特許第5904848号(P5904848)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5904848
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】保護膜形成装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/70 20140101AFI20160407BHJP
   B05C 11/08 20060101ALI20160407BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20160407BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20160407BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20160407BHJP
   B23K 26/18 20060101ALN20160407BHJP
【FI】
   B23K26/70
   B05C11/08
   B05C11/10
   H01L21/78 L
   H01L21/78 B
   H01L21/68 P
   !B23K26/18
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-87926(P2012-87926)
(22)【出願日】2012年4月6日
(65)【公開番号】特開2013-215764(P2013-215764A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智章
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−322168(JP,A)
【文献】 特開2000−315671(JP,A)
【文献】 特開2010−003816(JP,A)
【文献】 特開平10−005668(JP,A)
【文献】 特開2009−187996(JP,A)
【文献】 特開平09−232276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/70
B05C 11/08
B05C 11/10
H01L 21/301
H01L 21/683
B23K 26/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状物を上面に保持する保持テーブルと、
前記保持テーブルに保持された板状物の表面である板状物表面に洗浄水を供給する洗浄水供給ノズルおよび前記板状物表面に液状樹脂を供給する液状樹脂供給ノズルを有する液体供給手段と、
前記保持テーブルの上面に対して鉛直方向を回転軸として回転させ、前記板状物表面に供給された液状樹脂を前記板状物表面全体に広げる回転駆動部と、
前記保持テーブル、前記保持テーブルに保持された板状物および前記液体供給手段を囲む筐体と、
を備え、前記板状物表面に液状樹脂からなる保護膜を形成する保護膜形成装置であって、
前記保持テーブルは、
前記板状物を吸引保持する保持面を有する保持部と、
前記保持部の外周に囲繞して複数個配設され、かつ前記筐体の内壁に当接しない大きさで形成された前記液状樹脂または前記洗浄水である液体の飛散方向を規定する方向板と、
を有し、
前記方向板は、前記保持面に対して傾斜して配設され、前記保持テーブルの回転方向が正回転の場合には前記液体を前記保持テーブルの下方に飛散させ、前記保持テーブルが逆回転の場合には前記液体を前記保持テーブルの上方へ飛散させ、
前記保持テーブルに保持された板状物に前記保護膜を形成する際には、前記板状物表面に前記液状樹脂供給ノズルにより前記液状樹脂が供給され、前記回転駆動部により前記保持テーブルを正回転させることで、前記液状樹脂のうち遠心力で前記板状物表面から飛ばされた余剰の液状樹脂が前記方向板により前記保持テーブルの下方に飛散し、
前記筐体の内部の洗浄の際には、前記板状物表面または前記保持テーブルの上面に前記洗浄水供給ノズルから前記洗浄水が供給され、前記回転駆動部により前記保持テーブルを逆回転させることで、遠心力で前記板状物表面または前記保持テーブルの上面から飛ばされた前記洗浄水が前記方向板により前記保持テーブルの上方に飛散し、前記筐体の内部を洗浄すること
