(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
現像液が、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載のパターン形成方法。
高エネルギー線による露光が、波長248nmのKrFエキシマレーザー、波長193nmのArFエキシマレーザー、電子線(EB)又は波長13.5nmのEUVリソグラフィーであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
レジスト材料を基板上に塗布し、加熱処理により膜を形成後、更に保護膜を形成し、高エネルギー線で上記レジスト膜を露光し、加熱処理後に有機溶剤の現像液を用いて未露光部を溶解させ、露光部が溶解しないネガ型パターンを得ることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明中、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがあるが、その場合は一つの式でそれらの異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0019】
本発明の第一の単量体は、下記一般式(1)で示されるものである。
【化6】
(式中、R
1は水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。R
2、R
3はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。R
2、R
3は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。R
4〜R
9はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。R
4、R
8は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に5員環又は6員環を形成してもよい。R
10は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基又はフッ素化炭化水素基を示す。A
1は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の二価の炭化水素基を示す。k
1は0又は1の整数を示す。n
1Aは0〜2の整数を示す。)
【0020】
R
2〜R
9の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、アダマンチル基等のアルキル基を挙げることができる。
【0021】
R
2、R
3が結合して環を形成する場合、具体的には下記のものを例示できる。
【化7】
ここで、破線は結合手を示す(以下、同様)。
【0022】
R
4、R
8が結合して5員環又は6員環を形成する場合、具体的には下記のものを例示できる。
【化8】
(式中、R
10は上記と同様である。)
【0023】
R
10の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、オキサノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基、アダマンチル基等のアルキル基を例示できる。
【0024】
R
10の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価のフッ素化炭化水素基としては、フッ素化アルキル基が挙げられ、具体的には下記のものを例示できる。
【化9】
【0025】
A
1の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の二価の炭化水素基としては、アルキレン基が挙げられ、具体的には下記のものを例示できる。
【化10】
【0026】
本発明の第二の単量体は、下記一般式(2)で示されるものである。
【化11】
(式中、R
1は水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。R
10は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基又はフッ素化炭化水素基を示す。R
11は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。Z
1はこれが結合する炭素原子と共に形成される炭素数5〜15の脂環基を示す。A
2はメチレン基又はエチレン基を示す。)
【0027】
R
11の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、オキサノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基、アダマンチル基等のアルキル基を例示できる。
【0028】
Z
1の炭素数5〜15の脂環基としては、具体的には下記のものを例示できる。
【化12】
【0029】
上記一般式(1)及び(2)で示される化合物として、具体的には下記のものを例示できる。
【化13】
(式中、R
1は上記と同様である。)
【0030】
【化14】
(式中、R
1は上記と同様である。)
【0031】
【化15】
(式中、R
1は上記と同様である。)
【0032】
本発明の上記一般式(1)で示される単量体は、例えば下記反応式に示したスキームi)〜iv)により得ることができるが、これに限定されるものではない。
【化16】
(式中、R
1〜R
10、A
1、n
1A、k
1は上記と同様である。R
12は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。X
1はハロゲン原子、水酸基又は−OR
13を示す。R
13はメチル基、エチル基又は下記式(14)
【化17】
を示す。X
2はハロゲン原子、水酸基又は−OR
14を示す。R
14はメチル基、エチル基又は下記式(15)
【化18】
を示す。)
【0033】
ステップi)はオキソエステル化合物(5)のホルミル基又はケト基部分と、ヒドリド還元試薬/有機金属試薬(6)との付加反応を行い、対応するヒドロキシエステル化合物(7)を得る工程である。
【0034】
反応は公知の方法により容易に進行するが、ヒドリド還元試薬/有機金属試薬(6)としては、例えば、ヒドリド還元試薬として水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム等の各種ヒドリド還元試薬を用いることができるが、オキソエステル化合物(5)のホルミル基又はケト基のみを選択的に還元する目的から、水素化ホウ素ナトリウムを使用することが好ましい。有機金属試薬としてはGrignard試薬、有機リチウム試薬、有機亜鉛試薬等から選択して用いることができるが、有機金属試薬を用いる場合、オキソエステル化合物(5)のホルミル基又はケト基のみ選択的に付加反応を行う目的から、有機金属試薬の使用量はオキソエステル化合物(5)1モルに対し1.0〜2.0モル、特に1.0〜1.2モルとすることが好ましい。2.0モルを超える使用では、オキソエステル化合物(5)のエステル基への付加反応による副生物が大量に生じ、収率が大幅に低下する場合がある。
【0035】
上記反応の反応時間は収率向上のため薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどにより反応の進行を追跡して決定することが好ましいが、通常30分〜40時間程度である。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)によりヒドロキシエステル化合物(7)を得ることができ、必要があれば蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することができる。
【0036】
ステップii)はヒドロキシエステル化合物(7)と有機金属試薬(8)、(9)との反応により対応するジオール化合物(10)を得る工程である。
【0037】
反応は公知の方法により容易に進行するが、有機金属試薬(8)、(9)としてはGrignard試薬、有機リチウム試薬、有機亜鉛試薬等から選択して用いることができる。ヒドロキシエステル化合物(7)のエステル基に対し、各々1モル相当の有機金属試薬(8)、(9)を順次作用させて対応するジオール化合物(10)を得ることができるが、有機金属試薬(8)、(9)のR
2、R
3が同一である場合には、ヒドロキシエステル化合物(7)のエステル基に対し、2モル相当の有機金属試薬を作用させることで対応するジオール化合物(10)を得ることができるため、工程数の上で有利である。
【0038】
有機金属試薬(8)、(9)の使用量はヒドロキシエステル化合物(7)1モルに対し各々2.0〜10モル、特に2.0〜5.0モルとすることが好ましい。2.0モル未満の使用ではエステル基への付加反応が十分に進行せず、収率が大幅に低下する場合があり好ましくない。10モルを超える使用では、使用原料費の増加、釜収率の低下などによりコスト面で不利となる場合がある。
【0039】
上記反応の反応時間は収率向上のため薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどにより反応の進行を追跡して決定することが好ましいが、通常30分〜40時間程度である。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)によりジオール化合物(10)を得ることができ、必要があれば蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することができる。
【0040】
ステップiii)は、ジオール化合物(10)とエステル化剤(11)との反応により対応するヒドロキシエステル化合物(12)を得る工程である。
【0041】
反応は公知の方法により容易に進行するが、エステル化剤(11)としては酸クロリド{式(11)において、X
1が塩素原子の場合}又はカルボン酸無水物{式(11)において、X
1が−OR
13で、R
13が下記式(14)の場合}
【化19】
