特許第5908897号(P5908897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5908897ポリラクチド(PLA)と熱可塑性ポリウレタン(TPU)のブレンドの製造プロセス
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  • 特許5908897-ポリラクチド(PLA)と熱可塑性ポリウレタン(TPU)のブレンドの製造プロセス 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908897
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】ポリラクチド(PLA)と熱可塑性ポリウレタン(TPU)のブレンドの製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20160412BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   C08G18/10
   C08G18/42 Z
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-514683(P2013-514683)
(86)(22)【出願日】2011年6月14日
(65)【公表番号】特表2013-532209(P2013-532209A)
(43)【公表日】2013年8月15日
(86)【国際出願番号】EP2011059811
(87)【国際公開番号】WO2011157691
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2014年6月12日
(31)【優先権主張番号】10166000.9
(32)【優先日】2010年6月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ヒルマー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ブリュニング,カイ
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ,ハンス−ゲールハルト
(72)【発明者】
【氏名】ツガフェルデア,アリナ コリナ
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−232229(JP,A)
【文献】 特開平10−237164(JP,A)
【文献】 特表2005−534734(JP,A)
【文献】 特開平05−125137(JP,A)
【文献】 特開2010−209361(JP,A)
【文献】 特開2005−325220(JP,A)
【文献】 特開2002−037995(JP,A)
【文献】 特開2000−086802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00− 18/87
C08L 1/00−101/14
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)溶融状態で、少なくとも一種の熱可塑性ポリウレタンを、少なくとも一種のジイソシアネートまたは少なくとも2個のイソシアネート基をもつ一種のイソシアネートプレポリマーまたはそれらの混合物と反応させて熱可塑性ポリウレタンのモル質量を低下させ、過剰のイソシアネート末端基をもつ熱可塑性ポリウレタンを形成する工程、
B)工程A)の生成物の溶融物中に少なくとも一種のポリラクチドを投入し、190℃未満の温度で工程A)の生成物とポリラクチドとを反応させる工程、
C)得られたブレンドを冷却する工程、
を介してポリラクチド(PLA)と熱可塑性ポリウレタン(TPU)のブレンドの製造プロセスであって、
工程A)〜C)でポリオールを使用しない製造プロセス。
【請求項2】
工程B)の混合物中の上記ポリラクチドの比率が50〜97重量%である請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程A)において、ジイソシアネートまたは少なくとも2個のイソシアネート基をもつイソシアネートプレポリマーまたはそれらの混合物の投入量が工程A)の生成物に対して1〜25重量%である請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
工程A)の生成物中のイソシアネート基の比率が0.1〜5重量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
工程A)の生成物中のイソシアネート基の比率が0.3〜3重量%である請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
上記の反応が、押出機中で反応性押出成形プロセスの形で連続的に行われ、上記熱可塑性ポリウレタン及び上記ジイソシアネートまたは少なくとも2個のイソシアネート基をもつイソシアネートプレポリマーまたはそれらの混合物が押出機の入口で添加され、上記ポリラクチドが下流で添加される請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセスにより製造可能な、ポリラクチド(PLA)と熱可塑性ポリウレタン(TPU)のブレンドであって、
前記少なくとも一種の熱可塑性ポリウレタンが、ポリエーテルポリオールに基づくポリウレタンである、ブレンド
【請求項8】
請求項7に記載のブレンドをシート状物または成形物を製造するために使用する方法。
【請求項9】
請求項7に記載のブレンドから作られたシート状物または成形物。
【請求項10】
請求項7に記載のブレンド及び繊維を含む繊維強化配合材料。
【請求項11】
