特許第5908903号(P5908903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧 ▶ 三星エスディアイ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5908903-バッテリの充電状態を決定する方法 図000002
  • 特許5908903-バッテリの充電状態を決定する方法 図000003
  • 特許5908903-バッテリの充電状態を決定する方法 図000004
  • 特許5908903-バッテリの充電状態を決定する方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908903
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】バッテリの充電状態を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20160412BHJP
【FI】
   H02J7/00 X
   H02J7/00 M
   H02J7/00 P
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-523569(P2013-523569)
(86)(22)【出願日】2011年8月4日
(65)【公表番号】特表2013-535945(P2013-535945A)
(43)【公表日】2013年9月12日
(86)【国際出願番号】EP2011063433
(87)【国際公開番号】WO2012019960
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2014年8月1日
(31)【優先権主張番号】102010039326.6
(32)【優先日】2010年8月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung SDI Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000981
【氏名又は名称】アイ・ピー・ディー国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クリーク、ベレンガール
【審査官】 田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−276654(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0188150(US,A1)
【文献】 特開2007−078443(JP,A)
【文献】 特開平11−283677(JP,A)
【文献】 特開平02−056622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42−10/48
H02J7/00−7/12、7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ管理ユニットと、前記バッテリ管理ユニットの上位の制御ユニットとを有するバッテリの充電状態を決定する方法において、
前記バッテリ管理ユニットは、前記充電状態の決定のために3つの駆動状態で駆動可能であり、
第1の駆動状態(20)において、前記バッテリ管理ユニットは、バッテリ電流の定期的な検出(S11)の他に更なる別の機能を実行せず、前記上位の制御ユニットは停止され、
第2の駆動状態(22)において、前記バッテリ管理ユニットは前記バッテリ電流を検出し、前記バッテリの前記充電状態についての情報を収集し(S13)、前記上位の制御ユニットが停止され、第3の駆動状態(24)において実行可能な機能であって、前記上位の制御装置への通信を含む前記機能のうちの少なくとも1つが無効化され、
前記第3の駆動状態(24)において、前記バッテリ管理ユニットは、前記バッテリ電流を検出し、前記バッテリの前記充電状態を決定し、出力予測を行い、作動された前記上位の制御ユニットと通信し、
前記バッテリ電流が所定の電流閾値を超える場合は、前記バッテリ管理ユニットは、前記第1の駆動状態(20)から前記第2の駆動状態(22)へと変わり、
前記バッテリ電流が所定の電流閾値を下回る場合は(S14)、前記バッテリ管理ユニットは、前記第2の駆動状態(22)から前記第1の駆動状態(20)へと変わり(S14)、
前記上位の制御ユニットの作動によって、前記バッテリ管理ユニットは前記第3の駆動状態(24)となり、前記バッテリ管理ユニットは、前記上位の制御ユニットが停止された際には、前記第1の駆動状態(20)または前記第2の駆動状態(22)となる、方法。
【請求項2】
