(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の遺伝子検査装置は、反応容器中に含まれる検査対象の遺伝子項目に該当する遺伝子を増幅させ、反応容器中の遺伝子が増幅すると、反応容器中に含まれる蛍光標識の蛍光強度が強くなる性質を利用して、蛍光の有無もしくは発光強度で検体に遺伝子検査項目の遺伝子が含まれているか判定、または、遺伝子濃度を定量評価するタイプの遺伝子検査装置であり、遺伝子が増幅される度に蛍光強度が増すタイプの遺伝子検査装置であり、遺伝子が充分に増加されると、蛍光強度がそれ以上増加しなくなり飽和状態に達する特徴を有するタイプの遺伝子検査装置である。
【0014】
本発明の遺伝子検査装置は、検体、一つの該当遺伝子の塩基配列の増幅・検査に必要な試薬、該当遺伝子を標識させる蛍光標識プローブを、一つの反応容器に分注する工程を含む。
【0015】
本遺伝子検査装置は、上記反応容器に対して、反応容器に含まれる溶液を、適切な高温状態と適切な低温状態にする工程を含み、更に、この工程を繰り返す工程を含むことで、該当遺伝子が増幅される仕組みを有するPCR増幅の工程を含むことが望ましい。ただし、他に遺伝子を増幅する工程を含む遺伝子検査装置であれば、PCR増幅の工程を追加する必要はないものとする。
【0016】
本発明の遺伝子検査装置は、反応容器中の遺伝子を増幅中に、蛍光強度を測定するリアルタイムPCRの機能を含むことが望ましい。
リアルタイムPCRの機能を持った遺伝子検査装置の場合、反応容器中の蛍光強度は、該当の遺伝子が増幅される度に、
図15のように蛍光強度が増加する。しかし、遺伝子増幅が充分に行われると、
図15のように蛍光強度がそれ以上増加しなくなり、蛍光強度が飽和状態となる。(本発明では、蛍光強度が飽和状態になる蛍光強度をプラトー発光値と呼ぶ。)
以下に、本発明の課題を解決する手段を記す。
【0017】
プラトー発光値は、増幅された遺伝子濃度に依存しない特徴を持っている。
本発明の第一の手段は、この特徴を利用し、それぞれが同じ色の蛍光を発する複数の蛍光標識プローブに対し、反応容器の検体の遺伝子を増幅させ、複数の蛍光標識プローブで検査した場合、プラトー発光値に達した蛍光強度から、どの蛍光標識プローブがプラトー発光値に達したかが識別できるように、それぞれの蛍光標識プローブのプラトー発光値の比(以後、プラトー発光値比と省略する。)が、特別な比率になるように混合する蛍光混合応ローブを遺伝子検査装置で使用することである。これは、例えば、同じ色の蛍光標識プローブa,b,cを用意し、蛍光標識プローブa,b,cのプラトー発光値比が4:3:2になるように混合された蛍光混合プローブを遺伝子検査装置で使用することである。
【0018】
本発明の第二の手段は、蛍光混合プローブに対して、既知の遺伝子が含まれているキャリブレーション検体を使用し、蛍光混合プローブで検査可能な遺伝子検査項目の全組み合わせのプラトー発光値のキャリブレーションを行う。ここで、遺伝子検査項目の組み合わせとは、例えば蛍光混合プローブが遺伝子A、遺伝子B、遺伝子Cの遺伝子検査項目を検査可能な場合、遺伝子検査項目の全組み合わせは、(1)遺伝子A、(2)遺伝子B、(3)遺伝子C、(4)遺伝子AとB、(5)遺伝子AとC、(6)遺伝子BとC、(7)遺伝子AとBとC、の7通りとなる。本手段は、遺伝子項目の組み合わせ毎のプラトー発光値のキャリブレーション結果を含むキャリブレーション情報を、遺伝子検査装置に格納できる機能を含むものとする。また、本手段は、遺伝子項目毎のプラトー発光値を比較し、プラトー発光値の比を、キャリブレーション情報に登録できるようにすることが望ましい。
【0019】
本発明の第三の手段は、検体、該当する複数の遺伝子の増幅・検査に必要な試薬、蛍光混合プローブを一つの反応容器に分注し、遺伝子増幅を実施した後、得られたプラトー発光値をキャリブレーション情報と比較し、キャリブレーション情報に登録されているプラトー発光値と最も近いプラトー発光値を検索し、そのプラトー発光値に達する遺伝子検査項目の組み合わせを抽出することで、反応容器中の検体に含まれている遺伝子を同定する手段を用いる。
