(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入口端、出口端、入口端と出口端との間に延在する基板軸方向長さを含むウォールフロー基板、及びウォールフロー基板の内壁により画定される複数の通路を有する触媒スートフィルタであって、
複数の通路は、開放入口端と閉鎖出口端を有する入口通路、閉鎖入口端と開放出口端を有する出口通路を含み;
入口通路の内壁は、最初の入口被膜を有し、該入口被膜が入口端から最初の入口被膜端まで延びることにより最初の入口被膜長が画定され、該最初の入口被膜長は、基板の軸方向の長さのx%、0<x<100であり;
出口通路の内壁は、最初の出口被膜を有し、該出口被膜が出口端から最初の出口被膜端まで延びることにより最初の出口被膜長が画定され、該最初の出口被膜長は、基板の軸方向の長さの100−x%であり;
最初の入口被膜長は上流帯を画定し、最初の出口被膜長は下流帯を画定し;
最初の入口被膜と最初の出口被膜は、最初の入口被膜のローディング(g/インチ3(g/(2.54cm)3)):最初の出口被膜のローディング(g/インチ3(g/(2.54cm)3))の比として計算される被膜ローディング比が0.5未満であり;
最初の入口被膜は、少なくとも一種の白金族金属(PGM)を含む酸化触媒を含み、
最初の出口被膜は、少なくとも一種の白金族金属(PGM)を含む酸化触媒を含み、
PGM比は、最初の入口被膜に含まれているPGMの総量(g/ft3(g/(30.48cm)3))を、最初の出口被膜に含まれているPGMの総量(g/ft3(g/(30.48cm)3))で除したものと画定され、2から10であることを特徴とする触媒スートフィルタ。
最初の入口被膜に含まれる酸化触媒は、プラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選ばれる少なくとも一種の白金族金属(PGM)を含むことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の触媒スートフィルタ。
最初の出口被膜に含まれる酸化触媒は、プラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選ばれる少なくとも一種の白金族金属(PGM)を含むことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の触媒スートフィルタ。
最初の入口被膜及び最初の出口被膜にそれぞれ含まれる酸化触媒は、プラチナとパラジウムから成り、最初の入口被膜におけるプラチナ:パラジウムの質量比は、10:1から1:10の範囲にあり、及び最初の出口被膜におけるプラチナとパラジウムの質量比は、10:1から1:10の範囲にあることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の触媒スートフィルタ。
最初の入口被膜及びk+1の出口被膜にそれぞれ含まれる酸化触媒は、プラチナとパラジウムから成り、最初の入口被膜におけるプラチナ:パラジウムの質量比は、10:1から1:10の範囲にあり、及びk+1の出口被膜におけるプラチナとパラジウムの質量比は、10:1から1:10の範囲にあることを特徴とする請求項11から15の何れか1項に記載の触媒スートフィルタ。
(iv)工程(iii)の後に、k個の更なる出口被膜を塗布する工程であって、(J+1)番目の出口被膜はJ番目の出口被膜の上に、前記(J+1)番目の出口被膜が出口端から(J+1)番目の出口被膜端まで延在するように塗布され、これにより(J+1)番目の出口被膜の長さが画定され、(J+1)番目の出口被膜の長さはJ番目の出口被膜の長さのyj+1%であって、0<yj+1≦100であり;ここで、kは整数であって、k≧1であり;jは整数であって1≦j≦kである、を更に含むことを特徴とする請求項20に記載の製造方法。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等のようなリーンバーンエンジンの操作は、ユーザに優れた燃費を提供する。そして、燃料のリーン条件下で高い空気/燃料比での操作により気相の炭化水素及び一酸化炭素の放出は非常に低い。ディーゼルエンジンは、燃費、耐久性、及び低い速度での高いトルクを発生する能力において、ガソリンエンジンよりも優れた利点を提供する。しかしながら、ディーゼルエンジンの排気ガスには、汚染の原因となり、環境に重大な影響を及ぼすことが周知のある種の物質が存在する。一酸化炭素(“CO”)、未燃焼炭化水素(“HC”)及び窒素酸化物(“NOx”)のような気体放出は別として、ディーゼルエンジンの排気には、凝縮された相材料、すなわち液体及び固体が含まれる。これらは所謂粒子状物質(“PM”)を構成する。ディーゼル排気に含まれる総合の粒子状物質は、可溶性有機成分(“SOF”)及び所謂硫酸塩成分は別として、固体の乾燥した炭素質成分、所謂“スート”成分が含まれる。このスートは、通常ディーゼル排気と関連付けられる目に見えるスート放出に貢献する。可溶性有機成分は、ディーゼル排気に気体又はエアロゾル、すなわちディーゼル排気の温度に依存する液体凝縮の微細な液滴として存在することが可能である。一般に、それはU.S. Heavy Duty Transient Federal Test Procedure のような標準測定法により規定されているように希釈排気中に52℃の標準の微粒子コレクション温度で凝縮された液体として存在する。これらの液体は、2つの源から発生すると信じられている。一つは、ピストンが上下するたびにエンジンのシリンダー壁部から掃かれた潤滑油であり、他方は未燃焼又は部分的に燃焼されたディーゼル燃料である。硫酸塩成分は、ディーゼル燃料に存在する僅かな量の硫黄成分から形成されると信じられている。
【0003】
触媒フィルタは、一般にディーゼル排気システムで提供され、高い粒子状物質の削減、特にスートの削減を達成する。そして、排気成分の或る程度又は全部を無害の成分に変換する。ディーゼル排気から粒子状物質を取り除く周知のフィルタ構造は、ハニカムウォールフローフィルタ、巻かれた又はパックされた繊維フィルタ、連続気泡発泡体、焼成金属フィルタ等である。しかしながら、以下に述べるように、セラミックウォールフローフィルタが最も注目を受けている。一般に、セラミックウォールフローの基板は、菫青石又は炭化ケイ素等の高融点金属]材料から構成される。ウォールフロー基板は、ディーゼルエンジン排気ガスから粒子状物質をフィルタするのに特別に有用である。通常の構成は、マルチ通路ハニカム構造体であり、ハニカム構造体の入口側及び出口側通路に別の通路の両端が接続される。この構成により、結果としてどちらかの端部でチェッカーボード型のパターンを生じることとなる。入口側軸方向端部に接続された通路は、出口側軸方向端部で開放している。これにより、粒子状物質を含む排気ガスが開放入口側通路に入り、多孔質の内部へ基部を通過し、そして開放出口側軸方向端部を有するチャネルを通って出ることが可能となる。粒子状物質は、それによって基板の内壁でフィルタされることとなる。ガス圧は、排気ガスを上流の軸方向端部では閉鎖しており下流の軸方向端部では開放しているチャネルへ多孔質構造壁部を介して押し入れる。粒子を蓄積すると、エンジンにフィルタからの背圧を増加させることとなる。このように、蓄積される粒子は、許容の背圧を維持するために連続的に又は定期的にフィルタから燃焼して燃やさなければない。ウォールフロー基板の内壁に沿って堆積される触媒成分は、蓄積された粒子状物質を燃焼させることによりフィルタ基板の再生を支援する。蓄積された粒子状物質の燃焼は、排気システム内で許容できる背圧を回復させる。これらの工程は、パッシブ又はアクティブ再生工程である。両方の工程とも粒子状物質を燃焼させるためO
2又はNO
2等のオキシダントを活用する。パッシブ再生工程は、粒子状物質をディーゼル排気システムの通常の操作範囲内の温度で燃焼させる。好ましくは、再生工程で使用するオキシダントは、NO
2である。何故なら、スート成分は、O
2がオキシダントとして作用する場合のそれらが必要とする温度よりもかなり低い温度で燃焼するからである。O
2は大気から入手可能である一方、NO
2は排気流でNOを酸化する上流酸化触媒の使用を通じて積極的に生成され得る。
【0004】
触媒成分の存在及びオキシダントとしてNO
