特許第5907160号(P5907160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907160
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月20日
(54)【発明の名称】化学強化用ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/083 20060101AFI20160407BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20160407BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20160407BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20160407BHJP
   C03C 3/093 20060101ALI20160407BHJP
   C03C 3/095 20060101ALI20160407BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20160407BHJP
【FI】
   C03C3/083
   C03C3/085
   C03C3/087
   C03C3/091
   C03C3/093
   C03C3/095
   C03C21/00 101
【請求項の数】13
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-504771(P2013-504771)
(86)(22)【出願日】2012年3月15日
(86)【国際出願番号】JP2012056744
(87)【国際公開番号】WO2012124774
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2014年9月2日
(31)【優先権主張番号】特願2011-59661(P2011-59661)
(32)【優先日】2011年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-64617(P2011-64617)
(32)【優先日】2011年3月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 宏行
(72)【発明者】
【氏名】久野 一秀
【審査官】 相田 悟
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05268335(US,A)
【文献】 特開2010−143790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00〜14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを55〜80%、Alを3〜16%、Bを0〜12%、NaOを5〜16%、KOを0〜4%、MgOを0〜15%、CaOを0〜3%、ΣRO(Rは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn)を0〜18%、ZrOを0〜1%、Coを0.01〜0.2%、NiOを0.05〜1%、Feを0.01〜3%含有し、Co/Fe比が0.01〜0.5であることを特徴とする化学強化用ガラス。
【請求項2】
色補正成分(Ti、Cu、Ce、Er、Nd、Mn、Seの金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1成分)を0.005〜3%含有することを特徴とする請求項1に記載の化学強化用ガラス。
【請求項3】
TiOを0.1〜1%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の化学強化用ガラス。
【請求項4】
CuOを0.1〜3%含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項5】
色補正成分(Ce、Er、Nd、Mn、Seの金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1成分)を0.005〜2%含有することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項6】
(SiO+Al+B)/(ΣR(R’はNa、K、Li)+CaO+SrO+BaO+Fe+Co)が3以上であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項7】
SOを0.005〜0.5%含有することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項8】
SnOを0.005〜1%含有することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項9】
波長550nmの吸光係数/波長600nmの吸光係数、波長450nmの吸光係数/波長600nmの吸光係数が、いずれも0.7〜1.2の範囲内であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項10】
下記式(1)、(2)で示される吸光係数の相対値の変化量ΔT(550/600)、ΔT(450/600)が絶対値で5%以下であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
ΔT(550/600)(%)=[{A(550/600)−B(550/600)}/A(550/600)]×100 ・・・(1)
ΔT(450/600)(%)=[{A(450/600)−B(450/600)}/A(450/600)]×100 ・・・(2)
(上記式(1)において、A(550/600)は、400W高圧水銀ランプの光を100時間照射した後のガラスの分光透過率曲線から算出される、波長550nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数との相対値であり、B(550/600)は、光照射前の前記ガラスの分光透過率曲線から算出される、波長550nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数との相対値である。上記式(2)において、A(450/600)は、400W高圧水銀ランプの光を100時間照射した後のガラスの分光透過率曲線から算出される、波長450nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数の相対値であり、B(450/600)は、光照射前の前記ガラスの分光透過率曲線から算出される、波長450nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数の相対値である。)
【請求項11】
下記式(I)で示される、L表色系のD65光源による反射光の色度aとF2光源による反射光の色度aとの差Δaの絶対値、および下記式(II)で示される、L表色系のD65光源による反射光の色度bとF2光源による反射光の色度bとの差Δbの絶対値が、いずれも1以下であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
Δa=a値(D65光源)−a値(F2光源) ・・・(I)
Δb=b値(D65光源)−b値(F2光源) ・・・(II)
【請求項12】
前記化学強化用ガラスを厚み1mmのガラス板にしたものの鏡面仕上げ表面に、ビッカース圧子を用いて圧痕を形成した際のクラックの発生率が50%となるビッカース圧子の荷重が150gf以上である請求項1ないし11のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の化学強化用ガラスを化学強化処理して得られる化学強化ガラスであって、
化学強化処理により前記化学強化ガラス表面に形成された表面圧縮応力層の深さが30μm以上であり、前記表面圧縮応力層の表面圧縮応力が550MPa以上であることを特徴とする化学強化ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、例えば携帯して使用可能な通信機器や情報機器等の筐体や装飾品に用いられる化学強化用ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の電子機器の筐体や装飾品は、装飾性、耐傷性、加工性、コスト等の様々な要因を考慮し、樹脂、金属等の素材から適宜のものが選択され、用いられている。
