特許第5907319号(P5907319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5907319活性エステル樹脂、エポキシ樹脂組成物、その硬化物、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルム
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  • 特許5907319-活性エステル樹脂、エポキシ樹脂組成物、その硬化物、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルム 図000020
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907319
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】活性エステル樹脂、エポキシ樹脂組成物、その硬化物、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルム
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/76 20060101AFI20160412BHJP
   C08G 63/19 20060101ALI20160412BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20160412BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20160412BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   C07C69/76
   C08G63/19
   C08G59/40
   C08J5/24CFC
   C08J7/04 E
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-550505(P2015-550505)
(86)(22)【出願日】2015年2月19日
(86)【国際出願番号】JP2015054592
(87)【国際公開番号】WO2015141370
(87)【国際公開日】20150924
【審査請求日】2015年10月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-54870(P2014-54870)
(32)【優先日】2014年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】下野 智弘
(72)【発明者】
【氏名】有田 和郎
【審査官】 品川 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−068049(JP,A)
【文献】 特開2009−235165(JP,A)
【文献】 特開平10−010720(JP,A)
【文献】 LEHMANN, M. et al.,CHEMISTRY A EUROPEAN JOURNAL,2008年,14,p.3562-3576
【文献】 OSTAPENKO, T. et al.,Liquid Crystals,2013年,40(3),p.345-353
【文献】 STACKHOUSE, P. J. et al.,Liquid Crystals,2010年,37(9),p.1191-1203
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/76
C08G 59/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1)
【化1】
[式中Arはベンゼン環又はナフタレン環を表し、Xは下記構造式(X−3)
【化2】
(式中Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、nは1〜4の整数、lは0又は1、mは1又は2である。)
で表される構造部位であり、Yは下記構造式(2)
【化3】
〔式中Arはベンゼン環又はナフタレン環を表し、Xは前記構造式(X−3)で表される構造部位であり、Arはアリール基である。〕
で表される構造部位又はアリール基である。式中に複数あるX、Yはそれぞれ同一の構造部位であっても良いし、異なる構造部位であっても良い。]
で表される分子構造を有することを特徴とする活性エステル樹脂。
【請求項2】
芳香族トリカルボン酸又はそのハライド(A)と、芳香族モノカルボン酸又はそのハライド(B)と、下記構造式(C−3)
【化4】
(式中Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、nは1〜4の整数、lは0又は1、mは1又は2である。)
で表される芳香族ジオール化合物(C)とを、
前記芳香族トリカルボン酸又はそのハライド(A)と芳香族モノカルボン酸又はそのハライド(B)とが有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記芳香族ジオール化合物(C)が有するフェノール性水酸基が0.5〜1.5モルの範囲となる割合で反応させることを特徴とする、下記構造式(1)
【化4】
[式中Arはベンゼン環又はナフタレン環を表し、Xは下記構造式(X−3)
【化5】
(式中Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、nは1〜4の整数、lは0又は1、mは1又は2である。)
で表される構造部位であり、Yは下記構造式(2)
【化6】
〔式中Arはベンゼン環又はナフタレン環を表し、Xは前記構造式(X−3)で表される構造部位であり、Arはアリール基である。〕
で表される構造部位又はアリール基である。式中に複数あるX、Yはそれぞれ同一の構造部位であっても良いし、異なる構造部位であっても良い。]
で表される分子構造を有する活性エステル樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記芳香族トリカルボン酸又はそのハライド(A)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基のモル数(p)と、前記芳香族モノカルボン酸又はそのハライド(B)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基のモル数(q)とのモル比[(p)/(q)]が1/1.05〜1/0.5の範囲である請求項2記載の活性エステル樹脂の製造方法。
【請求項4】
