車の実際の走行距離との距離差が増加しつつあり、且つ前記交差線の移動距離が変わらないときに、前記農作業車が旋回終了していると判定する旋回判定部と、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記旋回判定部によって、前記農作業車の旋回が既に終了していると判定された位置に旋回判定点を設定する旋回判定点設定部と、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記準線上の任意の位置に直線基準点を設定する直線基準点設定部と、前記旋回判定点と前記直線基準点の範囲で、前記旋回判定点から前記準線に戻って、該準線上の、前記交差線の移動距離と前記農作業車の実際の走行距離との距離差が増加していない最終地点を検出し、この最終地点を旋回開始位置として設定する旋回開始位置設定部と、を備えていることを特徴とする農作業車の旋回開始位置設定装置である。
【0009】
圃場の枕地で旋回しながら該圃場をジグザグに往復走行する農作業車の旋回開始位置を設定する旋回開始位置設定方法であって、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、農作業車の走行起点とする原点を設定するステップと、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記原点から前記農作業車を直進させることで直線状の基準線を設定するステップと、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記農作業車の現在位置から前記準線に対して直交するように延長されると共に、農作業車の走行に伴って、前記準線に沿って移動する交差線の、前記原点からの移動距離を計測するステップと、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記農作業車の実際の走行距離を計測するステップと、計測された前記交差線の移動距離と、計測された前記農作業車の実際の走行距離との差を算出するステップと、前記農作業車の走行中に、前記交差線の移動距離と前記農作業車の実際の走行距離との距離差が増加しつつあり、且つ前記交差線の移動距離が変わらないときに、前記農作業車が旋回終了していると判定するステップと、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記農作業車の旋回が既に終了していると判定された位置に旋回判定点を設定するステップと、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記準線上の任意の位置に直線基準点を設定するステップと、前記旋回判定点と前記直線基準点の範囲で、前記旋回判定点から前記準線に戻って、該準線上の、前記交差線の移動距離と前記農作業車の実際の走行距離との距離差が増加していない最終地点を検出し、この最終地点を旋回開始位置として設定するステップと、を備えていることを特徴とする農作業車の旋回開始位置設定方法である。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有することで本発明は、以下の効果を奏する。すなわち、農作業車の原点を設定し、この農作業車を直進及び旋回させることで設定される旋回判定点と直線基準点の間における前記農作業車の走行軌跡において、前記移動距離と前記走行距離との距離差が生じている任意の地点から前記準線に戻って該準線上の距離差がない最終地点を検出し、該最終地点を旋回開始位置として設定するようにしているため、農作業車を枕地で確実に旋回させることができる旋回開始位置を自動的、且つ確実に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る実施形態の旋回開始位置設定装置のブロック図。
図2】農作業車の走行軌跡図。
図3】本発明に係る旋回開始位置設定方法を含むコンピュータプログラムのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する農作業車は、肥料や農薬等の散布剤を散布する散布部、圃場を耕す耕耘機、ロールベールを成形するロールベーラ等の各種農作業機を牽引又は一体に備え、方向転換しながらジグザグに往復走行して農作業を行える走行車両を含む。
【0013】
旋回開始位置の設定後に、準線と交差する枕地に沿って旋回開始線を設定することが好ましい。
【0014】
ジグザグに往復動する農作業車の旋回開始位置は、往路側と復路側に夫々設定されるが、復路側の旋回開始位置を設定するための原点が、往路側の前記旋回開始線上に自動的に設定されるようにすることが好ましい。
【0015】
以下、本発明に係る実施形態の旋回開始位置設定装置Aを図面に基づいて説明する。ここで、旋回開始位置設定装置Aは、圃場200に肥料を散布する散布部(図示せず)を備え、この圃場200内を方向転換しながらジグザグに往復走行し、枕地201を除く肥料散布範囲202に肥料散布を行う農作業車100に備えられている。