を特徴とする保護膜形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保護膜形成装置において、
前記筐体の内部の洗浄の際には、前記回転駆動部による前記保持テーブルの回転速度を変化させて、前記洗浄水の前記方向板による上方への飛散状態を調整する保護膜形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハなどの板状物の表面に液状樹脂の保護膜を形成する保護膜形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IC,LSI等の複数のデバイスが形成された半導体ウェーハや、LED素子などの複数のデバイスが形成されたサファイアウェーハは、レーザー加工装置により、分割予定ラインに沿ってレーザー光線が照射され、ウェーハの表面にレーザー加工溝を形成することで、個々のデバイスに分割される。分割されたデバイスを用いて、携帯電話、PC、LEDライト等の電気機器が形成されている。レーザー加工装置によりレーザー加工溝を形成する技術は、ダイシング装置によるブレード切削が難しい脆弱なLow−k膜の除去や、サファイアウェーハ等の非常に硬質な材料の加工等に用いられるようになってきた。
【0003】
しかし、レーザー光線は、照射された領域に熱エネルギーを集中させるためデブリが発生し、発生したデブリがウェーハの表面のうちデバイスが形成された領域に付着すると、デバイスの品質を低下させる問題がある。そのため、近年では、予めウェーハの表面にPVA(ポリ・ビニール・アルコール)、PGE(ポリ・エチレン・グリコール)、PEO(ポリ・エチレン・オキシド)等の水溶性の液状樹脂を塗布して保護膜を形成し、保護膜を通してウェーハにレーザー光線を照射という加工方法が採用されている。そのため、レーザー光線を照射する前にウェーハ表面に保護膜を形成する保護膜形成装置が例えばレーザー加工装置内に配設されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−322168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ウェーハの表面に保護膜を形成する保護膜形成装置は、回転可能な保持テーブルの上面にウェーハを保持し、ウェーハの表面に液状樹脂を塗布して保持テーブルを回転させることで、液状樹脂をウェーハの表面全体に広げて保護膜を形成する構成である。従って、余剰の液状樹脂が遠心力によりウェーハの表面から筐体の内部に飛散し、例えば筐体の内壁に付着する。付着した液状樹脂は、筐体の内部において堆積するため、剥離することがあり、剥離することでウェーハ表面への再付着や、筐体内部の環境の悪化という問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、筐体の内部を容易に洗浄することができる保護膜形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る保護膜形成装置は、板状物を上面に保持する保持テーブルと、前記保持テーブルに保持された板状物の表面である板状物表面に洗浄水を供給する洗浄水供給ノズルおよび前記板状物表面に液状樹脂を供給する液状樹脂供給ノズルを有する液体供給手段と、前記保持テーブルの上面に対して鉛直方向を回転軸として回転させ、前記板状物表面に供給された液状樹脂を前記板状物表面全体に広げる回転駆動部と、前記保持テーブル、前記保持テーブルに保持された板状物および前記液体供給手段を囲む筐体と、を備え、前記板状物表面に液状樹脂からなる保護膜を形成する保護膜形成装置であって、前記保持テーブルは、前記板状物を吸引保持する保持面を有する保持部と、前記保持部の外周に囲繞して複数個配設され、かつ前記筐体の内壁に当接しない大きさで形成された前記液状樹脂または前記洗浄水である液体の飛散方向を規定する方向板と、を有し、前記方向板は、前記保持面に対して傾斜して配設され、前記保持テーブルの回転方向が正回転の場合には前記液体を前記保持テーブルの下方に飛散させ、前記保持テーブルが逆回転の場合には前記液体を前記保持テーブルの上方へ飛散させ、前記保持テーブルに保持された板状物に前記保護膜を形成する際には、前記板状物表面に前記液状樹脂供給ノズルにより前記液状樹脂が供給され、前記回転駆動部により前記保持テーブルを正回転させることで、前記液状樹脂のうち遠心力で前記板状物表面から飛ばされた余剰の液状樹脂が前記方向板により前記保持テーブルの下方に飛散し、前記筐体の内部の洗浄の際には、前記板状物表面または前記保持テーブルの上面に前記洗浄水供給ノズルから前記洗浄水が供給され、前記回転駆動部により前記保持テーブルを逆回転させることで、遠心力で前記板状物表面または前記保持テーブルの上面から飛ばされた前記洗浄水が前記方向板により前記保持テーブルの上方に飛散し、前記筐体の内部を洗浄することを特徴とする。
【0008】
また、上記保護膜形成装置において、前記筐体の内部の洗浄の際には、前記回転駆動部による前記保持テーブルの回転速度を変化させて、前記洗浄水の前記方向板による上方への飛散状態を調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の保護膜形成装置は、保持部の外周に囲繞して複数個配設された方向板を保持面に対して傾斜して配設することで、保護膜形成時に板状物表面に供給された液状樹脂を保持テーブルの下方に飛散させ、筐体内部洗浄時に板状物表面または保持テーブルの上面に供給された洗浄水を保持テーブルの上方に飛散させ、筐体の内部を洗浄できるので、筐体の内部を容易に洗浄することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る保護膜形成装置が配設されたレーザー加工装置の構成例を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係る保護膜形成装置を示す図である。
図3図3は、保持テーブルおよび方向板の構成例を示す図である。
図4図4は、本実施形態に係る保護膜形成装置の動作のフローチャート図である。
図5図5は、保護膜形成装置の動作説明図である。
図6図6は、保護膜形成装置の動作説明図である。
図7図7は、保護膜形成装置による筐体内部洗浄の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
図1は、本実施形態に係る保護膜形成装置が配設されたレーザー加工装置の構成例を示す図である。図2は、本実施形態に係る保護膜形成装置を示す図である。図3は、保持テーブルおよび方向板の構成例を示す図である。保護膜形成装置1が配設されたレーザー加工装置100は、図1に示すように、チャックテーブル110と、レーザー光線照射手段120と、撮像手段130と、保護膜形成装置1と、カセット載置台140と、搬出入手段150と、位置合わせ手段160、搬送手段171,172と、制御手段180とを含んで構成されている。
【0013】
チャックテーブル110は、板状物Wを保持するものであり、略直方体状の装置ハウジング101内に加工送り方向である矢印Xで示す方向に移動可能に配設されている。チャックテーブル110は、吸着チャック支持台111と、吸着チャック支持台111上に装着された吸着チャック112を有しており、吸着チャック112の表面である載置面上に板状物Wを図示しない吸引手段によって保持する。また、チャックテーブル110は、図示しない回転機構により回転可能に構成されている。なお、チャックテーブル110の周囲には、クランプ部113が設けられており、クランプ部113が図示しないエアーアクチュエータにより駆動することで、後述する環状フレームFを挟持する。
【0014】
ここで、板状物Wは、保護膜形成装置1により表面に保護膜Pが形成されるとともに、レーザー加工装置100によりレーザー加工がなされる対象物であり、本実施形態ではシリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする半導体ウェーハや、ガラス、樹脂等からなる板状部材である。板状物Wは、本実施形態では、デバイスが複数形成されているデバイス側の表面と反対側の裏面に粘着テープTが貼着され、板状物Wに貼着された粘着テープTに環状フレームFが貼着されることで、環状フレームFと一体となっている。なお、板状物Wは、環状フレームFと一体になっているものに限られず、ウェーハ単体であってもよい。
