【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「イットリウム系超電導電力機器開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
超電導導体層を有するケーブルコアが外管と内管を含む断熱管内に収容されてなる超電導ケーブルが敷設され、この超電導ケーブルが終端接続部又は中間接続部に接続される超電導ケーブル線路であって、
当該超電導ケーブル線路は、前記ケーブルコアの熱伸縮距離が吸収されるように前記超電導ケーブルが曲線敷設されたオフセット部を備え、
前記オフセット部の外管の一部を固定した固定部を有し、
冷却時に前記超電導ケーブルが変形して、前記ケーブルコア及び前記内管が曲げの内側に移動して前記外管に当接した後、前記ケーブルコア及び前記内管が前記外管に対して押し付けられるように構成されていることを特徴とする超電導ケーブル線路。
【背景技術】
【0002】
従来、極低温で超電導状態になる超電導線材を導体として用いた超電導ケーブルが知られている。超電導ケーブルは、大電流を低損失で送電可能な電力ケーブルとして期待されており、実用化に向けて開発が進められている。
【0003】
超電導ケーブルの一例を
図2に示す。
図2に示す超電導ケーブル10は、断熱管12内に一心のケーブルコア11が収納された単心型の超電導ケーブルである。
ケーブルコア11は、フォーマ111、超電導導体層112、電気絶縁層113、超電導シールド層114、常電導シールド層115、保護層116等で構成される。超電導導体層112は、フォーマ111の上に複数条の超電導線材を螺旋状に巻回することにより形成される。同様に、超電導シールド層114は、電気絶縁層113の上に複数条の超電導線材を螺旋状に巻回することにより形成される。
【0004】
超電導導体層112及び超電導シールド層114を形成する超電導線材は、例えば、テープ状の金属基板上に中間層、超電導層、保護層が順に形成された積層構造を有している。超電導層を構成する超電導体としては、例えば液体窒素温度(大気圧で−196℃)以上で超電導を示すRE系超電導体(RE:希土類元素)がある。特に、化学式YBa
2Cu
3O
7-yで表されるイットリウム系超電導体(以下、Y系超電導体)が代表的である。
【0005】
断熱管12は、内管121と外管122からなる二重環構造を有している。内管121と外管122の間には、多層断熱層(スーパーインシュレーション)123が介在され、かつ真空引きされている。また、外管122の外周はポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレンなどの防食層124で被覆されている。
超電導ケーブル10の定常運転時には、内管121の内部に液体窒素などの冷媒が循環され、極低温状態で超電導導体層112に送電電流が流れることとなる。
【0006】
このような超電導ケーブル10と電力機器等の実系統を接続する箇所には、終端接続部を使用した端末処理が施される。終端接続部においては、低温部となる低温容器に超電導ケーブル10の端部が収容され、電流リードを介して常温部となる実系統に接続される。
また、超電導ケーブル10同士を接続する箇所には、中間接続部を使用した端末処理が施される。中間接続部においては、2本の超電導ケーブル10が低温容器に導入され、この低温容器内でケーブルコア11が接続される。
【0007】
上述した終端接続部又は中間接続部を有する超電導ケーブル線路において、超電導ケーブル10は、組立施工時や保守点検時に、常温から液体窒素温度まで冷却され、又は液体窒素温度から常温まで昇温される。このようなヒートサイクル下では、ケーブルコア11が超電導ケーブル長の約0.3%で熱伸縮することが知られている。
特に、終端接続部又は中間接続部において、ケーブルコア11が長手方向に移動困難となっている場合、ケーブルコア11が熱伸縮すると超電導ケーブル10に局所的な応力が加わる。そして、超電導導体層112や超電導シールド層114を構成する超電導線材に座屈が発生するなどして、超電導ケーブル10の性能が著しく低下してしまう。
【0008】
そこで、終端接続部において、編組線などの可とう性を有する接続端子(可とう接続端子)を用いて超電導導体層と電流リードを接続することにより、ケーブルコアの熱伸縮を吸収する技術が提案されている(例えば特許文献1)。また、終端接続部内で超電導ケーブルにオフセットを設けたり、超電導ケーブルの長手方向に終端接続部をスライド可能としたりすることにより、ケーブルコアの熱伸縮を吸収する技術が提案されている。
さらには、中間接続部の両側にオフセット部を設けておき、ケーブルコアの熱伸縮により超電導ケーブルに歪みが生じた場合に、中間接続部を上下に移動させて歪みを解消する方法が提案されている(例えば特許文献2)。このようにオフセット部とは、ケーブルを蛇行させて布設する事を意味しており、ケーブルの熱伸縮を吸収する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る超電導ケーブル線路の概略構成を示す図である。
図1に示すように、超電導ケーブル線路Sでは、地中に設けられた管路Lに超電導ケーブル10が敷設されている。そして、超電導ケーブル10の両端には実系統に電力を引き出すための終端接続部1、2が配設され、マンホールMH内では2本の超電導ケーブル10、10が中間接続部3で接続されている。また、終端接続部1には、冷却システム4が接続され、超電導ケーブル10内に冷媒(例えば液体窒素)を循環供給できるようになっている。
