【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「イットリウム系超電導電力機器開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シールド用可動接続端子が、前記超電導シールド層の外周に装着されるシールド用プラグと、このシールド用プラグが移動可能に取り付けられるシールド用ソケットと、で構成され、
前記シールド用プラグが、前記超電導シールド層の外周に装着された状態で、前記シールド用電流リードに接続された前記シールド用ソケットに挿通されており、
前記シールド用プラグと前記シールド用ソケットの間に、導電性の接触端子が二つ以上介在していることを特徴とする請求項4に記載の超電導ケーブルの終端接続部。
前記上側リードと前記下側リードの間の連結部と、前記下側リードと前記導体用可動接続端子の間の連結部はいずれも、二つ以上の導電性の接触端子が介在し、前記導体用電流リードの長手方向に沿った中心線回りの回動を許容する構造であることを特徴とした請求項7の超電導ケーブルの終端接続部。
【背景技術】
【0002】
従来、極低温で超電導状態になる超電導線材を導体として用いた超電導ケーブルが知られている。超電導ケーブルは、大電流を低損失で送電可能な電力ケーブルとして期待されており、実用化に向けて開発が進められている。
【0003】
超電導ケーブルの一例を
図2に示す。
図2に示す超電導ケーブル10は、断熱管12内に一心のケーブルコア11が収納された単心型の超電導ケーブルである。
ケーブルコア11は、フォーマ111、超電導導体層112、電気絶縁層113、超電導シールド層114、常電導シールド層115、保護層116等で構成される。超電導導体層112は、フォーマ111の上に複数条の超電導線材を螺旋状に巻回することにより形成される。同様に、超電導シールド層114は、電気絶縁層113の上に複数条の超電導線材を螺旋状に巻回することにより形成される。
【0004】
超電導導体層112及び超電導シールド層114を形成する超電導線材は、例えば、テープ状の金属基板上に中間層、超電導層、保護層が順に形成された積層構造を有している。超電導層を構成する超電導体としては、例えば液体窒素温度(大気圧で−196℃)以上で超電導を示すRE系超電導体(RE:希土類元素)がある。特に、化学式YBa
2Cu
3O
7-yで表されるイットリウム系超電導体(以下、Y系超電導体)が代表的である。
【0005】
断熱管12は、内管121と外管122からなる二重環構造を有している。内管121と外管122の間には、多層断熱層(スーパーインシュレーション)123が介在され、かつ真空引きされている。また、外管122の外周はポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレンなどの防食層124で被覆されている。
超電導ケーブル10の定常運転時には、内管121の内部に液体窒素などの冷媒が循環され、極低温状態で超電導導体層112に送電電流が流れることとなる。
【0006】
このような超電導ケーブル10と電力機器等の実系統を接続する箇所には、終端接続部を使用した端末処理が施される。終端接続部においては、低温部となる低温容器に超電導ケーブル10の端部が収容され、電流リードを介して常温部となる実系統に接続される。
超電導ケーブル10は、組立施工時や保守点検時に、常温から液体窒素温度まで冷却され、又は液体窒素温度から常温まで昇温される。このようなヒートサイクル下では、ケーブルコア11が超電導ケーブル長の約0.3%で熱伸縮することが知られている。
終端接続部において、ケーブルコア11が電流リードに接続されて長手方向に移動困難となっている場合、ケーブルコア11が熱伸縮すると超電導ケーブル10に局所的な応力が加わる。そして、超電導導体層112や超電導シールド層114を構成する超電導線材に座屈が発生するなどして、超電導ケーブル10の性能が著しく低下してしまう。
【0007】
そこで、特許文献1では、編組線などの可とう性を有する接続端子(可とう接続端子)を用いて超電導導体層と電流リードを接続することにより、熱伸縮が吸収されるようにしている。また、終端接続部内で超電導ケーブルにオフセットを設けたり、超電導ケーブルの長手方向に終端接続部をスライド可能としたりすることにより、ケーブルコアの熱伸縮を吸収する技術が提案されている。
【0008】
また、他の従来の超電導ケーブルの終端装置では、超電導ケーブルの終端部を収容する低温容器を超電導ケーブルの延長線上に沿って移動可能とするレールと、低温容器をレールに沿って移動させる駆動用モータを設け、超電導ケーブルの熱伸縮に応じて低温容器の移動制御を行うことで、熱伸縮による超電導ケーブルの局所的な応力の発生を防止している(例えば、特許文献2参照)。
また、他の超電導ケーブルの終端装置では、編組線などの可撓性を有する接続端子(可撓接続端子)を用いて超電導導体層と電流リードを接続することにより、熱伸縮が吸収されるようにしている(例えば、
特許文献1参照)。
【0009】
さらに、他の超電導ケーブルの終端装置では、超電導送電ケーブルの超電導導体の終端部に略L字状の可撓性導体を介して接続され、鉛直方向に引き出された引き出し導体を上下に分割すると共に、分割された二つの引き出し導体の一方の連結部に受け穴を形成し、他方の連結部は受け穴に対して鉛直方向に沿って挿入可能とし、受け穴の内部を摺動可能とすることで、引き出し導体の熱伸縮の吸収を図っている(例えば、
特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載された、可とう接続端子を用いて超電導導体層と電流リードを接続する方法では、吸収できる熱伸縮量が小さい上、ケーブルコアに捻りが加わると可とう接続端子が捻れてしまうため、超電導ケーブルへの局所的な応力集中を効果的に緩和することができない。
終端接続部内で超電導ケーブルにオフセットを設ける方法では、熱伸縮を十分に吸収するためにオフセットを大きくとる必要があり、終端接続部が著しく大型化してしまう。
終端接続部を可動式にする方法では、他の機器との接続に支障をきたす上、超電導ケーブルの動き出しに大きな軸力を要するので、超電導ケーブルに局所的な応力集中が生じるのを回避できない。また、終端接続部をスライドさせる機構や、ケーブルコアの熱伸縮量を計測する装置が必要となるため、終端接続部の構造が複雑化してしまう。
【0012】
また、特許文献1及び2に記載の終端装置では、超電導導体の終端部に生じる熱伸縮にのみ対策を施したものに過ぎず、超電導導体に接続された鉛直上方に伸びる引き出し導体に生じる熱伸縮については何ら対応することができなかった。
【0013】
一方、
特許文献1に記載の終端装置は、編組線などの可撓性を有する接続端子を用いて超電導導体層と電流リードを接続する構成のため、鉛直方向の熱伸縮についても可撓性により許容することは可能であるが、超電導ケーブルを流れる電流が大きくなると、編組線を構成する導線の本数を増やしたり、径の大きな導線を使用する必要があり、編組線の可撓性が低下して鉛直方向の熱伸縮に十分に対応することができなくなるという問題があった。また、この編組線は、超電導導体による水平方向の熱伸縮と引き出し導体の鉛直方向の熱伸縮とに対応することが要求されるため、これら二方向に生じる熱伸縮に同時に満足な対応を図ることは困難であった。