【0015】
レーザー光線照射手段120は、チャックテーブル110に保持された板状物Wに対してレーザー加工、例えば板状物Wの分割予定ラインに沿ってレーザー加工溝を形成する加工などを行うものである。レーザー光線を出力するレーザー光線発振手段121と、レーザー光線発振手段121によって発振されたレーザー光線を集光する集光器122とを含んで構成されている。
【0016】
撮像手段130は、チャックテーブル110に保持された板状物Wの表面を撮像するためのものである。撮像手段130は、レーザー光線照射手段120に対して所定の位置関係となるように、レーザー光線照射手段120が取り付けられた図示しない取付部に取り付けられている。撮像手段130は、板状物Wの表面からの反射光が入射されることで、保持された板状物Wの表面の画像データを生成し、制御手段180が生成された画像データに基づいて、レーザー光線照射手段120と板状物Wとの相対位置を調整するアライメント調整を行うために用いられる。なお、撮像手段130で撮像された板状物Wの表面の画像は、表示手段190に表示することができる。
【0017】
保護膜形成装置1は、加工前の板状物Wの表面に保護膜Pを形成する(以下、単に「保護膜形成」と称する。)とともに、加工後の板状物Wの表面に形成された保護膜Pを除去することで板状物Wを洗浄する(以下、単に「板状物洗浄」と称する。)ものであり、後述する筐体5の内部を洗浄する(以下、単に「筐体内部洗浄」と称する)ものである。保護膜形成装置1は、図2に示すように、保持テーブル2と、液体供給手段3と、回転駆動部4と、筐体5とを含んで構成されている。ここで、回転駆動部4による保持テーブル2の回転方向は、正回転R1と逆回転R2があり、本実施形態では、正回転R1を同図における右回転、逆回転R2を同図における左回転とする。
【0018】
保持テーブル2は、板状物Wを上面に保持するものであり、図3に示すように、保持部21と方向板22とを含んで構成され、筐体5の内部に配設されている。
【0019】
保持部21は、板状物Wを吸引保持する保持面21aを有するものであり、ポーラスセラミック等から形成された円盤形状である。保持部21は、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、保持面21aに載置された板状物Wを吸引することで保持するものである。
【0020】
方向板22は、液状樹脂または洗浄水である液体の飛散方向を規定するものであり、保持部21の外周に囲繞して、本実施形態では、保持テーブル2の外周面から半径方向外側に突出して複数配設されている。また、方向板22は、保持面21aに対して傾斜して、本実施形態では、鉛直方向および水平方向に対して傾斜して配設されている。ここで、方向板22の傾斜方向は、図2に示すように、方向板22の上端部が下端部よりも正回転R1側に位置する方向に設定されている。従って、方向板22は、保持テーブル2の回転方向が正回転R1の場合に、液体を保持テーブル2の下方に飛散させ、保持テーブル2が逆回転R2の場合に液体を保持テーブル2の上方へ飛散させることができる。また、方向板22の大きさを規定する鉛直方向における高さは、少なくとも上端部が保持テーブル2により板状物Wが保持された状態で、板状物Wの表面よりも上方に位置するように設定されている。これにより、板状物Wの表面または保持テーブル2の上面に供給された液体は、遠心力により板状物Wの表面または保持テーブル2の上面から飛ばされた際に、方向板22の対向する傾斜面のいずれかに付着し、方向板22が液体の飛散方向を規定することができる。ここで、方向板22の大きさを規定する保持テーブル2の半径方向における幅は、筐体5の内壁51に当接しない大きさに設定されている。これにより、保持テーブル2が回転駆動部4により回転しても、複数の方向板22が筐体5に接触することを防止できる。なお、保持テーブル2の周囲には、隣り合う方向板22の間に等間隔、本実施形態では、90度ごとにクランプ部23が設けられており、クランプ部23が図示しないエアーアクチュエータにより駆動することで、保持部21に保持された板状物Wの周囲に配設された環状フレームFを挟持する。