2を使用するための規定にも拘らず、アクティブ再生工程は、一般に蓄積された粒子状物質が取り除かれ、フィルタ内の許容背圧を回復される必要がある。粒子状物質のスート成分は、一般に酸素が豊富にある条件下で燃焼するために500℃を超す温度が要求される。すなわち乏しい条件であり、それはディーゼル排気で一般に存在する温度よりも高温である。アクティブ再生工程は、一般にフィルタ前面の温度を570−630℃まで上げるためにエンジンマネジメントを変更することにより開始される。走行モードに依存して、低速/低負荷時又はアイドル運転モード等で再生中に冷却が不十分であるとき、高い発熱がフィルタ内部で起こり得る。そのような発熱は、フィルタ内部で800℃を越える。塗布されたウォールフローフィルタで、再生中にそのような高温に晒されると、基板の長手方向に沿って塗布された触媒成分の有用なライフタイムが縮められることになる。更に、基板の軸方向長さに沿った異なるセグメントは、再生工程によって偏った影響を受ける。粒子状物質の堆積は、ウォールフローフィルタの長さに沿って均一ではなく、フィルタの下流のセグメント内で粒子状物質の高い蓄積が起こる。その結果として、基板の長さに亘って温度は不均一に分布し、アクティブ再生工程中に、下流のセグメントで最高温度を示す。このように、下流のセグメントに沿った触媒成分の耐久性が、全触媒塗布ウォールフロー基板の有用な寿命を制限する。
【0005】
例えば、白金族の金属含有成分等のある種の酸化触媒の高い材料費は、アクティブ再生工程による触媒被膜の劣化を遅め又は阻止する必要を増大させている。ウォールフローフィルタに堆積される触媒被膜は、ディーゼル排気のHC及び/又はCOの気体放出を無害の成分(例えば、CO
2,H
2O)に許容可能な変換を確保するため、しばしば白金族成分を活性触媒成分として含んでいる。そのような成分の装着は、一般に触媒基板が触媒のエージング後も排ガス規制に適合するように調整されている。
【0006】
ある種の通常のウォールフロー基板用に設計された被膜は、内壁の軸方向の全長に沿って均一な被膜分布を有している。そのような設計では、酸化触媒は、もっとも厳しい条件下で排ガス規制に適合するように調整されている。最も頻繁にそのような条件は、触媒がエージングした後で触媒の性能として参照される。要求する白金族金属濃度に関連する費用は、しばしば所望するよりも高いことがある。
【0007】
ウォールフロー基板用に設計される他の通常の被膜は、基板の軸方向長さに沿って白金族成分の濃度勾配を採用している。これらの設計では、或る触媒ゾーン、例えば上流ゾーンは隣接する軸方向ゾーン、例えば下流ゾーンの有する白金族金属の濃度よりも高い濃度を有する。一般に、高い白金族金属成分が堆積された軸方向ゾーンの内壁は、低い白金族金属濃度を有する隣接するゾーンより低い透過性を有する。高いウォッシュコートローディングのためである。入口通路の長さに沿って通過する排気流は、最も高い透過性を有するセグメントの内壁を通過する。このように、ガス流は、低い酸化触媒濃度を有する内壁セグメントを通過する傾向にある。この相違のあるフローパターンは結果として不十分な汚染物質変換となり得る。例えば、ある種の汚染物質、例えば未燃焼の炭化水素は、粒子状物質が十分なレベルの燃焼を達成するのに要求するよりも、高い濃度の白金族金属成分と接触することが必要である。この要求は、排気温度が低い、例えばスタートアップ時の動作条件の間により激化する。
【0008】
特許文献1は、複数のセルから成るディーゼル粒子フィルタについて開示している。このセルは、多孔質のセル壁により区切られており、フィルタの上流端及びその反対側の下流端で栓より千鳥状に閉じられている。ここで、最初の酸化触媒被膜層は、フィルタの上流端で開放しているセルのセル壁の全表面に形成されている。そして、2番目の酸化触媒被膜層は、フィルタの下流部分においてフィルタの下流端で開放しているセルのセル壁の表面に形成されている。このように、この特許文献1は、上流端で開放しているセルと、下流端で開放しているセルを分けるセル壁部の領域を有するフィルタについて開示している。ここで、それぞれのセルの触媒被膜層はオーバラップしている。最初の酸化触媒被膜層がそれぞれのセル壁の全表面に形成されている事実による。
【0009】
特許文献2は、フィルタがハニカム状に配置された多数のチャネルを有する、燃焼エンジンの排気システム用のウォールフローフィルタを開示している。ここで、チャネルの少なくとも幾つかは上流端で塞がれており、上流端で塞がれていないチャネルの少なくとも幾つかは下流端で塞がれている。また、ウォールフローフィルタは、下流端で塞がれているチャネルの上流端に実質的にガスが不透過なゾーン上の酸化触媒と、スートを捉えるための酸化触媒の下流でガスが透過するフィルタゾーンを有する。ここで、排気システムにおいて、酸化触媒は、400℃未満の温度で捉えたスートを連続的に燃焼し、NOから十分なNO
2を生成することができることを特徴としている。特許文献2によれば、所定のセル壁部の反対側の被膜は、ガス透過ゾーンを許容するために、両側に被膜がないセル壁部の領域があるように被膜されている。
【0010】
特許文献3は、統合された多機能触媒システムを開示している。このシステムは、フローを受け入れるための入口側と反対の出口側を持つディーゼル粒子フィルタ、内壁表面と外部壁部表面を有するディーゼル粒子フィルタ内の基板、内壁表面と隣接する入口側に被膜された最初のウォッシュコート層、外部壁部表面と隣接する出口側に被膜された2番目のウォッシュコート層を有する。ここで、基板を通過するフロー分布は背圧を最少にするために分散されている。好ましい実施の形態によれば、最初のウォッシュコート層は、基板の最初の長さを占有する。2番目のウォッシュコート層は、基板の2番目の長さを占有する。ここで、最初の長さと2番目の長さの和は、基板の全長にほぼ等しい。更なる好ましい実施の形態で、特許文献3はディーゼル粒子フィルタを開示している。このフィルタは、フローを受け入れるための入口側と反対の出口側、ディーゼルフィルタ内に多数のハニカムセルを有する。ここで、出口チャネルを変更することは入口側でブロックされ、入口チャネルを変更することは反対の出口側でブロックされている。また、フィルタは、入口チャネルの各々に基板を有し、各々の基板は内壁表面と外部壁部表面とを有する。また、フィルタは、内壁表面と隣接する入口側に被膜された最初のウォッシュコート層と、外部壁部表面と隣接する出口側に被膜された2番目のウォッシュコート層を有する。ここで、基板を通過するフローの分布は、背圧を最少にするために分散されている。この2番目のウォッシュコート層は、最初のウォッシュコート層よりも異なる機能を有している。
【0011】
特許文献4は、帯状触媒スートフィルタについて開示している。フィルタは、入口端、出口端、軸方向長さが入口端と出口端に延在する基板、及びウォールフロー基板の内部基部により画定される複数の通路を有する。複数の通路は、開放入口端と閉鎖出口端を有する入口通路と、閉鎖入口端と開放出口端を有する出口通路を有する。入口通路の内壁は、入口端から最初の入口被膜端まで延在する最初の入口被膜を有する。これにより最初の入口被膜長さが画定される。最初の入口被膜長さは、基板の軸方向長さより小さい。出口通路の内壁は、出口端から出口被膜端まで延在する出口被膜を有する。これにより出口被膜長さが画定される。最初の入口被膜長さと出口被膜長さの合計は、実質的に基板の軸方向長さに等しい。最初の入口被膜長は上流ゾーンを画定し、出口被膜長は下流ゾーンを画定する。最初の入口被膜は、少なくとも1つの最初の入口白金族金属成分を含んでいる。上流ゾーンには、少なくとも50%の白金族金属成分が存在している。この特許文献4の技術によれば、出口被膜のウォッシュコートローディングに対する最初の入口ゾーンのウォッシュコートローディングの比で画定されるウォッシュコートローディング比は、0.5から1.5の範囲である。このように、この特許文献4では、ウォッシュコートローディング比が1より大きい又は小さい実施の形態を区別していない。更に、ウォッシュコートローディング比の下限を画定している。すなわち、0.5の限界である。
【0012】
一般に、ディーゼル排気システムで使用される触媒スートフィルタの活性再生が運転中に停止すると、例えば、エンジンがアイドル運転になると、触媒スートフィルタの後方端は未制御のスート燃焼により高温になる。フィルタの後方部分の温度の最大値は、フィルタの後方部分にローディングされるスートにより減少すると信じられている。フィルタにローディングされる最大スート、頻繁にスートマスリミット(“SML”)として参照される、はこの最大温度により決定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、本発明の目的は、スートマスローディング(“SML”)を増加させ最大温度を減少させることが可能な触媒スートフィルタを提供することにある。
【0015】
したがって、本発明は、ドロップツーアイドル再生中に低い最大温度と高いスートマスリミットを可能とする被膜デザインを有する触媒スートフィルタに注意が向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は触媒スートフィルタにより達成される。このフィルタは、
入口端、出口端、入口端と出口端とに延在する軸方向長さを有するウォールフロー基板、及びウォールフロー基板の内壁により画定される複数の通路を有する;
ここで、複数の通路は、開放入口端と閉鎖出口端を有する入口通路、閉鎖入口端と開放出口端を有する出口通路を含む;