【0020】
本発明の第一の効果は、同じ色の蛍光標識プローブが複数混合された蛍光混合プローブを含む試薬を使って遺伝子増幅・検査を行った場合でも、蛍光強度のプラトー発光値から、検体にどの遺伝子が存在したか同定できる効果がある。
【0021】
第二の効果は、一つの反応容器で複数の遺伝子を増幅させる場合でも、一度に増幅できる遺伝子数が、蛍光標識の色の数では制限されなくなる効果がある。
【0022】
第三の効果は、複数の検体で複数の遺伝子項目検査を取り扱う場合、それぞれの遺伝子項目の反応容器に分注する工程を減らすことができ、反応容器の設置場所が少ない場合でも、一度に検査することによって検査時間を短縮することができる。
【0023】
次に、本発明の装置構成について説明する。
【0024】
本発明の遺伝子検査装置の全体構成は、
図8のように、(1)ユーザが検査情報を入力する入力画面109とユーザが検査結果およびキャリブレーション結果を確認する出力画面110を有するユーザ操作部180、(2)光検出器からの蛍光強度データを解析するデータ解析部111、(3)プローブや試薬情報およびキャリブレーション情報を登録するプローブ情報登録部112、(4)使用済みの反応容器および検体を含む廃液を廃棄する検体廃棄部100、反応容器中に含まれる蛍光標識の蛍光を検出する検出部101、反応容器中の検体に含まれる遺伝子を増幅させる遺伝子増幅部102、反応容器に検体および蛍光混合プローブおよび遺伝子増幅・検査に必要な試薬を分注する検体・プローブ・試薬の調整部103、検体を設置しておく検体設置部104、蛍光混合プローブや遺伝子増幅・検査に必要な試薬を保管するプローブ・試薬の設置・保存部105、検体をロボットアームを使用して検体・プローブ・試薬の調整部103に移動させる検体の搬送部Y軸107、蛍光混合プローブおよび遺伝子検査・増幅に必要な試薬を、ロボットアームを使って検体・プローブ・試薬の調整部103まで移動させるプローブ・試薬・反応容器の搬送部X軸108、反応容器を設置しておく反応容器設置部113などが設置された分析部181で構成され、これらの動作はPC部106のようなコンピュータで管理される。
【0025】
ただし、分析部181の検体廃棄部100、検体・プローブ・試薬の調整部103、検体設置部104、プローブ・試薬の設置・保存部105、検体の搬送部Y軸107、プローブ・試薬・反応容器の搬送部X軸108、反応容器設置部113の果たす機能が、手動で代用できる場合、分析部181の構成は、検出部101、遺伝子増幅部102だけでも可能である。
【0026】
図2に、本発明に必要な遺伝子検査装置の遺伝子増幅部102と検出部101の第1の形態を示す。
【0027】
遺伝子増幅部102は、カローセル5に遺伝子増幅用の温度制御部4を複数有し、それぞれの温度制御部4にて温度制御する反応容器3を架設できる。各反応容器3は、回転軸7から一定の距離はなれた位置に架設可能であるとする。カローセル5は、参照符号2の方向に回転可能である。
【0028】
遺伝子増幅部102の温度制御部4は、それぞれの反応容器3が均等に温度制御されるように設置することが望ましい。
【0029】
遺伝子増幅部102の温度制御部4は、反応容器3ごとに設置されている。ここでは、温度制御部4は反応容器3毎に設けたが、これに限らず、複数の反応容器3の温度制御を一つの温度制御部4で行ってもよい。
【0030】
遺伝子検査装置の検出器は、蛍光強度をアナログまたはデジタルで認識可能な第一の光検出器1である。この第一の光検出器1は、例えばフォトマルチプライヤー(PMT)のような光検出器であることが望ましい。また、第一の光検出器1は、反応容器3が発する蛍光を最も効率的に検出できる角度、例えば反応容器3の一つの面に、検出器の受光面が平行になるように設置することが望ましい。
【0031】