【0014】
また、
特許文献3に記載の終端装置は、略L字状の可撓性導体を介して超電導導体と引き出し導体とを連結するので、超電導ケーブルを流れる電流が大きくなると、断面積の大きな可撓性導体を使用する必要があり、可撓性導体の可撓性が低下して鉛直方向の熱伸縮に十分に対応することができなくなるという問題があった。
また、この終端装置の引き出し導体は、その表面に絶縁被膜を形成しているので、引き出し導体と絶縁被膜との間で、例えば、組立施工時や保守点検時の冷却工程又は昇温工程等において、熱伸縮量に差が生じて応力が発生し、剥離や破壊などを生じるおそれがあった。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ヒートサイクル下におけるケーブルコアの熱伸縮等を吸収して超電導ケーブルの健全性を維持できるとともに、小型化・簡素化を図ることができる超電導ケーブルの終端接続部を提供することを目的とする。
また、本発明は、超電導導体から導体が引き出される方向について生じる熱伸縮をより効果的に許容し得る超電導ケーブルの終端接続部を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明は、フォーマと超電導導体層を有するケーブルコアが、断熱管内に収容されてなる超電導ケーブルの終端接続部であって、冷媒が充填される低温容器と、一端が前記冷媒に浸漬され、他端が常温部に引き出される導体用電流リードと、前記超電導導体層と前記導体用電流リードとを電気的に接続する導体用可動接続端子と、を備え、
前記超電導導体層が、前記導体用可動接続端子を介して前記導体用電流リードに接続され、
前記ケーブルコアが、前記超電導導体層と前記導体用電流リードとの電気的接続を保持しつつ、長手方向に移動可能で、かつ周方向に回転可能となっている。
さらに、前記導体用可動接続端子が、前記低温容器の上方から垂下して配設された前記導体用電流リードに接続され、前記ケーブルコアが、前記導体用可動接続端子との接続部、及び前記断熱管と前記低温容器の接続部によって、支持されて
おり、前記導体用可動接続端子が、前記超電導導体層の外周に装着される導体用プラグと、この導体用プラグが移動可能に取り付けられる導体用ソケットと、で構成され、前記導体用プラグが、前記超電導導体層の外周に装着された状態で、前記導体用電流リードに接続された前記導体用ソケットに挿通されると共に、前記導体用プラグと前記導体用ソケットの間に、導電性の接触端子が長手方向に離間して少なくとも二つ以上介在していることを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の超電導ケーブルの終端接続部において、前記導体用プラグは、外周面に長手方向に離間する2以上の凹溝が形成されており、前記凹溝に前記接触端子が配設されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の超電導ケーブルの終端接続部において、前記導体用可動接続端子との接続部、及び前記断熱管と前記低温容器の接続部の間隔が1500mm以下であることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の超電導ケーブルの終端接続部において、前記ケーブルコアが、超電導シールド層と常電導シールド層を有し、
一端が前記冷媒に浸漬され、他端が常温部に引き出されるシールド用電流リードと、前記超電導シールド層と前記シールド用電流リードとを電気的に接続するシールド用可動接続端子と、を備え、前記超電導シールド層が、前記シールド用可動接続端子を介して前記シールド用電流リードに接続され、前記ケーブルコアが、前記超電導シールド層と前記シールド用電流リードとの電気的接続をも保持しつつ、長手方向に移動可能で、かつ周方向に回転可能となっている。
そして、前記シールド用可動接続端子が、前記低温容器の上方から垂下して配設された前記シールド用電流リードに接続され、前記ケーブルコアが、前記導体用可動接続端子との接続部、前記シールド用可動接続端子との接続部、及び前記断熱管と前記低温容器の接続部によって、支持されていることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の超電導ケーブルの終端接続部において、前記シールド用可動接続端子が、前記超電導シールド層の外周に装着されるシールド用プラグと、このシールド用プラグが移動可能に取り付けられるシールド用ソケットと、で構成され、前記シールド用プラグが、前記超電導シールド層の外周に装着された状態で、前記シールド用電流リードに接続された前記シールド用ソケットに挿通されている。
そして、前記シールド用プラグと前記シールド用ソケットの間に、導電性の接触端子が二つ以上介在していることを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の超電導ケーブルの終端接続部において、前記ケーブルコアのたわみ量は1mm以内に維持されていることを特徴としている。
【0021】
請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の超電導ケーブルの終端接続部において、前記導体用電流リードは、上下に連結された上側リードと下側リードを有し、前記下側リードの周囲に隙間を設けて囲繞する絶縁筒状体を介して前記低温容器が前記下側リードを垂下支持し、前記上側リードと前記下側リードの間の連結部は、前記上側リードと前記下側リードの間の電気的な接続状態を維持しつつ、前記上側リードと前記下側リードを前記導体用電流リードの長手方向に沿って相互に摺動を可能とし、前記下側リードと前記導体用可動接続端子の間の連結部とが、前記下側リードと前記導体用可動接続端子の間の電気的な接続状態を維持しつつ、前記下側リードと前記導体用可動接続端子を前記導体用電流リードの長手方向に沿って相互に摺動を可能とすることを特徴とする。
【0022】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の超電導ケーブルの終端接続部において、前記上側リードと前記下側リードの間の連結部と、前記下側リードと前記導体用可動接続端子の間の連結部はいずれも、二つ以上の導電性の接触端子が介在し、いずれも前記導体用電流リードの長手方向に沿った中心線回りの回動をも許容する構造であることを特徴とする。
【0023】
請求項9記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の超電導ケーブルの終端接続部において、前記導電性の接触端子が、コイルスプリングで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ケーブルコアが長手方向にスムーズに移動可能となっているので、組立施工時や保守点検時の冷却工程又は昇温工程で生じるケーブルコアの熱伸縮を効果的に吸収することができる。また、ケーブルコアが周方向に回転可能となっているので、超電導ケーブルの製造時や敷設時の残留応力によりケーブルコアに加わる捻れも吸収することができる。
