(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5908904
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】積層接着剤としての二成分カートリッジ接着剤の使用
(51)【国際特許分類】
C09J 5/00 20060101AFI20160412BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20160412BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
C09J5/00
C09J175/04
B05D7/24 301P
B05D7/24 301U
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-525197(P2013-525197)
(86)(22)【出願日】2011年6月29日
(65)【公表番号】特表2013-540840(P2013-540840A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2011060879
(87)【国際公開番号】WO2012025281
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2014年6月27日
(31)【優先権主張番号】10173950.6
(32)【優先日】2010年8月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ギーアリングス
【審査官】
澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−023379(JP,A)
【文献】
特開2009−018265(JP,A)
【文献】
特開2009−183937(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0289996(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B05C 1/00− 21/00
B05D 1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質フィルム基材を全面接着して多層フィルムを形成するための積層接着剤としての二成分ポリウレタン接着剤の使用であって、接着剤を、パイプを備えていないカートリッジに充填して供給し、接着剤の二成分を、混合エレメントとしての静的ミキサーを有する吐出装置で混合し、混合された接着剤を、フィルム基材用の塗布装置へ注入する、使用。
【請求項2】
二成分ポリウレタン接着剤が、20〜60℃で200〜10,000mPas(EN ISO 2555)の粘度を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
二成分ポリウレタン接着剤を1〜100g/m2の量で塗布する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
接着剤の二成分の混合比率が1:10〜10:1である、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
吐出装置の構造により、カートリッジの構造により、および/またはカートリッジの吐出量により混合比率が制御される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
接着剤が溶媒を含有しない、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
基材として、熱可塑性フィルム、紙、板および/または金属箔を接着する、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
接着剤の二成分が、パッケージングユニットとしてカートリッジ状の2つの容器で供給され、二成分が吐出装置により所定の混合比率で混合される、多層フィルムの全面接着用の積層接着剤としての請求項1に記載の使用。
【請求項9】
カートリッジが金属製、プラスチック製または塗工板製である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
パッケージングユニットが使い捨て容器である、請求項8または9に記載の使用。
【請求項11】
二成分ポリウレタン接着剤を、パイプを備えていないカートリッジの形態で供給し、該接着剤が混合エレメントとしての静的ミキサーを有する吐出装置によりフィルム基材用の接着剤塗布装置へ注入されるフィルム基材の接着方法。
【請求項12】
ローラーを用いて基材の全表面に接着剤を塗布する、請求項11に記載のフィルム基材の接着方法。
【請求項13】
混合エレメントが交換可能なように取り付けられている、請求項11に記載のフィルム基材の接着方法。
【請求項14】
