(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909860
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】カメラおよびアダプタ
(51)【国際特許分類】
G02B 7/28 20060101AFI20160414BHJP
G02B 7/34 20060101ALI20160414BHJP
G03B 13/36 20060101ALI20160414BHJP
G02B 7/02 20060101ALI20160414BHJP
G03B 17/14 20060101ALI20160414BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20160414BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
G02B7/28 N
G02B7/34
G03B13/36
G02B7/02 E
G03B17/14
H04N5/225 D
H04N5/232 H
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-81845(P2011-81845)
(22)【出願日】2011年4月1日
(65)【公開番号】特開2012-215769(P2012-215769A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2014年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100078189
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆男
(72)【発明者】
【氏名】日下 洋介
【審査官】
榎本 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−054209(JP,A)
【文献】
特開2004−056691(JP,A)
【文献】
特開平03−296009(JP,A)
【文献】
特開平06−317736(JP,A)
【文献】
特開昭63−199335(JP,A)
【文献】
特開2010−152140(JP,A)
【文献】
特開2010−026120(JP,A)
【文献】
特開2000−066287(JP,A)
【文献】
特開2010−147612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28 − 7/40
G02B 7/02 − 7/16
G03B 13/36
G03B 17/04 − 17/17
H04N 5/222− 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点検出し焦点検出結果に基づく焦点調節制御量を算出するカメラボディと、
第1の焦点調節部を有する交換レンズと前記カメラボディとが装着され、第2の焦点調節部を有するアダプタと、を備え、
前記アダプタは、前記焦点調節制御量が前記第1の焦点調節部による焦点調節精度または前記焦点調節精度に基づく所定値を越える場合に、前記第1の焦点調節部に前記焦点調節制御量に応じて焦点調節を行わせ、前記焦点調節制御量が前記焦点調節精度または前記所定値を越えない場合に、前記第2の焦点調節部が前記焦点調節制御量に応じて焦点調節を行うカメラ。
【請求項2】
焦点検出し焦点検出結果に基づく焦点調節制御量を算出するカメラボディと、前記焦点調節制御量に応じて焦点調節を行う第1の焦点調節部を有する交換レンズとが装着されるアダプタであって、
焦点調節を行う第2の焦点調節部と、
前記カメラボディから送信された前記焦点調節制御量を前記交換レンズに送信する送信部と、を備え、
前記焦点調節制御量が前記第1の焦点調節部による焦点調節精度または前記焦点調節精度に基づく所定値を越える場合に、前記送信部は前記焦点調節制御量を前記交換レンズに送信し、
前記焦点調節制御量が前記焦点調節精度または前記所定値を越えない場合に、前記第2の焦点調節部は前記焦点調節制御量に応じて焦点調節を行うアダプタ。
【請求項3】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記焦点調節制御量は、デフォーカス量であるカメラ。
【請求項4】
請求項1または3に記載のカメラにおいて、
前記第2の焦点調節部による焦点調節精度は、前記第1の焦点調節部による焦点調節精度より小さいカメラ。
【請求項5】
請求項1、3または4に記載のカメラにおいて、
前記第2の焦点調節部による焦点調節可能な範囲の最大値は、前記第1の焦点調節部による焦点調節可能な範囲の最大値より小さいカメラ。
【請求項6】