請求項10に記載の配合材料から作られたシート状物、成形物または半製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリラクチドと熱可塑性ポリウレタンのブレンドの製造プロセスと、このようにして得られたブレンド、これらのブレンドから製造されるシート状物と成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸またはポリラクチド(PLA)は、再生可能な原料から得られる、したがってポリマー材料の持続可能な製造に対する必要性に合致する熱可塑性樹脂である。PLA材料は、乳酸の重縮合反応により、あるいはラクチド(乳酸の二量体)の開環重合反応により得られる。後者の合成経路の場合、出発原料は、ラクチドの立体異性体であるL−ラクチドであるか、L−とD−ラクチドの混合物である。L−ラクチドから合成されるポリ−L−ラクチド(PLLA)は弾性率Eが約4000MPaの非常に硬くて脆い材料である。しかし多くの用途には、より大きな柔軟性と延性が望ましい。原料製造業者は、L−/D−ラクチド混合物(例えば、92:8%)をPLDAラクチドの重合の出発原料として使用してこの要望に答えようとしているが、D−ラクチドの比率が増加すると、結晶子融点と結晶化率が劇的に低下する。この結果、商品の性能が大きく低下する。
【0003】
ポリウレタン、特に熱可塑性ポリウレタンは古くから知られており、極めていろいろな用途で使用されている。例えば、ポリウレタンは、靴産業や自動車産業で、フィルムの製造に、ケーブルの被覆に、またレジャー製品に使用されており、またブレンドの一成分としていろいろな用途に使用されている。
【0004】
ポリラクチドとポリウレタンを混合してブレンドを得ることができることはすでに知られている。
【0005】
EP−A1679349は、ポリラクチドに加えてポリエーテルジオールをアルコール成分として含む特定のポリウレタンからなるポリマー組成物に関する。例えば、末端水酸基を持つポリ(エチルビニルエーテル)が含まれている。この製造プロセスでは、これらの特定のポリ(エチルビニルエーテル)が、例えば押出機中で、ポリラクチドと、またジイソシアネートと反応させられる。このようにして得られるフィルムのいくつかは無色透明である。
【0006】
JP−A−2008308599は、ポリラクチドからなるポリマー粉末に関する。これらを製造するには、ポリラクチドポリマーとポリマーポリオールを混合し、次いでジイソシアネートと反応させる。使用可能なポリマーポリオールの例は、ポリエーテルジオールやポリエステルジオール、ポリシロキサングリコール、ポリブタジエングリコールである。
【0007】
WO2009/022076は、成形プロセスを実施した後で架橋可能な熱可塑材料に関する。例えば、ポリエステルを、ポリオールとジイソシアネートと共に押出機中に同時に投入できる。ポリラクチドは、使用可能とされる極性熱可塑性ポリマーの一つである。
【0008】
得られる系の一連の性質が、あらゆる用途に適当であるとはいえない。特にポリラクチドは脆く融点が低いため、理想的とはいえない性能特性を示すこととなる。したがって、ポリマープロセスは、ブレンドの機械的性質が、特に弾性率と伸展性が、それぞれの用途に向けて適性かつ正確に調整できることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP−A1679349
【特許文献2】JP−A−2008308599
【特許文献3】WO2009/022076
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、より大きな靭性とより小さな脆性を示し、さらに大きな破断引張歪と適度な強度をもつ、ポリラクチド(PLA)と熱可塑性ポリウレタン(TPU)のブレンドを提供することである。これらのブレンドは、特にシート状物(薄いフィルム、シート等)、成形物、押し出し半製品(パイプ、異形材等)の製造に適すように考えられている。
【0011】
特に、上流にある配合プロセスまたは統合配合プロセス(即ち一段プロセス)で、PLAの実際の性質になんら悪影響を与えることなく、各最終製品へのPLA製剤の弾性率を正確かつ適切に調整可能なプラスチックプロセスを与える方法を見出したい。この配合の調整を柔軟剤の添加により行いたい。ここでの主たる目的は、二つの高分子状熱可塑性成分(即ち、PLAと柔軟剤)の効率的な相溶化方法を見出すこと、あるいはいずれの外的ストレスにあるいはいずれの媒体の作用に曝された場合でもブレンド成分の剥離をさせず、ブレンド加工中の相分離またはストレスのかかった成分の相分離を防止できる相溶化のコンセプトを見出すことである。
【0012】
単独のPLAまたはポリ−L−ラクチド(PLLA)と比較して、PLAと柔軟剤とからなるこれらのブレンドは、靭性が改善され、脆性が低下し、また破断引張歪が増加していることが望ましい。
【0013】
これらはまた、ノッチ付衝撃抵抗度と貫入抵抗度が増加し、さらには変形性に優れ、短いサイクル時間を持つことが望ましい。
【0014】
これらは、通常のプラスチック加工方法で、例えば押出成形や射出成形、ブロー成形、圧縮成形、回転焼成、熱成形で半製品や製品を与えることができることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、
A)溶融状態で、少なくとも一種の熱可塑性ポリウレタンを、少なくとも一種のジイソシアネートまたは少なくとも2個のイソシアネート基をもつ一種のイソシアネートプレポリマーまたはそれらの混合物と反応させて熱可塑性ポリウレタンのモル質量を低下させ、過剰のイソシアネート末端基をもつ熱可塑性ポリウレタンを形成する工程、
B)工程A)の生成物の溶融物中に少なくとも一種のポリラクチドを投入し、190℃未満、より好ましくは185℃未満、特に好ましくは180℃未満の温度で工程A)の生成物とポリラクチドとを反応させる工程、
C)得られたブレンドを冷却する工程、
を介してポリラクチド(PLA)と熱可塑性ポリウレタン(TPU)のブレンドの製造プロセスであって、工程A)〜C)でポリオールを使用しない製造プロセスにより上記目的を達成する。
【0016】
本目的はまた、このポリラクチド(PLA)と熱可塑性ポリウレタン(TPU)のブレンドに、強化材(極めていろいろな繊維及び/又は針状または板状材料(例えばウラストナイト、マイカ、タルク等))を配合して達成される。本発明のPLA/TPUブレンドは二相材料であり、その中ではPLAが連続相となり、TPUが分散相となっている。
【0017】