この第一の光検出器1は、カローセル5が回転し第一の光検出器1が検出する位置に反応容器3が到達したとき、反応容器3から第一の光検出器1までの距離が、全ての反応容器3に対して等しくなるように設置することが望ましい。
【0032】
第一の光検出器の光軸は、
図5のように、反応容器3から検出器に向かう方向を示すものであって、第一の励起光源6の励起光によって発生した第一の蛍光の光軸14(以下、第一の蛍光の光軸14と省略する。)であるとする。
【0033】
上記遺伝子検査装置の第一の 励起光源6から発する励起光の光軸12(以下、第一の励起光の光軸12と省略する。)は、
図5のように、第一の蛍光の光軸14と異なる光軸方向から励起光を照射するものであり、第一の励起光源6の設置位置は、回転軸7と第一の光検出器1の間で反応容器3をカローセル5の下部から照射できる位置であり、カローセル5が回転し第一の光検出器1が検出する位置に反応容器3が到達したとき、全ての反応容器3が同量の励起光量を受光できるように設置することが望ましい。
【0034】
上記遺伝子検査装置の第一の励起光の光軸12は、第一の蛍光の光軸14と同じ光軸方向から励起光を照射することも可能である。この場合、ハーフミラー、全反射ミラー、ダイクロイックミラー、ローパスフィルター、バンドパスフィルターなどの光学部品を併用し、励起光と蛍光を区別する仕組みを追加することが必要である。
【0035】
図3に、本発明に必要な遺伝子検査装置の遺伝子増幅部102と検出部101の第二の形態を示す。
【0036】
上記遺伝子検査装置の第二の形態は、カローセル5の周りに複数の第一の光検出器を設置する形態である。上記拡散検査装置の第二の携帯は、
図3のように、カローセル5の周りに第一の光検出器1と第二の光検出器20を設置する。ここでは、光検出器の数は、第一の光検出器1と第二の光検出器20の二つであれが、それ以上設置することも可能である。
【0037】
遺伝子検査装置の第二の形態の第一の光検出器1と第二の光検出器20は、それぞれ検出器で異なる波長の蛍光を検出するものとする。
【0038】
遺伝子検査装置の第二の形態の励起光源は、
図6のように、それぞれが異なる波長の励起光を発する第一の励起光源6と励起光11であるとし、設置位置は、回転軸7と第一の光検出器1の間で反応容器3をカローセル5の下部から照射できる位置に第一の励起光源6を設置し、回転軸7と第二の光検出器20の間で反応容器3をカローセル5の下部から照射できる位置に第二の励起光源11を設置するものとする。なお、第二の励起光源11から発する励起光の光軸13は、
図6のように、第二の蛍光光軸15と異なる光軸方向から励起光を照射するものであり、第二の励起光源11の設置位置は、回転軸7と第二の光検出器20の間で反応容器3をカローセル5の下部から照射できる位置であり、カローセル5が回転し第二の光検出器20が検出する位置に反応容器3が到達したとき、全ての反応容器3が同量の励起光量を受光できるように設置することが望ましい。
【0039】
カローセル5が回転し第一の光検出器1が検出する位置に反応容器3が到達したとき、または、カローセル5が回転し第二の光検出器20が検出する位置に反応容器3が到達したとき、全ての反応容器3が同量の励起光量を受光できるように設置することが望ましい。
【0040】
図4(正面図)に、本発明に必要な遺伝子検査装置の遺伝子増幅部102と検出部101の第三の形態を示す。
【0041】
遺伝子増幅部102は、回転しないインキュベータ10に遺伝子増幅用の温度制御部4を複数有し、それぞれの温度制御部4にて温度制御する反応容器3を架設できる。各反応容器3は等間隔に設置可能である。
【0042】
遺伝子増幅部102の温度制御部4は、それぞれの反応容器3が均等に温度制御されるように設置することが望ましい。
【0043】
遺伝子増幅部102の温度制御部4は、複数の反応容器3の温度制御を一つの温度制御部4で行う。ここでは、複数の反応容器3の温度制御を一つの温度制御部4で行うが、温度制御部4は、反応容器3ごとに設置することも可能である。
【0044】