したがって、ケーブルコアの熱伸縮や捻れに伴い局所的に応力が集中して、超電導導体層や超電導シールド層が座屈することはないので、超電導ケーブルの健全性が維持される。
また、ケーブルコアと電流リードとの接続を、可動接続端子という簡易な部材で実現できるので、終端接続部の簡素化・小型化を図ることができる。
【0025】
また、導体用電流リードを上側リードと下側リードとに二分し、下側リードとの間で隙間を有する絶縁筒状体を介して低温容器が下側リードを垂下支持し、上側リードと下側リードの間の連結部と下側リードと導体用可動接続端子の間の連結部とがいずれも導体用電流リードの長手方向に沿って相互間の摺動を可能とする構成の場合には、以下の効果がある。
即ち、絶縁筒状体は、下側リードとの間で隙間を設けたので、組立施工時や保守点検時の冷却工程又は昇温工程等において導体用電流リード及び絶縁筒状体に熱伸縮が発生した場合に、その後の伸縮量の違いによる剥離や破損などの発生を効果的に防止することが可能となった。
その一方で、下側リードは絶縁筒状体を介して低温容器内に支持されるため、絶縁筒状体と下側リードとの間で隙間を設けた場合には、下側リードは絶縁筒状体の熱伸縮による位置変動の影響と、下側リード自体の熱伸縮による影響とが発生する。しかしながら、下側リードに対して、上側リードとの間で摺動可能に連結する連結部と導体用可動接続端子の間で摺動可能に連結する連結部とを備えているので、絶縁筒状体の熱伸縮による位置変動の影響を一方の連結部における摺動により吸収し、下側リード自体の熱伸縮による影響を他方の連結部における摺動により吸収することができる。
このため、本発明では、下側リードの絶縁体の剥離や破損などを効果的に防止しつつも、下側リードに対する応力の発生も効果的に防止することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第一の実施形態]
以下、本発明の第一の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は第一の実施形態に係る超電導ケーブルの終端接続部の概略構成を示す図、
図2は終端接続部が施工される超電導ケーブルの一例を示す図である。
【0028】
図2に示す超電導ケーブル10は、断熱管12内に一心のケーブルコア11が収納された単心型の超電導ケーブルである。ケーブルコア11は、フォーマ111、超電導導体層112、電気絶縁層113、超電導シールド層114、常電導シールド層115、保護層116等により構成される。
【0029】
フォーマ111は、ケーブルコア11を形成するための巻心であり、例えば銅線等の常電導線材を撚り合わせて構成される。フォーマ111には、短絡事故時に超電導導体層112に流れる事故電流が分流される。
【0030】
超電導導体層112は、フォーマ111の上に複数条の超電導線材を螺旋状に巻回することにより形成される。
図2では、超電導導体層112を4層の積層構造としている。超電導導体層112には、定常運転時に送電電流が流れる。
超電導導体層112を構成する超電導線材は、例えば、テープ状の金属基板上に中間層、超電導層、保護層等が順に形成された積層構造を有している。超電導層を構成する超電導体には、液体窒素温度以上で超電導を示すRE系超電導体(RE:希土類元素)、例えば化学式YBa
2Cu
3O
7-yで表されるY系超電導体を適用できる。また、金属マトリクス中に超電導体が形成されているテープ状の超電導線材でもよい。超電導体には、ビスマス系超電導体、例えば化学式Bi
2Sr
2CaCu
2O
8+δ(Bi2212), Bi
2Sr
2Ca
2Cu
3O
10+δ(Bi2223)を適用できる。なお、化学式中のδは酸素不定比量を示す。
【0031】
電気絶縁層113は、例えば絶縁紙、絶縁紙とポリプロピレンフィルムを接合した半合成紙、高分子不織布テープなどで構成され、超電導導体層112の上に巻回することにより形成される。
【0032】
超電導シールド層114は、電気絶縁層113の上に複数条の超電導線材を螺旋状に巻回することにより形成される。
図2では、超電導シールド層114を2層の積層構造としている。超電導シールド層114には、定常運転時に電磁誘導によって導体電流とほぼ同じ電流が逆位相で流れる。超電導シールド層114を構成する超電導線材には、超電導導体層112と同様のものを適用できる。
【0033】
常電導シールド層115は、超電導シールド層114の上に銅線などの常電導線材を巻回することにより形成される。常電導シールド層115には、短絡事故時に超電導シールド層114に流れる事故電流が分流される。
保護層116は、例えば絶縁紙、高分子不織布などで構成され、常電導シールド層115の上に巻回することにより形成される。
【0034】
断熱管12は、ケーブルコア11を収容するとともに冷媒(例えば液体窒素)が充填される内管121と、内管121の外周を覆うように配設された外管122からなる二重環構造を有している。
内管121及び外管122は、例えばステンレス製のコルゲート管である。内管121と外管122の間には、例えばアルミを蒸着したポリエチレンフィルムの積層体で構成された多層断熱層(スーパーインシュレーション)123が介在され、真空状態に保持される。また、外管122の外周はポリエチレンなどの防食層124で被覆されている。
【0035】
図1に示すように、終端接続部1は、低温容器20に超電導ケーブル10の端部が所定の状態で収容され、導体用電流リード31及びシールド用電流リード32を介して電流が実系統側に引き出される構成となっている。
終端接続部1では、超電導ケーブル10の超電導導体層112と導体用電流リード31とが、導体用可動接続端子50を介して電気的に接続されている(導体接続部C1)。導体用可動接続端子50は、ケーブルコア11を、長手方向に移動可能で、かつ周方向に回転可能な状態で、導体用電流リード31に接続するための端子である。
また、超電導ケーブル10の超電導シールド層114とシールド用電流リード32とが、シールド用可動接続端子60を介して電気的に接続されている(シールド接続部C2)。シールド用可動接続端子60は、ケーブルコア11を、長手方向に移動可能で、かつ周方向に回転可能な状態で、シールド用電流リード32に接続するための端子である。
つまり、終端接続部1では、ケーブルコア11が導体接続部C1とシールド接続部C2で支持され、長手方向に移動可能で、かつ周方向に回転可能となっている。
【0036】
低温容器20は、内側の冷媒槽21と、外側の真空槽22からなる二重構造を有し、超電導ケーブル10の端部を収容する収容部20aと、収容部20aに垂設された円筒状の引き出し部20b,20cに区画される。また、低温容器20(冷媒槽21、真空槽22)には、作業者が施工時の作業等を外部から行うことができるように、気密に密閉可能なハンドホール(図示略)が形成されている。
【0037】
