特許第5905944号(P5905944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5905944
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】油脂および油脂含有食品
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20160407BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20160407BHJP
   A23L 9/20 20160101ALI20160407BHJP
   A23C 11/04 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   A23D9/00
   A23D7/00 508
   A23D7/00 500
   A23L1/19
   A23C11/04
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-187803(P2014-187803)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2015-83000(P2015-83000A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2015年4月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-192790(P2013-192790)
(32)【優先日】2013年9月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】築山 宗央
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 裕伴
(72)【発明者】
【氏名】粟飯原 知洋
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雅崇
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 世里子
(72)【発明者】
【氏名】村上 祥子
(72)【発明者】
【氏名】小澤 拓也
【審査官】 山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−083234(JP,A)
【文献】 特開平03−004747(JP,A)
【文献】 特表2002−517984(JP,A)
【文献】 特開2009−034089(JP,A)
【文献】 特開2008−118986(JP,A)
【文献】 特開平04−287637(JP,A)
【文献】 特開昭54−031407(JP,A)
【文献】 特開2009−142185(JP,A)
【文献】 上野川 編,乳の科学,1998年 3月25日,p. 20-21
【文献】 Babayan,LIPIDS,1987年,Vol. 22, No. 6,p. 417-420
【文献】 Takeuchi et al,Lipid Technology,2008年 1月,Vol. 20, No. 1,p. 9-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 11/00− 11/10
A23D 7/00− 9/06
A23L
A23G 1/00− 3/32
CAplus/FSTA/FROSTI(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂が有する構成脂肪酸全量のうち、ラウリン酸を10質量%以上含む油脂であって、構成脂肪酸として炭素数が6〜10である脂肪酸のみが結合したトリアシルグリセロールを0.005〜1質量%含有する油脂(ただし、乳化剤を含有しない調理用油脂組成物であって、米油及びMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)を含有する調理用油脂組成物、を除く)。
【請求項2】
前記構成脂肪酸として炭素数が6〜10である脂肪酸のみが結合したトリアシルグリセロールにおいて、構成脂肪酸のうち、炭素数8の脂肪酸の含有量が20質量%以上である、請求項1に記載の油脂。
【請求項3】
前記構成脂肪酸として炭素数が6〜10である脂肪酸のみが結合したトリアシルグリセロールにおいて、構成脂肪酸のうち、炭素数6の脂肪酸の含有量が20質量%以下である、請求項1または2に記載の油脂。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の油脂を含有する食品。
【請求項5】
前記食品が、さらに無脂乳固形分を含有する、請求項に記載の食品。
【請求項6】