が好ましい。酸クロリドを用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ジオール化合物(10)、対応するカルボン酸クロリド、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。また、カルボン酸無水物を用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ジオール化合物(10)と対応するカルボン酸無水物、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。
【0042】
ジオール化合物(10)の使用量は、エステル化剤(11)1モルに対し1〜10モル、特に1〜5モルとすることが好ましい。1モル未満の使用ではジオール化合物(10)の両方の水酸基がエステル化されたビスエステル体が大量に副生するため収率が大幅に低下する場合があり、10モルを超える使用では使用原料費の増加、釜収率の低下などによりコスト面で不利となる場合がある。
【0043】
上記反応の反応時間は収率向上のため薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどにより反応の進行を追跡して決定することが好ましいが、通常30分〜40時間程度である。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)によりヒドロキシエステル化合物(12)を得ることができ、必要があれば蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することができる。
【0044】
ステップiv)は、ヒドロキシエステル化合物(12)とエステル化剤(13)との反応により本発明の単量体(1)を得る工程である。
【0045】
反応は公知の方法により容易に進行するが、エステル化剤(13)としては酸クロリド{式(13)において、X
2が塩素原子の場合}又はカルボン酸無水物{式(13)において、X
2が−OR
14で、R
14が下記式(15)の場合}
【化20】
が好ましい。酸クロリドを用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ヒドロキシエステル化合物(12)、メタクリル酸クロリド等の対応するカルボン酸クロリド、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。また、カルボン酸無水物を用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ヒドロキシエステル化合物(12)とメタクリル酸無水物等の対応するカルボン酸無水物、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。また、エステル化剤としてカルボン酸{式(13)において、X
2が水酸基の場合}を用いる場合は、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ヒドロキシエステル化合物(12)とメタクリル酸等の対応するカルボン酸を酸触媒の存在下加熱し、必要に応じて生じる水を系外に除くなどして行うのがよい。用いる酸触媒としては例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機酸類、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸類等が挙げられる。酸無水物を用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ヒドロキシ
エステル化合物(12)、メタクリル酸無水物などの対応する酸無水物、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。
【0046】
反応時間はガスクロマトグラフィー(GC)やシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常30分〜48時間程度である。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)により単量体(1)を得ることができ、必要があれば蒸留、クロマトグラフィー、再結晶などの常法に従って精製することができる。
【0047】
本発明の高分子化合物は、一般式(1)又は(2)で示される単量体化合物から得られる繰り返し単位を含有することを特徴とする高分子化合物である。
【0048】
一般式(1)及び(2)で示される単量体化合物から得られる繰り返し単位として、具体的には下記一般式(3a)及び(3b)を挙げることができる。
【化21】
(式中、R
1は水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。R
2、R
3はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。R
2、R
3は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。R
4〜R
9はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。R
4、R
8は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に5員環又は6員環を形成してもよい。R
10は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基又はフッ素化炭化水素基を示す。R
11は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。Z
1はこれが結合する炭素原子と共に形成される炭素数5〜15の脂環基を示す。A
1は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の二価の炭化水素基を示す。A
2はメチレン基又はエチレン基を示す。k
1は0又は1の整数を示す。n
1Aは0〜2の整数を示す。)
【0049】
本発明の高分子化合物をベース樹脂として含むレジスト材料では、ベース樹脂の側鎖にアシルオキシ基で置換された、酸不安定な三級アルキルエステル構造を持つ。脂溶性の高い三級アルキル基に加え、アシルオキシ基が有機溶剤現像液との高い親和性を示し、このため、有機溶剤現像によるネガティブパターン形成において、未露光部分のレジストのスムーズな溶解が期待できる。一方で露光部分では、発生した酸による脱保護反応が進行し、高極性、高親水性のカルボキシル基を生じるため、有機溶剤現像液への溶解性が大幅に低下し、不溶となる。以上のことから、本発明の高分子化合物をベース樹脂として用いることにより、露光の前後でのベース樹脂の高い溶解コントラストが期待でき、解像性、ラフネスの改善等が期待できる。
【0050】
なお、本発明の高分子化合物に含まれる酸不安定単位は、側鎖のアシルオキシ基の置換位置が、主鎖のアシルオキシ基が結合する4級炭素中心から少なくとも2炭素以上離れた構造であることが必須である。
例えば、下記式で示す本発明の高分子化合物(3aa){上記式(3a)において、k
1=0、n
1A=0の場合}を考える。(3aa)では、側鎖のアシルオキシ基は主鎖のアシルオキシ基が結合する4級炭素(下記式中、黒色で標識)のβ位(黒色で標識した炭素より2炭素離れた位置)に位置した、1,3−ジオールのアシル化された基本骨格を持っている。この化合物では、酸による脱保護反応が進行する際に生じると考えられるカルボカチオンが生成し、オレフィン生成を伴った速やかな脱保護反応が期待できる。
一方で、下記式で示す高分子化合物(3c)を考える。(3c)では、側鎖のアシルオキシ基は主鎖のアシルオキシ基が結合する4級炭素(下記式中、黒色で標識)のα位(黒色で標識した炭素より1炭素離れた位置)に位置した、1,2−ジオールのアシル化された基本骨格を持っている。この化合物では、電気陰性なアシルオキシ置換基が、酸により生じるカルボカチオンと隣接するため不安定となり、脱保護反応の速度が遅く、十分な酸反応性が得られない可能性がある。
【化22】
(式中、R
1〜R
5、R
8〜R
10は上記と同様である。R
3ba、R
3bbはそれぞれ独立に、水素原子又は任意の一価炭化水素基を示す。)
【0051】
また、本発明の高分子化合物は、上記一般式(3a)又は(3b)で示される化合物の繰り返し単位に加え、更に下記一般式(4A)〜(4E)で示される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することが好ましい。
【化23】
(式中、R
1は上記と同様である。XAは酸不安定基を示す。XB、XCはそれぞれ独立に単結合、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状の二価の炭化水素基を示す。XDは炭素数1〜16の直鎖状、分岐状又は環状の2〜5価の脂肪族炭化水素基を示し、炭化水素基を構成する−CH
2−が−O−又は−C(=O)−に置換されていてもよい。XEは酸不安定基を示す。YAはラクトン、スルトン又はカーボネート構造を有する置換基を示す。ZAは水素原子、又は炭素数1〜15のフルオロアルキル基又は炭素数1〜15のフルオロアルコール含有置換基を示す。k
1Aは1〜3の整数を示す。k
1Bは1〜4の整数を示す。)
【0052】
上記一般式(4A)で示される繰り返し単位を含有する重合体は、酸の作用で分解してカルボン酸を発生し、アルカリ可溶性となる重合体を与える。酸不安定基XAとしては種々用いることができるが、具体的には、下記一般式(L1)〜(L4)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【化24】
(式中、R
L01及びR
L02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R
L03は炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたもの、エーテル酸素が介在したものを挙げることができる。R
L04は炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(L1)で示される基を示す。R
L05は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。R
L06は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基である。R
L07〜R
L16はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の一価の非置換又は置換炭化水素基を示す。yは0〜6の整数である。mは0又は1、nは0〜3の整数であり、2m+n=2又は3である。なお、破線は結合手を示す。)
