(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変位デバイス(41)及び前記2つのラスタ配列(12,15)は、前記第1のラスタ配列(12)の前記セグメント(26;45,47)が、前記照明光のビーム方向に対して横断する方向に前記第2のラスタ配列(15)に対して変位可能であるように互いに対して配置され、かつそのように設計されることを特徴とする請求項1に記載の照明系。
前記変位デバイス(41)及び前記2つのラスタ配列(12,15)は、前記第1のラスタ配列(12)の前記セグメント(26;45,47)が、前記第2のラスタ配列(15)に対してピボット回転可能であるように互いに対して配置されることを特徴とする請求項1に記載の照明系。
前記変位デバイス(41)は、前記第2のラスタ配列(15)に対する前記第1のラスタ配列(12)の少なくとも1つのセグメントの周期的変位が、リソグラフィ投影露光中の前記照明視野(3)の露光時間に比較して小さい周期で発生するように設計されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の照明系。
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の照明系(5)に使用するために、異なる光束影響効果を有し、かつ第1のラスタ要素タイプ(I)の少なくとも1つのラスタ要素(24)を有する第1のラスタ区域(29;27,31;37,39;38)と、第2のラスタ要素タイプ(III)の少なくとも1つのラスタ要素(24)を有する第2のラスタ区域(27,28,30,31;28から30;38;37,39)との間に少なくとも1つの距離ステップ(36;40)を含むラスタ要素(24)の少なくとも2つのタイプ(IからIII)、
を含むことを特徴とするラスタ配列(12,15)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、ウェーハスキャナであり、半導体構成要素及び他の微細構造化構成要素の製造に使用されるマイクロリソグラフィ投影露光装置1の概略図である。マイクロメートルの数分の1までの解像度を得るために、投影露光装置1は、特に深紫外線(VUV)を使用する。
【0019】
位置関係の説明を容易にするために、以下の説明では直交x−y−z座標系を使用する。
図1では、x軸は、上方に延びている。y軸は、
図1の作図面に対して垂直であり、閲覧者に向けて延びている。
図1では、z方向は右に延びている。投影露光装置1の走査方向はy方向と一致する。
図1に記載の子午断面内では、投影露光装置1の全ての光学構成要素が、光軸2に沿って一列に配置される。当然ながら光軸2は、特に小型設計の投影露光装置1を得るために不規則に折り返すことができる。
【0020】
全体を参照番号5で表す投影露光装置1の照明系は、投影露光によって伝達される構造(詳細には示していない)であるレチクルの形態にある構造が配置されたレチクル平面4内の物体視野又は照明視野3の所定の照明を得るように機能する。物体視野3と照明視野とは、互いに一致することができる。通例、物体視野3は、照明視野に配置される。157nmの作動波長を有するF2レーザが、光軸2と同軸の照明光ビームを有する1次光源6として機能する。193nmの作動波長を有するArFエキシマレーザ、248nmの作動波長を有するKrFエキシマレーザ、及びより長い又は短い作動波長を有する他の1次光源を考えることができる。
【0021】
説明を容易にするために、照明系5の照明光学系の構成要素を屈折光学構成要素として表す。代替的又は追加的に、これらの構成要素は、反射構成要素、言い換えればミラーで置換するか又は補うことができる。従って、
図1の基本的な屈折結像システムの代わりに、反射屈折システム又は反射システムを使用するように考えることができる。照明系5の反射設計は、特に、1次光源6が、5nmと30nmの間の範囲、特に13.5nm前後の波長を有する有用光を生成するEUV光源である場合に使用することができる。
【0022】
小さい矩形の断面を有する光ビーム6が、光源6によって放出された後に入射する第1の構成要素は、基本的に平行な光とより大きい矩形断面とを有する出力ビーム8を生成するビーム拡大光学系7である。照明光ビーム8は、1前後のものとすることができるx/yアスペクト比、更には1よりも大きいとすることができるx/yアスペクト比を有する。ビーム拡大光学系7は、照明光8の干渉低減のための要素を含むことができる。ビーム拡大光学系7によって基本的に平行化されると、次に、照明光8は、照明光角度分布を生成するためのコンピュータ生成ホログラム(CGH)である回折光学要素(DOE)上に入射する。フーリエレンズ配列、言い換えれば、非常に概略的な図で示しており、DOE9に対してその焦点幅に対応する位置に配置されたコンデンサー10を通過する時に、DOE9によって生成された照明光8の角度分布は、2次元の照明光強度分布、言い換えれば光軸2に対して垂直な方向に位置依存する照明光強度分布に変換される。従って、上述のように生成された強度分布は、照明系5の第1の照明平面11に存在する。従って、DOE9はコンデンサー10と共に、2次元照明光強度分布を生成するための光配分デバイスを形成する。この光配分デバイスを瞳定義要素(PDE)とも呼ぶ。
【0023】
第1の照明平面11の領域内には、ハニカムコンデンサーとも呼ぶラスタモジュール13の第1のラスタ配列12が配置される。ラスタモジュール13を視野定義要素(FDE)とも呼ぶ。ラスタモジュール13は、照明光8の所定の強度分布及び照明角度分布を生成するように機能する。
図1では、ラスタモジュール13の基本的な機能原理を説明するために、ラスタモジュール13を概略的な図にしか示していない。
図2及び
図5、並びにそれ以降の図は、本発明によるラスタモジュール13の他の実施形態を示している。