本目的はまた、上記ブレンドの、シート状物、押し出し半製品または成形物の製造への利用により達成される。本発明はまた、このブレンドの、より好ましくは強化材が配合されたブレンドのフィルムまたは成形物を提供し、またこれらから製造される成形物や半製品を提供する。
【0018】
驚くべきことに、熱可塑性ポリウレタンをまず、ジイソシアネート、または少なくとも2個のイソシアネート基をもつプレポリマー、またはそれらの混合物と溶融状態で反応させて熱可塑性ポリウレタンのモル質量を低下させると、改善された性能特性をもつ熱可塑性ポリウレタンとポリラクチドからなるブレンドを製造可能であることが明らかとなった。このようにして得られる比較的短分子鎖の熱可塑性ポリウレタンは、過剰のイソシアネート末端基を持ち、次いでポリラクチドが投入され溶融されるとこれに反応可能であり、その際、イソシアネート末端基との管に共有結合が形成される。この結果、二つのポリマー相が良好に相溶化され、優れた形態的安定性が得られる。全体の系の組成と加工方法により、制御された状態で一連の性質が各用途に適すように調整される。非ブレンドのポリラクチドと較べると、本発明で製造されるブレンドは、脆性が小さい。靭性と破断伸度、衝撃抵抗度はかなり増加している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】二軸押出機中でのある好ましい配合プロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本目的は特に、用いる柔軟剤に、反応性配合プロセス中でPLAまたはPLLAに共有的に結合する熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含ませることで達成される。上述のように、これにより、PLAが連続相となりTPUが不連続または分散相となっている二相材料が得られる。この種の形態は、二成分が相互に混合される際のPLA:TPU質量比が好ましくは97:3〜50:50重量%である場合に得られる。この反応性配合プロセスは、二軸押出機またはBUSS共押出機中で、あるいは類似のプラスチック配合装置中で行うことが好ましい。
【0021】
図1は、二軸押出機(IV)中での、好ましくはWerner & Pfleiderer社製のコペリオンZSK25(L/D=42)中でのある好ましい配合プロセスを示す。TPU(I)を固体及び/又は液体添加物(II)と共に押出機(IV)に投入する。ある好ましい実施様態においては、この押出機(IV)が、いろいろな温度領域1〜10を持ち、それぞれ以下の温度に設定されている:1:180℃、2:200℃、3:200℃、4:200℃、5:200℃、6:180℃、7:180℃、8:180℃、9:180℃、10:180℃。押出機の温度が190℃未満となるように押出機中にPLA粉砕再生物(III)を投入することが好ましい。TPUとPLAからなるこの配合材料(V)を空気冷却器(VI)で冷却し、その後、ペレタイザ(VII)で熱可塑性ペレットに粉砕する。配合領域は、両矢印(VIII)で示される領域であり、冷却は両矢印線(IX)で示される領域で、粉砕は両矢印線(X)で示される領域で進行する。
【0022】
本発明のPLA/TPUブレンドの製造プロセスは、三工程(工程AとBとC)からなることに特徴がある。
【0023】
工程A)本プロセスの第一の工程は、溶融状態で、少なくとも一種の熱可塑性ポリウレタンを、少なくとも一種のジイソシアネートまたは一種の少なくとも2個のイソシアネート基をもつイソシアネートプレポリマー、またはそれらの混合物と反応させて熱可塑性ポリウレタンのモル質量を低下させ、過剰のイソシアネート末端基をもつ熱可塑性ポリウレタンを形成する工程である。
【0024】
ある特に好適なプレポリマー製剤は、NCO末端のポリエステルと二官能性イソシアネート(例えば、MDI)を含むことができる。
【0025】
工程B)本プロセスの第二の工程は、工程A)の生成物の溶融物中に少なくとも一種のポリラクチドを投入し、190℃未満の温度で、より好ましくは185℃未満、特に好ましくは180℃未満の温度で、工程A)の生成物とこのポリラクチドとを反応させる工程である。
【0026】
二つのポリマー成分の相溶化は、OH末端基を持つポリラクチド単位へのプロセスの工程A中で形成される鎖フラグメントの結合で進行する。
【0027】
工程C)本プロセスの第三の工程は、このPLA/TPUブレンドの成形と冷却または粉砕である。
【0028】
140℃を越える温度で溶融状態で、熱可塑性ポリウレタンをまずジイソシアネート、少なくとも2個のイソシアネート基をもつプレポリマー、あるいはこれらの混合物と反応させてこの熱可塑性ポリウレタンのモル質量を低下させると、最終製品に適した性質を持つポリマーポリラクチドと熱可塑性ポリウレタンのブレンドを製造することができることが明らかとなった。PLAを投入して、得られる比較的短分子鎖で過剰のイソシアネート末端基をもつ熱可塑性ポリウレタンをポリラクチドのOH末端基と反応させる。その際、NCO基との間に共有結合が形成される。したがって、製造されるポリマーブレンド中には、共有結合したポリラクチド鎖とポリウレタン鎖が存在している。
【0029】
本発明のブレンドは、組成と加工プロセスによりいろいろと性質の調節がかのうであり、したがって、薄いフィルム、例えば包装用品やごみ袋用品の製造に特に好適である。
【0030】
これらのブレンドから成形物を、例えば工業部品や家庭用品、玩具を製造することもできる。これらもまた好ましい実施様態である。
【0031】
本目的はまた、上述の二相材料の押出半製品や射出成形品、圧縮成形品、回転成形品の製造への利用により達成される。好ましい実施様態においては、本配合プロセスで、いずれかの種類の繊維が使用される。これにより、さらにいろいろな性質をもたらすことができる。繊維強化ブレンドを(一段プロセスで)直接成形すると、材料に熱劣化を引き起こしうる他の加工工程の必要がなくなる。好ましいガラス繊維は、ガラス繊維と天然繊維(亜麻、麻、綿、サイザル麻、竹、ケナフ、セルロース繊維等)である。この配合材料の比率は、好ましくは1重量%より多く、特に好ましくは5重量%〜30重量%である。
【0032】
用いる熱可塑性ポリウレタンの化学構造を調整して、この材料の性能とその性能特性をさらに変化させることができる。例えば再生可能な原料から、好ましくはセバシン酸とポリオールから熱可塑性ポリウレタンを製造することができる。