ここで、入口通路の内壁は、入口端から最初の入口被膜端まで延びる最初の入口被膜を有し、これにより、最初の入口被膜長が画定される。ここで、最初の入口被膜長は、基板の軸方向の長さのx%であり、xは、0<x<100である;
ここで、出口通路の内壁は、出口端から最初の出口被膜端まで延びる最初の出口被膜を有し、これにより、最初の出口被膜長が画定される。ここで、最初の出口被膜長は、基板の軸方向の長さの100−x%である;
ここで、最初の入口被膜長は上流帯を画定し、最初の出口被膜長は下流帯を画定する;
ここで、最初の入口被膜と最初の出口被膜は、0.5未満の被膜ローディング
比でウォールフロー基板に存在する。被膜ローディング
比は、最初の入口被膜のローディング(g/インチ
3(g/(2.54cm)
3)):2番目の入口被膜ローディング(g/インチ
3(g/(2.54cm)
3))の比として計算される。
【0017】
上記目的は、好ましくは触媒スートフィルタにより達成される。このフィルタは、
入口端、出口端、入口端と出口端とに延在する軸方向長さを有するウォールフロー基板、及びウォールフロー基板の内壁により画定される複数の通路を有する;
ここで、複数の通路は、開放入口端と閉鎖出口端を有する入口通路、閉鎖入口端と開放出口端を有する出口通路を含む;
ここで、入口通路の内壁は、入口端から最初の入口被膜端まで延びる最初の入口被膜を有し、これにより、最初の入口被膜長が画定される。ここで、最初の入口被膜長は、基板の軸方向の長さのx%であり、xは、0<x<100である。前記最初の入口被膜は酸化触媒を含む;
ここで、出口通路の内壁は、出口端から最初の出口被膜端まで延びる最初の出口被膜を有し、これにより、最初の出口被膜長が画定される。ここで、最初の出口被膜長は、基板の軸方向の長さの100−x%である。前記最初の出口被膜は酸化触媒を含む;
ここで、最初の入口被膜長は上流帯を画定し、最初の出口被膜長は下流帯を画定する;
ここで、最初の入口被膜と最初の出口被膜は、0.5未満の被膜ローディング
比でウォールフロー基板に存在する。被膜ローディング
比は、最初の入口被膜のローディング(g/インチ
3(g/(2.54cm)
3)):2番目の入口被膜ローディング(g/インチ
3(g/(2.54cm)
3))の比として計算される。
【0018】
上記目的は触媒スートフィルタの製造工程により達成される。この工程は、
(i)好ましくは DIN 66133 に従う水銀測定法により測定した38から75の範囲の気孔率を有し、入口端、出口端、入口端と出口端の間に延在する基板軸方向長さ、及びウォールフロー基板の内壁で画定される多数の通路を有するウォールフロー基板を準備する工程;
ここで、複数の通路は、開放入口端と閉鎖出口端を有する入口通路、閉鎖入口端と開放出口端を有する出口通路を有する;
(ii)入口通路の内壁に、最初の入口被膜を入口端から最初の入口被膜端まで延在するように塗布する工程。
それによって、最初の入口被膜長が画定され、ここで、最初の入口被膜長は、基板の軸方向長さのx%であり、0<x<100である。最初の入口被膜のローディングは、好ましくは0.1から1g/inch
3(g/(2.54cm)
3)の範囲の予め決められた値に調整される;
(iii)(ii)の工程前、又は同時若しくは後に、最初の出口被膜を出口端から最初の出口被膜端まで延在するように塗布する工程。それによって、最初の出口被膜長が画定され、最初の出口被膜長は、基板の軸方向長さの1−x%である。最初の出口被膜のローディングは、最初の入口被膜のローディング(g/inch
3(g/(2.54cm)
3)):最初の出口被膜のローディング(g/inch
3(g/(2.54cm)
3))の比として計算される被膜ローディング比が0.5より小さく、好ましくは0.10から0.45、更に好ましくは0.20から0.40、更に好ましくは0.30から0.35の範囲になるように調整される。
【0019】
上記目的は、更なる触媒スートフィルタの製造工程により達成される。この工程は、
(i)好ましくは DIN 66133 に従う水銀測定法により測定した38から75の範囲の気孔率を有し、入口端、出口端、入口端と出口端の間に延在する基板軸方向長さ、及びウォールフロー基板の内壁で画定される多数の通路を有するウォールフロー基板を準備する工程;
ここで、複数の通路は、開放入口端と閉鎖出口端を有する入口通路、閉鎖入口端と開放出口端を有する出口通路を有する;
(ii)入口通路の内壁に、最初の入口被膜を入口端から最初の入口被膜端まで延在するように塗布する工程。
それによって、最初の入口被膜長が画定され、ここで、最初の入口被膜長は、基板の軸方向長さのx%であり、0<x<100である。前記最初の入口被膜は酸化触媒を含み、最初の入口被膜のローディングは、好ましくは0.1から1g/inch
3(g/(2.54cm)
3)の範囲の予め決められた値に調整される;
(iii)(ii)の工程前、又は同時若しくは後に、最初の出口被膜を出口端から最初の出口被膜端まで延在するように塗布する工程。それによって、最初の出口被膜長が画定され、最初の出口被膜長は、基板の軸方向長さの1−x%である。前記最初の出口被膜は酸化触媒を含み、最初の出口被膜のローディングは、最初の入口被膜のローディング(g/inch
3(g/(2.54cm)
3)):最初の出口被膜のローディング(g/inch
3(g/(2.54cm)
3))の比として計算される被膜ローディング比が0.5より小さく、好ましくは0.10から0.45、更に好ましくは0.20から0.40、更に好ましくは0.30から0.35の範囲になるように調整される。
【0020】
上記目的は、ディーゼルエンジン排気流の処理システムにより達成される。このシステムは、排気マニホールドを介してディーゼルエンジンと流体連通している排気導管;そのような触媒スートフィルタ;及び触媒スートフィルタと流体連通した一つ以上の次のもの:ディ−ゼル酸化触媒(DOC);選択接触還元(SCR)触媒;NOx吸蔵及び還元(NSR)触媒を含む。
【0021】
上記目的は、更にディーゼルエンジン排気流の処理の方法により達成される。ここで、排気流はスート粒子を含み、前記方法は、排気流を上述した触媒スートフィルタに接触させ、付加的にその後、排気流を、ディーゼル酸化触媒(DOC)を通すようにする。前記DOCは、好ましくは、フロースルー基板又はウォールフロー基板である。
【0022】
上記目的は、更に、任意にディ−ゼル酸化触媒(DOC)及び/又は選択接触還元(SCR)触媒及び/又はNOx吸蔵及び還元(NSR)触媒と組み合わせた、ディーゼルエンジン排気流の処理用のそのような触媒スートフィルタの使用法により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は触媒スートフィルタに関連している。フィルタは、入口端、出口端、入口端と出口端とに延在する軸方向長さを有する基板、ウォールフロー基板の内壁により画定される複数の通路を有する。;複数の通路は、開放入口端と閉鎖出口端を有する入口通路、閉鎖入口端と開放出口端を有する出口通路を含む。;入口通路の内壁は、入口端から最初の入口被膜端まで延びる最初の入口被膜を有する。これにより、最初の入口被膜長が画定される。ここで、最初の入口被膜長は、基板の軸方向の長さのx%であり、xは、0<x<100である。;出口通路の内壁は、出口端から最初の出口被膜端まで延びる最初の出口被膜を有する。これにより、最初の出口被膜長が画定される。ここで、最初の出口被膜長は、基板の軸方向の長さの100−x%である。;最初の入口被膜長は上流帯を画定し、最初の出口被膜長は下流帯を画定する。;最初の入口被膜と最初の出口被膜は、0.5未満の被膜ローディング
比でウォールフロー基板に存在する。被膜ローディング
比は、最初の入口被膜のローディング(g/インチ
3(g/(2.54cm)
3)):最初の出口被膜ローディング(g/インチ
3(g/(2.54cm)
3))の比として計算される。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態では、前記最初の入口被膜は酸化触媒を含む。本発明の更なる好ましい実施の形態では、前記最初の出口被膜は酸化触媒を含む。より好ましく、最初の入口被膜と最初の出口被膜の両方が酸化触媒を含む。
【0026】
本発明では、最初の入口被膜のローディング:最初の出口被膜のローディングの比で計算されるウォッシュコートローディング
比は0.5未満である。驚くべきことに、ウォッシュコートローディング
比を0.5未満であるように、前記最初の入口被膜及び前記最初の出口被膜を塗布することにより、SMLは増加し、ドロップツーアイドル再生するために必要な最大温度は減少する。更に、そのようにウォッシュコートローディング
比を0.5未満とすることにより、運転中に触媒スートフィルタの活性再生の頻度が低下する。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態によれば、最初の入口被膜のローディング:最初の出口被膜のローディングの比として計算されるウォッシュコートローディング
