(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5906516
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】初期エンドユーザ相互作用応答性を向上させる推論型システム起動
(51)【国際特許分類】
G06F 1/26 20060101AFI20160407BHJP
G06F 1/32 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
G06F1/26 334C
G06F1/32 Z
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-535702(P2014-535702)
(86)(22)【出願日】2011年10月14日
(65)【公表番号】特表2014-528619(P2014-528619A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】US2011056302
(87)【国際公開番号】WO2013055354
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2014年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】591003943
【氏名又は名称】インテル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チェン、アントニオ エス.
(72)【発明者】
【氏名】シディクィ、ファラズ エー.
【審査官】
塩澤 如正
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−266995(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0143483(US,A1)
【文献】
特開2009−020663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26 − G06F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムの電源を切る要求に応えて、ヒューマンインタフェースデバイスを遮断された状態に置き、
前記ヒューマンインタフェースデバイスが前記遮断された状態にある間に、推論型起動ヒューリスティックを用いて前記システムのための1つ以上の後続の動作状態を確立し、
前記システムの電源を入れる要求に応えて、前記ヒューマンインタフェースデバイスを前記遮断された状態から抜け出させる
ロジックと、
1つ以上のセンサと
を含み、
前記ロジックは、
前記推論型起動ヒューリスティックに基づく時刻に依存して、前記1以上のセンサの少なくとも1つを選び、
前記システムと関連付けられた前記1以上のセンサの前記少なくとも1つにおける不活動を特定し、
前記特定された不活動に応えて、前記システムをサスペンド状態に置く、
装置。
【請求項2】
前記1つ以上のセンサは、運動センサ、周辺光センサ、近距離無線通信センサ、および近接センサの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ロジックは、前記不活動が特定される少なくとも1つのセンサとして、昼の間は、前記運動センサ、前記周辺光センサ及び前記近接センサを選び、夜の間は、前記周辺光センサを選ぶ、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ロジックは、少なくとも部分的に前記推論型起動ヒューリスティックに基づいて、不活動期間を判定する、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項5】
前記システムは、ランダムアクセスメモリ(RAM)へのサスペンド状態に置かれ、前記ロジックは、前記1つ以上のセンサの少なくとも1つにおける活動に応えて、前記システムを前記RAMへのサスペンド状態から抜け出させる、請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の装置。
【請求項6】
前記システムは、ディスクへのサスペンド状態に置かれ、前記ロジックは、時刻条件と前記1つ以上のセンサの少なくとも1つにおける活動との少なくとも1つに応えて、前記システムを前記ディスクへのサスペンド状態から抜け出させる、請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項7】
前記ヒューマンインタフェースデバイスおよび前記1つ以上のセンサを組み合わされた、請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
時刻に依存する推論型起動ヒューリスティックが用いられて前記1つ以上の後続の動作状態の少なくとも1つを確立する、請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