【0016】
図1は、旋回開始位置設定装置Aの構成を含む農作業車100のブロック図である。農作業車100は、旋回開始位置設定装置A、制御部B、受信部C、走行経路設定装置D、表示部E、記憶部Fが備えられている。旋回開始位置設定装置Aは、制御部Bに接続されており、この制御部Bの制御によって動作するようになっている。図2は、旋回開始位置設定装置Aにより設定される各種設定部分を示す農作業車100の走行軌跡図である。
【0017】
制御部Bには、衛星測位システム(以下「GPS」という。図示せず)からの信号を受信する受信部C、農作業車100の走行経路を設定する走行経路設定装置D、設定された走行経路や旋回位置、更には、農作業車100の現在位置等を表示する表示部E、各種データ等を記憶する記憶部F等が接続され、これら、受信部C、走行経路設定装置D、表示部E、記憶部F等の各種動作を制御部Bで制御するようになっている。
【0018】
旋回開始位置設定装置Aは、原点設定部1と、走行軌跡測定部2、準線設定部3と、移動距離計測部4と、走行距離計測部5と、距離差算出部6と、旋回判定部7と、旋回判定点設定部8と、直線基準点設定部9と、旋回開始位置設定部10と、を備えている。
【0019】
原点設定部1は、GPSによる位置情報に基づいて、農作業車100の走行起点とする原点Pを設定するものであり、農作業車100のオペレータによるスイッチ操作等の手動操作によって原点Pを設定するようになっている。この原点設定部1は、設定した原点Pを原点データとして記憶部Fに入力するようになっている。
【0020】
走行軌跡測定部2は、農作業車100の原点Pからの走行軌跡Lを測定するものである。この走行軌跡測定部2は、測定した走行軌跡Lを走行軌跡データとして記憶部Fに入力するようになっている。
【0021】
準線設定部3は、GPSによる位置情報に基づいて、原点Pから農作業車100を直進させることで、記憶された走行軌跡L上に直線状の基準線L1を設定するものである。この準線設定部3は、設定した準線L1を準線データとして記憶部Fに入力するようになっている。ここで設定される準線L1は、走行経路設定装置Dが走行経路を設定する際に利用できるように記憶され、走行経路設定装置Dの要求によって取り出されるようになっている。
【0022】
移動距離計測部4は、GPSによる位置情報に基づいて、農作業車100の現在位置から準線L1に対して直交するように延長した交差線L2と準線L1との交差点P1と原点Pとの距離を計測するものであり、農作業車100が走行した実際の走行距離を計測するものではない。この交差線L2は、農作業車100の走行に伴い準線L1に沿って移動する。この移動距離計測部4は、計測した移動距離を移動距離データとして記憶部Fに入力するようになっている。
【0023】
走行距離計測部5は、GPSによる位置情報に基づいて、農作業車100の実際の走行距離を計測するものである。この走行距離計測部5は、計測した走行距離を走行距離データとして記憶部Fに入力するようになっている。
【0024】
距離差算出部6は、記憶部Fに記憶された移動距離と走行距離を取り出して、この移動距離と走行距離との差を算出するものである。この距離差算出部6は、算出した距離差を距離差データとして記憶部Fに入力するようになっている。
【0025】
旋回判定部7は、記憶部から距離差データ及び移動距離データを取り出し、この距離差データが移動距離と走行距離とに距離差が生じているものであって、移動距離データが一定時間経過、或いは一定距離走行しても移動距離が変わらないものであるときに、農作業車100が旋回終了していると判定するものである。この旋回判定部7は、旋回判定及び旋回判定位置を旋回判定データ及び旋回判定位置データとして記憶部Fに入力するようになっている。
【0026】
旋回判定点設定部8は、GPSによる位置情報に基づいて、旋回判定部6により農作業車100の旋回終了が判定された位置に旋回判定点P2を設定するものである。この旋回判定点設定部8は、設定した旋回判定点P2を旋回判定点データとして記憶部Fに入力するようになっている。
【0027】
直線基準点設定部9は、GPSによる位置情報に基づいて、走行軌跡L上、且つ準線L1上であって旋回判定点P2よりも原点P側の任意の位置に直線基準点P3を設定するものである。この直線基準点設定部9は、設定した直線基準点P3を直線基準点データとして記憶部Fに入力するようになっている。
【0028】
旋回開始位置設定部10は、旋回判定点P2と直線基準点P3の間における農作業車100の走行軌跡Lにおいて、旋回判定点P2から準線L1に戻って、この準線L1上の距離差がない(距離差が増加しない)最終地点を検出し、この最終地点を旋回開始位置P4として設定するものである。この回開始位置設定部10は、更に、旋回開始位置P4の設定後に、この旋回開始位置P4から準線L1と交差する枕地に沿って延長する旋回開始線L3を設定するようになっている。更に、この旋回開始位置設定部10は、設定した旋回開始位置P4を旋回開始位置データとして、設定した旋回開始線L3を旋回開始線データとして記憶部Fに入力するようになっている。