【0021】
液体供給手段3は、少なくとも保持テーブル2に保持された板状物Wの表面に洗浄水あるいは液状樹脂を供給するものであり、洗浄水供給手段31と、液状樹脂供給手段32とから構成されている。
【0022】
洗浄水供給手段31は、筐体5の内部に配設され、洗浄水を少なくとも保持テーブル2に保持された板状物Wの表面に供給する洗浄水供給ノズル31aを含んで構成されている。洗浄水供給ノズル31aは、ノズル駆動源31bにより、保持テーブル2と当接しない筐体5の内壁51近傍の待避位置と、保持テーブル2に保持された板状物Wと対向する供給位置とを移動可能に支持されている。洗浄水供給ノズル31aには、図示しない開閉弁およびポンプを介して図示しないタンクに貯留されている洗浄水L1が供給され、図示しない噴射口から板状物Wの表面または保持テーブル2の上面に向けて噴射されることで、洗浄水L1が板状物Wの表面または保持テーブル2の上面に供給される。ここで、洗浄水L1は、板状物Wに形成された保護膜Pを除去することができる液体であればよく、例えば純水等である。
【0023】
液状樹脂供給手段32は、筐体5の内部に配設され、液状樹脂を保持テーブル2に保持された板状物Wの表面に供給する液状樹脂供給ノズル32aを含んで構成されている。液状樹脂供給ノズル32aは、ノズル駆動源32bにより、保持テーブル2と当接しない筐体5の内壁51近傍の待避位置と、保持テーブル2に保持された板状物Wと対向する供給位置とを移動可能に支持されている。液状樹脂供給ノズル32aは、図示しない開閉弁およびポンプを介して図示しないタンクに貯留されている液状樹脂L2が供給され、図示しない噴射口から板状物Wの表面に向けて噴射されることで、液状樹脂L2が板状物Wの表面に供給される。ここで、液状樹脂L2は、水溶性であり、例えばPVA(ポリ・ビニール・アルコール)、PGE(ポリ・エチレン・グリコール)、PEO(ポリ・エチレン・オキシド)等である。
【0024】
回転駆動部4は、保持テーブル2と連結されており、保持テーブル2の上面に対して鉛直方向を回転軸として回転させるものであり、保持テーブル2を上下方向Sに移動させるものである。回転駆動部4は、保持テーブル2と連結されたシャフト41と、シャフト41を正回転R1または逆回転R2させる回転駆動源42と、シャフト41を回転駆動源42とともに上下方向Sに移動させる複数のシリンダ機構43と、端部が装置ハウジング101に固定され、各シリンダ機構43によりそれぞれ伸縮する支持脚44とにより構成されている。回転駆動部4は、各支持脚44を各シリンダ機構43により伸ばすことで、保持テーブル2を上方の搬送位置に移動させるとともに、各支持脚44を各シリンダ機構43により縮めることで、保持テーブル2を下方の回転位置に移動させる。回転駆動部4は、回転駆動源42によりシャフト41を、保護膜形成時に正回転、板状物洗浄時に正回転、筐体内部洗浄時に逆回転させる。なお、回転駆動部4には、保持テーブル2が回転位置に位置した際に、筐体5の後述する突出部53が挿入されることで、後述するシャフト開口52から筐体5の内部の雰囲気や洗浄水L1、液状樹脂L2など液体が漏れることを抑制するカバーがシャフト41に設けられている。
【0025】
筐体5は、保持テーブル2、保持テーブル2に保持された板状物Wおよび液体供給手段3の洗浄水供給ノズル31aおよび液状樹脂供給ノズル32aを囲むものである。筐体5は、上部が開放された円筒形状であり、内壁51のうち底部の中央部にシャフト41が挿入されるシャフト開口52が形成されおり、シャフト開口52の周囲に上方に突出する突出部53が円形に形成されている。また、筐体5の底部は、溶液排出口54が形成されており、底部の落ちた洗浄水L1または液状樹脂L2である液体が溶液排出口54に容易に移動できるようテーパー状に形成されている。溶液排出口54に集まった液体は、溶液配管55を介して、溶液配管55が接続されている図示しない溶液タンクに貯留される。なお、筐体5の上部には、筐体5の内部を閉塞・開放可能な図示しない天井装置が配設されている。
【0026】
カセット載置台140は、カセット200を載置するものであり、装置ハウジング101の内部に形成された空間部であるカセット載置部をZ軸方向において昇降自在に構成されている。ここで、カセット200は、板状物Wを1枚ずつ収容することで、複数の板状物Wを収容することができるものであり、カセット載置台140に着脱自在に形成されている。