【0024】
第2のラスタモジュール15は、第1の照明平面11の下流にある別の照明平面14に配置される。2つのラスタ配列12、15は、照明系5のハニカムコンデンサー13を形成する。他方の照明平面14の下流には、照明系5の瞳平面16が配置される。
【0025】
ラスタモジュール13の下流には、視野レンズとも呼ぶ別のコンデンサー17が配置される。コンデンサー17は第2のラスタ配列15と共に、第1の照明平面11を照明系5の中間視野平面18に近似的に結像する。中間視野平面18内には、照明光強度分布の鮮明なエッジを生成するための調節可能な遮光絞りであるレチクルマスキングシステム(REMA)19を配置することができる。中継対物系とも呼ぶ下流対物系20は、中間視野平面18をレチクル、言い換えればリソグラフィテンプレート上に結像する。投影対物系21は、物体視野3を像平面23内の像視野22に配置されたウェーハ(
図1には示していない)上に結像するのに使用され、ウェーハは、y方向に沿って断続的又は連続的に変位する。
図1では、投影対物系21の瞳平面を23aに示している。レチクル及びウェーハが断続的に変位するように投影露光装置1が作動される場合には、投影露光装置1をステッパとも呼ぶ。レチクル及びウェーハが連続的に変位するように投影露光装置1が作動される場合には、投影露光装置1をスキャナとも呼ぶ。
【0026】
第1のラスタ配列12は、列と行で配置された個別の第1のラスタ要素24を有する。第1のラスタ要素24は、例えば、2/1のx/yアスペクト比を有する矩形の開口部を有する。他の特に大きいアスペクト比の第1のラスタ要素24を考えることができる。説明を容易にするために、以下の
図8から
図10では、第1のラスタ要素24が1/1のx/yアスペクト比を有するものとして示している。
【0027】
代替的に、ラスタ配列12及び15は、各場合に交差方向に配置されて互いに隣り合って配置された円柱レンズで構成することができる。ラスタ配列12、15の各々は、この場合、モノリシックレンズブロックとして設計することができる。この場合、レンズブロックの2つの光学面の一方は、第1の方向に向けられた円柱レンズ面を含み、それに対して2つの光学面のうちの反対のものは、第1の方向に対して垂直な方向に向けられた円柱レンズ面を含む。
【0028】
図1に記載の子午断面は、xラスタ列に沿って延びている。第1のラスタ要素24は、正の屈折力を有するマイクロレンズである。
図1に記載の図では、これらのマイクロレンズを平凸のものとして示している。
図1に記載の概略図では、2つのラスタ配列12、15の平面は互いに対面する。以下で
図2及び
図5、並びにそれ以降の図を用いて説明するように、2つのラスタ配列12、15の凸面を同様に互いに対面するように配置することができる。両凸設計を考えることもできる。第1のラスタ要素24の矩形形状は、照明視野3の矩形形状に対応する。第1のラスタ要素24は、第1のラスタ要素24の矩形形状に対応するラスタの状態で互いに直接に接するように配置され、言い換えれば、第1のラスタ要素24は、基本的に全体の面を埋め尽くす。第1のラスタ要素24を第1のハニカムとも呼ぶ。
【0029】
第1のラスタ配列12の第1のラスタ要素24の光束形成効果は、照明光8が、照明される第1のラスタ要素24の数に一致する数の部分光束25(例えば、
図2を参照されたい)に分割されるという結果をもたらし、これらの部分光束25は、最初に互いに別々にラスタモジュール13を通じてもたらされるので、これらの部分光束25を光チャンネル又は照明チャンネルとも呼ぶ。ラスタモジュール13には、各場合にx又はyの方向に見てそれぞれのx又はyのラスタサイズだけ互いに対してオフセットされた数百のそのような光チャンネルを設けることができる。これらの光チャンネルは、物体視野3内で重ね合わされる。
【0030】
それぞれの部分光束25を伝達するために、第1のラスタ配列12の第1のラスタ要素24には、第2のラスタ配列15の第2のラスタ要素26が割り当てられる。第2のラスタ要素26も、正の屈折力を有するマイクロレンズである。
【0031】
図1は、x方向に見て互いに隣に配置された5つのこの種の光チャンネルを示している。本発明によるラスタモジュール13の実施形態では、x方向に見て互いに隣に配置された7つの隣接する部分光束又は光チャンネル25を生成するための合計で7つのラスタ要素24、26を
図2及び
図5、並びにそれ以降の図に示している。
【0032】
第1のラスタ配列12からの第2のラスタ配列15の距離は、ラスタ要素24の焦点幅にほぼ対応する。一方、第2のラスタ配列15からの瞳平面16の距離は、第2のラスタ要素26の焦点幅に対応する。
【0033】
ラスタ要素24、26は非球面レンズである。ラスタ要素24、26のレンズ面の各々のサジタル高さhは、以下の非球面式によって表すことができる。
この式では、
h(x)は、x座標(視野座標又はレンズ座標)の関数としてのサジタル高さを表し、
Rは、頂点におけるマイクロレンズ面の半径であり、
Cは、円錐定数であり、
Anは、非球面膨張率である。
【0034】
第1のラスタ配列12は、様々なタイプの第1のラスタ要素24、言い換えれば様々なタイプの非球面マイクロレンズを有する。これらのタイプの第1のラスタ要素24は、異なる光束影響効果、言い換えれば屈折効果を有する。
【0035】
図3は、合計で5つのラスタ区域27から31へのラスタモジュール13の第1のラスタ配列12の分割を示している。ラスタ区域27から31の各々は、列の形状でy方向に延びている。x方向に見ると、ラスタ区域27から31の各々は、正確に1つのラスタ要素24又は複数のラスタ要素24を含むことができる。通常、ラスタ区域27から31の各々は複数のラスタ要素24を有する。ラスタ区域27から31の各々は、正確に1つのタイプのラスタ要素24から構成され、言い換えれば、これらのラスタ区域は、正確に1つの屈折効果を有する。