【0029】
この旋回開始位置P4及び旋回開始線L3は、農作業車100が圃場200をジグザグに往復動するため、往路側と復路側に設定される。旋回開始位置P4及び旋回開始線L3を往路側に設定する場合には、原点設定部1と、走行軌跡測定部2、準線設定部3と、移動距離計測部4と、走行距離計測部5と、距離差算出部6と、旋回判定部7と、旋回判定点設定部8と、直線基準点設定部9と、旋回開始位置設定部10とによって、原点Pの手動設定後に農作業車100を走行させれば自動設定することができる。
【0030】
旋回開始位置P4及び旋回開始線L3を復路側に設定する場合には、往路側に設定した旋回開始線L3を原点Pとして自動的に設定するようにし、この原点Pの設定後に、走行軌跡測定部2、準線設定部3と、移動距離計測部4と、走行距離計測部5と、距離差算出部6と、旋回判定部7と、旋回判定点設定部8と、直線基準点設定部9と、旋回開始位置設定部10とによって、復路側に旋回開始位置P4及び旋回開始線L3を設定することができる。
【0031】
移動距離計測部4及び走行距離計測部5の距離計測は、図2に示すように、走行軌跡L上に同間隔でポインティング(丸印で示す)することで行うことができるが、本発明では、移動距離計測部4及び走行距離計測部5の距離計測の方法は、例示した方法に限らない。農作業車100の移動距離及び走行距離を計測できるものであればよい。
【0032】
受信部Cは、農作業車100に設けられたアンテナ(図示せず)と接続又はこのアンテナを一体に備えたもの等、GPSからの信号を受信できるものであればよい。
【0033】
走行経路設定装置Dは、農作業車100の走行経路(図示せず)を圃場200内に設定するものであり、設定された走行経路を表示部Eに表示させるようになっている。この走行経路設定装置Dは、GPSによる位置情報、旋回開始位置設定装置Aによって設定されて記憶部Fに記憶された旋回開始位置P4、旋回開始線L3、準線L1、更には、圃場200の面積、圃場200の形状、前述の散布部の散布幅等に基づいて、圃場200内を方向転換しながらジグザグに往復走行して肥料散布できる走行経路を設定するようになっている。また、走行経路設定装置Dは、設定した走行経路を走行経路データとして記憶部Fに入力するようになっている。
【0034】
表示部Eは、設定された前述の走行経路や、農作業車100がこの走行経路上を走行できるように誘導するための誘導情報(図示せず)等を表示することで、オペレータ(図示せず)に対し、農作業車100が走行経路上を走行しているか否かを視認させるようになっている。表示部Eは、農作業車100の運転席等のオペレータ(図示せず)が視認し易い場所に設けることが好ましい。
【0035】
記憶部Fは、CPU(図示せず)が実行する各種プログラムや、各種アプリケーションプログラム、及び各種データ等を記憶したROM(図示せず)を備えている。又、各種設定情報、演算結果等を一時的に記憶するRAM(図示せず)を備えている。そして、このROM及びRAMから、旋回開始位置設定装置Aの各種要求に基づく各種プログラムや各種データの出し入れが行われるようになっている。
【0036】
図3は、旋回開始位置設定方法を含むコンピュータプログラムのフローチャートである。このプログラムは、農作業車100を起動(農作業車100のエンジンを始動及び/又は電源ON)することにより起動するプログラムである。(ステップS1)
【0037】
農作業車100の起動後、原点設定部1の手動での原点設定操作によって原点Pが設定される(ステップS2)。原点Pの設定後に農作業車100を走行させることによって、走行軌跡測定(ステップS3)及び準線設定(ステップS4)を行うとともに、農作業車100の移動距離計測(ステップS5)及び走行距離計測(ステップS6)を行う。
【0038】
農作業車100の走行は、図2に示す走行軌跡Lのように、原点Pから旋回開始予定地点(旋回開始位置P4と同じ。枕地201の開始地点)までを直進とし、この旋回開始予定地点から旋回させるものであり、この走行によって、旋回開始位置設定を行うことができる。
【0039】
農作業車100の移動距離計測及び走行距離計測が行われると同時に、移動距離と走行距離との差算出が開始される(ステップS7)。このとき、算出結果が移動距離と走行距離とに距離差が生じているものであって(ステップS8)、一定時間経過しても移動距離が変わらないものであるときに(ステップS9)、農作業車100が旋回終了していると判定する(ステップS10)。
【0040】
農作業車100が旋回終了していると判定された地点において、旋回判定点P2が設定される(ステップS11)とともに、走行軌跡L上、且つ準線L1上であって旋回判定点P2よりも原点P側の任意の位置に直線基準点P3が設定される(ステップS12)。
【0041】