20〜80℃の温度で接着剤を塗布する、請求項11〜13のいずれかに記載のフィルム基材の接着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋可能な二成分接着剤としてカートリッジで供給され、互いに混合されて積層接着剤として使用される、ポリウレタンに基づく接着剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
軟質フィルム用の接着剤は、産業界で広く用いられている。1つの特定利用分野は、例えば、食品、医薬品などの包装用に用いることのできる軟質多層フィルムである。これらの接着剤は、高い費用効率で利用できるように薄層で塗布できなければならない。さらに、接着剤の成分には種々の要求が存在する:例えば、異なる基材上で良好かつ安定な接着性を示すべきである。接着する基材上で接着剤の成分を調整することができる。また、商業的理由のため、これらの接着剤は工業的スケールで素早く製造できる必要がある。
【0003】
したがって、反応性接着剤によりそのようなフィルムを結合することが多くの用途にとって都合がよいことが分かっている。このように最初に初期接着を得た後、化学的な架橋反応により持続可能な接着を実現する。塗布直前に互いを混合した後、ポットライフの間に塗布して結合させ、次いで架橋させる二成分接着剤が特に適している。
【0004】
塗布温度で低い粘度を有する接着剤を使用することが有利であることがわかっている。これにより薄いフィルム厚を実現することができる。溶媒含有接着剤の粘度は、塗布装置に合わせて調整することができる。しかしながら、接着剤に含まれる溶媒は作業場の大気および環境を汚染し、乾燥設備等のさらなる技術的設備を必要とする。
【0005】
二成分接着剤は揮発性成分を放出しない。しかしながら、二成分接着剤は種々の欠点を有する。第1に、その限られたポットライフにより塗布装置の汚染を生じることがわかっている。これは一連の装置の外部汚染をもたらし得る。一般的に、塗布装置の機能が妨げられることもわかっている。例えば、ホース、ノズルおよび混合装置が詰まってしまう可能性もある。
【0006】
さらに、二成分接着剤においては、所定の混合比で混合することが不可欠である。このような混合は、最適条件下で試験した場合に、架橋した接着剤に予定した架橋密度を確実にもたらす唯一の方法である。1つの成分が少な過ぎる場合には、多くの場合乏しい接着性しか得られない。このような接着性は、基材接着の低下をもたらす。
【0007】
所定の方法で架橋しない接着剤のさらなる欠点は、これらの接着剤が一般的に低分子量の反応性成分を含むという点にある。保管中に、これらの成分が接着層を通り抜けて、また、フィルムを通り抜けて移動する場合がある。移動した成分は包装される物品を汚染し得る(例えば、味を変えたり、健康を害したりする可能性がある)。このため、架橋しない二成分接着剤は避けるべきである。
【0008】
二成分接着剤を混合し、調製するための設備は公知である。ポンプや混合装置を用いて成分を互いに混合した後塗布する、種々の貯蔵タンクを有する工業設備が存在する。これは高水準の技術的な複雑さを必要とし、さらに作業者は混合中、体積または重量測定器によるいかなる間違いもしてはならない。
【0009】
さらに、貯蔵容器、ポンプ、ホースまたは混合容器は綺麗でなければならない。そうでなければ、特に湿潤反応性の系の場合、時間とともに沈殿物が機械部品上に蓄積し、使用および特定の混合比率の順守を妨げ得る。同様に、ある程度使用された各成分の移送容器の長期貯蔵も問題である。
【0010】
カートリッジ形態における二成分接着剤の使用は、ドゥ・イット・ユアセルフにおいて既知である。様々なカートリッジ形状が知られている。このようなカートリッジ適用の欠点は、既知の用途においては、通常、比較的大量の混合接着剤が製造され塗布されるという点にある。これは、例えば、接着ビーズ、接着剤の液滴または他の様式で行われる。これらは、例えばフィルム基材などの薄層状の平坦な面への塗布には適していない。単に互いに重なり合った基材を直接押すか、または加圧ローラーを使って押しても、通常、均一で薄い接着フィルムの安定的な形成には至らない。
【0011】
US2007/0289996には、二成分ポリウレタンまたはエポキシ接着剤用の塗布装置が記載されている。ここでは並列に配置された2つの接着剤カートリッジが、配送装置により同時に空になり、吐出装置として円形の先端を有する静的ミキサーが記載されている。
【0012】
さらに、DE19956835も公知である。この文献には、二成分ポリウレタン接着剤による、重なり合った端部におけるルーフィング膜の接着が記載されている。ここで、一方の基材は、接着剤が浸透すると思われる織布または不織布からなる。
【0013】
EP2049612も公知である。この文献には、イソシアネート含有化合物およびOH含有化合物に基づく二成分接着剤が記載されている。この接着剤は、積層接着剤として使用される。この接着剤のためのより詳細な使用方法や供給方法は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願第2007/0289996号明細書
【特許文献2】独国特許第19956835号明細書
【特許文献3】欧州特許出願第2049612号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