【0027】
搬出入手段150は、カセット載置台140に載置されたカセット200に対して板状物Wを搬出入するものであり、カセット200に収容された加工前の板状物Wを処理領域(レーザー光線照射手段120により板状物Wを処理できる領域)まで搬送するために搬出し、レーザー光線照射手段120により加工された板状物Wをカセット200に搬入するものである。搬出入手段150は、本実施形態では、カセット200と位置合わせ手段160との間で板状物Wの搬送を行うものである。
【0028】
位置合わせ手段160は、仮置き部でもあり、一対のレール161を有し、一対のレール161上に加工前後の板状物Wを一時的に載置し、板状物Wの位置合わせを行うものである。搬送手段171は、位置合わせ手段160に載置された加工前の板状物Wを保護膜形成装置1に搬送するとともに、洗浄された加工後の板状物Wを位置合わせ手段160に搬送するものである。搬送手段172は、保護膜形成が行われた加工前の板状物Wをチャックテーブル110に搬送するとともに、チャックテーブル110に保持された加工後の板状物Wを保護膜形成装置1に搬送するものである。
【0029】
制御手段180は、レーザー加工装置100および保護膜形成装置1を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御するものである。制御手段180は、レーザー光線を照射し、チャックテーブル110とレーザー光線照射手段120とを相対移動させることで、板状物Wに対するレーザー加工をレーザー光線照射手段120に行わせるものである。また、制御手段180は、板状物Wの表面に対する保護膜Pを形成、板状物Wの洗浄、筐体5の内部の洗浄を保護膜形成装置1に行わせるものでもある。なお、制御手段180は、例えばCPU等で構成された演算処理装置やROM、RAM等を備える図示しないマイクロプロセッサを主体として構成されており、レーザー光線照射手段120の加工動作の状態を表示する表示手段190や、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない操作手段と接続されている。
【0030】
次に、保護膜形成装置1の動作をレーザー加工装置100の動作とともに説明する。図4は、本実施形態に係る保護膜形成装置の動作のフローチャート図である。図5は、保護膜形成装置の動作説明図である。図6は、保護膜形成装置の動作説明図である。まず、オペレータが加工内容情報を登録し、加工前の板状物Wが複数枚収容されたカセット200をカセット載置台140に載置してあり、加工動作の開始指示があった場合に、レーザー加工動作を開始する。レーザー加工動作において、板状物Wは、搬出入手段150によりカセット200から位置合わせ手段160に搬出され、位置合わせ手段160の一対のレール161上に載置され、位置合わせが行われた後、搬送手段171により保護膜形成装置1に搬送される。
【0031】
次に、図4に示すように、保護膜形成が行われる(ステップST1)。ここでは、搬送手段171により板状物Wが保護膜形成装置1まで搬送される前に、洗浄水供給ノズル31aおよび液状樹脂供給ノズル32aを待避位置に移動させた状態で、保持テーブル2を搬送位置まで上昇させておき、加工前の板状物Wを保持部21が吸引保持することで保持テーブル2の上面に保持する。次に、加工前の板状物Wが保持された保持テーブル2を回転位置まで下降させ、液状樹脂供給ノズル32aを供給位置まで移動させる。次に、制御手段180は、図5に示すように、板状物Wが保持されている保持テーブル2を回転駆動部4により正回転R1させるとともに、液状樹脂供給ノズル32aから液状樹脂L2を供給する。これにより、板状物Wの表面に供給された液状樹脂L2が遠心力により板状物Wの表面全体に広がる。次に、制御手段180は、液状樹脂供給ノズル32aによる液状樹脂L2の供給を停止し、所定時間、保持テーブル2の回転を維持することで、板状物Wの表面の液状樹脂を乾燥させることで固形化し、板状物Wの表面に保護膜Pが形成される。ここで、液状樹脂L2のうち、遠心力で板状物Wの表面から半径方向外側に飛ばされた余剰の液状樹脂L2は、方向板22の正回転R1側の傾斜面に付着し、傾斜面を下方に移動して、下端部から保持テーブル2の下方に飛散する。従って、方向板22により下方に飛散した液状樹脂L2は、大部分が筐体5の内壁51うち底部に落下することとなり、方向板22が設けられていない場合と比較して、筐体5の内壁51のうち内周面に付着することを抑制することができる。これにより、液体が溶液排出口54からすぐに排出されやすいので、液状樹脂L2が筐体5の内壁51に付着して乾燥することで固形化することを抑制することができる。
