特許第5910165号(P5910165)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910165
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】カメラ
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20060101AFI20160414BHJP
   H02N 2/00 20060101ALI20160414BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20160414BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20160414BHJP
   G02B 7/36 20060101ALI20160414BHJP
   G02B 7/08 20060101ALI20160414BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   G02B7/04 E
   H02N2/00 C
   H01L41/08 C
   H01L41/18 101D
   H01L41/18 101B
   G02B7/36
   G02B7/08 C
   H04N5/232 H
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-42439(P2012-42439)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-178396(P2013-178396A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100092576
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 久男
(72)【発明者】
【氏名】芦沢 隆利
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−153286(JP,A)
【文献】 特開2009−75419(JP,A)
【文献】 特開2006−115583(JP,A)
【文献】 特開平7−83702(JP,A)
【文献】 特開2011−67035(JP,A)
【文献】 特開平4−200282(JP,A)
【文献】 特許第5233922(JP,B2)
【文献】 特許第4323898(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/08
G02B 7/36
H01L 41/09
H01L 41/187
H02N 2/00
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械変換素子の励振により駆動面に発生する駆動力を用いてレンズを駆動する振動アクチュエータと、
前記振動アクチュエータに2つの駆動信号を与える駆動制御部と、
動画撮影モードを選択できる撮影設定部と、を備え、
前記駆動制御部は、該撮影設定部が動画撮影モードを選択した場合に、前記2つの駆動信号の電圧を一定に維持した状態で、前記2つの駆動信号の位相差を変更するとともに、前記2つの駆動信号の周波数を前記切り替えられた位相差に対応させて変更することで、前記振動アクチュエータの速度を変更可能であること、を特徴とするカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラであって、
前記駆動制御部は、前記2つの駆動信号の位相差を、90度と−90度と0度との間で連続的に変更可能であること、を特徴とするカメラ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカメラであって、
前記駆動制御部は、前記レンズを小刻みに前後させて焦点位置を被写体に追従させる動作であるウォブリング動作を行うこと、を特徴とするカメラ。
【請求項4】
請求項3に記載のカメラであって、
被写体像のコントラストを検出するコントラスト検出部を備え、
前記駆動制御部は、前記コントラスト検出部によって検出された、前記ウォブリング動作における所定の1サイクルの前記コントラストに基づいて、前記所定の1サイクルの次の1サイクルにおける前記2つの駆動信号の周波数を、前記レンズの焦点位置を被写体に追従させるように切り替えること、を特徴とするカメラ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のカメラであって、
前記駆動制御部は、前記撮影設定部が静止画撮影モードを選択した場合に、前記2つの駆動信号の位相差を、90°と−90°との間で切り替え可能であること、を特徴とするカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータを備えるカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動アクチュエータは、圧電体の伸縮を利用して弾性体の駆動面に進行性振動波(以下、進行波と略する)を発生させ、この進行波によって駆動面に楕円運動を生じさせ、楕円運動の波頭に加圧接触した移動子を駆動するものである(例えば、特許文献1参照)。この様な振動アクチュエータは、低回転でも高トルクを有するといった特徴があり、駆動装置に搭載した場合に、駆動装置のギアを省略することができる。このため、ギア騒音をなくすことで静寂化を達成することができ、また、位置決め精度も向上する。電子カメラにおいて、この振動アクチュエータを搭載しているものがある。また、電子カメラでは、静止画の撮影以外にも、動画の撮影も行うことが出来るものがある(特許文献2参照)。動画の撮影を行う場合、通常、音声の取り込みも行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平1−17354号公報
【特許文献2】特開平8−80073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、動画撮影時に、オートフォーカス(以下、AFと略す)でレンズが駆動されると、動画とともに振動アクチュエータの動作開始時の音が取り込まれる。この振動アクチュエータの動作開始時の音は、振動アクチュエータの駆動時に、駆動電圧を0Vから段階的に所定の電圧値に変化させる際に、ステータ(振動子)から発生されるものである。