【0053】
式(L1)において、R
L01及びR
L02の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、アダマンチル基等が例示できる。
【0054】
R
L03は炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたもの、エーテル酸素が介在したものを挙げることができ、具体的には、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては上記R
L01、R
L02と同様のものが例示でき、置換アルキル基としては下記の基等が例示できる。
【0056】
R
L01とR
L02、R
L01とR
L03、R
L02とR
L03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するR
L01、R
L02、R
L03はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0057】
式(L2)において、R
L04の三級アルキル基の具体例としては、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示できる。また、トリアルキルシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示でき、オキソアルキル基の具体例としては、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示できる。
【0058】
式(L3)において、R
L05の炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの、又はこれらのメチレン基の一部が酸素原子又は硫黄原子に置換されたもの等が例示できる。また、炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。
【0059】
式(L4)において、R
L06の炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基の具体例としては、R
L05と同様のもの等が例示できる。
【0060】
R
L07〜R
L16において、炭素数1〜15の一価炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。
【0061】
R
L07〜R
L16は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく(例えば、R
L07とR
L08、R
L07とR
L09、R
L08とR
L10、R
L09とR
L10、R
L11とR
L12、R
L13とR
L14等)、その場合には環の形成に関与する基は炭素数1〜15のアルキレン基等の二価の炭化水素基を示し、具体的には上記一価炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、R
L07〜R
L16は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい(例えば、R
L07とR
L09、R
L09とR
L15、R
L13とR
L15等)。
【0062】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基が例示できる。
【化26】
【0064】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0065】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0066】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル、1−エチルシクロペンチル、1−n−プロピルシクロペンチル、1−イソプロピルシクロペンチル、1−n−ブチルシクロペンチル、1−sec−ブチルシクロペンチル、1−シクロヘキシルシクロペンチル、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル、1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル、1−(7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−エチルシクロヘキシル、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル等が例示できる。
【0067】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化28】
(式中、R
L41はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基を示す。破線は結合位置及び結合方向を示す。)
【0068】
上記式(L4−1)〜(L4−4)中、R
L41の一価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。
【0069】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)には、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在しえるが、前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0070】
例えば、前記一般式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)と(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化29】
(式中、R
L41は前述と同様である。)
【0071】
また、上記一般式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化30】
(式中、R
L41は前述と同様である。)
【0072】
上記一般式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
【0073】
なお、式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する三級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50%以上であることが好ましく、exo比率が80%以上であることが更に好ましい。
【0074】
【化31】
(式中、R
L41は前述と同様である。)
【0075】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化32】
【0076】
また、炭素数4〜20の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基としては、具体的にはR
L04で挙げたものと同様のもの等が例示できる。
【0077】
上記一般式(4A)で表される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【0087】
上記一般式(4B)で表される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化42】
【0089】
上記一般式(4C)で表される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化44】
【0093】
【化48】
(式中、Meはメチル基を示す。)
【0094】
上記一般式(4D)で表される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化49】
【0096】
上記一般式(4E)で示される繰り返し単位を含有する重合体は、酸の作用で分解してヒドロキシ基を発生し、種々の溶剤への溶解性に変化を与える。酸不安定基XEとしては種々用いることができるが、上記酸不安定基XAと同様、一般式(L1)〜(L4)で示される基、炭素数4〜20の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【0097】
上記一般式(4E)で表される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【0103】
更に、本発明の高分子化合物には、下記一般式で示されるスルホニウム塩の繰り返し単位(d1)〜(d3)のいずれかを共重合することもできる。
【化56】
(式中、R
20、R
24、R
28は水素原子又はメチル基、R
21は単結合、フェニレン基、−O−R
33−、又は−C(=O)−Y−R
33−である。Yは酸素原子又はNH、R
33は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。R
22、R
23、R
25、R
26、R
27、R
29、R
30、R
31は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基
又は炭素数7〜20のアラルキル
基を表す。Z
0は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R
32−、又は−C(=O)−Z
1−R
32−である。Z
1は酸素原子又はNH、R
32は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。M
-は非求核性対向イオンを表す。)
【0104】
更に本発明の高分子化合物は、上記以外に、炭素−炭素二重結合を含有する単量体から得られる繰り返し単位、例えば、メタクリル酸メチル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデセン誘導体などの環状オレフィン類、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、その他の単量体から得られる繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0105】
