特許第5909392号(P5909392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

<>
  • 特許5909392-すべり軸受装置 図000006
  • 特許5909392-すべり軸受装置 図000007
  • 特許5909392-すべり軸受装置 図000008
  • 特許5909392-すべり軸受装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909392
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】すべり軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/20 20060101AFI20160412BHJP
   F04D 29/046 20060101ALI20160412BHJP
   F04D 13/00 20060101ALI20160412BHJP
   F04D 11/00 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   F16C33/20 A
   F04D29/046 B
   F04D13/00 L
   F04D11/00 101
   F04D13/00 D
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-59996(P2012-59996)
(22)【出願日】2012年3月16日
(65)【公開番号】特開2013-194769(P2013-194769A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100093942
【弁理士】
【氏名又は名称】小杉 良二
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 則雄
(72)【発明者】
【氏名】山中 隆司
(72)【発明者】
【氏名】山口 晶
(72)【発明者】
【氏名】大保 忠司
(72)【発明者】
【氏名】中村 由美子
(72)【発明者】
【氏名】杉山 憲一
【審査官】 小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−222207(JP,A)
【文献】 特開2011−247408(JP,A)
【文献】 特開平09−316323(JP,A)
【文献】 特開2006−038029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00−17/26
F16C 33/00−33/28
F04D 11/00
F04D 13/00
F04D 29/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械に使用され、軸受すべり面が大気中に露出するドライ条件で使われるすべり軸受装置であって、軸受部分はフッ素樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、炭素繊維および不可避不純物の複合材料により形成されており、
前記軸受すべり面における各材料の面積率は、フッ素樹脂が24〜37%、芳香族ポリエーテルケトンが60〜71%、炭素繊維が3〜6%であることを特徴とするすべり軸受装置。
【請求項2】
前記フッ素樹脂は、PTFE、PFAおよびFEPの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載のすべり軸受装置。
【請求項3】
前記芳香族ポリエーテルケトンは、PEK、PEEK、PEKKおよびPEEKKの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載のすべり軸受装置。
【請求項4】
前記炭素繊維は、直径が5〜7μm、長さが5〜1000μmであることを特徴とする請求項1記載のすべり軸受装置。
【請求項5】
前記軸受すべり面に対して摺動する軸スリーブの摺動面は、ビッカース硬さ(Hv)が200以上であり、セラミックス、超硬合金、サーメットのいずれかで構成されることを特徴とする請求項1記載のすべり軸受装置。
【請求項6】
前記軸受すべり面が異物を混入した水中の条件で使われることを特徴とする請求項1記載のすべり軸受装置。
【請求項7】
羽根車を支持する回転軸をすべり軸受装置で支持し、前記すべり軸受装置の軸受すべり面が大気中に露出するドライ条件で運転される立形ポンプにおいて、
前記すべり軸受装置に請求項1乃至のいずれか1項のすべり軸受装置を用いることを特徴とする立形ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料を用いたすべり軸受装置に係り、特にポンプ等の回転機械のラジアル軸受として好適に使用されるすべり軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料を用いたすべり軸受装置は、樹脂の有する良好な潤滑性能のため、ターボ機械等の回転機械や事務機械に広く使用されている。樹脂材料を用いたすべり軸受装置を土砂等の異物が混入した水を取扱うためのポンプ等に使用する場合には、異物混入水が軸受すべり面に侵入してくることがあるが、土砂の主成分であるSiOは樹脂材料と比較して硬度が高いため、樹脂材料が摩耗する。従って、異物混入水中運転では樹脂製のすべり軸受装置の摩耗量は増大し軸受寿命が短くなるという問題がある。また、立形ポンプ等においては、すべり軸受装置は、軸受すべり面が水中で運転される場合ばかりでなく、先行待機運転のように大気中で運転される場合がある。