(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908067
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】焼成複合菓子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 3/50 20060101AFI20160412BHJP
A23G 1/00 20060101ALI20160412BHJP
A23G 1/30 20060101ALI20160412BHJP
A21D 13/08 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
A23G3/00 102
A23G1/00
A21D13/08
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-512606(P2014-512606)
(86)(22)【出願日】2013年4月23日
(86)【国際出願番号】JP2013061902
(87)【国際公開番号】WO2013161807
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2014年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-99358(P2012-99358)
(32)【優先日】2012年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】平岡 真季
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐幸
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 洋之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 紗土
【審査官】
星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−177757(JP,A)
【文献】
特開2005−151809(JP,A)
【文献】
特開2004−097096(JP,A)
【文献】
特開平02−150236(JP,A)
【文献】
特開平05−287296(JP,A)
【文献】
特開2010−144158(JP,A)
【文献】
特開2011−074254(JP,A)
【文献】
特開2006−006277(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/161808(WO,A1)
【文献】
MOTWANI, Tanuj et al.,Diffusion, counter-diffusion and lipid phase changes occurring during oil migration in model confect,J. Food Eng.,2011年,Vol. 104,p. 186-195,Fig. 5.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00−9/52
A21D 2/00−17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/FROSTI/CAplus(STN)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性菓子からなるセンター部と、油性原料および澱粉性原料を含むシェル部と、からなる焼成複合菓子の製造方法であって、
前記センター部に油性原料および澱粉性原料を被覆し複合菓子を得る工程と、得られた複合菓子を焼成する工程とからなり、
焼成前のシェル部の水分が10重量%未満であることを特徴とする、焼成複合菓子の製造方法。
【請求項2】
焼成前のシェル部の水分が5重量%以下である、請求項1に記載の焼成複合菓子の製造方法。
【請求項3】
前記センター部に油性原料および澱粉性原料を被覆する工程が、
油性原料を被覆する工程と、その後に澱粉性原料を被覆する工程とからなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の焼成複合菓子の製造方法。
【請求項4】
前記油性原料を被覆する工程が、前記油性原料を含む混合液を被覆する工程であって、前記油性原料を含む混合液全体の油分が80重量%以上であることを特徴とする、請求項3に記載の焼成複合菓子の製造方法。
【請求項5】
焼成前のシェル部の油分が15重量%以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の焼成複合菓子の製造方法。
【請求項6】
前記油性原料を含む混合液が増粘剤を含有することを特徴とする、請求項4又は5に記載の焼成複合菓子の製造方法。
【請求項7】