旋回判定点P2及び直線基準点P3が設定されると、旋回判定点P2と直線基準点P3の間における農作業車100の走行軌跡Lに沿って旋回判定点P2から準線L1に戻って、準線L1上において、移動距離と走行距離とに距離差がない(距離差が増加しない)最終地点を検出し(ステップS13)、この最終地点を旋回開始位置P4として設定する(ステップS14)。また、旋回開始位置P4が設定されると、この旋回開始位置P4から準線L1と交差する枕地201に沿って延長する旋回開始線L3を設定する(ステップS15)。
【0042】
旋回開始線L3が設定されると、この設定された旋回開始線L3が往路側に設定されたものであるか否かを判定し(ステップS16)、往路側に設定されたものである場合に、この旋回開始線L3上に、復路側の旋回開始地点P3及び旋回開始線L3を設定するための原点Pが自動的に設定される(ステップA17)。
【0043】
ステップ17以降は、ステップS3〜ステップS16と同様のステップを行って、復路側の旋回開始地点P3及び旋回開始線L3が設定される(ステップS18)。ステップS16で、原点Pが復路側に設定されたものであると判定された場合には、旋回開始地点P3及び旋回開始線L3の設定が終了する(ステップS19)。
【0044】
ステップS16において旋回開始線L3が往路側に設定されたものであるか否かの判定は、例えば、原点Pの設定がどのように行われたかにより行うことができる。本実施形態では、往路側の旋回開始地点P3及び旋回開始線L3の設定における原点Pの設定が手動で行われ、復路側の旋回開始地点P3及び旋回開始線L3の設定における原点Pの設定が自動で行われるようになっている。
【0045】
すなわち、手動で原点Pが設定されたときには、往路側の旋回開始線L3の設定であると判定し、自動で原点Pが設定されたときには、復路側の旋回開始線L3の設定であると判定することによって、旋回開始線L3が往路側に設定されたものであるか否かを判定することができる。
【0046】
以上の構成とした旋回開始位置設定装置A及び旋回開始位置設定方法によると、旋回開始位置設定装置Aを起動した直後に原点設定部1を手動操作して原点Pを設定し、農作業車100を走行させれば、往路側と復路側に旋回開始位置P4及び旋回開始線L3を自動的に設定することができる。そのため、旋回開始位置P4及び旋回開始線L3の設定が確実、且つ容易に行うことができる。
【0047】
旋回開始位置P4及び旋回開始線L3が確実に設定できるため、農作業車100が走行経路から外れたり、GPSの位置情報に揺らぎが生じたりしても、旋回開始位置P4及び旋回開始線L3を確実に判定することができる。
【0048】
更に、旋回開始位置P4及び旋回開始線L3を確実に判定することができるため、農作業車100が旋回開始位置P4及び旋回開始線L3に位置したときに、ブザー等の音声発生手段によって報知する制御に応用でき、この音声による報知によって、オペレータが表示部Eを見なくても農作業車100を旋回開始位置P4及び旋回開始線L3で旋回させることができる。
【0049】
また、農作業車100が旋回開始位置P4及び旋回開始線L3に至ったことを音声により報知する制御では、例えば、農作業車100が枕地201において異なる旋回径や旋回角度で旋回する必要がある場合、この異なる旋回径や旋回角度に応じて、前述した音声発生手段の報知タイミングを変更することによって、異なる旋回径や旋回角度であっても、農作業車100の操作角度や走行速度等を一定として操作することができる。
【0050】
また、農作業車100が施肥しながら直進し、旋回開始位置P4及び旋回開始線L3に至ったことを判定したときに、肥料散布を自動的に停止させて枕地201では施肥しないようにし、枕地201で旋回して再び旋回開始位置P4及び旋回開始線L3に至ったことを判定したときに、肥料散布を再開する制御に応用できる。この制御の場合、旋回開始位置P4及び旋回開始線L3は、圃場200において肥料散布範囲202と枕地201との境界となる。
【0051】
すなわち、肥料散布の停止及び再開を行う制御は、例えば、肥料散布状態から農作業車100が旋回開始位置P4及び旋回開始線L3に至ったことを判定したときに、肥料散布を自動的に停止し、肥料散布停止状態から農作業車100が旋回開始位置P4及び旋回開始線L3に至ったことを判定したときに、肥料散布を自動的に再開する制御で達成できる。
【0052】
尚、本発明は、例示した実施の形態に限定するものでなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0053】
A:旋回開始位置設定装置
1:原点設定部
3:準線設定部
4:移動距離計測部
5:走行距離計測部
6:距離差算出部
7:旋回判定部
8:旋回判定点設定部
9:直線基準点設定部
10:旋回開始位置設定部
P:原点
P2:旋回判定点
P3:直線基準点
P4:旋回開始位置
L1:基準線
L3:旋回開始線
100:農作業車
200:圃場
201:枕地
図1
図2
図3