比は、0.49未満、より好ましくは0.45未満である。より好ましくは、前記ウォッシュコートローディング
比は0.05から0.49の範囲、より好ましくは0.1から0.45の範囲である。一層好ましい実施の形態は、前記ウォッシュコートローディング
比が0.15から0.45、より好ましくは0.15から0.40.より好ましくは0.20から0.40の範囲にあるものに注意を向けている。特別に好ましくは、ウォッシュコートローディング
比は0.25から0.40、より好ましくは0.25から0.35、より好ましくは0.30から0.35、例えば、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35である。
【0028】
本発明で使用されている所定の被膜の“ウォッシュコートローディング”の語は、本発明に一致して使用されるウォールフロー基板にそれぞれウォッシュコートする前及び後の重量測定で決定されるローディングに言及している。この後には、下で詳述する触媒スートフィルタの乾燥及び焼成が続く。
【0029】
本発明の好ましい実施の形態では、入口被膜のローディングは、0.1から1g/インチ
3(g/(2.54cm)
3)である。更により好ましくは、前記ローディングは0.1から0.5g/インチ
3(g/(2.54cm)
3)である。
【0030】
本発明では、最初の入口被膜長は、基板の軸方向長さのx%であり、0<x<100であり、最初の出口被膜長は、基板の軸方鋼長さの100−x%である。結果として、最初の入口被膜長と最初の出口被膜長の和は、基板の軸方向長さに等しくなる。しかしながら、製造技術により最初の入口被膜長と最初の出口被膜長は或る部分(“オーバラップ領域”)を介して重なり合うことは理解される。最初の入口被膜長と最初の出口被膜長の合計が基板の軸方向長さよりも僅かに小さく、結果として最初の入口被膜端と最初の出口被膜端との間にギャップが生じ、所定の内壁上で前記壁部の或る部分(”ギャップ領域“)は最初の入口被膜も最初の出口被膜も被膜されていない。一般に、所定の内壁のそのようなギャップ領域及び/又はオーバラップ領域は、もしあっても基板の軸方向長さの高々1%、好ましくは0.5%、より好ましくは0.1%である。更により好ましくは、本発明の触媒スートフィルタはそのようなギャップ領域を有さない。
【0031】
上で画定したように、最初の入口被膜長は基板の軸方向長さのx%、0<x<100であり、最初の出口被膜長は基板の軸方向長さの100−x%である。一般に、xは1から99の範囲内にあり、好ましくは5から95、より好ましくは10から90、更により好ましくは15から85、特別には20から80である。本発明の好ましい実施の形態では、触媒スートフィルタはただ一種の入口被膜とただ一種の出口被膜を含む。すなわち、触媒スートフィルタの被膜は、最初の入口被膜と最初の出口被膜から成り、xは、好ましくは25から75、好ましくは30から70、更により好ましくは35から75、更に好ましくは40から60、更に好ましくは45から55の範囲である。特別に、触媒スートフィルタの被膜が最初の入口被膜と最初の出口被膜から成るのであれば、xは、47、48、49、50、51、52又は53の47から53の範囲、より好ましくは48から52、更に好ましくは49から51の範囲である。
【0032】
本発明によれば、最初の入口被膜と最初の出口被膜は、酸化触媒を含んでいる。特許請求の範囲、明細書中で使用されている“酸化触媒”の語は、実施の形態にも関連し、最初の入口被膜に少なくとも一種の酸化触媒が含まれ、出口被膜に少なくとも一種の酸化触媒が含まれる。最初の入口被膜に含まれる少なくとも一種の酸化触媒は、最初の出口被膜に含まれる少なくとも一種の酸化触媒と同じ又は異なる。
【0033】
好ましくは、最初の入口被膜に含まれる酸化触媒は、白金族金属(“PGM”)である。本発明の文脈において使用されている“PGM”の語は、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及びプラチナ(Pt)に関連する。最初の入口被膜に含まれる好ましい酸化触媒は、PGM成分である。ここで、PGMは、Pt、Pd、Rh、Ir及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選ばれる。更に好ましくは、PGMは、Pt、Pd,及びPtとPdの混合物から成る群から選ばれる。更により好ましくは、PGMはPdとPtの混合物から成る。
【0034】
もし最初の入口被膜のPGMがPdとPtの混合物を含む、好ましくは成る場合、Pt:Pdの質量比が関係している限り、特別な制限はない。一般に、最初の入口被膜における質量比は、10:1から1:10、好ましくは9:1から1:1以上、より好ましくは8:1から1.1:1、より好ましくは7:1から1.2:1、更に好ましくは6:1から1.3:1、更に好ましくは5:1から1.4:1.更に好ましくは4:1から1.5:1の範囲である。
【0035】
一般に、本発明の触媒スートフィルタの最初の入口被膜は、酸化触媒を5から100g/ft
3(g/(30.48cm)
3)、より好ましくは7から90g/ft
3(g/(30.48cm)
3)、より好ましくは8から80g/ft
3(g/(30.48cm)
3)、より好ましくは9から70g/ft
3(g/(30.48cm)
3)、より好ましくは10から60g/ft
3(g/(30.48cm)
3)の量だけ含んでいる。最初の入口被膜の酸化触媒が少なくとも一種のPGM成分である好ましい実施の形態に関し、本発明で使用されている“酸化触媒の量”という語は、最終の触媒スートフィルタ、すなわち後述するように乾燥及び焼成後の触媒スートフィルタでの、少なくとも一種のPGMの量に言及している。
【0036】
好ましくは、最初の出口被膜に含まれる酸化触媒はPGM成分である。最初の出口被膜に含まれる好ましい酸化触媒はPGM成分であり、PGMは、Pt、Pd、Rh、Ir及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選ばれる。更に好ましくは、PGMは、Pt、Pd及びPtとPdの混合物から成る群から選ばれる。更により好ましくは、PGMはPdとPtの混合物で成る。
【0037】
もし最初の出口被膜のPGMがPdとPtの混合物を含む、好ましくは成る場合、Pt:Pdの質量比が関係している限り、特別な制限はない。一般に、最初の出口被膜における質量比は、10:1から1:10、好ましくは9:1から1:1以上、より好ましくは8:1から1.1:1、より好ましくは7:1から1.2:1、更に好ましくは6:1から1.3:1、更に好ましくは5:1から1.4:1.更に好ましくは4:1から1.5:1の範囲である。
【0038】
したがって、本発明は、上述したように触媒スートフィルタに関連しており、ここで、最初の入口被膜と最初の出口被膜はプラチナ及びパラジウムから成る酸化触媒を含み、最初の入口被膜におけるプラチナとパラジウムの質量比は、10:1から1:10、好ましくは4:1から1.5:1であり、最初の出口被膜におけるプラチナとパラジウムの質量比は、10:1から1:10、好ましくは4:1から1.5:1である。
【0039】
一般に、本発明の触媒スートフィルタの最初の出口被膜は、酸化触媒を5から100g/ft
3(g/(30.48cm)
3)、より好ましくは7から90g/ft
3(g/(30.48cm)
3)、より好ましくは8から80g/ft
3(g/(30.48cm)
3)、より好ましくは9から70g/ft
3(g/(30.48cm)
3)、より好ましくは10から60g/ft
3(g/(30.48cm)
3)の量だけ含んでいる。最初の出口被膜の酸化触媒が少なくとも一種のPGM成分である好ましい実施の形態に関し、本発明で使用されている“酸化触媒の量”という語は、最終の触媒スートフィルタ、すなわち後述するように乾燥及び焼成後の触媒スートフィルタでの、少なくとも一種のPGMの量に言及している。
【0040】
本発明の最初の好ましい実施の形態によれば、上流ゾーンの酸化触媒、好ましくはPGMの含有量は、下流ゾーンの酸化触媒、好ましくはPGMの含有量よりも少ない。一般に、PGM比は、最初の入口被膜に含まれているPGMの総量(g/ft
3(g/(30.48cm)
3))を、最初の出口被膜に含まれているPGMの総量(g/ft
3(g/(30.48cm)
3))で除したものと画定されるが、1より小さく、好ましくは1:10から1:2である。PGM比は、好ましくは1:9から1:2、より好ましくは1:8から1:3、及びより好ましくは1:7から1:3である。
【0041】
驚くべきことに、最初の出口被膜のPGM含有量よりも低い最初の入口被膜のPGM含有量と共に、本発明のウォッシュコートローディングは、NO
2/NO
