(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記導電粉を得るためには、使用するプラスチックビーズの粒度の均一化(分級)が必要なこと、高価な金属(レアメタル等)からなるメッキ材料を使用すること、メッキ廃液処理が必要になること等、多くの要件が求められる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、金属メッキをしなくても導電性が高く、簡便なプロセスで製造できる導電性粒子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、炭素系導電材料と、バインダー樹脂とから少なくとも構成され、平均粒径が50μm以下の導電性粒子であって、25℃において、導電性粒子の粒径を未加圧時の40%に圧縮する圧力が12MPa以下である、導電性粒子を提供する。本発明の導電性粒子は、炭素系導電材料と、炭素系導電材料を接合するバインダー樹脂とから少なくとも構成され、平均粒径が50μm以下の導電性粒子であって、炭素系導電材料に対するバインダー樹脂の質量比が1/99〜70/30である、導電性粒子であり得る。なお、炭素系導電材料に対するバインダー樹脂の質量比が1/99〜70/30であるとは、(バインダーの質量/炭素系導電材料の質量)の比が、1/99〜70/30であることを意味する。
【0009】
このような導電性粒子は、金属メッキをしなくても導電性が高く、簡便なプロセスで製造できるという特徴を有する。
【0010】
上述のフィルム状の導電性接続材料は、回路電極が形成された部材間に、回路電極が対向するようにして装着され、これを加熱・加圧すること(以上を「実装」と呼ぶことがある。)で、フィルム中に分散した導電粉が両回路電極の導通を可能にすると共に、両部材が接合される。この際、導電粉と回路電極との導電性を向上させるため、導電粉の回路電極に対する接触面積を大きくすることが重要なポイントになる。
【0011】
一般的には、導電粉と回路電極との接触面積の拡大は、導電粉の変形により達成される。ここで、接触面積とは回路電極と導電粉の接触している界面の面積を意味するが、導電粉の変形が大きすぎると、導電粉同士が接触する等して安定した導電性が得られない。一方で、導電粉として金属単独粉、黒鉛単独粉等を用いたフィルム状導電性接続材料については、導電粉の弾性率が大きいため、実装作業を行っても導電粉が変形し難く、回路電極との接触面積を拡大することは難しい。フィルム状の導電性接続材料の実装時の圧力を上げて、導電粉の変形を大きくすることも考えられるが、導電粉として金属単独粉を用いた場合は回路基板及び回路電極破壊や変形の危険性があり、導電粉として黒鉛単独粉を用いた場合は黒鉛単独粉の崩れによる導通不良や短絡の可能性があり、好ましくない。
【0012】
本発明の導電性粒子は、このような問題点を解決するものであり、粒子に対して金属メッキ層を設ける必要が無く、安価であるとともに、これを含有する導電性接続材料を電気回路上に装着して、加熱・加圧した際に、十分な回路との接触面積が得られ、導電性が優れる。
【0013】
バインダー樹脂は非水溶性弾性樹脂を含有することが好ましい。非水溶性弾性樹脂はエマルジョン又はラテックス粒子として提供することができることから、導電性粒子の製造の容易性の点から有利である。なお、弾性樹脂とは、動的粘弾性測定による弾性率が10
5〜10
9Pa(好ましくは10
5〜10
8Pa)である樹脂(動的弾性率の測定周波数は例えば10Hz)をいい、弾性樹脂はこの弾性率を、室温(25℃)で示すことが好ましい。
【0014】
バインダー樹脂は水溶性樹脂をさらに含有するようにしてもよい。水溶性樹脂は造粒助剤として機能し得ることから、導電性粒子の製造がより容易となり、変形に対する追随性に優れ、より導電性が高い導電性粒子が得られる。
【0015】