【0036】
以下の説明では、x方向に見て互いに隣に配置された合計で7つのラスタ要素24を含む
図2に記載の概略的な分割は以下の通りである。
図2に記載の最上部のラスタ要素24はラスタ区域27の一部であり、この部分の最もの近くに配置された2つのラスタ要素24は、ラスタ区域28の一部であり、
図2の中心のラスタ要素24は、ラスタ区域29の一部であり、この部分の最もの近くに配置された2つのラスタ要素24は、ラスタ区域30の一部であり、
図2の最下部のラスタ要素24は、ラスタ区域31の一部である。
【0037】
中心ラスタ区域29内のラスタ要素24は、0.2前後の円錐定数C及び最小のレンズ半径Rを有するタイプIのラスタ要素に属する、言い換えればこれらのラスタ要素は最も高い屈折効果を有する。ラスタ区域28及び30内のラスタ要素24は、0.05前後の円錐定数C及びラスタ区域29内のラスタ要素24のものよりも低い屈折効果を有するタイプIIのものである、言い換えればこれらのラスタ要素は僅かに大きいレンズ半径Rを有する。ラスタ区域27及び31内のラスタ要素24は、−0.1前後の円錐定数C及び最低の屈折効果を有し、言い換えれば最大レンズ半径Rを有するタイプIIIのものである。従って、タイプIとタイプIIIとの間では、円錐定数Cは0.3だけ異なる。タイプI、II、IIIの円錐定数Cは、−0.3と+0.3の間の円錐定数Cの値範囲からの他の値を提供することができ、最も高い屈折効果を有するタイプは、最も大きい円錐定数Cを有し、それに対して最も低い屈折効果を有するタイプは、最も小さい円錐定数Cを有する。別の実施形態では、円錐定数Cは、タイプIIでは0.05前後、タイプIでは0.1前後、及びタイプIIIでは0.0前後である。タイプIの円錐定数Cは、例えば、0.09と0.25の間の範囲で異なるとすることができる。タイプIIの円錐定数は、−0.09と+0.09の間の範囲で異なるとすることができる。タイプIIIの円錐定数Cは、−0.25と−0.09の間の範囲で異なるとすることができる。
【0038】
図4は、異なる屈折力の理由から、距離補償されないタイプI及びIIIのラスタ要素24の効果を示しており、言い換えればこのラスタ要素は本発明によらない。この図は、物体視野3の領域内の視野座標xにわたる強度Iを示している。タイプIのラスタ要素24の高い屈折効果は、割り当てられた部分光束25を割り当てられた第2のラスタ要素26の割り当て入射面上で重度に収縮させ、それによって次に視野座標xにわたる強度曲線32も同様に収縮される。タイプIのラスタ要素24の円錐定数Cは、物体視野3にわたって「凹の」強度曲線32をもたらし、言い換えれば強度曲線32は、上方に開くように湾曲する。
【0039】
タイプIIIのラスタ要素24の低い屈折力に起因して、これらのラスタ要素24の光束誘導効果は、第2のラスタ要素26上で部分光束を小さくしか収縮させず、それによって次に視野座標xにわたって幅広の強度曲線33がもたらされる。タイプIIIのラスタ要素24の円錐定数Cは、物体視野3にわたって「凸の」強度曲線33をもたらし、言い換えれば強度曲線33は下向きに開く。
【0040】
以下に説明するようにいかなる距離補償も存在しない場合には、タイプIIIのラスタ要素24よりも高い屈折効果を有するタイプIのラスタ要素24の収縮効果は、
図4の物体視野3にわたる強度曲線32、33の強度レベルを比較すると明らかなように、物体視野3にわたって積分された場合にタイプIの強度寄与がタイプIIIのものよりも高いという結果をもたらす。
【0041】
本発明により、物体視野3にわたる曲線32、33のこの強度差分は、部分光束25を通じて互いに対して割り当てられたラスタ要素24、26の間の距離Δの変更によって補償される。以下ではこれを
図2を用いて説明する。上述のように、タイプIのラスタ要素24は、タイプIIIのラスタ要素よりも高い屈折効果を有する。従って、タイプIのラスタ要素24によって形成される部分光束25Iは、タイプIIIのラスタ要素24によって生成される部分光束25IIIのものよりも高く収束するエッジ光線を有する。一方、ラスタ区域29内のラスタ要素24、26の間の距離ΔIは、ラスタ区域27及び31のラスタ要素24、26の間の距離ΔIIIよりも小さい。従って、タイプI又はIIIのいずれのものであるかに関わらず、割り当てられたラスタ要素26上に入射する部分光束25は、タイプIIIと比較して高いタイプIのラスタ要素24の屈折効果にも関わらず、x寸法において同じ広がりx0を有する。同様に、大きい距離ΔIIIは、部分光束25Iと同じx寸法x0に沿って部分光束25IIIが集光されるという結果をもたらすので、低い屈折効果を有するタイプIIIのラスタ要素は、物体視野3にわたって高い強度効果を有する。従って、物体視野3の領域内では、タイプIIIによって生成された強度曲線33は、一点鎖線によって例示している強度曲線34に増大する。物体視野3にわたって積分されると、2つのタイプIとIIIとは、これらの異なる屈折効果にも関わらず、タイプIとIIIとの異なる円錐定数に起因して凹曲線又は凸曲線に関してしか異ならない同じ強度寄与を与える。従って、タイプIとIIIとの異なる屈折効果は、使用物体視野3にわたって強度オフセット補正を実施することを可能にし、
図4にはこれを「E−オフセット」及び強度軸に沿って延びる双方向矢印によって示している。
【0042】
ラスタ区域28、30内のタイプIIのラスタ要素24の屈折効果は、タイプIの屈折効果とタイプIIIの屈折効果の間にあり、その結果、タイプIIは、対応する強度調節効果を有する。
図2に記載のラスタモジュール13の概略図は、ラスタ区域28、30内の割り当てられたラスタ要素24、26の間に2つの異なる距離Δを示しており、その結果、第2のラスタ配列15の個別要素の間で距離変動が得られる。代替的に、第2のラスタ配列15の第2のラスタ要素26は、