反応性二成分接着剤の適用に関して、先行技術は、接着剤供給の汚染を減らす形態で接着剤を提供するという課題をもたらす。さらに、接着剤成分の完全な架橋により良好な接着が得られるように、接着剤混合物の組成における誤りは避けられるべきである。また、これらの接着剤成分は取扱い易いものであるべきである。この接着剤は、大きくて軟らかい表面の接着に適したものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題
は、軟質フィルム基材
を全面接着
して多層フィルムを形成するための二成分ポリウレタン接着剤の使用
であって、接着剤をカートリッジに充填して供給する使用により解決される。
【0017】
さらに、本発明は、2つのカートリッジユニットに注入された2成分接着剤からなる、フィルム様基材に接着剤を塗布するための装置において使用されるパッケージングユニット(キット)の使用に関する。さらに、本発明は、フィルム様基材の接着方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の多層フィルムを製造するための基材として、既知の軟質フィルムを用いることができる。さらに、例えば紙または板などの他の平坦基材も接着することができる。これらは、例えばフィルム状の熱可塑性プラスチック、例えばポリオレフィン〔例えばポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP、CPP、OPP)、塩化ポリビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)など〕、ポリエステル〔例えばPET〕、ポリアミド、天然ポリマー〔例えばセロハンまたは紙〕などからなる基材である。このフィルム材は、例えばポリマーを官能基で修飾することにより変性することもでき、また、例えば顔料や染料などのさらなる成分をフィルムに加えることもできる。フィルム材は、着色または印刷されたフィルムであってもよく、無色のフィルムまたは透明フィルムであってもよい。このフィルム材を、例えば紙、板または金属箔などの他の基材と接着させることもできる。接着層により互いを接着させることにより、軟質多層フィルムを形成する。
【0019】
本発明の適当な接着剤は、互いに反応して架橋した接着膜を形成することのできる異なる二成分からなる二成分接着剤である。特に、本発明の接着剤は、NCO基含有成分と酸水素基によって架橋する二成分ポリウレタン接着剤である。成分Aとしては、NCO基含有プレポリマーまたはポリイソシアネートが例示され、一方、他の成分のNCO基と反応することのできる、OH基、NH基、SH基、COOH基を含むオリゴマーまたはポリマーを成分Bとして使用することができる。網状構造を得るために、架橋する成分に少なくとも2個のNCO基と少なくとも2個の特にOH基が含まれていることが好適である。さらに、それ自体は既知の添加剤を接着剤に配合することもできる。これらの添加剤は、接着剤の特定の特性を調整し、特性に影響を与えることのできる成分である。
【0020】
例えば、ポリオール成分と、化学量論的に過剰量の少なくとも二価のイソシアネートとの反応により得ることのできる、少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーまたはそのようなポリウレタンプレポリマーの混合物を、例えば成分Aとして使用することができる。
【0021】
本発明の意義の範囲において、ポリウレタンプレポリマーは、OH基またはNH基を有する化合物と過剰量のポリイソシアネートとの反応生成物である。ポリウレタンプレポリマーは、接着剤用途で既知のポリオールであり、あるいは第2級および/または第1級アミノ基を有する対応する化合物である。OH基含有出発化合物が好適である。20,000g/mol以下の、特に200〜10,000g/mol(数平均分子量、M
N、GPCにより測定可能)の分子量を有するポリオールが、前記プレポリマーを合成するのに特に適している。これらは、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、アルキレンポリオールに基づくポリオールであってよい。別の実施態様において、NH基含有化合物が用いられる。
【0022】
ポリオール成分は低分子量(例えば約60g/mol〜1500g/molの分子量)であってよいが、高分子量ポリマー(例えば1500〜20,000g/molの分子量)を反応させることもできる。ポリオール(例えばジオール)に平均して2個の反応基が存在すべきであるが、数個の官能基を有する化合物を反応させることもできる。
【0023】
一実施態様では、好ましくは、1500g/mol以下の分子量を有する低分子量非分枝ポリオール(このポリオールは、3個、または特に2個のOH基を有する)を使用する。別の実施態様では、20,000g/mol以下の分子量を有するOH基含有ポリマーを使用する。より多くの数のOH基を含むこともできる。
【0024】