本発明の課題は、動画撮影時における振動アクチュエータの作動音が低減されたカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0006】
請求項1に記載の発明は、電気機械変換素子(13,53)の励振により駆動面に発生する駆動力を用いてレンズ(L3)を駆動する振動アクチュエータ(10,50)と、前記振動アクチュエータ(10,50)に2つの駆動信号を与える駆動制御部(41)と、動画撮影モードを選択できる撮影設定部(47)と、を備え、前記駆動制御部(41)は、該撮影設定部(47)が動画撮影モードを選択した場合に、前記2つの駆動信号の電圧を一定に維持した状態で、前記2つの駆動信号の位相差を変更するとともに、前記2つの駆動信号の周波数を前記切り替えられた位相差に対応させて変更することで、前記振動アクチュエータ(10,50)の速度を変更可能であること、を特徴とするカメラ(1)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカメラ(1)であって、前記駆動制御部(41)は、前記2つの駆動信号の位相差を、90度と−90度と0度との間で連続して変更可能であること、を特徴とするカメラ(1)である。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のカメラ(1)であって、前記駆動制御部(41)は、前記レンズ(L3)を小刻みに前後させて焦点位置を被写体に追従させる動作であるウォブリング動作を行うこと、を特徴とするカメラ(1)である。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のカメラ(1)であって、被写体像のコントラストを検出するコントラスト検出部(39)を備え、前記駆動制御部(41)は、前記コントラスト検出部(39)によって検出された、前記ウォブリング動作における所定の1サイクルの前記コントラストに基づいて、前記所定の1サイクルの次の1サイクルにおける前記2つの駆動信号の周波数を、前記レンズ(L3)の焦点位置を被写体に追従させるように切り替えること、を特徴とするカメラ(1)である。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載のカメラ(1)であって、前記駆動制御部(41)は、前記撮影設定部(47)が静止画撮影モードを選択した場合に、前記2つの駆動信号の位相差を、90°と−90°との間で切り替え可能であること、を特徴とするカメラ(1)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、動画撮影時における振動アクチュエータの作動音が低減されたカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態の電子カメラを説明する図である。
図2】本発明の第1実施形態のレンズ鏡筒を説明する図である。
図3】本発明の第1実施形態の振動波モータの振動子を説明する図である。
図4】振動波モータの駆動装置を説明するブロック図である。
図5】(a)は、振動波モータの駆動信号の位相差に対する回転速度の関係を示すグラフであり、(b)は、振動波モータの駆動周波数に対する回転速度の関係を示すグラフである。
図6】第1実施形態の駆動装置の第1動作例の動作を説明するタイミングチャートである。
図7】第1実施形態の駆動装置の第1動作例の動作を説明するフローチャートである。
図8】本発明の第1実施形態の駆動装置の第2動作例の動作を説明するタイミングチャートである。
図9】本発明の第2実施形態のレンズ鏡筒を説明する図である。
図10】第2実施形態の振動波モータを説明する図である。
図11】第2実施形態の振動波モータの動作原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明にかかる電子カメラ1の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態の電子カメラ1を説明する図である。
電子カメラ1は、静止画及び動画撮影が可能なカメラであって、撮像光学系であるレンズ鏡筒20と、撮像素子30と、AFE(Analog front end)回路60と、画像処理部70と、音声検出部80と、操作部材90と、CPU100と、バッファメモリ110と、記録インターフェース120と、メモリ130と、モニタ140とから構成され、外部機器のPC150との接続が可能となっている。
【0010】
レンズ鏡筒20は、複数の光学レンズ群Lにより構成され、被写体像を撮像素子30の受光面に結像させる。図1では、複数の光学レンズ群Lを簡略化して、単レンズとして図示している。この光学レンズ群Lのうちの、後述するAF用の第3レンズ群L3(図2に図示)は、振動波モータ10により駆動される。
【0011】
撮像素子30は、受光面に受光素子が二次元的に配列されたCMOSイメージセンサなどによって構成される。撮像素子30は、レンズ鏡筒20を通過した光束による被写体像を光電変換してアナログ画像信号を生成する。
【0012】
アナログ画像信号は、AFE回路60に入力される。AFE回路60は、アナログ画像信号に対するゲイン調整(ISO感度に応じた信号増幅)を行う。具体的には、CPU100からの感度設定指示に応じて、撮像感度を所定範囲内で変更する。AFE回路60は、さらに、内蔵するA/D変換回路によってアナログ処理後の画像信号をデジタルデータに変換する。そのデジタルデータは、画像処理部70に入力される。
【0013】
画像処理部70は、デジタル画像データに対して、各種の画像処理を行う。
バッファメモリ110は、画像処理部70による画像処理の前工程や後工程での画像データを一時的に記録する。
【0014】
音声検出部80は、マイクと信号増幅部とから構成され、主に動画撮影時に被写体方向からの音声を検出して取り込み、そのデータをCPU100へ伝達する。
【0015】
操作部材90は、モードダイヤル、十字キー、決定ボタンやレリーズボタンを示し、各操作に応じた操作信号をCPU100へ送出する。静止画撮影や動画撮影の設定は、該操作部材90により設定される。
【0016】
CPU100は、不図示のROMに格納されたプログラムを実行することによって電子カメラ1が行う動作を統括的に制御する。例えば、AF(オートフォーカス)動作制御、AE(自動露出)動作制御、オートホワイトバランス制御などを行う。