前記第2の駆動状態(22)では、前記バッテリの前記充電状態についての情報が収集され(S13)、前記バッテリの前記充電状態が決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の駆動状態(20)では、前記バッテリの前記充電状態についての情報が収集されない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の駆動状態(22)では、前記バッテリ電流を時間で積分することで、前記バッテリの前記充電状態についての情報が収集される(S13)、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の駆動状態(22)では、前記バッテリ管理ユニットがフル稼働状態で実行しうる前記バッテリ管理ユニットの少なくとも1つの機能が無効化される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
上位の制御ユニットが、起動信号の送信により、前記バッテリ管理ユニットを前記第3の駆動状態(24)にする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記バッテリ管理ユニットは、前記第1の駆動状態(20)では、前記第2の駆動状態(22)よりも低いクロック周波数で駆動され、および/または、前記第2の駆動状態(22)では、前記第3の駆動状態(24)よりも低いクロック周波数で駆動される、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
電流センサを有するバッテリ管理ユニットを備えるバッテリにおいて、前記バッテリ管理ユニットは、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法を実行するよう構成されることを特徴とする、バッテリ。
【請求項9】
前記電流センサは、パッシブな構成要素を備える、請求項8に記載のバッテリ。
【請求項10】
前記電流センサは、前記パッシブな構成要素としてシャント抵抗器を備える、請求項9に記載のバッテリ。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載のバッテリを有する車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの充電状態を決定する方法、本発明に係る方法を実施するよう構成されたバッテリ、および、本発明に係るバッテリを有する車両に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
従来技術では、バッテリの充電状態を決定するための様々な方法が公知である。この公知の方法のうちの1つでは、バッテリ状態の検出が、OCV(open circuit voltage、開放電圧)とも呼ばれる、無負荷時のバッテリの電圧を測定することにより達成される。部分的に、この電圧は、負荷時の電圧と比較される。この方法は、無負荷時のバッテリの電圧に対する充電状態の依存性が高い場合には比較的信頼性が高いが、図1のリン酸鉄リチウムベースのバッテリの例で示すような平坦な推移を有するバッテリシステムの場合には適切ではない。
【0003】
バッテリの充電状態を決定するさらなる別の方法では、バッテリを流れるバッテリ電流が測定されて、時間で積分される。このような方法は、例えば、使用していない間消費機器ネットワークから分離することが可能なバッテリシステムで利用される。上位の制御ユニット、例えば、車両内のエンジン制御ユニットが停止されている場合に、このような非アクティブ(inaktiv)な駆動状態になりうる。バッテリシステムにより、ある程度の零入力電流要求をカバーする必要がある場合に、バッテリ電子機器(Batterieelektronik)のこのような非アクティブな駆動状態において、バッテリがかなり放電する可能性がある。十分に正確な充電状態決定のためには、バッテリ電流の時間積分を実行する構成要素が永続的にアクティブ(aktiv)である必要があるであろうし、このことにより、非アクティブな駆動状態の間のバッテリの放電がますます進むであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に基づいて、バッテリ管理ユニットを有するバッテリの充電状態を決定する方法が提案される。バッテリ管理ユニットの第1の駆動状態では、バッテリ電流がバッテリ管理ユニットによって定期的または継続的に検出される。バッテリ電流が所定の電流閾値を上回る場合には、バッテリ管理ユニットは第2の駆動状態へと変わる。第2の駆動状態では、バッテリの充電状態についての情報が収集される。理想的には、バッテリの充電状態が完全に決定される。
【0005】
バッテリ管理ユニットという概念には、特に、例えばハイブリッド車両内の牽引ネットワークのための高品質のバッテリで使用されるバッテリ管理システムが含まれる。しかしながら、バッテリ管理ユニットという概念には、例えば車両内でスタート・ストップアプリケーション(Start−Stopp−Anwendung)で使用される特定のバッテリ内のバッテリセンサシステムも含まれる。このようなバッテリセンサシステムによっても、当該バッテリセンサシステムがバッテリの充電状態についての情報を収集するよう設計される限りにおいて、本発明に係る方法を実施することが可能である。
