特許第5907995号(P5907995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

特許5907995シクロオレフィン−コポリマーからのバリアー材料を有するゴム材料
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5907995
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】シクロオレフィン−コポリマーからのバリアー材料を有するゴム材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20160412BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20160412BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20160412BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20160412BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20160412BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20160412BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08L65/00
   C08J7/04 PCEQ
   B60C1/00 Z
   B60C5/14 A
   B60C1/00 C
   B60C5/14 Z
   B60C9/08 Z
   B29D30/06
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-552931(P2013-552931)
(86)(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公表番号】特表2014-506610(P2014-506610A)
(43)【公表日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】EP2012051992
(87)【国際公開番号】WO2012107418
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2015年2月4日
(31)【優先権主張番号】11154240.3
(32)【優先日】2011年2月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ダーメン
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−505654(JP,A)
【文献】 特開昭62−181365(JP,A)
【文献】 特表2013−541438(JP,A)
【文献】 特開昭50−021000(JP,A)
【文献】 特表2007−506828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00−21/02
C08K 3/00−13/08
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1又は2個の環内C−C二重結合を有する一環式オレフィンモノマー及び1個の環内C−C二重結合を有する二環式オレフィンモノマーからなる群から選択される少なくとも1のオレフィンモノマー、及び
b)少なくとも2個のC−C二重結合を有する少なくとも1の多環式オレフィンモノマー
の開環メタセシス重合によって製造可能な少なくとも1のコポリマーをゴム材料上に設けて、ゴム材料を装備する方法であって、前記コポリマーをコポリマー水性分散液の形で設け、前記分散液の乾燥によって支持体基材上にフィルムを形成することを特徴とする前記方法
【請求項2】
オレフィンモノマーa)対多環式オレフィンモノマーb)のモル比が99:1〜15:85であることを特徴とする請求項1記載の方法
【請求項3】
オレフィンモノマーa)が、少なくとも2kcal/molの環ひずみを有し、多環式オレフィンモノマーb)が少なくとも15kcal/molの環ひずみを有する二環式ジエンから選択されていることを特徴とする請求項1又は2記載の方法
【請求項4】
コポリマーが、cis−シクロオクテン及びジシクロペンタジエンの開環メタセシス重合によって製造可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法
【請求項5】