前記食品中の、食品に含まれる全油脂含有量と無脂乳固形分含有量との質量比が10:90〜99.5:0.5である、請求項に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂および該油脂を含有する乳様の風味を有する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂(脂質)は三大栄養素であるだけではなく、食品に美味しさを付与する重要な成分である。油脂は食品の味をマイルドにし、かつコクを与える。油脂があるために美味しくなる食品としては、天ぷら、フライ食品、ラーメン、パイ、チョコレート、クリーム、チーズなど、多くの食品が挙げられる。油脂には、サラダ油のように無味無臭に近いものから、焙煎胡麻油、バターのように独特の風味が重宝されるものまで、さまざまなものが、用途に合わせて使用されている。また、ラー油やネギ油のように、香辛料の風味を付与した風味油脂も知られている。
【0003】
油脂の風味の中でも乳脂肪が持つ乳様の風味は、飲料、クリーム、チーズ、菓子、パン等の食品において、おいしさを左右する重要な要素である。乳様の風味の特徴を出すために、産地限定のバターを使用したり、発酵させたバターを使用したり、乳脂肪を分別して乳様の風味の濃いオレイン部(液状部)と淡白なステアリン部(固体部)に分けたりと、さまざまな乳脂肪が使用されている。また、例えば特許文献1のように、油脂、脂質と蛋白質の複合体、乳固形分及び水を含有してなる混合物を80〜180℃で加熱処理した後、固化しない範囲で冷却してから分離手段を用いて処理液の不溶分を除去して得られる風味油脂の開発や、フレーバーによる乳様の風味の付与も広く行われている。
【0004】
しかしながら、バターや生乳を原料とした風味油脂を使用する場合、乳様の風味を出すために配合量を多くすることが必要であり、コストがかかるものであった。また、フレーバーによる乳様の風味の付与は、比較的安価で手軽に効果が得られる反面、味にコクがなかったり、乳様の風味を安定して持続させることが困難であったり、熱に弱かったりと、その効果には限度があった。従って、手間をかけずに低コストで、食品に安定した乳様の風味を付与する方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−164258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、手間をかけずに低コストで、食品に乳様の風味を付与するための油脂を提供することである。本発明の目的はまた、該油脂を含有し、乳様の風味が付与された食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、油脂中に特定のトリアシルグリセロールを特定量含有させることにより、該油脂を含有する食品に乳様の風味を付与できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一態様によれば、油脂が有する構成脂肪酸全量のうち、ラウリン酸を10質量%以上含む油脂であって、構成脂肪酸として炭素数が6〜10である脂肪酸
のみが結合したトリアシルグリセロールを0.005〜1質量%含有する油脂(ただし、乳化剤を含有しない調理用油脂組成物であって、米油及びMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)を含有する調理用油脂組成物、を除く)が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、上記構成脂肪酸として炭素数が6〜10である脂肪酸のみが結合したトリアシルグリセロールにおいて、構成脂肪酸のうち、炭素数8の脂肪酸含有量が20質量%以上である、油脂が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、上記構成脂肪酸として炭素数が6〜10である脂肪酸のみが結合したトリアシルグリセロールにおいて、構成脂肪酸のうち、炭素数6の脂肪酸含有量が20質量%以下である、油脂が提供される。
また、本発明の他の態様によれば、上記油脂を含有する食品が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、上記食品が、さらに無脂乳固形分を含有する、食品が
提供される。
本発明の好ましい態様によれば、上記食品中の、食品に含まれる全油脂含有量と無脂乳
固形分含有量との質量比が10:90〜99.5:0.5である、食品が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、食品に乳様の風味を付与するための油脂を提供することができる。本発明によればまた、該油脂を含有し、乳様の風味が付与された食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の油脂は、構成脂肪酸として炭素数が6〜10である脂肪酸のみが結合したトリアシルグリセロール(以下、MCTとも表す)を0.005〜3質量%含有する。MCT含有量が0.005質量%未満の場合、本発明の効果が発現し難い場合があり、また、MCT含有量が3質量%を超えても、得られる効果はほとんど変わらず、MCTは高価な油脂なので、コスト増しとなる。ここでMCTは、グリセロールに炭素数6〜10の脂肪酸が3つエステル結合しているものであれば、同一の脂肪酸が結合していてもよいし、異なる脂肪酸が結合していてもよい。また、例えば、トリオクタノイルグリセロールとトリデカノイルグリセロールとの混合物等、複数の異なる分子種の混合物であってもよい。炭素数6〜10の脂肪酸は、直鎖の飽和脂肪酸であることが好ましい。本発明の油脂中のMCT含有量は、0.01〜2質量%であることが好ましく、さらに0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.6質量%であることがより好ましく、0.05〜0.4質量%であることがさらに好ましい。油脂中のMCT含有量が上記範囲にあると、該油脂を含有した食品に乳様の風味が付与され易いので好ましい。