前記油性原料を含む混合液が乳化剤を含有することを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項に記載の焼成複合菓子の製造方法。
【請求項8】
前記澱粉性原料が小麦粉を含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の焼成複合菓子の製造方法。
【請求項9】
前記センター部を構成する油性菓子中に、30℃でのSFC(固体脂含量)が30%以下であり、20℃でのSFCが70%以下である油脂を、5重量%以上25重量%以下含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の焼成複合菓子の製造方法。
【請求項10】
前記油脂の20℃でのSFCが20%以上であることを特徴とする、請求項9に記載の焼成複合菓子の製造方法。
【請求項11】
前記油脂の20℃でのSFCが40%以上であることを特徴とする、請求項9に記載の焼成複合菓子の製造方法。
【請求項12】
前記センター部を構成する油性菓子中に、5重量%〜30重量%のココアパウダーを含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の焼成複合菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成複合菓子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、クッキー、ビスケット、シュー、プレッツェル、ウエハース等の焼成菓子と、チョコレート、ファットクリーム等の油性菓子とを組み合わせた複合菓子は数多く存在している。このような複合菓子としては、例えば、シューチョコスナック、チョコ入り中空プレッツェル等である。これらは、焼成菓子が中空状になるように配合、焼成条件等を調整している。
【0003】
しかしながら、得られる中空状の焼成菓子の中空部分の容積にはばらつきがある。特に、製造機械を使用して大量生産する場合には、焼成菓子の中空部分の容積のばらつきにかかわらず、決まった量のチョコレートを注入しなければならない。そのため、焼成後、チョコレートをノズル等を用いて溢れさせないように焼成菓子の内部に注入するためには、その注入量を、焼成菓子のなかで一番小さな中空部分の容積以下にしなければならない。すると、得られるチョコレート入り菓子の殆ど全部で、チョコレートと、焼成菓子の間に大きな隙間ができてしまう。このような焼成菓子は、相対的にチョコレートが少なく見えるため、外観上おいしそうに見えなくなってしまう。
【0004】
一方、従来から、ピーナツ等をセンター材とし、寒梅粉等の粉体原料と水飴等の水系原料を被覆して焼成する菓子、いわゆるおのろけ豆と呼ばれる菓子がある。この方法であれば、センター材の表層に水飴および米粉を被覆し焼成生地とするため、センター材との隙間はできない。しかしながら、その焼成後の味および食感にバリエーションは少なく、食感を改良した先行知見も開示されていない。
【0005】
特許文献1には、中心部に油性菓子を有し、周囲に焼菓子を有する焼成複合菓子を得る方法が開示されている。具体的には、予め焼菓子用生地を均一な厚みの円盤形に形成したものを、略半球状の窪みを有する成形用下型に載置し、押下等で成形用下型に沿わせるよう窪ませた後、その窪みに固形状のセンターを載置し、さらにその上に焼菓子用生地を均一な厚みの円盤形に形成したものを載置し、成形用上型を用いて上から押下して、センターを内包した焼菓子用生地を成形し、その焼菓子用生地を型から取り出し、その後焼成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−344028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらこの方法では、予め焼菓子用生地を混練、圧延、型抜きする等の予備工程が多く、ブックモールドを要し、残余の焼菓子用生地を切断除去する必要があるなど、特殊な設備および複雑な工程を必要とする。
【0008】
本発明の課題の一つは、焼成複合菓子を簡便な方法で得られる製造方法を提供することである。また、本発明の別の課題は、焼成菓子が口の中で崩れやすく口溶けの良いクッキーの様な食感の、新規な焼成複合菓子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討の結果、焼成菓子が口の中で崩れやすく口溶けの良い新規な焼成複合菓子を得るに至った。すなわち、
(1)油性菓子からなるセンター部と、油性原料および澱粉性原料を含むシェル部と、からなる焼成複合菓子であって、上記センター部に油性原料および澱粉性原料を被覆し複合菓子を得る工程と、得られた複合菓子を焼成する工程を経て得られることを特徴とする焼成複合菓子。
(2)センター部に油性原料および澱粉性原料を被覆する工程が、油性原料を被覆する工程と、その後に澱粉性原料を被覆する工程とからなることを特徴とする、(1)に記載の焼成複合菓子。