【0003】
近年、筐体の素材として、従来は用いられていなかったガラスを用いる試みがされている(特許文献1)。特許文献1によれば、携帯電話等の電子機器において、筐体本体をガラスで形成することにより、透明感のある独特の装飾効果を発揮することができるとされている。
【0004】
携帯電話等の、携帯して使用可能な電子機器の筐体や装飾品は、使用時の落下衝撃による破損や長期間の使用による接触傷を考慮し、高い強度が求められる。
【0005】
ガラスの強度を高める方法として、ガラス表面に圧縮応力層を形成させる手法が一般的に知られている。ガラス表面に圧縮応力層を形成させる手法としては、風冷強化法(物理強化法)と、化学強化法が代表的である。風冷強化法(物理強化法)は、軟化点付近まで加熱したガラス板表面を風冷などにより急速に冷却して行う手法である。また、化学強化法は、ガラス転移点以下の温度で、イオン交換により、ガラス板表面に存在するイオン半径が小さいアルカリ金属イオン(典型的にはLiイオン、Naイオン)を、イオン半径のより大きいアルカリイオン(典型的にはLiイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオンである。)に交換する手法である。
【0006】
例えば、前述したような装飾用ガラスは、通常2mm以下の厚さで使用されることが多い。このように、厚みの薄いガラス板に対して風冷強化法を適用すると、表面と内部の温度差を確保しにくいため、圧縮応力層を形成することが困難である。このため、強化処理後のガラスにおいて、目的の高強度という特性を得ることができない。また、風冷強化では、冷却温度のばらつきにより、ガラス板の平面性を損なう懸念が大きい。特に厚みの薄いガラス板については、平面性が損なわれる懸念が大きく、本発明の目的である質感が損なわれる可能性がある。これらの点から、ガラス板は、後者の化学強化法によって強化することが好ましい。
【0007】
また、携帯電話等の電子機器の筐体や装飾品は、機器自体の存在を強く主張せず、なおかつ重厚感、高級感が得られる黒色やグレイ等の暗色系の色調のものも多用されている。中でも、グレイ系の色調は、柔らかい印象を与えるとともに、表面の付着物による汚れが目立ち難いことから、電子機器の筐体等において、広く適用されている。
【0008】
化学強化可能であって、かつ暗色を呈するガラスとして、特許文献2に記載のガラスが知られている。特許文献2に記載のガラスは、アルミノケイ酸塩ガラスに高濃度の酸化鉄を含有させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−61730号公報
【特許文献2】特公昭45−16112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献2に開示された実施例では、清澄剤として亜ヒ酸を使用している。亜ヒ酸は環境負荷物質であり、製造工程はもとより、製品のライフサイクルを通じて環境に与える悪影響が懸念される。
【0011】
このため、本発明者は特許文献2の実施例に開示された組成のガラス原料を、亜ヒ酸を添加せずに加熱溶融したところ、非常に泡抜けすなわち脱泡性が悪く、残存泡の多いガラスしか得られないことが判明した。すなわち、溶融したガラスをブロック状にキャストした後、板状にスライスして表面を研磨したところ、研磨した表面に、ガラス中の泡が切断されて形成されたあばた状のくぼみ(以下、オープン泡と称す)が多数露出しているのが確認された。
【0012】
上述のような電子機器の筐体や装飾品用途では、外観品質上の要求から、オープン泡が存在するガラスは使用できないため、製品歩留が極めて低くなる問題がある。また、オープン泡が割れの起点となって強度が低下する懸念がある。
【0013】
また、電子機器の筐体は、平板状だけでなく、凹状もしくは凸状に成形されて用いられることがある。そのため、プレス成形し易いガラスが求められる。さらに、化学強化されたガラスは、品質管理上、一定以上の強度を備えることを確認する目的で、圧縮応力量の測定が行われる。しかしながら、ガラスがグレイのような暗色である場合、既存の表面応力計を用いて測定を行うと、ガラスによって測定光が吸収されてしまい、圧縮応力量の測定を行えないという問題がある。そのため、このような灰色系の色調を有するガラスでも、可視域以外の波長の光を一定以上透過することが求められる。
【0014】
本発明は、電子機器の筐体や装飾品用途に好適な特性、すなわち、泡品質、強度、光の透過特性に優れた、グレイ系の色調を有する化学強化用ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを55〜80%、Alを3〜16%、Bを0〜12%、NaOを5〜16%、KOを0〜4%、MgOを0〜15%、CaOを0〜3%、ΣRO(Rは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn)を0〜18%、ZrOを0〜1%、Coを0.01〜0.2%、NiOを0.05〜1%、Feを0.01〜3%含有し、Co/Fe比が0.01〜0.5であることを特徴とする化学強化用ガラス(以下、本発明の化学強化用ガラスということがある)を提供する。
【0016】
また、本発明の化学強化用ガラスであって、色補正成分(Ti、Cu、Ce、Er、Nd、Mn、Seの金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1成分)を合計で0.005〜3%含有するものを提供する。
【0017】
また、本発明の化学強化用ガラスであって、TiOを0.1〜1%含有するものを提供する。また、本発明の化学強化用ガラスであって、CuOを0.1〜3%含有するものを提供する。また、本発明の化学強化用ガラスであって、色補正成分(Ce、Er、Nd、Mn、Seの金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1成分)を0.005〜2%含有するものを提供する。
【0018】
た、本発明の化学強化用ガラスであって、(SiO+Al+B)/(ΣR(R’はNa、K、Li)+CaO+SrO+BaO+Fe+Co)が3以上であるものを提供する。また、本発明の化学強化用ガラスであって、SOを0.005〜0.5%含有するものを提供する。また、本発明の化学強化用ガラスであって、SnOを0.005〜1%含有するものを提供する。
【0019】
また、本発明の化学強化用ガラスであって、波長550nmの吸光係数/波長600nmの吸光係数、波長450nmの吸光係数/波長600nmの吸光係数が、いずれも0.7〜1.2の範囲内であるものを提供する。また、本発明の化学強化用ガラスであって、下記式(1)、(2)で示される吸光係数の相対値の変化量ΔT(550/600)、ΔT(450/600)が絶対値で5%以下であるものを提供する。
ΔT(550/600)(%)=[{A(550/600)−B(550/600)}/A(550/600)]×100 ・・・(1)
ΔT(450/600)(%)=[{A(450/600)−B(450/600)}/A(450/600)]×100 ・・・(2)
(上記式(1)において、A(550/600)は、400W高圧水銀ランプの光を100時間照射した後のガラスの分光透過率曲線から算出される、波長550nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数との相対値であり、B(550/600)は、光照射前の前記ガラスの分光透過率曲線から算出される、波長550nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数との相対値である。上記式(2)において、A(450/600)は、400W高圧水銀ランプの光を100時間照射した後のガラスの分光透過率曲線から算出される、波長450nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数の相対値であり、B(450/600)は、光照射前の前記ガラスの分光透過率曲線から算出される、波長450nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数の相対値である。)