図2に35の破線によって示しているように、第1のラスタ配列12の割り当てられたラスタ要素24からの均一な距離Δの位置に配置することができ、従って、この場合、均一な距離ΔIIが設けられる。
【0043】
異なる距離ΔI、ΔII、ΔIIIによる距離変動は、リッジ方式でx方向にわたって延びる第2のラスタ配列15の厚み変化によって得られる。第2のラスタ配列15は、中心、言い換えればラスタ区域29内で最も高いラスタ厚SIを有し、エッジ、言い換えればラスタ区域27、31において最低厚SIIIを有する。実線で表す第2のラスタ配列15を見ると、z方向に測定される厚みSは、距離ステップ36によって要素毎に減少する。
【0044】
図2及び
図5、並びにそれ以降の図では、ラスタ要素24、26のそれぞれのx寸法と比較した場合に、ラスタ配列12、15の間の距離Δを大幅に誇張している。
【0045】
以下の表は、それぞれの第1のラスタ要素24の円錐定数C又は曲率半径が変更された場合に必要とされる絶対距離変動又は空隙変化の例を示している。第1の表では、円錐定数C変化をΔCと記している。
【0046】
円錐定数Cが、例えば、0.05だけ変更されると、補償のために13μmの距離変動Δが必要である。
【0047】
第2の表では、半径変化をパーセントで提供している。
【0050】
図3は、第1のラスタ配列12、従って、投影露光装置1の照明系5のラスタモジュール13の例示的四重極照明を示している。第1のラスタ配列12は、第1のラスタ配列12上に菱形のコーナで入射する合計で4つの部分光束に露光される。言い換えれば、中心ラスタ区域29には、y方向に見た時に、各場合にラスタ区域29の2つのエッジに近い2つの部分光束25が入射する。ラスタ区域27及び31内では、第1のラスタ配列12に、y方向に見て中心に部分光束25のそれぞれの1つが入射する。この四重極照明では、異なるタイプI及びIIIのラスタ要素24は、投影露光装置1の他の光学構成要素によってもたらされ、物体視野3の照明の楕円度変化を補償することを可能にする。
【0051】
楕円度は、物体平面4内の物体視野3の照明の品質を評価するための尺度である。楕円度を判断することにより、投影対物系21の入射瞳にわたるエネルギ又は強度の分布をより確実に予測することが可能になる。この目的のために、投影対物系21の入射瞳は、数学における一般的な慣習と同様に反計時方向にO1からO8と番号が振られた8つの八分円に分割される。以下では、八分円O1からO8によって与えられる、視野点を照明するためのエネルギ寄与又は強度寄与をエネルギ寄与又は強度の寄与I1からI8と呼ぶ。
【0052】
以下の量を−45°/45°楕円度(Elly、E-45°/45°)と呼ぶ。
それに対して以下の量を0°/90°楕円度(Ellx、E0°/90°)と呼ぶ。
【0053】
第1のラスタ要素24の非球面形状は、多段形成工程において生成される。この工程では、ラスタ配列12は、最初に1つの同じ円錐定数を有するラスタ要素24を有するように生成される。その後に、円錐定数の望ましい変更が実施され、それによって異なるタイプI、II、IIIがもたらされる。それによって更に異なるレンズ半径、従って、タイプIからIIIの異なる屈折効果がもたらされる。代替的に、ラスタ配列12には、タイプIからIIIの異なるレンズ半径を単一の生成段階で設けることができる。
【0054】
図5は、個別要素の間の距離変動が与えられたラスタモジュール13の別の実施形態を示している。
図1から
図4を参照して上述したものに対応する構成要素及び効果を同じ参照番号で表しており、これらに対しては再度詳細には解説しない。
【0055】
図5に記載のラスタモジュール13の実施形態では、個別要素の間のリッジ方式での距離変動は第1のラスタ配列12に与えられる。その結果、中心ラスタ区域29内の割り当てられたラスタ要素24と26の間に最小距離ΔIが存在し、それに対して割り当てられたラスタ要素24と26の間には最大距離ΔIIIが存在する。
図2に記載の実施形態に関する以上の説明と同様に、ラスタ要素24によって部分光束25Iから25IIIに対して作用するタイプI及びIIIの異なる収縮効果はまた、距離補償され、その結果、ここでもまた、部分光束25Iから25IIIは、第2のラスタ配列15のラスタ要素26上で同じx広がりx0を有する。これから、
図4を参照して上記に既に解説したように、異なる強度曲線を有する同じオフセット補償が得られる。
【0056】
図6は、ラスタモジュール13の別の実施形態を示している。
図1及び
図5を参照して上述したものに対応する構成要素及び効果を同じ参照番号で表しており、これらに対しては再度詳細には解説しない。
【0057】
図6に記載のラスタ配列12は、逆位リッジの方式で設計され、言い換えれば、中心領域で最小厚みS3を有し、エッジにおいて最大厚みS1を有する。同様に、
図6に記載の第1のラスタ配列の実施形態におけるタイプIからIIIの第1のラスタ要素24も、逆位方式で第1のラスタ配列12のx寸法にわたって分散される。
【0058】
最低の屈折効果を有するタイプIIIは、中心、言い換えればラスタ区域29に配置される。タイプIのラスタ要素24、言い換えれば、最も高い屈折力を有するラスタ要素24は、エッジ、言い換えればラスタ区域27、31に配置される。タイプIIのラスタ要素24は、その間、言い換えればラスタ区域28及び30に配置される。
図6に記載のラスタ配列12にも、個別要素の間の距離ステップ36が設けられる。
【0059】
距離ΔIと比較して大きい距離ΔIIIは、タイプIのものよりも低いタイプIIIの屈折効果を補償し、その結果、ラスタ要素26にタイプI、II、又はIIIのいずれが装備されるかに関わらず、部分光束251から253は、
図6に記載のラスタモジュール13においても同じx広がりx0を有する。