【0017】
記録インターフェース120は、不図示のコネクタを有し、該コネクタにメモリカード121等の記録媒体が接続され、接続された記録媒体に対して、データの書き込みや、記録媒体からのデータの読み込みを行う。
【0018】
メモリ130は、画像処理した一連の画像データを記録する。本実施形態の電子カメラ1においては、動画に対応した画像を取り込む。
モニタ140は、液晶パネルによって構成され、CPU100からの指示に応じて、操作メニュー、静止画像及び動画などを表示する。
【0019】
次に、レンズ鏡筒20について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態のレンズ鏡筒20を説明する図である。図3は、本発明の第1実施形態の振動波モータ10の振動子11を説明する図である。
レンズ鏡筒20は、レンズ鏡筒20の外周部を覆う外側固定筒31と、外側固定筒31よりも内周側に位置する内側固定筒32と、を備え、さらに外側固定筒31と内側固定筒32との間に振動波モータ10を備える。
【0020】
内側固定筒32には、被写体側から第1レンズ群L1、第2レンズ群L2、AF環34に保持されたAFレンズである第3レンズ群L3、第4レンズ群L4が配置されている。第1レンズ群L1、第2レンズ群L2及び第4レンズ群L4は、内側固定筒32に固定されている。第3レンズ群L3は、AF環34が移動することにより内側固定筒32に対して移動可能に構成される。
【0021】
図2に示すように、振動波モータ10は、振動子11、移動子15、加圧部材18等を備え、振動子11側を固定とし、移動子15を回転駆動する形態となっている。
振動子11について説明する。図3に示すように、振動子11は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する圧電素子や電歪素子等を例とした電気−機械変換素子(以下、圧電体13と称する)と、圧電体13を接合した弾性体12とから構成されている。振動子11には進行波が発生するようにされているが、本実施形態では一例として9波の進行波が発生される。
【0022】
弾性体12は、共振先鋭度が大きな金属材料から成り、形状は、円環形状である。弾性体12における圧電体13が接合される反対面は、溝が切られた櫛歯部12aとなっており、突起部分(溝がない箇所)の先端面が駆動面となり移動子15に加圧接触される。振動波モータ10は、圧電体13の励振により駆動面に発生する駆動力を用いて移動子15を駆動することによって第3レンズ群L3を駆動する。溝を切る理由は、進行波の中立面をできる限り圧電体13側に近づけ、これにより駆動面の進行波の振幅を増幅させるためである。溝の切っていない部分を本実施形態ではベース部12bと呼ぶ。
【0023】
ベース部12bの櫛歯部12aとは反対面に圧電体13が接合されている。弾性体12の駆動面には潤滑性の表面処理がなされている。圧電体13は、円周方向に沿って2つの相(A相、B相)に分かれており、各相においては、1/2波長毎に分極が交互となった要素が並べられていて、A相とB相との間には1/4波長分間隔が空くようにしてある。
【0024】
圧電体13は、一般的には通称PZTと呼ばれるチタン酸ジルコン酸鉛といった材料から構成されているが、近年では環境問題から鉛フリーの材料であるニオブ酸カリウムナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸ナトリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマスナトリウム、チタン酸ビスマスカリウム等から構成されることもある。
【0025】
図2に示すように、圧電体13の下には、不織布16、加圧板17、加圧部材18が配置されている。不織布16は、フェルトを例としたものであり、圧電体13の下に配置されていて、振動子11の振動を加圧板17や加圧部材18に伝えないようにしてある。
【0026】
加圧板17は、加圧部材18の加圧を受けるようにされている。加圧部材18は、皿バネにより構成され、加圧板17の下に配置されていて、加圧力を発生させるものである。本実施形態では、加圧部材18を皿バネとしたが、皿バネでなくともコイルバネやウェーブバネでも良い。加圧部材18は、押さえ環19が固定部材14に固定されることで、保持される。
【0027】
移動子15は、アルミニウム等の軽金属からなり、摺動面の表面15aには耐摩耗性向上のための摺動材料等の表面処理がなされている(図3参照)。
【0028】
移動子15の上には、移動子15の縦方向の振動を吸収するために、ゴム等により形成された振動吸収部材23が配置され、その上には、出力伝達部材24が配置されている。
【0029】
出力伝達部材24は、固定部材14に設けられたベアリング25により、加圧方向と径方向とを規制し、これにより、移動子15の加圧方向と径方向とが規制されるようにされている。
【0030】
出力伝達部材24は、突起部24aがあり、そこからカム環36に接続されたフォーク35が嵌合している。カム環36は、出力伝達部材24の回転とともに回転される。
【0031】
カム環36には、周方向に対して斜めにキー溝37が切られている。また、AF環34の外周側には、固定ピン38が設けられている。固定ピン38は、キー溝37に嵌合していて、カム環36が回転駆動することにより、AF環34は光軸直進方向に駆動され、所望の位置に停止できるようになっている。
【0032】
固定部材14には、押さえ環19がネジにより取り付けられている。押さえ環19を固定部材14に取り付けることで、出力伝達部材24から移動子15、振動子11、加圧部材18までを一つのモータユニットとして構成できる。
【0033】
次に、駆動装置40Aについて説明する。
図4は、振動波モータ10の駆動装置40Aを説明するブロック図である。駆動装置40Aは、基板40(図2参照)に設けられている。駆動装置40Aは、図4に示すように、振動波モータ10に接続されており、振動波モータ10に設けられた回転検出部46から振動波モータ10の回転数を受信するとともに、振動波モータ10の制御も行う。
【0034】
駆動装置40Aは、駆動制御部41と、発振部42と、移相部43と、増幅部44とを備える。また、駆動装置40Aの駆動制御部41には、振動波モータ10に取り付けられた回転検出部46、コントラスト検出部39、及び、動画撮影モードか静止画撮影モードかを選択できる撮影設定部47が接続されている。