図4(側面図)に、遺伝子検査装置の検出器を示す。
【0045】
検出器は、蛍光強度をアナログまたはデジタルで認識可能で、且つ、それぞれの反応容器3の位置を空間的に認識できる機能と、それぞれの反応容器3の光強度が識別できる機能を有する第三の光検出器40であることが必要である。ここで、第三の光検出器40は例えばCCDカメラである。また、第三の光検出器40は、反応容器3が発する蛍光を最も効率的に検出できる角度、例えば反応容器3の一つの面に、第三の光検出器40の受光面が平行になるように設置することが望ましい。
【0046】
第三の光検出器40は、反応容器3から第三の光検出器40までの距離8(以下、光検出器までの距離8と省略する)が、反応容器3ごとに異なるものとする。第三の光検出器40までの距離8は、反応容器3ごとに固有の距離を有し、遺伝子検査装置の設置場所や、遺伝子検査装置を設置してから時間が経過しても、それぞれの反応容器3と第三の光検出器40までの距離8は変化しないものとする。
【0047】
また、遺伝子検査装置の第三の形態の第一の励起光の光軸12は、第一の形態と異なり、
図7のように、第一の蛍光光軸14と同じ光軸方向を向くように設置するものとし、第一の励起光源6は、インキュベータの下部に設置する。ただし、それぞれの反応容器3から第一の励起光源6までの距離9(以下、励起光源までの距離9と省略する。)が、反応容器3ごとに固有の距離を有し、上記遺伝子検査装置の設置場所や、上記遺伝子検査装置を設置してから時間が経過しても、それぞれの反応容器3と励起光源までの距離9は変化しないものとする。
【0048】
次に、本発明の特徴部分である、実施手順について説明する。
【0049】
上記遺伝子検査装置において、同じ色の蛍光標識の蛍光混合プローブを使用し、複数の核酸配列を同定する検査手順は、(1)同じ色の蛍光を発する蛍光標識の蛍光プローブを混合した蛍光混合プローブの作成、(2)蛍光混合プローブのキャリブレーション、(3)複数の遺伝子項目の測定をする手順で行う。
【0050】
(1)同じ色の蛍光を発する蛍光標識の蛍光プローブを混合した蛍光混合プローブの作成は、例えば
図9のような作成フローのように、各蛍光プローブのプラトー発光値が特別な比率になるように混合する。具体的には、まず、ユーザまたはプローブ作成者が、同じ色の励起光で同じ色の蛍光を発する蛍光プローブに対し、互いに標的の遺伝子が異なる蛍光プローブを複数選択するステップS1、選択した蛍光プローブのプラトー発光値比を選択するステップS2、次に、選択した蛍光プローブが全てプラトー発光値に達した場合において、 蛍光発光値の上限値を決定するステップS3、蛍光発光値の上限値を発光値比の最大値として定義するステップS4、次に、発光値比の最大値が蛍光発光値の上限値として定義されていることを基に、各蛍光プローブのプラトー発光値比が示す蛍光発光値を決定するステップS5、次に、各蛍光プローブに反応する遺伝子が充分に増幅された検体を用い、各蛍光プローブと検体を反応させて、蛍光発光値を測定しながら、 決定した各蛍光プローブの蛍光発光値に達するまで蛍光プローブの量または濃度を調節するステップS6、次に、蛍光プローブの混合作業として、 調整した蛍光プローブ同士の発光値比が変化しないように混合するステップS7、の作成フローに従って蛍光プローブを作成することが望ましい。
【0051】
ただし、
図9の作成フローは一例であり、最終的に蛍光混合プローブに含まれる各蛍光プローブのプラトー発光値が、特別な比率で混合されていれば、蛍光混合プローブの作成方法および手順は問わないものとする。
【0052】
例えば、3種類の遺伝子A, B, Cにそれぞれ特異的に反応し、同じ色の蛍光標識を有する蛍光プローブA, B, Cにおいて、蛍光プローブA, B, Cのそれぞれのプラトー発光値が特別な比率4:3:2になるように、蛍光プローブを混合する。
【0053】
(2)蛍光混合プローブのキャリブレーションは、例えば