【0060】
図7は、ラスタモジュール13の別の実施形態を示している。
図1から
図6を参照して上述したものに対応する構成要素及び効果を同じ参照番号で表しており、これらに対しては再度詳細には解説しない。
【0061】
図7では、
図6に記載のラスタモジュール13とは対照的に、中心に最小厚みSIIIを有し、エッジに最大厚みSIを有する逆位リッジ形状の要素であるのは第1のラスタ配列12ではなく第2のラスタ配列15である。その結果、距離ΔIからΔIIIは、
図6に記載のラスタモジュール13を参照して上述したように、部分光束251から253に対して対応する補償効果を有する。
【0062】
図8は、ラスタモジュール13の別の実施形態を示している。
図1から
図7を参照して上述したものに対応する構成要素及び効果を同じ参照番号で表しており、これらに対しては再度詳細には解説しない。
【0063】
図8に記載のラスタモジュール13では、両方のラスタ配列12、15に、個別要素の間のリッジ様のステップが設けられる。ラスタ配列12、15の2つのリッジは互いに対面し、その結果、ラスタ区域29内に最短距離ΔIが存在し、それに対してエッジにあるラスタ要素24、26の間に最大距離ΔIIIが存在する。
図8に記載のラスタモジュール13の配列は、タイプI及びIIIが、その屈折効果に関して
図2及び
図5に記載の配列のものよりも大きい差分を有する場合に選択される。
【0064】
図9は、ラスタモジュール13の別の実施形態を示している。
図1から
図8を参照して上述したものに対応する構成要素及び効果を同じ参照番号で表しており、これらに対しては再度詳細には解説しない。
【0065】
上述の
図2及び
図5から
図8に記載の実施形態とは異なり、
図9に記載の実施形態には3つのラスタ区域、すなわち、ラスタ区域37、38、及び39のみが設けられる。
図9に記載の概略図では、
図9に記載のラスタモジュール13の第1のラスタ配列12は、ここでもまた、x方向に見た時に合計で7つの第1のラスタ要素24を有する。ラスタ区域37及び39内のラスタ要素24は、高い屈折力を有するタイプIのものである。第1のラスタ配列12の中心ラスタ区域28内のラスタ要素24は、低い屈折力を有するタイプIIIのものである。ラスタ区域37及び39内には、各場合にタイプIの2つのラスタ要素が存在する。ラスタ区域38内には、互いに隣に配置されたタイプIIIの3つのラスタ要素24が存在する。
【0066】
一方でラスタ区域37と38との間、他方でラスタ区域38と39との間では、第1のラスタ配列12は、各場合に1つの距離ステップ40を含む。ラスタ区域37内のラスタ要素24と第2のラスタ配列15の割り当てられたラスタ要素26の間の距離ΔIは、ラスタ区域38内の第1のラスタ要素24と割り当てられた第2のラスタ要素26の間の距離ΔIIIよりも小さい。その結果、
図6に記載のラスタモジュール13を参照して上述したように、異なる距離ΔIとΔIIIとは、タイプIとIIIとの異なる屈折効果を補償する。
【0067】
図10は、ラスタモジュール13の別の実施形態を示している。
図1から
図8を参照して、更には特に
図9を参照して上述したものに対応する構成要素及び効果を同じ参照番号で表しており、これらに対しては再度詳細には解説しない。
【0068】
図10に記載のラスタモジュール13では、第1のラスタ配列12は、
図9に記載のラスタ配列12に対して逆位にされる。高い屈折力を有するタイプIのラスタ要素24は、中心ラスタ区域38に配置され、それに対して低い屈折力を有するタイプIIIのラスタ要素24は、エッジにあるラスタ区域37及び39に配置される。この場合、エッジにおける距離ΔIIIは距離ΔIを超えるので、
図5に記載のラスタモジュール13の実施形態を参照して上述したような補償効果が得られる。
【0069】
投影露光装置1を用いた微細構造化構成要素又はナノ構造化構成要素のマイクロリソグラフィ製造中には、感光材料の層が少なくとも部分的に設けられた基板が準備される。通常、基板はウェーハである。更に、結像される構造が設けられたレチクルが準備される。次に、レチクルの少なくとも一部分を基板上の感光層の区域上に投影するのに投影露光装置1が使用される。
【0070】
以下は、
図11に記載のラスタモジュール13の別の実施形態の説明である。
図1から
図10を参照して上述したものに対応する構成要素及び効果を同じ参照番号で表しており、これらに対しては再度詳細には解説しない。
【0071】
図11に記載のラスタモジュール13では、2つのラスタ配列12、15には、反射性の第1のラスタ要素24及び反射性の第2のラスタ要素26が設けられる。これらのラスタ要素の反射力の理由から、
図11に記載の実施形態にある第1のラスタ配列12のラスタ要素24は、異なる屈折効果の代わりに異なる光束影響効果を有する。従って、
図11の上部に示しているタイプIIIのラスタ要素24IIIは、部分光束25IIIに対して最も低い集束効果を作用するように設計することができ、それに対して
図11の下部に示しているタイプIのラスタ要素24Iは、部分光束25Iに対して最も高い集束効果を有するように設計することができる。これらの間に示しているラスタ要素24IIによって部分光束25IIに対して作用する集束効果は、ラスタ要素24I及び24IIIの2つの集束効果の間に位置する。
【0072】
2つのラスタ配列12、15は、第1のラスタ要素24のうちの1つと、それに割り当てられた第2のラスタ配列15の第2のラスタ要素26との間の光路長Δが、次式の関係が適用されるようなものであるように互いに対して空間的に配置される。
ΔI<ΔII<ΔIII
【0073】
第1のラスタ要素24のタイプIからIIIへの距離ΔIからΔIIIの個別割り当ては、例えば、
図2に記載のラスタモジュール13を参照して上述した補償効果をもたらす。