【0020】
また、本発明の化学強化用ガラスであって、下記式(I)で示される、L表色系のD65光源による反射光の色度aとF2光源による反射光の色度aとの差Δaの絶対値、および下記式(II)で示される、L表色系のD65光源による反射光の色度bとF2光源による反射光の色度bとの差Δbの絶対値が、いずれも1以下であるものを提供する。
Δa=a値(D65光源)−a値(F2光源) ・・・(I)
Δb=b値(D65光源)−b値(F2光源) ・・・(II)
【0021】
また、本発明の化学強化用ガラスであって、前記化学強化用ガラスを厚み1mmのガラス板にしたものの鏡面仕上げ表面にビッカース圧子を用いて圧痕を形成した際のクラックの発生率が50%となるビッカース圧子の荷重が150gf以上であるものを提供する。
【0022】
また、本発明は、上記した本発明の化学強化用ガラスを化学強化処理して得られる化学強化ガラスであって、化学強化処理により前記化学強化ガラス表面に形成された表面圧縮応力層の深さが30μm以上であり、前記表面圧縮応力層の表面圧縮応力が550MPa以上である化学強化ガラスを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、泡品質が良好な、グレイ系の色調を有するガラスを環境負荷を低くしつつ安定的に得ることができる。また、硫酸塩による清澄に好適な化学強化用ガラスが得られる。また、本発明のガラスは、化学強化可能であり、薄い肉厚で高強度が求められる用途、たとえば装飾用途にも好適に用いることができる。また、本発明の化学強化用ガラスはクラックによる破壊が起こりにくいため、高い強度を備えたガラスとすることが可能である。また、本発明のガラスは、プレス成形性に優れたガラスであり、筐体等の用途で求められる所望の形状に低コストで加工することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の化学強化用ガラスは、下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを55〜80%、Alを3〜16%、Bを0〜12%、NaOを5〜16%、KOを0〜4%、MgOを0〜15%、CaOを0〜3%、ΣRO(Rは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn)を0〜18%、ZrOを0〜1%含有し、かつCoを0.01〜0.2%、NiOを0.05〜1%、Feを0.01〜3%含有する。
【0025】
なお、本明細書において、着色成分や色補正成分の含有量は、ガラス中に存在する各成分が、表示された酸化物として存在するものとした場合の換算含有量を示す。
【0026】
たとえば「Feを0.01〜3%含有する」とは、ガラス中に存在するFeが、すべてFeの形で存在するものとした場合のFe含有量、すなわちFeのFe換算含有量が0.01〜3%であることを意味するものである。
【0027】
本発明の化学強化用ガラスは、着色成分として、Co、NiO、Feを、それぞれ上記所定量含有することで、グレイ系の着色ガラスを得ることが可能となる。
【0028】
例えば、筐体用途のガラスは、平板状だけでなく、凹状もしくは凸状に成形して用いられることがある。この場合、平板状やブロック状等に成形したガラスを再加熱し、溶融させた状態でプレス成形したり、溶融ガラスをプレス型上に流し出し、プレス成形することで、所望の形状に成形される。
【0029】
ガラスをプレス成形する際には、プレス成形時における、ガラスの成形温度を低温化することが好ましい。一般的に、プレス成形時のガラスの成形温度が高いと、金型として、超合金やセラミックスを使わなければならず、これらは加工性が悪くまた高価であるため好ましくない。また、プレス成形時のガラスの成形温度が高いと、金型を高温下で使用するため、金型の劣化の進行が早くなる。また、高い温度でガラスを軟化状態にするため、多大なエネルギーを要する。
【0030】
本発明の化学強化用ガラスは、ガラス中に、酸化物基準のモル百分率表示でCoを0.01〜0.2%、NiOを0.05〜1%、Feを0.01〜3%含有することで、プレス成形時のガラスの成形温度の指標である、Tg(ガラス転移点)を低温化することができる。これにより、凹状もしくは凸状等の適宜の形状にプレス成形するのに適した、プレス成形性に優れたガラスとすることができる。
【0031】
波長380nm〜780nmにおける吸光係数を高めるには、複数の着色成分を組み合わせて配合し、これら波長域の光の吸光係数が平均的に高くなるようにすることが好ましい。本発明の化学強化用ガラスは、着色成分として、Coを0.01〜0.2%、NiOを0.05〜1%、Feを0.01〜3%含有することで、所望の遮光性を有するとともに、波長380nm〜780nmの可視域の光を十分に吸収しつつ、平均的に可視域の光を吸収するガラスとすることができる。つまり、グレイの色調を呈するガラスを得ようとする場合、着色成分の種類や配合量により、波長380nm〜780nmの可視域において、吸収特性が低い波長域が存在することに起因して、褐色や青色を呈するグレイとなることがある。これに対し、前述の着色成分とすることで、褐色がかったグレイや青味がかったグレイではない、良好なグレイの色調を表現することができる。
【0032】
また、ガラス中の着色成分を組み合わせることで、波長380nm〜780nmの可視域の光を十分に吸収しつつ、紫外光や赤外光等の特定波長の光を透過するガラスとすることができる。本発明の化学強化用ガラスは、着色成分として、Co、NiO、Feを含有することで、波長300nm〜380nmの紫外光および波長800nm〜950nmの赤外光を透過するガラスとすることができる。例えば、携帯電話や携帯型ゲーム機器のデータ通信に用いられる赤外線通信装置は、波長800nm〜950nmの赤外光が利用されている。そのため、前述の着色成分(Co、NiO、およびFe)を配合し、ガラスに赤外光透過特性を付与することで、例えば、当該ガラスを筐体用途に適用する際に、赤外線通信装置用の開口部を筐体に設けることなく適用することができる。
【0033】
本発明の化学強化用ガラスは、色補正成分として、Ti、Cu、Ce、Er、Nd、Mn、Seの金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1成分を、合計で0.005〜3%、より好ましくは、0.01〜2.5%含有することが好ましい。
【0034】
上記の色補正成分を、合計で0.005%以上含有することで、可視域の波長域内での光の吸収特性の差異を低減でき、グレイの色調のガラスにおいて、褐色がかった色調や青みがかった色調ではない、良好なグレイの色調を表現することができる。一方、上記の色補正成分の含有量が3%超えると、ガラスが不安定となり失透を生じるおそれがある。
【0035】
褐色や青などの色味の呈色のない、良好なグレイの色調を得る観点から、色補正成分としては、Ce、Er、Nd、Mn、Seの金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1成分を、合計で0.005〜2%、より好ましくは、0.01〜1.5%含有することがより好ましい。
【0036】
色補正成分としては、具体的には、例えば、TiO、CuO、CuO、Ce、Er、Nd、MnO、SeOが好適に用いられる。
【0037】
本発明の化学強化用ガラスの実施形態について説明する。以下の本発明の化学強化用ガラスの組成についは、特に断らない限りモル百分率表示含有量を用いて説明する。
【0038】
SiOはガラスの骨格を構成する成分であり必須である。55%未満ではガラスとしての安定性が低下する、または耐候性が低下する。好ましくは61%以上である。より好ましくは65%以上である。SiOが80%超ではガラスの粘性が増大し溶融性が著しく低下する。好ましくは75%以下、典型的には70%以下である。
【0039】
Alはガラスの耐候性および化学強化特性を向上させる成分であり、必須である。3%未満では耐候性が低下する。好ましくは4%以上、典型的には5%以上である。Alが16%超ではガラスの粘性が高くなり均質な溶融が困難になる。好ましくは14%以下、典型的には12%以下である。
【0040】
