【実施例】
【0038】
以下に、本発明の実施例を比較例とともに具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
平均粒径5.1μmの純度99.9重量%の酸化ネオジム粉末4.34g、酸化銅粉末0.068g、粒径が10〜70μmの粉末が全体の94%を占める純度99重量%の鉄粉7.07g、および−330メッシュが全体の99.8%を占めるB含有量19.1重量%のフェロボロン粉末0.78gを自動擂潰機で10分混合し、この混合物にさらに粒度4メッシュ(タイラ−メッシュ)以下の純度99重量%の粒状金属カルシウム1.81gを添加して混合した。酸化銅粉末の量は、目的とする合金粉末に対してCu換算で0.5重量%となるようにした。
得られた混合物を鉄坩堝に入れ、ロータリ−ポンプで5分間減圧した後、Arガスを供給して大気圧まで復圧し、Arガス気流中で約3時間かけて1050℃まで昇温し、その温度で5時間保持し、その後室温まで冷却した。
反応生成物を反応容器から取り出し、純水中に投入して30分間攪拌して水中崩壊した。反応生成物中に含まれる残留金属カルシウム、CaOおよびCa(OH)
2を除去するため、pH7〜8になるまでデカンテ−ションによる洗浄を繰り返し行った。次に、2Nの酢酸を用いて15分間洗浄した後、再度純水で上澄み液の伝導度が0.1mS/cmになるまでデカンテ−ションによる洗浄を繰り返し行った。その後、上澄み液を除去し、AP−2(変性アルコール)で置換してから真空乾燥を行い、合金粉末aを得た。
得られた合金粉末aは、平均粒径が11.7μmであり、粉末X線解析の結果、主相がNd
2Fe
14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、
図1〜
図4に示すようにCuはNdと共に主相Nd
2Fe
14B粒子間の粒界に存在し、Nd
2Fe
14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
【0040】
(実施例2)
実施例1において、還元拡散時の反応温度を1025℃、保持時間を4時間とした以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る合金粉末bを得た。
得られた合金粉末bは、粉末X線解析の結果、主相がNd
2Fe
14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd
2Fe
14B粒子間の粒界に存在し、Nd
2Fe
14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
【0041】
(実施例3)
実施例1において、還元拡散時の保持時間を3時間とした以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る合金粉末cを得た。
得られた合金粉末cは、粉末X線解析の結果、主相がNd
2Fe
14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd
2Fe
14B粒子間の粒界に存在し、Nd
2Fe
14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
【0042】
(実施例4)
実施例1において、酸化銅の替わりに銅0.054g用い、粒状金属カルシウム1.78gとした以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る合金粉末dを得た。この銅粉末の量は、目的とする合金粉末に対してCu換算で0.5重量%となる。
得られた合金粉末dは、粉末X線解析の結果、主相がNd
2Fe
14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd
2Fe
14B粒子間の粒界に存在し、Nd
2Fe
14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
【0043】
(実施例5)
実施例1において、酸化銅粉末0.077gとした以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る合金粉末eを得た。この酸化銅粉末の量は、目的とする合金粉末に対してCu換算で0.6重量%となる。
得られた合金粉末eは、粉末X線解析の結果、主相がNd
2Fe
14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd
2Fe
14B粒子間の粒界に存在し、Nd
2Fe
14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
【0044】
(実施例6)
実施例1において、酸化ネオジウム粉末4.21g、粒状金属カルシウム1.76gとした以外は、実施例1と同様にして実施例6に係る合金粉末fを得た。
得られた合金粉末fは、粉末X線解析の結果、主相がNd
2Fe
14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd
2Fe
14B粒子間の粒界に存在し、Nd
2Fe
14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
【0045】
(実施例7)
実施例1において、さらに塩化カルシウム0.13gを添加した以外は、実施例1と同様にして実施例7に係る合金粉末gを得た。
得られた合金粉末gは、粉末X線解析の結果、主相がNd
2Fe
14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd
2Fe
14B粒子間の粒界に存在し、Nd
2Fe
14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
【0046】
(実施例8)
実施例1において、さらに塩化カルシウム0.20gを添加した以外は、実施例1と同様にして実施例8に係る合金粉末hを得た。
得られた合金粉末hは、粉末X線解析の結果、主相がNd
2Fe
14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd
2Fe
14B粒子間の粒界に存在し、Nd
2Fe
14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
【0047】
(実施例9)
実施例1において、酸化銅粉末の量をCu換算で0.007重量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして実施例9に係る合金粉末iを得た。
得られた合金粉末iは、粉末X線解析の結果、主相がNd
2Fe
14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd
2Fe
14B粒子間の粒界に存在し、Nd
2Fe
14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
【0048】
(実施例10)
実施例1において、酸化銅粉末の量をCu換算で0.05重量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして実施例10に係る合金粉末jを得た。
得られた合金粉末jは、粉末X線解析の結果、主相がNd
2Fe
14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd
2Fe
14B粒子間の粒界に存在し、Nd
2Fe
14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
【0049】
(実施例11)
実施例1において、酸化銅粉末の量をCu換算で1.0重量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして実施例11に係る合金粉末kを得た。
得られた合金粉末kは、粉末X線解析の結果、主相がNd
2Fe
14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd
2Fe
14B粒子間の粒界に存在し、Nd
2Fe
14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
【0050】
(実施例12)
実施例1において、さらに酸化アルミニウム粉末0.103g(目的とする合金粉末に対してAl換算で0.6重量%)添加した以外は、実施例1と同様にして実施例12に係る合金粉末lを得た。
得られた合金粉末lは、粉末X線解析の結果、主相がNd
2Fe
14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、
図8に示すようにCuはNdと共に主相Nd
2Fe
14B粒子間の粒界に存在し、Nd
2Fe
14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。一方、
図9に示すようにAlは粒子全体に散在していることが確認された。
【0051】
(実施例13)
実施例12において、さらに無水塩化カルシウム0.22g添加した以外は、実施例1と同様にして実施例13に係る合金粉末mを得た。
得られた合金粉末mは、粉末X線解析の結果、主相がNd
2Fe
14Bであった。また、その断面組織を反射電子像による解析を行った結果、CuはNdと共に主相Nd
2Fe
14B粒子間の粒界に存在し、Nd
2Fe
14Bの粒子内には固溶していないことが確認された。
【0052】
(比較例1)
実施例1において、還元拡散時の反応温度を850℃とした以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る合金粉末nを得た。
得られた合金粉末nは、粉末X線解析の結果、Nd
2Fe
14Bの他に、Fe、Nd
2O
3に由来するピ−クが認められたことから、断面SEM像による組織観察を行わなかった。
【0053】
(比較例2)
実施例1において、還元拡散時の保持時間を10分とした以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る合金粉末oを得た。
得られた合金粉末oは、粉末X線解析の結果、Nd
2Fe
14Bの他に、Fe、Nd
2O
3に由来するピ−クが認められたことから、断面SEM像による組織観察を行わなかった。
【0054】
以上、実施例1〜実施例13および比較例1、2の結果をまとめて表1に示す。
表1から明らかなように、本発明によるCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末の製造方法で製造されたCu含有希土類−鉄−硼素系合金粉末(実施例1〜実施例13)では、CuがNdと共に主相Nd
2Fe
14B粒子間の粒界に存在し、Alは粒子全体に散在していることが確認された。
一方、製造条件が本発明から外れた比較例1、2は、粉末X線解析の結果、原料のFe、Nd
2O
3に由来するピ−クが認められ、還元拡散不足が明らかである。
【0055】
【表1】