【0033】
芳香族基を含まない熱可塑性ポリウレタンを使用できる。これら二つの変更例を組み合わせて、TPU原料のポリオールを非芳香族とし再生可能な原料由来のものとすることができる。
【0034】
この熱可塑性ポリウレタン中でポリエーテルジオールを使用することで、耐加水分解性を改善することができる。相当するポリエーテルプレポリマーは、大きく改善された耐加水分解性を示す。
【0035】
ポリラクチドの熱可塑性ポリウレタンに対する適当な量的比率は、本発明のプロセス中で設定可能である。工程B)の混合物中のポリラクチドの比率は50重量%〜97重量%であることが好ましく、特に60重量%〜92重量%であることが好ましい。
【0036】
工程A)では、いずれか適当な量のジイソシアネート、ジイソシアネートプレポリマー(少なくとも2個のイソシアネート基を持つ)、またはそれらの混合物がこの熱可塑性ポリウレタンに投入される。このジイソシアネートまたはプレポリマーまたはこれらの混合物の比率は、好ましくは工程A)の生成物に対して1重量%〜25重量%であり、特に1重量%〜10重量%である。
【0037】
ある特に適当なプレポリマー製剤は、NCO末端のポリエステルと二官能性イソシアネート、例えば好ましくはMDIからのものである。
【0038】
工程A)とB)とC)での反応は、連続的に行っても回分的に行ってもよい。
【0039】
特に反応性押出成形の形の連続プロセスが好ましい。このプロセスは、押出機中で、好ましくは二軸押出機中で実施され、熱可塑性ポリウレタンと、ジイソシアネートまたはイソシアネートプレポリマーまたはそれらの混合物が押出機の入口から投入され、ポリラクチドが下流で添加される。
【0040】
本発明のプロセスでは、適当ないずれの熱可塑性ポリウレタン(TPU)も使用できる。なお、これらは、一般的には少なくとも一種のジイソシアネートと少なくとも一種のポリオールと、また多くの場合少なくとも一種のイソシアネート反応性の鎖延長剤とから得られる。
【0041】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、一定の温度範囲内で繰り返して加熱で軟化し冷却で固化し、軟化状態で繰り返しキャスティングや射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、回転焼成により半製品または成形物を与えるポリウレタンである。TPUは、複数のブロックからなるコポリマーである。これらは一分子中に硬質セグメントと軟質セグメントをもっている。ある好ましい実施様態においては、この脂肪族TPU中の、全体のTPUに対する硬質相の比率は、好ましくは15重量%〜65重量%であり、特に40重量%〜65重量%である。
【0042】
本発明では、ジイソシアネート(成分a)と称す)と、ポリジオールと必要なら他のイソシアネートに反応性の化合物(両方を含めて成分b)と称す)とを、鎖延長剤(成分c)と称す)と必要なら触媒(成分d)と称す)及び/又は既存の助剤(成分e)と称す)の存在下で反応させてこの熱可塑性ポリウレタンを製造する。この製造工程では、従来の連続プロセスでの重付加の使用が好ましいが、回分的な重付加も可能である。
【0043】
このポリウレタンの製造に通常使用される成分a)とb)とc)を、また必要に応じて使用される成分d)及び/又はe)を以下に説明する。
【0044】
a)用いる有機イソシアネート(成分a))には、よく知られている芳香族、脂肪族、脂環式及び/又は芳香脂肪族イソシアネート、好ましくはジイソシアネートが含まれ、より好ましくは、ジフェニルメタン2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネート、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、2−エチルブチレン1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、ブチレン1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]シクロヘキサン(H12MDI)、2,6−ジイソシアナトヘキサンカルボン酸エステル、1,4−及び/又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキサン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート、及び/又はジシクロヘキシルメタン4,4’−、2,4’−及び2,2−ジイソシアネートであり、好ましくはジフェニルメタン2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]シクロヘキサン、及び/又はIPDIが含まれる。
【0045】
特に好ましいイソシアネートは、脂肪族イソシアネート、より好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートであり、特にH12MDIである。
【0046】
b)使用可能なイソシアネートに反応性の化合物(成分b))は、イソシアネートに対して反応性のよく知られている化合物であり、その例としては、モル質量(Mn)が、好ましくは数平均モル質量が500[g/mol]〜8000[g/mol]、好ましくは600[g/mol]〜6000[g/mol]、特に800[g/mol]〜3000[g/mol]で、好ましくはイソシアネートに対する平均官能性数が1.8〜2.3、好ましくは1.9〜2.2、特に2であるポリエステルオール、ポリエーテルオール及び/又はポリカーボネートジオール(これらは、通常まとめて「ポリオール」と呼ばれる)があげられる。
【0047】
ポリエーテルポリオールは、好ましくは成分b)として用いられ、その例としては、よく知られている出発物質と従来のアルキレンオキシド、好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとからのものがあげられ、より好ましくはプロピレン1,2−オキシドとエチレンオキシドから、特にポリオキシテトラメチレングリコールからのポリエーテルオールがあげられる。用いるポリエーテルオールは、好ましくはいわゆる低飽和度ポリエーテルオールを含むことができる。本発明の目的においては、低飽和度ポリオールは、特に、0.02meq/g未満の量の不飽和化合物を、好ましくは0.01meq/g未満の量の不飽和化合物を含むポリエーテルアルコールである。