システムの電源を切る要求に応えて、ヒューマンインタフェースデバイスを遮断された状態に置く段階と、
前記ヒューマンインタフェースデバイスが前記遮断された状態にある間に、推論型起動ヒューリスティックを用いて前記システムのための1つ以上の後続の動作状態を確立する段階と、
前記システムの電源を入れる要求に応えて、前記ヒューマンインタフェースデバイスを前記遮断された状態から抜け出させる段階とをコンピュータに実行させ、
前記推論型起動ヒューリスティックを用いて1つ以上の後続の動作状態を確立する段階は、
前記推論型起動ヒューリスティックに基づく時刻に依存して、1以上のセンサの少なくとも1つを選ぶ段階と、
前記システムと関連付けられた前記1以上のセンサの前記少なくとも1つにおける不活動を特定する段階と、
前記特定された不活動に応えて、前記システムをサスペンド状態に置く段階と
を含む、プログラム。
【請求項10】
前記1つ以上のセンサは、運動センサ、周辺光センサ、近距離無線通信センサ、および近接センサの少なくとも1つを含む、請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記1以上のセンサの少なくとも1つを選ぶ段階は、前記不活動が特定される少なくとも1つのセンサとして、昼の間は、前記運動センサ、前記周辺光センサ及び前記近接センサを選び、夜の間は、前記周辺光センサを選ぶ段階を含む、請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
少なくとも部分的に前記推論型起動ヒューリスティックに基づいて、不活動期間を判定する段階を前記コンピュータにさらに実行させる、請求項9から請求項11のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項13】
前記システムは、ランダムアクセスメモリ(RAM)へのサスペンド状態に置かれ、前記1つ以上のセンサの少なくとも1つにおける活動に応えて、前記システムを前記RAMへのサスペンド状態から抜け出させる段階を前記コンピュータにさらに実行させる、請求項9から請求項12のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項14】
前記システムは、ディスクへのサスペンド状態に置かれ、
時刻条件と前記1つ以上のセンサの少なくとも1つにおける活動との少なくとも1つに応えて、前記システムを前記ディスクへのサスペンド状態から抜け出させる段階を前記コンピュータにさらに実行させる、請求項9から請求項13のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項15】
時刻に依存する推論型起動ヒューリスティックが用いられて前記1つ以上の後続の動作状態の少なくとも1つを確立する、請求項9から請求項14のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項16】
ヒューマンインタフェースデバイスを、前記ヒューマンインタフェースデバイスと関連付けられたシステムの電源を切る要求に応えて、遮断された状態に置くステップ、
前記ヒューマンインタフェースデバイスが前記遮断された状態にある間に、推論型起動ヒューリスティックを用いて前記システムのための1つ以上の後続の動作状態を確立するステップ、および
前記システムの電源を入れる要求に応えて、前記ヒューマンインタフェースデバイスを前記遮断された状態から抜け出させるステップ
を含み、
前記推論型起動ヒューリスティックを用いて1つ以上の後続の動作状態を確立するステップは、
前記推論型起動ヒューリスティックに基づく時刻に依存して、1以上のセンサの少なくとも1つを選ぶステップ、
前記システムと関連付けられた前記1以上のセンサの前記少なくとも1つにおける不活動を特定するステップ、および
前記特定された不活動に応えて、前記システムをサスペンド状態に置くステップ
を含む、コンピュータに実装された方法。
【請求項17】
前記1つ以上のセンサは、運動センサ、周辺光センサ、近距離無線通信センサ、および近接センサの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1以上のセンサの少なくとも1つを選ぶステップは、前記不活動が特定される少なくとも1つのセンサとして、昼の間は、前記運動センサ、前記周辺光センサ及び前記近接センサを選び、夜の間は、前記周辺光センサを選ぶステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも部分的に前記推論型起動ヒューリスティックに基づいて、不活動期間を判定するステップをさらに含む、請求項16から請求項18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
