(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908061
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】焼成菓子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 1/00 20060101AFI20160412BHJP
A23G 1/30 20060101ALI20160412BHJP
A23G 3/50 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
A23G1/00
A23G3/00 102
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-502303(P2014-502303)
(86)(22)【出願日】2013年2月27日
(86)【国際出願番号】JP2013055086
(87)【国際公開番号】WO2013129458
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2014年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-43851(P2012-43851)
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-195895(P2012-195895)
(32)【優先日】2012年9月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】片桐 崇
(72)【発明者】
【氏名】三▲さき▼ 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 沙織
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 洋之
【審査官】
鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−210934(JP,A)
【文献】
特開2001−333697(JP,A)
【文献】
特開2003−250448(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/125451(WO,A1)
【文献】
国際公開第2005/029970(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00−1/56
A23G 3/00−3/56
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPIDS/WPIX(STN)
FROSTI(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナッツを含有する焼成された油脂性菓子であって、イソマルツロース、マンニトールおよびマルチトールからなる群から選ばれる化合物を3〜25重量%含有する、焼成菓子。
【請求項2】
ナッツの含有量が1〜30重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の焼成菓子。
【請求項3】
ナッツと、3〜25重量%の、イソマルツロース、マンニトールおよびマルチトールからなる群から選ばれる化合物とを含有する油脂性菓子を調製し、焼成することを特徴とする焼成菓子の製造方法。
【請求項4】
ナッツの含有量が1〜30重量%であることを特徴とする、請求項3に記載の焼成菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成菓子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、チョコレートに可食固形物を混合した複合チョコレート菓子は多く存在する。例えばナッツとチョコレートを組み合わせたものは多くの消費者に好まれている。しかしながら、チョコレートとナッツとを組み合わせた菓子の場合、保存中にナッツが白化する現象が発生し、カビが生えたように見えるため、これを抑制する工夫がなされてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/115063
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、チョコレート生地に液状油脂を添加することでナッツの白化を抑制する手法が採られていたが、その方法では、チョコレートの融点が降下してしまうことから、手に持った時のベタつきが発生したり、チョコレートを噛んだ時のパチンと割れる食感(スナップ感という)がなくなるなど、課題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者らは、鋭意検討の結果、ナッツ入りの油脂性菓子を焼成し、保存中のナッツの白化を抑制する発明をするに至った。