(3)上記油性原料を被覆する工程が、上記油性原料を含む混合液を被覆する工程であって、上記油性原料を含む混合液全体の油分が80%以上であることを特徴とする、(2)に記載の焼成複合菓子。
(4)焼成前のシェル部の水分が、10%以下であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか一つに記載の焼成複合菓子。
(5)焼成前のシェル部の油分が、15%以上であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか一つに記載の焼成複合菓子。
(6)上記油性原料を含む混合液が増粘剤を含有することを特徴とする、(3)〜(5)のいずれか一つに記載の焼成複合菓子。
(7)上記油性原料を含む混合液が乳化剤を含有することを特徴とする、(3)〜(6)のいずれか一つに記載の焼成複合菓子。
(8)上記澱粉性原料が小麦粉を含有することを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか一つに記載の焼成複合菓子。
(9)上記センター部を構成する油性菓子中に、30℃でのSFC(固体脂含量)が30%以下であり、20℃でのSFCが70%以下である油脂を、5重量%以上25重量%以下含むことを特徴とする、(1)〜(8)のいずれか一つに記載の焼成複合菓子。
(10)上記油脂の20℃でのSFCが20%以上であることを特徴とする、(9)に記載の焼成複合菓子。
(11)上記センター部を構成する油性菓子中に、5重量%〜30重量%のココアパウダーを含むことを特徴とする、(1)〜(10)のいずれか一つに記載の焼成複合菓子。
(12)上記油脂の20℃でのSFCが40%以上であることを特徴とする、(9)に記載の焼成複合菓子。
(13)上記センター部を構成する油性菓子中に、5重量%〜30重量%のココアパウダーを含むことを特徴とする、(12)に記載の焼成複合菓子。
(14)油性菓子からなるセンター部と、油性原料および澱粉性原料を含むシェル部と、からなる焼成複合菓子の製造方法であって、上記センター部に油性原料および澱粉性原料を被覆し複合菓子を得る工程と、得られた複合菓子を焼成する工程とからなることを特徴とする、焼成複合菓子の製造方法。
(15)上記センター部に油性原料および澱粉性原料を被覆する工程が、油性原料を被覆する工程と、その後に澱粉性原料を被覆する工程とからなることを特徴とする、(14)に記載の焼成複合菓子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、シェル部の焼成菓子が口の中で崩れやすく口溶けの良いクッキーの様な食感の、新規な焼成複合菓子を提供することができる。また、このような焼成複合菓子を簡便な方法で得られる製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態を以下詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本実施形態における焼成複合菓子は、焼成複合菓子の中心部に位置するセンター部と、そのセンター部の周囲の一部または全部を被覆するように位置するシェル部とからなる。本明細書において、SFC(固体脂含量)とは所定の温度における油脂中の固体脂の比率を百分率で表したものである。本実施形態においてセンター部に用いる油性菓子は、ホワイトチョコレート、ミルクチョコレート、スイートチョコレート等、いずれのチョコレートでもよく、日本国公正取引委員会認定のルールである「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」に定めるチョコレートおよび準チョコレートに限らず、それらに該当しないテンパータイプ、ノンテンパータイプのファットクリーム等、あらゆる種類の油性菓子を用いることができる。
【0013】
油性菓子中には、30℃でのSFCが30%以下であり、かつ20℃でのSFCが70%以下、さらに好ましくは20℃でのSFCが60%以下である油脂を、油性菓子全量に対して5重量%以上25重量%以下含むことが好ましい。センター部にチョコレートを用いる場合には特に、この油脂を所定量配合することにより、センター部の口溶けが向上する。これにより、シェル部の口の中で崩れやすい食感および口溶けの良さと、センター部の口溶けの良さとが一体化するため、焼成複合菓子の品質が著しく向上し好ましい。この油脂の20℃でのSFCが20%以上であることがさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。SFCは、パルスNMRを用いて測定することができる。
【0014】
さらに、油性菓子中には、油性菓子全量に対して5重量%〜30重量%のココアパウダーを含むことが好ましい。これにより、焼成複合菓子の保存中に、センター部のチョコレート(以下、「センターチョコレート」ともいう。)からシェル部の焼成菓子へ油脂が移行するのを抑制できる。本実施形態で使用するココアパウダーには特に制限はなく、通常のココアパウダーでもよいし、アルカリ化していないココアパウダーでもよい。