は耐候性を向上させる成分であり、必須ではないが含有することが好ましい成分である。Bを含有する場合、0.01%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。好ましくは4%以上であり、典型的には5%以上である。Bが12%超では揮散による脈理が発生し、歩留まりが低下するおそれがある。好ましくは11%以下、典型的には10%以下である。
【0041】
NaOはガラスの溶融性を向上させる成分であり、またイオン交換により表面圧縮応力層を形成させるため、必須である。5%未満では溶融性が悪く、またイオン交換により所望の表面圧縮応力層を形成することが困難となる。好ましくは7%以上、典型的には8%以上である。NaOが16%超では耐候性が低下する。好ましくは15%以下、典型的には14%以下である。
【0042】
Oは溶融性を向上させる成分であるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくする作用があるため、必須ではないが含有することが好ましい成分である。KOを含有する場合、0.01%未満では溶融性向上について有意な効果が得られない、またはイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。典型的には0.3%以上である。KOが4%超では耐候性が低下する。好ましくは3%以下、典型的には2%以下である。
【0043】
MgOは溶融性を向上させる成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。MgOを含有する場合、3%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。典型的には4%以上である。MgOが15%超では耐候性が低下する。好ましくは13%以下、典型的には12%以下である。
【0044】
CaOは溶融性を向上させる成分であり、必要に応じて含有することができる。CaOを含有する場合、0.01%未満では溶融性向上について有意な効果が得られない。典型的には0.1%以上である。CaOが3%超では化学強化特性が低下する。好ましくは1%以下、典型的には0.5%以下であり、実質的に含有しないことが好ましい。
【0045】
RO(Rは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn)は溶融性を向上させる成分であり、必須ではないが必要に応じていずれか1種以上を含有することができる。その場合ROの含有量の合計ΣRO(Rは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn)が1%未満では溶融性が低下するおそれがある。好ましくは3%以上、典型的には5%以上である。ΣRO(Rは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn)が18%超では耐候性が低下する。好ましくは15%以下、より好ましくは13%以下、典型的には11%以下である。なお、ΣROとは、全てのRO成分の合量を示すものである。
【0046】
ZrOはイオン交換速度を大きくする成分であり、必須ではないが1%未満の範囲で含有してもよい。ZrOが1%超では溶融性が悪化して未溶融物としてガラス中に残る場合が起こるおそれがある。典型的にはZrOは含有しない。
【0047】
Feはガラスを濃色に着色するための必須成分である。Feで表した全鉄含有量が0.01%未満では、所望とする灰色のガラスが得られない。好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.03%以上である。Feが3%超では、ガラスの色調が過度に暗くなり、所望の灰色の色調が得られない。また、ガラスが不安定となり失透を生じる。好ましくは2.5%以下、より好ましくは2.2%以下である。
【0048】
この全鉄のうちの、Feで換算した2価の鉄の含有量の割合(鉄レドックス)が10〜50%、特には15〜40%であることが好ましい。20〜30%であるともっとも好ましい。鉄レドックスが10%より低いとSOを含有する場合その分解が進まず、期待する清澄効果が得られないおそれがある。50%より高いと清澄前にSOの分解が進みすぎて期待する清澄効果が得られない、あるいは、泡の発生源となり泡個数が増加するおそれがある。
【0049】
本明細書では、全鉄をFeに換算したものをFeの含有量として表記としている。鉄レドックスは、メスバウアー分光法によりFeに換算した全鉄中の、Feに換算した2価の鉄の割合を%表示で示すことができる。具体的には、放射線源(57Co)、ガラス試料(上記ガラスブロックから切断、研削、鏡面研磨した3〜7mm厚のガラス平板)、検出器(LND社製45431)を直線上に配置する透過光学系での評価を行う。光学系の軸方向に対して放射線源を運動させ、ドップラー効果によるγ線のエネルギー変化を起こす。そして室温で得られたメスバウアー吸収スペクトルを用いて、2価のFeと3価のFeの割合を算出し、2価のFeの割合を鉄レドックスとする。
【0050】
Coは、ガラスを濃色に着色するための着色成分であるとともに、鉄との共存下において脱泡効果を奏する成分であり、必須である。すなわち、高温状態で3価の鉄が2価の鉄となる際に放出されるO泡を、コバルトが酸化される際に吸収するため、結果としてO泡が削減され、脱泡効果が得られる。
【0051】
さらに、Coは、SOと共存させることにより清澄作用をより高める成分である。すなわち、たとえばボウ硝(NaSO)を清澄剤として使用する場合、SO→SO+1/2Oの反応を進めることで、ガラスからの泡抜けが良くなるため、ガラス中の酸素分圧は低い方が好ましい。鉄を含むガラスにおいて、コバルトが共添加されることで、鉄の還元により生じる酸素の放出を、コバルトの酸化により抑制することができ、SOの分解が促進される。このため、泡欠点の少ないガラスを作製することができる。
【0052】
また、化学強化のためにアルカリ金属を比較的多量に含むガラスは、ガラスの塩基性度が高くなるため、SOが分解しにくく、清澄効果が低下する。このように、SOが分解しにくい化学強化用ガラスにおいて、鉄を含むものでは、コバルトは、SOの分解を促進するため、脱泡効果の促進に特に有効である。
【0053】
このような清澄作用を発現させるためには、Coは0.01%以上とされ、好ましくは0.02%以上、典型的には0.03%以上である。0.2%超では、ガラスが不安定となり失透を生じる。好ましくは0.18%以下、より好ましくは0.15%以下である。
【0054】
CoとFeとのモル比(Co/Fe比)が0.01未満であると前記の脱泡効果が得られなくなるおそれがある。好ましくは0.05以上、典型的には0.1以上である。Co/Fe比が0.5超であると、逆に泡の発生源となり、ガラスの溶け落ちが遅くなったり、泡個数を増加するおそれがあるため、別途清澄剤を用いる等の対応が必要となる。好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下である。
【0055】
NiOは、ガラスを所望のグレイの色調に着色するための着色成分であり、必須成分である。NiOが0.05%未満では、ガラスにおいて所望のグレイの色調が得られない。好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上である。NiOが1%超では、ガラスの明度が過度に高くなり、所望のグレイの色調が得られない。また、ガラスが不安定となり失透を生じる。好ましくは0.9%以下、より好ましくは0.8%以下である。
【0056】
(SiO+Al+B)/(ΣRO+CaO+SrO+BaO+Fe+Co)はガラスのネットワークを形成する網目状酸化物の合計量と主たる修飾酸化物の合計量との比率を示すものであり、この比が3未満であると化学強化処理後に圧痕をつけた時の破壊する確率が大きくなるおそれがある。好ましくは3.6以上、典型的には4以上である。この比が6超であると、ガラスの粘性が増大し溶融性が低下する。好ましくは5.5以下、より好ましくは5以下である。なお、ΣROとは、NaO、KO、LiOの合量を示すものである。
【0057】
SOは清澄剤として作用する成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。SOを含有する場合0.005%未満では期待する清澄作用が得られない。好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上である。0.03%以上がもっとも好ましい。また0.5%超では逆に泡の発生源となり、ガラスの溶け落ちが遅くなったり、泡個数が増加するおそれがある。好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。0.1%以下がもっとも好ましい。