xの比、例えば50%が、SCR触媒に関する触媒スートフィルタ排気において必要な場合、プリ−SCR応用として利点がある。この場合、下流ゾーンの高いPGMローディングに比較して、上流ゾーンの低いPGMローディングがガス活性のために必要である。このように、PGMを触媒スートフィルタの上流ゾーンでセーブすることが可能である。
【0042】
2番目の好ましい実施の形態では、上流ゾーンの酸化触媒、好ましくはPGMの含有量は、下流ゾーンの酸化触媒、好ましくはPGMの含有量よりも高い。一般に、PGM比は、最初の入口被膜に含まれているPGMの総量(g/ft
3(g/(30.48cm)
3))を、最初の出口被膜に含まれているPGMの総量(g/ft
3(g/(30.48cm)
3))で除したものと画定されるが、1より大きく、好ましくは2:1から10:2である。PGM比は、好ましくは2:1から9:1、より好ましくは3:1から8:1、及びより好ましくは3:1から7:1である。
【0043】
驚くべきことに、最初の出口被膜のPGM含有量よりも高い最初の入口被膜のPGM含有量と共に、本発明のウォッシュコートローディングは、基板全長に亘って均一なPGM分布を有する触媒スートフィルタに比較して、高いHC/COガス変換活性を結果として生じる。このように、この実施の形態は、触媒スートフィルタが高いHC/COガス変換活性を必要とする場合、例えば、CSFだけの被膜及び下流DOCとしての利点を有する。この場合、上流ゾーンでのPGMローディングは、主にガス活性に寄与する。このように、PGMをCSF全長に亘って均一なPGM分布を持つ触媒スートフィルタに比較して、触媒スートフィルタの下流ゾーンでセーブすることが可能である。
【0044】
本発明の特別に好ましい実施の形態では、上流ゾーンの酸化触媒、好ましくはPGMの含有量は、下流ゾーンの酸化触媒、好ましくはPGMの含有量より高い。
【0045】
本発明の好ましい実施の形態では、最初の入口被膜は、少なくとも一種の多孔質支持材料を含む。特別な制限はないが、多孔質支持材料は耐火性の金属酸化物が好ましい。更に好ましくは、最初の入口被膜の多孔質支持材料は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、セリウム、プラセオジム、ランタン、ネオジム及びサマリウム酸化物等の希土類金属酸化物、シリカ−アルミナ、アルミノケイ酸塩、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミア、アルミナ−希土類金属酸化物、チタニア−シリカ、チタニア−ジルコニア、チタニア−アルミナ、及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選ばれる。より好ましくは、少なくとも一種の多孔質支持材料は、Al
2O
3、ZrO
2、CeO
2、SiO
2及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選ばれる。
【0046】
本発明の好ましい実施の形態では、最初の出口被膜は、少なくとも一種の多孔質支持材料を含む。特別な制限はないが、多孔質支持材料は耐火性の金属酸化物が好ましい。更に好ましくは、最初の出口被膜の多孔質支持材料は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、セリウム、プラセオジム、ランタン、ネオジム及びサマリウム酸化物等の希土類金属酸化物、シリカ−アルミナ、アルミノケイ酸塩、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミア、アルミナ−希土類金属酸化物、チタニア−シリカ、チタニア−ジルコニア、チタニア−アルミナ、及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選ばれる。より好ましくは、少なくとも一種の多孔質支持材料は、Al
2O
3、ZrO
2、CeO
2、SiO
2及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選ばれる。
【0047】
したがって、本発明は、上記の触媒スートフィルタに関係している。ここで、最初の入口被膜と最初の出口被膜は、少なくとも一種の多孔質支持材料を含んでおり、最初の入口被膜の少なくとも一種の多孔質支持材料は、Al
2O
3、ZrO
2、CeO
2、SiO
2及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選ばれ、最初の出口被膜の少なくとも一種の多孔質支持材料は、Al
2O
3、ZrO
2、CeO
2、SiO
2及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選ばれる。
【0048】
好ましい実施の形態によれば、最初の入口被膜及び/又は最初の出口被膜の耐火性金属酸化物は、基本的にアルミナ、より好ましくはγアルミナ又はγ又はηアルミナ等の活性化アルミナから成る。好ましくは、活性化アルミナは、DIN 66131 に従うBET表面積測定法により測定された60から300m
2/g、好ましくは90から200m
2/g、より好ましくは100から180m
2/gの比表面積を有する。
【0049】
本発明の触媒スートフィルタに有用なウォールフロー基板は、多数の微細な、基板の軸方向に沿って延在する平行なフロー通路を有する。各々の通路は、基板本体の一方の端部で閉鎖され、交互の通路は反対側の端面で閉鎖されている。そのようなモノリシックな運搬路は、断面積1インチ平方((2.54cm)
2)当たり略400のフロー通路(または”セル“)を含むことができる。ただし、使用するのはそれよりかなり少ない。例えば、運搬路は1インチ平方当たりのセル数(”cpsi“)として、7から400、好ましくは100から400を有することができる。セルは、矩形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形又は他の多角形の形状の断面を有することが可能である。
【0050】
好ましいウォールフロー基板は、菫青石、αアルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、リシア輝石、アルミナシリカマグネシア又はケイ酸ジルコニウム等のセラミック等の材料、又はステンレス鋼等の耐火性金属から成なる。好ましいウォールフロー基板は、菫青石及び炭化ケイ素から形成される。そのような金属は、排気流の処置で遭遇する環境、特に高温に耐え得る。セラミックウォールフロー基板は、一般に、略40から70の気孔率を持つ材料から形成される。明細書で使用している“気孔率”という語は、DIN 66133 に従う水銀気孔率測定法により測定されるものと理解される。
【0051】
本発明によれば、ウォールフロー基板は、38から75、より好ましくは55から70の範囲の気孔率を有するのが好ましい。
【0052】
例えば、幾つかの設定では、ウォールフロー基板は60の気孔率と略15−25の平均孔径を持ち、十分な排気フローを提供する。他の特定の実施の形態では、例えば、100cpsiで17ミル壁部(1ミルは0.0254mmに相当する)のウォールフロー基板、及び300cspiで12−14ミルのウォールフロー基板を使用する設定である。
【0053】
本発明の触媒スートフィルタの基板の軸方向長さに関しては何の制限もない。基板の軸方向長さは、本発明の触媒スートフィルタの使用目的に主に依存する。使用する触媒スートフィルタの一般的な基板の軸方向長さは、例えば、自動車分野で4から10、好ましくは6から8インチ(1インチ=2.54cm)である。
【0054】
ウォールフロー基板にある本発明の被膜の各々は、上述した少なくとも一種の多孔質支持材料を含むそれぞれのウォッシュコート組成物から形成される。結合剤や安定剤等の他の添加剤は、ウォッシュコート組成物に含めることができる。そのような安定剤は、最初の入口被膜又は最初の出口被膜、又は後述するように更なる出口被膜に含めることができる。United States Patent No. 4,727,052 に開示されているように、活性化アルミナのような多孔質支持材料は、熱的に安定であり、昇温時にγからαへの望ましくない相変換を遅らせる。安定剤は、マグネシウム、バリウム、カルシウム、及びストロンチウムから成る群、好ましくはストロンチウム及びバリウムから成る群から選ばれた少なくとも一種のアルカリ土類金属組成物から選ぶことができる。安定剤は、略0.01g/in
3(g/2.54cm)
3)から0.15g/in
3(g/(2.54cm)
3)被膜に加えられる。
【0055】
所定の被膜は、内壁の表面に配置される。更に、所定の被膜は、内壁の表面に既に塗布されている他の被膜に、又は他の被膜に既に塗布されている被膜に配置されると考えられる。2つ以上の被膜、特に2つ以上の出口被膜を有する本発明の実施の形態は、以下で詳述する。更に、所定の被膜は、部分的に多孔質の内壁又はそれが塗布される被膜を透過することができる。