【0015】
本実施形態で使用するココアパウダーの油分は、1重量%以上25%重量以下が好ましい。油性菓子中に上記油脂を含み、口溶けが向上したセンターチョコレートを使用した焼成複合菓子は、特に保存中のセンターチョコレートから焼成菓子への油脂移行が著しい。その結果、センターチョコレート中の油分が極度に低下し、期待するチョコレートの口溶けが得られなくなる。これを抑制するため、上記油脂を含む油性菓子中には、5重量%〜30重量%のココアパウダーを含むことが好ましい。
【0016】
油性菓子中には、乳化剤を油性菓子全量に対して1.0重量%以上4.0重量%以下含むことが好ましい。これにより、焼成複合菓子を長期保存したときに、センター部の油性菓子にブルームによる白化が発生するのを抑制できる。乳化剤としては、例えば、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。本実施形態においては、乳化剤としてレシチンを用いることが好ましい。
【0017】
本実施形態において、シェル部に用いる油性原料とは例えば、ショートニング、バター、マーガリン、ラード、菜種油、大豆油、コーン油、オリーブオイル、パーム油、落花生油、米油、綿実油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ヤシ油、パーム核油、ゴマ油、粉末油、ココアバター、ココアバター代用脂等が挙げられる。上記原料を1種で用いてもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0018】
本実施形態においてシェル部に用いる油性原料を含む混合液とは、加熱等により融解した上記油性原料の1種または2種以上を混合したものである。さらに、この混合液には必要であれば、ナッツペースト、乳化剤、増粘剤、膨化剤、香料、色素等を配合してもよい。粉末油脂は、固形の状態で混合してもよい。
【0019】
混合液全体の油分とは、センター部に油性原料を被覆するために調製した混合液全体に対する油脂の重量比率を百分率で表したものである。この混合液全体の油分は、80重量%以上100重量%以下であることが好ましい。
【0020】
混合液全体の水分とは、センター部に油性原料を被覆するために調製した混合液全体に対する水の重量比率を百分率で表したものである。この混合液全体の水分は、15重量%以下であることが好ましい。水分が15重量%以下であると、複合菓子を焼成したときに、シェル部が破裂する可能性を抑えることができるため、好ましい。さらに、水分が15重量%以下であると、上記センター部に油性原料および澱粉性原料を被覆し、得られた複合菓子を焼成する工程を経て得られる焼成複合菓子のシェル部が、ガリガリとした食感ではなく、口の中で崩れるようなより良好な食感になり、好ましい。
【0021】
本実施形態において、油性原料を含む混合液に、増粘剤および/または乳化剤を含有することが好ましい。本実施形態において、油性原料を含む混合液に、増粘剤および乳化剤の両方を含有することがさらに好ましい。油性原料を含む混合液に増粘剤および/または乳化剤を含有していると、センター部に油性原料を被覆する工程で、1回の工程でより多くの混合液をセンター部表面に付着させることができ、それにより1回の工程でより多くの澱粉性原料をセンター部表面に付着させることができる。そのため、センター部に油性原料および澱粉性原料を被覆する工程を短縮することができる。よって、油性原料を含む混合液への増粘剤の添加は、生産性の向上に寄与する。
【0022】
油性原料を含む混合液に添加する増粘剤としては、液体に粘性をもたせる物質であれば、特に限定はなく、例えば、アラビアガム、アルギン酸、カゼイン、カラギーナン、ガラクトマンナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、寒天、キサンタンガム、グアーガム、グルコマンナン、ジェランガム、ゼラチン、セルロース、大豆多糖類、タマリンドガム、タラガム、プルラン、プロピレングリコール、ペクチン、メチルセルロース、ローカストビーンガム等が挙げられる。本実施形態においては、これら増粘剤の1種又は2種以上を混合して使用してもよい。本実施形態においてはその増粘剤として、アラビアガムを使用することが好ましい。
【0023】
油性原料を含む混合液に添加する乳化剤としては、例えば、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。これら乳化剤を1種のみ添加してもよいし、任意の2種以上の乳化剤を添加してもよい。本実施形態においては、HLBが3以下のショ糖脂肪酸エステルを使用することが好ましい。
【0024】