前記システムは、ランダムアクセスメモリ(RAM)へのサスペンド状態に置かれ、前記方法は、前記1つ以上のセンサの少なくとも1つにおける活動に応えて、前記システムをRAMへのサスペンド状態から抜け出させるステップをさらに含む、請求項16から請求項19のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、全体として、コンピュータシステムブート時間に関する。より詳しくは、実施形態は、推論型起動ヒューリスティックを用いて、いつユーザがコンピュータシステムを始動させるかを予測することに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータシステムのためのある種の「インスタント・オン」ソリューションは、ブート時間を短縮する努力を代表することができるが、少なからぬ改善の余地が残されている。たとえば、これらのソリューションは、依然として遅れを生じることがあり、比較的高い電力状態(たとえばシャットダウンの代りのスリープ)を含むことがあり、別のランタイム環境(たとえば単機能高速起動アプリケーション)を利用することがあり、および/または別の起動ボタン(たとえば単機能メディアボタン)を有するシステムに限定されることがある。
【0003】
本発明の実施形態のさまざまな利点は、以下の明細書および添付の請求項を読むことにより、および以下の図面を参照することにより、当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】実施形態による推論型起動ヒューリスティック実装の例の状態ダイヤグラムである。
【
図2】実施形態によるコンピュータシステムの例のブロックダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
実施形態は、ヒューマンインタフェースデバイス(HID:human Interface device)が、HIDと関連付けられたシステムの電源を切る要求に応えて、遮断された状態に置かれる、コンピュータに実装された方法を含んでよい。この方法は、HIDが遮断された状態にある間に、推論型起動ヒューリスティックを用いてシステムのための1つ以上の後続の動作状態を確立することも提供してよい。さらに、HIDは、システムの電源を入れる要求に応えて、遮断された状態から抜け出させることができる。
【0006】
さらに、実施形態は、HIDと、システムの電源を切る要求に応えてHIDを遮断された状態に置くロジックと、を有するシステムを含むことができる。ロジックは、HIDが遮断された状態にある間に、推論型起動ヒューリスティックを用いてシステムのための1つ以上の後続の動作状態を確立してもよく、システムの電源を入れる要求に応えて、HIDを遮断された状態から抜け出させてもよい。
【0007】
他の実施形態は、プロセッサによって実行されれば、コンピュータが、HIDと関連付けられたシステムの電源を切る要求に応えて、HIDを遮断された状態に置くようにする命令のセットを有する、非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含んでよい。命令は、実行されれば、コンピュータが、HIDが遮断された状態にある間に、推論型起動ヒューリスティックを用いてシステムのための1つ以上の後続の動作状態を確立するようにすることもできる。さらに、命令は、コンピュータが、システムの電源を入れる要求に応えて、HIDを遮断された状態から抜け出させるようにしてよい。
【0008】
次に、
図1を参照する。推論型起動ヒューリスティックの実装を表す状態ダイヤグラム10が示され、ヒューリスティックが用いられてコンピュータシステム、たとえばモバイルインターネットデバイス(MID:mobile Internet device)、パーソナルデジタルアシスタント(PDA:personal digital assistant)、ノートブックコンピュータ、ネットブックデバイス、タブレットデバイス等に対するユーザ/個人の活動を予測してよい。一般に、例示の手法は、ユーザがコンピュータシステムを始動させるかもしれないと予測されるかどうかに基づいて、コンピュータシステムをさまざまな動作状態に置くことを提供する。詳しくは、動作状態は、アクティブ状態12、低電力ランタイム状態14、ランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)へのサスペンド状態16、ディスクへのサスペンド状態18等、などの状態を含んでよく、この予測は、コンピュータシステムが、ユーザの観点からはインスタント・オン機能を有するように見えることを可能にすることができる。
【0009】
例示の状態12、14、16、18の1つ以上は、たとえば、ACPI(Advanced Configuration and Power Interface Specification、たとえばACPI Specification、Ref.4.0a、2010年4月5日)プロトコルなどの標準化されたプロトコルに従って構成され得るであろう。ACPIプロトコルにおいては、「浅い」状態ほど大きな機能、速いブート時間および少ない電力節約を提供してよく、「深い」状態ほど小さな機能、遅いブート時間および大きな電力節約を提供してよい。一例として、アクティブ(たとえば最も浅い)状態12は、「S0」ACPI状態を表すことができると考えられ、低電力ランタイム状態14は、中間の状態を表してよく、RAMへのサスペンド状態16は、「S3」ACPI状態を表してよく、ディスクへのサスペンド(たとえば最も深い)状態18は、「S4/S5」ACPI状態を表すことができる。