非水溶性弾性樹脂としては、ガラス転移温度(Tg)が−30℃〜110℃の樹脂が有用である。Tgがこのような温度範囲にあることで、実装時の変形に対する追随が容易となり、導電性接続材料に配合したときに、高い導電性を確保できる。なお、Tgは、溶媒を乾燥した自立フィルムを作成し、所定の大きさに裁断した試料を、示差走査熱量計(DSC)を用いて、開始温度−100℃、昇温速度10℃/分の条件で測定することができる。
【0016】
炭素系導電材料はカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックを用いることでレアメタルによる金属メッキを行わなくても良好な導通を図ることが可能になる。特に、ケッチェンブラックは中空構造を有し、炭素系導電材料として特に導電性が高いため有用である。
【0017】
本発明はまた、炭素系導電材料とバインダー樹脂とが媒体中で混合されており、炭素系導電材料に対するバインダー樹脂の質量比が1/99〜70/30である組成物を噴霧して、媒体を揮発させると共に、バインダー樹脂で炭素系導電材料を接合しつつ造粒する、導電性粒子の製造方法を提供する。
【0018】
この製造方法によれば、噴霧されて粒子状になった状態で、炭素系導電材料がバインダー樹脂で接合されることから、上述した特性を有した導電性粒子を容易に製造できる。
【0019】
この場合、製造される導電性粒子の平均粒径は50μm以下であることが好ましい。また、上述した理由から、バインダー樹脂が非水溶性弾性樹脂を含有すること、また水溶性樹脂をさらに含有することが好ましい。
【0020】
炭素系導電材料の平均粒径は10nm〜700nmであり、非水溶性弾性樹脂の平均粒径は50nm〜700nmであると、平均粒径が50μm以下であり且つ上記特性を有する導電性粒子を容易に製造することができる。ここで、平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(メディアン径D50)を意味する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、金属メッキをしなくても導電性が高く、簡便なプロセスで製造できる導電性粒子及びその製造方法を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施形態に係る導電性粒子は、炭素系導電材料と、炭素系導電材料を接合するバインダー樹脂とから少なくとも構成されている。
【0024】
導電性粒子を構成する炭素系導電材料は、導電性を有する炭素粒子であり、その平均粒径(一次粒子径)は、10〜700nmが好ましく、20〜400nmがより好ましく、30〜100nmが特に好ましい。
【0025】
炭素系導電材料としては、カーボンブラックが有用である。カーボンブラックとしては、いずれの製造法のものも採用でき、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が適用可能である。カーボンブラックとしては、コスト、バインダー樹脂との造粒・複合性(粒径コントロール等)及び環境・安全性の観点から、水中に均一に分散したものを使用することが好ましい。水には分散剤が添加されていてもよい。
【0026】
導電性・使用量・他材との混合性などを考慮すると、炭素系導電材料としては、比表面積が大きく中空シェル状の構造を有するケッチェンブラックが特に好ましい。ケッチェンブラックの性状としては、分散剤を含む水中に分散した、平均粒径(二次粒子径)が100〜600nmのケッチェンブラックが好ましく、100〜400nmのケッチェンブラックがより好ましい。このようなケッチェンブラックとしては、例えば、ライオンペーストW−310A、ライオンペーストW−311N、ライオンペーストW−356A、ライオンペーストW−376R、ライオンペーストW−370C(以上、ライオン株式会社製、商品名)などが使用できる。
【0027】