なお、本発明の高分子化合物の重量平均分子量はポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した場合(溶媒;テトラヒドロフラン)、1,000〜500,000、好ましくは3,000〜100,000である。この範囲を外れると、エッチング耐性が極端に低下したり、露光前後の溶解速度差が確保できなくなって解像性が低下したりすることがある。
【0106】
本発明の高分子化合物において、各単量体から得られる各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば以下に示す範囲(モル%)とすることができるが、これに限定されるものではない。
(I)上記式(1)及び(2)の単量体に基づく式(3a)及び(3b)で示される構成単位の1種又は2種以上を0モル%を超え100モル%、好ましくは5〜70モル%、より好ましくは10〜50モル%含有し、
(II)上記式(4A)〜(4E)で示される構成単位の1種又は2種以上を0モル%以上、100モル%未満、好ましくは30〜95モル%、より好ましくは50〜90モル%含有し、必要に応じ、
(III)上記式(d1)〜(d3)で示される構成単位の1種又は2種以上を0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%、より好ましくは0〜10モル%含有し、更に必要に応じ、
(IV)その他の単量体に基づく構成単位の1種又は2種以上を0〜80モル%、好ましくは0〜70モル%、より好ましくは0〜50モル%含有することができる。
【0107】
本発明の高分子化合物の製造は、上記一般式(1)又は(2)で示される化合物を第1の単量体に、上記(4A)〜(4E)の繰り返し単位や(d1)〜(d3)の繰り返し単位等を与える重合性二重結合を含有する化合物を第2以降の単量体に用いた共重合反応により行う。
【0108】
本発明の高分子化合物を製造する共重合反応は種々例示することができるが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合又は配位重合である。
【0109】
ラジカル重合反応の反応条件は、(ア)溶剤としてベンゼン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エタノール等のアルコール類、又はメチルイソブチルケトン等のケトン類を用い、(イ)重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、又は過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物を用い、(ウ)反応温度を0〜100℃程度に保ち、(エ)反応時間を0.5〜48時間程度とするのが好ましいが、この範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0110】
アニオン重合反応の反応条件は、(ア)溶剤としてベンゼン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、又は液体アンモニアを用い、(イ)重合開始剤としてナトリウム、カリウム等の金属、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム等のアルキル金属、ケチル、又はグリニャール反応剤を用い、(ウ)反応温度を−78℃〜0℃程度に保ち、(エ)反応時間を0.5〜48時間程度とし、(オ)停止剤としてメタノール等のプロトン供与性化合物、ヨウ化メチル等のハロゲン化物、その他求電子性物質を用いるのが好ましいが、この範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0111】
配位重合の反応条件は、(ア)溶剤としてn−ヘプタン、トルエン等の炭化水素類を用い、(イ)触媒としてチタン等の遷移金属とアルキルアルミニウムからなるチーグラー−ナッタ触媒、クロム及びニッケル化合物を金属酸化物に担持したフィリップス触媒、タングステン及びレニウム混合触媒に代表されるオレフィン−メタセシス混合触媒等を用い、(ウ)反応温度を0〜100℃程度に保ち、(エ)反応時間を0.5〜48時間程度とするのが好ましいが、この範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0112】
[レジスト材料]
本発明の高分子化合物は、レジスト材料、特に有機溶剤現像プロセスに用いるレジスト材料のベースポリマーとして好適に用いられ、本発明は上記高分子化合物を含有するレジスト材料、とりわけ化学増幅レジスト材料を提供する。この場合、レジスト材料としては、
(A)ベース樹脂として上記高分子化合物、
(B)酸発生剤、
(C)有機溶剤
必要により、
(D)含窒素有機化合物、
(E)界面活性剤
を含有するものが好ましい。
なお、上記高分子化合物が上記繰り返し単位(d1)〜(d3)のいずれかを有する場合、(B)酸発生剤の配合を省略し得る。
【0113】
上記(A)成分のベース樹脂として、本発明の高分子化合物以外に、必要に応じて他の、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増加する樹脂を加えてもよい。例としては、i)ポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ii)ノルボルネン誘導体−無水マレイン酸の共重合体、iii)開環メタセシス重合体の水素添加物、iv)ビニルエーテル−無水マレイン酸−(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体などを挙げることができるが、これに限定されない。
【0114】
このうち、開環メタセシス重合体の水素添加物の合成法は特開2003−66612号公報の実施例に具体的な記載がある。また、具体例としては以下の繰り返し単位を有するものを挙げることができるが、これに限定されない。
【0117】
本発明の高分子化合物と別の高分子化合物との配合比率は、100:0〜10:90、特に100:0〜20:80の質量比の範囲内にあることが好ましい。本発明の高分子化合物の配合比がこれより少ないと、レジスト材料として好ましい性能が得られないことがある。上記の配合比率を適宜変えることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0118】
なお、上記高分子化合物は1種に限らず2種以上を添加することができる。複数種の高分子化合物を用いることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0119】
本発明で使用される(B)成分の酸発生剤として光酸発生剤を添加する場合は、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでもかまわない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等が挙げられ、その具体例としては、特開2009−269953号公報の段落[0151]〜[0156]に記載されている。
【0120】
なお、光酸発生剤を2種以上混合して用い、一方の光酸発生剤がいわゆる弱酸を発生するオニウム塩である場合、酸拡散制御の機能を持たせることもできる。即ち、強酸(例えばフッ素置換されたスルホン酸)を発生する光酸発生剤と弱酸(例えばフッ素置換されていないスルホン酸もしくはカルボン酸)を発生するオニウム塩を混合して用いた場合、高エネルギー線照射により光酸発生剤から生じた強酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0121】
ここで強酸を発生する光酸発生剤がオニウム塩である場合には上記のように高エネルギー線照射により生じた強酸が弱酸に交換することはできるが、高エネルギー線照射により生じた弱酸は未反応の強酸を発生するオニウム塩と衝突して塩交換を行うことはできない。これらはオニウムカチオンがより強酸のアニオンとイオン対を形成し易いとの現象に起因する。
【0122】
光酸発生剤の添加量は、レジスト材料中のベース樹脂(A)100質量部に対して0.1〜40質量部、好ましくは0.1〜20質量部である。光酸発生剤が40質量部以下であれば、レジスト膜の透過率が十分大きく、解像性能の劣化が起こるおそれが少ない。上記光酸発生剤は、単独でも2種以上混合して用いることもできる。更に露光波長における透過率が低い光酸発生剤を用い、その添加量でレジスト膜中の透過率を制御することもできる。
【0123】
また、本発明のレジスト材料に、酸により分解し酸を発生する化合物(酸増殖化合物)を添加してもよい。これらの化合物についてはJ. Photopolym. Sci. and Tech., 8. 43−44, 45−46 (1995)、J. Photopolym. Sci. and Tech., 9. 29−30 (1996)において記載されている。
【0124】
酸増殖化合物の例としては、tert−ブチル2−メチル2−トシロキシメチルアセトアセテート、2−フェニル2−(2−トシロキシエチル)1,3−ジオキソラン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。公知の光酸発生剤の中で安定性、特に熱安定性に劣る化合物は酸増殖化合物的な性質を示す場合が多い。
【0125】
本発明のレジスト材料における酸増殖化合物の添加量としては、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対して2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。添加量が多すぎる場合は拡散の制御が難しく解像性の劣化、パターン形状の劣化が起こる。
【0126】
本発明で使用される(C)成分の有機溶剤としては、ベース樹脂、酸発生剤、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明では、これらの有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れているジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びその混合溶剤が好ましく使用される。
【0127】
有機溶剤の使用量は、ベース樹脂100質量部に対して200〜1,000質量部、特に400〜800質量部が好適である。
【0128】
更に、本発明のレジスト材料には、(D)成分として含窒素有機化合物を1種又は2種以上配合することができる。