本実施形態において、シェル部に用いる澱粉性原料とは例えば、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、ワキシーコーンスターチ等澱粉類、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、燕麦粉、オーツ麦粉、とうもろこし粉、米粉、大豆粉等の穀物類、マッシュポテト等が挙げられる。またα化物、アセチル化誘導体、リン酸架橋誘導体等の加工澱粉を使用してもよい。これらの澱粉性原料とともに、糖質原料、蛋白原料、油脂原料、農水産物、アミノ酸、乳化剤、膨張剤、食塩、香辛料、調味料、ビタミン、ミネラル、セルロース等を使用してもよい。また、本発明の効果を奏する範囲において、上記澱粉性原料とともに、コーンフレーク、ライスパフ、上記澱粉性原料からなるパフ、焼成菓子、乾燥果実等の、粗い粒子状の食品を使用してもよい。また、シェル部には、澱粉性原料とともに、結晶セルロースを使用することが好ましい。これにより、後述の製造工程で得られる複合菓子を焼成するとき、また、焼成複合菓子の保存中に、シェル部の油分が菓子の外へ移行することをより抑制できる。
【0025】
以下に本実施形態の焼成複合菓子の製造について一例を説明する。まず、カカオマス、砂糖、ココアバター、レシチン、全粉乳等を使用し、定法により、原料混合、レファイニング、コンチング工程等を経てチョコレート生地を得る。もし必要ならば、得られたチョコレート生地に、油脂、副原料等を後から追加してもよい。
【0026】
次に得られたチョコレート生地を、所定の形状に成形および冷却固化し、所定の形状のチョコレートを得る。必要であれば、成形する前にテンパリングを行ってもよい。テンパリングは、ハンドテンパリングでもよいし、シード剤を添加する方法を採ってもよい。チョコレートを所定の形状に成形する方法は、どんな方法でもよい。例えば、チョコレート生地をモールドに注入して冷却固化してもよい。または、デポジッター等を用いて平板の上に所定の形状に成形して冷却固化してもよい。ミキサーを用いてチョコレート生地を含気させ、含気チョコレート生地を上記方法等で成形してもよい。このようにして得られたチョコレートを、センターチョコレートとする。
【0027】
次に、センターチョコレートに、油性原料および澱粉性原料を被覆する。センターチョコレートに油性原料および澱粉性原料を被覆する方法は、回転釜を用いる方法が好ましい。センターチョコレートに油性原料および澱粉性原料を被覆する順序は、最初に、油性原料をセンターチョコレートに被覆し、その後、澱粉性原料をセンターチョコレートに被覆することが好ましい。上記被覆工程は、必要であれば、繰り返してもよい。また、被覆工程に支障をきたさない限り、油性原料および澱粉性原料を予め混合した混合物をセンターチョコレートに被覆してもよい。その場合、油性原料および澱粉性原料の混合物をセンターチョコレートに被覆した後、澱粉性原料を被覆することが好ましい。これにより、次工程でさらに油性原料および澱粉性原料の混合物をセンターチョコレートに被覆する作業性が向上する。
【0028】
具体的な製造方法を以下に説明する。まず、回転釜にセンターチョコレートを投入する。回転釜を回転させながら、必要であれば加熱して融解した、液状の、油性原料を含む混合液を回転釜に投入し、センターチョコレートの周囲を混合液でコーティングする。この時、センターチョコレート表面全体が混合液でウェットな状態になる程度まで混合液を投入することが好ましい。
【0029】
次に、回転釜に澱粉性原料を投入する。センターチョコレート表面を覆っている油性原料を含む混合液と澱粉性原料とがセンターチョコレート表面で混合し、バッターまたはドウ状になる。これにより、バッターまたはドウがセンターチョコレート表面を薄膜状に被覆している複合菓子を得る。上記油性原料を含む混合液の投入工程と、澱粉性原料の投入工程を繰り返すことにより、好みの量のバッターまたはドウをセンターチョコレート表面に被覆することができる。油性原料を含む混合液と澱粉性原料の重量比率は特に制限はない。
【0030】
シェル部全体の油分は15重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがさらに好ましい。焼成前のシェル部全体の油分が15重量%以上であると、上記センター部に油性原料および澱粉性原料を被覆し、得られた複合菓子を焼成する工程を経て得られる焼成複合菓子のシェル部分が、ガリガリとした食感ではなく、口の中で崩れるようなより良好な食感になり、好ましい。
【0031】
焼成前のシェル部全体の水分は、10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましい。焼成前のシェル部全体の水分が10重量%以下であると、上記センター部に油性原料および澱粉性原料を被覆し、得られた複合菓子を焼成する工程を経て得られる焼成複合菓子のシェル部が、ガリガリとした食感ではなく、口の中で崩れるようなより良好な食感になり、好ましい。
【0032】
