(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905009
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】リソグラフィ上重大な汚染フォトマスク欠陥のウェハ面検出
(51)【国際特許分類】
G03F 1/84 20120101AFI20160407BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
G03F1/84
G01N21/956 A
【請求項の数】38
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-527219(P2013-527219)
(86)(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公表番号】特表2013-541038(P2013-541038A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】US2011049739
(87)【国際公開番号】WO2012030825
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2014年8月27日
(31)【優先権主張番号】12/871,813
(32)【優先日】2010年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー−テンカー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シ リュイファン
(72)【発明者】
【氏名】シオン ヤーリン
【審査官】
赤尾 隼人
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−515952(JP,A)
【文献】
特開2004−212218(JP,A)
【文献】
特開2009−294123(JP,A)
【文献】
特表2001−516898(JP,A)
【文献】
特開2006−276454(JP,A)
【文献】
特開2008−165198(JP,A)
【文献】
特開2007−064842(JP,A)
【文献】
特開2007−310162(JP,A)
【文献】
特開2007−071629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86;7/20
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別するためにフォトマスクを検査する方法であって、
1つ又は複数の印刷できるフィーチャと1つ又は複数の印刷できないフィーチャとを備えるフォトマスクであり、リソグラフィシステムを用いて基板上への1つ又は複数の印刷できるフィーチャのリソグラフィ転写を達成するように構成されるフォトマスクを提供すること、
検査装置を用いて、テスト透過イメージ及びテスト反射イメージを備える、前記フォトマスクのテストイメージをもたらすこと、
リソグラフィ転写で採用されるべきリソグラフィシステムのモデルを提供すること、
前記テストイメージに前記リソグラフィシステムのモデルを適用することによってテストシミュレーションイメージを構築すること、
参照ダイ又は参照データベースを用いずに、前記テストイメージから欠陥を除去することによって前記テストイメージから合成参照イメージを構築すること、
前記合成参照イメージに前記リソグラフィシステムのモデルを適用することによって、前記合成参照イメージから、リソグラフィ上重大な汚染欠陥を含まずに構築される、参照シミュレーションイメージを構築すること、
リソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別するために前記テストシミュレーションイメージを前記参照シミュレーションイメージと比較すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記テスト透過イメージを前記テスト反射イメージに対して位置合わせすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リソグラフィ転写で採用されるべきフォトレジストシステムのモデルを提供すること、
前記リソグラフィシステムのモデルを適用することに加えて前記フォトレジストシステムのモデルを適用することによって前記テストシミュレーションイメージ及び前記参照シミュレーションイメージを構築すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フォトレジストシステムのモデルがレジスト形成プロセス特徴を備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記参照シミュレーションイメージが参照シミュレーション透過イメージ及び参照シミュレーション反射イメージを備え、前記テストシミュレーションイメージがテストシミュレーション透過イメージ及びテストシミュレーション反射イメージを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記テストシミュレーションイメージを前記参照シミュレーションイメージと比較することが、
前記参照シミュレーション透過イメージを前記テストシミュレーション透過イメージと比較すること、
前記参照シミュレーション反射イメージを前記テストシミュレーション反射イメージと比較すること、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
リソグラフィ上重大な汚染欠陥を分類することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ又は複数の印刷できないフィーチャがサブレゾリューションアシストフィーチャ(SRAF)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ又は複数の印刷できないフィーチャのリソグラフィ効果が、前記テストシミュレーションイメージ及び前記参照シミュレーションイメージに取り込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記印刷できないフィーチャのうちの少なくとも1つが、前記印刷できるフィーチャのうちの少なくとも1つよりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記テストシミュレーションイメージを構築することが、線形項だけを含む帯域制限されたマスクパターンを構築することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記テストシミュレーションイメージを構築することが、前記帯域制限されたマスクパターンの光学強度分布に基づいて前記1つ又は複数の印刷できるフィーチャから前記1つ又は複数の印刷できないフィーチャを分離することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
