(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記座標テーブルは、前記対物レンズの交換、前記対象物の交換、観察環境温度の変化時、タイムラプス観察開始直前の少なくとも一つが生じたときに再度取得することを特徴とする請求項1に記載のオートフォーカス装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の一実施形態にかかるオートフォーカス装置を有する顕微鏡装置について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、発明の理解を容易にするためのものに過ぎず、本願発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加・置換等を施すことを排除することは意図していない。
【0011】
図1は、実施形態にかかるオートフォーカス装置を搭載した顕微鏡装置の概略構成図である。この顕微鏡装置は、観察の対象物である標本の拡大像を形成して観察あるいは画像取得に使用するものであり、観察の対象物である標本48は水等の媒質に浸された状態でカバーガラス14およびスライドガラス15に挟まれてステージ11上に載置されている。
【0012】
図1において、本実施形態にかかる顕微鏡装置の光学系は、標本の上部に配置されている観察光学系3と、その側方に配置された本実施形態にかかるオートフォーカス装置の光学系であるフォーカス用照明光学系5およびフォーカス用結像光学系7により構成されている。
【0013】
フォーカス用照明光学系5は、その光軸上に、LED光源20側から順に、第1コレクタレンズ21、スリット板22、第2コレクタレンズ23、第1瞳制限マスク24、第1ハーフミラー25、焦点位置調節レンズ8及び可視光カットフィルタ10が配設されて構成されている。スリット板22の中央部には長方形の細長いスリット開孔22aが形成されており、スリット板22は、スリット開孔22aの長手方向が
図1において紙面に垂直方向に延びるように光軸を中心に配設されている。
【0014】
LED光源20から出射されたオートフォーカス用の光である赤外光(近赤外光)は第1コレクタレンズ21で集光されてスリット板22に入射し、この赤外光の焦点位置である標本面(カバーガラス14と標本が浸された媒質との境界面)と共役位置に配置したスリット板22のスリット開孔22aを通り、第2コレクタレンズ23で平行光に変換され、第1瞳制限マスク24に照射される。
【0015】
第1瞳制限マスク24は、瞳の半分を遮光するものであり、フォーカス用照明光学系5の光軸を中心にスリット状の赤外光の長手方向の中心線にそって半分が遮光されるように配設されている。第1瞳制限マスク24を通過した赤外光Laは、第1ハーフミラー25を透過する。なお、第1ハーフミラー25は、フォーカス用照明光学系5とフォーカス用結像光学系7の光軸が交差する位置に配設されており、赤外光の一部を反射して、他の一部を透過するものであり、後述するように、フォーカス用結像光学系7でも共用されている。
【0016】
フォーカス用照明光学系5と観察光学系3の光軸が交差する位置には、ダイクロイックミラー16が配設されており、後述するように観察光学系3でも共用されている。ダイクロイックミラー16は、観察光学系3の観察光路上のアフォーカル系に配設され、赤外光を反射して可視光や蛍光を透過する作用をする。
【0017】
第1ハーフミラー25を透過した赤外光Laは焦点位置調節レンズ8を透過した後、可視光カットフィルタ10で赤外光Laに含まれる可視光成分が除去された後、ダイクロイックミラー16で対物レンズ12方向に反射され(赤外光Lb)、対物レンズ12によって標本面に集光される。なお、対物レンズ12は、後述するように観察光学系3でも共用されている。また、焦点位置調節レンズ8については後述する。
【0018】
観察光学系3は、標本48側から順に、対物レンズ12、ダイクロイックミラー16、赤外光カットフィルタ18、第2ハーフミラー17および第2対物レンズ13が配設されて構成されており、さらに第2対物レンズ13の先には図示しないが接眼レンズが配設されて構成されている。