【0023】
本実施形態では、終端接続部1、2又は中間接続部3の近傍(例えば、
図1の領域A)にオフセット部OSを設け、オフセット部OSにおける特定部位で超電導ケーブル10を固定することにより、超電導ケーブル線路Sにおける不動領域を意図的に形成する。これにより、終端接続部又は中間接続部に発現するケーブルコアの熱伸縮距離を容易に推測することができるので、終端接続部又は中間接続部の設計が容易となる上、小型化を図ることができる。
【0024】
図2は、超電導ケーブル線路Sにおける超電導ケーブル10の一例を示す図である。
図2に示す超電導ケーブル10は、断熱管12内に一心のケーブルコア11が収納された単心型の超電導ケーブルである。ケーブルコア11は、フォーマ111、超電導導体層112、電気絶縁層113、超電導シールド層114、常電導シールド層115、保護層116等により構成される。
【0025】
フォーマ111は、ケーブルコア11を形成するための巻心であり、例えば銅線等の常電導線材を撚り合わせて構成される。フォーマ111には、短絡事故時に超電導導体層112に流れる事故電流が分流される。
【0026】
超電導導体層112は、フォーマ111の上に複数条の超電導線材を螺旋状に巻回することにより形成される。
図2では、超電導導体層112を4層の積層構造としている。超電導導体層112には、定常運転時に送電電流が流れる。
超電導導体層112を構成する超電導線材は、例えば、テープ状の金属基板上に中間層、超電導層、保護層等が順に形成された積層構造を有している。超電導層を構成する超電導体には、液体窒素温度以上で超電導を示すRE系超電導体(RE:希土類元素)、例えば化学式YBa
2Cu
3O
7-yで表されるY系超電導体を適用できる。
【0027】
電気絶縁層113は、例えば絶縁紙、絶縁紙とポリプロピレンフィルムを接合した半合成紙、高分子不織布テープなどで構成され、超電導導体層112の上に巻回することにより形成される。
【0028】
超電導シールド層114は、電気絶縁層113の上に複数条の超電導線材を螺旋状に巻回することにより形成される。
図2では、超電導シールド層114を2層の積層構造としている。超電導シールド層114には、定常運転時に電磁誘導によって導体電流とほぼ同じ電流が逆位相で流れる。超電導シールド層114を構成する超電導線材には、超電導導体層112と同様のものを適用できる。
【0029】
常電導シールド層115は、超電導シールド層114の上に銅線などの常電導線材を巻回することにより形成される。常電導シールド層115には、短絡事故時に超電導シールド層114に流れる事故電流が分流される。
保護層116は、例えば絶縁紙、高分子不織布などで構成され、常電導シールド層115の上に巻回することにより形成される。
【0030】
断熱管12は、ケーブルコア11を収容するとともに冷媒(例えば液体窒素)が充填される内管121と、内管121の外周を覆うように配設された外管122からなる二重環構造を有している。
内管121及び外管122は、例えばステンレス製のコルゲート管である。内管121と外管122の間には、例えばアルミを蒸着したポリエチレンフィルムの積層体で構成された多層断熱層(スーパーインシュレーション)123が介在され、真空状態に保持される。また、外管122の外周はポリエチレンなどの防食層124で被覆されている。
【0031】
図3は、超電導ケーブル線路Sにおける終端接続部1の一例を示す図である。なお、終端接続部2の構成も同様である。
図3に示すように、終端接続部1は、低温容器20に超電導ケーブル10の端部が所定の状態で収容され、導体用電流リード31及びシールド用電流リード32を介して電流が実系統側に引き出される構成となっている。
終端接続部1では、超電導ケーブル10の超電導導体層112と導体用電流リード31とが、導体用可動接続端子50を介して電気的に接続されている(導体接続部C1)。導体用可動接続端子50は、ケーブルコア11を、長手方向に移動可能で、かつ周方向に回転可能な状態で、導体用電流リード31に接続するための端子である。導体用可動接続端子50は、例えば超電導導体層112の外周に装着される導体用プラグ51と、この導体用プラグ51が移動可能に取り付けられる導体用ソケット52で構成される。
この終端接続部1における導体用可動接続端子50の導体用プラグ51部分の端部が、超電導ケーブル10(ケーブルコア11)のケーブル端部に相当する。
【0032】
また、超電導ケーブル10の超電導シールド層114とシールド用電流リード32とが、シールド用可動接続端子60を介して電気的に接続されている(シールド接続部C2)。シールド用可動接続端子60は、ケーブルコア11を、長手方向に移動可能で、かつ周方向に回転可能な状態で、シールド用電流リード32に接続するための端子である。シールド用可動接続端子60は、超電導シールド層114の外周に装着されるシールド用プラグ61と、このシールド用プラグ61が移動可能に取り付けられるシールド用ソケット62で構成されている。
つまり、終端接続部1では、ケーブルコア11が導体接続部C1とシールド接続部C2で支持され、長手方向に移動可能で、かつ周方向に回転可能となっている。
【0033】
低温容器20は、内側の冷媒槽21と、外側の真空槽22からなる二重構造を有し、超電導ケーブル10の端部を収容する収容部20aと、収容部20aに垂設された円筒状の引き出し部20b、20cに区画される。また、低温容器20(冷媒槽21、真空槽22)には、作業者が施工時の作業等を外部から行うことができるように、気密に密閉可能なハンドホール(図示略)が形成されている。
【0034】
導体用電流リード31、シールド用電流リード32は、超電導ケーブル10から実系統に電流を引き出すための導体であり、例えば銅製のパイプ材等で構成される。導体用電流リード31は、低温容器20の引き出し部20bに垂下して配設され、シールド用電流リード32は、引き出し部20cに垂下して配設されている。なお、導体用電流リード31、シールド用電流リード32を、導電性の中実線材で構成するようにしてもよい。
導体用電流リード31の外周には、例えば繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)からなるブッシング41が配設され、導体用電流リード31の下端部(導体用可動接続端子50との接続部)には、電極シールド42が配設されている。すなわち、導体用電流リード31には高電圧が印加されるため、ブッシング41及び電極シールド42を配設することで、接地される低温容器20との電気的絶縁を保持するようにしている。
【0035】
導体接続部C1とシールド接続部C2の間に位置するケーブルコア11の電気絶縁層113の外周には、エポキシベルマウスとストレスコーンからなる電界緩和層13が形成されている。この超電導ケーブル10の端部が低温容器20の収容部20aに導入され、冷媒(例えば液体窒素)に浸漬される。このとき、超電導ケーブル10の内管121が冷媒槽21の外壁に接続され、外管122が真空槽22の外壁に接続される(ケーブル接続部C3)。内管121と冷媒槽21の接続、外管122と真空槽22の接続は、例えば溶接やボルト止めによって行われる。
定常運転時には、超電導ケーブル10の内管121の内部及びこれに連通する冷媒槽21には、冷却システム4(
図1参照)により冷媒が循環供給される。また、超電導ケーブル10の内管121と外管122の間隙及びこれに連通する真空槽22は、真空ポンプ(図示略)により真空状態に保持される。
【0036】
終端接続部1においては、超電導ケーブル10のケーブルコア11が、導体接続部C1、シールド接続部C2、及びケーブル接続部C3の3箇所で支持されることとなる。
なお、ケーブルコア11が水平状態で真っ直ぐに支持されるように、導体接続部C1、シールド接続部C2、及びケーブル接続部C3の位置(高さ)は調整される。また、導体接続部C1、シールド接続部C2、及びケーブル接続部C3によるケーブルコア11の支持間隔が長すぎると、ケーブルコア11が撓んで水平状態が損なわれるおそれがあるので、これらによるケーブルコア11の支持間隔は2m以内とするのが望ましい。
【0037】
組立施工時や保守点検時の冷却工程又は昇温工程では、ケーブルコア11が径方向にも伸縮することとなるが、そのときの伸縮量はわずか数mmであるので、導体接続部C1、シールド接続部C2、及びケーブル接続部C3の位置がほぼ同じに調整されていれば、ケーブルコア11の水平状態が極端に損なわれることはない。すなわち、ケーブルコア11の径方向の熱伸縮によって、ケーブルコア11の長手方向の移動は妨げられない。
【0038】
このように、終端接続部1においては、ケーブルコア11が長手方向に移動可能となっているので、組立施工時や保守点検時の冷却工程又は昇温工程で生じるケーブルコア11の熱伸縮を効果的に吸収することができる。さらに、ケーブルコア11が周方向に回転可能となっているので、超電導ケーブル10の製造時や敷設時の残留応力によりケーブルコア11に加わる捻れも吸収することができる。したがって、ケーブルコア11の熱伸縮や捻れに伴い局所的に応力が集中して、超電導導体層112や超電導シールド層114が座屈することはないので、超電導ケーブル10の健全性が維持される。
【0039】
図4は、超電導ケーブル線路Sにおける中間接続部3の一例を示す図である。
図4では、中間接続部3の略上半分を断面で示している。また、接続される2本の超電導ケーブルを区別する場合は、各超電導ケーブルの構成要素の符号に添字a、bを付している。
図4に示すように、中間接続部3は、2本の超電導ケーブル10a、10bのケーブル端部が低温容器70に所定の状態で収容され、この低温容器70内でケーブル端部に相当するケーブルコア11a、11bが接続された構成を有する。
【0040】
フォーマ111a、111bは、端面同士を付き合わせた状態で、例えば溶接により接続されている。超電導導体層112a、112bは、所定長だけ離間させた状態で端面同士を対向させて配置され、一方の超電導導体層112aから他方の超電導導体層112bにわたって導体接続用の超電導線材117を架設して半田付けで接着することにより接続されている。
電気絶縁層113a、113b間には、補強絶縁紙(例えばクラフト紙)118が巻回されている。超電導シールド層114a、114bは、超電導導体層112a、112bの接続と同様に、所定長だけ離間させた状態で端面同士を対向させて配置され、一方の超電導シールド層114aから他方の超電導シールド層114bにわたってシールド接続用の超電導線材119を架設して半田付けで接着することにより接続されている。
常電導シールド層115a、115bは、銅編組線(図示略)を用いて圧着接続されている。また、保護層116a、116b間には、保護層(図示略)が巻回されている。
【0041】
なお、前述したように、終端接続部1には、可動接続端子(導体用可動接続端子50、シールド用可動接続端子60)があることにより、ケーブルコア11の熱伸縮距離をある程度吸収できる。