請求項1、3、4、または5に記載のカメラにおいて、
前記第1の焦点調節部による焦点調節精度は、前記交換レンズの焦点調節可能な像面位置変化長の最小値であり、
前記第2の焦点調節部による焦点調節精度は、前記アダプタの焦点調節可能な像面位置変化長の最小値であるカメラ。
【請求項7】
請求項2に記載のアダプタにおいて、
前記焦点調節制御量は、デフォーカス量であるアダプタ。
【請求項8】
請求項2または7に記載のアダプタにおいて、
前記第2の焦点調節部による焦点調節精度は、前記第1の焦点調節部による焦点調節精度より小さいアダプタ。
【請求項9】
請求項2、7または8に記載のアダプタにおいて、
前記第2の焦点調節部による焦点調節可能な範囲の最大値は、前記第1の焦点調節部による焦点調節可能な範囲の最大値より小さいアダプタ。
【請求項10】
請求項2、7、8、または9に記載のアダプタにおいて、
前記第1の焦点調節部による焦点調節精度は、前記交換レンズの焦点調節可能な像面位置変化長の最小値であり、
前記第2の焦点調節部による焦点調節精度は、前記アダプタの焦点調節可能な像面位置変化長の最小値であるアダプタ。
【請求項11】
撮像面に対する被写体像の像面のデフォーカス量を検出し、該デフォーカス量に応じた焦点調節制御量を外部に送信するカメラボディと、
外部から受信した焦点調節制御量に応じて焦点調節を行う交換レンズと、
前記カメラボディと前記交換レンズとが夫々装着され、前記カメラボディから送信された前記焦点調節制御量に応じて焦点調節を行う焦点調節手段と、前記カメラボディから送信された前記焦点調節制御量を前記交換レンズに送信する送信手段とを有するアダプタとを備え、
前記カメラボディから送信された前記焦点調節制御量が所定条件を満たす場合、前記アダプタの前記送信手段は該焦点調節制御量を前記交換レンズに送信せずに、前記アダプタの前記焦点調節手段は該焦点調節制御量に応じて前記焦点調節を行い、
前記カメラボディから送信された前記焦点調節制御量が前記所定条件を満たさない場合、前記アダプタの前記焦点調節手段は該焦点調節制御量に応じて前記焦点調節を行わずに、前記アダプタの前記送信手段は該焦点調節制御量を前記交換レンズに送信し、
前記交換レンズは、前記送信手段によって送信された該焦点調節制御量を受信し、該焦点調節制御量に応じて前記焦点調節を行うことを特徴とするカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は交換レンズとカメラボディとをアダプタを介して結合して自動焦点調節を行うカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
交換レンズとカメラボディとをアダプタを介して結合して自動焦点調節を行うレンズ交換式カメラシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されているレンズ交換式カメラシステムにおいては、カメラボディ側に内蔵されたTTL位相差検出方式の焦点検出装置による焦点検出結果に基づき合焦のためのレンズ駆動量が算出され、該レンズ駆動量がカメラボディからアダプタを経由して交換レンズに送られる。交換レンズでは、送られてきたレンズ駆動量に応じてフォーカシングレンズが駆動されることにより、焦点調節が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005―62459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術においては、交換レンズの焦点調節精度がカメラシステムとして必要な焦点調節精度を満足出来ない場合には、ピントの合った画像を得ることが出来なかった。例えば撮像素子の画面サイズが小さく、必要とされる焦点調節精度が高いレンズ交換式カメラシステム用のカメラボディと、撮像素子の画面サイズが大きく、必要とされる焦点調節精度が比較的低いレンズ交換式カメラシステム用の交換レンズとを、従来技術のようなアダプタを介して結合し、自動焦点調節を行った場合には、交換レンズの焦点調節精度がカメラシステムとして必要な焦点調節精度を満足出来ず、ピントのあった画像を得ることが出来ないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項
1に記載の発明によるカメラは、焦点検出し焦点検出結果に基づく焦点調節制御量を算出するカメラボディと、第1の焦点調節部を有する交換レンズとカメラボディとが装着され、第2の焦点調節部を有するアダプタと、を備え、アダプタは、焦点調節制御量が第1の焦点調節部による焦点調節精度または焦点調節精度に基づく所定値を越える場合に、第1の焦点調節部に焦点調節制御量に応じて焦点調節を行わせ、焦点調節制御量が焦点調節精度または所定値を越えない場合に、第2の焦点調節部が焦点調節制御量に応じて焦点調節を行う。