【0019】
また、図示しないが、ステージ11上に載置された標本48を照明する照明装置が設けられている。この照明装置は、透過型または落射型であり、透過型の照明装置の場合はステージ11の下方に配置され、落射型の照明装置の場合はステージ11の上方に配置される。
【0020】
透過照明の場合、照明装置から照射された光は標本48を透過して観察光となり、対物レンズ12を経て、ダイクロイックミラー16を透過し、赤外光カットフィルタ18で赤外光が除去されて、第2ハーフミラー17に入射する。
【0021】
第2ハーフミラー17に入射した観察光は、一部が反射され第2対物レンズ13および接眼レンズで標本48の観察像が結像され、観察に供せれる。また、第2ハーフミラー17を透過した一部の観察光は、カメラ用対物レンズ36とカメラ用リレーレンズ37を通過し、カメラ用CCDセンサ38の撮像面に結像させ、カメラ用信号処理部39で処理して標本の画像をモニタ(図示せず)に投影する。
【0022】
フォーカス用結像光学系7は、フォーカス用照明光学系5によりステージ11上の標本面に照射されて反射するスリット状の赤外光を受光するものである。ここで、ステージ11上の標本48はカバーガラス14によって覆われているため、対物レンズ12で結像された焦点検出用の赤外光は、カバーガラス14の表面やカバーガラス14と標本48の境界面(標本面)で反射する。カバーガラス14や標本面等で反射した赤外光は、対物レンズ12で平行光に変換され(赤外光Lc)、ダイクロイックミラー16で反射され(赤外光Ld)、さらに可視光カットフィルタ10及び焦点位置調節レンズ8を通過し、フォーカス用照明光学系5の光軸に対して略45度傾けて配設された第1ハーフミラー25に入射し、第1ハーフミラー25で一部が反射されフォーカス用結像光学系7に入射する。
【0023】
フォーカス用結像光学系7は、フォーカス用照明光学系5側から光軸に沿って順に、第1ハーフミラー25、オートフォーカス用対物レンズ26、オートフォーカス用リレーレンズ27、第2瞳制限マスク28、オートフォーカス用リレーレンズ27、シリンドリカルレンズ29およびオートフォーカス用CCDセンサ30が配設されて構成されている。
【0024】
第1ハーフミラー25で反射された赤外光Ldは、オートフォーカス用対物レンズ26で集光して結像光に変換されスリット像を結像する。オートフォーカス用リレーレンズ27,27は、オートフォーカス用対物レンズ26によって結像されたスリット像(赤外光Le)をリレーし、シリンドリカルレンズ29を経て、オートフォーカス用CCDセンサ30の撮像面にスリット像を再結像する。
【0025】
なお、第2瞳制限マスク28は、瞳の半分を遮光するように配設されており、遮光される領域は、第1瞳制限マスク24によって遮光される領域に対応している。また、シリンドリカルレンズ29は、所定方向のみに屈折作用を持つレンズであり、赤外光Leを
図1において紙面に対して垂直方向(スリット像の長手方向)に圧縮して、オートフォーカス用CCDセンサ30の撮像面に結像させる作用をする。なお、オートフォーカス用CCDセンサ30は、複数の受光部が1次元に配列されたラインセンサ、または、2次元に配列されたエリアセンサで構成することが可能である。
【0026】
なお、フォーカス用照明光学系5において、LED光源20から出射した光をスリット板22のスリット開孔22aを通してスリット状にしてスリット開孔22aの像を標本面に照射している。これは、スポット光とした場合、標本面等に段差部分があると、その反射光が散乱して理想的な光量信号を得ることができないためであるが、標本面等の状態によってはこのスリット板22を無くし、上述の方法でLED光源20の像を標本面に照射してオートフォーカス制御をすることも可能である。また、第1コレクタレンズ21はなくても実現可能である。
【0027】
本発明にかかるオートフォーカス装置において使用する焦点位置調節レンズ8について説明する。焦点位置調節レンズ8は