【0032】
次に、図4に示すように、レーザー加工が行われる(ステップST2)。ここでは、保護膜形成装置1により保護膜Pが形成された板状物Wを搬送手段172によりチャックテーブル110に搬送し、チャックテーブル110に保持された板状物Wに対してアライメント調整が行われる。アライメント調整では、制御手段180は、板状物Wを保持したチャックテーブル110を撮像位置までX方向に移動させ、撮像手段130により保持された板状物Wの表面を撮像し、撮像した画像に基づいて、保持された板状物Wのレーザー光線照射手段120に対する相対位置を調整する。次に、制御手段180は、撮像位置の板状物Wを保持したチャックテーブル110を加工位置までX方向に移動させ、加工内容情報に基づいて、レーザー光線照射手段120により、板状物Wに対してレーザー光線を照射し、レーザー加工を実行する。レーザー加工された加工後の板状物Wは、チャックテーブル110から搬送手段172により再び保護膜形成装置1に搬送される。
【0033】
次に、板状物洗浄が行われる(ステップST3)。ここでは、搬送手段172により板状物Wが保護膜形成装置1まで搬送される前に、洗浄水供給ノズル31aおよび液状樹脂供給ノズル32aを待避位置に移動させた状態で、保持テーブル2を搬送位置まで上昇させておき、加工後の板状物Wを保持部21が吸引保持することで保持テーブル2の上面に保持する。次に、加工後の板状物Wが保持された保持テーブル2を回転位置まで下降させ、洗浄水供給ノズル31aを供給位置まで移動させる。次に、制御手段180は、図2に示すように、保護膜Pが形成された板状物Wが保持されている保持テーブル2を回転駆動部4により正回転R1させるとともに、洗浄水供給ノズル31aから洗浄水L1を供給する。これにより、供給された洗浄水L1が遠心力により保護膜P全体に広がり、保護膜Pが洗浄水L1により液状化し洗浄水L1に含まれ、遠心力により板状物Wの表面から半径方向外側に飛ばされる。飛ばされた液状化した保護膜Pを含む洗浄水L1、すなわち汚染された洗浄水L1は、方向板22の正回転R1側の傾斜面に付着し、傾斜面を下方に移動して、下端部から保持テーブル2の下方に飛散する。従って、方向板22により下方に飛散した、汚染された洗浄水L1は、大部分が筐体5の内壁51うち底部に落下することとなり、方向板22が設けられていない場合と比較して、筐体5の内壁51のうち内周面に付着することを抑制することができる。これにより、液体が溶液排出口54からすぐに排出されやすいので、汚染された洗浄水L1に含まれる液状化した保護膜Pが筐体5の内壁51に付着して乾燥することで再び固形化することを抑制することができる。
【0034】
次に、筐体内部洗浄が行われる(ステップST4)。ここでは、板状物洗浄が行われ、板状物Wの表面に形成された保護膜Pが除去された後に、板状物Wが保持テーブル2に保持されたまま、筐体内部洗浄を行う。制御手段180は、図6に示すように、保護膜Pが除去された板状物Wが保持されている保持テーブル2を回転駆動部4により逆回転R2させるとともに、洗浄水供給ノズル31aから洗浄水L1を供給する。これにより、供給された洗浄水L1が遠心力で板状物Wの表面から半径方向外側に飛ばされる。飛ばされた洗浄水L1は、方向板22の逆回転R2側の傾斜面に付着し、傾斜面を上方に移動して、上端部から保持テーブル2の上方に飛散し、筐体5の内部を洗浄する。方向板22により上方に飛散した洗浄水L1は、大部分が筐体5の内壁51うち上部の内周面や上述の天井装置に付着したのち、底部に滴下することとなり、方向板22が設けられていない場合と比較して、洗浄水L1を筐体5の内壁51のうち上部に付着させることができる。