ゴム材料のゴム成分が、ジエンゴム、ブチルゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン−コポリマー、イソプレン−ブタジエン−ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン−ゴム、アクリルニトリル−ブタジエン−ゴム、エチレン−プロピレン−ゴム及びクロロプレンゴムから選択されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の方法
【請求項6】
ゴム材料が空気タイヤの構成成分であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の方法
【請求項7】
ゴム材料が空気タイヤのタイヤ内層又は空気タイヤのタイヤカーカスであることを特徴とする請求項6記載の方法
【請求項8】
前記装備を、1又は複数の以下の方法:
浸漬による含浸により、吹付けにより又はハケ塗り、コーティング、カレンダー塗りにより、行うことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ゴム材料のガス通気性を低下させるための、
a)1又は2個の環内C−C二重結合を有する一環式オレフィンモノマー及び1個の環内C−C二重結合を有する二環式オレフィンモノマーからなる群から選択される少なくとも1のオレフィンモノマー、及び
b)少なくとも2個のC−C二重結合を有する少なくとも1の多環式オレフィンモノマー
の開環メタセシス重合によって製造可能なコポリマーの使用であって、前記コポリマーがコポリマー水性分散液の形で、バリアーフィルムの製造のために使用されることを特徴とする前記使用
【請求項10】
オレフィンモノマーa)対多環式オレフィンモノマーb)のモル比が80:20〜15:85である及び/又は少なくとも1μmの層厚でコポリマーを使用することを特徴とする請求項記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、
(a)1又は2個の環内C−C二重結合を有する一環式オレフィンモノマー及び1個の環内C−C二重結合を有する二環式オレフィンモノマーから選択されるオレフィンモノマー、及び
(b)少なくとも2個のC−C二重結合を有する多環式オレフィンモノマー
の開環メタセシス重合(ROMP)によって製造可能なコポリマーの形のバリアー材料を備えたゴム材料に関する。
【0002】
ビークル空気タイヤでは、圧縮空気又は充填ガスが必要な圧力値及び必要なガス体積でもって可能な限り長い時間にわたり機能可能なタイヤ運転を許容することが保証されていることが重要である。したがって、通常は、従来の空気タイヤは、タイヤ内部中に、ガス不透性又は可能な限り低いガス通気性のゴム層を備えている。このタイヤ内層は、ガス充填した内部のシーリングのために利用され、かつ、チューブのないタイヤでタイヤを置き換える。材料として、例えば、ハロブチル含有の加硫可能なゴム混合物又はブチルゴムが使用できる。
【0003】
開環メタセシス重合は、EP 1847558 A1又はUS特許出願61/257063に記載されている。シクロオレフィンから開環メタセシス重合によって製造されたシクロオクテン又はシクロペンタジエンからのホモポリマーは大抵、脆性の、熱硬化性の又は非フィルム形成性の材料であり、前記材料は、フレキシブルなコーティングの形成に適当でないか、又は、劣悪なバリアー特性を有するか、又は、ガラス転移温度が所望の値に調節可能でない。
【0004】
本発明の課題は、簡易に、コスト安に、かつ、効率的に使用可能である及び/又は良好な又は改善されたガスバリアー特性を有する、ゴム製品のための、特に空気タイヤのための代替的なバリアー材料を提供することであった。
【0005】
本発明の主題は、
a)1又は2個の環内C−C二重結合を有する一環式オレフィンモノマー及び1個の環内C−C二重結合を有する二環式オレフィンモノマーからなる群から選択される少なくとも1のオレフィンモノマー、及び
b)少なくとも2個のC−C二重結合を有する少なくとも1の多環式オレフィンモノマー
の開環メタセシス重合によって製造可能なコポリマーの形のバリアー材料を備えたゴム材料である。
【0006】
好ましくは、少なくとも1μmの厚さのポリマー層の形でコポリマーが使用される。好ましくは、オレフィンモノマーa):多環式オレフィンモノマーb)のモル比が99:1〜15:85、好ましくは80:20〜15:85である。
【0007】
本発明の主題は、本発明のゴム材料を含む空気タイヤでもある。
【0008】
本発明の主題は、ゴム材料にガスバリアー特性を備える方法でもあり、ここで、少なくとも1の上述の及び詳細に後述するコポリマーはゴム材料上に設けられるか又はゴム材料中に導入される。
【0009】
本発明の主題は、ゴム材料のガス通気性の低下のための、上述の及び詳細に後述するコポリマーの使用でもある。