図1に示すように、ダイクロイックミラー16と第1ハーフミラー25の間のフォーカス用照明光学系5とフォーカス用結像光学系7との共通光路上に位置しアフォーカル系に配設されている。
【0028】
また、焦点位置調節レンズ8には焦点位置調節レンズ駆動部9aが取り付けられており、図示しないが、焦点位置調節レンズ8を光軸に沿って前後に移動可能とする焦点位置調節レンズ用DCモータと、倍率の異なる複数の焦点位置調節レンズ8を交換可能とする焦点位置調節レンズ用電動ターレットで構成されている。焦点位置調節レンズ駆動部9aは後述するCPU41の焦点位置調節レンズ移動制御部を介して移動が制御されている。
【0029】
また、焦点位置調節レンズ8には焦点位置調節レンズ8の位置(X位置)を検出するX位置検出部9bが取り付けられており、検出されたX位置情報はCPU41に伝達される。
【0030】
また、焦点位置調節レンズ8を光軸方向に移動した時に、対物レンズ12と標本48との衝突を防止するための不図示のリミットセンサーHL1(−)及びHL2(+)が配設されている。
【0031】
また、後述する顕微鏡装置の入力部には焦点位置調節レンズ8を光軸に沿って移動させる焦点位置調節レンズ操作ダイアル51と不図示の焦点位置調節レンズ切り替えスイッチが配設されおり、観察者は焦点位置調節レンズ操作ダイアル51を操作すると、これに結合された不図示のエンコーダからの信号に基づき焦点位置調節レンズ8を光軸にそって往復移動させることができる。また、焦点位置調節レンズ切り替えスイッチにより、焦点位置調節レンズ用電動ターレットに装着された複数の焦点位置調節レンズ8から任意の焦点位置調節レンズ8を選択して切り替えることができる。
【0032】
焦点位置調節レンズ8の作用について説明する。なお、
図1においてオートフォーカス用照明光を実線で示し、観察光学系3における観察光を点線で示している。
【0033】
焦点位置調節レンズ8は、対物レンズ12で標本面に集光照射されるスリット像(オートフォーカス用照明光)の結像位置をフォーカス用照明光学系5の光軸に沿ってずらすと同時に標本面で反射し、オートフォーカス用CCDセンサー30の撮像面に再結像するスリット像の結像位置をフォーカス用結像光学系7の光軸に沿ってずらす働きをする。
【0034】
以下、オートフォーカス制御を行いながら、標本48における実際に観察したい位置に対物レンズ12の観察光学系3の前側焦点(以下、「焦点f」という)を合わす方法について説明する。焦点位置調節レンズ8は凸レンズ8aと凹レンズ8bとを有し、一方のレンズが光軸上に固定され、他方のレンズが光軸に沿って移動可能に配置されて構成することができる。なお、変形例としては、凸レンズ8aと凹レンズ8bを光軸に沿って移動可能に構成しても良い。なお、以降の説明では、凸レンズ8aが物体側に固定され、その後方(LED光源20側)に凹レンズ8bが光軸に沿って移動可能に配置されている場合について説明する。
【0035】
観察光学系3による対物レンズ12の焦点fがカバーガラス14と標本48の境界面(以後、標本面という)に合っている状態で、スリット開孔22aを通して照射されるオートフォーカス用スリット像の結像位置(フォーカス用照明光学系5による対物レンズ12の焦点位置である)が同じく標本面に合い、かつ、その反射像の焦点がオートフォーカス用CCDセンサ30の撮像面に合うように焦点位置調節レンズ8(凹レンズ8b)の位置(X位置)を調節する。この状態では、観察光学系3による対物レンズ12の焦点fとフォーカス用照明光学系5およびフォーカス用結像光学系7による対物レンズ12の焦点(標本面)とが一致している。この位置を焦点位置調節レンズ8によるスリット像の「オフセットゼロの位置」と呼ぶ(
図2のX=0、Z=0に相当)。この状態ではスリット像が観察光学系3による対物レンズ12の焦点fつまり標本面に結像し、その反射光はオートフォーカス用CCDセンサ30の撮像面に結像している状態である。また、この状態では焦点位置調節レンズ8は単に望遠系となっており、焦点位置調節レンズ8の前後ではオートフォーカス用照明光はともに平行光束となっている。この状態で後述するオートフォーカス制御をかけると常にスリット像はフォーカス用照明光学系5およびフォーカス用結像光学系7による対物レンズ12の焦点である標本面と観察光学系3による対物レンズ12の焦点fが一致している状態に制御される。