(
2) 請求項
2に記載の発明によるアダプタは、焦点検出し焦点検出結果に基づく焦点調節制御量を算出するカメラボディと、焦点調節制御量に応じて焦点調節を行う第1の焦点調節部を有する交換レンズとが装着されるアダプタであって、焦点調節を行う第2の焦点調節部と、カメラボディから送信された焦点調節制御量を交換レンズに送信する送信部と、を備え、焦点調節制御量が第1の焦点調節部による焦点調節精度または焦点調節精度に基づく所定値を越える場合に、送信部は焦点調節制御量を交換レンズに送信し、焦点調節制御量が焦点調節精度または所定値を越えない場合に、第2の焦点調節部は焦点調節制御量に応じて焦点調節を行う。
(
3) 請求項
11の記載の発明によるカメラは、撮像面に対する被写体像の像面のデフォーカス量を検出し、該デフォーカス量に応じた焦点調節制御量を外部に送信するカメラボディと、外部から受信した焦点調節制御量に応じて焦点調節を行う交換レンズと、カメラボディと交換レンズとが夫々装着され、カメラボディから送信された焦点調節制御量に応じて焦点調節を行う焦点調節手段と、カメラボディから送信された焦点調節制御量を交換レンズに送信する送信手段とを有するアダプタとを備え、カメラボディから送信された焦点調節制御量が所定条件を満たす場合、アダプタの送信手段は該焦点調節制御量を交換レンズに送信せずに、アダプタの焦点調節手段は該焦点調節制御量に応じて焦点調節を行い、カメラボディから送信された焦点調節制御量が所定条件を満たさない場合、アダプタの焦点調節手段は該焦点調節制御量に応じて焦点調節を行わずに、アダプタの送信手段は該焦点調節制御量を交換レンズに送信し、交換レンズは、送信手段によって送信された該焦点調節制御量を受信し、該焦点調節制御量に応じて焦点調節を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、必要とされる焦点調節精度が高いレンズ交換式カメラシステム用のカメラボディと、必要とされる焦点調節精度が比較的低いレンズ交換式カメラシステム用の交換レンズとを用いて自動焦点調節を行った場合に、ピントのあった画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態のレンズ交換式カメラシステムの構成を示す横断面図である。
【
図2】アダプタの機械的な構成を示す断面図である。
【
図3】交換レンズをカメラボディのマウント部に直接装着した場合のレンズ交換式カメラシステムの断面図である。
【
図4】撮像素子の撮像面上における焦点検出位置を示す図である。
【
図6】焦点検出画素が受光する焦点検出光束の様子を説明するための模式図である。
【
図7】カメラボディの動作を示すフローチャートである。
【
図8】アダプタの動作を示すフローチャートである。
【
図9】交換レンズの動作を示すフローチャートである。
【
図10】交換レンズの動作を示すフローチャートである。
【
図11】レンズ交換式カメラシステムの動作における焦点調節動作の詳細を概念的に示した図である。
【
図12】アダプタの機械的な構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
−−−第1の実施の形態−−−
図1は第1の実施の形態のレンズ交換式カメラシステム201の構成を示す横断面図である。レンズ交換式カメラシステム201は交換レンズ202とカメラボディ203とアダプタ220とから構成される。アダプタ220がマウント部204を介してカメラボディ203に装着され、交換レンズ202がマウント部205を介してアダプタ220に装着される。カメラボディ203には、マウント部204を介して交換レンズ202とは異なるカメラボディ203用の交換レンズや、アダプタ220を装着可能である。交換レンズ202は後述するようにカメラボディ203用の交換レンズではないので、カメラボディ203のマウント部204には直接装着することができない。カメラボディ203は、マウント変換用のアダプタ220のマウント部205を介して交換レンズ202を装着可能である。
【0009】
交換レンズ202は、焦点調節のために移動可能なレンズ208、レンズ駆動制御装置206などを有している。レンズ駆動制御装置206は、不図示のマイクロコンピューター、メモリ、駆動制御回路、モーターなどの駆動源などから構成される。レンズ駆動制御装置206は、マウント部205に装着された相手装置、例えばアダプタや、カメラボディ203とは異なる他のカメラボディと電気接点215を介して通信し、レンズ情報の送信および焦点調節のための焦点調節制御量(デフォーカス量)の受信を行う。受信した焦点調節制御量に基づきレンズ駆動量を算出し、該レンズ駆動量に応じて、上述したモーターなどの駆動源によりレンズ208を駆動して焦点調節を行う。本実施の形態における焦点調節制御量は、例えばデフォーカス量であるものとする。
