【実施例】
【0035】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0036】
[試験例1]血漿インスリン分泌促進効果の検討(1)
ラットに対して、糖負荷と同時に、油脂又は油脂とポリグリセリン脂肪酸エステルであるヘキサステアリン酸ペンタグリセリン(HLB:4)を投与することにより、ポリグリセリン脂肪酸エステルの血漿インスリン分泌に対する効果の検討を行った。
【0037】
<製造例1>試料1の製造方法
40%グルコース(D(+)−Glucose,和光純薬社製)溶液10mlに、油脂(商品名:日清キャノーラ油,長鎖脂肪酸トリグリセライド(LCT),日清オイリオグループ社製)2gと、牛血清アルブミン(SIGMA社製)200mgとを添加し、得られた溶液を氷上で冷却しながら超音波処理(5分間を2セット、合計10分間)し、試料1を得た。
【0038】
<製造例2>試料2の製造方法
40%グルコース(D(+)−Glucose,和光純薬社製)溶液10mlに、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてヘキサステアリン酸ペンタグリセリン(商品名:サンソフトA−186E,HLB:4,太陽化学社製)20mgと、油脂(商品名:日清キャノーラ油,長鎖脂肪酸トリグリセライド(LCT),日清オイリオグループ社製)2gと、牛血清アルブミン(SIGMA社製)200mgとを添加し、得られた溶液を氷上で冷却しながら超音波処理(5分間を2セット、合計10分間)し、試料2を得た。
【0039】
試験には、7週齢のSD系雄性ラット(日本SLC社より購入)を用いた。該ラット(11匹)を1週間馴化飼育した後、8週齢及び9週齢に、試料1及び試料2の投与を行う糖負荷試験をクロスオーバー法にて行った。すなわち、ポリグリセリン脂肪酸エステルの効果を同一個体で比較できるように、最初の糖負荷試験後、1週間のWash−Out期間を設けて2回目の糖負荷試験を行う、クロスオーバー法を採用した。飼育期間中は、温度23±1℃、湿度50±10%、12時間明暗サイクル(8:00〜20:00照明)の環境下でステンレス製メッシュケージにて個別飼育した。水及び固形飼料(商品名:PicoLab Rodent Diet 20 5053,日本SLC社製)は自由摂取とした。試験前日は17:00から絶食を行い、試験当日は10:00から投与を開始した。
【0040】
試験は、糖負荷と同時に油脂の投与を行う「対照試行(試料1投与試行)」と、糖負荷と同時に油脂及びポリグリセリン脂肪酸エステルであるヘキサステアリン酸ペンタグリセリン(HLB:4)の投与を行う「ヘキサステアリン酸ペンタグリセリン(HLB:4)投与試行(試料2投与試行)」との2試行にて行った。試料1及び2は、ゾンデを用いてラットに経口投与した。投与量は、ラットの体重1g当たり6μlとした。なお、最終的投与量は、ラットの体重1kg当たり、糖質が2g、脂質が1g、及びヘキサステアリン酸ペンタグリセリンが0.01gであった。
【0041】
そして、投与前及び投与20分後に尾静脈から採血を行い、血漿インスリン濃度(ng/ml)を測定した。なお、血漿インスリン濃度の測定は、市販のキット(商品名:Rat Insulin ELISA kit,Mercodia社製)を用いてELISA法により行った。試験結果を
図1(A)に示す。なお、ヘキサステアリン酸ペンタグリセリン(HLB:4)投与試行における血漿インスリン濃度増加量は、対照試行における血漿インスリン濃度増加量の平均値を100とした相対値(%)とし、相対値の平均値±標準誤差で表した。試行間の有意差検定には、Student t−test検定を用い、危険率5%未満を持って有意差ありと判断した。
【0042】
図1(A)に示すように、ヘキサステアリン酸ペンタグリセリン(HLB:4)投与試行における血漿インスリン濃度増加量は、対照試行と比較して有意に(P<0.01)高値を示した。このことから、HLB値が4のポリグリセリン脂肪酸エステルであるヘキサステアリン酸ペンタグリセリンによれば、血漿へのインスリン分泌が促進されることが明らかとなった。なお、対照試行の血漿インスリン濃度増加量の平均値(絶対値)は1.33±0.13ng/mlであり、ヘキサステアリン酸ペンタグリセリン(HLB:4)投与試行の血漿インスリン濃度増加量の平均値(絶対値)は1.65±0.11ng/mlであった。