【0056】
所定のウォッシュコートは、考えられる方法で被膜として塗布することができる。例えば、ウォールフロー基板内部壁にウォッシュコートを吹きかけることによりウォッシュコートを塗布することが考えられる。本発明によれば、ディップコーティングによりウォールフロー基板の内壁に所定のウォッシュコートを塗布するのが好ましい。
【0057】
特別には、もしPGMを酸化触媒として使用する場合、ウォールフロー基板の内壁に塗布すべきウォッシュコート組成物は、適切な多孔質支持材料、好ましくは前述した適切な耐火性金属酸化物に、適切なPGM成分前駆体を分散させることにより準備される。更に好ましくは、水溶性の又は水分散性のPGM成分前駆体を適切な多孔質支持基板、好ましくは適切な耐火性金属酸化物に含浸させる。そして、続いて乾燥及び固着工程が行われる。適切なPGM成分前駆体は、例えば、カリウム塩化白金、アンモニウム白金チオシアン酸、アミン可溶化水酸化白金、塩化白金酸、硝酸パラジウム、塩化ロジウム、硝酸ロジウム、ヘキサミン塩化ロジウム等である。他の適切なPGM成分前駆体は、当業者に自明である。含浸された支持材料は、好ましくはPGM成分がそれらの上に固着されて乾燥される。一般に、乾燥温度は、60から250℃、好ましくは90から210℃、更に好ましくは100から150℃の範囲である。乾燥は、窒素又は空気の適切な雰囲気で行うことが可能である。乾燥後、PGM成分は支持材料に適切な焼成及び/又は酢酸処理等の適切な他の方法により固着される。どの方法でも結果としてPGM成分が非水溶性の形になることが適切である。一般に、焼成温度は250から800℃、好ましくは350から700℃、より好ましくは400から600℃の範囲である。焼成は、窒素又は空気の適切な雰囲気で行うことが可能である。例えば、焼成により、触媒的に活性成分のPGM又はその酸化物が得られる。本発明の明細書で使用される最終触媒スートフィルタに存在する“PGM成分”の語は、触媒的に活性成分PGM、又はそれらの酸化物、又は成分PGMとそれらの酸化物の混合物に関連する。
【0058】
したがって、本発明は、上述したような触媒スートフィルタの製造方法に関連し、工程は、
(i)好ましくは DIN 66133 に従う水銀測定法により測定した38から75の範囲の気孔率を有し、入口端、出口端、入口端と出口端の間に延在する基板軸方向長さ、及びウォールフロー基板の内壁で画定される多数の通路を有するウォールフロー基板を準備する工程;
(ii)入口通路の内壁に、最初の入口被膜を入口端から最初の入口被膜端まで延在するように塗布する工程。ここで、最初の入口被膜長は、基板の軸方向長さのx%で画定される。0<x<100である。最初の入口被膜のローディングは、好ましくは0.1から1g/inch
3(g/(2.54cm)
3)の範囲の予め決められた値に調整される。
(iii)(ii)の工程前、又は同時若しくは後に、最初の出口被膜を出口端から最初の出口被膜端まで延在するように塗布する工程。ここで、最初の出口被膜長は、基板の軸方向長さの1−x%で画定される。最初の出口被膜のローディングは、最初の入口被膜のローディング(g/inch
3(g/(2.54cm)
3)):最初の出口被膜のローディング(g/inch
3(g/(2.54cm)
3))の比として計算される被膜ローディング比が0.5より小さく、好ましくは0.10から0.45、更に好ましくは0.20から0.40、更に好ましくは0.30から0.35の範囲になるように調整される。
【0059】
本発明の好ましい実施の形態では、最初の入口被膜は酸化触媒を含む。更に好ましい実施の形態では、最初の出口被膜は酸化被膜を含む。より好ましくは、最初の入口被膜と最初の出口被膜の両方が酸化触媒を含む。
【0060】
本発明の実施の形態によれば、触媒スートフィルタは、最初の入口被膜、最初の出口被膜、及び付加的に少なくとも一種の更なる出口被膜を含む。一般に、本発明の触媒スートフィルタは、付加的にk個の更なる出口被膜を含む。ここで、kは整数でありk≧1である。本発明の触媒スートフィルタは、9まで、より好ましくは7まで、より好ましくは5まで、より好ましくは3までの付加的な出口被膜を含む。例えば、1、2又は3の付加的な出口被膜である。
【0061】
もっとも好ましくは、本発明の触媒スートフィルタの(J+1)番目の出口被膜は、J番目の出口被膜の上に位置している。例として、もし触媒スートフィルタが3の付加的な出口被膜を含んでいる場合、2番目の出口被膜、すなわち最初の付加的な出口被膜(ここで、j=1)は、最初の出口被膜の上に位置している。3番目の出口被膜、すなわち2番目の付加的な出口被膜(ここで、J=2)は、2番目の出口被膜の上に位置している。そして、4番目の出口被膜、すなわち3番目の付加的な出口被膜(ここで、j=3)は、3番目の出口被膜の上に位置している。
【0062】
一般に、所定の付加的な出口被膜は、触媒スートフィルタの(全体)の出口端から、この出口被膜のそれぞれの端部に延在する。したがって、この出口被膜の長さが画定される。一般的に言えば、本発明の触媒スートフィルタの(J+1)番目の出口被膜は、出口端から(J+1)番目の出口被膜端まで延在する。それによって、(J+1)番目の出口被膜の長さが画定される。
【0063】
一般に、所定の出口被膜の出口被膜長は、前記出口被膜が位置する出口被膜の長さよりの小さいか又は等しいと考えられる。例えば、もし触媒スートフィルタが3の付加的な出口被膜(ここで、j=1)を含む場合、2番目の出口被膜、すなわち最初の付加的な出口被膜が最初の出口被膜の上に位置しており、2番目の出口被膜の長さは、最初の出口被膜の長さより小さいか又は等しい。3番目の出口被膜、すなわち2番目の付加的な出口被膜(ここで、j=2)は2番目の出口被膜の上に位置しており、3番目の出口被膜の長さは、2番目の出口被膜の長さより小さいか又は等しい。4番目の出口被膜、すなわち3番目の付加的な出口被膜(ここで、j=2)は3番目の出口被膜の上に位置しており、4番目の出口被膜の長さは、3番目の出口被膜の長さより小さいか又は等しい。一般的に言えば、(J+1)番目の出口被膜の長さは、J番目の出口被膜の長さのy
j+1%であり、0<y
j+1≦100である。
【0064】
したがって、本発明は上述した触媒スートフィルタに係り、触媒スートフィルタは付加的なk個の更なる出口被膜を有する。ここで、(J+1)番目の出口被膜はJ番目の出口被膜の上に位置し、前記(J+1)番目の出口被膜は出口端から(J+1)番目の出口被膜端まで延在し、これにより(J+1)番目の出口被膜の長さが画定される。(J+1)番目の出口被膜の長さはJ番目の出口被膜の長さのy
j+1%であって、0<y
j+1≦100である。;ここで、kは整数であって、k≧1であり、好ましくは1から4、より好ましくは1から3の範囲内にある。;ここで、jは製数であって1≦j≦kである。
【0065】
上述したように、所定の出口被膜の長さは、前記出口被膜の位置している出口被膜の長さよりも小さいか又は等しい。一般的に言えば、(J+1)番目の出口被膜の長さは、J番目の出口被膜の長さのy
j+1%であり、0<y
j+1≦100である。本発明の好ましい実施の形態によれば、所定の出口被膜の長さは、前記所定の出口被膜が位置している出口被膜の長さよりも小さい。このように、好ましくは0<y
j+1<100である。更により好ましくは、出口被膜は、やや定期的な“階段状”の構造を形成する。ここで、最初の出口被膜の長さに依存して、付加的な出口被膜の所定の長さは特定の長さを有する。すなわち、(J+1)番目の出口被膜の長さは、最初の出口被膜の長さの100・(1−j/(k+1))%である。
【0066】
一般に、前述したように、最初の入口被膜の長さは、基板の軸方向長さのx%であって、0<x<100である。本発明の触媒スートフィルタの場合、少なくとも一種の付加的な出口被膜、すなわち、総合で少なくとも2の出口被膜を含み、最初の入口被膜の長さは、互いに出口被膜が階段状構造、互いの階段のステップは基本的に同じ長さの定期的な階段状パターンを形成するように選択される。したがって、本発明の好ましい実施の形態では、xは100/(k+2)である。
【0067】
もし本発明の触媒スートフィルタが1つ以上の付加的な出口被膜を含む場合、所定の出口被膜は、他の出口被膜の一つ又は全部と同じ化学組成を有する。全ての出口被膜が異なる化学組成を有しても良い。
【0068】
少なくとも一つ、好ましくは更なるk個の出口被膜のそれぞれが、酸化触媒を含むことが望ましい。更なる出口被膜に含まれる酸化触媒は、少なくとも一種の白金族金属(PGM)を含むことが望ましい。更に好ましくは、更なる出口被膜に含まれる酸化触媒は、プラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選ばれる。各々の出口被膜は、同一の又は異なる酸化触媒を含む。更に好ましくは、少なくとも一つ、好ましくは更なるk個の出口被膜の各々がプラチナとパラジウムの混合物から成る。