【0010】
カメラボディ203は、撮像素子212、ボディ駆動制御装置214、液晶表示素子216、メモリカード219などを備えている。
【0011】
ボディ駆動制御装置214は、マイクロコンピューター、メモリ、駆動制御回路などから構成される。ボディ駆動制御装置214は、撮像素子212の駆動制御と、画素信号の読み出しと、画素信号に基づく焦点検出演算とを繰り返し行うとともに、画素信号に基づく画像データの生成処理および記録、カメラの動作制御などを行う。
【0012】
液晶表示素子216は画像表示装置として機能し、撮影者は表示された画像を観察することができる。メモリカード219は、撮像素子212により撮像された画像データを記憶する画像ストレージである。
【0013】
撮像素子212には、画素が二次元状に配置される。この撮像素子212の構成については詳細を後述する。撮像素子212の撮像面上に形成された被写体像は、撮像素子212により電気信号に光電変換され、画素の出力信号としてボディ駆動制御装置214に読み出される。
【0014】
ボディ駆動制御装置214は、撮像素子212から読み出した画素の出力信号に基づいてデフォーカス量を算出し、このデフォーカス量を、マウント部204に装着された相手装置、例えば交換レンズ202とは異なる他の交換レンズや、アダプタ220に電気接点213経由で送信する。また、ボディ駆動制御装置214は、撮像素子212の画素の出力信号を処理して画像データを生成し、メモリカード219に格納するとともに、画像を液晶表示素子216に表示させる。
【0015】
なおボディ駆動制御装置214において、マウント部204から撮像素子212の撮像面までの距離FB1は、フランジバックを表す。
【0016】
アダプタ220は、アダプタ駆動制御装置221を有する。アダプタ駆動制御装置221は、不図示のマイクロコンピューター、メモリ、駆動制御回路、モーターなどの駆動源などから構成される。アダプタ駆動制御装置221は、マウント部204に装着された相手装置であるカメラボディ203と電気接点213を介して通信し、焦点調節のための焦点調節制御量としてデフォーカス量を受信する。またマウント部205に装着された相手装置である交換レンズ202と電気接点215を介して通信し、交換レンズ202の焦点調節能力に関する情報として焦点調節精度を受信する。受信したデフォーカス量と焦点調節精度情報とに基づき、交換レンズ202で焦点調節を行うか、アダプタ220で焦点調節を行うかを決定する。交換レンズ202で焦点調節を行う場合には、デフォーカス量を、電気接点215を介して交換レンズ202に送信する。アダプタ220で焦点調節を行う場合には、デフォーカス量に応じて(例えばデフォーカス量分)、上述したモーターなどの駆動源により互いに嵌合する2つの筒体を相対的に移動させ、アダプタ220の全長LA、すなわちマウント部205からマウント部204までの距離を変更することにより、交換レンズ202とカメラボディ203との間の光路長を変更して焦点調節を行う。
【0017】
図2はアダプタ220の機械的な構成を示す断面図である。アダプタ220においては、マウント部205を有する筒体222とマウント部204を有する筒体223とが嵌合構造になっており、筒体222と筒体223とは、光軸方向に相対的に移動可能な構成となっている。初期位置(リセット位置)においては、アダプタ220の全長LAは初期設定値になっている。デフォーカス量に応じて筒体222と筒体223とを相対的に移動することにより、光路長の調節が可能となる。
【0018】
前述したように交換レンズ202はもともとカメラボディ203とは異なるカメラボディ303用の交換レンズである。
図3は交換レンズ202をカメラボディ303のマウント部205に直接装着した場合のレンズ交換式カメラシステム301の断面図である。カメラボディ303を構成するボディ駆動制御装置314、撮像素子312、液晶表示素子326、メモリカード319の機能は、カメラボディ203を構成するボディ駆動制御装置214、撮像素子212、液晶表示素子216、メモリカード219の機能と同じなので説明を省略する。カメラボディ303とカメラボディ203との主な相違点は、カメラボディ側におけるマウント部のサイズ等の構成、撮像素子のサイズ、およびマウント部から撮像素子までのフランジバックであり、カメラボディ303のフランジバックFB2上述したフランジバックFB1よりも大きい。なお前述したアダプタ220の全長LAの初期設定値は、フランジバックFB2からフランジバックFB1を差し引いた長さになっている。
【0019】