【0035】
駆動制御部41は、レンズ鏡筒20内又はカメラ1本体のCPU100からの駆動指令を基に振動波モータ10の駆動を制御する。
発振部42は、駆動制御部41の指令により所望の周波数の駆動信号を発生する。駆動信号は、電位ゼロを基準として、+方向及び−方向で非対称形状となっている。
移相部43は、該発振部42で発生した駆動信号を位相の異なる2つの駆動信号に分ける。
増幅部44は、移相部43によって分けられた2つの駆動信号をそれぞれ所望の電圧に昇圧する。
増幅部44からの2つの駆動信号は、振動波モータ10に伝達され、この2つの駆動信号の印加により振動子11に進行波が発生し、移動子15が駆動される。
【0036】
回転検出部46は、光学式エンコーダや磁気エンコーダ等により構成され、移動子15の駆動によって駆動された被駆動物の位置や速度を検出し、検出値を電気信号として駆動制御部41に伝達する。
コントラスト検出部39は、被写体像のコントラストを検出する。コントラスト検出部39は、例えば、被写体が現在のレンズの焦点位置の範囲内か、+方向にあるか、−方向にあるか、どの程度ずれているか、を判定する。コントラスト検出部39により検出されたコントラストは、電気信号として駆動制御部41に伝達される。
【0037】
駆動制御部41は、レンズ鏡筒20内またはカメラ1本体のCPU100からの駆動指令を基に、振動波モータ10の駆動を制御する。駆動制御部41は、回転検出部46からの検出信号を受信すると、その値を基に、位置情報と速度情報とを得て、目標位置に位置決めされるように発振部42の周波数、移相部43の位相差、及び増幅部44の電圧を制御する。
【0038】
また、駆動制御部41は、レンズやカメラより撮影情報(撮影設定部47により選択された、静止画モード/動画モード等)が伝達されるようになっている。駆動制御部41は、このレンズやカメラより撮影情報を基に、駆動信号の周波数や位相差をきめ細かに制御する。具体的には、駆動制御部41は、撮影設定部47が動画撮影モードを選択した場合に、2つの駆動信号の電圧を一定に維持した状態で、2つの駆動信号の位相差を切り替えるとともに、2つの駆動信号の周波数を切り替えられた位相差に対応させて切り替えることで、振動波モータ10の速度を変更可能である。
また、駆動制御部41は、コントラスト検出部39により検出されたコントラストに基づいて、2つの駆動信号の周波数を切り替える。
【0039】
本実施形態では説明を簡易にするため、コントラスト検出部39の情報及び撮影設定部47の情報が直接駆動制御部41に伝達される構成としているが、これに限定されない。例えば、コントラスト検出部39の情報や撮影設定部47の情報が一旦カメラのCPUに伝わり、その後、レンズ内の駆動制御部41へ伝わるように構成されていてもよい。
【0040】
次に、駆動装置40Aにおける振動波モータ10の駆動及び制御について説明する。
まず、駆動制御部41には、レンズ鏡筒20内又はカメラ1本体のCPU100からの目標位置が伝達される。発振部42から駆動信号が発生し、その信号は移相部43により90度位相の異なる2つの駆動信号に分割され、増幅部44により所望の電圧に増幅される。駆動制御部41は、振動波モータ10に2つの駆動信号を与える。
【0041】
2つの駆動信号は、振動波モータ10の圧電体13に印加され、圧電体13は励振され、その励振によって弾性体12には9次の曲げ振動が発生する。圧電体13はA相とB相とに分けられており、2つの駆動信号はそれぞれA相とB相に印加される。A相から発生する9次曲げ振動とB相から発生する9次曲げ振動とは位置的な位相が1/4波長ずれるようになっており、また、A相駆動信号とB相駆動信号とは90度位相がずれているため、2つの曲げ振動は合成され、9波の進行波となる。位相差の値+90度又は−90度は、理想的な値であり、その中間値でも進行波の形状は乱れているが、進行波は生じている。進行波の波頭には楕円運動が生じている。従って、駆動面に加圧接触された移動子15は、この楕円運動によって摩擦的に駆動される。
【0042】
移動子15の駆動により駆動された被駆動体には、光学式エンコーダが配置されていて、そこから、電気パルスが発生し、駆動制御部41に伝達される。駆動制御部41は、この信号を基に、現在の位置と現在の速度を得ることが可能となり、これらの位置情報、速度情報及び目標位置情報を基に、発振部42の駆動周波数を制御する。
【0043】
また、AF環34を正方向に駆動する場合には、移相部43での2つの駆動信号(周波電圧信号)の位相差を+値、例えば+90度にし、AF環34を逆方向に駆動する場合には、移相部43での2つの駆動信号(周波電圧信号)の位相差を−値、例えば−90度にすれば良い。
【0044】
一方、駆動制御部41は、現在の撮影モードが静止画モード/動画モードであるかの情報を基に、静止画モードの場合には、発振部42の駆動周波数を制御し、動画モードの場合には、発振部42の駆動周波数および移相部43の位相差を制御する。特に、小刻みにAF用の第3レンズ群L3を前後させるウォブリング動作においては、位相差を変更して、位置や速度を制御する。ウォブリング動作とは、AF用のレンズを小刻みに前後させて焦点位置を被写体に追従させる動作である。
【0045】
図5(a)は、振動波モータの駆動信号の位相差に対する回転速度の関係を示すグラフであり、図5(b)は、振動波モータの駆動周波数に対する回転速度の関係を示すグラフである。図5(a)に示すように、回転速度は、2つの駆動信号の位相差が+90度では正回転の最大速度、2つの駆動信号の位相差が−90度では逆回転の最大速度となり、その中間の位相差は、中間的な速度値を示す。また、図5(b)に示すように、駆動周波数は、小さくしていくと回転速度が大きくなり、周波数を大きくすると回転速度は低下していき、0となる。
例えば、2つの駆動信号の位相差を+90度とした時、駆動周波数が小さい方が、回転速度は高くなる。
【0046】
(第1動作例)
次に、本発明の第1実施形態の第1動作例について、動画モードが選択された場合の駆動装置40Aにおける振動波モータ10の駆動についてタイミングチャートに基づいて説明する。図6は、第1実施形態の駆動装置40Aの第1動作例の動作を説明するタイミングチャートである。
本実施形態において動画モードが選択された場合、駆動周波数、駆動電圧、位相差、振動波モータ10の回転速度の関係を時系列に説明する。