幾何学的フィーチャをエッジ、角、及びライン端からなる群から選択された1つ又は複数の幾何学的フィーチャタイプに分類するために前記帯域制限されたマスクパターンに基づいて幾何学的マップを構築することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記リソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別しながら前記幾何学的フィーチャを分類するために前記幾何学的マップを用いることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記リソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別することが、前記幾何学的マップの少なくとも2つの異なる幾何学的フィーチャタイプに異なる検出閾値を適用することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記テストシミュレーションイメージに基づいてフィーチャマップを構築することをさらに含み、前記フィーチャマップが、対応するマスクエラーエンハンスメントファクタ(MEEF)をそれぞれが有する複数のイメージ部分を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記リソグラフィ上重大な汚染欠陥の識別中に、対応する前記MEEFに基づいて前記複数のイメージ部分の各イメージ部分に関する検出閾値を自動調節することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記リソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別するためのユーザ定義検出閾値を提供することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記リソグラフィシステムのモデルが、以下のパラメータ、すなわち、リソグラフィシステム及び検査装置の開口数、リソグラフィシステム及び検査装置の波長、及びリソグラフィシステム及び検査装置の照明条件のうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
以下の動作、すなわち、
フォトマスクのテストイメージであり、テスト透過イメージ及びテスト反射イメージを備えるテストイメージをもたらすこと、
前記テストイメージにリソグラフィシステムのモデルを適用することによってテストシミュレーションイメージを構築すること、
参照ダイ又は参照データベースを用いずに、前記テストイメージから欠陥を除去することによって前記テストイメージから合成参照イメージを構築すること、
前記合成参照イメージに前記リソグラフィシステムのモデルを適用することによって、前記合成参照イメージから、前記リソグラフィ上重大な汚染欠陥のない参照シミュレーションイメージを構築すること、
リソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別するために前記テストシミュレーションイメージを前記参照シミュレーションイメージと比較すること、
を行うように構成される少なくとも1つのメモリ及び少なくとも1つのプロセッサを備える、リソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別するために1つ又は複数の印刷できるフィーチャと1つ又は複数の印刷できないフィーチャとを有するフォトマスクを検査するためのシステム。
【請求項21】
前記少なくとも1つのプロセッサは、さらに前記テスト透過イメージを前記テスト反射イメージに対して位置合わせするように構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記少なくとも1つのプロセッサは、さらに、
リソグラフィ転写で採用されるべきフォトレジストシステムのモデルを提供すること、
前記リソグラフィシステムのモデルを適用することに加えて前記フォトレジストシステムのモデルを適用することによって前記テストシミュレーションイメージ及び前記参照シミュレーションイメージを構築すること、
を行うように構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記フォトレジストシステムのモデルがレジスト形成プロセス特徴を備える、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記参照シミュレーションイメージが参照シミュレーション透過イメージ及び参照シミュレーション反射イメージを備え、前記テストシミュレーションイメージがテストシミュレーション透過イメージ及びテストシミュレーション反射イメージを備える、請求項20に記載のシステム。
【請求項25】
前記テストシミュレーションイメージを前記参照シミュレーションイメージと比較することが、
前記参照シミュレーション透過イメージを前記テストシミュレーション透過イメージと比較すること、
前記参照シミュレーション反射イメージを前記テストシミュレーション反射イメージと比較すること、
を含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記少なくとも1つのプロセッサは、さらにリソグラフィ上重大な汚染欠陥を分類するように構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項27】
前記1つ又は複数の印刷できないフィーチャがサブレゾリューションアシストフィーチャ(SRAF)を含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項28】
前記1つ又は複数の印刷できないフィーチャのリソグラフィ効果が、前記テストシミュレーションイメージ及び前記参照シミュレーションイメージに取り込まれる、請求項20に記載のシステム。
【請求項29】
前記印刷できないフィーチャのうちの少なくとも1つが、前記印刷できるフィーチャのうちの少なくとも1つよりも大きい、請求項20に記載のシステム。
【請求項30】