図10のようなキャリブレーションフローのように、増幅した遺伝子項目と、蛍光混合プローブの発光値の関係をキャリブレーションし、キャリブレーション情報を装置のプローブ情報登録部112に登録する。
具体的には、まず、ユーザまたはプローブ作成者が、キャリブレーションする蛍光混合プローブを選択するステップS8、次に、装置が、選択された蛍光混合プローブの情報を読み出し、使用する励起光と光検出器を決定するステップS9、次に、ユーザが、の遺伝子が含まれているか既知の検体(キャリブレーション検体)を、選択された蛍光混合プローブで検査可能な遺伝子検査項目の全組み合わせの種類以上用意するステップS10、次に、装置が、キャリブレーション検体と蛍光混合プローブおよび分析に必要な試薬を1個の反応容器に分注するステップS11、次に、装置が、該当する反応容器の遺伝子を増幅させるステップS12、次に、装置が、該当する反応容器に励起光を照射し、検出器から蛍光発光値を検出するステップS13、次に、装置が、キャリブレーション検体に含まれる遺伝子項目と蛍光混合プローブの蛍光発光値の関係をキャリブレーション情報として登録するステップS14、のキャリブレーションフローに従って、蛍光混合プローブをキャリブレーションすることが望ましい。
【0054】
ただし、
図10のキャリブレーションフローは一例であり、蛍光混合プローブ作成時の各蛍光プローブのプラトー発光値と、実際に装置で使用する場合の各プローブのプラトー発光値の差を補正できれば、キャリブレーション方法は問わないものとする。
【0055】
キャリブレーション情報は、増幅した遺伝子項目と、蛍光混合プローブのプラトー発光値の関係を含み、
図1のように、蛍光混合プローブのプラトー発光値から、検体に含まれる遺伝子種類が特定できるような情報である。
【0056】
また、キャリブレーション情報は、増幅した遺伝子項目ごとにプラトー発光値同士の比(プラトー発光値比)を計算した結果も含むことが望ましい。
【0057】
(3)複数の遺伝子項目の測定は、例えば
図11のような測定フローのように、該当する複数の遺伝子増幅に必要な酵素試薬と、該当する蛍光混合プローブと、検体を一つの反応容器に分注し、その後、蛍光混合プローブの蛍光値がプラトーに達する時間まで遺伝子増幅を行う。具体的には、まず、ユーザが操作画面から、検査する遺伝子項目を複数選択する。
【0058】
ステップS15、次に、ユーザが操作画面から、検査する遺伝子項目を検査可能な蛍光混合プローブを選択するステップS16、次に、装置が、蛍光混合プローブの情報を読み出し、使用する励起光と検出器を決定するステップS17、次に、装置が、検査に必要な 全ての試薬・蛍光混合プローブ・検体を反応容器に分注・調整するステップS18、次に、装置が、該当する反応容器の遺伝子を増幅させるステップS19、次に、装置が、該当する反応容器に励起光を照射し、検出器から蛍光発光値を検出するステップS20、次に、装置が、登録した蛍光混合プローブの遺伝子項目とプラトー発光値の関係から、 取得した蛍光発光値に対応する遺伝子項目を同定し、反応容器の検体に含まれる遺伝子を判定するステップS21、の測定フローで測定を行う。
【0059】
このとき、遺伝子を増幅する時間は、予め決められているものとする。蛍光値を測定するタイミングは、リアルタイムPCRのように遺伝子増幅中に複数回の測定する方式と、明らかにプラトー発光値に達する時間で遺伝子増幅を行った後、蛍光値を測定する方式のどちらでも良いものとする。
【0060】
ここで、蛍光値を取得する際、反応容器に励起光源の励起光を照射し、光検出器から蛍光を取得する。光検出器で取得した蛍光は、コンピュータのデータ解析部でプラトー発光値として変換される。
【0061】
ここで、検体のプラトー発光値に誤差があった場合、プローブ情報登録部112に登録されている該当する蛍光混合プローブのキャリブレーション情報から、増幅した遺伝子項目と、蛍光混合プローブのプラトー発光値の関係を読み出し、第一の光検出器1から検出したプラトー発光値と、キャリブレーション情報として登録された最も近いプラトー発光値および該当するプラトー発光値比を検索し、反応容器の検体に含まれている該当遺伝子を同定する。