炭素系導電材料の含有量は、バインダー樹脂との質量総量に対し、30〜99質量%の範囲が好ましく、35〜95質量%の範囲がより好ましく、50〜95質量%が更に好ましく、50〜90質量%が特に好ましく、70〜90質量%が最も好ましい。すなわち、炭素系導電材料に対するバインダー樹脂の質量比は、1/99〜70/30が好ましく、5/95〜65/35がより好ましく、5/95〜50/50が更に好ましく、10/90〜50/50が特に好ましく、10/90〜30/70が最も好ましい。
【0028】
炭素系導電材料の含有量が99質量%以下にすることにより、含有するバインダー樹脂が炭素系導電材料を接合する効果を高めることができ、複合化による導電性粒子のμmサイズの造粒が容易となる。また、炭素系導電材料の量が30質量%以上とすることで、得られる導電性粒子の導電性の低下を防止できる。
【0029】
導電性粒子を構成する他の必須成分であるバインダー樹脂は、炭素系導電材料を接合する機能を有する。
【0030】
バインダー樹脂は、このような機能を有するものであればその種類は問わないが、非水溶性弾性樹脂を少なくとも含有することが好ましい。非水溶性弾性樹脂は、ラテックスの形態、すなわち水に分散されたゴム粒子の形態で提供されるものが好適である。ゴム粒子は、典型的には50〜700nm(好ましくは70〜500nm)の平均粒径を有しており、分散剤と共に水に分散されていてもよい。
【0031】
ゴム粒子を構成するゴム成分としては、例えば、スチレン・ブタジエン系ゴム、ポリブタジエン系ゴム、アクリロニトリル・ブタジエン系ゴム等が挙げられる。これらのゴム粒子は、1種類のみ又は2種類以上を混合して用いることができる。なお、ゴム成分としては、カルボキシル基等で変性されたものも採用でき、このようなゴム成分は親水性、混合性、密着性等に優れる。
【0032】
ゴム粒子は、単層構造のものでも多層構造(コアシェル構造等)のものでもよい。また、中空構造のものも採用可能である。
【0033】
非水溶性弾性樹脂として、ガラス転移温度(Tg)が低いゴム粒子を選択することにより、弾性率の小さい(柔らかい)導電性複合粒子を設計することができ、Tgが高いゴム粒子を選択すると、弾性率の大きい(固い)導電性複合粒子を設計することができる。また、Tgの異なるゴム粒子をブレンドすることにより、所望の弾性率を有する導電性複合粒子を調整することもできる。
【0034】
適度な弾性率を有する導電性複合粒子を設計する観点からは、ゴム成分のTgは、−30〜110℃であることが好ましく、0℃〜110℃であることがより好ましく、10℃〜110℃であることが特に好ましい。
【0035】
多層構造のゴム粒子や、複数のゴム粒子の混合物の場合、Tgが複数生じる場合があるが、そのような場合は、いずれかのTgが上記範囲内に入っていればよい。
【0036】
ゴム粒子を2種類以上ブレンドして使用する場合において、例えば、弾性率を大きく(固く)し、更に、粒径を大きくしたい場合、高Tgのゴム粒子と低Tgのゴム粒子をブレンドして、機能を分担させ、高Tgゴム粒子により弾性率を大きくし、タック性の大きい低Tgのゴム粒子により粒径を大きくすることもできる。
【0037】
導電性粒子の機能性を十分に発揮させる上では、安定した所定の粒径の粒子を作製することが必要であり、そのためには、使用するラテックスにおけるゴム粒子の初期粒径の選択は重要となる。このような観点から、ラテックスとしては、例えば、Nipol LX430(含有ゴム粒子平均粒径:150nm、Tg:12℃)、Nipol LX433C(含有ゴム粒子平均粒径:100nm、Tg:50℃)、Nipol 2507H(含有ゴム平均粒径:250nm、Tg:58℃)、Nipol LX303A(含有ゴム平均粒径:160nm、Tg:100℃)、Nipol LX416(含有ゴム平均粒径:110nm、Tg:50℃)、Nipol PHT 8052(含有ゴム平均粒径:320nm、2層構造粒子(コア部Tg:100℃、シェル部Tg:0℃)(以上、日本ゼオン株式会社製、商品名)等を用いることが好適である。なお、上記のゴム平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって測定することが困難な場合は、走査型プローブ顕微鏡により観察した範囲内における算術平均としたものとする。