例えば、脂肪族、脂環式または芳香族イソシアネートなどの2個以上のイソシアネート基を有するそれ自体は既知のポリイソシアネートをポリマー合成におけるポリイソシアネートとして使用することができる。原則として、すべての既知のイソシアネートを使用することができ、特にメチレンジイソシアネート(MDI)またはトルイレンジイソシアネート(TDI)の異性体、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1−イソシアナトメチル−3−イソシアナト−1,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、ヘキサン−1,6−ジイソシアネート(HDI)を使用することができる。例えばイソシアヌレート、カルボジイミドまたはビューレットなどのジイソシアネートのトリマー化またはオリゴマー化により得られる、少なくとも三官能性のイソシアネートを使用することもできる。好ましくはジイソシアネートを使用し、特に芳香族ジイソシアネートを使用する。
【0025】
イソシアネートの量により反応制御は影響を受け得る。過剰量のイソシアネートを用いた場合、イソシアネート基においてOH基が官能化されたポリウレタンプレポリマーが形成される。この場合、分子量のわずかな増加が認められる。少量のイソシアネートを用いた場合、あるいは反応を徐々に行った場合、出発物質に比べてプレポリマーの分子量が増加することがわかっている。完全な反応に対して、全体として過剰量のイソシアネート基を使用することを確保しなければならない。イソシアネートを有するポリオール化合物の反応は、公知の方法で行うことができる。
【0026】
本発明に、反応性NCO基を有するポリウレタンプレポリマーを使用することができる。このようなプレポリマーは当業者に既知であり、商業的に入手することができる。本発明においては、ジイソシアネートによる反応によりポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールに基づいて製造されるポリウレタンプレポリマーが特に好ましい。本発明において使用されるポリウレタンプレポリマーは、一般的に500〜約30,000g/mol、好ましくは15,000g/mol以下の、特に1000〜5000g/molの分子量を有する。プレポリマーが単量体の未反応ジイソシアネートをほとんど含まない(例えば、1重量%以下)ことが好ましい。
【0027】
別の実施態様では、成分Aとして、モノマーの、オリゴマーのまたはポリマーのイソシアネートを使用する。これらは、例えば上記のポリイソシアネート、またはそのカルボジイミド、イソシアヌレート若しくはビューレットであり得る。プレポリマーとポリイソシアネートの混合物も可能である。
【0028】
NCO基を含有する適当な成分に加えて、成分Aはさらに助剤または添加剤を含むことができる。イソシアネート基と反応することのできない成分のみを加えないことが重要である。これにより貯蔵安定性が確保される。
【0029】
適当な二成分ポリウレタン接着剤の成分Bは、イソシアネート基と反応する少なくとも2個の基を有する少なくとも1つの化合物を含んでいなければならない。これらは、例えばSH、COOH、NHまたはOH基であり得る。ポリオールが特に好ましく、ポリオールは異なる化学構造または異なる分子量のポリオールの混合物であってもよい。
【0030】
成分Bで使用するポリオール成分として、多くのポリオールが適している。例えば、これらのポリオールは、一分子中に2〜10個のOH基を有するポリオールであり得る。これらは脂肪族化合物または芳香族化合物であり得、適切な数のOH基を有するポリオールを使用することもできる。OH基は、イソシアネート基との十分な反応性を有する限り、第1級OH基であっても第2級OH基であってもよい。このようなポリオールの分子量は広範囲(例えば、500〜10,000g/mol)で変化し得る。すでに記載されたようなポリオールを含むこともできる。
【0031】
このようなポリオールの例は、好ましくは2〜10個のOH基を有する低分子量の脂肪族ポリオールであり、特にC
2〜C
36アルコールである。適当なポリオールの他の群は、例えばポリエーテルである。これらは、炭素数2〜4のアルキレンオキシドと、低分子量の二官能性アルコール若しくは三官能性アルコールの反応生成物である。ポリエーテルポリオールは、特に400〜5000g/molの分子量を有するべきである。OH基含有ポリ(メタ)アクリレートまたはポリオレフィンも適している。
【0032】
ポリエステルポリオールは、成分Bで使用するポリオール化合物のさらなる適当な群である。接着剤用に公知であるポリエステルポリオールを使用することができる。ポリエステルポリオールは、ジオール、特に低分子量アルキレンジオール若しくはポリエーテルジオールとジカルボン酸との反応生成物であり得る。これらは脂肪族若しくは芳香族カルボン酸またはそれらの混合物であり得る。このようなポリエステルポリオールは、当業者に種々の形態で知られており、商業的に入手可能である。特に、これらのポリエステルポリオールは、200〜3000g/molの分子量を有するべきである。これらには、少なくとも2個の官能基を有し、対応する適当な分子量を有する限り、ポリマーラクトンまたはポリアセタールも含まれる。
【0033】