【0010】
図示された例において、複数の基準/トリガーが用いられてコンピュータシステムのための動作状態を選んでよい。たとえば、コンピュータシステムがアクティブ状態12にあれば、コンピュータシステムのユーザは、なんらかの行為(たとえば、ラップトップのふたを閉める、電源切断ボタンを押す、オペレーティングシステム/OSシャットダウン要求を行う)を行ってコンピュータシステムの電源を切る願望を示すかもしれず、この場合、システムの電源を切るユーザ要求は、コンピュータシステムを低電力ランタイム状態14に置くトリガー20を構成することができる。例示の低電力ランタイム状態14は、ユーザにはコンピュータシステムの電源が切られているように見えるように、1つ以上のヒューマンインタフェースデバイス(HID)、たとえば埋め込まれたディスプレイ、タッチスクリーン等を遮断された状態に置くことを含む。
【0011】
コンピュータシステムが低電力ランタイム状態14に置かれると、複数の追加の活動が行なわれて推論型起動ヒューリスティックを実装してよい。たとえば、1つ以上のタイマと、たとえば運動センサ、(たとえば加速度計、ジャイロスコープ)、周辺光センサ、近接センサ(たとえば静電場撹乱)、近距離無線通信センサ(たとえばペアリングシステム)等、などの低電力センサとがトリガー20に応えて有効にされてよく、この場合、1つ以上のセンサが一定の不活動期間(たとえばx分)沈黙していた(たとえば非アクティブであった、トリガーされなかった等)と判定されれば、別のトリガー22が行われてよい。他方、予め定められた期間が終了する前に、ユーザが「覚醒行為」(たとえばラップトップのふたを開ける、電源投入ボタンを押す)を行ってコンピュータシステムの電源を入れる願望を示せば、覚醒行為は、コンピュータシステムをアクティブ状態12に復帰させるトリガー24を構成することができる。
【0012】
例示のトリガー22は、コンピュータシステムがRAMへのサスペンド状態16に置かれるようにし、この場合、RAMへのサスペンド状態16は、システムのプロセッサに常駐するすべてのキャッシュ(たとえばレベル1/L1キャッシュ、レベル2/L2キャッシュ)をコンピュータシステムのRAM(たとえばシステムメモリ)にフラッシュすることを含んでよい。キャッシュがフラッシュされてしまえば、プロセッサおよび/またはプロセッサの部分(たとえばコア、「非コア」)は、シャットダウンして電力を節約し、バッテリー駆動時間を延ばすことができると考えられ、この場合、RAMは電力を供給されたままである。さらに、RAMへのサスペンド状態16においては、1つ以上の低電力センサおよびタイマが再び有効にされ、および/またはリセットされてよい。もっと詳しく考察されるように、センサおよびタイマと関連付けられた期間は、トリガー20によって低電力ランタイム状態14に入るときに有効にされたセンサおよび期間と同じであってもよく、または異なってもよい。さらに、各センサは、センサの型および採用された特定の使用モデルに応じてそれ自体のタイマを有してよい。
【0013】
1つ以上のセンサが規定された期間(たとえばy分)沈黙していたと判定されれば、コンピュータシステムをディスクへのサスペンド状態18に置くトリガー26が起こってよい。他方、センサの1つ以上がもはや沈黙していない(たとえば運動センサが運動を検出する、周辺光センサが光を検出する)なら、そのような「非覚醒」活動は、ユーザが近い将来にコンピュータシステムを始動させようとする可能性が増加したことを示すとみなされてよい。したがって、トリガー28が用いられてコンピュータシステムをより浅い低電力ランタイム状態14(HIDは遮断されたままである)に復帰させてよい。トリガー28による低電力ランタイム状態14への復帰は、待ち時間の原因となるある種の活動、たとえば初期化および/またはセルフテストプロセスと関連付けられてよい。したがって、例示の手法は、コンピュータシステムが電源を切られているように見えている間に、待ち時間の原因となるこれらの活動がバックグラウンドで実行されることを可能にする。
【0014】
ディスクへのサスペンド状態18は、RAMを不揮発メモリ、たとえばソリッドステートディスク(SSD)、光ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等にフラッシュすることを含んでよい。RAMは、フラッシュされてしまえば、シャットダウンされて電力をさらに節約し、バッテリー駆動時間を延ばすかもしれない。したがって、ディスクへのサスペンド状態18においては、ゼロまたはほぼゼロの電力消費が実現され得るであろう。ディスクへのサスペンド状態18は、時刻条件も組み込んでよく、この場合、時刻条件が満たされる(たとえば現在の時間が午前9:00から午後5:00の間である)と判定されれば、トリガー30が用いられてコンピュータシステムをより浅いRAMへのサスペンド状態16に復帰させることができるであろう。したがって、例示の手法は、昼間(たとえば、使用される可能性がより高いとき)はコンピュータシステムをより浅い状態に維持し、夜間(たとえば、使用される可能性がより低いとき)はコンピュータシステムをより深い状態に維持することができる。実際には、推論型起動ヒューリスティックは、もっと広い観点から時刻に依存するようにされ得るであろう。