導体用電流リード31、シールド用電流リード32は、超電導ケーブル10から実系統に電流を引き出すための導体であり、例えば銅製のパイプ材等で構成される。導体用電流リード31は、低温容器20の引き出し部20bに垂下して配設され、シールド用電流リード32は、引き出し部20cに垂下して配設されている。なお、導体用電流リード31、シールド用電流リード32を、導電性のパイプや中実線材で構成するようにしてもよい。
導体用電流リード31の外周には、例えば繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)からなるブッシング41が配設され、導体用電流リード31の下端部(導体用可動接続端子50との接続部)には、電極シールド42が配設されている。すなわち、導体用電流リード31には高電圧が印加されるため、ブッシング41及び電極シールド42を配設することで、接地される低温容器20との電界を緩和するようにしている。
【0038】
導体接続部C1とシールド接続部C2の間に位置するケーブルコア11の電気絶縁層113の外周には、エポキシベルマウスとストレスコーンからなる電界緩和層13が形成されている。この超電導ケーブル10の端部が低温容器20の収容部20aに導入され、冷媒(例えば液体窒素)に浸漬される。このとき、超電導ケーブル10の内管121が冷媒槽21の外壁に接続され、外管122が真空槽22の外壁に接続される(ケーブル接続部C3)。内管121と冷媒槽21の接続、外管122と真空槽22の接続は、例えば溶接やボルト止めによって行われる。
定常運転時には、超電導ケーブル10の内管121の内部及びこれに連通する冷媒槽21には、冷媒循環装置(図示略)により冷媒が循環供給される。また、超電導ケーブル10の内管121と外管122の間隙及びこれに連通する真空槽22は、真空ポンプ(図示略)により真空状態に封じ切られる。
【0039】
終端接続部1においては、超電導ケーブル10のケーブルコア11が、導体接続部C1、シールド接続部C2、及びケーブル接続部C3の3箇所で支持されることとなる。
なお、ケーブルコア11が水平状態で真っ直ぐに支持されるように、導体接続部C1、シールド接続部C2、及びケーブル接続部C3の位置(高さ)は調整される。また、導体接続部C1、シールド接続部C2、及びケーブル接続部C3によるケーブルコア11の支持間隔が長すぎると、ケーブルコア11が撓んで水平状態が損なわれる。水平状態を保つにはたわみ量を1mm以内にすると良い。超電導ケーブルのヤング率は5,000kg/mm
2であり、導体の外径によって、ケーブルコア11の支持間隔は変化する。例えば、275kVでは、ケーブルコア外径は85mmとなり、たわみ量を1mm以内にするには、支持間隔は2800mm以下とすることが望ましい。一方、66/77kVでは外径が40mmでたわみ量を1mm以内にするには、支持間隔は1500mm以下とすることが望ましい。
【0040】
組立施工時や保守点検時の冷却工程又は昇温工程では、ケーブルコア11が高さ方向にも伸縮することとなるが、そのときの伸縮量は約5mm、最大でも8mm以下であるので、水平状態はたわみ量と合わせて、10mm未満となる。導体接続部C1、シールド接続部C2、及びケーブル接続部C3の位置は、10mm以内のたわみであれば、ケーブルコア11の長手方向の移動は妨げられない。すなわち、真直状態とたわみ10mmの状態では引っ張りと圧縮時の動きだしの力は同等であり、10mm以上になると徐々に動き出しの力は大きくなる。そのため、支持間隔でのたわみは1mm以内にすると良い。
【0041】
図3は、導体用可動接続端子の具体的な構成例を示す図である。
図3に示すように、導体用可動接続端子50は、超電導導体層112の外周に装着される導体用プラグ51と、この導体用プラグ51が移動可能に取り付けられる導体用ソケット52で構成されている。
【0042】
導体用ソケット52は、例えば銅製の成形体であり、円筒部52aと円筒部52aの外周面に形成された接続片52bを有している。円筒部52aに導体用プラグ51が移動可能に取り付けられ、接続片52bに導体用電流リード31等が接続される。
例えば、導体用ソケット52は、導体用電流リード31及びブッシング41に固定ボルトで締着され、導体用電流リード31等との接続部位の外周には電極シールド42が被嵌される。この場合、電極シールド42を上方にスライドさせるとともに、固定ボルトを外して導体用電流リード31及びブッシング41との固定状態を解除することにより、導体用ソケット52は水平方向にスライド可能となる。したがって、導体用プラグ51と導体用ソケット52との接続状態を容易に確認することができる。
【0043】
導体用プラグ51は、ケーブルコア11の先端部に装着される圧縮スリーブ511と、圧縮スリーブ511を挿嵌する外装体512で構成されている。圧縮スリーブ511は、例えば銅製の有蓋円筒部材であり、その内径はフォーマ111の外径とほぼ同等(若干大きめ)に設計されている。外装体512は、圧縮スリーブ511と同様に、例えば銅製の有蓋円筒部材であり、その内径は圧縮スリーブ511の外径よりも大きく設計されている。また、外装体512の外径は導体用ソケット52の円筒部52aの内径より小さく設計され、導体用プラグ51を導体用ソケット52に挿通させたときに、僅かにクリアランスが形成されるようになっている。
【0044】
ケーブルコア11を段剥ぎして露呈された超電導導体層112の外周には、シールドメッシュと呼ばれる銅編組線514がフォーマ111との境界が含まれるように巻回されている(
図4A参照)。この銅編組線514に半田を染み込ませることにより、超電導導体層112と銅編組線514が電気的に接続される。なお、超電導導体層112が積層構造となっている場合は、各層の表面が露呈されるように段切りしておく。
図3では、超電導導体層112を2層構造で示している。
【0045】
銅編組線514が巻回された後、フォーマ111の先端部が圧縮スリーブ511に挿嵌され圧着固定される(
図4B参照)。そして、圧縮スリーブ511が外装体512に挿嵌され固定されることにより、超電導導体層112の外周に導体用プラグ51が装着される(
図4C参照)。例えば、外装体512の先端面に形成された貫通孔にボルト513を挿入し、圧縮スリーブ511の先端部に形成された雌ねじに締着することにより、外装体512はケーブルコア11に一体的に取り付けられる。また、銅編組線514の端子を取り出して、この端子を外装体512に締着することにより、外装体512は超電導導体層112と電気的に接続される。
【0046】
なお、外装体512の超電導導体層112に対応する位置に半田注入穴を形成しておき、この半田注入穴から半田を注入することにより外装体512とケーブルコア11が一体化されるとともに、電気的に接続されるようにしてもよい。また、ボルト513による締着と半田付けを併用して、外装体512とケーブルコア11をより強固に固定するようにしてもよい。
【0047】
導体用プラグ51の外周面、すなわち外装体512の外周面には、長手方向に離間する2つの凹溝512b、512cが形成されている。凹溝512bは導体用プラグ51の先端側に近接して形成され、凹溝512cは導体用プラグ51の基端側に近接して形成されている。内側の2つの凹溝512b,512cには導電性の接触端子53が一つずつ配設される(