【0038】
上述のように、炭素系導電材料に対するバインダー樹脂の質量比は、1/99〜70/30が好ましく、5/95〜65/35がより好ましく、5/95〜50/50が更に好ましく、10/90〜50/50が特に好ましく、10/90〜30/70が最も好ましい。
【0039】
バインダー樹脂の含有量を、バインダー樹脂と炭素系導電材料の総量の1質量%以上とすることで、炭素系導電材料を接合するため十分な含有量となり、バインダー樹脂同士及びバインダー樹脂と導電性粒子との接触数が少なくなることが防止され、目的とする粒径(μm)の導電性粒子を得やすくなる。また、バインダー樹脂の含有量を上記総量の70質量%以下にすることで、導電性ではないバインダー樹脂成分が増加することが防止され、導電性粒子の導電性を高く保つことができ、導電性粒子同士の凝集が防止され、微粒子としての機能の発現が良好になる。
【0040】
上述したバインダー樹脂は、非水溶性弾性樹脂の他、水溶性樹脂をさらに含有していてもよい。水溶性樹脂は、導電性粒子を製造するに当り、造粒助剤として機能させることができる。
【0041】
すなわち、導電性粒子の弾性をより大きく(固く)したい場合、上述した高Tgゴム粒子と低Tgゴム粒子とのブレンドでは、高弾性化とμmサイズ粒子の造粒の両立に限界が生じる。この場合、第3成分として水に溶解が可能な水溶性樹脂を造粒助剤として配合することが可能である。これにより、タック性の乏しい高Tgゴム粒子同士、導電性粒子同士又は高Tgゴム粒子と導電性粒子の造粒が可能になり、高弾性化とμmサイズの粒子化が可能となる。水溶性樹脂としては、分子量によって弾性率の調整が可能なポリビニルアルコール等を用いることが好適である。
【0042】
導電性粒子は、上述した炭素系導電材料とバインダー樹脂を必須成分とするが、導電性粒子の機能を阻害しない限りにおいて、これら以外に、金属粉を含有させることもできる。また、高温高湿での耐久性を向上させる観点から、前記導電性粒子を金属メッキすることもできる。
【0043】
導電性粒子の平均粒径は、50μm以下である。回路電極の接続材料へ適用することを考慮した場合、導電性粒子の平均粒径は1〜20μmが好ましく、2〜15μmがより好ましく、3〜10μmが特に好ましい。
【0044】
導電性粒子としては、25℃において、40%変位する圧力(導電性粒子の粒径を未加圧時の40%に圧縮する圧力)が12MPa以下であるが、例えば、回路電極と導電粉の接触している界面の面積を効率良く大きくできる観点からは、10MPa以下がより好ましく、9MPa以下が特に好ましい。40%変位する圧力の下限は特に制限はないが、実用的な観点から1MPa以上が好ましく、2MPa以上がより好ましく、3MPa以上が特に好ましい。また、例えば、回路電極と導電粉の接触している界面の面積が大きくなり過ぎることによる導電性粒子同士の接触を抑制できる観点からは、50%変位する圧力が13MPa以上であることが好ましく、15MPa以上であることがより好ましく、16MPa以上であることが特に好ましい。50%変位する圧力の上限は特に制限はないが、実用的な観点から100MPa以下である。ここで、40%変位とは、粒径aμmの導電性粒子に一方向から圧力を加えた時の圧力方向の径をbμmとした時、{(a−b)/a}×100=40であることを意味し、50%変位とは、{(a−b)/a}×100=50であることを意味する。また、前記導電性粒子は、50%変位においても粒子形状が維持されていることが好ましい。
【0045】