本実施形態では、動画モードが選択されていた場合には、駆動周波数はf0(最大周波数)、駆動電圧はV0(最小電圧)と設定される。
t0において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を+90度に設定して、駆動信号をONにする。
t1において、駆動装置40Aは、駆動電圧を増加させる。
t2において、駆動装置40Aは、駆動電圧をV1に設定する。
t3において、駆動装置40Aは、駆動周波数を最大周波数f0より挿引を開始する。
t4の直後のt4’において、駆動装置40Aは、駆動周波数が挿引されている途中で、振動波モータ10を駆動開始し、駆動周波数を周波数f1に設定する。
【0047】
動画モードの場合には、小刻みにAF用の第3レンズ群L3を前後させるウォブリング動作を行う。本実施形態の場合には、20Hzの間隔としている。
t4〜t5において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を+90度に設定して、正回転で回転させて、速度をVとする。
t5〜t6において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を0度に設定して、Wbe位置でのコントラストをコントラスト検出部39により検出する。
t6〜t7において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を−90度に設定して、周波数をf1より小さいf2として、周波数f2で逆回転駆動させ、速度を−2V(Vの2倍)とする。
ウォブリング動作の逆転時の速度を正回転の2倍とするのは、レンズ位置の移動量が2倍であるためである。
【0048】
t7〜t8において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を0度に設定して、Waf位置でのコントラストを検出する。
t8〜t9において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を+90度に設定して、周波数f1で正回転駆動させて、速度をVとする。
t9〜t10において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を0度に設定して、W0位置でのコントラストを検出する。
【0049】
以下繰り返しで、ウォブリング動作を行う。ウォブリング動作の1サイクル(例えば、t4とt10との間)は、20Hzの間隔(=約50msec)である。
t9〜t10間において、Wbe位置、Waf位置、およびW0位置のコントラストの検出結果により、被写体の位置を算出し、次のウォブリング動作の1サイクルの駆動周波数を決める。つまり、駆動制御部41は、コントラスト検出部39によって検出された、ウォブリング動作における所定の1サイクルのコントラストに基づいて、所定の1サイクルの次の1サイクルにおける2つの駆動信号の周波数を、AF用の第3レンズ群L3の焦点位置を被写体に追従させるように切り替える。
【0050】
決めるパラメータとしては、t10〜t11間の周波数fs、t12〜t13間の周波数fb、及び、t14〜t15間の周波数fs2である。
例えば、t4〜t10間のウォブリング動作の1サイクルでのコントラスト検出の結果において、被写体はウォブリング振幅の間(+1〜−1)にあるものと判定された場合、次のウォブリング動作の1サイクルにおいても、ウォブリング振幅を+1〜−1として、周波数fs=f1、周波数fb=f2、周波数fs2=f1とする。
なお、図6での被写体検出結果では、コントラストが良い方を大きい値で示すようにしてある(コントラストが良い=焦点が合っている=1としており、焦点が合っていない程、数値が小さくなるように示してある。)。
【0051】
また、別のケースとして、t17〜t22間のウォブリング動作の1サイクルでのコントラスト検出の結果、被写体は現在のレンズ位置から+方向にあるものと判定された場合、次のウォブリング動作の1サイクルは、t22〜t23での速度を3Vとして、ウォブリング振幅の3倍のレンズの移動を行う。その場合、周波数fs=f3(f2よりさらに小さい周波数)、周波数fb=f2、周波数fs2=f1とする。
【0052】
さらに、別のケースとして、t40〜t45のウォブリング動作の1サイクルでのコントラスト検出の結果、被写体は現在のレンズ位置から大きく+方向にあるものと判定された場合、次のウォブリング動作の1サイクルは、t40〜t41での速度は4Vとして、ウォブリング振幅の3倍のレンズの移動を行う。その場合、周波数fs=f4(f3よりさらに小さい周波数)、周波数fb=f2、周波数fs2=f1とする。
【0053】
ここで、レンズを駆動させようとすると、振動波モータに駆動信号を開始する時の駆動信号ON時の微小の音が、動画撮影時に音声を検出するマイクに取り込まれてしまうという問題点が生じる可能性がある。その原因は、振動波モータに加える駆動信号を0Vからある電圧にステップ的に変化させた瞬間、ステータ(振動子)から様々な周波数の音が発生し、その可聴音が音声に取り込まれるからである。その音の音圧は、電圧に大きさに依存しており、駆動信号の電圧が小さい揚合には、音圧が下がる傾向が見られる。
この点については、駆動信号ONの瞬間は駆動信号電圧の電圧値を小さくしておき、ステータ(振動子)から発生する音の音圧をマイクの感度以下にし、駆動信号ON以降に、駆動電圧を正規の電圧(定格電圧)に戻すことで対策がとれる。
【0054】
しかし、動画撮影時には、AFレンズを前後させるウォブリング動作をする必要があり、正方向の駆動する時と逆方向に駆動する時との間に、一旦停止して、位相差を変えなくてはならない。この場合、ステータ(振動子)から発生する微小な音を防止するためには、従来の制御方法では、2つの駆動信号の位相差+90度に設定して、駆動電圧をV0からV1に変化させて、AF環34を正回転駆動させる。次に、駆動電圧をV1からV0に変化させて、2つの駆動信号の位相差を−90度に設定する。さらに、駆動電圧をV0からV1に変化させて、AF環34を逆回転駆動させる。次に、駆動電圧をV1からV0に変化させて、2つの駆動信号の位相差を+90度に設定する。以下繰り返しを行うため、非常に煩雑な動作となってしまう。
【0055】
本実施形態では、電圧を一定に維持した状態で、2つの駆動信号の位相差を3段階に切り替え(90度、0度、−90度)、その位相差に応じた周波数を設定することでウォブリング動作を行うようにする。なお、2つの駆動信号の位相差の切り替えは、微小音発生防止に対して、徐々に位相差を連続的に切り替えることが好適である。