【0010】
本発明によりコポリマーを備えるゴム材料は、ガスバリアー特性(例えば、空気、酸素、窒素、アルゴン、二酸化炭素その他に対する)を有し、ここで、このバリアー特性はコポリマーの本発明の使用によって生じさせられるか又は強化される。バリアー特性との概念は、コーティングされていない支持体基材に対し低下した、所定の物質に対する透過性又は通過性を意味する。酸素バリアー特性又はガスバリアー特性は、例えば実施例に記載の通過性試験で測定できる。好ましくは、前記酸素透過度は、本発明に応じてコーティングされた基材に関して、処理されていない基材の値の30%未満、特に15%未満又は5%未満、例えば0.1%〜3%である(23℃及び相対空気湿度85%で測定)。
【0011】
本発明により使用したコポリマーは、開環メタセシス重合により製造可能である。メタセシス反応とは、極めて一般的に、2つの化合物の間の化学反応が理解され、その場合に両方の反応パートナーの間で基が交換される。有機メタセシス反応である場合には、形式的には二重結合にある置換基が交換される。しかし、特に意義深いのは、有機シクロオレフィン化合物の金属錯体触媒作用された開環メタセシス反応("ring opening metathesis polymerization"、略してROMP)であり、これによってポリマーポリオレフィンが入手可能になる。触媒作用性金属錯体としては、特に、一般的構造Met=CR2[式中、Rは有機基を意味する]の金属カルベン錯体が使用される。金属カルベン錯体の高い加水分解感受性のために、メタセシス反応は水不含有機溶媒又はオレフィンそれ自体中で実施できる(例えば、US−A 2008234451、EP−A 0824125参照のこと)。多量の溶媒又は未反応オレフィンの分離のための手間のかかる精製工程の回避のために、オレフィンのメタセシス反応は水性媒体中でも実施できる(DE 19859191;US特許出願61/257063)。
【0012】
本発明により使用されるコポリマーは、
a)1又は2個の環内C−C二重結合を有する一環式オレフィンモノマー及び1個の環内C−C二重結合を有する二環式オレフィンモノマーからなる群から選択される、少なくとも1のオレフィンモノマー、及び
b)少なくとも2個のC−C二重結合を有する少なくとも1の多環式オレフィンモノマー
から形成される。
【0013】
オレフィンモノマーa)対多環式オレフィンモノマーb)のモル比は、好ましくは80:20〜15:85、好ましくは65:35〜20:80である。
【0014】
オレフィンモノマーa)は、好ましくは少なくとも2kcal/molの環ひずみ(Ringspannung)を有する。多環式オレフィンモノマーb)は、好ましくは少なくとも15kcal/molの環ひずみを、最高ひずみを有する環について有する。
【0015】
オレフィンモノマーa)は、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、2−メチルシクロペンテン−1、3−メチルシクロペンテン−1、4−メチルシクロペンテン−1、3−ブチルシクロペンテン−1、シクロヘキセン、2−メチルシクロヘキセン−1、3−メチルシクロヘキセン−1、4−メチルシクロヘキセン−1、1,4−ジメチルシクロヘキセン−1、3,3,5−トリメチルシクロヘキセン−1、シクロヘプテン、1,2−ジメチルシクロヘプテン−1、cis−シクロオクテン、trans−シクロオクテン、2−メチルシクロオクテン−1、3−メチルシクロオクテン−1、4−メチルシクロオクテン−1、5−メチルシクロオクテン−1、シクロノネン、シクロデセン、シクロウンデセン、シクロドデセン、シクロオクタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン及びノルボルネンであり、その際、C−C二重結合を有する一環式オレフィン、特にcis−シクロオクテンは特に好ましい。
【0016】
好ましい多環式オレフィンモノマーb)は、二環式ジエン、例えばノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン(3a,4,7,7a−テトラヒドロ−1H−4,7−メタノ−インデン)、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2,5−ジエン、ビシクロ[3.3.0]オクタ−2,6−ジエン及びシクロペンタジエン−オリゴマー、例えばトリシクロペンタジエンである。特に好ましくはジシクロペンタジエンである。
【0017】
好ましい一実施態様において、前記コポリマーは、cis−シクロオクテン及びジシクロペンタジエンの開環メタセシス重合によって形成されている。
【0018】