このようにすべり軸受装置の軸受すべり面が大気中に露出するドライ条件で運転される場合には、ドライ条件で低摩擦な軸受装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−173660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、軸受すべり面が大気中に露出するドライ条件で低摩擦な軸受すべり面を有したすべり軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明のすべり軸受装置は、回転機械に使用され、軸受すべり面が大気中に露出するドライ条件で使われるすべり軸受装置であって、軸受部分はフッ素樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、炭素繊維および不可避不純物の複合材料により形成されており、前記軸受すべり面における各材料の面積率は、フッ素樹脂が24〜37%、芳香族ポリエーテルケトンが60〜71%、炭素繊維が3〜6%であることを特徴とする。
本発明によれば、軸受すべり面が大気中に露出するドライ条件で使われる場合、フッ素樹脂、カーボン繊維による低摩擦を確保でき、芳香族ポリエーテルケトン、カーボン繊維による耐摩耗性を確保することができる。
本発明によれば、これまで樹脂材料では実現できなかった(1)ドライ運転での低摩擦、耐摩耗性を確保することができ、(2)異物混入水中運転での耐スラリー摩耗を確保することができる。
【0006】
本発明の好ましい態様によれば、前記フッ素樹脂は、PTFE、PFAおよびFEPの少なくとも1つであることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記芳香族ポリエーテルケトンは、PEK、PEEK、PEKKおよびPEEKKの少なくとも1つであることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記炭素繊維は、直径が5〜7μm、長さが5〜1000μmであることを特徴とする。
【0008】
本発明の好ましい態様によれば、前記軸受すべり面に対して摺動する軸スリーブの摺動面は、ビッカース硬さ(Hv)が200以上であり、セラミックス、超硬合金、サーメットのいずれかで構成されることを特徴とする。
【0009】
本発明の好ましい態様によれば、前記軸受すべり面が異物を混入した水中の条件で使われることを特徴とする。
本発明によれば、軸受すべり面が異物を混入した水中の条件で使われる場合、フッ素樹脂、芳香族ポリエーテルケトンを複合することにより軸受材料自体の耐摩耗性に優れている。
【0010】
本発明の立形ポンプは、羽根車を支持する回転軸をすべり軸受装置で支持し、前記すべり軸受装置の軸受すべり面が大気中に露出するドライ条件で運転される立形ポンプにおいて、前記すべり軸受装置に請求項1乃至7のいずれか1項のすべり軸受装置を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)すべり軸受装置の軸受すべり面が水のない大気中雰囲気で用いられる場合、フッ素樹脂、カーボン繊維による低摩擦を確保でき、芳香族ポリエーテルケトン、カーボン繊維による耐摩耗性を確保することができる。
(2)すべり軸受装置の軸受すべり面が土砂等の異物が混入した水中で用いられる場合、フッ素樹脂、芳香族ポリエーテルケトンを複合することにより軸受材料自体の耐摩耗性に優れている。
(3)フッ素樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、カーボン繊維のすべり面での面積率を所定の比率になるように複合することにより、ドライ運転での低摩擦、耐摩耗性を確保することができ、異物混入水中運転での耐スラリー摩耗を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に係るすべり軸受装置の一例を示す斜視図である。
図2図2は、軸受すべり面を顕微鏡で撮影した画像を模式化した図である。
図3図3は、本発明のすべり軸受装置の使用状態の一例を示す図である。
図4図4は、本発明のすべり軸受装置が好適に使用される立形斜流ポンプを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るすべり軸受装置の実施形態を図1乃至図4を参照して説明する。図1乃至図4において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明に係るすべり軸受装置の一例を示す斜視図である。図1に示すすべり軸受装置1は、フッ素樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、炭素繊維および不可避不純物の複合材料からなり、円筒形状に成形されている。円筒形状のすべり軸受装置1の内周面は軸受すべり面BSを構成している。すなわち、すべり軸受装置1は、低摩擦と耐摩耗性を与えるフッ素樹脂と、強度が高く耐摩耗性を与える芳香族ポリエーテルケトンと、低摩擦を与えるカーボン繊維から成る材料を用いている。
【0014】
前記フッ素樹脂は、PTFE(ポリ四フッ化エチレン),PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体),FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化))のうち少なくとも一種類を含むものである。
【0015】