エポキシ樹脂及び活性エステル樹脂を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記活性エステル樹脂として請求項1に記載の活性エステル樹脂を用いるエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項6】
請求項4記載のエポキシ樹脂組成物と補強基材を有する含浸基材の半硬化物であるプリプレグ。
【請求項7】
請求項4記載のエポキシ樹脂組成物の板状賦形物と銅箔とからなる回路基板。
【請求項8】
請求項4記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物と基材フィルムとからなるビルドアップフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物における誘電率及び誘電正接が共に低く、耐熱性や耐吸湿性にも優れる活性エステル樹脂、これを硬化剤とするエポキシ樹脂組成物、その硬化物、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びその硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、その硬化物において優れた耐熱性と絶縁性を発現することから、半導体や多層プリント基板などの電子部品用途において広く用いられている。電子部品用途のうち多層プリント基板用絶縁材料の技術分野では、各種電子機器における信号の高速化及び高周波数化に伴い、これに対応できる優れた誘電特性を有する樹脂材料、即ち、誘電率及び誘電正接が共に十分に低い樹脂材料の開発が求められている。
【0003】
低誘電率かつ低誘電正接を実現可能な材料として、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂とα−ナフトールとをイソフタル酸クロライドでエステル化して得られる活性エステル化合物をエポキシ樹脂の硬化剤として用いる技術が知られている(下記特許文献1参照)。特許文献1記載の活性エステル化合物を用いたエポキシ樹脂組成物は、フェノールノボラック樹脂のような従来型の硬化剤を用いた場合と比較して、誘電率及び誘電正接のより低い硬化物を得ることが出来る。しかしながら、その誘電特性は昨今の要求性能を満たすものではなかった。また、耐熱性が不十分であり、耐熱性を改善するために多官能基化した場合には溶剤溶解性の低下を招き、ワニス及びプリプレグ、硬化物の調製が困難であった。従って、硬化物における誘電率と誘電正接とがより一層低く、高耐熱性を発現し、かつ溶剤溶解性にも優れるエポキシ樹脂硬化剤の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−235165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化物における誘電率及び誘電正接が共に低く、耐熱性や溶剤溶解性にも優れる活性エステル樹脂、これを硬化剤とするエポキシ樹脂組成物、その硬化物、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、芳香族トリカルボン酸又はそのハライドと、芳香族ジオール化合物とを反応原料として得られるデンドリマー型の活性エステル樹脂は、その硬化物において非常に低い誘電率と誘電正接とを示し、かつ、耐熱性や耐吸湿性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記構造式(1)
【0008】
【化1】
[式中Arはベンゼン環又はナフタレン環を表し、Xは下記構造式(X−1)〜(X−8)
【0009】
【化2】
(式中Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、nは1〜4の整数、lは0又は1、mは1又は2である。Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、Zは酸素原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、スルホン基の何れかであり、kは1〜4の整数である。)
の何れかで表される構造部位であり、Yは下記構造式(2)
【0010】
【化3】
〔式中Arはベンゼン環又はナフタレン環を表し、Xは前記構造式(X−1)〜(X−8)の何れかで表される構造部位であり、Arはアリール基である。〕
で表される構造部位又はアリール基である。式中に複数あるX、Yはそれぞれ同一の構造部位であっても良いし、異なる構造部位であっても良い。]
で表される分子構造を有することを特徴とする活性エステル樹脂に関する。
【0011】
本発明は更に、芳香族トリカルボン酸又はそのハライド(A)と、芳香族モノカルボン酸又はそのハライド(B)と、芳香族ジオール化合物(C)とを、前記芳香族トリカルボン酸又はそのハライド(A)と芳香族モノカルボン酸又はそのハライド(B)とが有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記芳香族ジオール化合物(C)が有するフェノール性水酸基が0.5〜1.5モルの範囲となる割合で反応させてなる活性エステル樹脂に関する。
【0012】
本発明は更に、芳香族トリカルボン酸又はそのハライド(A)と、芳香族モノカルボン酸又はそのハライド(B)と、芳香族ジオール化合物(C)とを、前記芳香族トリカルボン酸又はそのハライド(A)と芳香族モノカルボン酸又はそのハライド(B)とが有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記芳香族ジオール化合物(C)が有するフェノール性水酸基が0.5〜1.5モルの範囲となる割合で反応させる活性エステル樹脂の製造方法に関する。
【0013】
本発明は更に、エポキシ樹脂及び前記活性エステル樹脂を必須成分とするエポキシ樹脂組成物に関する。
【0014】
本発明は更に、前記エポキシ樹脂組成物硬化させて得られる硬化物に関する。
【0015】
本発明は更に、前記エポキシ樹脂組成物を有機溶剤に希釈したものを補強基材に含浸し、得られる含浸基材を半硬化させることにより得られるプリプレグに関する。
【0016】
本発明は更に、前記エポキシ樹脂組成物を有機溶剤に希釈したワニスを得、これを板状に賦形したものと銅箔とを加熱加圧成型することにより得られる回路基板に関する。
【0017】