【0011】
本発明の油脂に含有されるMCTは、MCTを構成する脂肪酸全量のうち、炭素数8の脂肪酸の含有量が20質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。また同様に、炭素数6の脂肪酸の含有量が20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。本発明の油脂に含有されるMCT全量を構成する脂肪酸が、上記構成の範囲にあると、該油脂を含有した食品に乳様の風味が付与され易いので好ましい。
なお、本発明においては、乳様の風味は、乳脂肪が持つ乳由来の風味、もしくは、それに類似した風味を意味する。
【0012】
本発明の油脂に含有されるMCTは、従来公知の方法で製造できる。すなわち、炭素数6〜10の脂肪酸とグリセロールとを、触媒下、好ましくは無触媒下で、また、好ましくは減圧下で、120〜180℃に加熱し、脱水縮合させることにより製造できる。
【0013】
本発明の油脂は、構成脂肪酸として炭素数が6〜10である脂肪酸のみが結合したトリアシルグリセロールを0.005〜3質量%含有するという条件が満たされる限り、一般に食用に適する油脂を使用することができる。例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、胡麻油、カカオ脂、シア脂、サル脂、パーム油、パーム核油、ヤシ油、牛脂、豚脂、乳脂、魚油、鯨油等の各種の植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択された一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明においては、これらの油脂の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。本発明の油脂は、乳脂肪を含有する場合、乳脂肪の乳様の風味をより強くすることができる。
【0014】
本発明の油脂は、油脂を構成する全脂肪酸中にラウリン酸を3質量%以上含む油脂であることが好ましい。本発明の油脂に含まれるラウリン酸含有量は、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、15〜60質量%であることが最も好ましい。本発明の油脂が、全構成脂肪酸中にラウリン酸を3質量%以上含む油脂であると、該油脂を含有した食品に乳様の風味が付与され易いので好ましい。全構成脂肪酸中にラウリン酸を3質量%以上含む油脂とするには、ラウリン酸を含む油脂をベース油として使用することが好ましい。例えば、ヤシ油、パーム核油、ババス油等のラウリン酸を30質量%以上含む油脂、並びにこれらを単独で、もしくは、他の油脂と混合して、水素添加、分別及びエステル交換から選択された一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明においては、これらのラウリン酸を含む油脂とその他の油脂の中から選ばれた1種または2種以上を用いることもできる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態によれば、本発明の油脂は、ヤシ油、パーム核油、ババス油等およびそれらの分別油、分別硬化油等の油脂を構成する全脂肪酸中にラウリン酸を30質量%以上含む油脂、もしくは、全構成脂肪酸中にラウリン酸を30質量%以上含む油脂と全構成脂肪酸中に炭素数16以上の脂肪酸を90質量%以上含む油脂とのエステル交換油、および、それらの分別油、硬化分別油、分別硬化油等を使用することが好ましい。より具体的には、ヤシ油、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、もしくは、それらの油脂とパーム系油脂とのエステル交換油が挙げられる。パーム系油脂とは、パーム油を原料とする加工油脂であり、パームオレイン、パームステアリン、パーム中融点部、パームスーパーオレイン、パームハードステアリン等が挙げられる。
【0016】
本発明の油脂の好ましい実施の形態の1つとしては、ヤシ油、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、およびそれらの硬化油等の全構成脂肪酸中にラウリン酸を30質量%以上含む油脂、もしくは、必要に応じてその他の油脂を混合してラウリン酸含有量を10質量%以上とした油脂に、MCTを構成する全脂肪酸中の炭素数8の脂肪酸の含有量が50質量%以上であるMCTを添加し、油脂中におけるMCT含有量を0.005〜3質量%に調製した油脂が挙げられる。
【0017】