即ち、
(1)ナッツを含有する油脂性菓子であって、油脂性菓子を焼成することを特徴とする焼成菓子。
(2)イソマルツロース、マンニトールおよびマルチトールからなる群から選ばれる化合物を含有することを特徴とする、(1)に記載の焼成菓子。
(3)イソマルツロース、マンニトールまたはマルチトールの含有量が3〜25重量%であることを特徴とする、(2)に記載の焼成菓子。
(4)ナッツの含有量が1〜30重量%であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか一つに記載の焼成菓子。
(5)ナッツを含有する油脂性菓子を調製し、焼成することを特徴とする焼成菓子の製造方法。
(6)イソマルツロース、マンニトールおよびマルチトールからなる群から選ばれる化合物を含有することを特徴とする、(5)に記載の焼成菓子の製造方法。
(7)イソマルツロース、マンニトールまたはマルチトールの含有量が3〜25重量%であることを特徴とする、(6)に記載の焼成菓子の製造方法。
(8)ナッツの含有量が1〜30重量%であることを特徴とする、(5)〜(7)のいずれか一つに記載の焼成菓子の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の焼成菓子は、保存中のナッツの白化を抑制する新規なものである。さらに焼成菓子がイソマルツロース、マンニトールおよびマルチトールからなる群から選ばれる一つを含有することによって、保存中のナッツの白化をさらに抑制しつつ、中心部までパリパリ(crunchy)とした食感とナッツの組合せによる良好な食感を有しながらも焦げを感じない新規なものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(原料)
本発明において油脂性菓子とは、規格上のチョコレート生地に限定されるものではなく油脂性菓子を広く意味し、日本国公正取引委員会認定のルールである「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」に定めるチョコレート、準チョコレートや、それに該当しないファットクリームなどあらゆる油脂性菓子が使用可能である。
本発明において焼成菓子とは、文字通り前記油脂性菓子をオーブン等で焼成した菓子である。焼成温度は、オーブン等の内部温度として約100℃以上である。本発明の焼成菓子は、ナッツを含有する油脂性菓子であるが、焼成することによって、ナッツの白化が抑制され、かつ、良好な食感と風味を有するものである。
本発明では、特に言及しない限り、油脂性菓子中の各成分の含有量は、焼成後の菓子全体の重量を基準とする。
【0008】
本発明における焼成菓子においては、イソマルツロース、マンニトールおよびマルチトールからなる群から選ばれる化合物を含有すると、保存中のナッツの白化をより抑制することができるため、より短時間の焼成でも、ナッツの白化抑制効果および好ましい食感と風味を得ることができる。
また、イソマルツロースを3〜25重量%、マンニトールを3〜25重量%またはマルチトールを3〜25重量%含有すると、本発明の目的とする保存時のナッツ白化抑制効果および食感、風味においてより好適である。
さらに、イソマルツロースの含有量が6〜20重量%、マンニトールの含有量が6〜20重量%またはマルチトールの含有量が6〜20重量%であると、本発明の目的とする保存時のナッツ白化抑制効果および食感、風味において特に好適である。
【0009】
本発明におけるナッツにおいては、アーモンド、マカダミアナッツ、ピーナッツ、クルミ、ピスタチオ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ等を使用することができる。
本発明における焼成菓子においては、ナッツの含有量に制限は無いが、1〜30重量%が好ましい。
ナッツを破砕しない所謂ホールナッツの状態で使用してもよいが、ナッツ内部が表面に現れる破砕物、スライス品、一般的にスリバードと呼ばれる細切り品等を使用した場合に、本発明の白化抑制効果がより好適に奏功する。
ナッツ破砕物の大きさについては、その粒の大きさが目視できる程度であれば特に制限はなく、本発明の白化抑制効果を確認することができる。好ましくは、ナッツ破砕物の大きさは直径0.5mm以上10mm以下である。さらに好ましくは、ナッツ破砕物の大きさは直径1mm以上5mm以下である。
長径が10mmを超えるようなスライス品や細切り品であれば、厚さは0.5mm以上5mm以下が好ましい。
【0010】