図5参照)。このように接触端子53を導体用プラグ51に対して少なくとも二つ以上配置する事で、導体用プラグ51と導体用ソケット52は真直性が保たれ、動きがスムーズになる。
【0048】
接触端子53は、例えば
図6A及び
図6Bに示すように、銅製のコイルスプリングで構成される。このコイルスプリングには、例えばグローブ・テック社製のコイルスプリングが好適である。接触端子53を凹溝512b,512cに配設したとき、接触端子53の外周部が外装体512の外周面から突出するように、外装体512の凹溝512b,512cと接触端子53の寸法は決定される。つまり、導体用プラグ51を導体用ソケット52に挿通させたときに、両者間のクリアランスに接触端子53が介在する。
導体用プラグ51と導体用ソケット52との間に接触端子53を介在させることにより、導体用プラグ51が導体用ソケット52に沿って移動した場合にも、低抵抗(例えば数μΩ)で良好な導通接続が保持される。また、コイルスプリングの収縮力により導体用プラグ51と導体用ソケット52が接続されるので、多少の
芯ずれが生じても、良好な導通接続が保持される。
【0049】
なお、外装体512に形成された内側の2つの凹溝512b,512cの間隔は、ケーブルコア11の熱伸縮に伴い導体用プラグ51が導体用ソケット52に沿って移動したときに、接触端子53が導体用ソケット52から外れないように設計されるのが望ましい。接触端子53が導体用ソケット52から外れると、導体用プラグ51と導体用ソケット52との良好な導通接続が阻害されるためである。
【0050】
このように、終端接続部1においては、導体用プラグ51が超電導導体層112の外周に装着された状態で、導体用電流リード31に接続される導体用ソケット52に挿通されることにより、導体用可動接続端子50が組み立てられる。すなわち、導体用可動接続端子50は簡易な構成で実現されるので、終端接続部1の簡素化を図ることができる。
【0051】
図7は、シールド用可動接続端子の具体的な構成例を示す図である。なお、シールド用可動接続端子60は、導体用可動接続端子50とほぼ同様に構成されるので、簡略化して説明する。
図7では、
図3に示す導体用可動接続端子50と同一又は対応する構成要素に、共通下位数字の符号を付している。
【0052】
図7に示すように、シールド用可動接続端子60は、超電導シールド層114の外周に装着されるシールド用プラグ61と、このシールド用プラグ61が移動可能に取り付けられるシールド用ソケット62で構成されている。
【0053】
シールド用ソケット62は、例えば銅製の成形体であり、円筒部62aと円筒部62aの外周面に形成された接続片62bを有している。円筒部62aにシールド用プラグ61が移動可能に取り付けられ、接続片62bにシールド用電流リード32が接続される。
例えば、シールド用ソケット62は、シールド用電流リード32に固定ボルトで締着される。この場合、固定ボルトを外してシールド用電流リード32との固定状態を解除することにより、シールド用ソケット62は水平方向にスライド可能となる。したがって、シールド用プラグ61とシールド用ソケット62との接続状態を容易に確認することができる。
【0054】
シールド用プラグ61は、ケーブルコア11の超電導シールド層114に装着される円筒状の圧縮スリーブである。ケーブルコア11を段剥ぎして露呈された超電導シールド層114の外周には、シールドメッシュと呼ばれる銅編組線(図示略)が、電気絶縁層113から常電導シールド層115にわたって巻回されている。この銅編組線に半田を染み込ませることにより、超電導シールド層114と銅編組線が電気的に接続される。
銅編組線(図示略)が巻回された後、超電導シールド層114の外周部がシールド用プラグ61に挿嵌され固定される。例えば、シールド用プラグ61に形成した半田注入穴から半田を注入することにより、シールド用プラグ61とケーブルコア11が一体化されるとともに、電気的に接続される。
【0055】
シールド用プラグ61の外周面には、長手方向に離間する2つの凹溝61bと61cが形成されている。2つの凹溝61b,61cには導電性の接触端子63が一つずつ配設され、シールド用プラグ61に対して少なくても二つ以上配設される(
図5参照)。
【0056】
シールド用プラグ61とシールド用ソケット62との間に接触端子63を介在させることにより、シールド用プラグ61がシールド用ソケット62に沿って移動した場合にも、低抵抗(例えば数μΩ)で良好な導通接続が保持される。また、コイルスプリングの収縮力によりシールド用プラグ61とシールド用ソケット62が接続されるので、多少の真ずれが生じても、良好な導通接続が保持される。
【0057】
このように、終端接続部1においては、シールド用プラグ61が超電導シールド層114の外周に装着された状態で、シールド用電流リード32に接続されるシールド用ソケット62に挿通されることにより、シールド用可動接続端子60が組み立てられる。すなわち、シールド用可動接続端子60は簡易な構成で実現されるので、終端接続部1の簡素化を図ることができる。
【0058】
図8A〜
図8Cは、終端接続部1の施工方法を示す図である。超電導ケーブル10の終端部に終端接続部1を施工する場合、まず、
図8Aに示すように、超電導ケーブル10の先端部を段剥ぎし、ケーブルコア11の超電導シールド層114にシールド用プラグ61を装着する。そして、シールド用プラグ61をシールド用ソケット62に挿嵌する。また、ケーブルコア11の超電導導電層112の外周に導体用プラグ51を装着する。
【0059】
次に、
図8Bに示すように、導体用プラグ51とシールド用プラグ61の間に位置するケーブルコア11の電気絶縁層113の外周に、エポキシベルマウスとストレスコーンからなる電界緩和層13を形成する。なお、電界緩和層13を形成した後、導体用プラグ51を装着するようにしてもよい。
一方、低温容器20では、予め導体用ソケット52を導体用電流リード31及びブッシング41に接続しておく。
【0060】
次に、
図8Cに示すように、導体用プラグ51、シールド用プラグ61、シールド用ソケット62、及び電界緩和層13を組み付けたケーブルコア11を低温容器20の中に導入し、導体用プラグ51を導体用ソケット52に挿通させる。
そして、超電導ケーブル10の内管121を冷媒槽21の外壁に接続し、外管122を真空槽22の外壁に接続する。また、ハンドホールを介してシールド用ソケット62をシールド用電流リード32に接続する。このようにして、超電導ケーブル10の終端部に終端接続部1が施工される。
【0061】
なお、シールド用ソケット62と同様に、導体用ソケット52を導体用プラグ51に挿通させた状態でケーブルコア11を低温容器20内に導入し、ハンドホールを介して、導体用ソケット52を導体用電流リード31等に接続するようにしてもよい。
【0062】
このように、終端接続部1は、冷媒(例えば液体窒素)が充填される低温容器20と、一端が冷媒に浸漬され、他端が常温部に引き出される導体用電流リード31と、超電導導体層112と導体用電流リード31とを電気的に接続する導体用可動接続端子50とを備えている。