本発明は更に、前記エポキシ樹脂組成物を有機溶剤に希釈したものを基材フィルム上に塗布し、乾燥させることにより得られるビルドアップフィルムに関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、硬化物における誘電率及び誘電正接が共に低く、耐熱性や耐吸湿性にも優れる活性エステル樹脂、これを硬化剤とするエポキシ樹脂組成物、その硬化物、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施例1で得られた活性エステル樹脂(1)のGPCチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の活性エステル樹脂は、下記構造式(1)
【0021】
【化4】
[式中Arはベンゼン環又はナフタレン環を表し、Xは下記構造式(X−1)〜(X−8)
【0022】
【化5】
(式中Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、nは1〜4の整数、lは0又は1、mは1又は2である。Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、Zは酸素原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、スルホン基の何れかであり、kは1〜4の整数である。)
の何れかで表される構造部位であり、Yは下記構造式(2)
【0023】
【化6】
〔式中Arはベンゼン環又はナフタレン環を表し、Xは前記構造式(X−1)〜(X−8)の何れかで表される構造部位であり、Arはアリール基である。〕
で表される構造部位又はアリール基である。式中に複数あるX、Yはそれぞれ同一の構造部位であっても良いし、異なる構造部位であっても良い。]
で表される分子構造を有することを特徴とする。
【0024】
本発明の活性エステル樹脂において、前記構造式(1)や前記構造式(2)中のエステル結合部位は所謂活性エステル基であり、エポキシ樹脂との硬化反応の際に生じる二級の水酸基を該エステル結合部位由来のエステル残基が封鎖することにより、硬化物における誘電率と誘電正接とを低減させることが出来る。また、前記構造式(1)で表されるような多分岐構造、所謂デンドリマー型の分子構造を有することにより、耐熱性の高い硬化物を得ることができる。更に、このような規則的な配列を有する分子骨格を有することにより、従来の高分子量多官能型活性エステル樹脂に比べ、特異的に溶剤溶解性に優れる樹脂材料となる。
【0025】
前記構造式(1)中のArはベンゼン環又はナフタレン環である。中でも、溶剤溶解性に優れ、かつ硬化物において優れた耐熱性を発現する活性エステル樹脂となることから、Arはベンゼン環であることが好ましい。
【0026】
前記構造式(1)中のXは前記構造式(X−1)〜(X−8)の何れかで表される構造部位である。前記構造式(X−1)〜(X−8)中のRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、より具体的には、メチル基、エチル基、プロプル基、アリル基、プロパルギル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、アリルオキシ基、プロパルギルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、3,5−キシリル基、o−ビフェニル基、m−ビフェニル基、p−ビフェニル基、2−ベンジルフェニル基、4−ベンジルフェニル基、4−(α−クミル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、トリルメチル基、キシリルメチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0027】
前記構造式(X−1)〜(X−8)中のRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、より具体的には、メチル基、エチル基、プロプル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、3,5−キシリル基、o−ビフェニル基、m−ビフェニル基、p−ビフェニル基、2−ベンジルフェニル基、4−ベンジルフェニル基、4−(α−クミル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、トリルメチル基、キシリルメチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0028】
前記構造式(X−1)〜(X−8)の何れかで表される構造部位の中でも、硬化物における誘電特性に優れる活性エステル樹脂となることから、前記構造式(X−3)で表される構造部位であることが好ましい。
【0029】
前記構造式(1)中のYは、前記構造式(2)で表される構造部位又はアリール基である。構造式(2)中のAr及びXは前記構造式(1)中のAr及びXと同義であり、アリール基の具体例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、3,5−キシリル基、o−ビフェニル基、m−ビフェニル基、p−ビフェニル基、2−ベンジルフェニル基、4−ベンジルフェニル基、4−(α−クミル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
【0030】
このような本願発明の活性エステル樹脂は、具体的には、下記構造式(1−1)又は(1−2)で表される分子構造を有することが好ましい。
【0031】
【化7】
[式中(X−3)は下記構造式(X−3)
【0032】
【化8】
で表される構造部位であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、nは1〜4の整数、lは0又は1、mは1又は2である。]
【0033】
本発明の活性エステル樹脂は、例えば、芳香族トリカルボン酸又はそのハライド(A)と、芳香族モノカルボン酸又はそのハライド(B)と、芳香族ジオール化合物(C)とを反応させる方法により製造することができる。
【0034】
前記芳香族トリカルボン酸又はそのハライド(A)は、例えば、ベンゼントリカルボン酸やナフタレントリカルボン酸、及びこれらの酸ハロゲン化物が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、より対称性に優れる分子構造となり、硬化物における耐熱性や耐吸湿性に優れる活性エステル樹脂となることから、ベンゼントリカルボン酸及びその酸ハロゲン化物が好ましい。
【0035】