その他原料は通常の油脂性菓子原料と同じであり、砂糖、全粉乳、カカオマス、ココアバター、植物油脂、レシチン等を使用することができる。
また、糖質、乳製品、油脂類、食塩等の塩類、色素、乳化剤、香料、さらにその他の成分も、本発明の目的に適う範囲で必要に応じて適宜用いることができる。
例えば糖質としては、澱粉、アルファー化澱粉、乳糖、ブドウ糖、果糖、トレハロース、デキストリン、セルロース等の糖、ソルビトール等の糖アルコールを用いることができる。ここで用いられる糖質は、イソマルツロース、マンニトール及びマルチトール以外のものである。
例えば乳製品としては、脱脂粉乳、クリームパウダー、乾燥乳清等が挙げられる。
例えば油脂類としては、動物、植物もしくは両者由来のテンパリング脂、ノンテンパリング脂またはそれらを混合した代用油脂であり、サル脂、シア脂、パーム脂、乳脂、DHA、EPA、ショートニング、マーガリンなどが挙げられる。
例えば乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
例えば香料としては、バニリン、バニラ抽出物などが挙げられる。
【0011】
(製法)
本発明における焼成菓子は、例えば次のようにして製造することができる。
例えば、イソマルツロース、マンニトール、マルチトール、砂糖、乳糖、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー等の粉体原料と、融解させたカカオマス、ココアバター、植物油脂やレシチン等の液状原料とを、レファイニングに適した油分(通常25〜30%)になるよう攪拌混合してペースト状の種生地を得る。
得られた種生地をレファイニングしてフレーク状とし、さらにコンチングによりペースト状に液化した後、所望の油分、粘度になるようにさらにココアバター、植物油脂等の油脂原料、およびレシチンを添加し、攪拌混合して油脂性菓子生地を得る。
さらにこれに必要に応じて香料等を添加してもよい。
【0012】
次に、得られた油脂性菓子生地にナッツを攪拌混合する。ナッツを攪拌混合する代わりに、成型した油脂性菓子生地の表面に露出するように付着させてもよい。
また、例えばホールナッツを使用する場合には、油脂性菓子生地を満たした槽に浸漬してナッツ表面に油脂性菓子生地を被覆してもよく、回転釜を用いてナッツ表面に油脂性菓子生地を被覆してもよい。必要に応じて、成型したナッツ含有油脂性菓子生地を冷却、固化した後、次工程に用いてもよい。
【0013】
次に、得られたナッツ含有油脂性菓子生地をオーブン等で焼成する。焼成は焼き上がり後の香味を考えた場合、160〜250℃で行うのが好ましい。
焼成が不十分であると、得られた焼成菓子の保存中にナッツが白化してしまうため、その抑制には中心部までパリパリとした食感になるように焼き上げることが必要で、焼成温度に合わせて焼成時間を適宜調整する必要がある。
また、油脂性菓子生地部の厚さを10mm以下になるようにすると、本発明の目的に特に適った、保存中のナッツの白化を抑制する効果を奏し、中心部までパリパリした食感に焼きあがった焼成菓子を得やすいので好ましい。
【実施例】
【0014】
以下、実施例を挙げてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
表1に記載の配合でチョコレートベース生地(以下ベース生地)を製造した。
【表1】
【0016】
(試験例1〜4)
得られたベース生地、7.5メッシュ(目開き2.3mm)パスかつ12メッシュ(目開き1.4mm)オンのアーモンドクラッシュ、イソマルツロース(商品名:パラチノース、三井製糖製)または砂糖、20℃でのSFC(固体脂含量)が7の液状油脂(商品名:メラノSS、不二製油製)またはココアバター、シード剤(商品名:BOBスター、不二製油製)を表2に示した各配合率で混合して油脂性菓子生地を調製し、縦28mm、横28mm、厚さ3mmの大きさに成形し、200℃のオーブンで焼成時間を4分、7分、または9分として焼成し、焼成菓子を得た。
【0017】
【表2】
【0018】
得られた各焼成菓子および各未焼成の油脂性菓子を20〜30℃、2サイクル/日の頻度で10日間温度サイクルを与えた後、20℃で24時間保存した。その後各焼成菓子および各未焼成の油脂性菓子に含有するナッツの白化状態を観察した。結果を表3に示した。また、各試験区の焼成菓子および各未焼成の油脂性菓子について、官能評価を行った。結果を表4に示した。
【0019】
試験例1および2の配合で7分間焼成した焼成菓子の保存試験においてナッツの白化はみられず良好であった。さらに全体的にパリパリした食感があり好ましい食感であった。一方、試験例3および4の配合で7分間焼成した焼成菓子の保存試験ではナッツの白化が一部見られたものの、焼成によるナッツ白化抑制効果が確認できた。また全体的にパリパリした食感があり好ましいものであった。また、試験例3および4の配合で9分間焼成した焼成菓子の保存試験ではナッツの白化は見られなくなったが、ボリボリ(too crunchy)とした口に残るような食感で、焦げた苦味があり、好ましくないものであった。