一方、中間接続部3には、終端接続部1にあるような可動接続端子は存在しない。
ところで、中間接続部3のケーブル接続部分は、他のケーブルコア11に比べ太くなっており、ケーブルの内管121に入らないため、特別なボックス(低温容器70)に収納されている(
図4参照)。このケーブル接続部分のスロープ部分(太くなっている部分)がケーブルコア11の熱伸縮により、内管121やボックスの内側に当たることにより形がくずれると、接続部分の絶縁機能が期待通り発揮されない。従って、ボックスに収納されたまま、あまり動かない状態が好ましい。そのため、オフセットは、中間接続部3の両側にあることが望ましく、また、ケーブルコア11の熱伸縮が予測でき、両側の熱伸縮が同じになるように調節できることが求められている。
したがって、中間接続部3における許容されるケーブルコア11の熱伸縮の吸収許容距離は、ボックス内のケーブルコア接続部分が、ボックス内の内側に接しない範囲のケーブルコア接続部分のたわみとなる。これは、(1)中間接続部3のケーブルコア11の熱伸縮の許容距離には限度があること(ボックスの内側にあたるから)と、(2)中間接続部3の両側のケーブルコア11の熱伸縮距離が同程度であることが求められていること(ボックスから管側にずれて、通常のケーブルコアに比べ太い接続部分が、狭い管内にはさまってしまうから)による。
【0042】
低温容器70は、内側の冷媒槽71と、外側の真空槽72からなる二重構造を有している。終端接続部1と同様に、超電導ケーブル10の内管121が冷媒槽71の外壁に接続され、外管122が真空槽72の外壁に接続される。内管121と冷媒槽21の接続、外管122と真空槽22の接続は、例えば溶接やボルト止めによって行われる。
定常運転時には、超電導ケーブル10の内管121の内部及びこれに連通する冷媒槽71に冷媒が循環供給され、超電導ケーブル10の内管121と外管122の間隙及びこれに連通する真空槽72は真空状態に保持される。
【0043】
図5は、終端接続部1の近傍(例えば
図1の領域A)に設けられるオフセット部OSの一例を示す図である。
図5に示すオフセット部OS1は、半径R
0、中心角θ
0で上に凸の円弧CA1と下に凸の円弧CA2を滑らかに連設したS字オフセットである。そして、このオフセット部OS1において、円弧CA1の中心に対応する超電導ケーブル10の最大振幅部P(または最大変位部P)が移動不能となるように、3個の固定部材Kで超電導ケーブル10の外管122を固定している。この固定部材Kでオフセット部OS1の外管122の一部を固定した箇所が固定部である。
なお、最大変位部Pとは、オフセット部OS1を構成する弧の曲線形状の端部に有する曲線の変極点間を結んだ直線に対し垂直方向に最も変位するケーブルコアの部分をいう。
ケーブルの固定部材には、通常ケーブルクリートが使用される。ケーブルクリートでケーブルを挟み込んで、このケーブルクリートを架台等に固定する事で、ケーブルの外管122が固定される。固定は、室温時か冷却(昇温)過程中に行う。室温時に行えば、接続部への伸縮量を小さくできるが、固定部での熱侵入量は大きくなる。一方、冷却過程中に行えば、固定部での熱侵入量は小さくなるが、固定するまではケーブルコアは移動するので接続部への伸縮量は大きくなる。
【0044】
超電導ケーブル10の外径をDとしたとき、オフセット部OS1の曲げ半径は15D〜20D以上であることが望ましい。例えば、超電導ケーブル10の平均外径が150mmの場合、オフセット部OS1の曲げ半径を2250mm〜3000mm以上とする。これらの数値は、従来のケーブルの曲げ半径の開発試験に必要な数値と同様の値を使用している(JEC規格 JEC−3401)。
【0045】
例えば、最大振幅部Pからオフセット部OS1直近の終端接続部1におけるケーブル端部(51)までのケーブル長さについての熱伸縮距離をa、終端接続部1におけるケーブルコア11が熱伸縮する吸収許容距離をx、とした場合、x≧aを満たす範囲に、オフセット部OS1が設置されることが好ましい。例えば、オフセット部OS1を構成する弧の曲線形状上の点から、その曲線形状上の点の直近の終端接続部又は中間接続部におけるケーブル端部までのケーブルコアの長さに生じる、熱伸縮による25℃における長さと−196℃における長さの差をa、−196℃における長さから
伸長して終端接続部又は中間接続部が収容可能なケーブルコアの長さをx、とした場合、x≧aを満たす範囲に、曲線形状上の点が配置されるようになっている。
より具体的には、最大振幅部Pからオフセット部OS1直近の終端接続部1におけるケーブル端部(51)までのケーブル長さをX、終端接続部1におけるケーブルコア11が熱伸縮する吸収許容距離をx、とした場合、x≧X×0.003(0.3%)を満たす範囲に、オフセット部OS1が設置されることが好ましい。例えば、オフセット部OS1を構成する弧の曲線形状上の点から、その曲線形状上の点の直近の終端接続部又は中間接続部におけるケーブル端部までの−196℃におけるケーブルコアの長さをX、−196℃における長さから
伸長して終端接続部又は中間接続部が収容可能なケーブルコアの長さをx、とした場合、x≧X×0.003を満たす範囲に、曲線形状上の点が配置されるようになっている。
これにより、終端接続部1に発現する熱伸縮距離が小さくなるので、この熱伸縮距離をより精度良く推測することができるとともに、終端接続部1の小型化を図ることができる。