また、カメラボディ303の撮像素子312のサイズは、カメラボディ203の撮像素子212のサイズより大きくなっている。撮像素子312で撮像した画像と撮像素子212で撮像した画像とを同一の大きさで画面に表示または印刷して鑑賞する場合、撮像素子312で撮像した画像の拡大倍率は撮像素子212で撮像した画像の拡大倍率より小さくなる。従って、鑑賞時に許容できる最大ボケ量を一定だとすれば、カメラボディ203よりもカメラボディ303の方が焦点調節誤差を大きく設定できる。焦点調節誤差の大きさは、後述する合焦範囲の大きさを表すため、カメラボディ303用の交換レンズ202はこの焦点調節誤差の設定範囲以内の焦点調節精度で焦点調節を行うことができれば良く、むやみに焦点調節精度を上げるために大型化したり、焦点調節速度を落としたりする必要はない。すなわちカメラボディ203に比較してカメラボディ303の方が、必要とする焦点調節精度が低い。
【0020】
こうして低い焦点調節精度に対応して設計された交換レンズ202を、アダプタ220を介して比較的高い焦点調節精度を必要とするカメラボディ203に装着する場合には、交換レンズ202での焦点調節のみでは必要とする焦点調節精度を達成できない。そこで、アダプタ220による光路長調整機能により必要とする焦点調節精度を達成する。
【0021】
図4は、撮像素子212の撮像面100上における焦点検出位置101を示す図であり、撮像素子212上の焦点検出画素列が焦点検出の際に撮像面100上で像をサンプリングする領域(焦点検出エリア、焦点検出位置)101の一例を示す。この例では、矩形の撮像面100上の中央(光軸上)に焦点検出エリア101が配置される。長方形で示す焦点検出エリアの長手方向に、焦点検出画素が直線的に配列される。
図4の焦点検出エリア101においては焦点検出画素が水平方向に配列される。
【0022】
図5は撮像素子212の詳細な構成を示す正面図であり、焦点検出エリア101の近傍を拡大した画素配列の詳細を示す。撮像素子212には撮像画素310が二次元正方格子状に稠密に配列される。撮像画素310は赤画素(R)、緑画素(G)、青画素(B)からなり、不図示の色フィルタがベイヤー配列の配置規則によって配置されている。
【0023】
焦点検出はいわゆる瞳分割型位相差検出方式で行われ、例えば特開2010−128205号公報に開示された瞳分割用の焦点検出画素が用いられる。
【0024】
図5においては、水平方向の焦点検出用に、撮像画素と同一の画素サイズを有し、かつ色フィルタを有しない焦点検出画素315、316が交互に、本来緑画素と青画素とが連続的に配置されるべき水平方向の直線状に連続して配列される。
【0025】
撮像画素310および焦点検出画素315、316は集光用に不図示のマイクロレンズを有する。
図5に示すように、撮像画素310、焦点検出画素315、316は光束を受光するために、それぞれ光電変換部11、15,16を有する。焦点検出画素315、316の光電変換部15,16の形状は、撮像画素310の光電変換部11を垂直2等分した左右半分ずつの形状に相当する。
【0026】
図6は、
図5に示す焦点検出画素315,316が受光する焦点検出光束の様子を説明するための模式図であって、水平方向の直線で焦点検出画素配列の断面をとっている。
図6において、軸91は撮像面100の中心を通る撮像面に対する法線である。撮像素子上に配列された全ての焦点検出画素315の光電変換部15の形状は、マイクロレンズ10により、マイクロレンズ10から距離dだけ離間した射出瞳90上の、全ての焦点検出画素315に共通した領域93に投影される。同じく全ての焦点検出画素316の光電変換部16の形状は、マイクロレンズ10により、マイクロレンズ10から距離dだけ離間した射出瞳90上の、全ての焦点検出画素316に共通した領域94に投影される。一対の領域93,94を測距瞳と呼ぶ。
【0027】
従って各焦点検出画素315の光電変換部15は、測距瞳93と各焦点検出画素のマイクロレンズ10とを通過する光束73を受光し、光束73によって各マイクロレンズ10上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。また各焦点検出画素316の光電変換部16は、測距瞳94と各焦点検出画素のマイクロレンズ10とを通過する光束74を受光し、光束74によって各マイクロレンズ10上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0028】
上述した一対の焦点検出画素315、316を交互にかつ直線状に多数配置し、各焦点検出画素の光電変換部の出力を測距瞳93および測距瞳94に対応した一対の出力グループにまとめることによって、測距瞳93および測距瞳94をそれぞれ通過する一対の光束が焦点検出画素配列上(水平方向)に形成する一対の像の強度分布に関する情報が得られる。この情報に対して像ズレ検出演算処理(相関演算処理、位相差検出処理)を施すことによって、いわゆる瞳分割型位相差検出方式による一対の像の像ズレ量の検出が行われる。さらに、像ズレ量に対して一対の測距瞳の重心間隔と距離dとの比例関係に応じた変換演算を行うことによって、焦点検出位置(垂直方向)における像面の撮像面に対するデフォーカス量が算出される。