【0058】
SnOは清澄剤として作用する成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。SnOを含有する場合、0.005%未満では期待する清澄作用が得られない。好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上である。また1%超では逆に泡の発生源となり、ガラスの溶け落ちが遅くなったり、泡個数が増加するおそれがある。好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.5%以下である。0.3%以下がもっとも好ましい。
【0059】
TiOは、耐候性を向上させるとともに、ガラスの色調を調整して色補正する成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。TiOを含有する場合、0.1%未満では、十分な色補正効果を得られず、グレイ系のガラスにおいて、青味がかったグレイ、または褐色がかったグレイに呈色するのを十分に防止できないおそれがある。また、耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。好ましくは0.15%以上であり、典型的には0.2%以上である。TiOが1%超ではガラスが不安定になり、失透が生じるおそれがある。好ましくは0.8%以下、典型的には0.6%以下である。
【0060】
CuOは、ガラスの色調を調整して色補正する成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。また、CuOは、ガラスに含有させることによりメタメリズム(条件等色)を低くする効果がある。
【0061】
メタメリズムとは、外光色による、色調または外観色の色変化の度合いを示す指標で、CIE(国際照明委員会)により規格化されたL表色系を用いて定義することができる。このメタメリズムが低い程、外光色による色調または外観色の色変化の度合いが小さいことになる。例えば、ガラスのメタメリズムが高い場合には、外部の光源により色調が大きく異なったものとなり、室内におけるガラスの色調と屋外におけるガラスの色調とが大きく異なることになる。
【0062】
本発明の化学強化用ガラスは、CuOを含有することにより、下記式(I)で定義されるΔaの絶対値および下記式(II)で定義されるΔbの絶対値を共に1以下にすることができる。これにより、室内におけるガラスの反射色調と屋外におけるガラスの反射色調との相違を小さくすることができる。
(i)L表色系のD65光源による反射光の色度aとF2光源による反射光の
色度aとの差Δa
Δa=a値(D65光源)−a値(F2光源) ・・・(I)
(ii)L表色系のD65光源による反射光の色度bとF2光源による反射光の色度bとの差Δb
Δb=b値(D65光源)−b値(F2光源) ・・・(II)
【0063】
CuOを含有する場合、0.1%未満では、色調の調整やメタメリズム抑制について有意な効果が得られないおそれがある。好ましくは0.2%以上であり、典型的には0.5%以上である。CuOが3%超ではガラスが不安定になり、失透が生じるおそれがある。好ましくは2.5%以下、典型的には2%以下である。
【0064】
化学強化用ガラスにおけるΔaおよびΔbは、メタメリズムを低くするためには、共に絶対値で0.8以下が好ましく、共に絶対値で0.6以下がより好ましい。なお、Feについても、CuOと同様にガラスに含有することによりメタメリズム(条件等色)を低くする効果がある。メタメリズムについて有意な効果が得られるFeの含有量は、好ましくは0.5〜2%であり、典型的には0.7〜1.5%である。
【0065】
LiOは溶融性を向上させるための成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。LiOを含有する場合、1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。好ましくは3%以上であり、典型的には6%以上である。LiOが15%超では耐候性が低下するおそれがある。好ましくは10%以下、典型的には5%以下である。
【0066】
SrOは溶融性を向上させるための成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。SrOを含有する場合、1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。好ましくは3%以上であり、典型的には6%以上である。SrOが15%超では耐候性や化学強化特性が低下するおそれがある。好ましくは12%以下、典型的には9%以下である。
【0067】
BaOは溶融性を向上させるための成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。BaOを含有する場合、1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。好ましくは3%以上であり、典型的には6%以上である。BaOが15%超では耐候性や化学強化特性が低下するおそれがある。好ましくは12%以下、典型的には9%以下である。
【0068】
ZnOは溶融性を向上させるための成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。ZnOを含有する場合、1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。好ましくは3%以上であり、典型的には6%以上である。ZnOが15%超では耐候性が低下するおそれがある。好ましくは12%以下、典型的には9%以下である。
【0069】
CeO、Er、Nd、MnO、SeOは、ガラスの色調を調整する色補正成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。これらの色補正成分を含有する場合、各々の含有量は、0.005%未満では、色調の調整、すなわち色補正の効果を十分に得られず、例えば青味がかったグレイ、または褐色がかったグレイの色調に呈色するのを十分に防止できないおそれがある。これら色補正成分の各々の含有量は、好ましくは0.05%以上であり、典型的には0.1%以上である。色補正成分の各々の含有量が2%を超えると、ガラスが不安定となり失透を生じるおそれがある。典型的には、1.5%以下である。
【0070】
なお、上述した色補正成分は、各ガラスの母体となる組成に応じて、その種類や量を適宜選択して用いることができる。
【0071】
上記した色補正成分としては、TiO、CuO、CuO、CeO、Er、Nd、MnO、SeOの合計の含有量が0.005〜3%であることが好ましく、CeO、Er、Nd、MnO、SeOの合計の含有量が0.005〜2%であることが好ましい。色補正成分の含有量を上記範囲とすることで、十分な色補正効果を得られるとともに、安定したガラスを得ることができる。
【0072】
本発明の化学強化用ガラスでは、Coは着色成分でもあり清澄剤でもある。ガラスの清澄剤としては、必要に応じてSOやSnOを用いてもよいが、本発明の目的を損なわない範囲で、Sb、Cl、F、その他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は1%以下であることが好ましく、典型的には0.5%以下である。なお、Asは、環境負荷物質であり、製造工程はもとより製品のライフサイクルを通じて環境に与える悪影響が懸念されるため含有しない。
【0073】
本発明の化学強化用ガラスは、化学強化用ガラスを厚み1mmのガラス板にしたものの鏡面仕上げ表面に、ビッカース圧子を用いて圧痕を形成した際の、クラックの発生率が50%となるビッカース圧子の押し込み荷重が150gf以上であることが好ましく、200gf以上であることがより好ましく、300gf以上であることがさらに好ましい。前記ビッカース圧子の押し込み荷重が150gf未満であると、化学強化処理前の製造工程や輸送の際に傷が入りやすく、また、化学強化処理を行ったとしても所望の強度が得られないことがある。なお、化学強化用ガラスを化学強化処理する方法としては、ガラス表面のNaOと溶融塩中のKOとをイオン交換できるものであれば特に限定されないが、典型的には後述する方法が適用可能である。