前記テストシミュレーションイメージを構築することが、線形項だけを含む帯域制限されたマスクパターンを構築することを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項31】
前記テストシミュレーションイメージを構築することが、前記帯域制限されたマスクパターンの光学強度分布に基づいて前記1つ又は複数の印刷できるフィーチャから前記1つ又は複数の印刷できないフィーチャを分離することを含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記少なくとも1つのプロセッサは、さらに幾何学的フィーチャをエッジ、角、及びライン端からなる群から選択された1つ又は複数の幾何学的フィーチャタイプに分類するために前記帯域制限されたマスクパターンに基づいて幾何学的マップを構築するように構成されている、請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
前記少なくとも1つのプロセッサは、さらに前記リソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別しながら前記幾何学的フィーチャを分類するために前記幾何学的マップを用いるように構成されている、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記リソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別することが、前記幾何学的マップの少なくとも2つの異なる幾何学的フィーチャタイプに異なる検出閾値を適用することを含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項35】
前記少なくとも1つのプロセッサは、さらに前記テストシミュレーションイメージに基づいてフィーチャマップを構築するように構成されており、前記フィーチャマップが、対応するマスクエラーエンハンスメントファクタ(MEEF)をそれぞれが有する複数のイメージ部分を備える、請求項20に記載のシステム。
【請求項36】
前記少なくとも1つのプロセッサは、さらに前記リソグラフィ上重大な汚染欠陥の識別中に、対応する前記MEEFに基づいて前記複数のイメージ部分の各イメージ部分に関する検出閾値を自動調節するように構成されている、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記少なくとも1つのプロセッサは、さらに前記リソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別するためのユーザ定義検出閾値を提供するように構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項38】
前記リソグラフィシステムのモデルが、以下のパラメータ、すなわち、リソグラフィシステム及び検査装置の開口数、リソグラフィシステム及び検査装置の波長、及びリソグラフィシステム及び検査装置の照明条件のうちの少なくとも1つを備える、請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、すべての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWihl他の2007年11月1日に出願された「METHOD FOR DETECTING LITHOGRAPHICALLY SIGNIFICANT DEFECTS ON RETICLES」と題する米国特許出願第11/622,432号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
集積回路(IC)の密度及び複雑さが増加し続けるのに伴い、フォトマスクパターンの検査が次第により困難になる。すべての新世代のICは、リソグラフィシステムの光学的限界に現在到達し及びこれを超える、より密集した及びより複雑なパターンを有する。これらの限界を克服するために、光学近接効果補正(Optical Proximity Correction)(OPC)のような種々の解像度向上技術(Resolution Enhancement Technology)(RET)が導入されている。例えば、OPCは、結果として生じる印刷されるパターンが元の所望のパターンに対応するようにフォトマスクパターンを修正することによって、幾つかの回折限界を克服する一助となる。こうした修正は、メインICフィーチャ(特徴)、すなわち、印刷できるフィーチャのサイズ及びエッジへの外乱を含むことがある。他の修正は、パターンの角へのセリフ(小さなパターン:serifs)の付加、及び/又は結果的に印刷されるフィーチャをもたらすことが予期されない、したがって印刷できないフィーチャと呼ばれる、サブレゾリューションアシストフィーチャ(sub−resolution assist feature)(SRAF)を近くに提供することを含む。これらの印刷できないフィーチャは、他の方法では印刷プロセス中に発生するであろうパターン外乱を打ち消すことが予期される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
印刷できるフィーチャの密集群を有するマスクへの印刷できないフィーチャの付加は、フォトマスク検査をさらに複雑なものにする。さらに、印刷できないフィーチャと印刷できるフィーチャは、印刷されるパターンに対して異なる影響を有する。したがって、これらのフィーチャに対応する欠陥は、異なるリソグラフィ上の重大さを有することになり、欠陥のうちの幾つかは検査中に無視されることがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
提供されるのは、リソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別するためにフォトマスクを検査する新規な方法及びシステムである。検査は、データベース又は別のダイから提供される別個の参照イメージなしに行われてもよい。本明細書で説明される検査技術は、フォトマスクの1つ又は複数のテストイメージを取り込むことと、特定のリソグラフィ及び/又はレジストモデルを用いて対応するテスト「シミュレーション」イメージを構築することを含む。これらのテストシミュレーションイメージは、検査されるフォトマスクの印刷できるパターン及び/又はレジストパターンをシミュレートする。さらに、最初のテストイメージは、「合成」イメージを生成するために並列動作で用いられる。これらのイメージは、欠陥のないフォトマスクパターンを表す。合成イメージは、次いで、テストシミュレーションイメージと類似しているがリソグラフィ上重大な汚染欠陥のない参照シミュレーションイメージを生成するのに用いられる。最後に、フォトマスク上のリソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別するために、参照シミュレーションイメージがテストシミュレーションイメージと比較される。