【0048】
この種のポリエーテルアルコールは主に、高活性触媒の存在下での上述のジオールまたはトリオールへのアルキレンオキシドの付加反応で、特にエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびこれらの混合物の付加反応で製造される。
【0049】
これらの高活性触媒は、水酸化セシウム及び多金属シアン化物触媒(DMC触媒とも呼ばれる)であることが好ましい。頻繁にまた好ましく用いられるDMC触媒は、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛である。このDMC触媒は反応後にポリエーテルアルコール中に残留することがあるが、通常、例えば沈殿または濾過で除かれる。
【0050】
ポリオールに代えて、いろいろなポリオールの混合物を成分b)として用いることもできる。本発明の熱可塑性ポリウレタンが、成分b)として、モル質量(Mn)が、好ましくは数平均モル質量が600g/mol〜2000g/mol、好ましくは800g/mol〜1400g/mol、特に好ましくは950g/mol〜1050g/molであるポリテトラヒドロフランを持つものであることが特に好ましい。
【0051】
c)用いる鎖延長剤(成分c))は、よく知られるモル質量が、好ましくは平均モル質量が50g/mol〜499g/molで、好ましくは二官能性化合物である脂肪族、芳香脂肪族、芳香族、及び/又は脂環式化合物である。好ましい化合物の例としては、アルキレン基中に2〜10個の炭素原子をもつアルカンジオールがあげられ、好ましくは1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及び/又はジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−、オクタ−、ノナ−及び/又はデカアルキレングリコール(3〜8個の炭素原子を持つ)があげられ、より好ましくは非分岐アルカンジオール、特に1,3−プロパンジオールと1,4−ブタンジオールがあげられる。
【0052】
d)適当な、特にジイソシアネート(成分a))のNCO基と成分b)との反応を加速する触媒(成分d))は、先行技術から既知の既存の第三級アミンであり、好ましい例としては、トリエチルアミンやジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチル−モルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられ、また特に有機金属化合物、例えばチタン酸エステルや鉄化合物(例えば好ましくは、第二鉄アセチルアセトネート)、スズ化合物(例えば好ましくは、酢酸第一スズ、オクタン酸第一スズ、ラウリン酸第一スズ、または脂肪族カルボン酸のジブチルスズ塩(例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート))などがあげられる。これらの触媒の使用量は、通常100重量部のポリヒドロキシ化合物(成分b))に対して0.00001重量部〜0.1重量部である。
【0053】
e)触媒と成分d)と構造成分a)〜c)に加えて既存の助剤(成分e))を加えることもできる。例としては、発泡剤、界面活性剤、難燃剤、核剤、潤滑剤や離型剤、染料や顔料、安定剤、例えば好ましくは加水分解、光、熱、または色の安定剤、無機及び/又は有機充填剤、強化剤、可塑剤、金属不活性化剤があげられる。好ましく用いられる加水分解安定剤は、オリゴマー状及び/又は高分子状の脂肪族または芳香族カルボジイミドである。
【0054】
しかしながら、ある好ましい実施様態では、これらの助剤が含まれないか、添加物を含む熱可塑性ポリウレタンに対して好ましくは多くても1%の量で、特に多くても0.1%の量で使用される。
【0055】
水添MDIと少なくとも一種のポリエーテルオール(すべての添加物を含む熱可塑性ポリウレタンに対して、特に芳香族化合物を除くTPUに対して最大比率が25重量%の、好ましくは最大で10重量%の芳香族と共役π電子系を持つもの)とからなるTPUが特に好ましい。
【0056】
これらのTPUは、既知のプロセスにより、回分的または連続的に生産でき、ワンショットプロセスまたはプレポリマープロセスで、好ましくはワンショットプロセスで、例えば反応性押出機あるいはベルトプロセスを用いて製造できる。これらのプロセスでは、反応成分a)とb)、また必要なら成分c)、d)及び/又はe)を、相互に逐次にまたは同時に混合して反応を直ちに開始させる。押出機プロセスでは、構造成分a)とb)が、また必要なら他の成分c)、d)及び/又はe)が、個別にまたは混合物の形で、押出機に投入され、例えば好ましくは100〜280℃の温度で、より好ましくは140℃〜250℃の温度で反応させられ、得られるポリウレタンを次いで押し出して、冷却、ペレット化される。
【0057】
TPUを最適化するために、ポリオール成分(成分b))と鎖延長剤(成分c))を変えることもできる。ある好ましい実施様態では、用いる鎖延長剤(成分c))の総量に対して、ポリオール(成分b)の重量比が20〜2倍、特に8〜3倍に設定される。
【0058】
ある好ましい実施様態においては、イソシアネート(成分a))と、イソシアネート反応性成分のb)と必要なら成分c)との反応が、指数が950〜1050で、特に好ましくは970〜1010、特に980〜1000で進行する。この指数は、反応の間に使用される成分a)中のイソシアネート基の総量の、イソシアネート反応性基、即ち特に基成分b)とc)に対する比率と定義される。この指数が1000の時、成分a)の各イソシアネート基に対して1個の活性水素原子が存在する。この指数が1000より多い場合、OH基よりイソシアネート基が多く存在する。
【0059】