【0069】
本発明の触媒スートフィルタが2つ以上の出口被膜を含む場合、総合の出口被膜、すなわち総合でk+1の出口被膜は、5から100g/ft
3、より好ましくは7から90g/ft
3、より好ましくは8から80g/ft
3、より好ましくは9から70g/ft
3、好ましくは10から60g/ft
3(g/(30.48cm)
3)の量の酸化触媒を含む。好ましい実施の形態に関し、出口被膜の酸化触媒は少なくとも一種のPGM組成であり、本発明の明細書等で使用されている”酸化触媒の量“の語は、最終の触媒スートフィルタで、すなわち乾燥及び焼成後の触媒スートフィルタでの少なくとも一種のPGMの質量に言及している。
【0070】
更に、本発明の触媒スートフィルタが2つ以上の出口被膜を有する場合、PGMの比、最初の入口被膜の含まれるPGMの量(g/(30.48cm)
3)をk+1の出口被膜に含まれる総合のPGMの量(g/(30.48cm)
3)で除したものと画定されるPGMの比は、1:10から1:2が好ましい。PGMの比は好ましくは1:9から1:2、より好ましくは1:8から1:3、より好ましくは1:7から1:3、好ましくは1:7から1:3の範囲である。
【0071】
他の実施の形態によれば、本発明の触媒スートフィルタが2以上の出口被膜を有する場合、PGMの比、最初の入口被膜の含まれるPGMの量(g/(30.48cm)
3)をk+1の出口被膜に含まれる総合のPGMの量(g/(30.48cm)
3)で除したものと画定されるPGMの比は、2:1から10:1が好ましい。PGMの比は好ましくは2:1から9:1、より好ましくは3:1から8:1、より好ましくは3:1から7:1の範囲である。
【0072】
上述したように、本発明の触媒スートフィルタが酸化触媒を含む場合、最初の入口被膜及び各々の出口被膜はパラジウムとプラチナの混合物から成るのが最も好ましい。最初の出口被膜におけるPt:Pdの質量比は、前述したように、10:1から1:10、好ましくは9:1から1:1以上、より好ましくは8:1から1.1:1、より好ましくは7:1から1.2:1、より好ましくは6:1から1.3:1、より好ましくは5:1から1.4:1、より好ましくは4:1から1.5:1の範囲である。更に、k+1の出口被膜におけるプラチナ:パラジウムの質量比は、10:1から1:10、好ましくは9:1から1:1以上、より好ましくは8:1から1.1:1、より好ましくは7:1から1.2:1、より好ましくは7:1から1.2:1、より好ましくは6:1から1.3:1、より好ましくは5:1から1.4:1、より好ましくは4:1から1.5:1の範囲である。
【0073】
したがって、本発明は上述したように触媒スートフィルタに係り、最初の入口被膜とk+1の出口被膜はプラチナとパラジウムから成る酸化触媒を含み、最初の入口被膜でのプラチナ:パラジウムの質量比は、10:1から1:10、好ましくは4:1から1.5:1の範囲であり、k+1の出口被膜でのプラチナ:パラジウムの質量比は、10:1から1:10、好ましくは4:1から1.5:1の範囲である。
【0074】
k+1の出口被膜において、プラチナのみ、又はパラジウムのみ含有することは可能である。
【0075】
本発明の好ましい実施の形態によれば、更なる出口被膜の少なくとも一つ、好ましくは更なる出口被膜の各々が、少なくとも一種の多孔質支持材料を含む。もし所定の更なる出口被膜が少なくとも一種の多孔質材料を有する場合、他の出口被膜と比較して同一の又は異なる多孔質材料を含んでも良い。より好ましくは全ての出口被膜が少なくとも一種の多孔質材料を含む。特に制限はないが、更なる出口被膜に含まれる少なくとも一種の多孔質材料は、耐火性の金属酸化物であることが好ましい。より好ましくは、少なくとも一種の更なる出口被膜、好ましくは更なる出口被膜の各々の多孔質支持材料は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、セリウム、プラセオジム、ランタン、ネオジム及びサマリウム酸化物等の希土類金属酸化物、シリカ−アルミナ、アルミノケイ酸塩、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミア、アルミナ−希土類金属酸化物、チタニア−シリカ、チタニア−ジルコニア、チタニア−アルミナ、及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選ばれる。より好ましくは、少なくとも一種の多孔質支持材料は、Al
2O
3、ZrO
2、CeO
2、SiO
2及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選ばれる。
【0076】
したがって、本発明は上述した触媒スートフィルタに係り、k個の更なる出口被膜の少なくとも一つ、好ましくは各々が少なくとも一種の多孔質支持材料を含み、k個の更なる出口被膜の少なくとも一つ、好ましくは各々の少なくとも一種の多孔質材料は、Al
2O
3、ZrO
2、CeO
2、SiO
2及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選ばれる。
【0077】
したがって、本発明は上述した触媒スートフィルタに係り、最初の入口被膜及び出口被膜は、少なくとも一種の多孔質支持材料を含み、最初の入口被膜の少なくとも一種の多孔質支持材料は、Al
2O
3、ZrO
2、CeO
2、SiO
2及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選ばれ、出口被膜の少なくとも一種の多孔質支持材料は、Al
2O
3、ZrO
2、CeO
2、SiO
2及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選ばれる。
【0078】
好ましい実施の形態によれば、最初の入口被膜及び/又は最初の出口被膜の耐火性金属酸化物は、基本的にアルミナ、より好ましくはγアルミナ又はγ又はηアルミナ等の活性化アルミナから成る。好ましくは、活性化アルミナは、DIN 66131 に従うBET表面積測定法により測定された60から300m
2/g、好ましくは90から200m
2/g、より好ましくは100から180m
2/gの比表面積を有する。
【0079】
本発明の更により好ましい実施の形態によれば、出口被膜の各々は、同一の化学組成を有する。すなわち、本発明の触媒スートフィルタの準備工程において、ウォールフロー基板にk+1の出口被膜を被膜することは、一種の特定のウォッシュコート組成を用いて行われる。更に、好ましくは、全ての被膜、すなわち最初の入口被膜及び全ての出口被膜は同一の化学組成を有する。
【0080】
本発明の触媒スートフィルタが一つ以上の更なる出口被膜、すなわち少なくとも2つの出口被膜を有する場合、最初の入口被膜と出口被膜は、ウォールフロー基板上に、0.5未満の被膜ローディング比で存在する。ここで、被膜ローディング比は、最初の入口被膜のローディング(g/inch
3(g/(2.54cm)
3)):全ての出口被膜の総合のローディング(g/inch
3(g/(2.54cm)
3))の比として計算される。
【0081】
2つ以上の出口被膜を含む本発明の触媒スートフィルタの製造方法に限り、基本的に同一の方法が実行される。最初の入口被膜のみを含む触媒スートフィルタに関して前述した通りである。しかしながら、工程(iii)の後に、少なくとも一種の更なる出口被膜は、最初の出口被膜に塗布される。最初の入口被膜を塗布した後、付加的に乾燥及び/又は焼成の後、2番目の出口被膜が最初の出口被膜に塗布される。もし3番目の出口被膜を塗布するなら、付加的に最初と2番目の出口被膜を含むフィルタの乾燥及び/又は焼成の後に、3番目の出口被膜を2番目の出口被膜に塗布することが望ましい。したがって、本発明は、上述した製造方法に係り、前記方法は更に、以下の工程を含む。
(iv)工程(iii)の後に、k個の更なる出口被膜を塗布する。ここで、(J+1)番目の出口被膜はJ番目の出口被膜の上に位置し、前記(J+1)番目の出口被膜は出口端から(J+1)番目の出口被膜端まで延在し、これにより(J+1)番目の出口被膜の長さが画定される。(J+1)番目の出口被膜の長さはJ番目の出口被膜の長さのy
j+1%であって、0<y
j+1≦100である。ここで、kは整数であって、k≧1であり、好ましくは1から4、より好ましくは1から3の範囲内にある。;ここで、jは製数であって1≦j≦kである。
【0082】
より好ましくは、(J+1)番目の出口被膜は、J番目の出口被膜に、(J+1)番目の出口被膜の長さが最初の出口被膜の長さの100・(1−j/(k+1))%となるように塗布される。
【0083】
k個の更なる出口被膜の一般的な及び好ましい塗布方法に関する限り、最初の出口被膜に関して上述したように、一般的及び好ましい方法について言及することができる。個々の出口被膜の塗布の間に又は後に、乾燥及び/又は焼成工程中に塗布する一般的な及び好ましい条件に関する限り、最初の出口被膜の乾燥及び/又は焼成に関して前述した一般的な及び/又は好ましい条件について言及することができる。