【0036】
次に焦点位置調節レンズ8(凹レンズ8b)を光軸に沿って前後に移動し、オートフォーカス用スリット像を標本面から移動させて、オートフォーカス用スリット像の結像位置と観察光学系3による対物レンズ12の焦点fの位置をずらす(オフセットさせる)。例えば、凹レンズ8bを後方(凸レンズ8aから離れる方向)に距離X1だけ移動させると、オートフォーカス用スリット像の結像位置は標本面より対物レンズ12側に所定の距離(この距離を「オフセット量Z1」と呼ぶ)だけ移動する。この状態で、後述するオートフォーカス制御を行うと、ステージ11が移動するために標本面が移動して、オートフォーカス用スリット像の結像位置が標本面に一致する。この時、観察光学系3による対物レンズ12の焦点fはオフセット量Z1だけ標本48の中に移動する(
図2のX=X1、Z=Z1参照)。この状態では、オートフォーカス用スリット像は標本面にあり、観察光学系3による対物レンズ12の焦点fはオフセット量だけ標本48の中にある。この結果、焦点位置調節レンズ8をオフセットゼロ位置(X=0位置)から距離(X=X1)移動することで、観察光学系3による対物レンズ12の焦点fの位置をZ=0、からZ=Z1まで移動することができる。その後、オートフォーカス装置は、この状態を維持するように動作する。
【0037】
このように焦点位置調節レンズ8の移動量と観察光学系3による対物レンズ12の焦点fの移動量とは関係しており、焦点位置調節レンズ8の移動に伴う位置(X値)の変化をモニタすることで観察光学系3による対物レンズ12の焦点fの位置の変化(Z値)を検出することができる。
【0038】
このとき、焦点位置調節レンズ8を構成する凹レンズ8bの位置X1と、観察光学系3による対物レンズ12の焦点fの位置が標本面から移動するオフセット量Z1は、対物レンズ12の倍率(焦点距離)に応じて決まる。顕微鏡装置として必要なオフセット量は、標本の構成上、50μm程度必要とされる。液浸対物レンズの場合、カバーガラスの下面の反射率は、媒質がオイルの場合ほぼ0であり、水の場合も上面(標本面)と同じ反射率となり、一般に40倍以上の高倍で開口数も大きく標本側の焦点深度は非常に浅いためカバーガラス下面の反射はオートフォーカス制御にとって妨げとはならない。
【0039】
また、本発明にかかるオートフォーカス装置は一般的ないわゆる乾燥系対物レンズにも対応可能であるが、乾燥系の場合は、カバーガラス下面の反射率は上面の10倍以上となり焦点深度が比較的深いことから本来のカバーガラス上面をオートフォーカス基準面とするのは困難となる。従って、信号として10倍以上大きいカバーガラス下面を基準面とするのが適当となる。この場合、オフセット量は高倍/液浸対物レンズのオフセット量(50μm)に比べて非常に大きくなる(例えば、カバーガラス厚170μm+50μm)が、焦点位置調節レンズ8の適当な設定によりカバーガラス下面を基準とするような大きなオフセット量の設定が可能となる。
【0040】
このように、焦点位置調節レンズ8を凸レンズ8aと凹レンズ8bとで構成することにより、簡単な構成でオートフォーカス用照明光の結像位置を移動させて観察光学系3による対物レンズ12の焦点fをオフセットさせることができる。
【0041】
なお、上述の焦点位置調節レンズ8でずらす(オフセットさせる)ことが可能な距離は、焦点位置調節レンズ8の焦点距離により物理的な制限があるため、その物理的な制限以上にずらしたい場合には、焦点位置調節レンズ8を交換することで対応可能である。例えば、焦点距離の長いものに交換することにより長いオフセット量を実現することができる。なお、焦点位置調節レンズ8を焦点距離の違うレンズに交換した場合、オフセットゼロの位置を決めるために、焦点位置調節レンズ8の位置を調節する必要がある。
【0042】