センターチョコレートとバッターまたはドウとの比率には制限はないが、複合菓子全体に対するバッターまたはドウの重量比率は、20重量%以上70重量%以下が好ましい。20重量%以上であると、得られた複合菓子を焼成し、得られた焼成複合菓子の表面の焼き菓子部分の強度が向上し、割れにくくなる。70重量%以下であると、得られた複合菓子を焼成して得られる焼成複合菓子は、センターチョコレートの風味が焼き菓子の風味に隠れることなく、より好ましい品質となる。
【0033】
次に、得られた複合菓子をオーブン等で焼成する。複合菓子を、160℃以上300℃以下で焼成することが好ましい。複合菓子を焼成する時の温度が160℃以上であると、澱粉性原料全体を焼成する時間が短時間で済む。よって、センター材である油性菓子が過度に加熱されることによって熱変性して固化することがなく、口溶けがより良好になる。複合菓子を焼成するときの温度が300℃以下であると、澱粉性原料全体を十分焼成でき、かつ複合菓子表面が焦げることを防止できる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
(製造例1)
全粉乳27重量部、脱脂粉乳3重量部、砂糖33重量部、乳糖5重量部、ココアバター28重量部、レシチン0.8重量部および香料0.1重量部を、定法により混合、粉砕およびコンチングし、油分38重量%のチョコレートベース生地を得た。得られたチョコレートベース生地64重量部、30℃でのSFCが18%、20℃でのSFCが50%、10℃でのSFCが55%であるテンパー型ココアバター代用脂(CBE)15重量部、ココアパウダー15重量部(油分12重量%)、デキストリン(商品名:TK−16、松谷化学工業製)4重量部およびココアバター2重量部を混合した後、定法によりテンパリングし、球状に成形および冷却固化し、油分42.0重量%の球状チョコレートを得た。得られた球状チョコレート1個あたりの重量は3.5gであった。
【0036】
(製造例2)
全粉乳15重量部、クリームパウダー7.5重量部、小麦粉31重量部、砂糖22重量部、アーモンドパウダー18重量部および結晶セルロース6.5重量部を混合し、被覆用粉体混合物を得た。得られた粉体混合物の油分は18重量%、水分は1重量%であった。
【0037】
(製造例3)
加熱融解したバター48重量部、植物油脂47重量部、アラビアガム0.5重量部、HLBが2のショ糖脂肪酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステルER―290、三菱化学フーズ製)0.5重量部、アーモンドペースト2重量部および炭酸アンモニウム2重量部を混合し、油性液体混合物を得た。得られた油性液体混合物の油分は88重量%、水分は6.4重量%であった。
【0038】
(実施例1)
直径900mmの回転釜に、上記球形チョコレートを30kg投入し、温度20℃、回転数12rpmにて回転釜を回転させた。上記油性液体混合物500gを徐々に回転釜に投入したところ、球状チョコレート表面が油性液体混合物で被覆された。次に、上記粉体混合物1.5kgを徐々に回転釜に投入したところ、粉体混合物が球状チョコレート表面の油性液体混合物に付着し、球状チョコレートを被覆した。同様に、油性液体混合物500gと粉体混合物1.5kgを交互に投入し、球状チョコレートへの被覆を各14回、合計各15回繰り返し、球状チョコレートが粉体混合物と油性液体混合物の混合物で被覆された球状複合菓子を得た。この時の球状複合菓子1個あたりの重量は6.9gであった。粉体混合物と油性液体混合物の混合物からなるシェル部全体の水分は2.2重量%、油分は37.2重量%であった。
【0039】
得られた球状複合菓子を回転釜から取り出してインピンジメントオーブンで250℃で1分、次いで235℃で1分焼成し、焼成複合菓子を得た。得られた焼成複合菓子を食したところ、シェル部は口の中で崩れやすく、口溶けの良いクッキーの様な食感を有し、センター部のチョコレートは良好な口溶けであり、良好な品質であった。焼成複合菓子を切断し、断面を確認したところ、シェル部とセンター部チョコレートとの間に空隙はなく、良好な状態であった。焼成複合菓子のセンター部チョコレートの油分は41.8重量%であった。
【0040】
(試験例1)
上記実施例1の他、球状チョコレートの配合をそれぞれ表1中の各配合とした以外は実施例1と同じ方法で、実施例2〜5の焼成複合菓子を得た。表1中の配合割合の単位は重量部である。油分の単位は重量%である。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例2、3、4および5の焼成複合菓子では、いずれもシェル部は口の中で崩れやすい、口溶けの良いクッキーの様な食感を有し、センター部のチョコレートは良好な口溶けであり、良好な品質であった。得られた焼成複合菓子の、焼成直後のセンターチョコレート油分量を測定した。また、焼成複合菓子を37℃の条件下で10日間保存し、そのセンターチョコレートの油分量を測定した。その結果を表2に示した。単位は重量%である。
【0043】
【表2】
【0044】