【0074】
また、本発明の化学強化用ガラスは、波長380nm〜780nmにおける吸光係数の最小値が1mm−1以上であることが好ましい。電子機器の内部に設けられる表示装置の光源は、発光ダイオード、有機EL、CCFL等の白色光を発するもので構成される。そのため、電子機器の筐体として本発明の化学強化用ガラスを用いる際、これらの白色光がガラスを介して機器の外部に漏れることがないよう、ガラスとしては、波長380nm〜780nmにおける吸光係数の最小値を1mm−1以上とする必要がある。白色光は、蛍光体を用いて可視域の複数の波長の光を複合した上で白色として認識させるものである。そのため、ガラスの可視域の波長の吸光係数の最小値を1mm−1以上とすることで、遮光手段を別途設けることなく白色光をガラス単体で吸収し、ガラスとして十分な遮光性を得る。
【0075】
ガラスの波長380nm〜780nmにおける吸光係数の最小値が1mm−1未満である場合、筐体用途として十分な厚みを備えたガラスであっても所望の遮光性が得られず、光がガラスを透過するおそれがある。また、ガラスが凹状、もしくは凸状に成形される際、厚みがもっとも薄い箇所において、光が透過するおそれがある。ガラスの厚みが薄い場合には、波長380nm〜780nmにおけるガラスの吸光係数の最小値は2mm−1以上とすることが好ましく、3mm−1以上がより好ましく、4mm−1以上がさらに好ましい。
【0076】
本発明における吸光係数の算出方法は、以下のとおりである。ガラス板の両面を鏡面研磨し、厚さtを測定する。このガラス板の分光透過率Tを測定する(例えば、日本分光株式会社製、紫外可視近赤外分光光度計V−570を用いる)。そして、吸光係数βを、T=10−βtの関係式を用いて算出する。
【0077】
また、本発明の化学強化用ガラスは、吸光係数の相対値(波長450nmの吸光係数/波長600nmの吸光係数、波長550nmの吸光係数/波長600nmの吸光係数)が0.7〜1.2の範囲内であることが好ましい。前述のとおり、着色成分として、Co、NiO、Feを選択して配合することで、グレイの色調を呈するガラスが得られる。しかし、それぞれの着色成分の配合量によっては、グレイではあるものの、例えば褐色がかったり、青味がかったりすることがある。他の色に見えない所望のグレイの色調をガラスで表現するには、可視域の光の波長における吸光係数のばらつきが少ないガラス、つまり可視域の光を平均的に吸収するガラスが好ましい。
【0078】
よって、前記吸光係数の相対値の範囲は、0.7〜1.2の範囲内とすることが好ましい。この範囲が、0.7より小さいと、ガラスが青味がかった黒色となるおそれがある。また、この範囲が、1.2超であると、褐色や緑色がかった黒色となるおそれがある。
【0079】
なお、吸光係数の相対値は、波長450nmの吸光係数/波長600nmの吸光係数、波長550nmの吸光係数/波長600nmの吸光係数の両方が前述の範囲内となることで、他の色に見えないグレイの色調のガラスが得られることを意味する。
【0080】
また、本発明の化学強化用ガラスは、下記式(1)、(2)で示される吸光係数の相対値の変化量ΔT(550/600)、ΔT(450/600)が絶対値で5%以下であることが好ましい。
ΔT(550/600)(%)=[{A(550/600)−B(550/600)}/A(550/600)]×100 ・・・(1)
ΔT(450/600)(%)=[{A(450/600)−B(450/600)}/A(450/600)]×100 ・・・(2)
【0081】
上記式(1)において、A(550/600)は、400W高圧水銀ランプの光を100時間照射した後のガラスの分光透過率曲線から算出される、波長550nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数との相対値であり、B(550/600)は、光照射前の前記ガラスの分光透過率曲線から算出される、波長550nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数との相対値である。
【0082】
また、上記式(2)において、A(450/600)は、400W高圧水銀ランプの光を100時間照射した後のガラスの分光透過率曲線から算出される、波長450nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数の相対値であり、B(450/600)は、光照射前の前記ガラスの分光透過率曲線から算出される、波長450nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数の相対値である。
【0083】
吸光係数の相対値(波長450nmの吸光係数/波長600nmの吸光係数、波長550nmの吸光係数/波長600nmの吸光係数)の変化量ΔTが、上記範囲にあることで、光照射前後における、可視域の波長の光に対する吸収特性の変動を抑制でき、長期間にわたって、色調の変動の抑制されたガラスとすることができる。
【0084】
具体的には、上記式(1)において、A(550/600)は、両面を鏡面光学研磨した肉厚0.8mmのガラスの研磨面に、離間距離15cmで400W高圧水銀ランプの光を100時間照射した後のガラスの分光透過率曲線から算出される、波長550nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数との相対値であり、B(550/600)は、光照射前の前記ガラスの分光透過率曲線から算出される、波長550nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数との相対値である。
【0085】
また、上記式(2)において、A(450/600)は、両面を鏡面光学研磨した肉厚0.8mmのガラスの研磨面に、離間距離15cmで400W高圧水銀ランプの光を100時間照射した後のガラスの分光透過率曲線から算出される、波長450nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数との相対値であり、B(450/600)は、光照射前の前記ガラスの分光透過率曲線から算出される、波長450nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数との相対値である。
【0086】
また、本発明の化学強化用ガラスは、波長380nm〜780nmにおける吸光度の最小値が0.7以上とすることが好ましい。電子機器の内部に設けられる表示装置の光源は、発光ダイオード、有機EL、CCFL等の白色光を発するもので構成される。そのため、電子機器の筐体として本発明の化学強化用ガラスを用いる際、これらの白色光がガラスを介して機器の外部に漏れることがないよう、波長380nm〜780nmにおける吸光度の最小値を0.7以上とする必要がある。白色光は、蛍光体を用いて可視域の複数の波長の光を複合した上で白色として認識させるものである。そのため、ガラスの可視域の波長の吸光度を0.7以上とすることで、遮光手段を別途設けることなく白色光をガラス単体で吸収し、ガラスとして十分な遮光性を得る。
【0087】
ガラスの波長380nm〜780nmにおける吸光度の最小値が0.7未満である場合、筐体用途として十分な厚みを備えたガラスであっても、所望の遮光性が得られず、光がガラスを透過するおそれがある。また、ガラスが凹状、もしくは凸状に成形される際、厚みがもっとも薄い箇所において、光が透過するおそれがある。波長380nm〜780nmにおけるガラスの吸光度の最小値は0.9以上とすることが好ましく、1.2以上がより好ましく、1.5以上がさらに好ましい。
【0088】
本発明における吸光度の算出方法は、以下のとおりである。ガラス板の両面を鏡面研磨し、厚さtを測定する。このガラス板の分光透過率Tを測定する(例えば、日本分光株式会社製、紫外可視近赤外分光光度計V−570を用いる)。そして、吸光度AをA=−log10Tの関係式を用いて算出する。
【0089】