【0074】
上述の実施形態の2つのラスタ配列12、15は、照明光8のビーム経路に反対の順序で配置することができる。
【0075】
図12は、ラスタ要素24、26を有するラスタ配列12、15を含むラスタモジュール13の別の実施形態の概略図である。
図1から
図11を参照して上述したものに対応する構成要素及び効果を同じ参照番号で表しており、これらに対しては再度詳細には解説しない。
【0076】
図12に記載のラスタモジュール13では、2つのラスタ配列12、15は、z方向、言い換えれば、2つのラスタ配列12、15によって張られたxy平面と垂直に変位行程ΔZに沿って変位させることができる。
図12に図示の実施形態では、z方向に変位したのは第2のラスタ配列15である。この目的のために、第2のラスタ配列15は、変位デバイス41に機械的に接続される。変位デバイス41は、光学構成要素の変位に適する直線変位ユニット又はマイクロ機械アクチュエータとすることができる。
【0077】
第2のラスタ配列15の下流のビーム経路には、照明光8に対して部分的に透過性を有する出力結合ミラー42が配置される。この出力結合ミラー42により、照明光8の部分ビーム43が、CCDアレイのような位置感知検出器44に伝達される。検出器44は、図面内には示していない中央制御デバイスによって変位デバイス41と信号接続状態にある。検出器44は、部分ビーム43の照明強度分布を検出し、それによって物体平面4内の照明光8の照明強度分布及び/又は照明角度分布に関する結論を引き出すことが可能になる。
【0078】
ラスタ配列12に対するラスタ配列15のΔZ変位は、
図4を参照して上述したように、使用物体視野3にわたる強度のオフセット補正を実施することを可能にする。2つのラスタ配列12、15の間の距離Zが大きい程、照明視野のx広がりは小さく、その結果、強度は物体視野3内でより強く集束される。
【0079】
更に、ΔZ変位は、楕円度のオフセット、言い換えれば、上記に既に解説した例えば量E-45°/45°又はE0°/90°のオフセットを得るために使用することができる。ΔZ変位は、物体視野3の照明の均一性を調節することも可能にする。均一性は、物体視野3内のx値、言い換えれば視野高さに対して走査積分された正規化合計エネルギSE(x)として定められる。均一性Uは、SE(x
max)が、最も高い走査積分合計エネルギを有するx値x
maxにおける合計エネルギである場合に次式のようになる。
U(パーセント)=100(SE(x
max)−SE(x
min))/(SE(x
max)+SE(x
min))
一方でSE(x
min)は、最も低い走査積分合計エネルギを有するx値x
minにおける合計エネルギである。
【0080】
更に、ΔZ変位は、テレセントリック性のオフセット補正を実施するのに使用することができる。
【0081】
テレセントリック性は、物体視野3上に入射する照明光のエネルギ又は強度の主照明角度方向の尺度である。
【0082】
視野点に割り当てられる光束の主光線は、照明される物体視野の各視野点に対して定められる。主光線は、この視野点によって放出される光束のエネルギ重み付き方向を有する。理想的には、各視野点の主光線は、照明光学系又は投影対物系21によって判断される主要光線と平行である。
【0083】
主要光線の方向:
は、照明光学系又は投影対物系21の設計データから既知である。視野点の主要光線は、視野点と投影対物系21の入射瞳の中心点の間の接続線によって定められる。物体平面3内の物体視野内の視野点x,yにおける主光線の方向は次式として得られる。
【0084】
E(u,v,x,y)は、視野点x,yにおける瞳座標u,vの関数としてのエネルギ分布である、言い換えれば、それぞれの視野点x,yが受ける照明角度に依存する。
は、点x,y上に入射する合計エネルギである。
【0085】
例えば、中心視野点x0,y0は、第2のラスタ配列15上のそれぞれのラスタ要素26の位置によって定められる方向u,vからの部分放射線束の放射を受ける。この照明例では、ラスタ要素26に割り当てられた部分放射線束又は照明チャンネルが有する異なるエネルギ又は強度が組み合わされて、全てのラスタ要素26にわたって積分された照明光8の主光線方向と平行な主光線を形成する場合にのみ、主光線sは、主要光線に沿って進む。これは、理想的な状況下の場合のみである。実際の用途では、テレセントリック性誤差:
と呼ぶ主光線方向:
と主要光線方向:
の間の偏位が存在する。
【0086】
投影露光装置1の実際的な用途では、補正しなくてはならないのは特定の物体視野点(x,y)における局所テレセントリック性誤差ではなく、x=x0において走査積分されるテレセントリック性誤差である。このテレセントリック性誤差は次式として得られる。
【0087】
言い換えれば、走査処理中に物体平面4内の物体視野3を通じて移動するレチクル上の点(x、例えば、x0)によって積分されるテレセントリック性誤差が補正され、この場合xテレセントリック性誤差とyテレセントリック性誤差との間で区別がつけられる。xテレセントリック性誤差Txは、主要光線からの主光線の走査方向に対して垂直な方向の、言い換えれば、視野高さにわたる偏位として定められる。yテレセントリック性誤差Tyは、主要光線からの主光線の走査方向の偏位として定められる。
【0088】
照明パラメータは、検出器44、中央制御デバイス、及び変位デバイス41を用いて制御することができ、従って、ラスタモジュール13を作動中に、照明パラメータの実際の値を所定の望ましい値に調節するのに使用することができる補正要素として作動させることを可能にする。この目的のために、中央制御デバイスは、検出器44によって検出された部分ビーム43の照明パラメータを評価し、それによって照明光8の照明パラメータに関する結論を引き出すことが可能になる。このようにして判断された照明パラメータの実際の値に基づいて、次に、中央制御デバイスによって変位デバイス41を相応に作動させることによって第2のラスタ配列15が変位する。