また、上記構成では焦点位置調節レンズ8をダイクロイックミラー16と第1ハーフミラー25の間、すなわちフォーカス用照明光学系5とフォーカス用結像光学系7の共通光路上に配設し、標本面に集光照射されるスリット像と標本面で反射してオートフォーカス用CCDセンサ30の撮像面に再結像するスリット像の両方の焦点の位置を光軸方向にずらしていたが、第1ハーフミラー25と第1瞳制限マスク24の間、すなわち、フォーカス用照明光学系5に焦点位置調節レンズを配設して標本面に集光照射されるスリット像の焦点の位置を光軸方向にずらすことで実現することも可能である。また、第1ハーフミラー25とオートフォーカス用第2対物レンズ26の間、すなわち、フォーカス用結像光学系7に焦点位置調節レンズを配設して、オートフォーカス用CCDセンサ30の撮像面に再結像するスリット像の焦点の位置を光軸方向にずらすことで実現することも可能である。
【0043】
顕微鏡装置の制御系は、フォーカス位置検出のためのオートフォーカス用信号処理部31、ステージ11を上下動させるステージ駆動部34a、ステージ11の上下位置(Z位置)を検出するZ位置検出部34b、対物レンズ12を交換するための電動レボルバを駆動する電動レボルバ駆動部35およびそれらを制御するためのCPU41、メモリ42、入力部43で構成されている。
【0044】
オートフォーカス用CCDセンサ30が検出したスリット像の信号は、オートフォーカス用信号処理部31に出力され、CPU41により処理され、対物レンズ12に対する標本面の焦点情報が検出される。この焦点情報に関する信号は、CPU41によりステージ駆動部34に送られ、ステージ11の位置を光軸に沿って上下動させることにより対物レンズ12の観察光学系3の焦点fに標本を位置決めする。
【0045】
なお、オートフォーカス用CCDセンサ30の撮像面の中でスリット像が形成される位置は、ステージ11の光軸に沿った上下動によって、標本面やカバーガラス14の位置が変わると、それに合わせて、スリット像の短手方向に移動する。このようなオートフォーカス用CCDセンサ30で検出されたスリット像からステージ11の移動方向を制御する。
【0046】
ステージ駆動部34は、
図1には図示しないがステージ11に取り付けられたステージ駆動用DCモータと、ステージ駆動用DCモータを回転させるステージ駆動用モータドライバと、ステージ駆動用DCモータの回転角を検出するロータリエンコーダ(Z位置検出34b)と、ロータリエンコーダの検出結果に基づいてステージ11の上下動をカウントするアップ/ダウンカウンタとで構成されている。
【0047】
オートフォーカス制御はCPU41で処理され、制御信号は上下動制御信号と速度制御信号としてステージ駆動用モータドライバに出力され、この信号に基づいてステージ駆動用DCモータは駆動される。アップ/ダウンカウンタのカウント結果は、上下動位置信号としてCPU41に出力される。ステージ11はステージ駆動用DCモータが回転すると、その回転角に応じて光軸に沿って上下動する。そして、ステージ11に載置された標本もカバーガラス14、スライドガラス15とともに上下動し、標本と対物レンズ12との位置関係が調節されるとともに、合焦位置のZ位置が検出される。
【0048】
また、CPU41には、顕微鏡装置の所定の位置に配置された温度検出器44が接続され、顕微鏡装置周辺の環境温度を検出できるようになっている。そして、検出された温度情報は、後述する焦点位置調節レンズ8の位置と標本中の対物レンズ12の焦点位置との関係を知る、あるいは再評価するために使用される。
【0049】
図1には1本の対物レンズ12のみを示したが、本実施形態の顕微鏡装置は、倍率が異なる複数の対物レンズ12によって構成可能である。複数の対物レンズ12は、図示しないが電動レボルバに装着されており、電動レボルバはこれを回転駆動する電動レボルバ駆動部35に接続される。電動レボルバ駆動部35には、図示しないが電動レボルバに取り付けられた電動レボルバ駆動用DCモータと、CPU41からの回転制御信号に基づいて電動レボルバ駆動用DCモータを回転させる電動レボルバ駆動用モータドライバとが設けられている。電動レボルバは、上記した電動レボルバ駆動用DCモータの回転に応じて回転する。そして、電動レボルバに装着された複数の対物レンズ12もともに回転し、いずれか1つの対物レンズ12が顕微鏡装置の観察光路上に位置決めされる。電動レボルバ駆動部35には、電動レボルバのレボルバ穴(例えば6個)のうち、顕微鏡装置の観察光路上に位置決めされたレボルバ穴の番号(1〜6)を検知するセンサ(図示せず)が設けられている。