本発明の油脂のまた別の好ましい実施の形態の1つとしては、ヤシ油、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、および、それらの硬化油等のラウリン酸を30質量%以上含む油脂から選ばれる1種以上の油脂と、パーム油、パームオレイン、パームスーパーオレイン、パーム中融点部、パームステアリン、パームハードステアリン、および、それらの硬化油等のパーム系油脂から選ばれる1種以上の油脂とのエステル交換油に、MCTを構成する全脂肪酸中の炭素数8の脂肪酸の含有量が50質量%以上であるMCTを添加し、油脂中におけるMCT含有量を0.005〜3質量%に調製した油脂が挙げられる。上記エステル交換油の原料油である、ラウリン酸を30質量%以上含む油脂とパーム系油脂との混合油の混合比(質量比)は、20:80〜80:20であることが好ましく、30:70〜70:30であることがより好ましい。
【0018】
本発明において、エステル交換処理の方法は、特に限定されないが、公知の方法により行うことができる。例えば、ナトリウムメトキシド等の合成触媒を使用した化学的エステル交換や、リパーゼを触媒とした酵素的エステル交換のどちらの方法でも行うことができる。化学的エステル交換は、例えば、原料油脂を十分に乾燥させ、ナトリウムメトキシドを原料油脂に対して0.1〜1質量%添加した後、減圧下、80〜120℃で0.5〜1時間攪拌しながら反応を行うことができる。酵素的エステル交換は、例えば、リパーゼ粉末または固定化リパーゼを原料油脂に対して0.02〜10質量%、好ましくは0.04〜5質量%添加した後、40〜80℃、好ましくは40〜70℃で0.5〜48時間、好ましくは0.5〜24時間攪拌しながら反応を行うことができる。
【0019】
本発明の食品は、本発明の油脂を含有する食品である。本発明の食品は、本発明の効果を効率よく得るために、本発明の油脂を2質量%以上含有することが好ましく、5質量%以上含有することがより好ましく、10質量%以上含有することがさらに好ましい。本発明の食品は、食品中の油脂として、本発明の油脂を50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80〜100質量%含むことがさらに好ましい。なお、本発明の油脂を含有する食品とは、食品の製造にあたり、本発明の油脂を使用するプロセスを経なくても、食品に含まれる全油脂を基準として、構成脂肪酸として炭素数が6〜10である脂肪酸のみが結合したトリアシルグリセロールを0.005〜3質量%含有する態様を含むものである。
【0020】
本発明の食品は、本発明の油脂の他に、無脂乳固形分を含有することが好ましい。無脂乳固形分を含有すると、本発明の食品に乳様の風味が付与され易いので好ましい。無脂乳固形分は、乳製品に含まれる水分と脂肪とを除いた固形分であり、無脂乳脂固形分を含む乳製品としては、例えば、生乳、牛乳、脱脂乳、加工乳、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、加糖練乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、クリームパウダー、サワークリーム、乳清蛋白質、ホエー、ホエーパウダー、ホエー蛋白質濃縮物、ミルクプロテイン濃縮物、バターミルク、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、ヨーグルト、乳酸菌飲料、乳飲料、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、乳清ミネラル等が挙げられる。
【0021】
本発明の食品は、食品に含まれる全油脂と無脂乳固形分とを質量比で10:90〜99.5:0.5含有することが、食品の乳様の風味をより向上させる上で好ましい。本発明の食品における、食品に含まれる全油脂含有量と無脂乳固形分含有量との質量比は、20:80〜98:2であることがより好ましく、30:70〜95:5であることがさらに好ましく、40:60〜90:10であることが最も好ましい。
【0022】
本発明の食品は、また、乳化物であることが好ましい。乳化物とすることで、乳様の風味をより感じ易く、本発明の効果を効率的に得やすいので好ましい。乳化物は、油中水型、水中油型、複合乳化型等いずれの乳化型でもよい。乳化物の形態における本発明の食品中の本発明の油脂含有量は、2〜96質量%であることが好ましく、4〜90質量%であることがより好ましい。
【0023】
本発明の食品の好ましい態様としては、本発明の油脂を含むショートニング、シュガークリーム、ミルクチョコレート等の無水食品、ホイップクリーム、アイスクリーム、飲料用クリーム、調理用クリーム、フラワーペースト等のクリーム類、およびそれらを使用した、飲料、ソース、シチュウ、グラタン、チーズ様食品等、また、マーガリン、ファットスプレッド、バタークリーム等の油中水型食品、およびそれらを使用した菓子類、パン類等、また、各種ガナッシュ類等が挙げられる。
上記食品は、本発明の油脂を使用することを除いては、それぞれ各食品について通常行われる方法にて製造することができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0025】
<分析方法>