【0016】
たとえば、上の表Iは、用いられるタイマとセンサとの両方が時刻依存性にされ得ることを示す。したがって、昼間はトリガー22と関連付けられる期間は「x」であってよく、一方、夜にはトリガー22と関連付けられる期間は、より迅速にRAMへのサスペンド状態16に降りることができるように「x/2」であってよいであろう。同様に、昼の間はトリガー26と関連付けられる期間は「y」であるかもしれないが、夜には同じ期間は、より迅速にディスクへのサスペンド状態18に降りることができるように「y/2」に設定されてよいであろう。さらに、将来の使用を予測するために用いられるセンサは、時刻に依存してよい。たとえば、昼の間は3つのセンサ(たとえば運動、環境光および近接)が用いられてより大きな感度を実現してよいであろうが、夜にはただ1つのセンサ(周辺光)だけが用いられるかもしれない。他の使用パターン/区別、たとえば曜日、季節等に関して同様な依存の仕方が確立されてよい。さらに、依存の仕方は、ユーザまたは他のシステムコンポーネントによりプログラム可能であってよい。実際には、依存の仕方は、過去の予測の正確さに基づいて自己調整して、十分に適応性のある推論型起動ヒューリスティックスを得ることができるであろう。
【0017】
センサの1つ以上において活動が検出されれば、トリガー32が用いられてコンピュータシステムをディスクへのサスペンド状態18から低電力ランタイム状態14に移行(HIDが遮断されたままである間に)させてよい。トリガー30、32と関連付けられた状態移行は、すでに注記されたように、バックグラウンドで実行することができる、待ち時間の原因となるある種の活動と関連付けられてよい。したがって、HIDがそのように遮断されている間にさまざまなサスペンド状態16、18を管理することは、コンピュータシステムが見かけとしてインスタント・オンの機能を実現することを可能にする。例示のサスペンド状態16、18は、推論型起動ヒューリスティックがユーザからの起動要求を正しく予測していなかったかもしれないシナリオに備えて、トリガー24と同様にアクティブ状態12に復帰する直接トリガー(図示せず)も有してよい。
【0018】
図2は、ユーザ行動の予測に基づいて推論により起動することができるコンピュータシステム34を示す。コンピュータシステム34は、MID、PDA、ノートブックコンピュータ、ネットブックデバイス、タブレットデバイス等であってよく、図示の例は、システムメモリ40へのアクセスを提供する統合メモリコントローラ(IMC)38を有するプロセッサ36を含み、システムメモリ40は、たとえばダブルデータレート(DDR:double data rate)シンクロナスダイナミックランダムアクセスメモリ(SDRAM:synchronous dynamic random access memory、たとえばDDR3 SDRAM JEDEC Standard JESD79−3C、2008年4月)モジュールを含んでよいであろう。システムメモリ40のモジュールは、たとえば、シングルインラインメモリモジュール(SIMM:single inline memory module)、デュアルインラインメモリモジュール(DIMM:dual inline memory module)、スモールアウトラインDIMM(SODIMM:small outline DIMM)などに組み込まれてよい。プロセッサ36は、1つ以上のプロセッサコア(図示せず)も有してよく、各コアは命令フェッチユニット、命令デコーダ、レベル1(L1)キャッシュ、実行ユニット等、の機能をすべて備えてよい。あるいは、プロセッサ36は、システム34の中のコンポーネントのそれぞれを相互接続するフロント側バスまたはポイント・ツー・ポイントファブリックによって、ノースブリッジ(Northbridge)としても知られるIMC38のオフチップ変化形と通信してよいであろう。
【0019】
例示のプロセッサ36は、ハブバスを介してサウスブリッジ(Southbridge)としても知られているプラットホームコントローラハブ(PCH:platform controller hub)42と通信する。IMC38/プロセッサ36およびPCH42は、ときにチップセットと呼ばれる。プロセッサ36は、PCH42およびさまざまな他のコントローラ(図示せず)を通し、ネットワークポートを介してネットワーク(図示せず)とも動作可能に接続されてよい。例示のシステム34は、ユーザがシステム34と相互作用し、システム34からの情報を感知することができるように、HID44、たとえばタッチスクリーン、ディスプレイ、キーパッド、マウス等も含む。基本入力/出力システム(BIOS:basic input/output system)48ならびにSSD、HDD、光ディスク、フラッシュメモリ等を含んでよいディスク46もPCH46に結合されてよい。主電源システム50は、上記のコンポーネントに電力を供給する1つ以上の電圧レールを含んでよい。