【0084】
本発明の触媒スートフィルタは、統合された排気処理システムで使用することができる。特に、ディーゼル排気放出の処理のための一つ以上の付加的な部品を含む排気導管において使用することができる。例えば、ディーゼルエンジンと好ましく流体連通するそのような排気導管は、本発明の触媒スートフィルタを含む。また、更に、ディーゼル酸化触媒(DOC)及び/又は選択接触還元(SCD)触媒及び/又はNOx吸蔵及び還元(NSR)触媒を含む。最も好ましくは、DOC及び/又はSCR及び/又はNSRは触媒スートフィルタと流体連通している。ディーゼル酸化触媒は、触媒スートフィルタ及び/又は選択接触還元触媒成分から上流又は下流に配置することができる。より好ましくは、本発明の触媒スートフィルタは、DOCから下流に配置される。更により好ましくは、本発明の触媒スートフィルタはSCRの上流又は下流に配置される。
【0085】
したがって、本発明は、ディーゼルエンジン排気流の処理システムに係り、このシステムは、排気マニホールドを介してディーゼルエンジンと流体連通している排気導管;前述した触媒スートフィルタ;及び触媒スートフィルタと流体連通した一つ以上の次のもの:ディ−ゼル酸化触媒(DOC);選択接触還元(SCR)触媒;NOx吸蔵及び還元(NSR)触媒を含む。
【0086】
排気導管で使用される適切なSCRは、一般に、低い排気温度に関連する低負荷の条件下でも十分なNOxレベルが処理できるように、600℃未満の温度でディーゼル排気に含まれるNOx成分の還元を効果的に促進させる。適切なSCRは、システムに添加される適切な還元剤に量に依存して、少なくともNOxの50%をN
2に変換させることができる。SCRの他の望ましい属性は、NH
3を大気に放出しないように、O
2と過剰のNH
3と反応させN
2とH
2Oを生成する反応を促進させ得る可能性を有する。排気導管で使用される有用なSCR触媒組成物は、650℃以上の耐熱性を有さねばならない。そのような高温は、上流触媒スートフィルタの再生中に遭遇し得る。適切なSCRは、例えば、US 4,961,917 及び US 5,516,497 に記載されている。適切なSCRは、ゼオライト中に存在する鉄及び銅の助触媒の双方又は一つを含んでいる。その量は、助触媒とゼオライトを足した総質量の略0.1から30質量%、好ましくは略1から5質量%である。NOxをNH
3により還元しN
2を生成促進する能力に加えて、開示されているSCRは、特に高い助触媒濃度を有するこれらの組成物に関して、過剰のNH
3とO
2との酸化を促進することが可能である。
【0087】
本発明の排気ガス処理システムは、NOx吸蔵(及び付加的に還元)物を更に含んでも良い。NOx吸蔵(及び付加的に還元)物は、触媒スートフィルタの下流に好ましく位置する。
【0088】
更に、本発明はディーゼルエンジン排気流の処理の方法に係り、排気流はスート粒子を含み、前記方法は、排気流を上述した触媒スートフィルタに接触させ、付加的にその後、排気流を、ディーゼル酸化触媒(DOC)を通すようにする。前記DOCは、好ましくは、フロースルー基板又はウォールフロー基板である。この方法は、付加的にDOC又は触媒スートフィルタからの結果として生じる排気流を、選択接触還元(SCR)触媒を通すようにすることを含む。
【0090】
(実施例)
1.触媒準備工程
1.1 入口/出口のウォッシュコートローディング比が0.3である帯状触媒スートフィルタ(サンプルA、本発明の実施形態)
【0091】
入口被膜用に、γアルミナ0.3g/in
3が10g/ft
3の最終の乾燥Pdを与える硝酸パラジウム水溶液に含浸された。続いて、アミン安定化Pt複合体としての白金を有する白金水溶液に含浸され、20g/ft
3の乾燥Pt成分が供給された。得られた粉末は水中に分散された。続いて、得られた懸濁液が菫青石フィルタ基板
(長さ:6インチ=15.24cm;直径:5.66インチ=14.38cm)の入口側からフィルタ全長の50%までの被膜に使用された。110℃の空気で乾燥と空気中450℃で焼成した後、フィルタ基板の入口50%のウォッシュコートの量は、略0.32g/in
3であった。
【0092】
出口被膜用に、γアルミナ1.0g/in
3が5g/ft
3の最終の乾燥Pdを与える硝酸パラジウム水溶液に含浸された。続いて、アミン安定化Pt複合体としての白金を有する白金水溶液に含浸され、10g/ft
3の乾燥Pt成分が供給された。得られた粉末は水中に分散された。続いて、得られた懸濁液が菫青石フィルタ基板の出口側からフィルタ全長の50%までの被膜に使用された。110℃の空気で乾燥と空気中450℃で焼成した後、フィルタ基板の出口50%のウォッシュコートの量は、略1.01g/in
3であった。
【0093】
したがって、被膜ローディング比は略0.32であった。
【0094】
1.2 入口/出口のウォッシュコートローディング比が均一である帯状触媒スートフィルタ(サンプルB、比較例)
【0095】
入口被膜用に、γアルミナ0.3g/in
3が10g/ft
3の最終の乾燥Pdを与える硝酸パラジウム水溶液に含浸された。続いて、アミン安定化Pt複合体としての白金を有する白金水溶液に含浸され、20g/ft
3の乾燥Pt成分が供給された。得られた粉末は水中に分散された。続いて、得られた懸濁液が菫青石フィルタ基板(1.1と同一の基板)の入口側からフィルタ全長の50%までの被膜に使用された。110℃の空気で乾燥と空気中450℃で焼成した後、フィルタ基板の入口50%のウォッシュコートの量は、略0.32g/in
3であった。
【0096】
出口被膜用に、γアルミナ0.3g/in
3が5g/ft
3の最終の乾燥Pdを与える硝酸パラジウム水溶液に含浸された。続いて、アミン安定化Pt複合体としての白金を有する白金水溶液に含浸され、10g/ft
3の乾燥Pt成分が供給された。得られた粉末は水中に分散された。続いて、得られた懸濁液が菫青石フィルタ基板の出口側からフィルタ全長の50%までの被膜に使用された。110℃の空気で乾燥と空気中450℃で焼成した後、フィルタ基板の出口50%のウォッシュコートの量は、略0.32g/in
3であった。
【0097】
したがって。被膜ローディング
比は略1.0であった。
【0098】
2.現状の触媒技術と本発明の技術の比較(ドロップツーアイドル再生試験による最大スート負荷の試験)
【0099】
2.1 サンプルA(本発明)
入口/出口被膜のウォッシュコートローディング比が0.32の帯状触媒スートフィルタ
−入口被膜:20g/ft
3Pt、10g/ft
3Pd、0.3g/in
3γアルミナ
−出口被膜:10g/ft
3Pt、5g/ft
3Pd、1.0g/in
3γアルミナ
【0100】
2.2 サンプルB(比較例)
入口/出口被膜のウォッシュコートローディング比が略1(均一ウォッシュコートローディング)の帯状触媒スートフィルタ
−入口被膜:20g/ft
3Pt、10g/ft
3Pd、0.3g/in
3γアルミナ
−出口被膜:10g/ft
3Pt、5g/ft
3Pd、0.3g/in
3γアルミナ
【0101】
3.試験方法(SMLのドロップツーアイドル試験)
サンプルAとBは、ドロップツーアイドル再生試験における最大温度が測定された。ドロップツーアイドル再生中に最大温度と勾配が低いほど、フィルタの最大スートローディングが高い。テストの前にサンプルは、2Lエンジン変位を有する4シリンダーのライトデューティディーゼルエンジンの排気流で、ローシティモード運転を経由して5.5g/l(l基板当たり=5.5g)のスートがローディングされた。
【0102】
ドロップツーアイドル再生試験を行うために、各々のサンプルは、2L変位を有する4シリンダーのライトデューティーゼルエンジンからの排気ラインの下流に配置された。触媒スートフィルタの前面の温度は、620℃に上昇した。触媒スートフィルタの最初の熱電対(
図3の1、CSF入口側からの距離:1インチ=2.54cm)の温度がスート再生により650℃に到達すると、エンジンはアイドルモードに切り替えられる。最も高い温度及び温度勾配は、CSFの後ろの部分で起こった。
【0103】
ドロップツーアイドル再生に関し、サンプルAとBにおける熱電対1から4の位置について
図3に示す。ドロップツーアイドル試験中の、サンプルAとBの4の熱電対に関し、温度と時間の曲線をそれぞれ
図4と
図5に示す。サンプルAは、サンプルBに比較して重要な低い最大温度を示している。温度が低いゆえに、サンプルAは、より高いスートマスリミット、最大のスートマスリミットとなっている。触媒スートフィルタサンプルAとBの熱電対の最大温度は、下記の表1に示すと通りである。触媒スートフィルタ入口から後方位置、熱電対4”での最大温度は、入口/出口被膜のウォッシュコートローディング比が0.32の帯状スートフィルタでは略140℃低い。