【0062】
次に本発明の実施効果について説明する。
【0063】
上記手順で同じ色の蛍光標識の蛍光プローブを3種類混合した場合、
図1のように7通りの組み合わせの遺伝子項目を一度に一つの反応容器で検査できる。
【0064】
上記手順のように、同じ色の蛍光標識の蛍光プローブA,B,Cを蛍光値のプラトー発光値比が4:3:2になるように蛍光標識プローブA,B,Cを混合した場合、プラトー発光値比と検体に含まれる遺伝子の組み合わせは、以下のようになる。
【0065】
ここで、検体に遺伝子A含まれていて遺伝子Aが増幅されたときには蛍光標識a、検体に遺伝子Bが含まれていて遺伝子Bが増幅されたときには蛍光標識b、検体に遺伝子Cが含まれていて遺伝子Cが増幅されたときには蛍光標識cが、特異的に発光するものとする。(ここで、反応容器には、蛍光標識プローブA,B,Cを混合した蛍光混合プローブの他に、遺伝子増幅および検査に必要なプライマーや酵素などの全ての試薬、検体を含むものとし、以下、これは省略して記述する)。
【0066】
蛍光標識プローブA,B,Cを混合した蛍光混合プローブを使用して、1つの反応容器にある検体に含まれる遺伝子A、B、Cの有無を検査した場合、光検出器のプラトー発光値比が4であれば遺伝子Aが、プラトー発光値比が3であれば遺伝子Bが、プラトー発光値比が2であれば遺伝子Cが含まれていると同定できる。
【0067】
ここでプラトー発光値比は、光検出器のバックグラウンド光を除き、蛍光標識a,b,cが全てプラトー発光した場合の検出値を9、蛍光標識aだけプラトー発光した場合の検出値を4として表したものである。
蛍光混合プローブは、1つの反応容器にある生物学的サンプルに複数の遺伝子が含まれる場合も、その遺伝子を同定できる。例えば、この混合試薬を使用した場合、プラトー発光値比が7であれば遺伝子AとBが含まれ、プラトー発光値比が6であればAと、プラトー発光値比が5であればBとが反応容器に含まれると同定できる(
図1)。
【0068】
本発明の第一の効果は、従来は複数の遺伝子検査項目を検査したい検体に対し、同じ色の蛍光標識の蛍光標識プローブを使用した場合、一つの反応容器で一度に検査することが出来ず、複数の遺伝子検査項目の数だけ反応容器に検体を分注する工程を加えなければならない課題があったが、本発明の第一の手段により、同じ色の蛍光標識の蛍光標識プローブを使用した場合でも、一つの反応容器で一度に複数の遺伝子検査項目を検査できる効果が期待できる。
第一の効果により、同じ色の蛍光標識の蛍光標識プローブを使用した場合でも、複数の遺伝子検査項目の数だけ反応容器に検体を分注する工程を削除することが可能な第三の効果が期待できる。
【0069】
蛍光混合プローブに混合されている各蛍光プローブに照射する励起光量は、蛍光標識が励起され続けると蛍光強度が弱くなる現象(ブリーチング)を起こしにくいような短時間および弱い励起光強度であり、且つ、光検出器で蛍光を取得した際、バックグラウンド光と区別できるような一定の蛍光強度を発する励起光強度であることが望ましい。
【0070】
蛍光混合プローブに混合されている各蛍光プローブ量は、各蛍光プローブが該当する遺伝子と反応してプラトー発光値に達したとき、蛍光混合プローブのプラトー発光値が、プラトー発光値に達した蛍光プローブの種類によって区別できる量に調節することが必要である。
【0071】
蛍光混合プローブ量と励起光量は、蛍光混合プローブに混合されている各蛍光プローブが全てプラトー発光値に達したとき、光検出器の検出限界を超えないように量を調節することが必要である。
【0072】
励起光源は、検体測定時とキャリブレーション時の励起光強度が、等しいことが必要である。
【0073】
遺伝子増幅部102で検体の遺伝子増幅を行う時、遺伝子増幅に必要な酵素試薬もしくは蛍光標識プローブが、失活しにくいような遺伝子増幅機構であることが必要である。具体的には、PCR増幅の工程で遺伝子を増幅させる場合、高温・低温を繰り返すとき、蛍光標識プローブおよび試薬が、失活する温度に達しないような機構にする必要がある。