【0020】
例示のシステム34は、1つ以上の低電力センサ52(52a〜52n)、電力副系統54およびシステム34のための動作状態を確立し、システム34を推論により起動するロジック56も含む。特に、ロジック56は、システム34の電源を切る要求に応えて、HID44を遮断された状態に置くように構成されてよい。要求は、たとえば、ユーザがラップトップのふたは閉めるが、対応するラップトップからのふた閉め音声出力を求める要求は行わないことを含んでよいであろう。要求は、自動化されたソフトウェアコンポーネント、オフプラットフォームネットワークデバイスなどによって発生されてもよいであろう。例示のロジック56は、HID44が遮断された状態にある間に、推論型起動ヒューリスティックスを用いてシステム34のための1つ以上の後続の動作状態も確立する。したがって、ロジック56は、システム34をサスペンド状態、たとえば、データがシステムメモリ40にフラッシュされ、プロセッサ36の1つ以上の部分の電源が切られる、RAMへのサスペンド状態16(
図1)に置くことを提供することができるであろう。ロジック56は、システム34を、データがディスク46にフラッシュされ、システムメモリ40の電源が切られる、ディスクへのサスペンド状態18(
図1)に置くことを提供することもできるであろう。
【0021】
ロジック56は、センサ52および1つ以上の推論型起動ヒューリスティック条件を用いて、ユーザがシステム34を始動させると予測されるかどうかを判定してよい。たとえば、第1のセンサ(「S1」)52aは、コンピュータシステム34(たとえばタブレット)の運動を検知する運動センサであってよいと考えられ、この場合、検出される運動は、ユーザがコンピュータシステム34をバッグから取り出し、それを机に置くことに対応するかもしれない。さらに、第2のセンサ(「S2」)52bは、コンピュータシステム34がバッグから出され、机に置かれることをやはり検出するかもしれない周辺光センサであってよいであろう。さらに、第nのセンサ(「Sn」)52nは、コンピュータシステム34の近くにユーザが居ることを検出する近接センサであるかもしれない。コンピュータシステム34の大部分は、検出期間の間、電源を切られてよいので、例示のコンピュータシステム34は、センサ52がさまざまな推論型起動ヒューリスティック関連条件を検出するために必要とされ得る最低限の量の電力を提供することができる電力副系統54も含む。
【0022】
センサ52がもはや沈黙していなければ、例示のロジック56は、HID44が遮断された状態に保たれている間に、コンピュータシステム34をより浅い状態に移行させてよい。より浅い状態への移行は、BIOSおよび/または他のシステムコンポーネントの1つ以上のルーチンを開始することを含むかもしれない。したがって、コンピュータシステム34は「ウォーミングアップ」の過程にあってよいが、ユーザの見方からは電源が切られているように見えてよい。ロジック56は、マシンまたはコンピュータ可読記憶媒体、たとえばRAM、読み取り専用メモリ(ROM:read only memory)、プログラマブルROM(PROM:programmable ROM)、ファームウェア、フラッシュメモリ等に、構成可能なロジック、たとえばプログラマブルロジックアレイ(PLA:programmable logic array)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)、コンプレックスプログラマブルロジックデバイス(CPLD:complex programmable logic device)に、回路技術を用いる固定機能ハードウェア、たとえば特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS:complementary metal oxide semiconductor)またはトランジスタ−トランジスタロジック(TTL:transistor−transistor logic)技術に、あるいはそれらの任意の組み合わせに記憶された命令のセットとして実装されるかもしれない。たとえば、ロジック56に示される動作を実行するコンピュータプログラムコードは、オブジェクト指向プログラミング言語、たとえばJava(登録商標)、Smalltalk、C++など、および従来の手続型プログラミング言語、たとえば「C」プログラミング言語または同様なプログラミング言語を含む、1つ以上のプログラミング言語の任意の組み合わせで書き込まれてよい。
【0023】
下の表IIの擬似コードは、本明細書に記載される実装の1つの例を示す。
【0025】