なお、最大振幅部Pとは、オフセット部OS1を構成する弧の曲線形状の端部に有する曲線の変極点間を結んだ直線に対し垂直方向に最も離れた弧の曲線形状上の点である。また、変極点とは、
図5,9等(黒点)に示すようにオフセット部における曲線形状の曲線で曲がる方向が変わる点をいう。具体的にはオフセット部を固定させる際、または再設定させる際における曲線形状の曲線の変極点をいう。
【0046】
ここで、オフセット部OS1で超電導ケーブル10が移動可能となっている場合、
図6に示すように、冷却時にはケーブルコア11が熱収縮して曲げの内側(曲げ半径が大きくなる方向)に移動する。そして、これに伴い内管121がケーブルコア11に押圧され、さらには外管122が押圧されて、円弧CA1、CA2の曲げ半径が大きくなる(直線状に近づく)ように超電導ケーブル10が全体的に内側に変形する。一方、昇温時にはケーブルコア11が熱伸張して曲げの外側(曲げ半径が小さくなる方向)に移動する。そして、これに伴い内管121がケーブルコア11に押圧され、さらには外管122が押圧されて、円弧CA1、CA2の曲げ半径が小さくなるように超電導ケーブル10が全体的に外側に変形する。
【0047】
このとき、オフセット部OS1では、円弧CA1、CA2の中心で超電導ケーブル10の移動量(変位)が最大となり、CA1の端部の変極点とCA2の端部の変極点を結んだ直線に対し、最大振幅をもつ。ケーブルコア11が熱伸縮するとき、ケーブルコア11はまず円弧CA1、CA2の中心で内管121に当接し、その後近傍の部位で順次当接していくこととなる。従来の超電導ケーブル線路では、オフセット部OS1を設け、超電導ケーブル10を全体的に変形させることにより、ケーブルコア11の熱収縮が吸収されるようにしている。
【0048】
これに対して、本実施形態では、超電導ケーブル10の最大振幅部Pが固定部材Kによって移動不能に固定されている。したがって、冷却時には超電導ケーブル10が全体的に曲げの内側に変形しようとするが、ケーブルコア11及び内管121が曲げの内側に移動して外管122に当接した後は、ケーブルコア11及び内管121が外管122に対して押し付けられる。そのため、ケーブルコア11の熱収縮に対して大きな摩擦抵抗が生じることとなり、ケーブルコア11の移動が制限される。つまり、超電導ケーブル10の最大振幅部Pが不動点となり、それ以降はケーブルコア11が最大振幅部Pに向かって収縮することとなる。
【0049】
また、昇温時には超電導ケーブル10が全体的に曲げの外側に変形しようとするが、ケーブルコア11及び内管121が曲げの外側に移動して外管122に当接した後は、ケーブルコア11及び内管121が外管122に対して押し付けられる。そのため、ケーブルコア11の熱伸張に対して大きな摩擦抵抗が生じることとなり、ケーブルコア11の移動が制限される。つまり、超電導ケーブル10の最大振幅部Pが不動点となり、それ以降はケーブルコア11が最大振幅部Pを基準として終端接続部1側に伸張することとなる。
【0050】
このように、
図5に示すオフセット部OS1では、超電導ケーブル10が移動可能であると仮定したとき、ケーブルコア11の熱伸縮に伴う超電導ケーブル10の移動量が最大となる最大振幅部(円弧CA1の中心及び円弧CA2の中心)のうち、終端接続部1に最も近い最大振幅部Pが移動不能に固定されている。
【0051】
これにより、超電導ケーブル線路Sにおける特定部分(最大振幅部Pの右側(終端接続部1と反対側)の部分)を冷却時及び昇温時の不動領域とみなすことができるので、終端接続部1に発現するケーブルコア11の熱伸縮距離を容易に推測することができる。
つまり、最大振幅部Pが必ず不動領域に含まれる構成になっており、熱伸縮距離も最大振幅点Pからケーブル端部51までの長さを考慮すればよい。
したがって、推測された熱伸縮距離に基づいて終端接続部1を容易に設計することができるとともに、終端接続部1の小型化を図ることができる。具体的には、導体用可動接続端子50(導体用プラグ51及び導体用ソケット52)とシールド用可動接続端子60(シールド用プラグ61及びシールド用ソケット62)の長さや位置等を、冷却時又は昇温時にケーブルコア11と電流リード31、32との電気的接続が阻害されない程度に設計すればよい。
【0052】
図7は、終端接続部1の近傍(例えば
図1の領域A)に設けられるオフセット部OSの他の一例を示す図である。
図7に示すオフセット部OS2は、
図5に示すオフセット部OS1を線対称に延設したC字オフセットである。そして、このオフセット部OS2において、曲げの最下点に対応する超電導ケーブル10の最大振幅部Pが移動不能となるように、3個の固定部材Kで超電導ケーブル10の外管122を固定している。
【0053】
図5で示したS字オフセットの場合と同様に、超電導ケーブル10の外径をDとしたとき、オフセット部OS2の曲げ半径は、15D以上であることが望ましい。
例えば、最大振幅部Pからオフセット部OS2直近の終端接続部1におけるケーブル端部(51)までのケーブル長さについての熱伸縮距離をa、終端接続部1におけるケーブルコア11が熱伸縮する吸収許容距離をx、とした場合、x≧aを満たす範囲に、オフセット部OS2が設置されることが好ましい。
より具体的には、最大振幅部Pからオフセット部OS2直近の終端接続部1におけるケーブル端部(51)までのケーブル長さをX、終端接続部1におけるケーブルコア11が熱伸縮する吸収許容距離をx、とした場合、x≧X×0.003(0.3%)を満たす範囲に、オフセット部OS2が設置されることが好ましい。