ポリウレタンを老化に対して安定化させるために安定剤を添加してもよい。本発明の目的では、安定剤はプラスチックまたはプラスチック混合物を環境の有害作用から保護するための添加物である。例としては、一級及び二級の酸化防止剤やチオシナージスト、三価リンの有機リン化合物、ヒンダードアミン光安定剤、UV吸収剤、加水分解安定剤、ラジカル捕捉剤、難燃剤があげられる。市販の安定剤の例は、プラスチック添加物ハンドブック、第5版、H. Zweifel, ed,, Hanser Publishers, Munich, 2001 ([1]), pp. 98−136に記載されている。本発明のポリウレタンが使用中に熱酸化劣化に曝される場合には、酸化防止剤を添加することができる。フェノール性酸化防止剤の使用が好ましい。フェノール性酸化防止剤の例が、プラスチック添加物ハンドブック、第5版、H. Zweifel, ed,, Hanser Publishers, Munich, 2001 ([1]), pp.98−107とpp.116−121に記載されている。数平均モル質量が700g/molより大きいフェノール性酸化防止剤が好ましい。使用が好ましいフェノール性酸化防止剤の例は、ペンタエリスリチルテトラキス(3−(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(イルガノックス(R)1010)、またはいずれの他の適当な酸化防止剤に由来する比較的高分子量の縮合体である。
【0060】
このフェノール性酸化防止剤の使用濃度は、一般的にはポリウレタンの全重量に対して0.1重量%〜5重量%であり、好ましくは0.1重量%〜2重量%、特に0.5重量%〜1.5重量%である。非晶質または液体の酸化防止剤の使用が好ましい。この好ましい構成の本発明のポリウレタンでは、例えばフタール酸エステルまたは安息香酸エステルで可塑化されたポリウレタンより、紫外線に対する抵抗性が大きく上昇するが、フェノール性安定剤のみを含む安定剤系が不適当であることも多い。このため、本発明のポリウレタンが紫外光に曝される場合には、さらにUV吸収剤で安定化させることが好ましい。UV吸収剤は、高エネルギー紫外光を吸収してエネルギーを放出する分子である。工業的によく使用されるUV吸収剤は、例えば好ましくは、桂皮酸エステルやジフェニルシアノアクリレート、オキサルアミド(オキシアニリド)であり、特に2−エトキシ−2’−エチルオキシアニリドやホルムアミジン、ベンジリデンマロネート、ジアリールブタジエン、トリアジン、またはベンゾトリアゾールである。市販のUV吸収剤の例が、プラスチック添加物ハンドブック、第5版、H. Zweifel, ed,, Hanser Publishers, Munich, 2001 ([1]), pp.116−122に記載されている。ある好ましい実施様態においては、これらのUV吸収剤の数平均モル質量が300g/molより大きく、特に390g/molより大きい。用いるUV吸収剤の数平均モル質量は、好ましくは5000g/mol以下であり、特に好ましくは2000g/mol以下である必要がある。UV吸収剤としてベンゾトリアゾールが特に好適である。特に好適なベンゾトリアゾールの例は、ヌビン(R)213とチヌビン(R)328、チヌビン(R)571、チヌビン(R)384、エバソルブ(R)82である。これらのUV吸収剤の添加量は、ポリウレタンの総重量に対して好ましくは0.01重量%〜5重量%であり、特に好ましくは0.1重量%〜2.0重量%、特に0.2重量%〜0.5重量%である。酸化防止剤とUV吸収剤とからなる上記のUV安定剤系は、UV照射の悪影響に対する本発明のポリウレタンの抵抗性を保証するには未だに不適当であることが多い。その場合、上記の酸化防止剤とUV吸収剤に加えて、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)を成分Eに添加することもできる。ある特に好ましいUV安定剤系は、上述の好ましい量のフェノール性安定剤とベンゾトリアゾールとHALS化合物からなる混合物を含んでいる。しかしながら、安定剤の官能基と結合する化合物を、例えば立体障害性ピペリジル−ヒドロキシベンジル縮合体、例えばジ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−ブチル−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、チヌビン(R)144を使用することもできる。
【0061】
他の特に好適な材料はワックスであり、これらは、ポリウレタンの工業生産ばかりか、その加工の際にも重要な役割をはたす。このワックスは、摩擦軽減用内部及び外部潤滑剤として働き、ポリウレタンの流動特性を改善する。この材料はまた、離型剤として働いてポリウレタンと周辺の材料(例えば金型)との接着を防止し、他の添加物、例えば顔料や粘着防止剤の分散剤として働くものである。適当な材料の例は、ステアリン酸エステルやモンタン酸エステルなどの脂肪酸エステル、これらの金属石鹸、ステアリルアミドやオレアミドなどの油脂系アミド、ポリエチレンワックスである。熱可塑性樹脂中で用いられるワックスの概説が、プラスチック添加物ハンドブック、第5版、H. Zweifel, ed,, Hanser Publishers, Munich, 2001 ([1]), pp.443ff.や、EP−A308683、EP−A670339、JP−A 5163431に見出される。
【0062】
DE−A19607870に記載のようなエステルとアミドの組み合わせでも改善が可能であり、特定のモンタン酸及び脂肪酸誘導体のワックス混合物(DE−A19649290)の使用で、またDE102006009096A1に記載のようなヒドロキシステアラミドの使用で改善を行うこともできる。
【0063】
ある特に好ましい実施様態では、望ましくは物質の吸収及び/又は放出の少ないポリウレタンに、DE−A19706452に記載の24〜34個の炭素原子をもつ脂肪酸及び/又はこれら脂肪酸のエステル及び/又はアミドを使用している。なお、その際の脂肪酸及び/又は誘導体の使用重量比は、ポリイソシアネート重付加生成物の総重量に対して0.001重量%〜15重量%である、
【0064】