少なくとも2個の反応性基を有する本発明の適当なポリオールは、単独で、または混合物として使用することができる。化合物が互いに混和性であって、貯蔵中に相分離を生じないことを確保することが重要である。成分Bの構成成分を選択することにより粘度に影響を与えることができる。高分子ポリオールを使用する場合、成分Bはより高い粘度を有する。例えば炭素数12のポリアルキレンポリオールなどの、低分子量ポリオールの割合を使用する場合、粘度は低くなる。本発明によれば、成分Bが液体であることが好適である。これは、ポリオールの選択により達成できるが、別の実施態様においては不活性有機溶媒を加えることができる。
【0034】
二成分積層接着剤は、上記のバインダー成分から製造することができる。これらの積層接着剤に、例えば溶剤、可塑剤、触媒、樹脂、安定化剤、接着促進剤、顔料またはフィラーなどのさらなる成分を含有することが好適である。
【0035】
一実施態様において、本発明の適当な接着剤は、少なくとも1つの粘着付与樹脂を含む。原則として、相溶性があり、ほぼ均質な混合物を形成するすべての樹脂を使用することができる。
【0036】
高分子量の立体障害型フェノール、多官能性フェノール、イオウ含有フェノールおよびリン含有フェノールまたはアミンが、任意に使用する安定化剤若しくは酸化防止剤として適している。
【0037】
さらに、接着促進剤として接着剤にシラン化合物を添加することができる。公知の有機官能性シラン、例えば(メタ)アクリルオキシ官能性、エポキシ官能性、アミン官能性または非反応性置換シランを接着促進剤として使用することができ、メトキシシラン基またはエトキシシラン基を有するものが特に適している。
【0038】
任意に付加的に存在する添加剤として、本発明の接着剤は触媒を含むこともできる。OH基とNCO基の反応を触媒し得るすべての既知の成分を触媒として使用することができる。その例は、チタン酸塩、カルボン酸スズ、酸化スズ、有機アルミニウム化合物、tert−アミン化合物またはその塩である。適当な添加剤は、当業者に既知である。
【0039】
別の実施態様では、接着剤に顔料も含まれる。この顔料は、微細粒子顔料(例えば、小平板様粒子またはナノ粒子)である。さらに、例えば、ホワイトオイル、ナフテン系鉱物油、パラフィン系炭化水素油、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレンオリゴマー、水素化ポリイソプレンおよび/またはポリブタジエンオリゴマー、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、安息香酸エステル、植物油または動物油およびそれらの誘導体などの可塑剤を配合することもできる。食品規制の意義において安全である可塑剤が特に適している。
【0040】
本発明によれば、本発明の接着剤は溶剤も含有し得る。これらの溶剤は、120℃以下の温度で蒸発し得る従来の溶剤である。この溶剤は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトンまたはエステル(特にC
2−C
6カルボン酸のエステル)の群から選択し得る。別の好ましい実施態様においては、本発明の二成分接着剤は溶剤を含まない。特に、成分Aおよび成分Bにより、50℃以下の温度で低粘度を有する成分AとBの混合物を得ることを確保すべきである。
【0041】
本発明で使用されるポリウレタン接着剤は、反応性NCO基を有する成分Aと、反応性NH基、または特にOH基を有する成分Bとから構成される。さらに、成分AとBは、0〜30重量%の添加剤および助剤を含むことができる。原則として、添加剤はいずれの成分にも存在することができる。しかしながら、NCO反応性基を有する添加剤は、好ましくはOH成分に含まれるべきである。そうでない場合、製品の貯蔵安定性が低下する。
【0042】
別々に格納(保存)される場合、成分Aおよび成分Bは安定である。塗布するために、OH基とNCO基の比率がほぼ同等比率になるように2つの成分を混合する。接着剤の混合比率は、所定の比率である。それは、1:10〜10:1(体積比)、特に1:2〜2:1であり得る。
【0043】
使用し得る二成分ポリウレタン接着剤は、約20〜80℃の塗布温度で低い粘度を有するべきである。成分を混合した直後に測定する本発明の二成分ポリウレタン接着剤の粘度は、塗布温度で、200〜10,000mPas、好ましくは500〜5000mPas(20〜60℃、ブルックフィールド粘度計、EN ISO 2555)であるべきである。より高い塗布温度も可能であるが、接着されるフィルム基材が熱に弱いものであり得ることに留意すべきである。
【0044】
二成分ポリウレタン接着剤は、例えばカートリッジなどの別々の保存容器で提供されなければならない。これにより、保管、接着剤塗布装置での容易な塗布および軟質基材上への薄い接着層の生成が可能となる。
【0045】
本発明は、本発明の使用のための二成分ポリウレタン接着剤を含むパッケージングユニット(キット)にも関する。したがって、接着剤を含むパッケージングユニットは、フィルム基材用の積層接着剤としての使用に有用でなければならない。本発明のパッケージングユニットは、少なくとも2つの、好ましくはカートリッジ状の保存容器から構成され、1つの容器は接着剤の成分Aを含み、2つ目の容器は成分Bを含む。さらに、パッケージングユニットは、保存容器に接合する吐出装置を有することもできる。保存容器の構造および形状は、広範囲において変えることができる。これらの保存容器を、例えば、互いに固定された個別のカートリッジとして設計することができる。別の実施態様では、互いに同軸配置のカートリッジとなるように保存容器を選択する。別の実施態様では、2つのカートリッジとして保存容器が配置されるのではなく、柔らかい分離壁により互いに別々の容器に分離された1つのカートリッジを使用する。