【0054】
ここで、オフセット部OS2で超電導ケーブル10が移動可能となっている場合、
図8に示すように、冷却時にはケーブルコア11が熱収縮して曲げの内側(曲げ半径が大きくなる方向)に移動する。そして、これに伴い内管121がケーブルコア11に押圧され、さらには外管122が押圧されて、オフセット部OS2の曲げ半径が大きくなる(直線状に近づく)ように超電導ケーブル10が全体的に内側に変形する。一方、昇温時にはケーブルコア11が熱伸縮して曲げの外側(曲げ半径が小さくなる方向)に移動する。そして、これに伴い内管121がケーブルコア11に押圧され、さらには外管122が押圧されて、オフセット部OS2の曲げ半径が小さくなるように超電導ケーブル10が全体的に外側に変形する。
【0055】
このとき、オフセット部OS2では、曲げの最下点で超電導ケーブル10の移動量(変位)が最大となる。つまり、ケーブルコア11が熱伸縮するとき、ケーブルコア11はまず曲げの最下点で内管121に当接し、その後近傍の部位で順次当接していくこととなる。
【0056】
これに対して、本実施形態では、超電導ケーブル10の最大振幅部Pが固定部材Kによって移動不能に固定されている。したがって、冷却時には超電導ケーブル10が全体的に曲げの内側に変形しようとするが、ケーブルコア11及び内管121が曲げの内側に移動して外管122に当接した後は、ケーブルコア11及び内管121が外管122に対して押し付けられる。そのため、ケーブルコア11の熱収縮に対して大きな摩擦抵抗が生じることとなり、ケーブルコア11の移動が制限される。つまり、超電導ケーブル10の最大振幅部Pが不動点となり、それ以降はケーブルコア11が最大振幅部Pに向かって収縮することとなる。
また、昇温時には超電導ケーブル10が全体的に曲げの外側に変形しようとするが、ケーブルコア11及び内管121が曲げの外側に移動して外管122に当接した後は、ケーブルコア11及び内管121が外管122に対して押し付けられる。そのため、ケーブルコア11の熱伸張に対して大きな摩擦抵抗が生じることとなり、ケーブルコア11の移動が制限される。つまり、超電導ケーブル10の最大振幅部Pが不動点となり、それ以降はケーブルコア11が最大振幅部Pを基準として終端接続部1側に伸張することとなる。
【0057】
このように、
図7に示すオフセット部OS2では、超電導ケーブル10が移動可能であると仮定したとき、ケーブルコア11の熱伸縮に伴う超電導ケーブルの移動量が最大となる最大振幅部Pが移動不能に固定されている。オフセット部OS2では、ケーブルコア11の熱伸縮に伴う超電導ケーブルの移動量が最大となる部位は曲げの最下点の一箇所なので、この部位が最大振幅部となる。
【0058】
これにより、超電導ケーブル線路Sにおける特定部分(最大振幅部Pの両側)を冷却時及び昇温時の不動領域とみなすことができるので、終端接続部1に発現するケーブルコア11の熱伸縮距離を容易に推測することができる。
つまり、最大振幅部Pが必ず不動領域に含まれる構成になっており、熱伸縮距離も最大振幅点Pからケーブル端部51までの長さを考慮すればよい。
したがって、推測された熱伸縮距離に基づいて終端接続部1を容易に設計することができるとともに、終端接続部1の小型化を図ることができる。
【0059】
図5、
図7で示したオフセット部OS1、OS2は一例であり、終端接続部1の近傍に設けられるオフセット部OSの形状はこれに限定されない。つまり、終端接続部1の近傍に設けたオフセット部OSにおいて、超電導ケーブル10が移動可能であると仮定したとき、ケーブルコア11の熱伸縮に伴う超電導ケーブル10の移動量が最大となる部位のうち、終端接続部1に最も近い最大振幅部Pが移動不能に固定されるようにすればよい。
【0060】
また、オフセット部OS1、OS2では、ケーブルコア11が熱伸縮するときに、ケーブルコア11及び内管121が外管122に対して押し付けられることとなるので、超電導ケーブル10の断熱管12による断熱性能が若干低下するおそれがある。この場合、
図9に示すように、スネーク状のオフセットを利用することで断熱管12による断熱性能の低下を抑制できる。
【0061】
図9は、終端接続部1の近傍(例えば
図1の領域A)に設けられるオフセット部OSの他の一例を示す図である。
図9に示すオフセット部OS3は、
図7に示すオフセット部OS2を線対称に延設したスネークオフセットである。オフセット部OS3では、終端接続部1側のオフセット部OS2において最大振幅部Pが移動不能となるように固定されており、最大振幅部Pの右側(終端接続部1と反対側)では超電導ケーブル10が移動可能となっている。
したがって、ケーブルコア11が熱伸縮したときに超電導ケーブル10に残留する応力が低減され、ケーブルコア11及び内管121が外管122に対して過度に押し付けられるのを防止できるので、ケーブルコア11への局所的な熱侵入が抑制される。特に、冷却時にケーブルコア11への局所的な熱侵入が抑制されるので、熱侵入により超電導ケーブル10の送電性能が低下するのを防止できる。
【0062】
[実施例]
実施例では、外径150mm、ケーブル長50mの超電導ケーブル10の一端に終端接続部1を接続し、他端を固定端として、不動領域の端部(固定端に相当)から終端接続部1までを模擬した超電導ケーブル線路を構築した(