もう一つの好ましい実施様態では、アルキレンジアミンとa)一種以上の線状脂肪酸の反応生成物と、アルキレンジアミンとb)12−ヒドロキシステアリン酸の反応生成物、及び/又はアルキレンジアミンとc)12−ヒドロキシステアリン酸と一種以上の線状脂肪酸との反応生成物からなるEP−A−1826225に記載の混合物が用いられている。したがって、この混合物は、アルキレンジアミンと成分a)とb)、また必要なら成分c)との反応生成物を含んでいる。
【0065】
上述の助剤や添加物の更なる詳細が、技術文献に、例えばプラスチック添加物ハンドブック、第5版、H. Zweifel, ed,, Hanser Publishers, Munich, 2001に見出される。特記しない場合、本明細書中で述べた全てのモル質量は単位[g/mol]をもち、数平均モル質量である。
【0066】
もう一つの好ましい実施様態においては、このポリエステルジオール及び/又は鎖延長剤のジカルボン酸及び/又はジオールが非石油起源である。
【0067】
市場は、ますます、石油化学原料がある程度または完全に再生可能な原料からの材料で置き換えられたポリウレタン製品を求めるようになってきている。セバシン酸は、例えば植物油(ヒマシ油)から得られる再生可能原料である。しかしながら、セバシン酸エステルは、多くの用途に望ましくない結晶化を起こす。このため、使用できない分野が多くある。例えば、US−A−5695884には、セバシン酸系ポリエステルポリオールの高結晶性熱可塑性ポリウレタンの製造への利用が開示されている。US2006/0141883A1とUS2006/0121812にも、セバシン酸系ポリエステルポリオールの高融点繊維のポリウレタンへの利用が開示されている。WO00/51660A1には、セバシン酸系ポリエステルポリオールが使用されている心臓カテーテル用のポリウレタンが記載されている。ここでも適度な硬度が必要である。US2007/0161731A1とUS6395833B1にはまた、ポリウレタン化学で使用のためのポリエステルポリオールにセバシン酸が使用可能であることが開示されている。
【0068】
本発明においては、このTPUの合計の指数は1.0〜1.2である。イソシアネートとのまたはイソシアネートプレポリマーとの反応で、TPUのモル質量が十分に低下して、適当な加工性を与える。このPLAとの反応の前の数平均モル質量は、好ましくは7500g/mol〜75000g/molである。
【0069】
工程A)での反応は、150℃〜230℃の範囲の温度で行うことが好ましい。
【0070】
工程A)の反応時間は10秒間〜100秒間が好ましい。
【0071】
工程A)の生成物の溶融物へのポリラクチドへの投入と続く反応は、190℃未満の温度で、特に好ましくは170℃〜185℃の温度で進行する。この温度を、ポリラクチドの変色を起こさない値に維持することが好ましい。しかしながら、この温度は、ポリラクチドの軟化点よりかなり高く、また工程A)の生成物の軟化点より高いことが必要である。例えば反応性押出機で可能なような強混合を行うことが好ましい。
【0072】
このPLAはイソシアネート基と反応してブレンド中で共有結合を形成する。その結果、モル質量が増加し、このため性質が改善される。
【0073】
反応の後、得られるブレンドを冷却し、例えばペレット化するか、直接成形するか、他の加工に適した形とする。
【0074】
工程A)の生成物中のイソシアネート基含量は、0.1重量%〜5重量%であり、好ましくは0.3重量%〜3重量%である。
【0075】
本発明のプロセスでは、ポリオールが工程A)〜C)で使用されず、このためポリオールとジイソシアネートからTPUが形成されることはない。工程A)での反応の具体的な目的は、TPUのモル質量を低下させ、イソシアネート基の含量を増加させることである。
【0076】
工程B)の反応は、10秒間から180秒間行うことが好ましい。
【0077】
したがって本発明はまた、上記プロセスで製造されたブレンドを提供する。
【0078】
本発明のブレンドは、適当な所望のいずれの用途にも使用できる。これらは、特にフィルム(シート状物)または成形物の製造に用いられる。
【0079】
本発明においては、これらのブレンドを非常に薄いフィルムの製造に使用でき、またこのため、適当なモノマーを使用して良い生分解性を得ることができる。これは、特にごみ袋、工場の袋、農業フィルム、マルチフィルムなどに有用である。
【0080】
本発明で使用可能なポリラクチドは、適当ないずれのポリラクチドをも含む。ポリラクチドはポリ乳酸とも呼ばれる。これらはポリヒドロキシ酸である。PLA材料は、乳酸の重縮合反応によるか、二個の乳酸単位の環状二量体であるラクチドの開環重合反応によるものである。ポリラクチドは、通常ラクチドの開環重合で製造される。この反応は、通常140℃〜180℃の温度で、触媒のスズ化合物と共に行われる。高モル質量で高強度のポリラクチドを得ることができる。
【0081】
乳酸そのものは、いろいろなバクテリアを用いて糖蜜の発酵またはグルコースの発酵で製造される。ラクチドは乳酸の二量体化で製造される。乳酸から重縮合で直接高分子量のポリラクチドを製造することもできる。
【0082】
本発明のブレンド(通常はペレット状である)は、通常の射出成形や押出成形プロセスで加工可能である。本発明のプロセスで製造可能なブレンドをフィルム(シート状物)の形の用途に使用すると、好ましくは塗膜や蛇腹、成形物、建設及び輸送分野用の床材、ケーブル、ケーブルプラグ、ケーブル被覆、クッション、積層品、不織布、シール、異形材、駆動ベルト、ローラー、サドル、発泡体、ホース、靴底、ドラグケーブル、太陽モジュール、自動車の被覆、ワイパーブレード、または繊維に使用すると冒頭の序に述べた長所を示す。成形物/部品から半製品への成形は、配合工程と直結して、例えば押出成形配合機(IMC)を用いて一段プロセスの形で行ってもよい。もう一つの好ましい製造工程は、カレンダ加工、粉末焼成または押出成形である。適当な繊維強化配合材料は、上記のブレンドや繊維である。
【0083】
実施例:
以下の実施例により本発明をさらに説明する。以下に述べる実施例中で用いる個々の成分を、成分Kiと示すが、文字iは、実施例の番号である。
【0084】
実施例1:
成分K1:TPU1エラストラン(R)LP9273