これにより、洗浄水L1を筐体5の内壁51の全体に行き渡らせることができるので、筐体5の内部で固形化した液状樹脂L2や再度固形化した保護膜Pを液状化することができ、洗浄水L1とともに溶液排出口54から排出することができる。なお、保護膜形成装置1により洗浄された板状物Wは、搬送手段171により、位置合わせ手段160の一対のレール161上に載置され、搬出入手段150により位置合わせ手段160からカセット200に搬入される。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る保護膜形成装置1は、保持テーブル2に複数の方向板22を設けることで、保護膜形成時および板状物洗浄時に、液状樹脂L2および汚染された洗浄水L1を筐体5の内部に飛散することを抑制でき、筐体内部洗浄時に洗浄水L1を筐体5の内部の上方に飛散させることで、筐体5の内部の全体を洗浄できるので、筐体5の内部を容易に洗浄することができる。また、保持テーブル2に複数の方向板22を設けるのみで実現できるので、簡単な構成で実現することができる。また、通常の板状物Wの表面の保護膜Pを除去する洗浄工程において保持テーブル2の回転方向を逆回転することで、筐体5の内部の洗浄を行うことができるので、カセット200から搬出されてから搬入されるまでの時間、すなわちリードタイムの増加を抑制することができる。また、筐体内部洗浄時に洗浄水L1を筐体5の内部の上方に飛散させるので、洗浄水供給ノズル31aおよび液状樹脂供給ノズル32aの洗浄も行うことができる。
【0036】
なお、上記実施形態において、筐体内部洗浄時に回転駆動部4により保持テーブル2の回転速度を変化させてもよい。方向板22によって洗浄水L1を筐体5の内部の上方に飛散できる高さは、保持テーブル2の回転速度が速いほどと高くなる。つまり、保持テーブル2の回転速度を変化させることで、洗浄水L1の方向板22による上方への飛散状態を調整することができる。また、上記実施形態において、筐体内部洗浄時に回転駆動部4により保持テーブル2の位置を上下動させてもよい。方向板22によって洗浄水L1を筐体5の内部の上方に飛散できる高さは、保持テーブル2の位置が高いほどと高くなる。つまり、保持テーブル2の高さを変化させることで、洗浄水L1の方向板22による上方への飛散状態を調整することができる。これらにより、洗浄水L1を筐体5の内部の任意の位置に飛散することができる。
【0037】
また、上記実施形態では、筐体内部洗浄は、板状物洗浄後に行われるが、本発明はこれに限定されるものではなく、保護膜形成後や、所定時間毎に行われてもよい。図7は、保護膜形成装置による筐体内部洗浄の説明図である。図7に示すように、保持テーブル2に板状物Wが保持されていない状態で、板状物洗浄を行ってもよい。この場合は、保持テーブル2を回転駆動部4により逆回転R2させるとともに、洗浄水供給ノズル31aから洗浄水L1を供給すると、供給された洗浄水L1が遠心力で保持テーブル2の上面(保持面21a)から半径方向外側に飛ばされ、方向板22の上端部から保持テーブル2の上方に飛散し、筐体5の内部を洗浄することとなる。
【0038】
また、上記実施形態では、方向板22の傾斜面が直線で形成されているが曲線で形成されていてもよい。また、方向板22の傾斜角度(鉛直方向となす角度)は、45度以下であることが好ましい。方向板22の傾斜角度が45度を超えると、保持テーブル2の上方または下方に飛散する量よりも半径方向外側に飛散する量が増加し、方向板22の効果が低くなるためである。
【符号の説明】
【0039】
1 保護膜形成装置
2 保持テーブル
21 保持部
21a 保持面
22 方向板
3 液体供給手段
31 洗浄水供給手段
31a 洗浄水供給ノズル
32 液状樹脂供給手段
32a 液状樹脂供給ノズル
4 回転駆動部
5 筐体
100 レーザー加工装置
110 チャックテーブル
120 レーザー光線照射手段
130 撮像手段
140 カセット載置台
150 搬出入手段
160 位置合わせ手段
171,172 搬送手段
180 制御手段
L1 洗浄水
L2 液状樹脂
P 保護膜
W 板状物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7