前記芳香族モノカルボン酸又はそのハライド(B)は、例えば、安息香酸、フェニル安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、n−プロピル安息香酸、i−プロピル安息香酸及びt−ブチル安息香酸等のアルキル安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、フェニルナフトエ酸、メチルナフトエ酸、エチルナフトエ酸、n−プロピルナフトエ酸、i−プロピルナフトエ酸及びt−ブチルナフトエ酸等のアルキルナフトエ酸、並びにこれらの酸フッ化物、酸塩化物、酸臭化物、酸ヨウ化物等の酸ハロゲン化物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、誘電特性に優れる活性エステル樹脂となることから、安息香酸又はその酸ハロゲン化物が好ましい。
【0036】
前記芳香族ジオール化合物(C)は、例えば、下記構造式(C−1)〜(C−8)
【0037】
【化9】
(式中Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、nは1〜4の整数、lは0又は1、mは1又は2である。Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、Zは酸素原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、スルホン基の何れかであり、kは1〜4の整数である。)
の何れかで表される化合物が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0038】
前記構造式(C−1)〜(C−8)中のRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、より具体的には、メチル基、エチル基、プロプル基、アリル基、プロパルギル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、アリルオキシ基、プロパルギルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、3,5−キシリル基、o−ビフェニル基、m−ビフェニル基、p−ビフェニル基、2−ベンジルフェニル基、4−ベンジルフェニル基、4−(α−クミル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、トリルメチル基、キシリルメチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0039】
前記構造式(C−1)〜(C−8)中のRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基、アラルキル基の何れかであり、より具体的には、メチル基、エチル基、プロプル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、3,5−キシリル基、o−ビフェニル基、m−ビフェニル基、p−ビフェニル基、2−ベンジルフェニル基、4−ベンジルフェニル基、4−(α−クミル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、トリルメチル基、キシリルメチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0040】
前記構造式(C−1)〜(C−8)の何れかで表される芳香族ジオール化合物(C)の中でも、硬化物における誘電特性に優れる活性エステル樹脂となることから、前記構造式(C−3)で表される化合物が好ましい。
【0041】
前記構造式(C−3)で表される化合物は、例えば、ジシクロペンタジエンと、フェノール性化合物とを重付加反応させる方法により製造することができる。ここで用いるフェノール性化合物は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらの中でも、硬化性が高く硬化物における誘電特性に優れる活性エステル樹脂となることからフェノールが好ましい。
【0042】
本発明の活性エステル樹脂を製造する際の、芳香族トリカルボン酸又はそのハライド(A)と、芳香族モノカルボン酸又はそのハライド(B)と、芳香族ジオール化合物(C)との反応割合は、得られる活性エステル樹脂の分子量制御が容易となることから、前記芳香族トリカルボン酸又はそのハライド(A)と芳香族モノカルボン酸又はそのハライド(B)とが有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記芳香族ジオール化合物(C)が有するフェノール性水酸基が0.5〜1.5モルの範囲となる割合であることが好ましい。
【0043】
また、芳香族トリカルボン酸又はそのハライド(A)と、芳香族モノカルボン酸又はそのハライド(B)との割合は、得られる活性エステル樹脂の分子量制御が容易となることから、前記芳香族トリカルボン酸又はそのハライド(A)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基のモル数(p)と、前記芳香族モノカルボン酸又はそのハライド(B)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基のモル数(q)とのモル比[(p)/(q)]が1/1.05〜1/0.5の範囲であることが好ましい。
【0044】
前記芳香族トリカルボン酸又はそのハライド(A)と、前記芳香族モノカルボン酸又はそのハライド(B)と、前記芳香族ジオール化合物(C)との反応は、例えば、アルカリ触媒の存在下、40〜65℃の温度条件下で行うことが出来る。ここで使用し得るアルカリ触媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらのなかでも、反応効率が高いことから水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。また、これらの触媒は3.0〜30%の水溶液として用いても良い。
【0045】
前記芳香族トリカルボン酸又はそのハライド(A)と、前記芳香族モノカルボン酸又はそのハライド(B)と、前記芳香族ジオール化合物(C)との反応は、反応の制御が容易となることから有機溶媒中で行うことが好ましい。ここで用いる有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒として用いても良い。
【0046】
反応終了後は、アルカリ触媒として水溶液を用いている場合には反応液を静置分液して水層を取り除き、残った有機層を水で洗浄し、水層がほぼ中性になるまで水洗を繰り返すことにより、目的の活性エステル樹脂を得ることができる。
【0047】