【0029】
図7は、カメラボディ203の動作を示すフローチャートである。
図7に示す各処理ステップは、ボディ駆動制御装置214によって実行される。ボディ駆動制御装置214は、ステップS100でカメラボディ203の電源がオンされると、ステップS110以降の撮像動作を開始する。ステップS110において撮像素子212は一定周期で撮像動作を繰り返す(例えば1秒間に60フレームを出力する)動作を開始する。そして1フレーム分の全画素データを読み出す。続くステップS120では、撮像画素310の画素信号に基づいて生成される画像データを液晶表示素子216に表示させる。ステップS130では焦点検出画素315および316の画素信号に基づき焦点検出を行い、デフォーカス量を算出する。デフォーカス量の信頼性が低い場合またはデフォーカス量の算出が不能であった場合は焦点検出不能となる。
【0030】
ステップS140で、合焦近傍か否か、すなわち算出されたデフォーカス量の絶対値が許容される誤差量以内であるか否かを調べる。合焦近傍でないと判定された場合はステップS150へ進み、デフォーカス量をマウント部に装着された相手装置(ここではアダプタ220)へ送信し、焦点調節動作を行わせる。その後、ステップS110へ戻って上述した動作を繰り返す。なお、焦点検出不能な場合はステップS150をスキップし、ステップS110へ戻って上述した動作を繰り返す。
【0031】
ステップS140で合焦近傍であると判定された場合はステップS160へ進み、シャッターボタン(不図示)の操作によりシャッターレリーズがなされたか否かを判別する。シャッターレリーズがなされていないと判定された場合はステップS110へ戻り、上述した動作を繰り返す。一方、シャッターレリーズがなされたと判定された場合はステップS170へ進み、撮像素子212に被写体輝度に応じた露光時間による撮像動作を行わせ、撮像素子212の全画素から画素データを読み出す。
【0032】
ステップS180において、焦点検出画素315および316の周囲の撮像画素310の画素データを用いて補間処理(平均処理)を行い、焦点検出画素315および316の位置の撮像用の画素データに相当する補間データを得る。続くステップS190では、撮像画素の画素データおよびステップS180で算出した補間データを画像データとしてメモリカード219に記憶させ、ステップS110へ戻って上述した動作を繰り返す。
【0033】
図7のステップS130におけるデフォーカス量の算出、およびその算出に用いられる一般的な像ズレ検出演算処理(相関演算処理)の詳細は、特開2010−129783号公報に開示されており、その像ズレ量に変換係数を乗じてデフォーカス量が算出される。
【0034】
次にアダプタ220の動作について、
図8のフローチャートを用いて説明する。
図8に示す各処理ステップは、アダプタ駆動制御装置221によって実行される。アダプタ駆動制御装置221は、ステップS200でカメラボディ203の電源がオンされると、ステップS210以降の動作を開始する。ステップS210において、アダプタ220に装着されている交換レンズ202との通信を行い、アダプタ220が装着されている交換レンズ202の焦点調節精度情報を読み出す。ステップS220では、アダプタ220が装着されているカメラボディ203からデフォーカス量が送られてくるのを待機し、デフォーカス量を受信するとステップS230に進む。ステップS230においては、受信したデフォーカス量の絶対値が、アダプタ220が装着された交換レンズ202の焦点調節精度以上であるか否かを判定し、肯定判定の場合にはステップS240に進み、否定判定の場合はステップS260に進む。ステップS230においては、受信したデフォーカス量の絶対値を、該焦点調節精度と比較して判定する代わりに、該焦点調節精度に応じた所定値であってもよい。該所定値は、例えばステップS210で交換レンズ202から読み出した焦点調節精度情報に基づいて定められる。また、アダプタ220が装着された交換レンズ202の焦点調節精度は交換レンズ202に応じて変わりうるため、ステップS210で読み出される焦点調節精度情報も交換レンズ202に応じて変わりうる。ステップS210で読み出される焦点調節精度情報が前回から変わった場合は、ステップS230において、デフォーカス量の絶対値を比較する対象の焦点調節精度または所定値も変更される。ステップS240ではカメラボディ202から受信したデフォーカス量を交換レンズに送信する。ステップS250でアダプタ220の焦点調節をリセットする、すなわちアダプタ220の全長LAを初期設定値に戻す。ステップS210に戻り上記動作を繰り返す。一方ステップS260に進んだ場合には、受信したデフォーカス量に基づきアダプタ220の全長LAを変更、すなわち光路長を変更することにより、アダプタ220自身で焦点調節を行う。