そして、先端から段剥ぎされた超電導ケーブル10の超電導導体層112が、導体用可動接続端子50を介して導体用電流リード31に接続され、当該超電導ケーブル10のケーブルコア11が、超電導導体層112と導体用電流リード31との電気的接続を保持しつつ、長手方向に移動可能で、かつ周方向に回転可能となっている。
【0063】
さらに、終端接続部1は、一端が冷媒に浸漬され、他端が常温部に引き出されるシールド用電流リード32と、超電導シールド層114とシールド用電流リード32とを電気的に接続するシールド用可動接続端子60とを備えている。
そして、段剥ぎされた超電導ケーブル10の超電導シールド層114が、シールド用可動接続端子60を介してシールド用電流リード32に接続され、当該超電導ケーブル10のケーブルコア11が、超電導シールド層114とシールド用電流リード32との電気的接続をも保持しつつ、長手方向に移動可能で、かつ周方向に回転可能となっている。
【0064】
終端接続部1においては、ケーブルコア11が長手方向に移動可能となっているので、組立施工時や保守点検時の冷却工程又は昇温工程で生じるケーブルコア11の熱伸縮を効果的に吸収することができる。例えば、冷却工程においてはケーブルコア11が熱収縮することとなるが、
図9に示すように、熱収縮に伴いケーブルコア11は右側に移動するので、水平状態(真直状態)が保持される。また例えば、昇温工程においてはケーブルコア11が熱伸張することとなるが、
図10に示すように、熱伸張に伴いケーブルコア11は左側に移動するので、水平状態(真直状態)が保持される。
さらに、ケーブルコア11が周方向に回転可能となっているので、超電導ケーブル10の製造時や敷設時の残留応力によりケーブルコア11に加わる捻れも吸収することができる。したがって、ケーブルコア11の熱伸縮や捻れに伴い局所的に応力が集中して、超電導導体層112や超電導シールド層114が座屈することはないので、超電導ケーブル10の健全性が維持される。
実際に、従来技術ではケーブルコア11の熱伸縮時に数トンの軸力が発生していたのを、実施形態の終端接続部1では1/10の数百kg以下に低減できている。
【0065】
また、ケーブルコア11と導体用電流リード31及びシールド用電流リード32との接続を、導体用可動接続端子50及びシールド用可動接続端子60という簡易な部材で実現できるので、終端接続部の簡素化・小型化を図ることができる。
つまり、低温容器20内にケーブルコア11の水平状態を保持するための支持台等を設ける必要はなく、また、終端接続部1においてケーブルコア11にオフセットを設ける必要もないので、終端接続部1の簡素化・小型化が可能となる。
【0066】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0067】
例えば、実施形態では単心型超電導ケーブル10の終端部に施工される終端接続部1について説明したが、本発明は、3心のケーブルコアを一括して断熱管内に収納した3心一括型超電導ケーブルの終端部に施工する終端接続部においても適用できる。
また、超電導導体層112や超電導シールド層114を構成する超電導線材として、銀合金などの安定化材中にBi系酸化物超電導体からなるフィラメントが埋設されたテープ線材を適用してもよい。
また、超電導ケーブル10のケーブルコア11が、超電導シールド層114を備えていない場合は、終端接続部1において超電導導体層112と導体用可動接続端子50とが接続されるだけの構成となる。この場合、当然に低温容器20の構成も変更される。
【0068】
また、ケーブルコア11の熱伸縮量が小さければ、超電導シールド層114とシールド用電流リード32を、シールド用可動接続端子60ではなく、銅編組線等の可とう接続端子で接続するようにしてもよい。
【0069】
また、導体用プラグ51と導体用ソケット52との間に介在する接触端子53、シールド用プラグ61とシールド用ソケット62との間に介在する
接触端子63を、コイルスプリング以外の接触端子で構成してもよい。すなわち、接触端子53及び接触端子63は、低抵抗で、通電時の発熱が小さい接触端子であればよく、例えば、バネで銅端子を押し付ける構造の接触端子や、球状の玉軸受、円柱状のころ軸受等のベアリングを利用した接触端子を適用できる。
【0070】
また、この実施形態では、接触端子53を導体用プラグ51に2個配設するようにしているが、導体用ソケット52の内側に配設するようにしてもよい。また、接触端子を3個以上配設するようにしてもよい。
シールド用プラグ61とシールド用ソケット62の間に配設される接触端子63についても同様である。
【0071】
[第二の実施形態]
次に、第二の実施形態として、可動端子を使って、常温側に引き出す電流リードに好適な終端接続部1Aついて示す。なお、この
終端接続部1Aについては、前述した終端接続部1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明は省略するものとする。
図11に示すように、終端接続部1Aも、低温容器20に超電導ケーブル10の端部が所定の状態で収容され、導体用電流リード31A及びシールド用電流リード32を介して電流が実系統側に引き出される構成となっている。
【0072】
引き出し部20bは、収容部20aから鉛直上方に垂設されており、当該引き出し部20bの上部には、引き出し部20bと同心で円筒状の碍子33が連設され、さらに、碍子33の上端部には実系統側に接続される上部金具28を保持した天板281が取り付けられている。そして、引き出し部20bと碍子33の内部であってこれらの中心位置には、導体用可動接続端子50から上部金具28を接続する導体用電流リード31が配設され、当該導体用電流リード31は、絶縁筒状体としてのブッシング(コンデンサコーン)41を介して内部に支持されている。また、ブッシング41は、外周に固定装備された取り付け用のフランジ部411により、引き出し部20bと碍子33のそれぞれの内部領域を分離し、液体や気体の流通を阻止している。
上記碍子33の内部領域には、絶縁油やSF
6ガス等からなる流体絶縁体が充填されている。なお、碍子33内の流体絶縁体は常温であり、当該碍子33は、常温部に相当する。
また、引き出し部20bの内部領域は、所定の高さまでは液体の冷媒(具体的には液体窒素)が充填され、液面より上の領域には気体の冷媒(具体的には気体窒素)が封入されている。
【0073】
引き出し部20cは、引き出し部20bよりやや小径の円筒状であって、当該引き出し部20bに隣接して収容部20aから鉛直上方に垂設されている。
【0074】
また、この終端接続部1Aでは、導体用可動接続端子50の導体用ソケット52の上部に導体用電流リード31の下側リード35と接続するための接続片55を備えている。
この接続片55は、
図12に示すように、導体用ソケット52に対して一体的に形成されると共に、当該導体用ソケット52の上部から鉛直上方に立ち上げられた有底円筒体である。かかる接続片55は、その上端部において円板状のフランジ部551を備え、中央部は円形の開口部552となっている。そして、前述した円筒スリーブ状の電極シールド42の下部がフランジ部551を囲繞した状態で、ネジ止めにより固定装備されている。また、フランジ部551の上面には、ブッシング41の中空パイプ412の下端部がボルト締めにより固定装備されている。