【0046】
保存容器の形状は、好ましくは、可能な限りポンプによる配送、吸引若しくはホース設備が必要とならないよう選択するべきである。保存容器が、例えば圧板により可動基板上で底部に圧力をかけることができ、これによりカートリッジの中身が反対側の吐出口から出てくることのできるカートリッジ形態であることが好ましい。プランジャーはカートリッジごとに備えることができるが、1つのプランジャーが同軸配置のカートリッジを同時に空にすることもできるし、または別々の格納空間を有する1つのカートリッジを空にすることもできる。
【0047】
カートリッジのサイズは変えることができる。サイズは1kg〜60kgであり得る。それぞれの保存容器が違うサイズであってもよいし、同じサイズであってもよい。保存容器のサイズは、例えば、接着剤の必要な混合比を達成されるように選択する。例えば1:1の混合比を予定している場合、同じサイズのカートリッジを準備することが有利である。例えば2:1などの異なる混合比率が必要な場合、適切なサイズの2つのカートリッジを準備することが好適である。吐出口の形状およびサイズにより、混合比を設定することが可能である。また、カートリッジが空になる速度により比率を調整することもできる。
【0048】
パッケージングユニットのさらなる構成要素は吐出装置であり得る。この吐出装置は、カートリッジから出た二成分を一体化することができるように設計される。吐出装置は、好ましくは2つの成分を混合することのできる混合エレメントを有しているべきである。混合エレメントは、例えば、静的ミキサーである。混合エレメントは、好ましくは吐出装置の末端に位置する。積層接着剤の塗布において、接着剤はこの吐出装置からフィルム基材用の塗布装置内へ注入される。
【0049】
2つのカートリッジと吐出装置を、接着剤ごとの特定の混合比率に適合させることにより、均一な消費が確実に達成される。いずれの保存容器もほぼ同時期に空になるべきであり、その後、保存容器を交換して廃棄することができる。保存容器がそれらの吐出口で吐出装置に適合しており、好ましくはその下流に静的ミキサーが存在するため、輸送設備が停止した場合にも接着剤成分の早まった混合の危険性がない。キットは、好ましくは、二成分ポリウレタン接着剤の所定のポットライフの間に接着剤供給が使用されなかった場合に、吐出ユニットおよび混合エレメントを容易に新たな汚染されていないユニットと交換することができるように設計されるべきである。
【0050】
さらに、本発明は、2つのフィルム様基材を接着する方法を提供する。ここで、接着剤は、本発明のパッケージングユニットの要件に応じて調製することができる。例えば、静的ミキサーを使用して特定の混合比で混合する。混合装置の吐出装置から積層接着剤塗布装置へ、例えば房状に接着剤を注入する。塗布装置は、房状の接着剤から平坦な接着層を形成する。公知の装置を使用して接着剤をフィルムへ塗布することができる。これらは当業者に既知であり、ヘラ付け、プリント塗工、スロットノズル塗布またはローラー塗りが含まれる。例えば特定のローラーを用いて薄く均一な接着層を形成するローラー塗りが特に適している。次いで、この接着層をフィルム上に平坦に移動させる。その後、このフィルムを、別のプラスチックフィルム、多層フィルム、金属化フィルムまたは紙あるいは板材のいずれかである2つ目のフィルムと合わせて、加圧下で接着させる。
【0051】
カートリッジまたはこれらのローラーを加熱することが好適であることがある。これにより、塗布条件下において低粘度の二成分ポリウレタン接着剤を実現できる。本発明の使用における二成分ポリウレタン接着剤の通常の塗布温度は20〜80℃、特に60℃以下である。
【0052】
本発明の方法によれば、適当な接着剤を基材へ層として塗布する。接着剤は、1g/m
2〜100g/m
2、好ましくは1〜30g/m
2、特に20g/m
2未満のフィルム厚で塗布されるべきである。
【0053】
カートリッジで提供される接着剤成分の本発明の使用により、そのような積層接着剤の有利な利用が可能となる。所定のサイズおよび形状の2つのカートリッジを、任意に吐出装置と一緒に用いることにより、二成分ポリウレタン接着剤の混合エラーを確実に生じないようにすることができる。さらに、保存容器からの単純な吐出装置を使用することもできる。本発明の作動形態は、例えばポンプやパイプなどの輸送設備の汚染を防ぐ。異なる適用プロファイルを有する異なる接着剤に切り替えることも可能である。特に、使い捨てエレメントとして設計し得る静的混合エレメントを備えることで、製造が停止した場合でも、すでに混合されたが塗布されていない接着剤により輸送設備が詰まるのを防止する。
【0054】
それ自体は既知である二成分ポリウレタン接着剤のカートリッジの形態での使用、特に接着剤成分の調整されたキットの形態での使用により、フィルム基材のコーティングを大幅に簡素化することができる。