前記芳香族ポリエーテルケトンは、PEK(ポリエーテルケトン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEKK(ポリエーテルケトンケトン)およびPEEKK(ポリエーテルエーテルケトンケトン)のうち少なくとも1種類を含むものである。炭素繊維は短繊維から構成されている。
【0016】
本発明者らは、低摩擦と耐摩耗性に影響を与える重要な要素として、軸受すべり面BSにおける各材料の面積率であることに着目し、多数の試料(サンプル)を試作し、各材料の面積率を算出したものである。
表1は、試作したサンプル1〜12について各材料の面積率(%)を算出した結果を示す。面積率はすべり面を顕微鏡で撮影し、観察部分を画像解析することにより求めたものである。
図2は、軸受すべり面を顕微鏡で撮影した画像を模式化した図である。図2中、白抜き部分は炭素繊維(カーボン繊維)、灰色部分は芳香族ポリエーテルケトン(PEEK)、黒色部分はフッ素樹脂(PTFE)である。
【表1】
表1に示すサンプル1〜12における各材料の面積率(%)をまとめると、炭素繊維の面積率は3〜6.2%、フッ素樹脂の面積率は24〜37%、芳香族ポリエーテルケトンの面積率は60〜71.2%である。
また、炭素繊維については、すべり面にある炭素繊維の直径と長さを測定したところ、直径は5〜7μm、長さは5〜1000μmである。
【0017】
次に、フッ素樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、炭素繊維の各々の材料が低摩擦および耐摩耗性に与える影響を調べるために、上記3つの材料の全てを含んだ本発明と、上記3つの材料のうち各1つの材料を含んでいない樹脂材料1,樹脂材料2,樹脂材料3とを試作し、試験を行った結果を示す。
表2は試験に使用した各材料のすべり面における各成分の面積率(%)を示し、表3は大気中すべり試験の結果を示し、表4は異物混入水中すべり試験の結果を示す。
【表2】
【表3】
【表4】
【0018】
表3および表4から以下のことが分かる。
樹脂材料1は、大気中における摩擦係数が0.2と小さく低摩擦である。しかしながら、異物混入水中における摩耗速度は82.5(μm/h)と大きく、異物混入水中では非常に耐摩耗性に劣る。
樹脂材料2は、大気中における摩擦係数が0.45と大きく、大気中において高摩擦である。しかしながら、異物混入水中における摩耗速度は8.5(μm/h)と小さく、異物混入水中では耐摩耗性に優れている。
樹脂材料3は、大気中における摩擦係数が0.5と大きく、大気中において高摩擦である。なお、大気中すべり試験を行っている際に、摩擦係数が大きいことに起因して異常振動が発生し試験を中止したため、摩耗速度は測定不能であった。しかしながら、異物混入水中における摩耗速度は2.9(μm/h)と小さく、異物混入水中では耐摩耗性に優れている。
本発明の材料は、大気中における摩擦係数が0.25と小さく低摩擦であり、摩耗速度も0.45(μm/h)と他の材料に比較して小さく耐摩耗性に優れている。また、異物混入水中における摩耗速度は6.8(μm/h)と小さく耐摩耗性に優れている。
このように、大気中と異物混入水中の両方において試作した中で最も優れているのは本発明の材料である。本発明の材料における大気中および異物混入水中での結果は、それぞれの環境で優れている樹脂材料1、樹脂材料3と比較してもほぼ同程度の良好な結果が得られた。
【0019】
図3は、本発明のすべり軸受装置の使用状態の一例を示す図である。回転軸10には、その外周に軸受の相手材料であるスリーブ11が嵌着されている。スリーブ11は、ビッカース硬さ(Hv)が200〜2500であり、セラミックス、超硬合金、サーメットのいずれかで構成されている。スリーブ11の外周面は、上述したすべり軸受装置1のすべり面と摺動する。すべり軸受装置1は、その外周が金属の軸受ケース12によりつば部12aを介して回転機械のケーシング13に固定されている。
【0020】
図4は、本発明のすべり軸受装置が好適に使用される立形斜流ポンプを示す断面図である。図4に示す立形斜流ポンプにおいては、駆動用モータ(図示せず)は保守点検が容易なように陸上に設けられ、駆動用モータの回転は軸継手を介して軸25,25’に伝達され、軸25’の先端部に固定されたインペラ22を回転することとなる。前記軸25と軸25’とは中間軸継手26により接続されている。インペラ22の回転によって、水は吸込みベル27から吸い込まれ、吐出ボウル28および吊下げ管29を通過して吐出エルボ30から吐出される。軸25,25’は上部すべり軸受装置32および下部すべり軸受装置33によって支持されている。また軸25が吐出エルボ30を貫通する部分にはフローティングシール34が設けられている。図4に示す構造の立形斜流ポンプにおいては、すべり軸受装置32,33は、ポンプ起動時には大気中で運転される。すなわち、すべり軸受装置32,33は軸受すべり面が大気中に露出するドライ条件で運転される。ポンプ起動後の定常運転時においては、すべり軸受装置32,33は土砂等の異物が混入した水中において運転される。このような過酷な条件で使用されるすべり軸受装置32,33に、大気中と異物混入水中の両方において優れた軸受特性を発揮する本発明のすべり軸受装置が好適に使用される。
【0021】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0022】
1 すべり軸受装置
10 回転軸
11 スリーブ
12 軸受ケース
12a つば部
13 ケーシング
22 インペラ
25,25’ 軸
26 中間軸継手
27 吸込みベル
28 吐出ボウル
29 吊下げ管
30 吐出エルボ
32 上部すべり軸受装置
33 下部すべり軸受装置
34 フローティングシール
BS 軸受すべり面
図1
図2
図3
図4