このようにして得られる活性エステル樹脂は、各種有機溶剤への溶解性が高く、耐熱性や耐吸湿性にも優れるものとなることから、65質量%のトルエン溶液における溶液粘度が5,000〜15,000mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0048】
また、本発明の活性エステル樹脂の官能基当量は、樹脂構造中に有するアリールカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基の合計を樹脂の官能基数とした場合、硬化性に優れ、誘電率及び誘電正接の低い硬化物が得られることから、210〜360g/eq.の範囲であることが好ましく、230〜340g/eq.の範囲であることがより好ましい。
【0049】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前述の活性エステル樹脂と、エポキシ樹脂とを必須の成分として含有するものである。
【0050】
本発明で用いるエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の中でも、特に難燃性に優れる硬化物が得られる点においては、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、誘電特性に優れる硬化物が得られる点においては、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂が好ましい。
【0051】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、前記活性エステル樹脂とエポキシ樹脂との配合量は、硬化性に優れ、誘電率及び誘電正接の低い硬化物が得られることから、活性エステル樹脂中の活性基の合計1当量に対して、前記エポキシ樹脂中のエポキシ基が0.8〜1.2当量となる割合であることが好ましい。ここで、活性エステル樹脂中の活性基とは、樹脂構造中に有するアリールカルボニルオキシ基及びフェノール性水酸基を指す。
【0052】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、前記した活性エステル樹脂と、その他の硬化剤とを併用してもよい。ここで用いるその他の硬化剤は、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等のアミン化合物:ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミド化合物:無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物:フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0053】
これらの中でも、芳香族骨格を分子構造内に多く含むものが誘電特性及び耐吸湿性に優れることから好ましく、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂が好ましい。
【0054】
上記したその他の硬化剤を併用する場合その使用量は、活性エステル樹脂とその他の硬化剤との合計100質量部中、10〜50質量部の範囲であることが好ましい。
【0055】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤を含有していても良い。ここで用いる硬化促進剤は、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に、本発明のエポキシ樹脂組成物をビルドアップ材料用途や回路基板用途として使用する場合には、耐熱性、誘電特性、耐はんだ性等に優れることから、ジメチルアミノピリジンやイミダゾールが好ましい。
【0056】
また、前述の通り本発明の活性エステル樹脂は、優れた溶剤溶解性を発現することを特徴としており、本発明のエポキシ樹脂組成物をビルドアップ材料用途や回路基板用途として使用する場合に、従来用いられてきたトルエン等の溶剤に替えて、アルコール溶剤やエステル溶剤を使用してワニス化することが出来る。本発明のエポキシ樹脂組成物の溶剤として使用できる有機溶剤は、従来用いられてきたトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤の他、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0057】
本発明のエポキシ樹脂組成物をプリント配線基板用途に用いる場合には、メチルエチルケトン、アセトン、1−メトキシ−2−プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途に用いる場合には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0058】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて他の熱硬化性樹脂を適宜併用しても良い。ここで使用し得る他の熱硬化性樹脂は、例えばシアネートエステル化合物、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、マレイミド化合物、スチレンとマレイン酸無水物の共重合物などが挙げられる。上記した他の熱硬化性樹脂を併用する場合、その使用量は本発明の効果を阻害しなければ特に制限をうけないが、エポキシ樹脂組成物100質量部中1〜50重量部の範囲であることが好ましい。
【0059】
本発明の活性エステル樹脂をプリント配線基板用途などより高い難燃性が求められる用途に用いる場合には、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
【0060】
前記非ハロゲン系難燃剤は、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0061】
前記リン系難燃剤は、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
【0062】
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0063】
前記有機リン系化合物は、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等の環状有機リン化合物及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
【0064】