【0089】
図13は、2つのラスタ配列12と15の間の変位において異なる自由度を有するラスタモジュール13の別の実施形態の
図12と類似の図である。上記に記載した実施形態を参照して、特に
図12に記載の実施形態を参照して上述したものに対応する構成要素を同じ参照番号で表しており、これらに対しては再度詳細には解説しない。
【0090】
図13に記載のラスタモジュール13では、第2のラスタ配列15は、第1のラスタ配列12に対してx方向及びy方向に変位行程Δx、Δyに沿って変位させることができる。この目的のために、ここでもまた、ラスタモジュール13には、第2のラスタモジュール15と機械的に結合された変位デバイス41が装備される。
【0091】
第1のラスタ配列12に対する第2のラスタ配列15のΔx変位又はΔy変位は、照明視野の相対的なx位置又はy位置を物体視野3に対して定めることを可能にする。視野高さxにわたるテレセントリック性の傾斜依存性、いわゆるテレセントリック性傾斜、並びに視野高さxにわたる楕円度の傾斜依存性も、Δx変位又はΔy変位によって調節することができる。
【0092】
Δx変位又はΔy変位との組合せで、
図12に記載のラスタモジュール13の説明に対応して
図13に記載のラスタモジュール13においても考えることができる更に別のΔz変位は、照明光8の強度オフセットを物体視野3にわたって調節することを可能にする。
【0093】
ラスタモジュールが、
図3に記載のラスタ区域27から31のような、異なる光束影響効果を有するラスタ区域に分割されたラスタ配列12のようなラスタ配列を含む場合には、Δx変位又はΔy変位は、物体視野3にわたる楕円度の傾斜変化をもたらす。これは、視野高さxにわたって楕円度の傾斜を調節するのに使用することができる。
【0094】
図12に記載のラスタモジュール13に対して上述の検出器及び中央制御デバイスによるパラメータ制御は、
図13に記載のラスタモジュール13においても考えることができる。
【0095】
図14は、2つのラスタ配列12と15の間の変位において異なる自由度を有するラスタモジュール13の別の実施形態の
図12と類似の図である。上記に記載した実施形態を参照して、特に
図12に記載の実施形態を参照して上述したものに対応する構成要素を同じ参照番号で表しており、これらに対しては再度詳細には解説しない。
【0096】
図14に記載のラスタモジュール13では、ここでもまた、第2のラスタ配列15が、第1のラスタ配列12に対してz方向に沿って変位可能である。第2のラスタ配列15の個別ラスタ要素26は、個別に互いに独立して変位行程ΔZ1、ΔZ2、...、ΔZNに沿って変位させることができる。ラスタ要素26の各々は、
図14に略示しているように、割り当て変位デバイス41と機械的に結合される。変位デバイス41は、ラスタ要素26のz方向の個別変位を可能にする。個別変位デバイス41は、ラスタ要素26の各々に割り当てることができる。変位デバイス41によるラスタ要素26の変位は、図示していない中央制御デバイスによって前と同様に制御される。
図12に記載のラスタモジュール13に対して上述の検出器及び中央制御デバイスによる照明パラメータ制御は、
図14に記載のラスタモジュール13においても考えることができる。
【0097】
z変位したラスタ要素26の位置に基づいて、局所的に異なる距離ΔZiは、照明チャンネルに属する照明視野セグメントのサイズを調節可能な方式で定めることを可能にし、照明視野セグメントのサイズは、この関連付けられた照明チャンネルによって判断される。その結果、楕円オフセットを調節することができる。物体視野3にわたる楕円の進路には、例えば、所定の分布が得られるように距離ΔZiを変更することによって影響を与えることができる。それによって楕円を補正することが可能になる。同様に、距離ΔZiを変更することによって均一性を調節することができる。
【0098】
図12から
図14に記載のラスタモジュール13では、上述の変位デバイス41は、第1のラスタ配列12の少なくとも1つのセグメント、言い換えればラスタ要素24のうちの少なくとも1つ、ラスタ要素24の群、又はラスタ配列12の全体の第2のラスタ配列15の少なくとも1つのセグメント、言い換えれば少なくとも1つのラスタ要素26、ラスタ要素26の少なくともー群、又はラスタ配列15の全体に対する周期的な変位が、物体視野又は照明視野3の露光時間に比較して小さい周期で発生するように設計することができる。この種の周期的変位を実施することができる変位デバイス41をウォブラーとも呼ぶ。
【0099】
この種のウォブラーは、1次光源6によって光パルスが生成される度に照明チャンネルが変位するような時定数でラスタ配列15又はそのセグメントを変位させる。投影露光装置1を用いた照明されるウェーハ上の特定のセグメントの露光の時間中に、このセグメントは、光源6の例えば、30個の光パルスによる入射を受ける。これらの30個の光パルスの間に、ウォブラーの周期的変位を発生させることができる。
【0100】
図15は、2つのラスタ配列12と15の間の変位において異なる自由度を有するラスタモジュール13の別の実施形態の
図12と類似の図である。上記に記載した実施形態を参照して、特に
図12に記載の実施形態を参照して上述したものに対応する構成要素を同じ参照番号で表しており、これらに対しては再度詳細には解説しない。
【0101】