また、接続片55の中央開口部552には、導体用電流リード31の下端部(正確には後述する下側リード35の縮径部351)が挿入され、導体用可動接続端子50と導体用電流リード31とが電気的に接続されている。
なお、導体用電流リード31の下側リード35はその上端部で吊下支持さており、その下端部は、図示のように、中央開口部552の最深部まで挿入されていない。これにより、下側リード35は、接続片55に対して上下に移動する余地を残している。
【0075】
導体用電流リード31は、下側リード35と上側リード36とにより上下に分割されており、これらは連結部により同一軸上に連結されている。また、この導体用電流リード31の下側リード35と上側リード36とは、いずれも、全体が良導体、例えば銅により形成された中実又は中空の丸棒体である。
下側リード35は、
図12示すように、その下端部に、下端面の周縁部に面取り加工が施された縮径部351が形成されており、その外径は、前述した導体用可動接続端子50の接続片55に形成された開口部552の内径より小さく設定され、開口部552に対して挿入可能となっている。また、縮径部351の内径が開口部552より小さく設定されることにより相互の摺動を可能とし、縮径部351の挿入長さに応じて下側リード35を導体用可動接続端子50に対して上下方向に移動可能としている。また、同時に、開口部552に対して縮径部351を中心とする下側リード35の回動を可能としている。
【0076】
縮径部351の外周面には、挿入方向に離間する二つの凹溝352が近接して形成されており、下側、上側の凹溝352には導電性の接触端子353がそれぞれに2個配設されている(
図12参照)。
上記接触端子353は、
図6A及び
図6Bに示した既出の銅製のコイルスプリングで構成され、凹溝352に配設したときに、縮径部351の外周面より幾分外側に突出するサイズに設定されている。そして、縮径部351と開口部552との間に接触端子353を2個介在させることにより、リードの歪みによる引っかかりを緩和し、下側リード35が上下方向に移動した場合にも、コイルスプリングの収縮力により低抵抗(例えば数μΩ)で良好な導通接続が保持される。
【0077】
上記下側リード35の縮径部351と接続片55の開口部552とが、下側リード35と導体用可動接続端子50とを導体用電流リード31の長手方向に沿って互いに摺動可能に連結する連結部C4を構成する。
【0078】
図13は、下側リード35と上側リード36との連結部C5を鉛直上下方向に沿った断面で示した断面図である。
図示のように、下側リード35の上端部には、後述する上側リード36の縮径部361が挿入可能なソケット部354が一体的に形成されている。かかるソケット部354は、上方に開口した有底円筒状に形成されており、その外周下部には円形のフランジ部354aが半径方向外側に向かって延出されている。かかるフランジ部354aは、その外周部にシールド355がネジ止めで装備されており、その下面側には絶縁性の絶縁リング356を介してブッシング41の上端部に設けられたカラー413がボルト締めにより連結されている。かかる連結に用いられる複数のボルトは、いずれも絶縁性の絶縁リング356により、下側リード35との間で絶縁が施され、下側リード35からブッシング41には電流が流れないようになっている。
また、フランジ部354aの下面と絶縁性の絶縁リング356の上面及び絶縁リング356の下面とブッシング41のカラー413の上端面との間には、それぞれOリング356a,356aが介挿されており、碍子33の内部の流体絶縁体と引き出し部20b内の気体及び液体の冷媒とがそれぞれに流通しないように、気密性及び水密性を保っている。
【0079】
なお、下側リード35は、碍子33及び引き出し部20b内において、フランジ部354aがブッシング41のカラー413の上端面に載置された状態となり、当該ブッシング41を介して垂下支持された状態となっている。
【0080】
上側リード36は、その上端部が碍子33の上端に位置する上部金具28により保持され、碍子33の内部において、垂下された状態で支持されている。
また、上側リード36の下端部には、
図13示すように、下端面の周縁部に面取り加工が施された縮径部361が形成されており、その外径は、前述した下側リード35のソケット部354の上面中央に形成された開口部の内径よりわずかに小さく設定され、ソケット部354に対して挿入可能となっている。また、縮径部361の内径がソケット部354よりわずかに小さく設定されることにより相互の摺動を可能とし、縮径部361の挿入長さに応じて下側リード35を上側リード36に対して上下方向に移動可能としている。
【0081】
また、縮径部361の外周面には、挿入方向に離間する二つの凹溝361aが近接して形成されており、それぞれの凹溝361aには導電性の接触端子362が配設されている。
上記接触端子362は、
図6A及び
図6Bに示した既出の銅製のコイルスプリングと同じ構造であり、凹溝361aに配設したときに、縮径部361の外周面より幾分外側に突出するサイズに設定され、下側リード35が上下方向に移動した場合にも、コイルスプリングの収縮力により低抵抗(例えば数μΩ)で上側リード36に対して良好な導通接続が保持される。
【0082】
上記上側リード36の縮径部361と下側リード35のソケット部354とが、下側リード35と上側リード36とを導体用電流リード31の長手方向に沿って互いに摺動可能に連結する連結部C5を構成する。
【0083】
図14はブッシング41の断面構造を模式的に示した説明図である。
図11〜
図14によりブッシング41の構造について説明する。
ブッシング41は、前述したソケット部354のフランジ部354aの下側に取り付けられた円筒状のカラー413と、間隙αを形成しつつ下側リード35を中心位置に遊挿するステンレス製の中空パイプ412とを有している。
【0084】
上記中空パイプ412は、その上端部がカラー413の下部に連結されており、下端部は導体用可動接続端子50のフランジ部551の上面に固定されている。中空パイプ412は、下端部が導体用可動接続端子50に導通しているが、上端部はカラー413とソケット部354との間に絶縁体からなる部材である絶縁リング356が介挿されているため導通していない。これにより、中空パイプ412の下端部と上端部の双方が導体用電流リード31に導通している場合と異なり、中空パイプ412における誘導電流による発熱を防止することが可能となっている。
【0085】
そして、中空パイプ412の外周面上には絶縁材料からなるブッシング絶縁体414が形成されている。かかるブッシング絶縁体414は、鉛直方向について下端部414aと中間部414bと上端部414cとから構成されており、中間部414bは鉛直方向について均一の外径をなし、下端部414aと上端部414cは下方又は上方に向かうほど縮径しており、ブッシング絶縁体414の全体は略紡錘形状に形成されている。
そして、ブッシング絶縁体414の下端部414aと上端部414cには、鉛直方向について一定の幅のコンデンサ電極を形成する金属箔415が、中空パイプ412を中心とする半径方向について一定の間隔で階段的かつ同心状となるように絶縁体414中に埋め込まれている。また、最外層となる金属箔415は、ブッシング絶縁体414の中間部414bの全域に渡って形成されており、当該最外層の金属箔415については図示しないアース線が取り付けられて、接地されている。