これらリン系難燃剤の配合量は、例えば、エポキシ樹脂組成物100質量部中、赤リンを用いる場合には0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を用いる場合には0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、0.5〜6.0質量部の範囲で配合することがより好ましい。
【0065】
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
【0066】
前記窒素系難燃剤は、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
【0067】
前記トリアジン化合物は、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、前記アミノトリアジン変性フェノール樹脂、及び該アミノトリアジン変性フェノール樹脂を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0068】
前記シアヌル酸化合物は、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
【0069】
前記窒素系難燃剤の配合量は、例えば、エポキシ樹脂組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、0.1〜5質量部の範囲で配合することがより好ましい。
【0070】
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0071】
前記シリコーン系難燃剤は、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0072】
前記シリコーン系難燃剤の配合量は、例えば、エポキシ樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0073】
前記無機系難燃剤は、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
【0074】
前記金属水酸化物は、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0075】
前記金属酸化物は、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0076】
前記金属炭酸塩化合物は、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
【0077】
前記金属粉は、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
【0078】
前記ホウ素化合物は、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
【0079】
前記低融点ガラスは、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO−MgO−HO、PbO−B系、ZnO−P−MgO系、P−B−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V−TeO系、Al−HO系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
【0080】
前記無機系難燃剤の配合量は、例えば、エポキシ樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、0.5〜15質量部の範囲で配合することがより好ましい。
【0081】
前記有機金属塩系難燃剤は、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
【0082】
前記有機金属塩系難燃剤の配合量は、例えば、エポキシ樹脂組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0083】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、熱硬化性樹脂組成物の全体量に対して20質量%以上が特に好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0084】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、この他、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0085】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られ、従来知られているエポキシ樹脂組成物の硬化と同様の方法により容易に硬化物とすることができる。該硬化物としては積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0086】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、その硬化物の誘電率及び誘電正接が共に低いことから、硬質プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用絶縁材料、半導体封止材料、導電ペースト、ビルドアップ用接着フィルム、樹脂注型材料、接着剤等の各種電子材料用途に好適に用いることが出来る。中でも、本発明の活性エステル樹脂が有する各種有機溶剤への高い溶解性を活かし、硬質プリント配線板材料、フレキシブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用材料に特に好ましく用いることが出来る。
【0087】
このうち回路基板用途へ応用する場合には、本発明のエポキシ樹脂組成物を有機溶剤に希釈したワニスを得、これを板状に賦形したものを銅箔と積層し、加熱加圧成型して製造することが出来る。また、硬質プリント配線基板用途へ応用する場合には、有機溶剤を含むワニス状のエポキシ樹脂組成物を補強基材に含浸し、半硬化させることによってプリプレグを得、これに銅箔を重ねて加熱圧着させる方法により製造することが出来る。ここで使用し得る補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状のエポキシ樹脂組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって硬化物であるプリプレグを得る。この際、用いる熱硬化性樹脂組成物と補強基材の質量割合は特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とする回路基板を得ることができる。