本発明によって使用されるコポリマーの製造は、好ましくは水性媒体中で行われる。この場合に、開環メタセシス反応は、水及び分散剤を重合容器中に装入し、触媒として使用される有機金属カルベン錯体をシクロオレフィン中に溶解させ、このシクロオレフィン/金属錯体溶液を分散剤水溶液中に導入し、こうして形成されるシクロオレフィン/金属錯体−マクロエマルションをシクロオレフィン/金属錯体ミニエマルションへと移行させ、そしてこれを室温でポリオレフィン水性分散物へと反応させて、行われることができる。好ましくは、前記開環メタセシス反応は、少なくとも1の部分量の水、少なくとも1の部分量の分散剤、少なくとも1の部分量のモノマーを、平均液滴直径≧2μmを有する水性モノマーマクロエマルションの形で装入し、その後、エネルギー導入下で前記モノマーマクロエマルションを平均液滴直径≦1500nmを有するモノマーミニエマルションに移行させ、その後、得られるモノマーミニエマルションを重合温度で場合によって残存する残量の水、場合によって残存する残量の分散剤、場合によって残存する残量のモノマー及び触媒として使用される有機金属カルベン錯体の全量を添加して行われる。
【0019】
メタセシス触媒として、有機金属カルベン錯体が使用できる。金属は、例えば、第6、7又は8副族の遷移金属、好ましくはモリブデン、タングステン、オスミウム、レニウム又はルテニウムであり、そのうち、オスミウム及びルテニウムが好ましい。特に好ましくは、ルテニウム−アルキリデン錯体が使用される。そのようなメタセシス触媒は先行技術から知られており、例えばR.H. Grubbs (Ed.) "Handbook of Metathesis", 2003, Wiley−VCH, Weinheim、WO 93/20111、WO 96/04289、WO 97/03096、WO 97/06185、J. Am. Soc. 1996, 784−790頁、Dalton Trans 2008、5791−5799頁及びCoordination Chemistry Reviews, 2007, 251 , 726−764頁に記載されている。
【0020】
コーティングのために使用される溶液又は水性分散液におけるコポリマーの濃度は、好ましくは少なくとも1質量%、特に少なくとも5質量%、そして50質量%まで又は70質量%までである。大抵は、前記水性分散液における前記コポリマーの含有量は、10〜60質量%又は15〜55質量%であり、特に20〜50質量%である。
【0021】
コポリマーの好ましい水性分散液は、pH値4及び20℃の温度で、10〜150000mPas、又は200〜5000mPas(20℃、20rpm、スピンドル4でBrookfield粘度計で測定)の粘度を有する。前記水性分散液中に分散したコポリマー粒子の平均粒径は、例えば0.02〜100μm、好ましくは0.05〜10μmである。平均粒径は、例えば、光学的顕微鏡、光散乱、流体力学クロマトグラフィー又はフリーズフラクチャー電子顕微鏡観察を用いて、測定されることができる。
【0022】
ゴム材料のゴム成分は、例えば、ジエンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン−コポリマー、イソプレン−ブタジエン−ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン−ゴム、アクリルニトリル−ブタジエン−ゴム、エチレン−プロピレン−ゴム及びクロロプレンゴムから選択されている。
【0023】
好ましくは、ゴム材料は、空気タイヤの構成成分であり、特に空気タイヤのタイヤ内層又は空気タイヤのタイヤカーカスである。
【0024】
一実施態様において、ゴム材料自体が、少なくとも1の上記コポリマーの溶液又は水性分散液を備える。他の一実施態様において、ゴム含有物品の構成要素、特に空気タイヤの構成要素がバリアー材料を備え、そして、ゴム含有物品、好ましくは空気タイヤ中に導入される。例えば、空気タイヤのテキスタイルコードインサート(Textilkordeinlage)が本発明により使用すべきコポリマーを備えることができる。
【0025】
本発明の主題はゴム材料の装備(Ausruestung)方法でもあり、ここで、少なくとも1の本願に記載のコポリマーはゴム材料上に設けられるか又はゴム材料中に導入される。装備は、例えば、1又は複数の以下の方法、すなわち、浸漬による含浸により、吹付けにより、又はハケ塗り、コーティング、カレンダー塗りにより行うことができる。コーティングに使用される溶液又は分散液は、更なる添加剤又は助剤、例えば、レオロジー調節のための増粘剤、湿潤剤、有機充填剤又は無機充填剤又は結合剤を含んでよい。
【0026】
好ましくは、コポリマーをコポリマー水性分散液の形で設け、前記分散液の乾燥によって支持体基材上にフィルムを形成する。
【0027】
本発明の主題は、本発明のゴム材料を含む空気タイヤでもある。この場合に、コポリマーは、1又は複数の次の方法で設けられていてよい:
−タイヤ内層の少なくとも一部の表面に又は全表面に設ける、
−タイヤ内層の材料中に導入する、
−フィルムとして、支持体なしのフィルムとして又はシート支持体のコーティングとして、その際、前記フィルム又はシートは、ゴムベースのタイヤ内層に追加して、又は、タイヤ内層の代替品として、タイヤ内部に導入されていてよい、
−空気タイヤの繊維コードインサート(Faserkordeinlage)のバインダー又はコーティングとして、
−2以上の支持体シート間の、タイヤ内部へ導入されているラミネートとして。
【0028】
フィルムとして設けることは、吹付けフィルム又はハケ塗りフィルムとして行われてよく、例えば、ロール塗布、ドクターブレード塗布、エアナイフ塗布又は流し込み塗布の方法によって行われてよい。シートとして設けることもでき、前記シートは支持体として利用され、次いでカーカスと接着又は架橋(加硫)させられる。適したシート支持体は、例えば、ゴムシート支持体、ポリオレフィンシート支持体、ポリエステルシート支持体、ポリアミドシート支持体又はポリウレタンシート支持体である。
【0029】
代わりに、2つの支持体シートの間のラミネートの形でコポリマーが使用もされることもでき、この場合にラミネートは次にカーカスと接着又は架橋される。
【0030】
コポリマーは、自立式フィルムとしても使用できる。
【0031】
この適用は、例えばコーティング機械で、プラスチック製の支持体シート上にコーティング組成物を設けるようにして実施されることができる。テープ状材料が使用される場合には、前記ポリマー分散液は通常は、槽から塗布ロールを介して設けられ、そしてエアナイフでならされる。
【0032】
コーティングを設けるための他の手段は、例えば、リバースグラビア法を用いて、吹付け法を用いて又はドクターロールを用いて、又は、当業者に知られている他のコーティング法を用いて達成される。前記支持体基材は、この場合に、少なくとも1の側でコーティングされており、すなわち、片側又は両側がコーティングされていてよい。
【0033】
シートへの付着をさらに改善するために、支持体シートは前もってコロナ処理されてよいか、又は代わりに、付着促進剤、例えばポリエチレンイミンが使用されてよい。この平面状材料に設けられる量は、例えば、好ましくは1〜800g(ポリマー、固形)/m2、好ましくは1〜400g/m2又は5〜200g/m2である。支持体基材へコーティング組成物を設けた後に、溶媒又は分散剤を蒸発させる。そのために、例えば、連続的な作業では、前記材料は乾燥器チャネルを通じて導かれてよく、前記チャネルは赤外線照射装置を備えていてよい。その後、このコーティングされかつ乾燥された材料は、冷却ロールを通じて導かれ、最後に巻き取られる。乾燥させたコーティングの厚さは、少なくとも1μm、好ましくは1〜400μm、特に好ましくは5〜200μmである。支持体シートの厚さは一般に10μm〜1cmの範囲である。
【0034】
本発明によりコーティングされた基材は、傑出したガスバリアー作用を有する。
【0035】
実施例
以下のコポリマー分散物を使用した(モノマー割合は、モル割合に対する)。
【0036】
分散液D1:
ルテニウム−アルキリデン触媒の使用下で、ジシクロペンタジエン及びcis−シクロオクテン(50:50)からの開環メタセシス重合(ROMP)によって製造された、30%の、ポリ(ジシクロペンタジエン−コ−オクテナマー(octenamer))水性分散液
数平均粒径:270nm
【0037】
分散液D2:
ルテニウム−アルキリデン触媒の使用下で、ジシクロペンタジエン及びcis−シクロオクテン(60:40)からの開環メタセシス重合(ROMP)によって製造された、30%の、ポリ(ジシクロペンタジエン−コ−オクテナマー)水性分散液
【0038】
分散液D3:
ルテニウム−アルキリデン触媒の使用下で、ジシクロペンタジエン及びcis−シクロオクテン(70:30)からの開環メタセシス重合(ROMP)によって製造された、30%の、ポリ(ジシクロペンタジエン−コ−オクテナマー)水性分散液
【0039】
分散液D4:
ルテニウム−アルキリデン触媒の使用下で、ジシクロペンタジエン及びcis−シクロオクタジエン(50:50)からの開環メタセシス重合(ROMP)によって製造された、40%の、ポリ(ジシクロペンタジエン−コ−オクテナマー)水性分散液
分散したラテックス粒子の数平均粒径:265nm
【0040】
分散液D5:
ルテニウム−アルキリデン触媒の使用下で、ジシクロペンタジエン及びcis−シクロオクテン(2:98)からの開環メタセシス重合(ROMP)によって製造された、30%の、ポリ(ジシクロペンタジエン−コ−オクテナマー)水性分散液
数平均粒径:419nm。
【0041】
自立式ポリアルケナマーシート(Polyalkenamerfolie)の酸素通過性の測定:
シートの製造を、ポリアルケナマー分散液を、寸法15cm×10cm×0.5cm(長さ×幅×高さ)を有するシリコーン型へ注ぎ出すことによって行った。注ぎ出された分散液フィルムを48時間25℃で乾燥させ、引き続き10分間65℃の温度で熱処理した。
【0042】
乾燥酸素通過性及び湿潤酸素通過性をMOCON OXTRAN(登録商標) 2/21で測定し、その測定原理はキャリアーガス法に基づく(ASTM D−3985)。キャリアーガス法では、平面(この場合には5cm2)を有するマスキングした試料フィルム(支持体材料無し)を、両側に中空室を有する空気密なセル中に組み込む。この試料の一方の側にキャリアーガス(95%N2及び5%H2)を、そして、もう一方の側に測定ガス(100%O2)を無圧で導通する(vorbeileiten)。前記試料を通じて拡散する測定ガスを、キャリアーガスによって取り込み、クーロメトリーセンサーへと導通する。それによって、酸素濃度が時間の関数として算出できる。全ての測定を23℃で、定義された相対空気湿度(RH)で実施した。前記試料の両側を定義された空気湿度に曝露した。前記装置及び前記試料のコンディショニングは約30分間かかった。この測定のための機械運転時間は1〜4日間であった。各試料から二重測定を実施した。測定方法に関しては、平均的なシート厚(5つの異なる場所で測定した)を有する前記試料の透過速度(cm3/(m2*日))を1μm及び1barに標準化した。この標準化によって透過速度が明らかになった[cm3μm(m2*日*bar)]。
【0043】
第1の測定において、酸素通過性を乾燥条件下で測定した。第2の測定において、酸素通過性を湿潤条件(85%の相対空気湿度)下で測定した。この結果を表1に記載している。このシート厚は386.8μmであった。
【0044】
表1:自立式ポリアルケナマーシートの酸素通過性
【表1】
【0045】
自立式ポリアルケナマーシートの水蒸気通過性の測定:
シートの製造は上記のように行った。水蒸気通過性の測定を、85%の相対空気湿度でMOCON PERMATRAN− W(登録商標) 3/33(その測定原理は同様にキャリアーガス方法に基づく)を用いて行った。前記装置はASTM F−1249に応じて稼働する。キャリアーガス法では、平面(この場合には5cm2)を有するマスキングした試料フィルム(支持体材料無し)を、両側に中空室を有する空気密なセル中に組み込む。この試料の一方の側にキャリアーガス(乾燥N2)を、そしてもう一方の側に測定ガス(N2+水蒸気)を無圧で導通する。前記試料を通じて拡散する測定ガスをキャリアーガスによって取り込み、選択的センサーへと導通する。水蒸気測定装置ではIRセンサーを使用する。それによって、水蒸気濃度が時間の関数として算出できる。前記測定を23℃で実施した。前記装置のコンディショニングは約30分かかった。この全測定のための機械運転時間は1〜4日間であった。前記試料の透過速度を、可能な限り正確に相対空気湿度を85%に調節して測定し、引き続き湿度の調節の際の小さな測定技術的誤りを計算により補正した。この場合に、透過速度が測定領域中の相対空気湿度と線形相関することが前提とされた。測定方法に関しては、平均的なシート厚(5つの異なる場所で測定した)で前記試料の透過速度(g/(m2*日))を標準化した。この標準化によって通過速度が明らかになった[g*μm/(m2*日)]。この結果を表2に記載している。このシート厚は320μmであった。
【0046】
表2:自立式ポリアルケナマーシートの水蒸気通過性
【表2】
【0047】
ポリアルケナマーでコーティングしたゴムシートの酸素通過性の測定。酸素バリアー作用を、ポリ(ジシクロペンタジエン−コ−オクテナマー)でコーティングした天然ゴム基材の酸素透過性の測定によって測定した。酸素バリアーの測定をMOCON OXTRAN(登録商標) 2/21で実施し、その測定原理はキャリアーガス法に基づく(ASTM D−3985)。23℃で合成空気(21%酸素)を用いて測定した。各試料から二重測定を実施した。酸素バリアー作用を0%及び85%の相対空気湿度で測定した。
【0048】
試料1:
コーティングしていない天然ゴム(Erwin Telle GmbH社(ニュルンベルグ))
基材厚:346μm
【0049】
試料2:
346μmの厚さを有する天然ゴム基材(Erwin Telle GmbH社(ニュルンベルグ))をエタノールで洗浄し、分散液D1のポリ(ジシクロペンタジエン−コ−オクテナマー)でコーティングし、10分間50℃で乾燥させ、引き続き7日間室温で貯蔵した。天然ゴム基材上のポリ(ジシクロペンタジエン−コ−オクテナマー)コーティングの厚さは、8μmであった。
【0050】
この酸素バリアー作用の結果を表1にまとめている。
【0051】
表1:
【表3】