【0005】
或る実施形態では、リソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別するためにフォトマスクを検査する方法は、1つ又は複数の印刷できるフィーチャと1つ又は複数の印刷できないフィーチャとを有するフォトマスクを提供すること、テスト透過イメージ(透過イメージのテスト版)及びテスト反射イメージ(反射イメージのテスト版)を生成すること、及びテストイメージにリソグラフィシステムモデルを適用することによってテストシミュレーションイメージを構築することを含む。印刷できないフィーチャの一例は、サブレゾリューションアシストフィーチャ(SRAF)を含む。或る実施形態では、少なくとも1つの印刷できないフィーチャは、少なくとも1つの印刷できるフィーチャよりも大きい。或る実施形態では、テスト透過イメージは、テスト反射イメージと位置合わせされる。方法はまた、テストイメージから合成参照イメージを構築することを含み、これは次に、リソグラフィシステムモデルを適用することによって合成参照イメージから参照シミュレーションイメージを構築するのに用いられる。合成参照イメージは、テストイメージから欠陥を除去することによって構築され、これは次に、リソグラフィ上重大な汚染欠陥のない参照シミュレーションイメージに変換される。方法は、次いで、リソグラフィ上重大な欠陥を識別するためにテストシミュレーションイメージを参照シミュレーションイメージと比較することを始める。リソグラフィシステムモデルの適用は、印刷できないフィーチャのリソグラフィ効果を対応するテストシミュレーションイメージ及び参照シミュレーションイメージに取り込むことを可能にする。この検査方法は、参照ダイ又は参照データベース、すなわち、参照ダイ又は参照データベースから提供される別個の参照イメージを用いずに実施されてもよい。
【0006】
或る実施形態では、リソグラフィシステムモデルは、以下のパラメータ、すなわち、リソグラフィシステム及び/又は検査装置の開口数、リソグラフィシステム及び/又は検査装置の波長、並びにリソグラフィシステム及び/又は検査装置の照明条件のうちの1つ又は複数を含む。或る実施形態では、検査方法はまた、リソグラフィ転写で採用されるべきフォトレジストシステムのモデルを提供すること、及びこのモデルを用いてテストシミュレーションイメージ及び参照シミュレーションイメージを構築することを含む。フォトレジストシステムモデルは、種々のレジスト形成プロセス特徴を含んでもよい。或る実施形態では、方法は、リソグラフィ上重大な汚染欠陥の分類を含んでもよい。
【0007】
或る実施形態では、参照シミュレーションイメージは、参照シミュレーション透過イメージ及び参照シミュレーション反射イメージを含み、一方、テストシミュレーションイメージは、テストシミュレーション透過イメージ及びテストシミュレーション反射イメージを含む。これらの実施形態では、リソグラフィ上重大な汚染欠陥の識別は、参照シミュレーション透過イメージをテストシミュレーション透過イメージと比較すること、及び参照シミュレーション反射イメージをテストシミュレーション反射イメージと比較することを含んでもよい。
【0008】
或る実施形態では、テストシミュレーションイメージを構築することは、線形項だけを含む帯域制限されたマスクパターンを構築することを含む。マスクパターン関数のこうした省略形は、検査プロセスを迅速化するのを助けることができる。しかしながら、さらなる正確さが必要とされる場合、帯域制限されたマスクパターンはまた、非線形(二次)項を含んでもよい。テストシミュレーションイメージを構築することは、帯域制限されたマスクパターンの光学強度分布に基づいて印刷できないフィーチャから印刷できるフィーチャを分離することを含んでもよい。或る実施形態では、方法はまた、幾何学的フィーチャを以下のカテゴリ、すなわちエッジ、角、ライン端、及び他のフィーチャに分類するために帯域制限されたマスクパターンに基づいて幾何学的マップを構築することを含む。幾何学的マップは、リソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別しながら幾何学的フィーチャを分類するのに用いることができる。さらに、リソグラフィ上重大な汚染欠陥の識別は、幾何学的マップの少なくとも2つの異なる幾何学的フィーチャタイプに異なる検出閾値を適用することを含んでもよい。
【0009】
或る実施形態では、方法はまた、テストシミュレーションイメージに基づいてフィーチャマップを構築することを含む。フィーチャマップは、対応するマスクエラーエンハンスメントファクタ(Mask Error Enhancement Factor)(MEEF)をそれぞれが有する複数のイメージ部分を含んでもよい。MEEFは、次いで、例えば、リソグラフィ上重大な汚染欠陥の識別中に、対応するMEEF値に基づいて各イメージ部分に関する検出閾値を自動調節するのに用いられてもよい。或る実施形態では、プロセスはまた、リソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別するためのユーザ定義検出閾値を提供することを含む。
【0010】
或る実施形態では、提供されるのは、以下の動作、すなわち、フォトマスクのテストイメージをもたらすこと、テストイメージにリソグラフィシステムモデルを適用することによってテストシミュレーションイメージを構築すること、テストイメージから欠陥を除去することによってテストイメージから合成参照イメージを構築すること、合成参照イメージにリソグラフィシステムのモデルを適用することによって参照シミュレーションイメージを構築すること、及びリソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別するためにテストシミュレーションイメージを参照シミュレーションイメージと比較することを行うように構成される少なくとも1つのメモリ及び少なくとも1つのプロセッサを含むリソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別するためにフォトマスクを検査するシステムである。
【0011】
本発明のこれらの及び他の態様は、図面を参照して以下でさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】或る実施形態に係るフォトマスクからウェハ上にマスクパターンを転写するためのリソグラフィシステムの簡易略図である。
【
図1B】或る実施形態に係るフォトマスク検査装置の略図である。