【0086】
また、ブッシング絶縁体414の中間部414bにおける外周面上には、当該中間部414bを中心とする半径方向外側に延出されたフランジ部411が接着などにより固定装備されている。そして、かかるフランジ部411は、引き出し部20bの上端面と碍子33の下端面とに挟まれた状態で保持される。即ち、ブッシング41は、引き出し部20bの上端面に載置された状態で固定される。また、フランジ部411の下面と引き出し部20bの上端面及びフランジ部411の上面と碍子33の下端面との間には、図示しないOリングが介挿されており、碍子33の内部の流体絶縁体と引き出し部20b内の気体及び液体の冷媒とがそれぞれに流通しないように、気密性及び水密性を保っている。
【0087】
ブッシング絶縁体414としては、エポキシ樹脂、EPR(エチレンプロピレンゴム)、ゴム、FRP(fiber reinforced plastics)などが用いられている。また、金属箔415は、例えばアルミ箔等から形成される。
かかる構造により、各金属箔415は、ブッシング絶縁体414中において高圧側(下側リード35から近い方)から低圧側(下側リード35から遠い方)に向かってそれぞれ等しい容量のコンデンサが直列接続された形になるために、ブッシング絶縁体414の界面に沿う電界はほぼ均一に整えられる。さらに、ブッシング絶縁体414の最外層の金属箔415は接地されているので、ブッシング絶縁体414の外径が均一な中間部414bの表面電界は接地電位とすることができる。
【0088】
かかる構造により、ブッシング41では、ブッシング絶縁体414における中間部414bを最も低い接地電位とすることができる。従って、導体用電流リード31の全長を収容する領域内において最も耐電圧特性が低くなる気体冷媒の封入領域(引き出し部20bにおける上部領域)がブッシング絶縁体414における中間部414bの範囲に含まれるように、中間部414bの長さを設定し、且つ、ブッシング41の設置する高さを調整する。なお、ブッシング41の高さ調整の際には、導体用電流リード31及びブッシング41における熱伸縮、冷媒の液面高さの変動などの影響を考慮して、ある程度のマージンを取っておくことが望ましい。
【0089】
なお、ブッシング絶縁体414の中間部414bに設けるフランジ部411は、碍子33の内部と引き出し部20bの内部とを隔絶をする必要があるので、ブッシング絶縁体414の表面に対して気密性及び水密性を保持して接着剤等により固定される。
また、中空パイプ412は、コーンの構造を支持することが可能であれば、導電性を有する素材から形成することは必須ではなく、絶縁体、例えばFRPのような樹脂などから形成しても良い。
【0090】
このように、終端接続部1Aは、前述した終端接続部1と同様の効果を具備すると共に、以下の効果を得ることが可能である。
即ち、終端接続部1Aでは、導体用電流リード31を下側リード35と上側リード36とに分割し、下側リード35と上側リード36の連結部を構成する上側リード36の縮径部361と下側リード35のソケット部354との嵌合構造により、下側リード35は鉛直上下方向に摺動可能となっている。
また、下側リード35と導体用可動接続端子50との連結部を構成する下側リード35の縮径部351と接続片55の開口部552との嵌合構造により、下側リード35は鉛直上下方向に摺動可能となっている。
さらに、下側リード35は、ブッシング41により垂下支持されると共に、下側リード35の外周面とブッシング41の中空パイプ412の内周面との間には、所定の隙間αが設けられている。
【0091】
上記の構成により、組立施工時や保守点検時の冷却工程又は昇温工程で導体用電流リード31に熱伸縮が発生した場合に、下側リード35は、上側リード36との連結部及び導体用可動接続端子50との連結部により、ブッシング41による鉛直方向の熱伸縮を吸収することができ、部材間の応力の発生及びこれに伴う破損などの発生を効果的に回避することが可能である。
また、熱伸縮が導体用電流リード31にのみ発生するのであれば、摺動可能とする連結部は、下側リード35の上側か下側のいずれか一方にのみ設ければ足りるが、実際には、導体用電流リード31の下側リード35がブッシング41により支持されていることから、ブッシング41の熱伸縮による下側リード35の位置変動も吸収しなければならない。そして、終端接続部1では、下側リード35の上下それぞれに鉛直方向に摺動可能とする連結部C4,C5が設けられているため、ブッシング41による熱伸縮は、上側の連結部C5(下側リード35と上側リード36との連結部)により吸収することができ、下側リード35による熱伸縮は、下側の連結部C4(下側リード35と導体用可動接続端子50との連結部)により吸収することができる。また、上側リード36に生じる熱伸縮は、上側の連結部C5(下側リード35と上側リード36との連結部)により吸収することができる。
【0092】
このように、終端接続部1Aは、ブッシング41と下側リード35との間に隙間を設けてこれらの剥離や破損を生じない構造を取りつつも、当該構造によって生じるブッシング41の熱伸縮と下側リード35の熱伸縮の双方を二つの連結部C4,C5とにより効果的に吸収することができ、組立施工時や保守点検時の冷却工程又は昇温工程等においても、熱伸縮による部材間の応力の発生及びこれによる部材の破損などの発生を効果的に防止することが可能である。
【0093】
また、終端接続部1は、下側リード35における上下の連結部C4,C5により導体用電流リード31の長手方向に生じる熱伸縮を吸収し、導体用可動接続端子50及びシールド用可動接続端子60によりケーブルコア11の長手方向の熱伸縮を吸収するので、導体用電流リード31の長手方向とケーブルコア11の長手方向の二方向に同時に熱伸縮が発生した場合でも、個々に吸収が行われ、効果的にその影響を排除することが可能である。
【0094】
さらに、下側リード35の上下の連結部C4,C5は、いずれも部材の可撓性に依存して熱伸縮を許容する構造ではなく、摺動により熱伸縮を吸収する構造であるため、導体用電流リード31に流す電流量を大きくするためにリードの断面積を拡大した場合でも、熱伸縮の吸収能力に影響を与えることがなく、常に効果的な熱伸縮の吸収を担保することが可能である。
【0095】
なお、終端接続部1Aでは、下側リード35の縮径部351と上側リード36の縮径部361に接触端子353、362を設けた場合を例示したが、その個体数は例示した個体数に限らず、増減させても良い。また、接触端子353,362を縮径部351,361側に装備する場合を例示したが、縮径部351,361が挿入される開口の内周面に溝を設け、その内部に配設しても良い。
【0096】
今回開示された第一及び第二の実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
また、シールド用電流リード32においても、当該シールド用電流リード32を上下に摺動可能とする可動接触端子を使用しても良い。