簡単に言えば、低電力センサ(たとえば<1mW)および適応型ヒューリスティックが用いられて、いつユーザ/個人がコンピュータシステムを用いるかを予測することができる。本明細書に記載される技法は、遅れを生じさせることなく、比較的高い電力状態を含むことなく、別のランタイム環境を利用することなく、別のスタートボタンを有するシステムに限定されることなく、インスタント・オン機能を可能にすることができる。
【0026】
本明細書に記載される実施形態は、すべての型の半導体集積回路(「IC」)チップでの使用に適用可能である。これらのICチップの例は、プロセッサ、コントローラ、チップセットコンポーネント、プログラマブルロジックアレイ(PLA)、メモリチップ、ネットワークチップ、デジタルシグナルプロセッシング(DSP:digital signal processing)チップなどを含むが、これに限定されるものではない。さらに、図面の一部において、信号伝送体のラインが線で表される。あるものは、より多くの構成要素信号経路を示すために異なってよく、複数の構成要素信号経路を示すために数のラベルを有してよく、および/または一次情報の流れの方向を示すために1つ以上の端に矢印を有してよい。しかし、これは、限定的に解釈されるべきでない。むしろ、そのような追加の詳細は、例となる1つ以上の実施形態と関連させて用いられて回路のより簡単な理解を容易にしてよい。表されたいずれの信号線も、追加の情報の有無にかかわらず、複数の方向に伝わってよい1つ以上の有線または無線の信号を実際に含んでよく、任意の適当な型の信号スキーム、たとえば差動ペア、光ファイバーライン、および/またはシングルエンドラインを用いて実装されたデジタルまたはアナログのラインを用いて実装されてよい。
【0027】
例となるサイズ/モデル/値/範囲が示されたかもしれないが、本発明の実施形態はそれらに限定されない。時とともに製造技法(たとえばフォトリソグラフィ)が成熟するにつれて、より小さなサイズのデバイスが製造され得るであろうと予測される。さらに、例示および考察を簡単にするために、ならびに本発明の実施形態の一定の側面を曖昧にしないために、ICチップおよび他のコンポーネントへの周知の電力/接地接続は、図に示されることもあり、示されないこともある。さらに、本発明の実施形態を曖昧にすることを避けるために、配置はブロックダイヤグラムの形で示されてよい。このことは、そのようなブロックダイヤグラム配置の実装に関する細部は、実施形態が実装されることになるプラットホームに高度に依存するという事実、すなわち、そのような細部は、十分に当業者の範囲内にあるはずであるという事実も考慮している。本発明の例となる実施形態を記載するために特定の詳細(たとえば回路)が示される場合、本発明の実施形態がこれらの特定の詳細を変化させずに、または変化させて実施され得ることは、当業者には当然のことである。したがって、記載は、限定的ではなく例示的とみなされるべきである。
【0028】
用語「結合された」は、本明細書においては、対象となるコンポーネントの間のどのような型の直接的または間接的な関係を指すために用いられてもよく、電気的接続、機械的接続、流体接続、光学的接続、電磁気的接続、電気機械的接続または他の接続に適用されてよい。さらに、用語「第1の」、「第2の」等は、本明細書においては考察を容易にするためにだけ用いられてよく、特に明記しない限り、特定の時間的または年代的な意義をもたない。
【0029】
上記の説明から、本発明の実施形態の広義の技法がさまざまな形で実装され得ることは、当業者には自明である。したがって、本発明の実施形態は、本発明の特定の例と関連させて記載されてきたが、図面、明細書および添付の請求項を検討すれば他の変更形は当業者に明らかになるので、本発明の実施形態の真の範囲は、記載によって限定されるべきでない。
[項目1]
システムの電源を切る要求に応えて、ヒューマンインタフェースデバイスを遮断された状態に置き、
前記ヒューマンインタフェースデバイスが前記遮断された状態にある間に、推論型起動ヒューリスティックを用いて前記システムのための1つ以上の後続の動作状態を確立し、
前記システムの電源を入れる要求に応えて、前記ヒューマンインタフェースデバイスを前記遮断された状態から抜け出させる
ロジックを含む装置。
[項目2]
1つ以上のセンサをさらに含み、前記ロジックは、
前記システムと関連付けられた1つ以上のセンサにおける不活動を特定し、
前記特定された不活動に応えて、前記システムをサスペンド状態に置く、
項目1に記載の装置。
[項目3]
前記ロジックは、少なくとも部分的に前記推論型起動ヒューリスティックに基づいて、前記1つ以上のセンサの少なくとも1つを選び、前記1つ以上のセンサは、運動センサ、周辺光センサ、近距離無線通信センサ、および近接センサの少なくとも1つを含む、項目2に記載の装置。
[項目4]
前記ロジックは、少なくとも部分的に前記推論型起動ヒューリスティックに基づいて、不活動期間を判定する、項目2に記載の装置。
[項目5]
前記システムは、ランダムアクセスメモリ(RAM)へのサスペンド状態に置かれ、前記ロジックは、前記1つ以上のセンサの少なくとも1つにおける活動に応えて、前記システムを前記RAMへのサスペンド状態から抜け出させる、項目2に記載の装置。
[項目6]