上記圧力と変位量の関係は、例えば、株式会社島津製作所社製の微小圧縮試験機であるMCTシリーズ等で測定することができる。
【0046】
導電性粒子は、炭素系導電材料とバインダー樹脂(非水溶性弾性樹脂を含有することが好ましく、造粒助剤としての水溶性樹脂を含有していてもよい)とを均一に混合し、バインダー樹脂で炭素系導電材料を接合して粒子化することにより得ることができる。
【0047】
混合の方法としては、一般的な回転混合羽根を有する攪拌機にて上記成分を混合する方法や、超音波にて振動させ混合する方法又は攪拌混合と超音波振動を同時に行う方法等がある。使用成分が均一に混合したかどうかの判断は、例えば、混合物の粘度の測定(数箇所採取測定)や電子顕微鏡による観察、又は加熱による水分除去にて残る固形分量(数箇所採取測定)等で判断できる。
【0048】
導電性粒子の製造は、噴霧材料を乾燥し、熱的に複合、造粒させる装置で行なうことが好ましい。特に、液状混合物噴霧装置、噴霧物乾燥装置及び乾燥物回収装置を有した装置を使用して行なうことが、安価で安定な製造が可能であることから効果的である。
【0049】
具体的には、炭素系導電材料とバインダー樹脂とが媒体中で混合された組成物(バインダー樹脂に対する炭素系導電材料の質量比が1/99〜70/30)を噴霧して、媒体を揮発させると共に、バインダー樹脂で炭素系導電材料を接合しつつ造粒する方法が採用できる。
【0050】
炭素系導電材料とバインダー樹脂とが存在する媒体としては、水、アルコール(炭素数1〜3の低級アルコールなど)、非アルコール系有機溶媒などが挙げられるが、炭素系導電材料が水分散物として提供可能であり、バインダー樹脂も水に分散されたラテックスとして提供可能であることから、媒体は水であることが好ましい。
【0051】
上記組成物の噴霧及び上記媒体の揮発を効率的に行なうために、組成物が吐出される孔と圧搾空気が吐出される孔とを有するノズルを用い、100〜200℃に保たれた乾燥室に向けて、組成物及び圧搾空気を同時に吐出することが好適である。
【0052】
なお、得られた導電性粒子に更なる耐熱性や強度を付与したい場合、得られた導電性粒子を熱処理する手段を実施してもよい。熱処理は、加熱炉を使用し炉内温度100℃〜150℃で1時間程度処理を行うことで実施できる。このようにすることで、造粒時にゴムの架橋成分が未処理で残存したとしても、架橋を進めることができる。
【0053】
より均一な粒度が要求される場合、得られた導電性粒子を分級することができる。分級の方法としては、例えば、サイクロン分級等が挙げられる。
【0054】
なお、導電性粒子の25℃における導電率は、1S/cm以上であることが好ましく、5S/cm以上であることがより好ましく、20S/cm以上であることが特に好ましく、30S/cm以上であることが最も好ましい。導電率の上限は高いほど良いが、炭素系導電材料の導電率を考慮すると、1000S/cm以下である。
【0055】
上記導電性粒子の25℃における導電率は、例えば、粉体抵抗測定装置により、粉体専用プローブ(4探針、リング電極)を用いて、任意の圧力下で粉体の体積抵抗率を測定することで算出できる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
(1)導電性粒子用材料の調製
ゴム粒子として、日本ゼオン株式会社製ラテックスゴム、商品名:Nipol LX430(スチレン・ブタジエンゴム、平均粒径:150nm、Tg:12℃、ゴム固形分:48%):100g(ゴム成分:48g)及び炭素系導電材料として、ライオン株式会社製水分散系ケッチェンブラック、商品名:ライオンペーストW−311N(一次粒子径:40nm、水分散粒子径:400nm以下、ケッチェンブラク含有量8.1%):1770g(ケッチエンブラック量143.4g)を秤量(ゴム固形分量/ケッチェンブラック量の比率が質量換算で25/75)し、更に純水300gを追加した。