含窒素有機化合物は、光酸発生剤より発生する酸などがレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物が適しており、このようなクエンチャーの配合により、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上させることができる。
含窒素有機化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類等が挙げられ、その具体例としては、特開2009−269953号公報の段落[0122]〜[0141]に記載されている。
【0129】
なお、配合量は、ベース樹脂100質量部に対し0.001〜8質量部、特に0.01〜4質量部が好ましい。配合量が0.001質量部より少ないと配合効果がなく、8質量部を超えると感度が低下しすぎる場合がある。含窒素有機化合物としては、酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物が適している。含窒素有機化合物の配合により、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上することができる。
【0130】
界面活性剤としては非イオン性のものが好ましく、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルEO付加物、含フッ素オルガノシロキサン系化合物等が挙げられる。例えばフロラード「FC−430」、「FC−431」(いずれも住友スリーエム(株)製)、サーフロン「S−141」、「S−145」、「KH−10」、「KH−20」、「KH−30」、「KH−40」(いずれも旭硝子(株)製)、ユニダイン「DS−401」、「DS−403」、「DS−451」(いずれもダイキン工業(株)製)、メガファック「F−8151」(大日本インキ工業(株)製)、「X−70−092」、「X−70−093」(いずれも信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。好ましくは、フロラード「FC−430」(住友スリーエム(株)製)、「KH−20」、「KH−30」(いずれも旭硝子(株)製)、「X−70−093」(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0131】
本発明のレジスト材料には、上記成分以外に任意成分として、塗布膜上部に偏在し、表面の親水性・疎水性バランスを調整したり、撥水性を高めたり、あるいは塗布膜が水やその他の液体と触れた際に低分子成分の流出や流入を妨げる機能を有する高分子化合物を添加してもよい。なお、該高分子化合物の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができるが、好ましくはベース樹脂100質量部に対して15質量部以下、特に10質量部以下である。
【0132】
ここで、塗布膜上部に偏在する高分子化合物としては、1種又は2種以上のフッ素含有単位からなる重合体、共重合体、及びフッ素含有単位とその他の単位からなる共重合体が好ましい。フッ素含有単位及びその他の単位としては具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
上記塗布膜上部に偏在する高分子化合物の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜50,000、より好ましくは2,000〜20,000である。この範囲から外れる場合は、表面改質効果が十分でなかったり、現像欠陥を生じたりすることがある。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値を示す。
【0136】
本発明のレジスト材料の基本的構成成分は、上記の重合体、酸発生剤、有機溶剤及び含窒素有機化合物であるが、上記成分以外に任意成分として必要に応じて更に、溶解阻止剤、酸性化合物、安定剤、色素などの他の成分を添加してもよい。なお、任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0137】
本発明の有機溶剤を現像液として用い、ネガティブパターンを形成する方法は、
図1に示される。この場合、
図1(A)に示したように、本発明においては基板10上に形成した被加工基板20に直接又は中間介在層30を介してポジ型レジスト材料を基板上に塗布してレジスト膜40を形成する。レジスト膜の厚さとしては、10〜1,000nm、特に20〜500nmであることが好ましい。このレジスト膜は、露光前に加熱(プリベーク)を行うが、この条件としては60〜180℃、特に70〜150℃で10〜300秒間、特に15〜200秒間行うことが好ましい。
なお、基板10としては、シリコン基板が一般的に用いられる。被加工基板20としては、SiO
2、SiN、SiON、SiOC、p−Si、α−Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜が挙げられる。中間介在層30としては、SiO
2、SiN、SiON、p−Si等のハードマスク、カーボン膜による下層膜と珪素含有中間膜、有機反射防止膜等が挙げられる。
【0138】
次いで、
図1(B)に示すように露光50を行う。ここで、露光は波長140〜250nmの高エネルギー線、波長13.5nmのEUVが挙げられるが、中でもArFエキシマレーザーによる193nmの露光が最も好ましく用いられる。露光は大気中や窒素気流中のドライ雰囲気でもよいし、水中の液浸露光であってもよい。ArF液浸リソグラフィーにおいては液浸溶剤として純水、又はアルカン等の屈折率が1以上で露光波長に高透明の液体が用いられる。液浸リソグラフィーでは、プリベーク後のレジスト膜と投影レンズの間に、純水やその他の液体を挿入する。これによってNAが1.0以上のレンズ設計が可能となり、より微細なパターン形成が可能になる。液浸リソグラフィーはArFリソグラフィーを45nmノードまで延命させるための重要な技術である。液浸露光の場合は、レジスト膜上に残った水滴残りを除去するための露光後の純水リンス(ポストソーク)を行ってもよいし、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために、プリベーク後のレジスト膜上に保護膜を形成させてもよい。液浸リソグラフィーに用いられるレジスト保護膜を形成する材料としては、例えば、水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。保護膜は有機溶剤の現像液に溶解する必要があるが、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する繰り返し単位からなる高分子化合物は前述の有機溶剤現像液に溶解する。特に、特開2007−25634号公報、特開2008−3569号公報、特開2008−81716号公報、特開2008−111089号公報に例示の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する保護膜材料の有機溶剤現像液に対する溶解性は高い。
【0139】
保護膜形成用材料にアミン化合物又はアミン塩を配合あるいはアミノ基又はアミン塩を有する繰り返し単位を共重合した高分子化合物を用いることは、フォトレジスト膜の露光部から発生した酸の未露光部分への拡散を制御し、ホールの開口不良を防止する効果が高い。アミン化合物を添加した保護膜材料としては特開2008−3569号公報に記載の材料、アミノ基又はアミン塩を共重合した保護膜材料としては特開2007−316448号公報に記載の材料を用いることができる。アミン化合物、アミン塩としては、上記フォトレジスト添加用の塩基性化合物として詳述したものの中から選定することができる。アミン化合物、アミン塩の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部、特に0.02〜8質量部が好ましい。
【0140】
フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによってレジスト膜表面からの酸発生剤等の抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。PEB中に露光部から蒸発した酸が未露光部に付着し、未露光部分の表面の保護基を脱保護させると、現像後のホールの表面がブリッジして閉塞する可能性がある。特にネガティブ現像におけるホールの外側は、光が照射されて酸が発生している。PEB中にホールの外側の酸が蒸発し、ホールの内側に付着するとホールが開口しないことが起きる。酸の蒸発を防いでホールの開口不良を防ぐために保護膜を適用することは効果的である。更に、アミン化合物又はアミン塩を添加した保護膜は、酸の蒸発を効果的に防ぐことができる。一方、カルボキシル基やスルホ基等の酸化合物を添加、あるいはカルボキシル基やスルホ基を有するモノマーを共重合したポリマーをベースとした保護膜を用いた場合は、ホールの未開口現象が起きることがあり、このような保護膜を用いることは好ましくない。
【0141】
このように、本発明においては、式(3a)又は(3b)で示される繰り返し単位を含有する高分子化合物と、酸発生剤と、有機溶剤とを含むレジスト材料を基板上に塗布し、加熱処理後に保護膜を形成し、高エネルギー線で上記レジスト膜を露光し、加熱処理後に有機溶剤による現像液を用いて保護膜と未露光部を溶解させ、露光部が溶解しないネガ型パターンを得ることが好ましく、この場合、保護膜を形成する材料として、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとしてアミノ基又はアミン塩を有する化合物を添加した材料、あるいは前記高分子化合物中にアミノ基又はアミン塩を有する繰り返し単位を共重合した材料をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料を用いることが好ましい。
【0142】
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する繰り返し単位としては、具体的には、上記繰り返し単位(4D)で説明したモノマーのうち、炭素原子にCF
3基とOH基とが結合した−C(CF
3)(OH)基を有するモノマー([化49]、[化50]で示したモノマーの一部分)を挙げることができる。
【0143】