【
図2】リソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別するためにフォトマスクを検査する方法の一例に対応するプロセスフローチャートを例証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明では、本発明の十分な理解を提供するために多くの具体的な詳細が記載される。本発明は、これらの具体的な詳細のうちの幾つか又はすべてを伴わずに実施されてもよい。他の場合においては、周知のプロセス動作は、本発明を不必要に不明瞭にしないために詳細に説明されていない。本発明は、具体的な実施形態と併せて説明されることになるが、本発明を幾つかの実施形態に限定することを意図されないことが理解されるであろう。
【0014】
緒言
本明細書で説明される新規な方法及びシステムは、リソグラフィ上重大な汚染欠陥を識別するためにフォトマスクを検査するのに用いられる。検査は、検査されるフォトマスクの1つ又は複数のテストイメージを取り込むこと、及びこれらのイメージを用いてシミュレーションイメージの少なくとも2つの別個の組を発現させることを含み、このうち1つはリソグラフィ上重大な欠陥を有さず、参照として用いられる。シミュレーションイメージは、リソグラフィシステムの種々の特徴、或る実施形態では、フォトレジスト材料の特徴を考慮に入れている。このモデルベースの手法は、リソグラフィ上重大な欠陥に焦点を当て、フォトリソグラフィプロセス中に印刷されない及びリソグラフィ上重大ではない多くの他の欠陥を無視する。
【0015】
或る具体的な実施形態では、検査されるフォトマスクの2つ以上のテスト光強度イメージが、特異的に構成された検査システムを用いて取り込まれる。複数のテストイメージは、フォトマスクの異なる光学特徴、例えば、異なる波長でとられる1つ又は複数の透過イメージ及び反射イメージを表す。これらのイメージは、次いで、或る実施形態では線形項だけを含むテストイメージの関数表現である「帯域制限されたマスクパターン」を回復させるために位置合わせされ及び一緒に処理される。ステッパ(縮小投影型露光装置)及び/又はスキャナの種々の特徴を含むリソグラフィシステムモデルが、次いで、シミュレーションテストイメージ、例えば、エアリアルイメージ又はフォトレジストイメージを生成するために適用される。並列動作の組において、テストイメージは、イメージからのあらゆる欠陥を排除するように処理される。結果として生じるイメージは、「合成」イメージと呼ばれる。合成シミュレーションイメージを生成するためにリソグラフィシステムモデルが同様にテストイメージへの合成イメージに適用され、次に、種々の欠陥情報を得るために合成シミュレーションイメージがテストシミュレーションイメージと比較される。特に、テストイメージと参照イメージとの両方へのリソグラフィシステムモデルの適用に起因して、この欠陥情報はリソグラフィ上重大な欠陥に関係する。
【0016】
ダイ・ツー・ダイ又はデータベースから別個の参照イメージを得ることを必要としないフォトマスク検査システムの例は、カリフォルニア州ミルピタスのKLA Tencorから入手可能なStarlight(商標)検査システムである。このシステムは、フォトマスクの高分解能透過イメージ及び反射イメージを取り込み、且つ2つのイメージを組み合わせて合成参照マスクイメージを生成するように設計される。この合成参照イメージは、実際のフォトマスクが欠陥を有する場合であっても欠陥(例えば、汚染のシグネチャ)を含まない。合成参照マスクイメージは、次いで、合成参照透過イメージ及び反射イメージを生成するのに用いられ、これらは、欠陥を判定するために取り込まれたテストイメージと比較される。このシステムは種々のフォトマスク欠陥を識別するのに上手く用いることができるが、これは、ウェハの印刷適性欠陥を考慮する又はリソグラフィ上重大な欠陥に特異的に焦点を当てるように設計されない。言い換えれば、このシステムは、リソグラフィ印刷の効果を考慮に入れていない。上述のように、すべての欠陥が、結果として生じる印刷されるパターンに対する影響を有するわけではなく、したがって、これらの欠陥のうちの幾つかは無視することができる及び無視されるべきである。例えば、平面場(flat−field)モリブデン−シリコン領域における汚染欠陥は、ウェハの印刷適性に対する影響が小さいか又は影響を有さない。同様に、多くのOPCフィーチャ欠陥は、リソグラフィ上の重大さを有さないか又はリソグラフィ上の重大さが非常に小さい。さらに、検査者がリソグラフィ上重大な欠陥と重大でない欠陥とを区別することは非常に困難であり、しばしば不可能である。現代のリソグラフィシステムは、進歩したステッパ照明プロフィールを使用するものであり、イメージング挙動の部分的にコヒーレンスな性質を基にしており、これは検査者の手での欠陥の分別を非常に難しい作業にする。
【0017】
本明細書で説明される新規な方法及びシステムは、リソグラフィ及び/又はフォトレジストシステムモデルで提供される印刷適性(印刷不適性)特徴を自動的に考慮に入れる。さらに、或る提案される検査技術は、データベース又は別のダイから提供される別個の参照イメージを必要としない。生産環境では、別個の参照イメージが典型的に利用可能ではないので、これは顕著な利点を与える。最後に、或る提案される方法は、高いMEEFをもつ領域での自動マスクエラーエンハンスメントファクタ(MEEF)の増強を可能にする。幾つかの発明的態様が検査システム及び技術との関連においてここでさらに解説されることになる。
【0018】
検査システムの例
図1Aは、或る実施形態に係るフォトマスクMからウェハW上にマスクパターンを転写するのに用いることができる典型的なリソグラフィシステム100の簡易略図である。こうしたシステムの例は、スキャナ及びステッパ、より具体的にはオランダのフェルドホーフェン(Veldhoven)のASMLから入手可能なTWINSCANシステム(例えば、TWINSCAN NXT:1950i Step−and−Scanシステム)のうちの1つを含む。一般に、照明源103は、照明レンズ105を通してマスク面102内に位置するフォトマスクM上に光ビームを誘導する。照明レンズ105は、該面102での開口数101を有する。開口数101の値は、フォトマスク上のどの欠陥がリソグラフィ上重大な欠陥であるか及びどれがそうではないかに影響する。フォトマスクMを通過するビームの一部は、パターン転写を開始するためにイメージング光学系153を通してウェハW上に誘導される、パターン形成された光信号を形成する。
【0019】