【0043】
[試験例2]血漿インスリン分泌促進効果の検討(2)
ラットに対して、糖負荷と同時に、油脂又は油脂とポリグリセリン脂肪酸エステルであるトリオレイン酸ペンタグリセリン(HLB:7)を投与することにより、ポリグリセリン脂肪酸エステルの血漿インスリン分泌に対する効果の検討を行った。
【0044】
<製造例3>試料3の製造方法
40%グルコース(D(+)−Glucose,和光純薬社製)溶液10mlに、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてトリオレイン酸ペンタグリセリン(商品名:サンソフトA−173E,HLB:7,太陽化学社製)20mgと、油脂(商品名:日清キャノーラ油,長鎖脂肪酸トリグリセライド(LCT),日清オイリオグループ社製)2gと、牛血清アルブミン(SIGMA社製)200mgとを添加し、得られた溶液を氷上で冷却しながら超音波処理(5分間を2セット、合計10分間)し、試料3を得た。
【0045】
試験には、7週齢のSD系雄性ラット(日本SLC社より購入)を用いた。該ラット(17匹)を1週間馴化飼育した後、8週齢及び9週齢に、試料1及び試料3の投与を行う糖負荷試験をクロスオーバー法にて行った。飼育条件は、試験例1と同様とした。
【0046】
試験は、糖負荷と同時に油脂の投与を行う「対照試行(試料1投与試行)」と、糖負荷と同時に油脂及びポリグリセリン脂肪酸エステルであるトリオレイン酸ペンタグリセリン(HLB:7)の投与を行う「トリオレイン酸ペンタグリセリン(HLB:7)投与試行(試料3投与試行)」の2試行にて行った。試料の投与方法及び投与量は、試験例1と同様とした。
【0047】
そして、投与前及び投与20分後に尾静脈から採血を行い、試験例1と同様の方法にて血漿インスリン濃度(ng/ml)を測定した。試験結果を
図1(B)に示す。なお、トリオレイン酸ペンタグリセリン(HLB:7)投与試行における血漿インスリン濃度増加量は、対照試行における血漿インスリン濃度増加量の平均値を100とした相対値(%)とし、相対値の平均値±標準誤差で表した。試行間の有意差検定には、Student t−test検定を用い、危険率5%未満を持って有意差ありと判断した。
【0048】
図1(B)に示すように、トリオレイン酸ペンタグリセリン(HLB:7)投与試行における血漿インスリン濃度増加量は、対照試行と比較して有意に(P<0.01)高値を示した。このことから、HLB値が7のポリグリセリン脂肪酸エステルであるトリオレイン酸ペンタグリセリンによれば、血漿へのインスリン分泌が促進されることが明らかとなった。なお、対照試行の血漿インスリン濃度増加量の平均値(絶対値)は1.32±0.14ng/mlであり、トリオレイン酸ペンタグリセリン(HLB:7)投与試行の血漿インスリン濃度増加量の平均値(絶対値)は2.02±0.20ng/mlであった。
【0049】
[試験例3]血漿インスリン分泌促進効果の検討(3)
ラットに対して、糖負荷と同時に、油脂又は油脂とポリグリセリン脂肪酸エステルであるデカオレイン酸デカグリセリン(HLB:3)とを投与することにより、ポリグリセリン脂肪酸エステルの血漿インスリン分泌に対する効果の検討を行った。
【0050】
<製造例4>試料4の製造方法
40%グルコース(D(+)−Glucose,和光純薬社製)溶液10mlに、デカオレイン酸デカグリセリン(商品名:サンソフトQ−1710S,HLB:3,太陽化学社製)20mgと、油脂(商品名:日清キャノーラ油,長鎖脂肪酸トリグリセライド(LCT),日清オイリオグループ社製)2gと、牛血清アルブミン(SIGMA社製)200mgとを添加し、得られた溶液を氷上で冷却しながら超音波処理(5分間を2セット、合計10分間)し、試料4を得た。
【0051】
試験には、7週齢のSD系雄性ラット(日本SLC社より購入)を用いた。該ラット(10匹)を1週間馴化飼育した後、8週齢及び9週齢に、試料1及び試料4の投与を行う糖負荷試験をクロスオーバー法にて行った。飼育条件は、試験例1と同様とした。
【0052】