トリアシルグリセロール含有量は、AOCS Ce5−86に準じて測定した。
各脂肪酸含有量は、AOCS Ce1f−96に準じて測定した。
【0026】
<原料油脂の調製>
〔MCT1〕:トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸がn−オクタン酸(炭素数8)とn−デカン酸(炭素数10)であり、その質量比が75:25であるMCT(日清オイリオグループ株式会社製)を、MCT1とした。
〔MCT2〕:トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸がn−オクタン酸であるMCT(日清オイリオグループ株式会社社内製)をMCT2とした。
〔MCT3〕:トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸がn−オクタン酸(炭素数8)とn−デカン酸(炭素数10)であり、その質量比が30:70であるMCT(日清オイリオグループ株式会社社内製)をMCT3とした。
〔植物油脂1〕:パーム中融点画分(日清オイリオグループ株式会社製、ラウリン酸含有量0質量%、MCT含有量0質量%)を植物油脂1とした。
〔植物油脂2〕:パーム核油(日清オイリオグループ株式会社製、ラウリン酸含有量46.1質量%、MCT含有量0質量%)を植物油脂2とした。
〔植物油脂3〕:ヤシ硬化油(日清オイリオグループ株式会社製、ラウリン酸含有量47.2質量%、MCT含有量0質量%)を植物油脂3とした。
〔植物油脂4〕:ヤシ油とパーム油とを質量比15:85で混合した油脂(日清オイリオグループ株式会社社内製、ラウリン酸含有量7.1質量%、MCT含有量0質量%)を植物油脂4とした。
〔エステル交換油1(IE1)〕:パーム油65質量部と菜種油35質量部とを混合した後、1,3選択性有するリパーゼ製剤を対油0.5質量%添加し、60℃で16時間エステル交換反応を行った。反応終了後、リパーゼ製剤をろ過で除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理してエステル交換油1(IE1、日清オイリオグループ株式会社社内製、ラウリン酸含有量0質量%、MCT含有量0質量%)を得た。
〔エステル交換油2(IE2)〕:パーム油60質量部とパーム核油40質量部とを混合した混合油を、減圧下120℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、対油0.1質量%のナトリウムメチラートを添加し、減圧下、110℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭して、エステル交換油2(IE2、日清オイリオグループ株式会社社内製、ラウリン酸含有量18.2質量%、MCT含有量0質量%)を得た。
【0027】
表1〜2の配合に従って、例1〜12の油脂を調製した。
【0028】
【表1】
*;表中の数値は質量%
【0029】
【表2】
*;表中の数値は質量%
【0030】
<アイスクリームの製造>
以下の製造手順1〜6により、表3に示す配合に従って、例1〜例12の油脂をそれぞれ使用したクリーム(アイスクリームミックス)を製造した。出来上がったクリームは、5℃で1日エージングした後、アイスクリーマーにてフリージングし、カップに充填した後、−20℃で1日以上保管した。
製造手順
1.水相原料および油相原料をそれぞれ別々の容器を用いて、70℃で加熱混合溶解した。
2.1で調製した水相原料を撹拌しながら、そこに1で調製した油相原料を徐々に加え混合した。
3.80度まで加熱して殺菌した。
4.ホモミキサーにて予備乳化を行った(4000rpm、10分)
5.ホモジナイザーを用いてホモジナイズした(1段目100kg/cm、2段目10kg/cm)。
6.氷水浴を用いて5℃まで冷却して、O/Wクリームを得た。
【0031】
【表3】
アイスクリーム中の無脂乳固形分含有量7.62質量%
アイスクリーム中の全油脂含有量と無脂乳固形分含有量との質量比=60.1:39.9
【0032】
<アイスクリームの風味評価>
上記で製造した例1〜例12の油脂を使用したアイスクリームついて、以下の基準に従って、パネラー5名により乳様の風味の評価を行った。結果を表1、2に示した。

乳様の風味の評価基準
◎:例1と比較して有意に乳様の風味の強さを感じる
○:例1と比較して乳様の風味の強さを感じる
△:例1と比較して僅かに乳様の風味の強さを感じる
▲:例1と比較して極僅かに乳様の風味の強さを感じる
×:例1と比較して乳様の風味を感じない
【0033】
表4の配合に従って、例13〜16の油脂を調製した。
【0034】
【表4】
*;表中の数値は質量%
【0035】
<ホイップクリームの製造>
以下の製造手順1〜6により、表5に示す配合に従って、例13〜例16の油脂をそれぞれ使用したホイップクリームを製造した。5℃で1日エージングした後、ホイップクリームに対して7質量%の砂糖を加えて泡立てた後、風味評価を実施した。
製造手順
1.水相原料および油相原料をそれぞれ別々の容器を用いて、70℃で加熱混合溶解した。
2.1で調製した水相原料を撹拌しながら、そこに1で調製した油相原料を徐々に加え混合した。