アミノ基を有する化合物としては、フォトレジスト材料に添加されるアミン化合物、具体的には特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]に記載のものを用いることができる。
アミン塩を有する化合物としては、前記アミン化合物のカルボン酸塩又はスルホン酸塩を用いることができる。
【0144】
炭素数4以上のアルコール系溶剤としては、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノールを挙げることができる。
炭素数8〜12のエーテル系溶剤としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−tert−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテルを挙げることができる。
【0145】
露光における露光量は1〜200mJ/cm
2程度、好ましくは10〜100mJ/cm
2程度となるように露光することが好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜120℃、1〜3分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。
【0146】
更に、
図1(C)に示されるように有機溶剤の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより未露光部分が溶解するネガティブパターンが基板上に形成される。この時の現像液としては、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン等のケトン類、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチル等のエステル類を好ましく用いることができる。
【0147】
現像の終了時には、リンスを行う。リンス液としては、現像液と混溶し、レジスト膜を溶解させない溶剤が好ましい。このような溶剤としては、炭素数3〜10のアルコール、炭素数8〜12のエーテル化合物、炭素数6〜12のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族系の溶剤が好ましく用いられる。
【0148】
具体的に、炭素数6〜12のアルカンとしては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナンなどが挙げられる。炭素数6〜12のアルケンとしては、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどが挙げられ、炭素数6〜12のアルキンとしては、ヘキシン、ヘプチン、オクチンなどが挙げられ、炭素数3〜10のアルコールとしては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノールなどが挙げられる。
炭素数8〜12のエーテル化合物としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−イソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−tert−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテルから選ばれる1種以上の溶剤が挙げられる。
前述の溶剤に加えてトルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、メシチレン等の芳香族系の溶剤を用いることもできる。
【0149】
有機溶剤現像液を用いたネガティブトーン現像によってホールパターンを形成する場合、X、Y方向の2回のラインパターンのダイポール照明を用いて露光を行うことで、最もコントラストが高い光を用いることができる。また、X、Y方向の2回のラインパターンのダイポール照明にs偏光照明を加えると、更にコントラストを上げることができる。これらのパターン形成方法は、特開2011−221513号公報に詳述されている。
【0150】
前記ホールパターンと同様、露光によってアルカリ現像液に対する溶解性が増大するポジティブトーン現像プロセスにおける孤立スペースパターンの形成では、孤立ラインパターンを形成する場合に比べ、弱い光入射強度下でのパターン形成を強いられ、露光部及び未露光部にそれぞれ入射する光の強度コントラストも小さい。そのため解像力などのパターン形成能に制限が生じやすく、高解像のレジストパターンを得ることが難しい。逆に露光によってアルカリ現像液に対する溶解性が減少するネガティブトーンプロセスにおいては、前記ポジティブトーンプロセスとは逆に、孤立スペースパターンの形成に有利と考えられる。同様に、有機溶剤現像液を用いたネガティブトーン現像プロセスによって孤立スペースパターンを形成する場合も有利だと考えられる。
【実施例】
【0151】
以下、合成例及び実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、下記式中、Meはメチル基を示す。
【0152】
[合成例1]
本発明の重合性エステル化合物を以下に示す方法で合成した。
[合成例1−1]モノマー1の合成
【化61】
【0153】
[合成例1−1−1]ヒドロキシエステル1aの合成
水素化ホウ素ナトリウム(37.8g)を水(300g)とTHF(200g)に溶解した溶液へ、ケトエステル1(284.3g)のTHF(200g)溶液を30℃以下で滴下した。室温にて1時間撹拌した後、反応液を氷冷し、20%塩酸水溶液(200g)を滴下して反応を停止した。通常の水系後処理(aqueous work−up)、溶媒留去を行い、ヒドロキシエステル1a(275g、収率95%)を得た。本化合物は特に精製を行わずとも十分な純度を有しており、そのまま次工程へ用いた。
1H−NMR(600MHz in DMSO−d
6、4種類のジアステレオマー混合物の内、主要異性体のみ示す):δ=4.87(1H、d)、4.16(1H、m)、3.58(3H、s)、2.55(1H、m)、1.44(1H、m)、1.37−1.80(6H)ppm。
【0154】
[合成例1−1−2]ジオール1の合成
1,4−ジクロロブタン(114.3g)と金属マグネシウム(43.8g)から調製したGrignard試薬のTHF(900g)溶液へ、上記で得たヒドロキシエステル1a(72.1g)のTHF(100g)溶液を40℃以下で滴下した。室温で4時間撹拌後、反応溶液を氷冷し、塩化アンモニウム、20%塩酸の混合水溶液を滴下して反応を停止した。通常の水系後処理(aqueous work−up)、溶媒留去の後、蒸留精製を行い、ジオール1(72.4g、収率85%)を得た。
沸点:88℃/19Pa。
【0155】
[合成例1−1−3]ヒドロキシエステル1bの合成
上記で得られたジオール1(51.1g)、トリエチルアミン(60.7g)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(3.7g)のアセトニトリル(100g)溶液を、内温40℃〜50℃へ加熱し、ピバロイルクロリド(50.6g)のアセトニトリル(20g)溶液を滴下した。60℃にて1時間撹拌後、反応溶液を氷冷し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を滴下して反応を停止した。通常の水系後処理(aqueous work−up)、溶媒留去の後、蒸留精製を行い、ヒドロキシエステル1b(72.5g、収率95%)を得た。
沸点:76℃/11Pa。
IR(D−ATR):ν=3599、3512、2961、2873、1725、1480、1459、1397、1367、1285、1150、1032、995、970、937、845、772cm
-1。
1H−NMR(600MHz in DMSO−d
6、4種類のジアステレオマー混合物の内、主要異性体のみ示す):δ=5.14(1H、m)、3.75(1H、s)、2.05(1H、m)、1.36−1.83(14H)、1.09(9H、s)ppm。
【0156】
[合成例1−1−4]モノマー1の合成
上記で得られたヒドロキシエステル1b(67.4g)、トリエチルアミン(56.0g)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(3.2g)のアセトニトリル(100g)溶液を、内温40℃〜50℃へ加熱し、メタクリロイルクロリド(49.9g)を滴下した。50℃にて15時間撹拌後、反応溶液を氷冷し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を滴下して反応を停止した。通常の水系後処理(aqueous work−up)、溶媒留去の後、蒸留精製を行い、モノマー1(76.9g、収率90%)を得た。
沸点:104℃/17Pa。
IR(D−ATR):ν=2960、2874、1724、1712、1637、1480、1452、1397、1367、1332、1304、1283、1150、1032、1009、972、937、815、771、653、589、573cm
-1。
1H−NMR(600MHz in DMSO−d
6、4種類のジアステレオマー混合物の内、主要異性体のみ示す):δ=5.87(1H、s)、5.55(1H、m)、4.95(1H、m)、3.04(1H、m)、2.30(1H、m)、1.79(3H、s)、1.43−2.04(14H)、1.11(9H、s)ppm。
【0157】
[合成例1−2]モノマー2の合成
【化62】
【0158】
[合成例1−2−1]ジオール2の合成
ヒドロキシエステル1aの代わりにヒドロキシエステル2aを使用した以外は、上記[合成例1−1−2]と同様の方法によりジオール2(169g、収率92%)を得た。
IR(D−ATR):ν=3315、2956、2934、2856、1444、1422、1365、1351、1338、1313、1288、1238、1214、1197、1141、1112、1066、1037、989、961、943、930、904、845、817、654cm
-1。
1H−NMR(600MHz in DMSO−d
6、2種類のジアステレオマー混合物の内、主要異性体のみ示す):δ=4.10(1H、d)、3.79(1H、m)、3.64(1H、s)、1.00−1.85(17H)ppm。
【0159】
[合成例1−2−2]ヒドロキシエステル2bの合成