【0074】
登録したキャリブレーション情報は、
図12の蛍光混合プローブ情報画面1000ように、蛍光混合プローブID1001、検査項目1002、プローブ発光値情報1003などが表示できるようにすることが望ましい。プローブ発光値情報は、検査項目、混合した蛍光プローブID、使用する励起光波長、蛍光波長、蛍光プローブ単体のプラトー発光値、およびプラトー発光値比などが表示できるようにすることが望ましい。
【0075】
同じ色の蛍光標識の蛍光プローブを混合した蛍光混合プローブを使用して遺伝子検査を実施した際、
図13の検査結果画面1004ように、出力画面にて検査結果を表示できるようにすることが望ましい。検査結果は、検査整理番号1005、反応容器ID1006、使用した蛍光混合プローブID1007、検査結果1008を表示できるようにすることが望ましい。検査結果には、検査項目、判定、使用した蛍光混合プローブID、測定発光値、測定発光値比を表示できるようにすることが望ましい。
【0076】
上記遺伝子検査装置は、上記蛍光混合プローブにおいて、一つの反応容器に異なる蛍光標識を使用した複数の蛍光混合プローブを使用することも可能である。
図3および
図6のように異なる励起光の励起光源と第一の光検出器1を複数設置し、それぞれの励起光源に対応する蛍光標識の蛍光混合プローブを一種類だけ反応容器に分注することが可能であることが望ましい。
【0077】
上記遺伝子検査装置は、同じ色の蛍光標識の蛍光プローブを特別な比率で混合した蛍光混合プローブは、予め異なる色の蛍光標識の蛍光混合プローブをブレンドし、蛍光ブレンドプローブとして情報を装置に登録しておくことができるものとする。
【0078】
また、蛍光混合プローブのプラトー発光値から、検体に含まれる遺伝子種類が特定できるように、キャリブレーション検体を使用してキャリブレーションを行い、キャリブレーションによって得られたキャリブレーション情報を、装置のプローブ情報登録部112に登録できることが望ましい。
【0079】
プローブ情報登録部112に登録するキャリブレーション情報および蛍光ブレンドプローブ情報は、検査項目、混合した蛍光プローブID、励起光波長、蛍光波長、プラトー発光値、プラトー発光値比、検出する検出器の位置番号を登録することが望ましい。
【0080】
具体的には、蛍光ブレンドプローブ情報を
図14の蛍光ブレンドプローブ情報画面1009ように、蛍光ブレンドプローブID1010、検査項目1002、ブレンドプローブ発光値情報1011などが表示できるようにすることが望ましい。ブレンドプローブ発光値情報は、検査項目、混合した蛍光プローブID、使用する励起光波長、蛍光波長、蛍光プローブ単体のプラトー発光値、プラトー発光値比、および検出する検出器位置などが表示できるようにすることが望ましい。
【0081】
上記のような異なる励起光の励起光源と第一の光検出器1を複数設置した遺伝子検査装置の場合、装置のプローブ情報登録部112に登録された蛍光混合プローブの励起光源の波長によって発光した蛍光値だけを、データ解析部で解析するものとする。
【0082】
上記蛍光ブレンドプローブ、遺伝子増幅および検査に必要な酵素試薬、検体を一つの反応容器に分注して、遺伝子増幅および蛍光値の測定を行う場合、バックグラウンドよりも強い蛍光値を検出した検出器の位置から、登録したキャリブレーション情報を基に、該当する蛍光混合プローブを識別し、蛍光値から、該当する蛍光プローブを識別し、検体にどの遺伝子が検体に含まれているか判定する。
【0083】
このとき、蛍光混合プローブが複数の励起光波長で励起され、蛍光が複数波長ある場合、光学フィルターなどで蛍光を一種類の波長にカットさせることが望ましい。
【0084】
本発明の第二の効果は、一つの反応容器で複数の遺伝子を増幅させる場合でも、一度に増幅できる遺伝子数が、蛍光標識の色の数では制限されなくなる効果がある。