得られた配合物を、攪拌羽根をセットしたモータで1時間攪拌混合し(室温:25℃)、水分散型の導電性粒子用材料を作製した。
【0058】
(2)導電性粒子の製造
スプレードライヤー装置(大川原化工機株式会社製、商品名:NL−5)を使用し、噴霧エア圧力:0.2MPa、乾燥装置入り口温度:200℃、出口温度:90℃、材料処理量:2.3kg/hの条件にて、上記(1)で調整した水分散型の導電性粒子用材料を噴霧し、導電性粒子を得た。
【0059】
(3)導電性測定
粉体抵抗測定装置(株式会社三菱化学アナリテック製、商品名:MCP−PD51型)を使用し、測定開始レンジ:10
−3Ω、印加電圧リミッタ:90V、使用プローブ:四探針プローブ、電極間隔:3.0mm、電極半径:0.7mm、試料半径:10.0mm、試料質量:0.9g、測定圧力:37.5MPaの測定条件にて、上記(2)で作製した導電性粒子の25℃における導電性(導電率、体積抵抗率)を測定した。
【0060】
(4)導電性粒子の形状及び粒度分布
形状観察:走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、商品名:S−4500)を使用し、上記(2)で作製した導電性粒子の形状を観察した。
粒度分布:レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、商品名:SALD−3000J)を使用し、上記(2)で作製した導電性粒子の粒度分布を測定し、メディアン径D50を平均粒径とした。
図1及び
図2に、本実施例にて作製した導電性粒子の走査型電子顕微鏡写真を示した。
図1は、導電性粒子の外観を示し、μmサイズの球状の複合粒子が得られたことを確認できた。
図2は、導電性粒子の断面を示し、nmサイズの粒子が複合、造粒されていることを確認できた。
【0061】
(5)圧縮実験
微小圧縮試験機(株式会社島津製作所、商品名:MCT−211)を使用し、測定温度25℃、導電性粒子径6μmを5個抽出し、それぞれについて試験力0.1(mN)にて測定を行い、粒子径の10%、20%、30%、40%、50%変位(圧縮)時の圧力(荷重)の平均値を求めた。上記5個の粒子のそれぞれの変位量と圧力の関係を
図5に示す。
【0062】
(実施例2)
(1)導電性粒子用材料の調製
ラテックスゴム(Nipol LX430)を200gにし、水分散系ケッチェンブラック(ライオンペーストW−311N)を1180g(ゴム固形分量/ケッチェンブラック量の比率が質量換算で50/50)にした以外は、実施例1(1)と同様の方法・条件にて導電性粒子用材料を作製した。
(2)導電性粒子の製造
実施例1(2)と同じ装置及び条件にて導電性粒子を得た。
(3)導電性測定
実施例1(3)と同じ装置及び条件にて導電性粒子の導電性(導電率、体積抵抗率)を測定した。
図3に、本実施例にて作製した導電性粒子の外観の走査型電子顕微鏡写真を示した。μmサイズの球状の複合粒子が得られたことを確認できた。
(4)圧縮試験
実施例1(5)と同様にして圧縮実験を行った。
【0063】
(実施例3)
(1)導電性粒子用材料の調製
ラテックスゴム(Nipol LX416(含有ゴム粒子平均粒径:110nm、Tg:50℃、ゴム固形分48%))にした以外は、実施例1(1)と同様の方法・条件にて導電性粒子用材料を作製した。
(2)導電性粒子の製造
実施例1(2)と同じ装置及び条件にて導電性粒子を得た。
(3)導電性測定
実施例1(3)と同じ装置及び条件にて導電性粒子の導電性(導電率、体積抵抗率)を測定した。
(4)圧縮試験
実施例1(5)と同様にして圧縮実験を行った。
【0064】
(実施例4)
(1)導電性粒子用材料の調製
ラテックスゴム(Nipol LX416)を25.2g及びラテックスゴム(Nipol LX303A(ポリスチレン系含有ゴム粒子平均粒径:100nm、Tg:100℃、ゴム固形分50%))を25g使用し、ライオンペーストW−311Nを1860g(ゴム固形分量比率50/50及びゴム固形分量/ケッチェンブラック量の比率が質量換算で25/75)にした以外は、実施例1(1)と同じ装置及び条件にて導電性粒子用材料を得た。