図1Bは、或る実施形態に係るレチクル面152での相対的に大きい開口数151bをもつイメージングレンズ151aを有する検査システム150の略図を提供する。描かれた検査システム150は、強化された検査のために例えば倍率60〜200Xを提供するように設計される微視的拡大光学系153を含む。検査システムのレチクル面152における開口数151bは、リソグラフィシステム100のレチクル面102における開口数101よりもかなり大きい場合があり、これは、結果的にテスト検査イメージと実際の印刷されるイメージとの間の差異をもたらすであろう。これらの光学系(100、150)のそれぞれは、もたらされるイメージにおける異なる光学効果を誘起し、これらは、本明細書で説明される新規な検査技術で考慮され及び補償される。
【0020】
新規な検査技術は、
図1Bで概略的に例証されるシステムのような種々の特別に構成された検査システム上に実装されてもよい。システム150は、照明光学系161を通してレチクル面152内のフォトマスクM上に誘導される光ビームを生じる照明源160を含む。光源の例は、レーザ又はフィルタ付きランプを含む。一例では、ソースは193nmレーザである。上述のように、検査システム150は、対応するリソグラフィシステムのレチクル面開口数(例えば、
図1Aの要素101)よりも大きい場合があるレチクル面152における開口数151aを有する。検査されるべきフォトマスクMは、レチクル面152におかれ、光源に露出される。マスクMからのパターン形成されたイメージが、拡大光学素子の集合体153を通して誘導され、これはパターン形成されたイメージをセンサ154上に投射する。適切なセンサは、電荷結合素子(CCD)、CCDアレイ、時間遅延積分(TDI)センサ、TDIセンサアレイ、光電子増倍管(PMT)、及び他のセンサを含む。センサ154によって取り込まれる信号は、コンピュータシステム173で、又はより一般には、処理のためにセンサ154からのアナログ信号をデジタル信号に変換するように構成されるアナログ−デジタル変換器を含んでもよい信号処理装置で処理することができる。コンピュータシステム173は、感知された光ビームの強度、位相、及び/又は他の特徴を解析するように構成されてもよい。コンピュータシステム173は、結果として生じるテストイメージ及び他の検査特徴を表示するためにユーザ・インターフェース(例えば、コンピュータスクリーン上)を提供するように構成されてもよい(例えば、プログラミング命令で)。コンピュータシステム173はまた、ユーザ入力を提供する、例えば検出閾値を変えるための1つ又は複数の入力装置(例えば、キーボード、マウス、及び/又はジョイスティック)を含んでもよい。或る実施形態では、コンピュータシステム173は、以下で詳述される検査技術を実行するように構成される。コンピュータシステム173は、典型的に、入力/出力ポートに結合される1つ又は複数のプロセッサと、適切なバス又は他の通信機構を介する1つ又は複数のメモリを有する。
【0021】
こうした情報及びプログラム命令は、特別に構成されたコンピュータシステム上に実装されてもよいので、こうしたシステムは、コンピュータ可読媒体上に格納することができる本明細書で説明される種々の動作を行うためのプログラム命令/コンピュータコードを含む。機械可読媒体の例は、ハードディスク、フロッピーディスク、及び磁気テープのような磁気媒体、CD−ROMディスクのような光学媒体、光ディスクのような光磁気媒体、並びに読出し専用メモリデバイス(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)のようなプログラム命令を格納する及び実行するように特別に構成されるハードウェアデバイスを含むがこれに限定されない。プログラム命令の例は、例えばコンパイラによってもたらされる機械コードと、インタープリタを用いるコンピュータによって実行されてもよいより高次のコードを含むファイルとの両方を含む。或る実施形態では、フォトマスクを検査するためのシステムは、以下の動作、すなわち、テスト透過イメージ及びテスト反射イメージを含むテストイメージをもたらすこと、テストイメージにリソグラフィシステムのモデルを適用することによってテストシミュレーションイメージを構築すること、テストイメージから欠陥を除去することによってテストイメージから合成参照イメージを構築すること、合成参照イメージにリソグラフィシステムのモデルを適用することによって合成参照イメージの参照シミュレーションイメージを構築すること、及びリソグラフィ上重大な欠陥を識別するためにテストシミュレーションイメージを参照シミュレーションイメージと比較することを行うように構成される少なくとも1つのメモリ及び少なくとも1つのプロセッサを含む。検査システムの例は、特別に構成されたTeraScan(商標)DUV検査システムと特異的に構成されたTeron600シリーズレチクル欠陥検査システムとを含み、両方とも米国カリフォルニア州ミルピタスのKLA−Tencorから入手可能である。
【0022】
検査方法の例
図2は、リソグラフィ上重大な欠陥を識別するためにフォトマスクを検査する方法の一例に対応するプロセスフローチャートを例証する。1つ又は複数の印刷できるフィーチャと1つ又は複数の印刷できないフィーチャとを含む種々のタイプのフォトマスクが、この方法を用いて検査されてもよい。例えば、クロム金属吸着薄膜によって画定されるパターンをもつ透明溶融石英ブランクから作製されたフォトマスクを用いることができる。一般に、レチクル、フォトマスク、半導体ウェハ、位相シフトマスク、及び組み込み(埋め込み)位相シフトマスク(Embedded Phase Shift Masks)(EPSM)のような種々の半導体基板を、この方法を用いて検査することができる。前述のように、印刷できないフィーチャは、回折に起因するイメージング誤差を補償するのに用いられる種々の光学近接効果補正(OPC)フィーチャを含んでもよい。1つのタイプのこうしたフィーチャは、サブレゾリューションアシストフィーチャ(SRAF)である。或る実施形態では、少なくとも1つの印刷できないフィーチャは、少なくとも1つの印刷できるフィーチャよりも大きい。
【0023】
検査プロセスのためにフォトマスクが提供されると、例えば、検査システムの検査台上におかれると、プロセスは、202でフォトマスクの1つ又は複数のテストイメージをもたらすことを始めてもよい。例えば、フォトマスクは、2つ以上の光強度イメージを取り込むために異なる照明及び/又は集光条件で照らされてもよい。1つの具体的な実施形態では、透過光強度イメージと反射光強度イメージが取り込まれる。他の実施形態では、フォトマスクが異なる波長で照らされる間に2つ以上の反射イメージ又は2つ以上の透過イメージがもたらされる。例えば、フォトマスク材料が透過を照明光波長の強い関数にする場合、異なる透過レベルをそれぞれが感知する一対の透過イメージを生成するために、異なるが近接した2つの波長を用いることができる。