図10参照)。そして、異なる形状のオフセット部OSを設けた場合(直線敷設を含む)について、室温から液体窒素温度まで冷却したときの熱収縮量と、液体窒素温度から室温まで昇温させたときの熱伸張量を比較した。具体的には、X線やγ線等の放射線を利用した観察装置を用いて、終端接続部1における導体用可動接続端子50の内部を観察し、導体用ソケット52内での導体用プラグ51の移動量を測定した。また、冷却時に固定端に発生する軸力を測定し、ケーブルコア11の熱収縮に伴い超電導ケーブル10に生じる残留応力を比較した。
ここでは、オフセット部OSにおいて、最大振幅部が移動不能となるように超電導ケーブル10を固定する場合、終端接続部1から最大振幅部までの距離が以下の値となるようにした。
なお、オフセット部OSの曲げ半径は15D(D:超電導ケーブル10の外径)とした。
また、ケーブルの許容曲げ半径(R)、オフセット幅(F)、オフセット長さ(L)には、以下の一般式(1)の関係が成り立つ。
L≧√(4RF−F
2) ・・・(1)
【0063】
実施例1では、オフセット部OSにS字オフセット(
図5参照)を適用し、終端接続部1に最も近い最大振幅部が移動不能となるように固定した。
ここで、ケーブル外径(D)=150mm、許容曲げ半径(R)=2250mm、オフセット幅(F)=300mmであり、オフセット長は式(1)に基づき、オフセット長さ(L)=1615.5mmであった。
図5は、一例として、一般式(1)においてL=√(4RF−F
2)が成り立つ場合のオフセット長を例示した。
この場合、冷却時の熱収縮量は6mmで、昇温時の熱伸張量は5.5mmであった。また、固定端における発生軸力は8000Nであった。
【0064】
実施例2では、オフセット部OSにC字オフセット(
図7参照)を適用し、最大振幅部が移動不能となるように固定した。
図7は
図5のオフセット形状を左右対称の形状としたものである。それゆえ
図7のオフセットの長さは、
図5のオフセットの長さの2倍となる。よって、オフセット長さ(L)=1615.5mm×2mm=3231mmであった。
(なお、
図7は
図5の形状を応用したものであり、
図7は
図5のオフセット形状を左右対称の形状としただけゆえ、一般式(1)でL=√(4RF−F
2)は成立しない。)
この場合、冷却時の熱収縮量、昇温時の熱伸張量は、何れも5mmであった。また、固定端における発生軸力は2000Nであった。
【0065】
実施例3では、オフセット部OSにスネークオフセット(
図9参照)を適用し、終端接続部1に最も近い最大振幅部が移動不能となるように固定した。
図9は
図7のオフセット形状を左右対称の形状としたものである。それゆえ
図9のオフセットの長さは、
図7のオフセットの長さの2倍となる。よって、オフセット長さ(L)=3231mm×2mm=6462mmであった。
(なお、
図9は
図5の形状を応用したものであり、
図9は
図7のオフセット形状を左右対称の形状としただけゆえ、一般式(1)でL=√(4RF−F
2)は成立しない。)
この場合、冷却時の熱収縮量、昇温時の熱伸張量は、何れも5mmであった。また、固定端における発生軸力は500Nであった。
【0066】
比較例1では、オフセット部OSを設けずに、超電導ケーブル10を一様に直線敷設した。この場合、冷却時の熱収縮量は60mmで、昇温時の熱伸張量は150mmであった。また、固定端における発生軸力は10000Nであった。
【0067】
比較例2では、オフセット部OSに実施例2と同形状のC字オフセットを適用した。ただし、オフセット部OSにおいて、超電導ケーブルは固定していない。この場合、冷却時の熱収縮量は25mmで、昇温時の熱伸張量は50mmであった。また、固定端における発生軸力は500Nであった。
【0069】
表1に評価結果を示す。表1における熱伸縮量(熱伸縮距離)は、温度変化前後における変化量を表す。比較例1において、昇温時の熱伸縮の変化量が冷却時の熱伸縮の変化量より増大していることから、冷却時と昇温時とで不動領域が変化していると考えられる。つまり、冷却時に不動領域となっていた部分が、昇温時には不動領域とならなかったために、冷却時の熱伸縮の変化量よりも昇温時の熱伸縮の変化量が増大したと考えられる。
比較例2では、終端接続部1に発現する熱伸縮量(熱伸縮距離)が比較例1の場合の1/3程度になっている。すなわち、オフセット部OSにおける超電導ケーブル10の形状変化により、ケーブルコア11の熱伸縮が効果的に吸収されている。しかし、冷却時と昇温時で終端接続部1に発現する熱伸縮量(熱伸縮距離)が異なっている(昇温後に冷却前のオフセット形状に戻らない)ことから、冷却時と昇温時とで不動領域が変化していると考えられる。
比較例1、2のように、冷却時の熱伸縮と昇温時の熱伸縮が可逆的な関係にない場合、熱伸縮量(熱伸縮距離)を多めに見積もって終端接続部1を設計しなければならないため、終端接続部1の小型化が困難となる。
【0070】
一方、実施例1〜3では、終端接続部1に発現する熱伸縮量(熱伸縮距離)がほぼ同じとなっている。つまり、冷却時の熱伸縮と昇温時の熱伸縮が可逆的な関係にあるため、終端接続部1に発現する熱伸縮量(熱伸縮距離)を精度良く推測することができる。したがって、終端接続部1の設計が容易となる上、小型化を図ることができる。
また、実施例1〜3では、固定された最大振幅部よりも右側のオフセット部で超電導ケーブル10が移動可能となっているので、この部分で超電導ケーブル10の形状変化により熱伸縮が吸収される。実施例2では、超電導ケーブル10が移動可能となっている部分が実施例1よりも大きい(オフセット長が長い)ので、超電導ケーブル10に発生する残留応力が実施例1よりも低減される。同様に、実施例3では、超電導ケーブル10が移動可能となっている部分が実施例2よりも大きい(オフセット長が長い)ので、さらに超電導ケーブル10に発生する残留応力が低減される。