【0006】
本発明に係る方法は、バッテリ管理ユニットを作動させる仕組みである。通信プロトコルまたはハードウェア線を介して送信される起動信号によりバッテリ管理ユニットをアクティブな駆動状態にする既に知られた作動の仕組みとは異なって、本発明に係る方法は、バッテリ内部で実行される起動の仕組みを構想する。
【0007】
本発明に係る方法は、第1の駆動状態において、バッテリの放電が僅かに保たれるという利点を有する。ここで、第1の駆動状態は、典型的に、非アクティブな駆動状態に相当し、バッテリシステムが利用されずまたは小規模で利用されるが、消費機器ネットワークからのバッテリシステムの分離が行われないため、またはシステム電圧が十分に低いので当該分離が必要ではないため、バッテリシステムは、消費機器ネットワークに接続されたままである。
【0008】
第1の駆動状態では通常、バッテリの充電状態についての情報を集める必要がない。好適に、第1の駆動状態では、バッテリ電流の検出の他に機能が実行されない。したがって、第1の駆動状態は、エネルギーを最も節約するバッテリ管理ユニットの駆動状態である。
【0009】
第2の駆動状態では、バッテリ電流を時間で積分することで、バッテリの充電状態についての情報が収集されうる。さらに、第2の駆動状態でも同様に、バッテリ管理ユニットが第3の駆動状態、特にフル稼働状態で実行しうる当該バッテリ管理ユニットの少なくとも1つの機能を無効化することで、エネルギーを節約できる。例えば、第2の駆動状態では、バッテリ管理ユニットより上位の制御ユニットへの通信を止めることが可能である一方、当該通信は、フル稼働状態では活性化される。
【0010】
しかしながら、上位の制御ユニットは、特に起動信号の送信により、バッテリ管理ユニットを第3の駆動状態にすることが可能である。このことは、例えば、CAN(Controller Area Network)バス上で行われうる。
【0011】
バッテリ管理ユニットは、第1の駆動状態では、第2の駆動状態よりも低いクロック周波数で駆動されうる。それどころか電子機器(Elektronik)は、バッテリ電流が閾値を超えていないかを監視する継続的に動作する非クロック回路(ungetakte Schaltung)に至るまで、停止されたままであってもよい。同様に、バッテリ管理ユニットは、第2の駆動状態では、通常ではフル稼働状態に相当する第3の駆動状態よりも低いクロック周波数で駆動されうる。
【0012】
バッテリ管理ユニットは、バッテリ電流が所定の電流閾値を下回る場合には、第2の駆動状態から第1の駆動状態へと戻って変わってもよい。
【0013】
本発明のさらなる別の観点は、電流センサを有するバッテリ管理ユニットを備えるバッテリ、好適にリチウムイオンバッテリに関する。バッテリ管理ユニットは、本発明に係る方法を実行するよう構成される。
【0014】
好適に、電流センサは、パッシブな(passiv)構成要素、特にシャント抵抗器を備える。これには、バッテリ管理ユニットを、第1の駆動状態においても僅かな需要電流で駆動し、本方法を実施するために必要な電流測定値を、エネルギーを節約して評価することが可能であるという利点がある。バッテリ電流が所定の電流閾値(例えば、0.5〜2A)を超えていないかという監視は、例えば、数μAという十分に小さな電流消費を必要とする比較器によって行うことが可能である。その際に、電流は、放電装置および充電装置でも監視される。
【0015】
本発明のさらなる別の観点は、本発明に係るバッテリを備える車両に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の実施例が、図面、および、以下の明細書の記載によってより詳細に解説される。
図1】バッテリの充電状態に依存する、無負荷時のリン酸鉄リチウムベースのバッテリの電圧の推移を示す。
図2】車両の様々な駆動状態を示す。
図3】本発明の一実施例に係るバッテリ管理ユニットの様々な駆動状態を示す。
図4】一実施例に係るバッテリの充電状態を決定するための本発明に係る方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図2は、バッテリ(自動車用電池またはスターター用電池)を備えるハイブリッド化されていない車両内で可能な5つの駆動状態を示す。
【0018】
第1の駆動状態10は、車両の駐車状態に相当し、バッテリは、耐用期間が6週間までの場合に典型的に10〜60mAの零入力電流要求をカバーする必要がある。
【0019】
車両の第2の駆動状態12は、点火が停止されしたがって上位の制御ユニット、例えばエンジン制御ユニットも停止された際のバッテリの放電に相当し、その際、内部空間照明、車両照明、警告ウィンカー、またはラジオ等の消費機器が、数分から数時間までの期間内に数百mA(ミリアンペア)〜数A(アンペア)の電流を消費する。
【0020】