【0024】
取り込まれるテストイメージは、動作204において典型的に位置合わせされる。この位置合わせは、複数のテストイメージに関する検査システムの光学特性のマッチングを含んでもよい。例えば、透過イメージ及び反射イメージの場合、2つのそれぞれの信号に関する光路の差異を補償するためにイメージの幾らかの調節を行うことができる。位置合わせの調節は、用いられる検査システムの特異的な幾何学的形状に依存する可能性がある。
【0025】
位置合わせされると、206で帯域制限されたマスク振幅関数を回復させるためにテストイメージを処理することができる。この関数はまた、時々、帯域制限されたマスクパターンとも呼ばれる。1つの手法では、部分的にコヒーレントな光学イメージングは、動作206を説明する目的で参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/622,432号でより詳細にさらに解説される2つ以上のコヒーレントシステムの和としてモデル化することができる。具体的には、部分的にコヒーレントなイメージングに関するホプキンスの式は、相互透過係数(transmission cross−coefficient)(TCC)マトリクスを形成するのに用いることができる。このマトリクスは、次いで、コヒーレントシステムのカーネルとして作用する対応する固有ベクトルに分解することができる。これらのコヒーレントシステムのそれぞれからの強度寄与の固有値荷重和は、透過信号の強度を表すのに用いることができるイメージ強度をもたらす。或る実施形態では、テストイメージの反射強度及び透過強度は、帯域制限されたマスク振幅関数と呼ばれる線形項だけで表わすことができる。或る実施形態では、帯域制限されたマスクパターンはまた、特にさらなる正確さが必要な場合に、非線形項を含む。この関数の例は式1で与えられる。
【数1】
式中、a
Rは、マスクのフォアグラウンドトーンとバックグラウンドトーンとの間の差異の複素反射振幅であり、I
T(x,y)は、検査システムを用いるマスクの透過強度イメージを説明し、c
Tは、マスクのバックグラウンドトーンの複素透過振幅であり(例えば、石英及びクロムバイナリマスクでは、C
Tは、クロムパターンの特性を説明することができる)、a
Tは、マスクのフォアグラウンドトーンとバックグラウンドトーンとの間の差異の複素透過振幅であり(例えば、上記と同じマスクを用いて、a
Tは、石英とクロムとの間の差異の光学特性を説明することができ、c
T及びa
Tは、もちろん説明される材料層の特性に応じて変化する)、I
R(x,y)は、検査システムを用いるマスクの反射強度イメージを説明し、C
Rは、マスクのバックグラウンドトーンの複素反射振幅であり、a
Rは、マスクのフォアグラウンドトーンとバックグラウンドトーンとの間の差異の複素反射振幅であり、Re(x)は、xの真の成分を表し、P(x,y)は、検査されるフォトマスクのマスクパターンを定義し、E
i及びλ
iは、それぞれ、検査ツールに関連した相互透過係数(TCC)イメージングマトリクスの関連する要素の固有ベクトル及び固有値を指し、D
iは、E
i及びRe(x)のDC利得である。
【0026】
帯域制限されたマスクパターンM(x,y)は、「回復カーネル」と呼ばれる関数
【数2】
で畳み込まれるマスクパターンP(x,y)によって定義される。したがって、帯域制限されたマスクパターンは、マスクパターン関数P(x,y)の修正版である。
【0027】
帯域制限されたマスクパターンは、次いで、動作208において、テストエアリアルイメージ及び/又はテストレジストイメージのようなテストシミュレーションイメージを生成するのに用いられる。この目的のためにリソグラフィシステムモデル及び/又はフォトレジストシステムモデルが提供される。リソグラフィシステムモデルは、リソグラフィシステム及び検査システムの開口数、リソグラフィシステム及び検査システムで用いられる波長、リソグラフィシステム及び検査システムで用いられる照明条件、及び他のリソグラフィパラメータ及び検査パラメータを含んでもよい。例えば、米国特許出願第11/622,432号でさらに解説されるように、リソグラフィシステムモデルの基本カーネルは、回復されるマスクパターンの帯域制限された性質に起因するリソグラフィシステムの通過帯域内のあらゆるロール・オフをバックアウトするように調節されてもよい。一組の修正されたコヒーレントベースを定義する関数(F
i(x,y))が、リソグラフィシステムモデルでの帯域制限されたマスクパターンを実装するための修正されたTCCマトリクスを説明するのに用いられる。リソグラフィシステムのためのTCCマトリクスは、多くの項を含む可能性がある。しかしながら、ほとんどの光強度は最初の幾つかの項で表されるので、これらの項(例えば、最初の10くらいの項)だけを用いて正確な推定を得ることができる。したがって、所望であれば、計算の負担を著しく低減させる切断モデル(truncated model)を採用することができる。ユーザは、それぞれの特定のフォトマスク検査用途に必要なだけのその一連の項を採用することによって所望の度合いの正確さを得ることができる。全体として、リソグラフィシステムモデルの適用は、印刷できないフィーチャのリソグラフィ効果をテストシミュレーションイメージに取り込むことを可能にする。
【0028】
或る実施形態では、テストシミュレーションイメージを構築することは、帯域制限されたマスクパターンの光学強度分布に基づいて印刷できるフィーチャから印刷できないフィーチャを分離することを含む。方法はまた、幾何学的フィーチャをエッジ、角、及びライン端のような1つ又は複数の幾何学的フィーチャタイプに分類するために帯域制限されたマスクパターンに基づいて幾何学的マップを構築することを含んでもよい。さらに、リソグラフィ上重大な欠陥を識別するプロセスは、幾何学的マップの異なる幾何学的フィーチャタイプに異なる検出閾値を適用することによって強化することができる。
【0029】
リソグラフィモデリング及び/又はフォトレジストモデリングは、結果として生じるシミュレーションイメージからリソグラフィ上重大でない欠陥を実質的に排除する。「ニュイサンス欠陥」とも呼ばれるこうした欠陥は、印刷されるパターンに対する作用が小さいか又は作用しない。この開示の目的上、リソグラフィ上重大な欠陥は、最終的な印刷されるパターンにおけるリソグラフィ上の重大さを有する欠陥として定義される。つまり、幾つかの欠陥(「ニュイサンス欠陥」)は、マスクに存在するが、フォトレジスト層に転写される印刷されるパターンに対する重大な影響を有さない。例は、とても小さい(又はパターンのリソグラフィ上敏感でない部分にある)のでおおむね関係しない欠陥を含む。また、欠陥は、基板の比較的欠陥に敏感でない部分に形成される可能性がある。幾つかの場合、欠陥は、アシスト又はOPCフィーチャ(又は他の解像度向上フィーチャ)上に形成される可能性があるが、最終的な印刷されるパターンには影響を及ぼさない。したがって、リソグラフィ上重大な欠陥は、マスク上に存在する欠陥であり、リソグラフィで転写されるパターンに重大な作用を及ぼす可能性がある。こうしたリソグラフィ上重大な欠陥は、回路の故障、準最適な性能などに関係する問題を生じる可能性がある。