【0071】
また、上述した実施例では、ケーブル長を50mとして実験したが、ケーブル長を100m、200mとした場合にも同様の結果が得られている。即ち、ケーブル長が異なっても、ケーブルを固定することで不動領域を設定することにより、不動領域の部分と終端部の間の長さのみを考慮すればよい。
【0072】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
実施形態で示したように、終端接続部1に発現する熱伸縮距離は、オフセット部OSにおける固定された最大振幅部から終端接続部1までの距離に依存するため、この距離が短ければ短いほど、終端接続部1に発現する熱伸縮距離を小さくできる。ただし、終端接続部1での熱伸縮の吸収量が十分であれば、超電導ケーブル線路S内でのオフセット部OSの設置箇所は特に規定されない。
【0073】
また、実施形態では、オフセット部OSにおいて、最大振幅部を含む3箇所で超電導ケーブル10を固定することにより、最大振幅部が移動不能となるようにしているが、固定箇所の数や配置はこれに限定されない。例えば、最大振幅部の近傍の複数個所が固定されて結果的に最大振幅部が移動不能となるようにしてもよい。また例えば、ケーブルコア11が熱伸縮するときの発生軸力が大きくなる場合には、3箇所以上で超電導ケーブル10を固定するようにしてもよい。
【0074】
また、実施形態では、終端接続部1の近傍にオフセット部OSを設けた場合について示したが、終端接続部2の近傍はもとより、中間接続部3の両端近傍に、最大振幅部が移動不能に固定されたオフセット部OSを設けるようにしてもよい。これにより、終端接続部2及び中間接続部3に発現するケーブルコア11の熱伸縮を容易に推測し、管理することができる。
【0075】
また、超電導ケーブル線路Sにオフセット部OSを設ける場合、冷却時又は昇温時にオフセット部OSの固定を段階的に調整するようにしてもよい。例えば、冷却時又は昇温時に、所定温度(例えば−100℃)になった段階で一時的に固定を解除し、超電導ケーブル10を変形させて残留応力を除去した後、再固定するようにしてもよい。
これにより、超電導ケーブル10に生じる残留応力が低減されるので、冷却時にケーブルコア11への局所的な熱侵入が抑制される。したがって、熱侵入により超電導ケーブル10の送電性能が低下するのを防止できる。
【0076】
実施例2において、上述した方法で冷却及び昇温を行ったところ、冷却時の熱収縮量、昇温時の熱伸張量は、何れも12mmであった。また、固定端における発生軸力は1000Nであった。実施例2の結果に比較すると、熱伸縮距離は約2倍であるが、発生軸力は1/2であり、超電導ケーブル10に生じる残留応力が低減されることが確認された。
なお、冷却時の熱収縮量と昇温時の熱伸張量は同じであるので、実施例2と同様に、終端接続部1に発現する熱伸縮距離を推測することは容易である。
【0077】
また、実施形態では単心型の超電導ケーブル10を敷設した超電導ケーブル線路Sについて説明したが、本発明は、3心のケーブルコアを一括して断熱管内に収納した3心一括型の超電導ケーブルを敷設した超電導ケーブル線路Sにおいても適用できる。
また、超電導ケーブル線路Sが有する終端接続部1、2又は中間接続部3の構成は、実施形態で示したものに限定されない。例えば、終端接続部1、2において、ケーブルコア11の超電導導体層112と導体用電流リード31、又は超電導シールド層114とシールド用電流リード32を、可とう性を有する接続端子(可とう接続端子)を用いて接続するようにしてもよい。
【0078】
また、実施形態ではオフセット部として、S字オフセット(
図5、
図6参照)、C字オフセット(
図7、
図8参照)、スネークオフセット(
図9参照)を例に挙げて説明したが、
図11、12に示す90°曲がりオフセットや、
図13、14に示す180°曲がりオフセットにも、本発明を適用することができる。即ち、それぞれ、最大振幅部Pを含む領域、又は最大振幅部Pを挟む領域で超電導ケーブルの外管を固定することで、最大振幅部Pが必ず不動領域に含まれる構成となり、熱伸縮距離も最大振幅点Pからケーブル端部51までの長さを考慮すればよいことになる。なお、
図11、12、
図13、14の曲げ半径Roは、Ro≧R(許容曲げ半径)を満たす必要がある。また、オフセットを布設する場所の空間的制限等によって、布設場所に適したオフセット形状を選ぶことが出来る。このようにオフセット部とは、ケーブルを蛇行させて布設する事を意味しており、ケーブルの熱伸縮を吸収する方法である。
【0079】
また、実施形態では、終端接続部でのオフセットを例に説明したが、本発明は中間接続部にも適用できる。その場合、例えば、
図5〜
図9における終端接続部を中間接続部に置き換えて、適宜ケーブル端部を設定すればよい。
【0080】
また、実施形態でいう最大振幅部Pとは、オフセット部OS1を構成する弧の曲線形状の端部に有する曲線の変極点間を結んだ直線に対し垂直方向に最も離れた弧の曲線形状上の点である。また、変極点とは、
図5,9等(黒点)に示すようにオフセット部における曲線形状の曲線で曲がる方向が変わる点をいう。具体的にはオフセット部を固定させる際、または再設定させる際における曲線形状の曲線の変極点をいう。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。