【0088】
本発明のエポキシ樹脂組成物からフレキシルブル配線基板を製造するには、有機溶剤を配合したエポキシ樹脂組成物をリバースロールコータ、コンマコータ等の塗布機を用いて電気絶縁性フィルムに塗布する。次いで、加熱機を用いて60〜170℃で1〜15分間加熱し、溶媒を揮発させてエポキシ樹脂組成物をB−ステージ化する。次いで、加熱ロール等を用いて、樹脂組成物層に金属箔を熱圧着する。その際の圧着圧力は2〜200N/cm、圧着温度は40〜200℃が好ましい。それで十分な接着性能が得られれば、ここで終えても構わないが、完全硬化が必要な場合は、さらに100〜200℃で1〜24時間の条件で後硬化させることが好ましい。最終的に硬化させた後の樹脂組成物層の厚みは、5〜100μmの範囲が好ましい。
【0089】
本発明のエポキシ樹脂組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を製造するには、例えば、ゴム、フィラーなどを適宜配合したエポキシ樹脂組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0090】
本発明のエポキシ樹脂組成物からビルドアップ用接着フィルムを製造する方法は、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物を支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
【0091】
本発明のエポキシ樹脂組成物をビルドアップ用接着フィルムに用いる場合、該接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
【0092】
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0093】
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明のエポキシ樹脂組成物を調製した後、支持フィルムの表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させてエポキシ樹脂組成物の層(α)を形成させることにより製造することができる。
【0094】
形成される層(α)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
【0095】
なお、前記層(α)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0096】
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0097】
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
【0098】
上記した支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0099】
次に、上記のようして得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層(α)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(α)を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0100】
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m2)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0101】
本発明のエポキシ樹脂組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、微細導電性粒子をエポキシ樹脂組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
【0102】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、レジストインキとして使用することも可能である。この場合、エポキシ樹脂組成物にエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系モノマーと、硬化剤としてカチオン重合触媒を配合し、更に、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。
【0103】
前述の通り、本発明の活性エステル樹脂は従来型の活性エステル樹脂と比較して高い溶剤溶解性を有することから、前記各種電子材料用途に応用する際に容易にワニス化することが出来、また、従来主流であったトルエン等の環境負荷の高い溶剤に替えて、エステル溶剤やアルコール溶剤等のより環境負荷の低い有機溶剤を使用することが出来る。また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は誘電率及び誘電正接の両方が低い特徴を有することから、高周波デバイスの演算速度の高速化の実現に貢献することが出来る。
【実施例】
【0104】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、トルエン溶液粘度、GPC測定は以下の条件にて測定した。
【0105】
トルエン溶液粘度:JIS Z8803に準拠した。
【0106】
GPC:以下の条件により測定した。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0107】
実施例1 活性エステル樹脂(1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、1,3,5−ベンゼントリカルボニルトリクロリド132.8g(酸クロリド基のモル数1.5モル)と塩化ベンゾイル210.9g(酸クロリド基のモル数1.5モル)とトルエン1094gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂495.0g(フェノール性水酸基のモル数3.0モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液600gを3時間かけて滴下し、同温度条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液して水層を取り除き、反応物が溶解しているトルエン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返し、デカンタ脱水で水分を除去して不揮発分65質量%の活性エステル樹脂(1)トルエン溶液を得た。得られた活性エステル樹脂(1)トルエン溶液の溶液粘度は8970mPa・S(25℃)であった。