センターチョコレートにココアパウダーを7.5重量%または15重量%有する焼成複合菓子は、センターチョコレートにココアパウダーを有しない焼成複合菓子より、焼成時のセンターチョコレートの油分の減少を抑制することができた。また、センターチョコレートにココアパウダーを7.5重量%または15重量%有する焼成複合菓子は、センターチョコレートにココアパウダーを有しない焼成複合菓子より、37℃の条件下で10日間保存したときのセンターチョコレートの油分の減少を抑制することができた。
【0045】
(試験例2)
得られた焼成複合菓子を、20〜30℃、2サイクル/日の頻度で10日間温度サイクルを与えた後、20℃で24時間保存した。その後各焼成複合菓子をその中心部を通るように切断し、センターチョコレートの切断面の、ブルームによる白化状態を観察し、評価の良い順に、A、B、Cとした。結果を表3に示した。
【0046】
【表3】
【0047】
センターチョコに含まれるレシチン量が多いほど、保存中のチョコレートの白化をより抑制することが分かった。実施例4のセンターチョコレートには、チョコレートベース生地中の分も含め1.5重量%のレシチンが含まれている。実施例4の焼成複合菓子は、保存中のチョコレートの白化がある程度抑制された。特に、実施例5では、チョコレートベース生地中の分を含めセンターチョコレートにはレシチンが3.0重量%含まれており、保存中のチョコレートの白化を防ぐことができた。
【0048】
(製造例4)
デキストリン20重量部、小麦粉50重量部、コーンスターチ7重量部、粉糖7重量部および粉末油脂16重量部を混合し、被覆用粉体混合物を得た。得られた粉体混合物の油分は16重量%、水分は7重量%であった。
【0049】
(製造例5)
加熱融解したバター49.5重量部、水分30重量%のソルビトール溶液50重量部およびレシチン0.5重量部を混合し、油性液体混合物を得た。得られた油性液体混合物の油分は41重量%、水分は23重量%であった。
【0050】
(実施例6)
直径900mmの回転釜に、製造例1の球形チョコレートを30kg投入し、温度20℃、回転数12rpmにて回転釜を回転させた。製造例5で得た油性液体混合物500gを徐々に回転釜に投入したところ、球状チョコレート表面が油性液体混合物で被覆された。次に、製造例4で得た粉体混合物1.5kgを徐々に回転釜に投入したところ、粉体混合物が球状チョコレート表面の油性液体混合物に付着し、球状チョコレートを被覆した。同様に、油性液体混合物500gと粉体混合物1.5kgを交互に投入し、球状チョコレートへの被覆を各14回、合計各15回繰り返し、球状チョコレートが粉体混合物と油性液体混合物の混合物で被覆された球状複合菓子を得た。この時の球状複合菓子1個あたりの重量は6.9gであった。粉体混合物と油性液体混合物の混合物からなるシェル部全体の水分は8.6重量%、油分は18.6重量%であった。
【0051】
得られた球状複合菓子を回転釜から取り出してインピンジメントオーブンで250℃で1分、次いで235℃で1分焼成し、焼成複合菓子を得た。得られた焼成複合菓子を食したところ、実施例1で得られた焼成複合菓子には劣るが、シェル部は口の中で崩れやすく、やや口溶けの良いクッキーの様な食感を有し、センター部のチョコレートは良好な口溶けであり、やや良好な品質であった。焼成複合菓子を切断し、断面を確認したところ、シェル部とセンター部チョコレートとの間に空隙はなく、良好な状態であった。焼成複合菓子のセンター部チョコレートの油分は41.8重量%であった。
【0052】
(比較製造例1)
小麦粉50重量部、馬鈴薯澱粉15重量部、ピーナツ粉末5重量部、粉末油脂30重量部および炭酸水素ナトリウム1重量部を混合し、被覆用粉体混合物を得た。得られた粉体混合物の油分は31重量%、水分は7重量%であった。
【0053】
(比較製造例2)
砂糖70重量部および鶏卵30重量部を混合し、液状混合物を得た。得られた液状混合物の油分は3重量%、水分は22.8重量%であった。
【0054】
(比較例1)
直径900mmの回転釜に、製造例1の球形チョコレートを30kg投入し、温度20℃、回転数12rpmにて回転釜を回転させた。比較製造例2で得た液状混合物500gを徐々に回転釜に投入したところ、球状チョコレート表面が液状混合物で被覆された。次に、比較製造例1で得た粉体混合物1.5kgを徐々に回転釜に投入したところ、球状チョコレート表面の液状混合物に付着し、球状チョコレートを被覆した。同様に、液状混合物500gと粉体混合物1.5kgを交互に投入し、球状チョコレートへの被覆を各14回、合計15回繰り返し、球状チョコレートが粉体混合物と液状混合物の混合物で被覆された球状複合菓子を得た。この時の球状複合菓子1個あたりの重量は6.9gであった。粉体混合物と油性液体混合物の混合物からなるシェル部全体の水分は12.2重量%、油分は21.7重量%であった。
【0055】
得られた球状複合菓子を回転釜から取り出してインピンジメントオーブンで250℃で1分、次いで235℃で1分焼成し、比較例1の焼成複合菓子を得た。得られた焼成複合菓子を食したところ、焼成菓子からなるシェル部は固く、口溶けは実施例で得られた焼成複合菓子より劣るものであった。