ジオール1の代わりにジオール2(40.0g)を使用した以外は、上記[合成例1−1−3]と同様な方法によりヒドロキシエステル2bを得た。ヒドロキシエステル2bは、後処理を行わず、反応液のまま次の工程へ用いた。
【0160】
[合成例1−2−3]モノマー2の合成
上記で合成したヒドロキシエステル2bの反応液に、メタクリロイルクロリド(40.8g)を50℃〜60℃にて滴下した。50℃にて12時間撹拌後、反応溶液を氷冷して飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、反応を停止した。通常の水系後処理(aqueous work−up)、溶媒留去の後、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製を行いモノマー2(61.8g、2工程収率84%)を得た。
IR(D−ATR):ν=2954、2870、1724、1713、1637、1480、1448、1397、1377、1331、1303、1284、1162、1096、1037、1007、986、934、893、815cm
-1。
1H−NMR(600MHz in DMSO−d
6、2種類のジアステレオマー混合物の内、主要異性体のみ示す):δ=5.92(1H、m)、5.53(1H、m)、4.85(1H、m)、2.25(1H、m)、3.64(1H、s)、1.82(3H、m)、1.50−2.03(16H)、1.13(9H、s)ppm。
【0161】
[合成例1−3]モノマー3の合成
【化63】
【0162】
[合成例1−3−1]ヒドロキシエステル3の合成
ジオール2(80.0g)、ピリジン(44.6g)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(1.0g)のTHF(300g)溶液を氷冷し、無水酢酸(51.0g)のTHF(20g)溶液を15℃以下で滴下した。10℃にて1時間撹拌後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を滴下して反応を停止した。通常の水系後処理(aqueous work−up)、溶媒留去の後、ヒドロキシエステル3(97.2g、収率99%)を得た。本化合物は特に精製を行わずとも十分な純度を有しており、そのまま次工程へ用いた。
IR(D−ATR):ν=3486、2941、2867、1732、1446、1371、1244、1122、1037、1021、993、956、931、907、896、853、823、705、606cm
-1。
1H−NMR(600MHz in DMSO−d
6、2種類のジアステレオマー混合物の内、主要異性体のみ示す):δ=4.86(1H、s)、3.74(1H、s)、1.98(3H、s)、1.15−1.95(17H)ppm。
【0163】
[合成例1−3−2]モノマー3の合成
ヒドロキシエステル1bの代わりにヒドロキシエステル3を使用した以外は、上記[合成例1−1−4]と同様な方法によりモノマー3(107.3g、収率84%)を得た。
IR(D−ATR):ν=2946、2868、1733、1707、1636、1448、1401、1370、1331、1302、1243、1157、1097、1037、1020、985、953、934、909、873、849、815、653、624、606cm
-1。
1H−NMR(600MHz in DMSO−d
6、2種類のジアステレオマー混合物の内、主要異性体のみ示す):δ=5.93(1H、m)、5.57(1H、m)、4.87(1H、m)、2.33(1H、m)、1.98(3H、s)、1.83(3H、s)、1.10−2.00(16H)ppm。
【0164】
[合成例1−4]モノマー4の合成
【化64】
【0165】
[合成例1−4−1]ジオール3の合成
ヒドロキシエステル1aの代わりにヒドロキシエステル4aを使用した以外は、上記[合成例1−1−2]と同様の方法によりジオール3(297g、収率80%)を得た。
沸点:70℃/20Pa。
1H−NMR(600MHz in DMSO−d
6):δ=4.65(1H、d)、4.44(1H、s)、3.90(1H、m)、1.47−1.74(10H)、1.06(3H、d)ppm。
【0166】
[合成例1−4−2]ヒドロキシエステル4bの合成
ジオール1の代わりにジオール3を使用した以外は、上記[合成例1−1−3]と同様な方法によりヒドロキシエステル4b(123g、収率94%)を得た。
沸点:65℃/19Pa。
1H−NMR(600MHz in DMSO−d
6):δ=5.04(1H、m)、4.07(1H、s)、1.37−1.78(10H)、1.14(3H、d)、1.10(9H、s)ppm。
【0167】
[合成例1−4−3]モノマー4の合成
ヒドロキシエステル1bの代わりにヒドロキシエステル4bを使用した以外は、上記[合成例1−1−4]と同様な方法によりモノマー4(129g、収率81%)を得た。
沸点:80℃/19Pa。
IR(D−ATR):ν=2972、2874、1723、1637、1480、1454、1398、1377、1333、1284、1163、1132、1049、937、816、771cm
-1。
1H−NMR(600MHz in DMSO−d
6):δ=5.91(1H、s)、5.58(1H、m)、4.87(1H、m)、2.35(1H、d)、2.22(1H、d)、2.16(1H、m)、2.01(1H、m)、1.81(3H、s)、1.54−1.70(6H)、1.10(3H、d)、1.09(9H、s)ppm。
【0168】
[合成例1−5]モノマー5の合成
【化65】
【0169】
[合成例1−5−1]ジオール4の合成
ヒドロキシエステル1aの代わりにヒドロキシエステル4aを使用し、Grignard試薬としてメチルマグネシウムクロリドを使用した以外は、上記[合成例1−1−2]と同様の方法によりジオール4を得た(収率83%)。
【0170】
[合成例1−5−2]ヒドロキシエステル5の合成
ジオール1の代わりにジオール4を使用した以外は、上記[合成例1−1−3]と同様な方法によりヒドロキシエステル5を得た(収率96%)。
【0171】
[合成例1−5−3]モノマー5の合成
ヒドロキシエステル1bの代わりにヒドロキシエステル5を使用した以外は、上記[合成例1−1−4]と同様な方法によりモノマー5を得た(収率79%)。
【0172】
[合成例1−6]モノマー6の合成
【化66】
【0173】
メタクリロイルクロリドの代わりにメタクリロイルオキシアセチルクロリドを使用し、トリエチルアミン及び4−(ジメチルアミノ)ピリジンの代わりにピリジンを使用した以外は、上記[合成例1−1−4]と同様の方法によりモノマー6を得た(収率80%)。
【0174】
[合成例1−7]モノマー7の合成
【化67】
【0175】
メタクリロイルクロリドの代わりにアクリロイルクロリドを使用した以外は、上記[合成例1−1−4]と同様の方法によりモノマー7を得た(収率89%)。
【0176】
[合成例1−8]モノマー8の合成
【化68】
【0177】
メタクリロイルクロリドの代わりにα−トリフルオロメチルアクリロイルクロリドを使用し、トリエチルアミン及び4−(ジメチルアミノ)ピリジンの代わりにピリジンを使用した以外は、上記[合成例1−1−4]と同様の方法によりモノマー8を得た(収率81%)。
【0178】
[合成例1−9]モノマー9の合成
【化69】
【0179】
[合成例1−9−1]ヒドロキシエステル6の合成
ジオール2の代わりにジオール1を使用し、無水酢酸の代わりにトリフルオロ酢酸無水物を使用し、ピリジンのみを使用した以外は、[合成例1−3−1]と同様の方法によりヒドロキシエステル6を得た(収率76%)。
【0180】
[合成例1−9−2]モノマー9の合成
ヒドロキシエステル1bの代わりにヒドロキシエステル6を使用した以外は、上記[合成例1−1−4]と同様な方法によりモノマー
9を得た(収率82%)。
【0181】
[合成例1−10]モノマー10の合成
【化70】
【0182】
[合成例1−10−1]ヒドロキシエステル7の合成
無水酢酸の代わりに4−トリフルオロメチルシクロヘキサンカルボニルクロリドを使用し以外は、[合成例1−3−1]と同様の方法によりヒドロキシエステル7を得た(収率80%)。
【0183】
[合成例1−10−2]モノマー10の合成
ヒドロキシエステル1bの代わりにヒドロキシエステル7を使用した以外は、上記[合成例1−1−4]と同様な方法によりモノマー10を得た(収率85%)。
【0184】
[比較合成例1]
本発明の重合性エステル化合物の比較例用に、以下に示す方法で比較モノマー1を合成した。
【化71】
【0185】
[比較合成例1−1]ジオール5の合成
ヒドロキシエステル1aの代わりにヒドロキシエステル8aを使用した以外は、上記[合成例1−1−2]と同様の方法によりジオール5(43.3g、収率81%)を得た。
沸点:59℃/23Pa。
【0186】
[比較合成例1−2]ヒドロキシエステル8bの合成
ジオール1の代わりにジオール5を使用した以外は、上記[合成例1−1−3]と同様な方法によりヒドロキシエステル8b(63.1g、収率93%)を得た。
IR(D−ATR):ν=3499、2987、2973、2958、2906、2868、1726、1699、1543、1479、1459、1446、1396、1382、1369、1346、1326、1289、1231、1180、1105、1082、1061、1042、989、946、908、887、863、807、773cm
-1。
1H−NMR(600MHz in DMSO−d
6):δ=4.67(1H、q)、4.30(1H、s)、1.70(2H、m)、1.40−1.56(6H)、1.12(9H、s)、1.11(3H、d)ppm。
【0187】
[比較合成例1−3]比較モノマー1の合成
ヒドロキシエステル1bの代わりにヒドロキシエステル8bを使用した以外は、上記[合成例1−1−4]と同様な方法により比較モノマー1(71.1g、収率96%)を得た。
沸点:83℃/23Pa。
IR(D−ATR):ν=2975、2874、1732、1717、1638、1480、1455、1397、1380、1329、1304、1283、1150、1067、1035、1009、975、940、868、815、769cm
-1。
1H−NMR(600MHz in DMSO−d
6):δ=5.94(1H、s)、5.61(1H、s)、5.55(1H、q)、1.99(2H、m)、1.80−1.95(2H、m)、1.82(3H、s)、1.70(2H、m)、1.58(2H、m)、1.11(9H+3H)ppm。