【0050】
入力部43には、焦点位置調節レンズ操作ダイアル51、図示しないが、キーボード、対物レンズ切り替えスイッチ、オートフォーカス制御開始スイッチ、合焦位置記憶スイッチ、アップ/ダウン微調整スイッチ及び上述の焦点位置調節レンズ8を操作するスイッチ等が設けられている。
【0051】
キーボードは、電動リボルバにセットされている複数の対物レンズ12の情報を入力する時等に使用される。キーボードから入力された複数の対物レンズ12のそれぞれのデータは、メモリ42に記憶される。また、合焦位置記憶スイッチによって取得された合焦位置情報もメモリ42に記憶される。
【0052】
対物レンズ切り替えスイッチは、顕微鏡装置の観察光路上に位置決めされた対物レンズ12を別の対物レンズ12に切り替えるときに使用される。CPU41は、対物レンズ切り替えスイッチから入力された切り替え信号に基づいて電動レボルバ駆動部35を制御し、切り替え信号によって指定された対物レンズを顕微鏡装置の観察光路上に位置決めする。
【0053】
オートフォーカス制御開始スイッチは、顕微鏡装置におけるオートフォーカス制御の開始を指示する時に使用される。CPU41は、オートフォーカス制御開始スイッチが操作されると、既に説明したスリット投影式オートフォーカス制御の実行を開始し、標本48が対物レンズ12の焦点に位置決めされる。
【0054】
アップ/ダウン微調整スイッチは、手動操作によってステージ11の上下動を微調整する時に使用される。CPU41は、アップ/ダウン微調整スイッチから入力された微調整信号に基づいてステージ11を位置決めする。なお、アップ/ダウン微調整スイッチの操作は、操作者が顕微鏡装置の第2対物レンズ13および接眼レンズを介して標本の像を観察しながら行うものである。そして操作者にとってコントラストの高い像が良好に観察できた時点で、アップ/ダウン微調整スイッチの操作を終了し、ステージ11が位置決めされる。この時、本実施形態の顕微鏡装置では、標本の中の任意の面が対物レンズ12の焦点に一致している。
【0055】
このような構成によれば、焦点位置調節レンズ8を前記オフセットゼロ(Z=0)の位置からオートフォーカス制御をさせながら光軸に沿って前後に移動させることにより、観察光学系3による対物レンズ12の焦点fの位置を自由に、かつ、標本面でのオートフォーカス用スリット像の反射量に関わりなく任意の位置にずらすことが可能である。また、標本面から常に一定の距離だけ光軸方向に離れたところに観察光学系3による対物レンズ12の焦点を合わせることができるため、標本48をステージ上で移動して標本48の別の部分を観察する場合や、別の標本48に交換して観察をする場合等に効率の良い作業が可能となる。
【0056】
本実施形態にかかるオートフォーカス装置では、例えば、対物レンズの交換、暗視野、明視野、蛍光観察等の切換えによる観察方法の変更、例えば、温度などの観察環境条件の変化等により、上述した焦点距離レンズ8の移動量(X位置)に対するオフセット量(Z位置)の関係がずれることが分かっている。一方、最近の観察技術の進歩によりより高解像の標本像を得るために焦点位置調節レンズ8の位置変化に対する標本に対する観察光学系3による対物レンズ12の焦点位置をより正確に知ることが必要になっている。
【0057】
そこで、本実施形態にかかるオートフォーカス装置は、上記のような状況変化が生じた場合でも焦点位置調節レンズ8の位置(X位置)の変化に対する観察光学系3による対物レンズ12の焦点fの位置(Z位置)をより正確に知るとことを可能にしたものである。
【0058】
図2は、環境温度(顕微鏡装置の温度)が25℃と30℃における焦点位置調節レンズ8の移動(X位置)と観察光学系3による対物レンズ12の焦点fの位置(Z位置)の関係(以後、「X−Z関係」という)を示す一例である。