【0020】
【表3】
D ナッツ全体が強く白化していた。
C ナッツ全体が白化していた。
B ナッツの一部に白化が見られた。
A ナッツの白化は見られなかった。
【0021】
【表4】
C 従来のチョコレートの食感であった。
B 表面はサクサク(crispy)とした食感になっているが、
中心部は従来のチョコレートの食感であった。
A 表面も中心部もパリパリとしており、
好ましい食感と風味を備えていた。
D ボリボリとした、口に残るような食感で、
焦げた苦味があり、好ましくなかった。
【0022】
(試験例5〜8)
アーモンドクラッシュを各成分と混合する代わりに、すべてのアーモンドクラッシュが上面に露出するように、成型した油脂性菓子生地の上面に振り掛けたこと以外は、試験例1〜4とそれぞれ同じようにして表5に示した各配合率、各焼成条件の焼成菓子を得た。
【0023】
【表5】
【0024】
得られた各焼成菓子および各未焼成の油脂性菓子を20〜30℃、2サイクル/日の頻度で10日間温度サイクルを与えた後、20℃で24時間保存した。その後各焼成菓子および各未焼成の油脂性菓子に含有するナッツの白化状態を観察した。結果を表6に示した。また、各試験区の焼成菓子および各未焼成の油脂性菓子について、官能評価を行った。結果を表7に示した。
【0025】
試験例5および6の配合で7分間焼成した焼成菓子の保存試験においてナッツの白化はみられず良好であった。さらに全体的にパリパリした食感があり好ましい食感であった。一方、試験例7および8の配合で7分間焼成した焼成菓子の保存試験ではナッツの白化が一部見られたものの、焼成によるナッツ白化抑制効果が確認できた。また全体的にパリパリした食感があり好ましいものであった。また、試験例7および8の配合で9分間焼成した焼成菓子の保存試験ではナッツの白化は見られなくなったが、ボリボリとした口に残るような食感で、焦げた苦味があり、好ましくないものであった。
【0026】
【表6】
D ナッツ全体が強く白化していた。
C ナッツ全体が白化していた。
B ナッツの一部に白化が見られた。
A ナッツの白化は見られなかった。
【0027】
【表7】
C 従来のチョコレートの食感であった。
B 表面はサクサクとした食感になっているが、
中心部は従来のチョコレートの食感であった。
A 表面も中心部もパリパリとしており、
好ましい食感と風味を備えていた。
D ボリボリとした、口に残るような食感で、
焦げた苦味があり、好ましくなかった。
【0028】
(試験例9〜11)
イソマルツロースの代わりにマンニトール(商品名:マリンクリスタル、三菱商事フードテック製)またはマルチトール(商品名:マビット、林原商事製)を用い、かつ、アーモンドクラッシュを各成分と混合する代わりに、成型した菓子生地の上に、長径20mm、短径10mm、厚さ1mmのアーモンドスライスを表8に示した配合率となるように設置した以外は、試験例2および4と同様に焼成菓子を得た。
【0029】
【表8】
【0030】
得られた各焼成菓子および各未焼成の油脂性菓子を20〜30℃、2サイクル/日の頻度で10日間温度サイクルを与えた後、20℃で24時間保存した。その後各焼成菓子および各未焼成の油脂性菓子に含有するナッツの白化状態を観察した。結果を表9に示した。また、各試験区の焼成菓子および各未焼成の油脂性菓子について、官能評価を行った。結果を表10に示した。
【0031】
試験例9および10の配合で7分間焼成した焼成菓子の保存試験においてナッツの白化はみられず良好であった。さらに全体的にパリパリした食感があり好ましい食感であった。一方、試験例11の配合で7分間焼成した焼成菓子の保存試験ではナッツの白化が一部見られたものの、焼成によるナッツ白化抑制効果が確認できた。また全体的にパリパリした食感があり好ましいものであった。また、試験例11の配合で9分間焼成した焼成菓子の保存試験ではナッツの白化は見られなくなったが、ボリボリとした口に残るような食感で、焦げた苦味があり、好ましくないものであった。
【0032】
【表9】
D ナッツ全体が強く白化していた。
C ナッツ全体が白化していた。
B ナッツの一部に白化が見られた。
A ナッツの白化は見られなかった。
【0033】
【表10】
C 従来のチョコレートの食感であった。
B 表面はサクサクとした食感になっているが、
中心部は従来のチョコレートの食感であった。
A 表面も中心部もパリパリとしており、
好ましい食感と風味を備えていた。
D ボリボリとした、口に残るような食感で、
焦げた苦味があり、好ましくなかった。