【0188】
上記合成例にて合成した本発明のモノマーと、比較モノマーの一覧を以下に示す。
【化72】
【0189】
[合成例2]
本発明の高分子化合物を以下に示す方法で合成した。
[合成例2−1]ポリマー1の合成
窒素雰囲気下、モノマー1(47.0g)、メタクリル酸4,8−ジオキサトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン−5−オン−2−イル(26.1g)及びメタクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル(6.9g)と、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル(3.4g)をメチルエチルケトン(111g)に溶解させ、溶液を調製した。その溶液を窒素雰囲気下80℃で撹拌したメチルエチルケトン(37g)に4時間かけて滴下した。滴下終了後80℃を保ったまま2時間撹拌し、室温まで冷却した後、重合液をメタノール(1,200g)に滴下した。析出した固形物を濾別し、50℃で20時間真空乾燥して、下記式レジストポリマー1で示される白色粉末固体状の高分子化合物が得られた。収量は74.4g、収率は93%であった。なお、Mwはポリスチレン換算でのGPCを用いて測定した重量平均分子量を表す。
【0190】
【化73】
【0191】
[合成例2−2〜11、比較合成例2−1〜4]ポリマー2〜11、比較ポリマー1〜4の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、合成例2−1と同様の手順により、ポリマー2〜11、及び比較合成例用の比較ポリマー1〜4を製造した。なお、導入比はモル比である。
【0192】
【化74】
【0193】
【化75】
【0194】
【化76】
【0195】
[実施例、
参考例、比較例]
レジスト材料の調製
[実施例1−1〜
9、参考例1−1〜2、比較例1−1〜4]
上記で製造した本発明の樹脂(ポリマー1〜
5、7、9〜11)
、参考例の樹脂(ポリマー6、8)及び比較例用の樹脂(比較ポリマー1〜4)をベース樹脂として用い、酸発生剤、塩基性化合物、撥水性ポリマー及び溶剤を表1に示す組成で添加し、混合溶解後にそれらをテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)で濾過し、本発明のレジスト材料(R−1〜
5、7、9〜11)
、参考例のレジスト材料(R−6、8)及び比較例用のレジスト材料(R−12〜15)とした。なお、溶剤はすべて界面活性剤としてKH−20(旭硝子(株)製)を0.01質量%含むものを用いた。
表1中、略号で示した酸発生剤、塩基及び溶剤は、それぞれ下記の通りである。
PAG−1:トリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート
PAG−2:4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート
Base−1:オクタデカン酸2−モルホリノエチル
PGMEA:酢酸1−メチル−2−メトキシエチル
CyH:シクロヘキサノン
撥水性ポリマー1(SF−1):(下記式)
【化77】
【0196】
【表1】
【0197】
[実施例2−1〜
9、参考例2−1〜2及び比較例2−1〜4]
ArF露光パターニング評価(1)ホールパターン評価
上記表1に示す組成で調製した本発明のレジスト材料(R−1〜
5、7、9〜11)
、参考例のレジスト材料(R−6、8)及び比較例用のレジスト材料(R−12〜15)を、信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)を35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上へスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを100nmにした。
これをArF液浸エキシマレーザーステッパー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、ダイポール開口20度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、ダイポール照明)を用いて、ウエハー上寸法がピッチ80nm、ライン幅40nmのX方向のラインが配列されたマスクを用い第一回目の露光を行い、続いて、ウエハー上寸法がピッチ80nm、ライン幅40nmのY方向のラインが配列されたマスクを用いて第二回目の露光を行い、露光後60秒間の熱処理(PEB)を施した後、現像ノズルから酢酸ブチルを3秒間30rpmで回転させながら吐出させ、その後静止パドル現像を27秒間行い、4−メチル−2−ペンタノールでリンス後スピンドライし、100℃で20秒間ベークしてリンス溶剤を蒸発させた。
溶剤現像のイメージ反転されたホールパターン50箇所の寸法を(株)日立ハイテクノロジーズ製TDSEM(S−9380)で測定し、3σの寸法バラツキを求めた。3σ値が小さいほど、ホール寸法のバラツキがなく、良好である。評価結果を表2に示す。
【0198】
【表2】
【0199】
[実施例3−1〜
9、参考例3−1〜2及び比較例3−1〜4]
ArF露光パターニング評価(2)ラインアンドスペースパターン、孤立スペースパターン評価
上記表1に示す組成で調製した本発明のレジスト材料(R−1〜
5、7、9〜11)
、参考例のレジスト材料(R−6、8)及び比較例用のレジスト材料(R−12〜15)を、信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)を35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上へスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを100nmにした。これをArF液浸エキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、4/5輪帯照明)を用いて、以下に説明するマスクA又はBを介してパターン露光を行った。
【0200】
ウエハー上寸法がピッチ100nm、ライン幅50nmのラインが配列された6%ハーフトーン位相シフトマスクAを用いて照射を行った。露光後60秒間の熱処理(PEB)を施した後、現像ノズルから酢酸ブチルを3秒間30rpmで回転させながら吐出させ、その後静止パドル現像を27秒間行い、4−メチル−2−ペンタノールでリンス後スピンドライし、100℃で20秒間ベークしてリンス溶剤を蒸発させた。その結果、マスクで遮光された未露光部分が現像液に溶解してイメージ反転されたスペース幅50nm、ピッチ100nmのラインアンドスペースパターン(以下、LSパターン)が得られた。
【0201】
ウエハー上寸法がピッチ200nm、ライン幅45nmのラインが配列された6%ハーフトーン位相シフトマスクBを用いて照射を行った。露光後60秒間の熱処理(PEB)を施した後、現像ノズルから酢酸ブチルを3秒間30rpmで回転させながら吐出させ、その後静止パドル現像を27秒間行い、4−メチル−2−ペンタノールでリンス後スピンドライし、100℃で20秒間ベークしてリンス溶剤を蒸発させた。その結果、マスクで遮光された未露光部分が現像液に溶解してイメージ反転されたスペース幅35nm、ピッチ200nmの孤立スペースパターン(以下、トレンチパターン)が得られた。
【0202】
[感度評価]
感度として、前記[ArF露光パターニング評価(2)]マスクAを用いた評価において、スペース幅50nm、ピッチ100nmのLSパターンが得られる最適な露光量Eop(mJ/cm
2)を求めた結果を表3に示す。この値が小さいほど、感度が高い。
【0203】
[露光裕度(EL)評価]
露光裕度評価として、前記[ArF露光パターニング評価(2)]マスクAを用いたLSパターンにおける50nmのスペース幅の±10%(45nm〜55nm)の範囲内で形成される露光量から、次式により露光裕度(単位:%)を求めた結果を表3に示す。
露光裕度(%)=(|E1−E2|/Eop)×100
E1:スペース幅45nm、ピッチ100nmのLSパターンを与える最適な露光量
E2:スペース幅55nm、ピッチ100nmのLSパターンを与える最適な露光量
Eop:スペース幅50nm、ピッチ100nmのLSパターンを与える最適な露光量
【0204】
[ラインウィドゥスラフネス(LWR)評価]
前記[ArF露光パターニング評価(2)]マスクAを用いた評価において、前記感度評価における最適露光量で照射してLSパターンを得る。(株)日立ハイテクノロジーズ製TDSEM(S−9380)でスペース幅の長手方向に10箇所の寸法を測定し、その結果から標準偏差(σ)の3倍値(3σ)をLWRとして求めた結果を表3に示す。この値が小さいほど、ラフネスが小さく均一なスペース幅のパターンが得られる。
【0205】
[マスクエラーエンハンスメントファクター(MEEF)評価]
前記[ArF露光パターニング評価(2)]マスクAを用いた評価において、マスクのピッチは固定したまま、マスクのライン幅を変えて、前記感度評価における最適露光量で照射しパターン形成した。マスクのライン幅とパターンのスペース幅の変化から、次式によりMEEFの値を求めた結果を表3に示す。この値が1に近いほど性能が良好である。
MEEF=(パターンのスペース幅/マスクのライン幅)−b
b:定数
【0206】
[焦点深度(DOF)マージン評価]
焦点マージン評価として、前記[ArF露光パターニング評価(2)]マスクBを用いたトレンチパターンにおける35nmのスペース幅を形成する露光量及び焦点深度をそれぞれ最適露光量及び最適焦点深度としたまま、焦点深度を変化させたときに、35nmスペース幅の±10%(31.5nm〜38.5nm)の範囲内で形成される焦点深度マージン(単位:μm)を求めた結果を表3に示す。この値が大きいほど焦点深度の変化に対するパターン寸法変化が小さく、焦点深度マージン(DOF)が良好である。
【0207】
【表3】
【0208】
表2、表3の結果より、本発明のレジスト材料が、有機溶剤現像によるネガティブパターン形成においてホール寸法均一性やLSパターンの露光裕度、LWR、MEEFに優れることがわかった。また、トレンチパターンの焦点深度(DOF)マージンに優れることも確認された。以上のことから、本発明のレジスト材料は、有機溶剤現像プロセスに有用であることが示唆された。