試験は、糖負荷と同時に油脂の投与を行う「対照試行(試料1投与試行)」と、糖負荷と同時に油脂及びポリグリセリン脂肪酸エステルであるデカオレイン酸デカグリセリン(HLB:3)の投与を行う「デカオレイン酸デカグリセリン(HLB:3)投与試行(試料4投与試行)」との2試行にて行った。試料の投与方法及び投与量は、試験例1と同様とした。
【0053】
そして、投与前及び投与20分後に尾静脈から採血を行い、試験例1と同様の方法にて血漿インスリン濃度(ng/ml)を測定した。試験結果を
図2に示す。なお、デカオレイン酸デカグリセリン(HLB:3)投与試行における血漿インスリン濃度増加量は、対照試行における血漿インスリン濃度増加量の平均値を100とした相対値(%)とし、相対値の平均値±標準誤差で表した。試行間の有意差検定には、Student t−test検定を用い、危険率5%未満を持って有意差ありと判断した。
【0054】
図2に示すように、デカオレイン酸デカグリセリン(HLB:3)投与試行における血漿インスリン濃度は、有意な差は認められないものの、対照試行と比較して低値を示した。このことから、デカオレイン酸デカグリセリン(HLB:3)には、インスリン分泌を促進する作用がないことが明らかとなった。なお、対照試行の血漿インスリン濃度増加量の平均値(絶対値)は1.38±0.16ng/mlであり、デカオレイン酸デカグリセリン(HLB:3)投与試行の血漿インスリン濃度増加量の平均値(絶対値)は1.26±0.13ng/mlであった。
【0055】
[試験例4]血漿インスリン分泌促進効果の検討(4)
ラットに対して、糖負荷と同時に、油脂又は油脂とポリグリセリン脂肪酸エステルであるモノオレイン酸テトラグリセリン(HLB:8.8)を投与することにより、ポリグリセリン脂肪酸エステルの血漿インスリン分泌に対する効果の検討を行った。
【0056】
<製造例5>試料5の製造方法
40%グルコース(D(+)−Glucose,和光純薬社製)溶液10mlに、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてモノオレイン酸テトラグリセリン(商品名:SYグリスターMO−3S,HLB:8.8,阪本薬品工業社製)20mgと、油脂(商品名:日清キャノーラ油,長鎖脂肪酸トリグリセライド(LCT),日清オイリオグループ社製)2gと、牛血清アルブミン(SIGMA社製)200mgとを添加し、得られた溶液を氷上で冷却しながら超音波処理(5分間を2セット、合計10分間)し、試料5を得た。
【0057】
試験には、7週齢のSD系雄性ラット(日本SLC社より購入)を用いた。該ラット(17匹)を1週間馴化飼育した後、8週齢及び9週齢に、試料1及び試料5の投与を行う糖負荷試験をクロスオーバー法にて行った。飼育条件は、試験例1と同様とした。
【0058】
試験は、糖負荷と同時に油脂の投与を行う「対照試行(試料1投与試行)」と、糖負荷と同時に油脂及びポリグリセリン脂肪酸エステルであるモノオレイン酸テトラグリセリン(HLB:8.8)の投与を行う「モノオレイン酸テトラグリセリン(HLB:8.8)投与試行(試料5投与試行)」の2試行にて行った。試料の投与方法及び投与量は、試験例1と同様とした。
【0059】
そして、投与前及び投与20分後に尾静脈から採血を行い、試験例1と同様の方法にて血漿インスリン濃度(ng/ml)を測定した。試験結果を
図3に示す。なお、モノオレイン酸テトラグリセリン(HLB:8.8)投与試行における血漿インスリン濃度増加量は、対照試行における血漿インスリン濃度増加量の平均値を100とした相対値(%)とし、相対値の平均値±標準誤差で表した。試行間の有意差検定には、Student t−test検定を用い、危険率5%未満を持って有意差ありと判断した。
【0060】
図3に示すように、モノオレイン酸テトラグリセリン(HLB:8.8)投与試行における血漿インスリン濃度増加量は、対照試行と比較して有意に(P<0.01)高値を示した。このことから、HLB値が8.8のポリグリセリン脂肪酸エステルであるモノオレイン酸テトラグリセリンによれば、血漿へのインスリン分泌が促進されることが明らかとなった。なお、対照試行の血漿インスリン濃度増加量の平均値(絶対値)は0.71±0.06ng/mlであり、モノオレイン酸テトラグリセリン(HLB:8.8)投与試行の血漿インスリン濃度増加量の平均値(絶対値)は1.35±0.20ng/mlであった。