車両の第3の駆動状態14は、点火が作動されまたは他のやり方で上位の制御ユニットが作動された際のバッテリの放電に相当し、その際、数秒〜数分に渡って数百mA〜数Aまでの電流が流れうる。
【0021】
車両の第4の駆動状態16は、内燃機関の稼働時に点火が作動され上位の制御ユニットが作動された際のバッテリの充電に相当する。
【0022】
最後に、車両の第5の駆動状態18は、例えば外部の充電装置により充電が行われる場合に、点火が停止され上位の制御ユニットが停止された際のバッテリの充電に相当する。
【0023】
個々の駆動状態10〜18の間では変更が常に可能である(図2では概略的に示されている)。バッテリの充電状態の決定は、従来技術によれば、代替可能なエネルギー消費によって、駆動状態14および16においてのみ可能である。なぜならば、この駆動状態14および16では、上位の制御ユニットが作動され、車両が省エネモードではないからである。これに対して、従来技術で公知のバッテリ管理ユニットによるバッテリの充電状態の決定は、駆動状態10、12、および18では可能ではない。なぜならば、この駆動状態10、12、および18は、駆動時に20Wまでの電力消費を有し、したがって、バッテリ容量に対する高い負荷の原因となるからである。
【0024】
図3は、本発明の一実施例に係るバッテリ管理ユニットの様々な駆動状態を示す。
【0025】
バッテリ管理ユニットの第1の駆動状態20では、バッテリ管理ユニットは省エネモードにある。バッテリ電流が測定され、電流閾値と比較される。さらに、バッテリ管理ユニットは、少数の機能のみ実行し、または、機能を全く実行しない。上位の制御ユニットへの通信は止められる。
【0026】
バッテリ管理ユニットの第2の駆動状態22では、バッテリ管理ユニットは同様に省エネモードにある。バッテリの充電状態を決定するために、バッテリ電流が測定され、時間で積分される。さらに、バッテリ管理ユニットは、少数の機能のみ実行し、または、機能を全く実行しない。場合によっては、バッテリの使用年数(Batteriealterung)が計算される。出力予測は行われない。ここでも、上位の制御ユニットへの通信は止められる。
【0027】
車両の上位の制御ユニットが停止された場合に、すなわち、車両の駆動状態10、12、および18のうちの1つの状態にある場合に、バッテリ管理ユニットの第1の駆動状態20または第2の駆動状態22になる。上位の制御ユニットが作動される駆動状態14または16のうちの1つ状態へと車両が変わる場合には、上位の制御ユニットは、バッテリ監視ユニットを、両構成要素が接続されたCANバス上、LIN(Local Interconnect Network)バス上、別の面で優れたバスシステム上、またはハードウェア線上で起動信号を送信することにより起動し、フル稼働モードに相当する第3の駆動状態24にする。バッテリ管理ユニットの第3の駆動状態24から、第1の駆動状態20または第2の駆動状態22へと戻すことも可能である。
【0028】
図4は、バッテリの充電状態を決定するための本発明に係る方法の一実施例を示す。本方法は、車両が駆動状態10、12、または18のうちの1つの状態にあり、バッテリよりも上位の制御ユニットが停止される場合に、ステップS10で開始される。その際に、バッテリのバッテリ管理ユニットは第1の駆動状態20にあり、バッテリ管理ユニットはバッテリ電流を検出するだけで(S11)、それ以上は機能を実行しない。
【0029】
ステップS12では、検出されたバッテリ電流が、所定の電流閾値と比較される。検出されたバッテリ電流が所定の電流閾値よりも大きくない場合には、本方法のスタートのステップS11へと戻り、検出されたバッテリ電流が所定の電流閾値よりも大きい場合には、ステップS13で、バッテリ管理ユニットの第2の駆動状態22へと変更され、第2の駆動状態では、バッテリ電流が時間で積分され、これにより、バッテリの充電状態が決定される。バッテリ管理ユニットは、第2の駆動状態22でも基本的に非アクティブであり、すなわち、バッテリ管理ユニットはバッテリの充電状態のみ決定し、さらなる別な機能を実行せずまたは当該機能を小規模で実行する。特に、バッテリ管理ユニットの第2の駆動状態22では上位の制御ユニットとの通信が止められ、または、当該通信は、上位の制御ユニット自身のみが開始できる。
【0030】
ステップS14では、検出されたバッテリ電流が所定の電流閾値と比較される。検出されたバッテリ電流が所定の電流閾値よりも小さくない場合には、さらにバッテリの充電状態が決定され(S13)、検出されたバッテリ電流が所定の電流閾値よりも小さい場合には、再び、バッテリ管理ユニットの第1の駆動状態20に変更される(S11)。
【0031】
バッテリ管理ユニットの第1の駆動状態20において充電状態の決定が行われないことにより発生するエラーは、当該バッテリ管理ユニットが第1の駆動状態20である段階の長さによって評価される。なぜならば、この第1の駆動状態20で流れる電流は比較的一定だからである。例えば、最大エラーは、電流閾値と上記段階の長さとの積として計算されうる。
図1
図2
図3
図4