また、本発明の化学強化用ガラスは、電波透過性を備えることが好ましい。例えば、通信素子を機器に内蔵し、電波を用いて情報の送信もしくは受信を行う携帯電話等の筐体として化学強化用ガラスを適用する場合、この化学強化用ガラスが電波透過性を備えることで、ガラスの存在に起因する通信感度の低下が抑制される。本発明の化学強化用ガラスにおける電波透過性は、50MHz〜3.0GHzの周波数範囲において誘電正接(tanδ)の最大値が0.02以下であることが好ましい。好ましくは0.015以下であり、よりこのましくは0.01以下である。
【0090】
本発明の化学強化用ガラスの製造方法は特に限定されないが、たとえば種々の原料を適量調合し、約1500〜1600℃に加熱し溶融した後、脱泡、撹拌などにより均質化し、周知の、ダウンドロー法、プレス法などによって板状等に成形するか、またはキャストしてブロック状に成形する。そして、徐冷後所望のサイズに切断し、必要に応じ研磨加工を施して製造される。
【0091】
化学強化処理の方法としては、ガラス表層のNaOと溶融塩中のKOとをイオン交換できるものであれば、特に限定されない。たとえば、加熱された硝酸カリウム(KNO)溶融塩にガラスを浸漬する方法が挙げられる。所望の表面圧縮応力を有する化学強化層(表面圧縮応力層)を、ガラス表面に形成するための条件は、ガラスの厚さによっても異なるが、400〜550℃のKNO溶融塩に、ガラスを2〜20時間浸漬させることが典型的である。また、このKNO溶融塩としては、KNO以外に、例えばNaNOを5%程度以下含有するものであってもよい。
【0092】
本発明の化学強化用ガラスは、上記製造方法によって所望の形状に成形されるものである。また、本発明の化学強化用ガラスは、例えば所望の形状に成形された後、上記化学強化処理の方法を適用することにより、化学強化処理されたガラスを製造できる。このとき、化学強化処理によって生じる表面圧縮応力層の深さは、6〜70μmとされる。その理由は、以下のとおりである。
【0093】
装飾用途に用いられるガラスの製造においては、ガラス表面を研磨されることがあり、その最終段階の研磨に使用される研磨砥粒の粒径は2〜6μmが典型的である。
このような砥粒によって、ガラス表面には、最終的に最大5μmのマイクロクラックが形成されると考えられる。化学強化処理による強度向上効果を有効なものとするためには、ガラス表面に形成されるマイクロクラックより深い表面圧縮応力層が形成されていることが必要である。このため、化学強化処理によって生じる表面圧縮応力層の深さは6μm以上とされる。また、使用時に表面圧縮応力層の深さを超える傷がつくと、ガラスの破壊につながるため、表面圧縮応力層は厚い方が好ましい。このため、表面圧縮応力層は、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上、典型的には30μm以上である。
【0094】
ソーダライムガラスは、上記化学強化処理方法を適用して化学強化処理することにより、ガラス表面に形成される表面圧縮応力層の表面圧縮応力を550MPa以上とすることは可能であるが、表面圧縮応力層の深さを30μm以上に形成することは容易でない。本願発明の化学強化用ガラスは、化学強化処理することで、30μm以上の深さを有する表面圧縮応力層を形成することが可能である。
【0095】
一方、表面圧縮応力層が深すぎると、内部引張応力が大きくなり、破壊時の衝撃が大きくなる。すなわち、内部引張応力が大きいと、破壊時に、ガラスが細片となって粉々に飛散する傾向があり、危険性が高まることが知られている。本発明者らによる実験の結果、厚さ2mm以下のガラスでは、表面圧縮応力層の深さが70μmを超えると、破壊時の飛散が顕著となることが判明した。したがって、本発明の化学強化用ガラスにおいては表面圧縮応力層の深さは70μm以下とされる。装飾用ガラスとして用いる場合、その用途にもよるが、たとえば、AV機器・OA機器等の載置型の機器の操作パネルと比較して、表面に接触傷がつく確率が高い携帯用機器等の用途に適用する場合には、安全をみて表面圧縮応力層の深さを薄くしておくことも考えられる。この場合には、表面圧縮応力層の深さは、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下、典型的には40μm以下である。
【0096】
また、本発明の化学強化用ガラスは、上述したように、化学強化処理することで、化学強化されたガラスを得られるが、ガラス表面に形成される表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、550MPa以上であることが好ましく、700MPa以上であることがより好ましい。また、表面圧縮応力層の表面圧縮応力は、典型的には1200MPa以下である。
【0097】
本願発明の化学強化用ガラスは、化学強化処理することで、ガラス表面に、550MPa以上の表面圧縮応力を有する表面圧縮応力層を形成することが可能である。
【0098】
以上、本発明の化学強化用ガラスについて一例を挙げて説明したが、本発明の趣旨に反しない限度において、また必要に応じて適宜構成を変更することができる。
【実施例】
【0099】
以下、本発明の実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0100】
表1〜表5の例1〜41(例4〜6、9〜13、29〜37は実施例、例38は比較例、例1〜3、7、8、14〜28、39〜41は参考例)について、表中にモル百分率表示で示す組成になるように、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等一般に使用されているガラス原料を適宜選択し、ガラスとして100mlとなるように秤量した。なお、表に記載のSOは、ガラス原料にボウ硝(NaSO)を添加し、ボウ硝分解後にガラス中に残る残存SOであり、計算値である。
【0101】
ついで、この原料混合物を白金製るつぼに入れ、1500〜1600℃の抵抗加熱式電気炉に投入し、約0.5時間加熱して原料が溶け落ちた後、1時間溶融し、脱泡した。その後、およそ300℃に予熱した、縦約50mm×横約100mm×高さ約20mmの型材に流し込み、約1℃/分の速度で徐冷し、ガラスブロックを得た。このガラスブロックを切断して、サイズが40mm×40mm、表1〜5に示す厚みになるようにガラスを切り出した後、研削し、最後に両面を鏡面に研磨加工し、板状のガラスを得た。
【0102】
得られた板状のガラスについて、波長380nm〜780nmの吸光係数の最小値、吸光係数の相対値(波長550nmの吸光係数/波長600nmの吸光係数、波長450nmの吸光係数/波長600nmの吸光係数)、吸光度、ガラスの厚さtを表1〜5に併記する。なお、表1〜5中、「−」は、未測定であることを示す。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】
【0108】
吸光係数は、以下の方法で求めた。両面を鏡面研磨した板状のガラスの厚さtを、ノギスで測定した。このガラスの分光透過率Tを、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製、V−570)を用いて測定した。吸光係数βを、T=10−βtの関係式を用いて算出した。そして、波長380nm〜780nmの吸光係数の最小値を求めた。また、求めた吸光係数から、吸光係数の相対値(波長550nmの吸光係数/波長600nmの吸光係数、波長450nmの吸光係数/波長600nmの吸光係数)を算出した。また、吸光度Aは、A=−log10Tの関係式を用いて算出した。
【0109】
上記吸光係数の評価結果から、実施例である例1〜37のガラスは、波長380nm〜780nmにおける吸光係数の最小値が1mm−1以上、もしくは吸光度が0.7以上であり、可視域の波長の光を一定以上吸収することがわかる。これらガラスを電子機器の筐体に用いることで高い遮光性が得られる。
【0110】
また、上記吸光係数の評価結果から、着色剤として、Feを0.01〜3%、Coを0.01〜0.2%、NiOを0.05〜1%含有する例1〜37のうちの一部のガラスでは、吸光係数の相対値(波長450nmの吸光係数/波長600nmの吸光係数、波長550nmの吸光係数/波長600nmの吸光係数)が、それぞれ0.7〜1.2の範囲にあり、可視域の光を平均的に吸収するガラスであることがわかる。そのため、例えば、褐色がかったグレイや、青味がかったグレイとは異なる、良好なグレイの色調を得ることができる。
【0111】