3.80度まで加熱して殺菌した。
4.ホモミキサーにて予備乳化を行った(4000rpm、10分)
5.ホモジナイザーを用いてホモジナイズした(1段目50kg/cm、2段目10kg/cm)。
6.氷水浴を用いて5℃まで冷却して、ホイップクリームを得た。
【0036】
【表5】
ホイップクリーム中の無脂乳固形分含有量4.29質量%
ホイップクリーム中の全油脂含有量と無脂乳固形分含有量との質量比=91.2:8.8
【0037】
<ホイップクリームの風味評価>
上記で製造した例13〜例16の油脂を使用したホイップクリームついて、以下の基準に従って、パネラー5名により乳様の風味の評価を行った。結果を表4に示した。

乳様の風味の評価基準
◎:例13と比較して有意に乳様の風味の強さを感じる
○:例13と比較して乳様の風味の強さを感じる
△:例13と比較して僅かに乳様の風味の強さを感じる
▲:例13と比較して極僅かに乳様の風味の強さを感じる
×:例13と比較して乳様の風味を感じない
【0038】
表6の配合に従って、例17〜18の油脂を調製した。
なお、原料油脂として、さらに以下のものを使用した。
〔植物油脂5〕:パーム油(日清オイリオグループ株式会社製、ラウリン酸含有量0質量%、MCT含有量0質量%)を植物油脂5とした。
〔植物油脂6〕:ヤシ油(日清オイリオグループ株式会社製、ラウリン酸含有量47.2質量%、MCT含有量0質量%)を植物油脂6とした。
〔植物油脂7〕:紅花油(日清オイリオグループ株式会社社内製、ラウリン酸含有量0質量%、MCT含有量0質量%)を植物油脂7とした。
【0039】
【表6】
*;表中の数値は質量%
【0040】
<コーヒーホワイトナーの製造>
以下の製造手順1〜6により、表7に示す配合に従って、例17、18の油脂をそれぞれ使用したコーヒーホワイトナーを製造した。5℃で1日エージングした後、コーヒーホワイトナーの風味評価を実施した。
製造手順
1.水相原料および油相原料をそれぞれ別々の容器を用いて、70℃で加熱混合溶解した。
2.1で調製した水相原料を撹拌しながら、そこに1で調製した油相原料を徐々に加え混合した。
3.ホモジナイザーを用いてホモジナイズした(1段目200kg/cm、2段目50kg/cm)。
4.85度10分間の加熱殺菌を行った。
5.ホモジナイザーを用いてホモジナイズした(1段目150kg/cm、2段目50kg/cm)。
6.氷水浴を用いて30℃まで冷却して、コーヒーホワイトナーを得た。
【0041】
【表7】
コーヒーホワイトナー中の無脂乳固形分含有量4.0質量%
コーヒーホワイトナー中の全油脂含有量と無脂乳固形分含有量との質量比=86.2:13.8
【0042】
<コーヒーホワイトナーの風味評価>
インスタントコーヒー2gに熱湯100gを注いだコーヒーに、上記で製造した例17、18の油脂を使用したコーヒーホワイトナーを5g添加して撹拌した後、以下の基準に従って、パネラー5名により乳様の風味の評価を行った。結果を表6に示した。

乳様の風味の評価基準
◎:例17と比較して有意に乳様の風味の強さを感じる
○:例17と比較して乳様の風味の強さを感じる
△:例17と比較して僅かに乳様の風味の強さを感じる
▲:例17と比較して極僅かに乳様の風味の強さを感じる
×:例17と比較して乳様の風味を感じない
【0043】
表8の配合に従って、例19〜20の油脂を調製した。
なお、原料油脂として、さらに以下のものを使用した。
〔植物油脂8〕:パームステアリン(日清オイリオグループ株式会社内製、ラウリン酸含有量0質量%、MCT含有量0質量%)を植物油脂8とした。
〔植物油脂9〕:菜種油(日清オイリオグループ株式会社製、ラウリン酸含有量0質量%、MCT含有量0質量%)を植物油脂9とした。
〔バターオイル1〕:バターオイル(日清オイリオグループ株式会社社内製、ラウリン酸含有量2.6質量%、MCT含有量0質量%)をバターオイル1とした。
【0044】
【表8】
*;表中の数値は質量%
【0045】
<マーガリンの製造>
以下の製造手順1〜4により、表9に示す配合に従って、例19、20の油脂をそれぞれ使用したマーガリンを製造した。5℃で1日エージングした後、風味評価を実施した。
製造手順
1.水相原料および油相原料をそれぞれ別々の容器を用いて、70℃で加熱混合溶解した。
2.1で調製した油相原料を撹拌しながら、そこに1で調製した水相原料を徐々に加え混合した。
3.80度まで加熱して殺菌した。
4.オンレーターを使用して常法のとおりに急冷混練を行った。
【0046】
【表9】
*調整食用脂はバター69質量%およびパーム油31質量%含有品
マーガリン中の無脂乳固形分含有量1.11質量%
マーガリン中の全油脂含有量と無脂乳固形分含有量との質量比=98.7:1.3
【0047】
<マーガリンの風味評価>
上記で製造した例19、20の油脂を使用したマーガリンついて、以下の基準に従って、パネラー5名により乳様の風味(乳脂肪の味の強さ)評価を行った。結果を表8に示した。

乳様の風味の評価基準
◎:例19と比較して有意に乳脂肪の味の強さを感じる
○:例19と比較して乳脂肪の味の強さを感じる
△:例19と比較して僅かに乳脂肪の味の強さを感じる
▲:例19と比較して極僅かに乳脂肪の味の強さを感じる
×:例19と比較して乳脂肪の味が少ない