【0035】
次に交換レンズ202の動作について、
図9および10のフローチャートを用いて説明する。
図9および10に示す各処理ステップは、レンズ駆動制御装置206によって実行される。レンズ駆動制御装置206は、ステップS300でカメラボディ203の電源がオンされると、ステップS310以降の動作を開始する。
図9のステップS310において、装着されている相手装置(ここではアダプタ220)からデフォーカス量が送られてくるのを待機し、デフォーカス量を受信するとステップS320に進む。ステップS320では受信したデフォーカス量に基づきレンズ208を移動して焦点調節を行う。
【0036】
図10は、装着されている相手装置(ここではアダプタ220)からの焦点調節精度情報の読み出し要求があった場合に発動する割り込み処理を示す。ステップS350において、カメラボディ203の電源がオンされると、その割り込み処理が受け付け可能状態となる。焦点調節精度情報の読み出し要求があった場合には、ステップS360で肯定判定され、ステップS370へ進む。焦点調節精度情報の読み出し要求が無い場合には、ステップS360で否定判定され、再び割り込み受付可能状態に戻ってその読み出し要求を待機する。ステップS370では焦点調節精度情報を上述した相手装置(ここではアダプタ220)へ送信し、再び割り込み受付可能状態に戻る。
【0037】
以上
図7〜
図10で説明したレンズ交換式カメラシステム210の動作における焦点調節動作の詳細を概念的に示したのが
図11である。
【0038】
図11において、横軸は、被写体像が結像される像面の位置P0に対する撮像素子212の撮像面の相対的な位置Pを示している。焦点調節前、すなわちカメラボディ203がデフォーカス量を検出する時点の撮像面の位置Pが位置P2にあり、交換レンズ202およびアダプタ220での焦点調節動作によって、撮像面の位置Pが像面の位置P0に相対的に近づいていく様子が示されている。撮像面の位置Pが像面の位置P0を含む合焦範囲に含まれたとき、撮像面の位置Pは合焦位置に位置していることとなる。
【0039】
カメラボディ203が位置P2で焦点検出を行うとデフォーカス量F02が得られる。レンズ交換式カメラシステム201として必要な像面位置許容誤差量(許容可能な誤差量)ΔFとすると、焦点調節後に合焦範囲P0±ΔFに撮像面の位置Pが含まれれば合焦となる。しかしながら、交換レンズ202の焦点調節の際の調節可能な像面位置変化長の最小値、すなわち焦点調節精度ΔLが、合焦のために必要な像面位置許容誤差量ΔFの2倍以上のとき、デフォーカス量F02に応じて交換レンズで焦点調節を行っても上述した合焦範囲に撮像面の位置Pが含まれるように焦点調節を行うことができない場合がある。
図11はそのような場合を示しており、デフォーカス量F02に応じて交換レンズ202で焦点調節を行うことによって、撮像面の位置Pを位置P1まで相対的に移動させることができるものとする。この位置でカメラボディが焦点検出を行うとデフォーカス量F01が得られるが、このデフォーカス量F01は交換レンズ202の焦点検出精度ΔLよりも小さくなっているので、これ以上交換レンズ202による焦点調節を行っても、合焦範囲P0±ΔFに撮像面の位置Pを含ませることはできない。
【0040】
図11において、アダプタ220による焦点調節によって撮像面の位置Pを移動可能な範囲ATは、交換レンズ202を最至近距離から無限距離まで焦点調節することによって撮像面の位置Pを移動可能な範囲LTよりも小さい。アダプタ220の焦点調節の際の調節可能な像面位置変化量の最小値、すなわち焦点調節精度ΔAは、交換レンズ202の焦点検出精度ΔLよりも小さい。また、アダプタ220による焦点調節によって撮像面の位置Pを移動可能な範囲ATは、交換レンズ202の焦点調節精度ΔLの少なくとも2倍より大きく設定されており、アダプタ220の焦点調節精度ΔAは像面位置許容誤差量ΔFより小さく設定されている。交換レンズ202で焦点調節を行うことによって、撮像面の位置Pを位置P1まで相対的に移動させた後、デフォーカス量F01に応じてアダプタ220による焦点調節を行うことにより、合焦範囲P0±ΔFに撮像面の位置Pが含まれるようにすることができる。
【0041】
もし、
図11において、位置P1がアダプタ220による焦点調節によって撮像面の位置Pを移動可能な範囲ATの左端に位置している場合は、アダプタ220による焦点調節によって撮像面の位置Pを位置P0側へ移動させることができないことになる。位置P1がアダプタ220による焦点調節によって撮像面の位置Pを移動可能な範囲ATの右端に位置している場合、