【0059】
図2から分かるように、環境温度の変化により、標本48の観察光学系、あるいはオートフォーカス用照明光学系5およびフォーカス用結像光学系7等が変化し、X−Z関係が変化する。温度25℃の時、X=X1でZ=Z1であったものが、温度35℃ではZ=Z1’に変化する。これでは、焦点位置調節レンズ8の位置が同じでも、観察している標本48の位置が異なってしまう。
【0060】
そこで、本実施形態にかかるオートフォーカス装置は、
図3に示すような観察条件に対応した(X−Z)座標テーブルを記憶部42に保存しておき、CPU41が観察条件に対応するX−Z関係を該座標テーブルの値を参照することで焦点位置調節レンズ8の位置(X位置)から標本48の観察位置(Z位置)を知ることが可能になる。焦点位置調節レンズ8のX位置に対応する標本48のZ位置と共に、取得した標本像を記憶してこくことで、後日の解析に役立たせることができる。
【0061】
図3では、対物レンズがA、Bの二種類、環境温度が25℃と35℃の二種類を、予め記憶したデータとして示している。なお、これらデータは、必要に応じて増やすこともできる。なお、その他の観察条件についてもデータとして記憶しておくことができる(例えば、フィルタ等)。
【0062】
また、再測定データは、観察者が標本の観察を行う前に、焦点位置調節レンズ8のX位置と対物レンズ12の焦点位置(Z位置)との関係を測定して記憶したデータである。この再測定データは、観察者が顕微鏡装置を操作して上記オフセットゼロ位置である標本面にフォーカス用スリット像と観察光学系3による対物レンズ12の焦点fを一致させたのち、CPU41が焦点位置調節レンズ8を光軸に沿って移動する。このとき、CPU41は、焦点位置調節レンズ8のX位置と観察光学系3による対物レンズ12の焦点fの位置(Z位置)とをX位置検出部9bとZ位置検出部34bを介してそれぞれ検出して
図3に示すX−Z座標テーブルを作成して記憶部42に記憶する(例えば,
図3のRb)。このように、観察直前にX−Z関係を再測定して記憶することで、焦点位置調節レンズ8のX位置と対物レンズ12の焦点位置(Z位置)の関係をより正確に把握することができる。
【0063】
以上述べたように、本実施形態にかかるオートフォーカス装置は、焦点位置調節レンズ8の位置(X位置)と対物レンズの焦点位置(Z位置)の関係を、前もって測定して記憶しておく、あるいは観察直前に測定して記憶することで、焦点位置調節レンズ8の移動による対物レンズ12の焦点位置をより正確に知ることを可能にする。そして、焦点位置調節レンズ8の位置をずらしながら対物レンズ12の焦点位置を標本中でずらして結像光学系で画像を取得し、X−Z関係(X−Z座標テーブル)から得られるZ位置と共に所得した標本画像を記憶することができる。このようにして取得したZ位置を有する画像は、後日の画像解析等に有効に活用することができる。
【0064】
また、本顕微鏡装置を使ったタイムラプス観察を実行する場合、一度標本画像を取得して記憶した後、所定時間が経過して再度標本画像を取得する際、その取得開始前にX−Z関係座標テーブルを再測定して座標テーブルに追記し、最初の座標テーブルのX−Z関係と再測定後のX−Z関係とを比較処理することで、径時変化に伴うX−Z関係のずれを補正した標本画像を取得するように構成することができる。
【0065】
このように本実施形態にかかるオートフォーカス装置は、焦点位置調節レンズの位置と対物レンズの焦点位置との関係をCPU41がそれぞれに配置された位置検出部を介して検出し記憶する処理ルーチンを有することで、観察条件が変化したときでもX−Z関係を再評価することができ、より正確な焦点位置(Z位置)を取得することができる。ここでいう処理ルーチンは、CPUに格納されたプログラムによって関連する部材を所定の手順に従って動作させることで実行される。
【0066】
なお、再評価は、CPUが対物レンズの交換、観察条件の変更、温度の変化、あるいはタイムラプス条件変化を検出した際に、自動的に再評価ルーチンを実施するように構成することも可能である。