特許第5907435号(P5907435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907435
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】液体ライトガイドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/032 20060101AFI20160412BHJP
【FI】
   G02B6/032 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-101060(P2014-101060)
(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公開番号】特開2015-219293(P2015-219293A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2014年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】506308633
【氏名又は名称】ユーヴィックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100084984
【弁理士】
【氏名又は名称】澤野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100094123
【弁理士】
【氏名又は名称】川尻 明
(72)【発明者】
【氏名】森 戸 祐 幸
(72)【発明者】
【氏名】藤 嶋 昭
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−101315(JP,A)
【文献】 特開昭51−044936(JP,A)
【文献】 米国特許第03995934(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂製チューブの中空部にコアとなる導光液を充填した後、これを封止する液体ライトガイドの製造方法において
前記樹脂製チューブの一端側を透光性プラグで封止し、他端側を開口した状態で、当該樹脂製チューブを導光液が貯留された液槽内に沈めて導光液を充填し、
液槽内で前記他端側を透光性プラグで仮止めした後、
液槽外で前記プラグをチューブ内に押し込んで導光液を加圧する加圧工程を経て、
当該プラグを封止することを特徴とする液体ライトガイドの製造方法。
【請求項2】
前記加圧工程で、加圧充填する導光液の充填圧力が1100hPa以上である請求項1記載の液体ライトガイドの製造方法。
【請求項3】
前記加圧工程で、加圧充填する導光液の充填圧力が1400hPa以上である請求項1記載の液体ライトガイドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製チューブの中空部にコアとなる導光液が充填された液体ライトガイドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体ライトガイドは、樹脂製チューブ内にコアとなる導光液を充填し、その両端を石英ロッドなどの透光性プラグで封止したものであり、樹脂製チューブとしては、一般に、FEP,PFAなどのフッ素を含有する樹脂が用いられている。
そして、チューブ両端部を封止する際は、一般に導光液が非圧縮性であることから、チューブと透光性プラグの間にワイヤを差し込んでその隙間から導光液を溢れ出させながら透光性プラグを押し込んだのち、ワイヤを抜き取って口金等により透光性プラグを封止しているので、導光液の充填圧力と大気圧が略等しくなる。
【0003】
しかしながら、フッ素含有樹脂は、ガスバリア性が低いため、大気中のガスがチューブを透過してライトガイド内に侵入しやすく、チューブ内には、導光液が充填されているため、気泡が形成されて光透過率が低下するという問題を生じた。
【0004】
このため、従来は、図11に示すように、フッ素樹脂で形成されたクラッドチューブ42に導光液43を充填して、その両端を透光性プラグ44で封止し、前記クラッドチューブ42の外側に、ガスバリア性の高い材料で形成された保護チューブ45を設けて二重構造とし、且つ、クラッドチューブ42と保護チューブ45の隙間46を気密に形成して外気を遮断した液体ライトガイド41が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
これによれば、クラッドチューブ42が外気に曝されないため、大気中のガス成分が導光液43内に侵入しにくい。
しかしながら、この隙間46を気密に形成しても、隙間46に空気が存在する以上、その空気がクラッドチューブ42を透過して侵入し、導光液43に気泡が生ずることは避けられない。
【0006】
また、隙間46を介してチューブ42、45を二重に設けなければならないことから、剛性が高くなって屈曲性が犠牲にされるだけでなく、全体として重量が嵩むというデメリットもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−94872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、ガスバリア性の低い材料で製造されたチューブを用いても、その外側に保護チューブを設けてチューブを二重にすることなく、これをそのまま大気中に曝しても大気中のガス成分が導光液に侵入し難い液体ライトガイドの製造方法を提供することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明は、樹脂製チューブの中空部にコアとなる導光液を充填した後、これを封止する液体ライトガイドの製造方法において
前記樹脂製チューブの一端側を透光性プラグで封止し、他端側を開口した状態で、当該樹脂製チューブを導光液が貯留された液槽内に沈めて導光液を充填し、
液槽内で前記他端側を透光性プラグで仮止めした後、
液槽外で前記プラグをチューブ内に押し込んで導光液を加圧する加圧工程を経て、
当該プラグを封止することを特徴とする。
前記加圧工程で、加圧充填する導光液の充填圧力が1100hPa以上であることが好ましく、さらには、充填圧力が1400hPa以上であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加圧工程によりチューブ内の導光液の充填圧力を容易に調整することができ、例えば、使用温度範囲内で1100hPa以上とすれば、通常の大気圧より十分高い圧力で充填される。
したがって、ガスバリア性の低い材料のチューブが用いられていても、チューブ内の圧力の方が大気圧より高いため、大気中のガス成分がチューブ内に侵入することが確実に防止される。
また、充填圧力は、設計耐圧以下に選定されているので、製造された液体ライトガイドの使用中に、その両端を封止する透光性プラグが内圧により脱落したり、チューブが破裂したりすることもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による液体ライトガイドの一例を示す説明図。
図2】本発明方法に使用する樹脂製チューブを示す説明図。
図3】導光液を充填する工程を示す説明図。
図4】透光性プラグを仮止めする工程を示す説明図。
図5】透光性プラグを仮止めした液体ライトガイドを示す説明図。
図6】本発明方法による加圧工程を示す説明図。
図7】透光性プラグを封止する工程を示す説明図。
図8】樹脂製チューブを切断する工程を示す説明図。
図9従来の液体ライトガイドを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ガスバリア性の低い材料で製造されたチューブを用いても、その外側に保護チューブを設けてチューブを二重にすることなく、これをそのまま大気中に曝しても大気中のガス成分が導光液に侵入し難くするという目的を達成するために、脂製チューブの中空部にコアとなる導光液を充填した後、これを封止する液体ライトガイドの製造方法において前記樹脂製チューブの一端側を透光性プラグで封止し、他端側を開口した状態で、当該樹脂製チューブを導光液が貯留された液槽内に沈めて導光液を充填し、液槽内で前記他端側を透光性プラグで仮止めした後、液槽外で前記プラグをチューブ内に押し込んで導光液を加圧する加圧工程を経て、当該プラグを封止することとした。
【実施例1】
【0013】
本発明方法で製造された液体ライトガイド1は、図1に示すように、樹脂製チューブ2の中空部にコアとなる導光液3が充填されている。
樹脂製チューブ2は、本例では、FEPで形成された外径10.5mm、内径10mm、長さ1mのものを用いた。
導光液3は38%塩化カルシウム溶液を用い、20℃で、大気圧+400hPa(約1400hPa)となるように充填した。
【0014】
当該チューブ2の両端側にはコレットチャックタイプの口金4が外装され、当該口金によりチューブ2の両端開口部に挿入された透光性プラグ5が固定されている。
口金4は、放射状の割溝(図示せず)によりスプリングチャック6が形成されたコレット7と、スプリングチャック6を締め付けるロックナット8とを備え、スプリングチャック6外周面に形成されたテーパねじと、ロックナット8に形成されたテーパねじが螺合されてスプリングチャック6部分を縮径させることにより、樹脂製チューブ2を透光性プラグ5に押し付けて、当該チューブ2の両端開口部を封止できるようになっている。
なお、透光性プラグ5としては石英ロッドを用いている。
【0015】
この液体ライトガイド1の設計使用温度は−10℃〜45℃であり、その温度範囲内において、導光液3の充填圧力が1100hPaを下回らないことを確認した。
また、液体ライトガイド1の設計耐圧は、導光液3の充填圧力を気温20℃において10000hPaまで上昇させた場合に100日間安全使用できることを確認した。
【0016】
以上が液体ライトガイドの一構成例であって、次にその製造方法について説明する。
まず、図2に示すように、樹脂製チューブ2の一端側に挿入した透光性プラグ5を口金4で固定し、他端側にコレット7を外装したものを用意し、図3に示すように導光液3を貯留した液槽11内に沈めて中空部に導光液3を充填する。
次いで、開口された他端側を高くしてチューブ2内に残る気泡をすべて排出させた後、図4に示すようにチューブ2の他端側に透光性プラグ5を仮止めすると、チューブ2内には気泡を生ずることなく導光液3を充填される。
【0017】
この状態で、図5に示すように、樹脂製チューブ2を液槽11から取り出し、他端側からロックナット8を外装し、当該チューブ2がずれないように固定した状態で、プランジャ12により透光性プラグ5をチューブ2内に押し込む加圧工程を実行する。
これにより導光液3が充填された中空部の実質長さが短くなるが、導光液3などの液体は一般に非圧縮性であるので、その分、樹脂製チューブ2が拡径して容積が一定に維持され、その結果、導光液3の充填圧力は樹脂製チューブ2の面内方向に作用する張力分だけ大気圧よりも高くなっていると考えられる。
【0018】
そして図6図7に示すように、プランジャ12で透光性ロッド5を押し込んだ状態のまま、ロックナット8を締め付けると、コレット7のスプリングチャック6が縮径され、チューブ2が透光性ロッド5とチャック6の間に強固にはさまれて、当該チューブ2が封止されることになる。
封止完了後、図8に示すように樹脂製チューブの先端余剰分を切断すれば、図1に示す液体ライトガイド1が完成する。
【0019】
なお、この方法で、液体ライトガイド1を製造する場合、導光液3の充填圧力を正確に求めることは困難であるので、透光性ロッド5の押込力を導光液の充填圧力として用いてもよい。
また、より正確に制御するのであれば、予め、圧力センサを先端に設けた透光性ロッド5と同サイズのセンシングロッドを透光性ロッド5に替えて樹脂製チューブ2の一端側に装着したダミーチューブを用いて、上述と同じ工程で、導光液3を充填し、開口端を透光性ロッド5で仮止めした後、透光性ロッド5を押し込む加圧工程において、透光性ロッド5の押込量と、圧力センサで検出された圧力の関係を予め測定しておけばよい。
そして、液体ライトガイド1を製造する際に、測定されたデータを参照して、透光性ロッド5の押込量を調整することにより、導光液3の充填圧力をコントロールすることができる。
【0020】
表1は同様の方法で製造された液体ライトガイド1について、加圧工程で透光性ロッド5の押込量を調整することにより、大気圧との差圧ΔPを0〜10000hPaまで変化させて、100日経過後にチューブ3内部の気泡発生状態を観察した実験結果である。
なお、製造日の大気圧は、1014hPaであった。
これによれば、差圧ΔP=0hPaで製造されたものは100日経過後に気泡が発生していることが目視で確認され、伝送効率の著しい低下がみられた。
差圧ΔP=100hPaで製造されたものは僅かに気泡が発生していることが確認されたが、差圧ΔP=0hPaで製造されたものに比して十分な優位性を確認することができ、大きな伝送効率の低下も見られなかった。
差圧ΔP=200hPaで製造されたものは気泡の発生はほとんど認められず、差圧ΔP=100hPaで製造されたものに比較しても十分な優位性を確認できた。
さらに、差圧ΔP=300hPa以上で製造されたものは、気泡の発生が確認できなかった。
【0021】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、樹脂製チューブの中空部にコアとなる導光液を充填する液体ライトガイドの製造方法に適用しうる。
【符号の説明】
【0023】
1 液体ライトガイド
2 樹脂製チューブ
3 導光液
4 口金
5 透光性プラグ
6 スプリングチャック
7 コレット
8 ロックナット






図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9