このようにすることで、従来のように煩雑に駆動する必要もなく、静寂な駆動が可能となる。
【0056】
なお、静止画モードが選択されている場合には、従来のように、電圧を定格電圧V1に設定してから駆動信号をONにして、駆動周波数の挿引開始をする。また、位置や速度制御も、静止画モードの場合には、ウォブリング動作をする必要がないため、駆動周波数または駆動電圧による制御となる。
なお、駆動信号ON時の音は、僅かであり、音声マイクが振動波モータの至近に設けられているため音として検知されてしまうが、操作している人にはほとんど聞こえない音である。
【0057】
以下、第1実施形態の駆動装置40Aの第1動作例の動作についてフローチャートに基づいて説明する。
図7は、第1実施形態の駆動装置40Aの第1動作例の動作を説明するフローチャートである。
まず、レンズの駆動を開始する。
S101において、駆動装置40Aは、動画モードであるか静止画モードであるかを判定する。動画モードの場合にはS102へ進む。駆動装置40Aは、静止画モードの揚合にはS201へ進み、ウォブリング動作を行なわずに、静止画撮影時の駆動動作を行う。
S102において、駆動装置40Aは、電圧をV0に設定するとともに、2つの駆動信号の位相差を+90°に設定する。
SI03において、駆動装置40Aは、駆動信号をONにする。
SI04において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の電圧を増加させる。
Sl05において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の電圧をV1に設定する。
S106において、駆動装置40Aは、周波数の挿引を開始して周波数をflに設定する。
これにより、移動子15が駆動して、AF環34が正方向に駆動される。
【0058】
S107において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を0°に設定する。これにより、移動子15の駆動が停止する。
S108において、駆動装置40Aは、Wbe位置及びコントラストを検出する。
Sl09において、駆動装置40Aは、周波数をf2に設定する。
S110において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を−90°に設定する。
これにより、移動子15が駆動して、AF環34が逆方向に駆動される。
【0059】
S111において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を0°に設定する。これにより、移動子15の駆動が停止する。
Sl12において、駆動装置40Aは、Waf位置及びコントラストを検出する。
Sl13において、駆動装置40Aは、周波数をf1に設定する。
S114において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を90°に設定する。
これにより、移動子15が駆動してAF環34が正方向に駆動される。
【0060】
S115において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を0°に設定する。これにより、移動子15の駆動が停止する。
S116において、駆動装置40Aは、W0位置及びコントラストを検出する。
Sl17において、駆動装置40Aは、Wbe位置,Waf位置,W0位置及び各コントラスト情報より、被写体位置を算出する。
【0061】
S118において、周波数fs、fbを算出する。
S119において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を+90°に設定する。
駆動装置40Aは、周波数をfsに設定する。例えば、図6におけるt17〜t22間のウォブリング動作の1サイクルでのコントラストを検出した結果において、被写体は現在のレンズ位置から+方向にあるものと判定された時には、次のウォブリング動作の1サイクルは、f3(f2よりさらに小さい周波数)と設定する。これにより、移動子15が駆動してAF環34が正方向に駆動される。
【0062】
S120において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相を0°に設定する。これにより移動子15の駆動が停止する。
S121において、駆動装置40Aは、Wbe位置及びコントラストを検出する。
S122において、駆動装置40Aは、周波数をfbに設定する。例えば、図6におけるt17〜t22間のウォブリング動作の1サイクルでのコントラスト検出結果において、駆動装置40Aは、駆動周波数をf2に設定する。
【0063】
S123において、2つの駆動信号の位相差を−90°に設定する。これにより、移動子15が駆動してAF環34が逆方向に駆動される。
S124において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を0°に設定する。これにより、移動子15の駆動が停止する。
S125において、駆動装置40Aは、Waf位置及びコントラストを検出する。
S126において、駆動装置40Aは、周波数をfs2(=fl)に設定する。
S127において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を90°に設定する。これにより、移動子15が駆動してAF環34が正方向に駆動される。
【0064】
S128において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を0°に設定する。これにより、移動子15の駆動が停止する。
S129において、駆動装置40Aは、W0位置及びコントラストを検出する。
S130において、駆動装置40Aは、Wbe位置,Waf位置,W0位置及び各コントラスト情報より、被写体位置を算出する。
S131において、駆動装置40Aは、AF環34の駆動が終了か否か判定する。
AF環34の駆動が終了でない場合には、S118へ戻り、次のウォブリング動作を行う。撮影終了指令があり、駆動終了時には、停止させる場合には、位相差の切り替え制御を終わらせ、周波数をf0へ高周波側に掃引して振動波モータの動きを停止する。そして、電圧をV1からV0へ徐々に減少させ、その後、駆動信号をOFFとする。