第2のラスタ配列15のラスタ要素26のための変位デバイス41は、変位行程ΔX1、ΔX2、...、ΔXN又はΔY1、ΔY2、...、ΔYNそれぞれに沿ったラスタ要素26の個別x,y変位を保証する。このx,y変位は、物体視野3内で変位した照明チャンネルの瞳依存変位をもたらす。この瞳依存変位は、物体視野3内での照明チャンネルの重ね合わせを最適化するために、従って、物体視野3にわたる強度分布を最適化するために使用することができる。x又はyの変位ΔXi、ΔYiは、変位したラスタ要素26のそれぞれの照明チャンネルの強度分布の傾斜依存性をもたらし、この依存性は、均一性に対する対応する効果を有する。それによってテレセントリック性の傾斜依存性を補正することが可能になる。
【0102】
以下では、第1のラスタ配列12のラスタ区域のx変位の効果を
図16から
図18を用いてより詳細に以下に説明する。
図1から
図15を参照して上記に既に解説したものに対応する構成要素又は機能を同じ参照番号で表しており、これらに対しては再度詳細には説明しない。
【0103】
図16に記載の第1のラスタ配列12は、異なる光束影響効果を有する3つのラスタ区域45、46、47を有し、言い換えれば、これらのラスタ区域は、例えば、
図3に記載の第1のラスタ配列12のラスタ区域27から31に関する以上の説明に対応する異なる円錐定数を有するラスタ要素24を含む。
【0104】
3つのラスタ区域45から47の互いに対する基準位置から始めて、
図16の左手側にあるラスタ区域45は、中心ラスタ区域46に対して行程−ΔXだけ左に変位し、それに対して
図16の右手側にあるラスタ区域47は、固定の中心ラスタ区域46に対して行程ΔXだけ右に変位する。
【0105】
2つの変位−ΔX、ΔXは、
図17に示しているように、物体視野にわたる強度曲線が変化するという結果をもたらす。
図4に対応して、
図17は、視野高さxにわたる走査積分強度のI(x)グラフを示している。ラスタ区域45が行程−ΔXだけ変位したと、
図17に記載の物体視野3の左手エッジにおいて最も高い強度を有し、
図17に記載の物体視野3の右手エッジにおいて最も低い強度を有する傾斜した強度曲線48がもたらされる。ラスタ区域47を行程ΔXだけ変位させることにより、反対の傾斜を有し、言い換えれば、
図17の左手視野エッジにおいて最も低い強度を有し、
図17の右手視野エッジにおいて最も高い強度を有する強度曲線49がもたらされる。
【0106】
傾斜した強度曲線48、49は、
図18に示しているように、物体視野3にわたるテレセントリック性曲線50をもたらす。これは、
図18に記載の物体視野3の左手エッジでは、最も優勢なのはラスタ区域47からの強度寄与であり、それに対して
図18に記載の物体視野3の右手エッジでは、最も優勢なのはしたラスタ区域45からの強度寄与であることに起因する。
【0107】
物体視野3の照明の特定の照明パラメータに対する第2のラスタ配列15の固定の中心ラスタ区域46に対するラスタ区域45、47の相対変位の効果を
図19から
図21を用いて説明する。
図1から
図18を参照して、特に
図16から
図18を参照して上述したものに対応する構成要素を同じ参照番号で表しており、これらに対しては再度詳細には解説しない。
【0108】
第1のラスタ配列12を示している
図16とは対照的に、
図19に示しているのは第2のラスタ配列15である。
【0109】
ラスタ区域45から47の互いに対する基準位置から始めて、
図19に記載の変位は、ラスタ区域45が、
図19のラスタ区域46に対して行程ΔXだけ右に変位し、同時にラスタ区域47も、固定の中心ラスタ区域46に対して同じく行程ΔXだけ変位するように実施される。従って、2つの外側ラスタ区域45、47は、両方共に、中心ラスタ区域46に対して同じ方向に、すなわち、正のx方向に変位する。
【0110】
一方で中心ラスタ区域46と、他方で2つの外側ラスタ区域45、47とは、異なる光束誘導効果を有するラスタ要素から構成される。中心ラスタ区域46は、例えば、第1の円錐定数を有する第1の光束影響タイプIのラスタ要素を含む。2つの外側ラスタ区域45、47は、別の光束影響効果、特にタイプIのものとは異なる円錐定数を有する第2のタイプIIのラスタ要素26を含む。
【0111】
中心ラスタ区域46に対する2つの最外側ラスタ区域45、47のΔX変位は、左の視野エッジが右の視野エッジよりも高い強度による入射を受けるようなタイプIIの視野依存強度分布の傾斜をもたらす(
図20の強度曲線51と比べられたい)。中心ラスタ区域46は変位しないので、その強度曲線52は、物体視野3にわたって変更されないままに残る。
【0112】
強度曲線51の傾斜は、
図21に示している楕円度曲線53の対応する傾斜をもたらす。
図21に示している楕円度曲線53は、楕円度E-45°/45°の曲線又はE0°/90°の曲線とすることができる。楕円度曲線53の傾斜は、
図21に記載の物体視野3の右手側の楕円度オフセット54をもたらす。
【0113】
基準位置から始めて、ラスタ配列12、15、ラスタ要素24、26の群又は区域、又は個別ラスタ要素24、26における変位行程ΔX、ΔYは、−10μmと+10μmの間の範囲のものとすることができる。従って、絶対合計変位行程は、20μmとすることができる。ラスタ配列12、15、ラスタ要素24、26の群又は区域、又は個別ラスタ要素24、26における絶対ΔZ変位行程は、30μmとすることができる。
【0114】
z方向の変位は、基本的に照明光のビーム方向に沿って実行される変位である。x又はyの変位は、基本的に照明光8のビーム方向に対して横断方向に実行される変位である。
【0115】
代替的に、変位デバイス41は、2つのラスタ配列12、15の一方が、2つのラスタ配列15、12のうちの他方のものに対して、例えば、x軸又はy軸と平行であるピボット軸の回りにピボット回転可能であるように設計することができる。この場合、変位デバイス41は、2つのラスタ配列12、15のうちの少なくとも一方のためのピボットデバイスとして設計される。
【0116】
ラスタモジュールの設計に基づいて、上述のタイプのラスタ要素は、第1のラスタ配列12の一部及び/又は第2のラスタ配列15の一部とすることができる。