本発明の化学強化用ガラスをについて化学強化処理するときはたとえば次のようにする。すなわち、これらのガラスを425℃程度のKNO溶融塩(100%)にそれぞれ6時間浸漬し、化学強化処理する。各ガラスについて、深さ方向のカリウム濃度分析を行うと、表面から5〜100μmの深さでイオン交換が起こり、圧縮応力層が生じる。
【0112】
上述した例のうち、例8、14、20、22〜25、38のガラスについて次のようにして化学強化処理を行った。すなわち、これらガラスを4mm×4mm×0.7mmの形状で、4mm×4mmの面を鏡面仕上げに加工し、その他の面を#1000仕上げに加工したガラスを用意した。これらガラスを425℃のKNO(99%)とNaNO(1%)とからなる溶融塩にそれぞれ6時間浸漬し、化学強化処理した。化学強化処理後の各ガラスについて、表面応力測定装置を用い、表面圧縮応力(CS)および表面圧縮応力層の深さ(DOL)を測定した。評価結果を表6に示す。なお、表面応力測定装置は、ガラス表面に形成された表面圧縮応力層が、表面圧縮応力層が存在しない他のガラス部分と屈折率が相違することで光導波路効果を示すことを利用した装置である。また、表面応力測定装置では、光源として中心波長が795nmのLEDを用いて行った。
【0113】
【表6】
【0114】
表6に示すとおり、例8、14、20、22〜25のガラスでは、前記化学強化処理条件において、十分な表面圧縮応力及び表面圧縮応力層の深さが得られていた。この結果、実施例のガラスは、化学強化処理により必要十分な強度向上効果が得られると考えられる。また、一般的なソーダライムガラス(例38)の表面圧縮応力層の深さが、一例として15μm程度に対し、実施例である例8、14、20、22〜25の各ガラスの表面圧縮応力層の深さは、33μm以上と、ソーダライムガラスのそれよりも大きく、化学強化処理後においても高い強度を備えたガラスが得られることが推測される。
【0115】
ガラスの長期の使用による色変化特性を確認するため、次の評価試験を行った。例37のガラスサンプルを一辺を30mm角の板状にカットし、所定の厚さとなるよう両面光学研磨加工した試料を、水銀ランプ(H−400P)から15cmの位置に配置して100時間紫外線照射を行った。この光照射前後の各試料の分光透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製、V−570)を用いて測定し、得られた分光透過率から、上記の関係式を用いて吸光係数を算出した。
【0116】
そして、光照射前後の試料の吸光係数から、下記式(1)、(2)で示される吸光係数の相対値の変化量ΔT(550/600)、ΔT(450/600)を算出した。評価結果を表7に示す。
ΔT(550/600)(%)=[{A(550/600)−B(550/600)}/A(550/600)]×100 ・・・(1)
ΔT(450/600)(%)=[{A(450/600)−B(450/600)}/A(450/600)]×100 ・・・(2)
(上記式(1)において、A(550/600)は、400W高圧水銀ランプの光を100時間照射した後のガラスの分光透過率曲線から算出される、波長550nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数との相対値であり、B(550/600)は、光照射前の前記ガラスの分光透過率曲線から算出される、波長550nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数との相対値である。上記式(2)において、A(450/600)は、400W高圧水銀ランプの光を100時間照射した後のガラスの分光透過率曲線から算出される、波長450nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数の相対値であり、B(450/600)は、光照射前の前記ガラスの分光透過率曲線から算出される、波長450nmにおける吸光係数と波長600nmにおける吸光係数の相対値である。)
【0117】
【表7】
【0118】
表7に示すとおり、例37のガラスでは、紫外線照射前後の吸光係数の相対値の変化量ΔT(550/600)、ΔT(450/600)が共に絶対値で5%以下であり、長期の使用によるガラスの色変化がなく、当初の外観色を長期間維持できることがわかる。
【0119】
また、前記化学強化処理後のガラスに対しても、上記と同様にして波長380nm〜780nmにおける吸光係数を求めたが、いずれも化学強化処理前の値と変化ないことを確認した。また、目視による色調に変化がないことも確認した。したがって、本発明の化学強化用ガラスは、所望の色調を損なうことなく、化学強化処理により強度を求められる用途にも使用できる。したがって、装飾機能が要求される用途への適用範囲を拡大することができる。
【0120】
また、表1〜表5に示すガラスのうち、例8〜11、13、14、16、19、20、23〜25、29〜36のガラスについて、CIEにより規格化されたL表色系のD65光源による反射光の色度aとF2光源による反射光の色度aとの差(Δa)、及び前記L表色系のD65光源による反射光の色度bとF2光源による反射光の色度bとの差(Δb)を測定した。結果を表8に示す。
【0121】
【表8】
【0122】
ΔaおよびΔbは以下の方法で求めた。分光色測計(エックスライト社製、Colori7)を用いて、各ガラスのD65光源及びF2光源の反射色度をそれぞれ測定し、測定結果を用いてΔaおよびΔbを算出した。なお、ガラスの裏面側(光源からの光が照射される面の裏面)には、白色の樹脂板を置いて測定を行った。
【0123】
表8に示すとおり、CuOもしくはFeを含有する例9〜11、13、14、16、19、20、23〜25、29〜36のガラスは、ΔaおよびΔbが共に絶対値で1未満であり、メタメリズムが低いガラスが得られることがわかる。これに対し、CuOを含有せず、Feの含有量も0.1mol未満である例8のガラスでは、Δaの絶対値が1を超えており、メタメリズム抑制の効果を十分に得られないものであった。
【0124】
ガラスの電波透過性を確認するため、次の評価試験を行った。まず、例8のガラスを切り出して50mm×50mm×0.8mmに加工し、主表面を鏡面状態に研磨した。このガラスについて、50MHz、500MHz、900MHz、1.0GHzの周波数における誘電正接を、LCRメーター及び電極をもちいて容量法(平行平板法)にて測定した。測定結果を表9に示す。なお、50MHzの周波数におけるガラスの誘電率(ε)は7.6であった。
【0125】
【表9】
【0126】
表9に示すとおり、例8のガラスは、50MHz〜1.0GHzの範囲の周波数における誘電正接が0.01未満であり、良好な電波透過性を備えていることがわかる。
【0127】
泡個数について、Fe、Coの効果を確認するため、Fe、Coの以外のガラス成分・含有量を同一とし、Fe、Coの両方を含むもの、Feのみ含むもの、Coのみ含むもののそれぞれについて泡個数を確認した。なお、例40のガラスは、例39のガラスからCoのみ除いたものである。また、例41のガラスは、例39のガラスからFeのみ除いたものである。
【0128】
泡個数は、前記の板状のガラスを高輝度光源(林時計工業社製、LA−100T)下で、0.6cmの領域の泡個数を4箇所測定し、その測定値の平均値を単位体積(cm)当たりに換算した値を示した。
【0129】
泡個数は、ガラスの母組成や溶融温度の影響を大きく受けるため、前述のとおり、Fe、Co以外の成分・含有量を同一とし、溶融温度同一のもので対比を行った。結果を表10に示す。
【0130】
【表10】
【0131】
この結果より、Feを含みCoを含まない例40のガラス及びCoを含みFeを含まない例41のガラスと比較して、Fe、Coの両方を含む例39のガラスは泡個数が少なかった。これは、CoとFeを共存させることにより、ガラス溶融時の脱泡効果を奏することを裏付けている。すなわち、高温状態で、3価の鉄が2価の鉄となる際に放出されるO泡を、コバルトが酸化される際に吸収するため、結果としてO泡が削減され、脱泡効果が得られると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
AV機器・OA機器等の操作パネル、同製品の開閉扉、操作ボタン・つまみ、またはデジタル・フォト・フレームやTVなどの画像表示パネルの矩形状の表示面の周囲に配置される装飾パネル等の装飾品や電子機器用のガラス筐体などに利用できる。また、自動車用内装部材、家具等の部材、屋外や屋内で用いられる建材等にも利用できる。