【0030】
或る実施形態では、検査プロセスはまた、テストシミュレーションイメージに基づいてフィーチャマップを構築することを含む。フィーチャマップは、対応するマスクエラーエンハンスメントファクタ(MEEF)をそれぞれが有する複数のイメージ部分を含んでもよい。例えば、典型的なフォトマスクは、4倍に拡大される最終的なICの予め補正されたイメージを含む。このファクタは、イメージング誤差に対するパターン感度を低減させる一助となるが、現代のIC回路の小サイズフィーチャ(例えば、22ナノメートル以下)は、リソグラフィ露光中の光ビームの散乱によって負の影響を受ける。したがって、MEEFは、時には1を超える、例えば、4Xフォトマスクを用いて露光されるウェハ上の寸法誤差は、フォトマスク上の寸法誤差の4倍を超える可能性がある。或る実施形態では、対応するイメージ領域に関する検出閾値を自動調節するためにフィーチャマップにおけるMEEF値の取り込みが用いられる。例えば、大きいMEEF値をもつ領域は、より低いMEEF値をもつ領域よりも注意深く検査することができる。この動作は、自動モードで実装されてもよい。プロセスはまた、リソグラフィ上重大な欠陥を識別するためのユーザ定義検出閾値を提供することを含んでもよい。
【0031】
前述のように、データベース又は別のダイから提供される別個の参照イメージは、しばしば利用可能ではない。検査プロセスは、位置合わせされるテストイメージ及び回復されるマスクパターンに関する入力として用いることができる、テストイメージから内部参照イメージを生成するための一連の並列動作210及び212を含むことができる。これらのイメージは、時には合成イメージと呼ばれる。合成イメージを生成するための種々のアルゴリズム、例えば、カリフォルニア州ミルピタスのKLA Tencorから入手可能なStarlight(商標)システムが用いられてもよい。このシステムは、システムの校正中、並びにこれらのフィーチャの透過される特性及び反射される特性のデータベースの構築中に、フォトマスク上の種々の幾何学的フィーチャをサンプリングするように構成される。後で、検査中に、テストされるフォトマスクが走査されるときに、システムは、データベースの中の情報に基づいて合成イメージを構築する。類似した技術が、合成イメージングアルゴリズムを説明する目的で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2001年8月28日に発行されたEmeryの米国特許第6,282,309号で説明される。例えば、アルゴリズムは、(同じ検査ポイントでの)透過される信号と反射される信号が、欠陥のない状態で常に互いに相補的であるという仮定に基づいていてもよい。言い換えれば、透過される信号と反射される信号との和は、欠陥のない状態での走査の間、不変である。したがって、和信号におけるあらゆる観測された偏差は、欠陥として解釈することができ、合成イメージから排除することができる。
【0032】
動作210において合成参照イメージが生成されると、これらのイメージは、212で参照エアリアルイメージ及び/又は参照レジストイメージのような参照シミュレーションイメージを生成するためにさらに処理される。動作212は、上記で説明されたテストイメージに対して行われる動作208と類似している。しかしながら、合成参照イメージは欠陥を含まないので、対応する参照シミュレーションイメージは、リソグラフィ上重大な欠陥を含まずに生成される。
【0033】
214で、テストシミュレーションイメージは、リソグラフィ上重大な欠陥を識別するために参照シミュレーションイメージと比較される。或る実施形態では、参照シミュレーションイメージは、参照シミュレーション透過イメージ及び参照シミュレーション反射イメージを含み、一方、テストシミュレーションイメージは、テストシミュレーション透過イメージ及びテストシミュレーション反射イメージを含む。この実施形態では、2つのグループ内で比較が行われる、すなわち、参照シミュレーション透過イメージは、テストシミュレーション透過イメージと比較され、一方、参照シミュレーション反射イメージは、テストシミュレーション反射イメージと比較される。或る実施形態では、識別されたリソグラフィ上重大な欠陥が分類される。
【0034】
或る実施形態では、検査は、マルチトーン・マスクに同様に適用される。こうしたマスクの一例は、最も暗い領域(例えば、クロム又は不透明領域)と、2つの間の暗さを有するグレースケール領域のパターンをもつ石英又は最も明るい領域とを有するトリトーン(tri-tone)・マスクである。こうしたグレースケール領域は、多くの方法(例えば、EPSM材料を用いることなど)で得ることができる。この場合、マスクは、別々に分析される2つの異なるマスクとして取り扱われる。例えば、トリトーン・マスクは、上記で説明したのと同じモデルを用いて取り扱うことができる。しかしながら、トリトーン・マスクは、フォアグラウンドとして取り扱われるグレースケールパターン(例えば、EPSM材料)をもつバックグラウンドパターン(例えば、クロム)を有するマスクとして取り扱うことができる。イメージは、同じ式及びプロセス動作を用いて上記のように処理することができる。バックグラウンドパターンとしてEPSM材料及びフォアグラウンドとして取り扱われる最も明るいパターン(例えば、石英)を用いて、マスクに対して第2の分析が行われる。それぞれの材料が、イメージを位置合わせするのに用いることができる異なるエッジ効果を実証する実質的に異なる特性を有するので、位置合わせを容易に達成することができる。マスクパターンは、次いで、総和し、次いで、プロセスウィンドウの全体を通してウェハパターンの忠実度を検証するために及びリソグラフィ上重大な欠陥を識別するために、ダイとダイ又はダイとデータベースとの比較における参照と比較することができる。
【0035】
結言
上記の発明は、理解しやすくするために幾らか詳しく説明されているが、付属の請求項の範囲内で或る変化及び修正が実施されてもよいことが分かるであろう。本発明のプロセス、システム、及び装置を実装する多くの代替的方法が存在することに注目されたい。したがって、本発明の実施形態は、制限するものではなく例証するものとして考えられるべきであり、本発明は本明細書で与えられる詳細に限定されない。