(2)導電性粒子の製造
実施例1(2)と同じ装置及び条件にて導電性粒子を得た。
(3)導電性測定
実施例1(3)と同じ装置及び条件にて導電性粒子の導電性(導電率、体積抵抗率)を測定した。
(4)圧縮試験
実施例1(5)と同様にして圧縮実験を行った。
【0065】
(実施例5)
(1)導電性粒子用材料の調製
ラテックスゴム(Nipol PHT8049 スチレン・アクリロニトリル系ゴム(含有ゴム粒子平均粒径:110nm、Tg:110℃、ゴム固形分46%))108.5g、ライオンペーストW−311Nを1850g(ゴム固形分量/ケッチェンブラック量の比率が質量換算で25/75)にした以外は、 実施例1(1)と同じ装置及び条件にて導電性粒子用材料を得た。
(2)導電性粒子の製造
実施例1(2)と同じ装置及び条件にて導電性粒子を得た。
(3)導電性測定
実施例1(3)と同じ装置及び条件にて導電性粒子の導電性(導電率、体積抵抗率)を測定した。
(4)圧縮試験
実施例1(5)と同様にして圧縮実験を行った。
【0066】
(実施例6)
(1)導電性粒子用材料の調製
ラテックスゴム(Nipol 8052スチレン・ブタジエン系2重構造(コア/シェル)ゴム(含有ゴム粒子平均粒径:320nm、Tg(コア部)100℃、(シェル部)0℃ ゴム固形分50%)100g、ライオンペーストW−311Nを1850g(ゴム固形分量/ケッチェンブラック量の比率が質量換算で25/75)にした以外は、実施例1(1)と同じ装置及び条件にて導電性粒子用材料を得た。
(2)導電性粒子の製造
実施例1(2)と同じ装置及び条件にて導電性粒子を得た。
(3)導電性測定
実施例1(3)と同じ装置及び条件にて導電性粒子の導電性(導電率、体積抵抗率)を測定した。
(4)圧縮試験
実施例1(5)と同様にして圧縮実験を行った。
【0067】
(実施例7)
(1)導電性粒子用材料の調製
ラテックスゴム(Nipol LX430)を53g使用し(ゴム固形分量/ケッチェンブラック量の比率が質量換算で15/85)にした以外は、実施例1(1)と同じ装置及び条件にて導電性粒子用材料を得た。
(2)導電性粒子の製造
実施例1(2)と同じ装置及び条件にて導電性粒子を得た。
(3)導電性測定
実施例1(3)と同じ装置及び条件にて導電性粒子の導電性(導電率、体積抵抗率)を測定した。
(4)圧縮試験
実施例1(5)と同様にして圧縮実験を行った。
【0068】
(比較例1)
(1)導電性粒子用材料の調製
ラテックスゴム(Nipol LX430)を305gにし、水分散系ケッチェンブラック(ライオンペーストW−311N)を321g(ゴム固形分量/ケッチェンブラック量の比率が質量換算で85/15)にした以外は、実施例1(1)と同様の方法・条件にて導電性粒子用材料を作製した。
(2)導電性粒子の製造
実施例1(2)と同じ装置及び条件にて導電性粒子を得た。
(3)導電性測定
実施例1(3)と同じ装置及び条件にて導電性粒子の導電性(導電率、体積抵抗率)を測定した。
図4に、本比較例にて作製した導電性粒子の外観の走査型電子顕微鏡写真を示した。粒子同士の凝集が認められた。また、良好な粒子が得られなかったため、実施例1(5)と同様の圧縮実験は行わなかった。
【0069】
表1に、実施例1〜6及び比較例1の評価結果を示した。
【表1】
【0070】
実施例の導電性粒子は、nmサイズのゴム粒子と炭素系導電材料を複合化した、μmサイズの球状の粒子であり、導電性に優れ、また小さい圧力で良好な変位量を示し、50%変位においても粒子形状が維持されていることが確認された。それに対し、比較例では、得られた粒子同士が凝集し、微粒子としての機能の発現が困難であることが確認され、また、導電性も著しく低くなった。