【0065】
本実施形態においては、S119〜S130にてレンズ位置において3箇所のコントラストを検出して被写体位置を推定し、その情報に応じてS118にて周波数fs、fbの算出をする。A相とB相との位相差を3段階に切り替えること(90度、0度、−90度)と、周波数fs、fb、fs2の3つの駆動周波数を設定することにより、振動波モータ10のウォブリング動作を可能としている。
【0066】
(第2動作例)
次に、本発明の第1実施形態の第2動作例について説明する。第2動作例は第1動作例とレンズ鏡筒、振動波モータ及び駆動装置40Aの構成は同様であるためその説明は省略する。第1動作例と第2動作例とは、駆動装置40A内における動作が異なる。第2動作例は、被写体の位置がレンズ位置の+方向に動き、途中から一方向に動いた場合におけるものである。
【0067】
第2動作例の駆動装置40Aにおける振動波モータ10の駆動についてタイミングチャートに基づいて説明する。図8は、本発明の第1実施形態の駆動装置40Aの第2動作例の動作を説明するタイミングチャートである。
第2動作例について、動画モードが選択された場合において、被写体の位置がレンズ位置の+方向に動き、途中から一方向に動いた場合の挙動について時系列に説明する。
【0068】
本実施形態では、動画モードが選択された場合には、駆動周波数はf0(最大周波数)、駆動電圧はV0(最小電圧)と設定される。
t0において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を+90度に設定して、駆動信号をONにする。
t1において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の駆動動電圧を増加させる。
t2において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の駆動電圧をV1に設定する。
t3において、駆動装置40Aは、駆動周波数を最大周波数f0より挿引を開始する。
t4の直後のt4’において、駆動装置40Aは、駆動周波数が挿引されている途中で、振動波モータ10を駆動開始し、駆動周波数を周波数f1に設定する。
【0069】
動画モードの場合には、小刻みにAFレンズを前後させるウォブリング動作を行う。本実施形態の場合には、20Hzの間隔としている。
t4〜t5において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を+90度に設定して、正回転で回転させ、速度をVとする。
t5〜t6において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を0度に設定して、Wbe位置でのコントラストを検出する。
t6〜t7において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を−90度に設定して、周波数f2で逆回転駆動して、速度を−2V(Vの2倍)とする。速度を大きくする分、周波数は、f1より小さいf2とした。
ウォブリング動作の逆転時の速度が正回転の2倍なのは、レンズ位置の移動量が2倍であるためである。
【0070】
t7〜t8において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を0度に設定して、Waf位置でのコントラストを検出する。
t8〜t9において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を+90度に設定して、周波数f1で正回転駆動して、速度をVとする。
t9〜t10において、駆動装置40Aは、2つの駆動信号の位相差を0度に設定して、W0位置でのコントラストを検出する。
【0071】
以下繰り返しで、ウォブリング動作を行う。ウォブリング動作の1サイクル(例えば、t4とt10との間)は20Hzの間隔(=約50msec)である。
t9〜t10間において、Wbe位置、Waf位置、およびW0位置のコントラストの検出結果により、被写体の位置を算出し、次のウォブリング動作を決める。
決めるパラメータとしては、t10〜t11間の周波数fs、t12〜t13間の周波数fb、t14〜t15間の周波数fs2である。
【0072】
例えば、t4〜t10間のウォブリング動作の1サイクルでのコントラスト検出の結果において、被写体はウォブリング振幅の間(+1〜−1)にあるものと判定された場合、次のウォブリング動作の1サイクルにおいても、ウォブリング振幅は+1〜−1として、周波数fs=f1、周波数fb=f2、周波数fs2=f1とする。
なお、図8での被写体検出結果では、コントラストが良い方を大きい値で示すようにしてある(コントラストが良い=焦点が合っている=1としており、焦点が合っていない程数値が小さくなるように示してある)。
【0073】
また、被写体がレンズの+方向に移動した場合、例えば、t10〜t16間のウォブリング動作の1サイクルでのコントラスト検出の結果、被写体は現在のレンズ位置から+方向にあるものと判定された場合、次のウォブリング動作の1サイクルは、t16〜t17での速度を3Vとして、ウォブリング振幅の3倍のレンズの移動を行う。その場合、周波数fs=f3(f2よりさらに小さい周波数)、周波数fb=f2、周波数fs2=f1とする。
【0074】
次に、被写体が+方向から−方向に移動した場合、t22〜t27のウォブリング動作の1サイクルでのコントラスト検出の結果、被写体は現在のレンズ位置から大きく−方向にあるものと判定された場合、次のウォブリング動作の1サイクルは、t30〜t31での速度を4Vとして、ウォブリング振幅の4倍のレンズの移動を行う。その場合、周波数fs=f1、周波数fb=f4(f3よりさらに小さい周波数)、周波数fs2=flとする。
【0075】
基本的には、前述の第1動作例の通り、図6図7で説明した考え方やフローチャートの説明と同様である。即ち、動画撮影時のウォブリング動作においては、レンズ位置の3箇所のコントラストを検出して被写体位置を推定し、その情報に応じて周波数fs、fbを算出する。そして、A相とB相との位相差を3段階に切り替えること(約90度、0度、−90度)と、周波数fs、fb、fs2の3つの駆動周波数の設定と、により、被写体が、途中にレンズの+方向に移動した場合にでも、−方向に移動した場合にでも対応できる。