【0085】
これは、例えば、例えば3個の複数遺伝子の同定が可能であれば、異なる色の蛍光標識を使うことで、1つの反応容器で1度に増幅できる遺伝子数を増やすことができ、一度に増幅できる遺伝子数は、遺伝子検査装置の再現性や光検出器の分解能など、蛍光標識の色の数以外で制限されることになる。
【0086】
本発明の第三の効果は、複数の検体で複数の遺伝子項目検査を取り扱う場合、それぞれの遺伝子項目の反応容器に分注する工程を減らすことができ、反応容器の設置場所が少ない場合でも、一度に検査することによって検査時間を短縮することができる。
【0087】
上記蛍光混合プローブおよび蛍光ブレンドプローブにおいて、混合およびブレンドする蛍光プローブに、複数の遺伝子を特異的に標識する蛍光プローブを使用することも可能である。これらの蛍光混合プローブをプローブ情報登録部112に登録できるようにすることが望ましい。これは、複数の遺伝子を特異的に標識する蛍光プローブがプラトー発光値に達した場合、該当遺伝子を同定するのではなく、該当する複数の遺伝子を一つの遺伝子グループとして捉え、スクリーニング目的で遺伝子グループに含まれるどれかが検体に含まれるかどうかを判定するために使用する。
【0088】
また、上記蛍光混合プローブにおいて、各蛍光プローブはプラトー発光値比が特別な比率になるように混合するため、通常、各プラトー発光値で発光する蛍光プローブの数は、一つである。しかし、各プラトー発光値で発光する蛍光プローブの数を複数にすることも可能である。この場合、各プラトー発光値で発光する蛍光プローブを一つのグループとし、一つの蛍光プローブグループは、該当する複数の遺伝子を一つのグループとして標識する。例えば、遺伝子A, D, Eを一つの遺伝子グループAとすると、遺伝子グループAに特異的を蛍光標識する蛍光プローブa, d, eを一つの蛍光プローブグループaとする。このとき、遺伝子Bと遺伝子Cに反応する蛍光プローブを蛍光プローブb, 蛍光プローブcとすると、蛍光プローブグループa、蛍光プローブ b 、蛍光プローブcのプラトー発光値が4:3:2になるように混合する。このとき、蛍光プローブグループaに含まれる蛍光プローブa, d, eは、プラトー発光値比が1:1:1になるように混合することが望ましい。よって、検体中に遺伝子dが含まれていれば、プラトー発光値比は4/3の発光値を示し、遺伝子eが含まれていてもプラトー発光値比が4/3の発光値を示す。さらに、検体中に遺伝子d, eが含まれていれば、プラトー発光値比が8/3の発光値を示し、検体中に遺伝子a, d, eが含まれていれば、プラトー発光値比が4の発光値を示す。これらの蛍光プローブグループを含む蛍光混合プローブの情報およびキャリブレーション情報を、装置のプローブ情報登録部112に登録できるようにすることが望ましい。
【0089】
上記遺伝子検査装置は、上記複数の遺伝子を特異的に標識する蛍光プローブまたは、蛍光プローブグループを含む蛍光混合プローブを使用し、蛍光を検出器で取得した場合において、蛍光のプラトー発光値から、複数の遺伝子を特異的に標識する蛍光プローブまたは蛍光プローブグループの該当する遺伝子グループを同定することができ、検体に、遺伝子グループに含まれる遺伝子のいずれかが含まれていることを装置で表現できるようにする。この機能は、遺伝子を同定するものではなく、遺伝子をスクリーニングするための目的で使用する。
【0090】
上記遺伝子検査装置は、リアルタイムPCR方式を搭載し、遺伝子増幅による蛍光値の増加が、プラトー発光値に達したことを判断する基準を作ることが望ましい。具体的には、遺伝子が増幅される度に蛍光強度が増加する性質を利用して、PCRサイクルまたは時間によって蛍光強度を1階微分、二階微分、三階微分を行い、蛍光強度増加量、もしくは蛍光強度増加度、蛍光強度増加度の微分値のいずれかをコンピュータで監視し、監視データが一定の数値に達した場合、例えば蛍光強度増加度が0になったら、プラトー発光値に達したことを判断する機構を追加することが望ましい。