ブタンジオールヘキサンジオールアジペートと1,6−ヘキサンジオール、ヘキサンジイソシアネート系の脂肪族ポリエステルTPUで数平均モル質量が2.2kg/molであるもの。安定剤(UV吸収剤、HALS化合物、酸化防止剤、加水分解安定剤)と加工助剤(潤滑剤、ワックス)を従来の濃度で含む。
ペレット状のこのTPUを射出成形して試験板とし、試験片を打ち抜いて作製した。これらの試験片で以下の試験を行った。
【0085】
【表1】
【0086】
水分率が0.02%未満のペレットから、射出成形で試験板を作製した。これらの試験板を100℃で20時間加熱調湿させた。これらの試験片を打ち抜いて厚み2mm×6mmの試験板を得た。試験は23±2℃で相対湿度が50±6%で行った。
【0087】
実施例2:
成分K2:TPU2エラストラン(R)B85A15
数平均モル質量が2.4kg/molである、ブタンジオールアジペートと1,4−ブタンジオール、メチルジフェニルジイソシアネート由来の芳香族ポリエステル−TPU
加水分解安定剤と加工助剤を従来の濃度で含む。
【0088】
ペレット状のこのTPUを射出成形して試験板とし、試験片を打ち抜いて作製した。これらの試験片で以下の試験を行った。
【0089】
【表2】
【0090】
水分率が0.02%未満のペレットから、射出成形で試験板を作製した。これらの試験板を100℃で20時間加熱調湿させた。これらの試験片を打ち抜いて厚み2mm×6mmの試験板を得た。試験は23±2℃で相対湿度が50±6%で行った。
【0091】
実施例3
成分K3:TPU3エラストラン(R)C78A10
数平均モル質量が2.4kg/molである、ブタンジオールヘキサンジオールアジペートと1,4−ブタンジオール、メチルジフェニルジイソシアネート由来の芳香族ポリエステルTPU。加水分解安定剤を従来の濃度で含む
【0092】
ペレット状のこのTPUを射出成形して試験板とし、試験片を打ち抜いて作製した。これらの試験片で以下の試験を行った。
【0093】
【表3】
【0094】
水分率が0.02%未満のペレットから、射出成形で試験板を作製した。これらの試験板を100℃で20時間加熱調湿させた。これらの試験片を打ち抜いて、厚み2mm×6mmの試験板を得た。試験は23±2℃で、相対湿度が50±6%で行った。
【0095】
実施例4:
成分K4:PLA1
L−ラクチド分が約92%でD−ラクチド分が約8%で開環重合反応で得られた特定のポリ−D,L−ラクチド(PLLDA)
この特定の種類のポリラクチドは、以下の物性を示す。
【0096】
【表4】
【0097】
実施例5:
成分K5:プレポリマー1
ルプラナート(R)MP102:モル質量が450g/molである、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDl)とジプロピレングリコールとエチレンオキシド/プロピレンオキシド系のポリエーテルジオール由来のプレポリマー。このプレポリマーは室温で液状で添加可能である。

NCO含量: 23.0%
25℃の粘度 650MPa*s DIN 53018
25℃も密度 1.21 DIN 51757
【0098】
実施例6:
成分K6:イソホロンジイソシアネートウレトジオンブタンジオール付加物、ベスタゴンBF1540
粉末塗装に用いられる、フレーク状で融点が105〜115℃、密度が1.07g/cm3で、分解温度が130〜160℃である架橋剤
【0099】
実施例7:
本発明のPLA/TPUブレンドの製造のための配合プロセス1
実施例10〜12で製造され試験されたPLA/TPUブレンドは、Werner & Pfleiderer社製のコペリオンZSK25共回転二軸押出機(L/D=40)で製造した。この配合装置は、全製造プロセスにおいてスクリュー回転速度=100min−1で、総排出量=5.0kg/hで運転した。押出機の軸方向の温度分布を図1に示す。1〜10のバレル温度はそれぞれ以下の値に設定した:180°、200°、200°200°200°、180°、180°、180°、180°、180℃。
【0100】
各種のTPU(K1またはK2またはK3)と各添加物(K6)または変性MDI(K5)を定量的にこの二軸押出機の供給孔に投入した。TPUの変換が押出機のゾーン2〜5で起こる。PLAペレット(K4)は、ゾーン6の供給孔に添加する。続くゾーンで起こるプロセスは、PLAの可塑化、各成分の強混合、共有結合を与えるカップリング反応である。排出される配合材料の線条を冷却し、次いでペレット化した。
【0101】
実施例8
試験片の作製
DIN−EN−ISO527−2の引張試験用試料とDIN−EN−ISO179−1のノッチ付衝撃抵抗度試験用の試料を、金型中で射出成形で作製した。このためにアルブルグ220M350−90往復スクリュー射出成形機を使用した。この機械設定値とプロセス設定値は次の通りである:

−最大締付力=220kN
−スクリューの形状:D=20mm、LVD=25(3ゾーンスクリュー)
−ねじ山比:2:1
−アルブルグ220M温度設定;180℃で一定
−金型温度:30℃
【0102】
実施例9
試験方法
全ての引張り試験はDIN53504により試験速度が50mm/minで行った。ノッチ付衝撃抵抗度の測定に用いた試験片の大きさは次の通りである:
【0103】
【表5】
【0104】
実施例10
ブレンド1の特性評価:
プロセス1で製造されたPLA1とTPU1、3%のイソホロンジイソシアネート(K6)を含む。主要成分の比率を90:10〜50:50に変えた。得られた機械的性質を表4に示す。
【0105】
【表6】
【0106】
実施例11
ブレンド2の特性評価:
プロセス1で製造されたPLA1とTPU1、10%のプレポリマー1(K5)を含む。主要成分の比率を70:30〜50:50に変えた。得られた機械的性質を表5に示す。
【0107】
【表7】
【0108】
実施例12
ブレンド3の特性評価:
プロセス1で製造されたPLA1とTPU1、5%のプレポリマー1(K5)を含む。主要成分の比率を70:30〜50:50に変えた。得られた機械的性質を表6に示す。
【0109】
【表8】
【0110】
実施例12
表1〜6から、ブレンドの製造の結果起こる大きな弾性率の低下が明白である。同時に、破断引張歪とノッチ付衝撃抵抗度が劇的に増加した。このように本目的の特徴の全てが達成された。
図1