前記システムは、ディスクへのサスペンド状態に置かれ、前記ロジックは、時刻条件と前記1つ以上のセンサの少なくとも1つにおける活動との少なくとも1つに応えて、前記システムを前記ディスクへのサスペンド状態から抜け出させる、項目2に記載の装置。
[項目7]
前記ヒューマンインタフェースデバイスおよび前記1つ以上のセンサと組み合わされた、項目2に記載の装置。
[項目8]
時刻に依存する推論型起動ヒューリスティックが用いられて前記1つ以上の後続の動作状態の少なくとも1つを確立する、項目1に記載の装置。
[項目9]
命令のセットを含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令のセットは、プロセッサによって実行されれば、システムが、
前記システムの電源を切る要求に応えて、ヒューマンインタフェースデバイスを遮断された状態に置くようにし、
前記ヒューマンインタフェースデバイスが前記遮断された状態にある間に、推論型起動ヒューリスティックを用いて前記システムのための1つ以上の後続の動作状態を確立するようにし、
前記システムの電源を入れる要求に応えて、前記ヒューマンインタフェースデバイスを前記遮断された状態から抜け出させるようにする
非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
[項目10]
前記命令は、実行されれば、前記システムが、
前記システムと関連付けられた1つ以上のセンサにおける不活動を特定するようにし、
前記特定された不活動に応えて、前記システムをサスペンド状態に置くようにする、
項目9に記載の媒体。
[項目11]
前記命令は、実行されれば、前記システムが、少なくとも部分的に前記推論型起動ヒューリスティックに基づいて、前記1つ以上のセンサの少なくとも1つを選ぶようにし、前記1つ以上のセンサは、運動センサ、周辺光センサ、近距離無線通信センサ、および近接センサの少なくとも1つを含む、項目10に記載の媒体。
[項目12]
前記命令は、実行されれば、前記システムが、少なくとも部分的に前記推論型起動ヒューリスティックに基づいて、不活動期間を判定するようにする、項目10に記載の媒体。
[項目13]
前記システムは、ランダムアクセスメモリ(RAM)へのサスペンド状態に置かれ、前記命令は、実行されれば、コンピュータが、前記1つ以上のセンサの少なくとも1つにおける活動に応えて、前記システムを前記RAMへのサスペンド状態から抜け出させるようにする、項目10に記載の媒体。
[項目14]
前記システムは、ディスクへのサスペンド状態に置かれ、前記命令は、実行されれば、コンピュータが、時刻条件と前記1つ以上のセンサの少なくとも1つにおける活動との少なくとも1つに応えて、前記システムを前記ディスクへのサスペンド状態から抜け出させるようにする、項目10に記載の媒体。
[項目15]
時刻に依存する推論型起動ヒューリスティックが用いられて前記1つ以上の後続の動作状態の少なくとも1つを確立する、項目9に記載の媒体。
[項目16]
ヒューマンインタフェースデバイスを、前記ヒューマンインタフェースデバイスと関連付けられたシステムの電源を切る要求に応えて、遮断された状態に置くステップ、
前記ヒューマンインタフェースデバイスが前記遮断された状態にある間に、推論型起動ヒューリスティックを用いて前記システムのための1つ以上の後続の動作状態を確立するステップ、および
前記システムの電源を入れる要求に応えて、前記ヒューマンインタフェースデバイスを前記遮断された状態から抜け出させるステップ
を含む、コンピュータに実装された方法。
[項目17]
前記推論型起動ヒューリスティックを用いて1つ以上の後続の動作状態を確立するステップは、
前記システムと関連付けられた1つ以上のセンサにおける不活動を特定するステップ、および
前記特定された不活動に応えて、前記システムをサスペンド状態に置くステップ
を含む、項目16に記載の方法。
[項目18]
少なくとも部分的に前記推論型起動ヒューリスティックに基づいて、前記1以上のセンサの少なくとも1つを選ぶステップをさらに含み、前記1つ以上のセンサは、運動センサ、周辺光センサ、近距離無線通信センサ、および近接センサの少なくとも1つを含む、項目17に記載の方法。
[項目19]
少なくとも部分的に前記推論型起動ヒューリスティックに基づいて、不活動期間を判定するステップをさらに含む、項目17に記載の方法。
[項目20]
前記システムは、ランダムアクセスメモリ(RAM)へのサスペンド状態に置かれ、前記方法は、前記1つ以上のセンサの少なくとも1つにおける活動に応えて、前記システムをRAMへのサスペンド状態から抜け出させるステップをさらに含む、項目17に記載の方法。
[項目21]
前記システムは、ディスクへのサスペンド状態に置かれ、前記方法は、時刻条件と前記1つ以上のセンサの少なくとも1つにおける活動との少なくとも1つに応えて、前記システムを前記ディスクへのサスペンド状態から抜け出させるステップをさらに含む、項目17に記載の方法。
[項目22]
時刻に依存する推論型起動ヒューリスティックが用いられて前記1つ以上の後続の動作状態の少なくとも1つを確立する、項目16に記載の方法。