図11に示す例であれば、合焦範囲P0±ΔFに撮像面の位置を確実に含ませることができる。しかし、位置P0が位置P2よりも右側に位置するような例においては、やはりアダプタ220による焦点調節によって撮像面の位置Pを位置P0側へ移動させることができないことになる。したがって、撮像面の位置Pが位置P1に位置するように交換レンズ202により焦点調節された時に、アダプタ220による焦点調節位置が初期設定値(光路長調整量0)を取るようにリセットされていることが好ましい。すなわち、位置P1はアダプタ220による焦点調節によって撮像面の位置Pを移動可能な範囲ATの中央に位置する。従って、撮像面の位置Pが位置P1に位置するように交換レンズ202により焦点調節されたときからデフォーカス量F01に応じてアダプタ220による焦点調節を行えば、合焦範囲P0±ΔFに撮像面の位置を確実に含ませることができる。
【0042】
以上のように本発明においては、比較的低い焦点調節精度を持つ交換レンズ202を、比較的高い焦点調節精度が要求されるカメラボディ203にアダプタ220を介して装着して自動焦点調節を行った場合においても、要求される焦点調節精度内で確実に合焦を達成することができる。
【0043】
−−−変形例−−−
(1) 上述した実施の形態においては、アダプタ220は全長LAを変更することにより光路長を調整し、焦点調節を行っているが、アダプタ220に焦点調節用の光学系(レンズ)を内蔵し、該光学系の位置を調整することにより焦点調節を行ってもよい。
図12はこのようなアダプタ220の機械的な構成を示す断面図であって、光学系駆動用のモーターを含むアダプタ駆動制御装置221の図示は省略されている。
図12において、マウント部205とマウント部204とを備えた筒体224内に凹レンズ225と凸レンズ226とが内蔵されており、アダプタ駆動制御装置221によって凸レンズ226が光軸227方向に移動されることにより焦点調節が可能な構成となっている。
【0044】
(2) 上述した実施の形態においては、カメラボディ203側で検出されたデフォーカス量が、そのまま焦点調節制御量としてアダプタ220や交換レンズ202に送られ、アダプタ220や交換レンズ202側ではそのデフォーカス量に応じて焦点調節を行っている。しかし、焦点調節制御量はデフォーカス量に限定されない。
【0045】
例えばアダプタ220や交換レンズ202の焦点調節の駆動源としてパルスモーターを用いる場合には、カメラボディ203のボディ駆動制御装置214が、交換レンズ202やアダプタ220から、それぞれに記憶されている1パルスあたりの焦点移動量を読み出し、デフォーカス量をパルス単位の制御量に変換して、そのパルス単位の制御量を焦点調節制御量として交換レンズ202やアダプタ220に送信するようにしてもよい。
【0046】
(3) 上述した実施の形態においては、カメラボディ203のボディ駆動制御装置214が合焦を確認した場合にのみ撮影が許可される、いわゆるフォーカス優先撮影動作になっているが、本発明はこれに限定されることはない。
【0047】
例えば、合焦が確認されなくても常時撮影を許可する、いわゆるシャッター優先撮影動作としてもよい。シャッターレリーズがなされる前、通常は交換レンズのみで焦点調節を行ってピントの粗調整を行い、シャッターレリーズがなされて撮影動作に入った時のみアダプタによる焦点調節を行ってピントの微調整を行うようにしてもよい。
【0048】
(4) 上述した実施の形態においては、カメラボディ203は撮像素子212の一部に配置された瞳分割型の焦点検出画素を用いてデフォーカス量を算出していたが、焦点検出系の構成はこれに限定されない。撮像素子212とは別個に設けられた、デフォーカス量が検出可能なTTL焦点検出系、例えば再結像レンズを用いた瞳分割型位相差検出方式の焦点検出系などを用いてもよい。
【0049】
(5) 上述した実施の形態および変形例は、互いに組合せてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 マイクロレンズ、11、15、16 光電変換部、73、74 光束、
90 射出瞳、91 軸、93、94 領域(測距瞳)、
100 撮像面、101 領域(焦点検出エリア)、
201、301 レンズ交換式カメラシステム、202 交換レンズ、
203、303 カメラボディ、204、205 マウント部、
206 レンズ駆動制御装置、208 レンズ、212、312 撮像素子、
213、215 電気接点、214、314 ボディ駆動制御装置、
216、326 液晶表示素子、219、319 メモリカード、220 アダプタ、
221 アダプタ駆動制御装置、222、223、224 筒体、
225、凹レンズ、226 凸レンズ、227 光軸、
310 撮像画素、315、316 焦点検出画素