【0108】
実施例2 活性エステル樹脂(2)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、1,3,5−ベンゼントリカルボニルトリクロリド132.8g(酸クロリド基のモル数1.5モル)と塩化ベンゾイル140.6g(酸クロリド基のモル数1.0モル)とトルエン832.6gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂412.5g(フェノール性水酸基のモル数2.5モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液500gを3時間かけて滴下し、同温度条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液して水層を取り除き、反応物が溶解しているトルエン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返し、デカンタ脱水で水分を除去して不揮発分65質量%の活性エステル樹脂(2)トルエン溶液を得た。得られた活性エステル樹脂(2)トルエン溶液の溶液粘度は12540mPa・S(25℃)であった。
【0109】
比較製造例1 活性エステル樹脂(1’)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド203.0g(酸クロリド基のモル数2.0モル)とジメチルホルムアミド1254gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、α−ナフトール288.0g(2.0モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているジメチルホルムアミド相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水槽のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去して不揮発分65質量%のジメチルホルムアミド溶液の活性エステル樹脂(1’)ジメチルホルムアミド溶液を得た。得られた活性エステル樹脂(1’)ジメチルホルムアミド溶液の溶液粘度は860mPa・S(25℃)であった。
【0110】
比較製造例2 活性エステル樹脂(2’)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド203.0g(酸クロリド基のモル数2.0モル)とトルエン1800gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、α−ナフトール57.6g(0.4モル)、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂412.5g(フェノール性水酸基のモル数2.5モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているトルエン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水槽のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去して不揮発分65質量%の活性エステル樹脂(2’)トルエン溶液を得た。
【0111】
<溶剤溶解性の評価>
実施例1、2又は比較製造例1、2で得た前記活性エステル樹脂(1)、(2)、(1’)及び(2’)について、それぞれの溶剤溶液を150℃、真空減圧にて12時間乾燥させ、乾燥した固形樹脂を得た。この固形樹脂を25℃の条件下でトルエン、メチルエチルケトン(以下「MEK」と略記する。)、メチルイソブチルケトン(以下「MIBK」と略記する。)、シクロヘキサノン、1−メトキシ−2−プロパノール(以下「MP」と略記する。)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PGMAC」と略記する。)、N−メチルピロリドン(以下「NMP」と略記する。)、ノルマルブタノール(以下「BuOH」と略記する。)、酢酸エチルの各溶剤に溶解させ、各溶剤100gに対する固形分の溶解量(g)を評価した。結果を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
実施例3、4、比較例1、2
表1記載の配合に従ってエポキシ樹脂組成物を調整し、下記要領で各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0114】
<エポキシ樹脂組成物の調整>
表1に示す割合でエポキシ樹脂、活性エステル樹脂、及び硬化触媒であるジメチルアミノピリジンを配合し、不揮発分(N.V.)が58質量%となるようにメチルエチルケトンを配合してエポキシ樹脂組成物を調整した。
エポキシ樹脂:DIC株式会社製「HP−7200H」、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、150℃における溶融粘度0.30ポイズ、エポキシ基当量277g/当量
【0115】
<積層板の作成>
下記条件で積層板を作成した。
基材:日東紡績株式会社製 ガラスクロス「#2116」(210×280mm)
プライ数:6 プリプレグ化条件:160℃
硬化条件:200℃、40kg/cmで1.5時間、成型後板厚:0.8mm
【0116】
<ガラス転移温度の測定>
先で作成した積層板を幅5mm、長さ54mmのサイズに切り出し、この試験片について、粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置「RSAII」、レクタンギュラーテンション法:周波数1Hz、昇温速度3℃/分)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
【0117】
<誘電率及び誘電正接の測定>
絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の積層板について、JIS−C−6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」を用いて、1GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。
【0118】
【表2】
図1