また、被写体が現在の位置から大きくずれていると判定された場合には、周波数fs、fbに適正な値を入れることで(図6図8のf4よりもっと小さい周波数値に設定することで)、被写体に合焦させることが可能となる。
【0076】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)撮影設定部47が動画撮影モードを選択した場合に、2つの駆動信号の電圧を一定に維持した状態で、2つの駆動信号の位相差を切り替えるとともに、2つの駆動信号の周波数を切り替えられた位相差に対応させて切り替えることで、振動波モータ10の速度を変更することができる。これにより、複雑な駆動制御をすることなく、動画撮影時における振動波モータ10の作動音を低減することができる。
【0077】
(2)ウォブリング動作における所定の1サイクルのコントラストに基づいて、所定の1サイクルの次の1サイクルにおける2つの駆動信号の周波数を、AF用の第3レンズ群L3の焦点位置を被写体に追従させるように切り替えるようにした。これにより、振動波モータ10は、被写体の動作に追従させてAF用の第3レンズ群L3を動作させることができ、かつ、振動波モータ10をウォブリング動作で駆動させる際の作動音を低減することができる。
【0078】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態は上述の実施形態とレンズ鏡筒及び駆動装置40Aの構成は同様であるため、その説明は省略する。また、動画撮影時における駆動装置40Aの動作についても第1実施形態と同様である。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、主に、振動波モータ50の構成である。
【0079】
次に、第2実施形態のレンズ鏡筒20Aの構成を説明する。
図9は、本発明の第2実施形態のレンズ鏡筒20Aを説明する図である。図10は、第2実施形態の振動波モータ50を説明する図である。図11は、第2実施形態の振動波モータ50の動作原理を説明する図である。
【0080】
図9に示すように、レンズ鏡筒20Aは、レンズ鏡筒20Aの外周部を覆う外側固定筒31と、外側固定筒31よりも内周側における被写体側に位置する内側第1固定筒32Aと、外側固定筒31よりも内周側における像側に位置する内側第2固定筒32Bと、を備え、さらに外側固定筒31と内側第1固定筒32Aとの間に振動波モータ50を備える。
【0081】
内側第1固定筒32Aには、被写体側から第1レンズ群L1、第2レンズ群L2が固定されている。また、内側第2固定筒32Bには、第4レンズ群L4が固定されている。第2レンズ群L2と第4レンズ群L4との間には、AF環34に保持されたAFレンズである第3レンズ群L3が配置されている。
【0082】
図9に示すように、振動波モータ50は、振動子51、移動子55、加圧部材57等を備え、移動子55を移動して駆動する形態となっている。
振動子51は、固定部材54に設けられた支持ピン58により振動子51の長手方向に支持され、加圧方向には自由度があるように構成されている。
加圧部材57は、固定部材54と振動子51との間に設けられ、振動子51を移動子55に加圧接触する。
固定部材54は、内側第1固定筒32Aに取り付けられる。固定部材54を内側第1固定筒32Aに取り付けることで、移動子55、振動子51、加圧部材57までを、一つのモータユニットとして構成できるようになる。
【0083】
移動子55は、アルミニウムといった軽金属からなり、摺動面の表面には耐摩耗性向上のための摺動メッキが設けられている。また、移動子55は、リニアガイド61に固定され、リニアガイド61は内側第1固定筒32Aに支持され、移動子55は内側第1固定筒32Aに対して直線方向に移動可能となっている。
移動子55の端部55Aには、AF環34に接続されたフォーク62が嵌合しており、移動子55の駆動によりAF環34が直進駆動される。
【0084】
AF環34は、内側第1固定筒32A及び内側第2固定筒32Bに設けられた直線レール63に沿って可動な構造となっている。直線レール63には、AF環34に設けられたガイド部64が嵌合し、移動子55の直進駆動に伴って、光軸方向に直進方向に駆動され、所望の位置に停止できるようになっている。
【0085】
振動子51は、図10及び図11に示すように、圧電体53、金属製の弾性体52および出力取出用の突起部52Aから構成される。弾性体52の設計は、縦1次振動と曲げ4次振動との共振周波数が一致するようにする。圧電体53にこの周波数の電圧(駆動信号)を加え、かつ双方の振動の位相を90°ずらすと、図11に示すように、突起部52Aには励起された縦振動と曲げ振動との合成により楕円運動が生じる。突起部52Aは移動子55に加圧接触されているので、摩擦により駆動力が生じる。突起部52Aには耐摩耗性材が用いられており、摩擦による摩耗を抑えている。
【0086】
圧電体53は、一般的には通称PZTと呼ばれるチタン酸ジルコン酸鉛といった材料から構成されているが、近年では環境問題から鉛フリーの材料であるニオブ酸カリウムナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸ナトリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマスナトリウム、チタン酸ビスマスカリウム等から構成されることもある。
【0087】
第2実施形態においては、振動波モータ50は、リニア型の振動波モータである。しかし、第2実施形態の振動波モータ50においても、周波数、電圧、2つの駆動信号の位相差を制御して、速度制御することができるため、前述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
また、第2実施形態においては、第1実施形態の円環型超音波モータを搭載した場合のように、回転運動から直進運動に変換する時に生じる損失がなくなるため、変換効率が向上する。そのため、駆動システム全体として効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0089】
1:カメラ、10:振動波モータ、13:圧電体、20:レンズ鏡筒、39:コントラスト検出部、41:駆動制御部、47:撮影設定部、50:振動波モータ、53:圧電体、L3:第3レンズ群
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
図11